(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038680
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理装置のリーク判定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20240313BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20240313BHJP
G01M 3/26 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L21/26 G
H01L21/265 602B
G01M3/26 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142886
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大森 麻央
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩志
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA31
2G067BB04
2G067BB22
2G067CC04
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】チャンバーのリークの有無を精度よく検出することができる基板処理装置および基板処理装置のリーク判定方法を提供する。
【解決手段】チャンバーに収容された基板を加熱する基板処理装置のリーク判定方法である。チャンバー6内にて半導体ウェハーWに加熱処理を行う加熱工程と、加熱工程の後にチャンバー6から半導体ウェハーWを搬出する搬出工程と、チャンバー6内の雰囲気温度を計測する温度計測工程と、チャンバー6のリーク判定処理を行うリーク判定工程(ステップS5)と、を備える。半導体ウェハーWをチャンバー6から搬出した後に雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機し、雰囲気温度が待機指定温度に到達したときにリーク判定処理を開始する(ステップS2,ステップS3参照)。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーに収容された基板を加熱する基板処理装置のリーク判定方法であって、
前記チャンバー内にて前記基板に加熱処理を行う加熱工程と、
前記加熱工程の後に前記チャンバーから前記基板を搬出する搬出工程と、
前記チャンバー内の雰囲気温度を計測する温度計測工程と、
前記チャンバーのリーク判定処理を行うリーク判定工程と、
を備え、
前記基板を前記チャンバーから搬出した後に前記雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機し、前記雰囲気温度が前記待機指定温度に到達したときに前記リーク判定処理を開始することを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリーク判定方法において、
前記リーク判定工程は、
前記チャンバー内への気体の供給を停止しつつ、前記チャンバーから気体の排出を行い、前記チャンバー内の気圧が第1期間で第1の閾値未満にまで減圧されるか否かによりリークの有無を判定する第1の判定工程と、
前記チャンバー内への気体の供給および気体の排出を停止し、前記チャンバー内を減圧状態に維持し、第2期間で前記チャンバーからのリーク量が第2の閾値未満となるか否かによりリークの有無を判定する第2の判定工程と、
のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のリーク判定方法において、
前記チャンバー内への気体の供給および前記チャンバーからの気体の排出を停止する封じ込め期間の始期よりも前記第2期間の始期が後であり、前記封じ込め期間の終期と前記第2期間の終期とが一致することを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリーク判定方法において、
前記待機指定温度は常温であることを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項5】
請求項2に記載のリーク判定方法において、
前記待機指定温度は常温よりも高温であり、
前記待機指定温度と前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルを作成するテーブル作成工程をさらに備え、
前記リーク判定工程では、指定された前記待機指定温度に対応する前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つを前記対応テーブルから抽出して前記リーク判定処理を行うことを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項6】
請求項1に記載のリーク判定方法において、
前記リーク判定工程を実行する時期を設定するスケジュール設定工程をさらに備えることを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載のリーク判定方法において、
前記スケジュール設定工程において設定された前記時期に到達した時点で前記チャンバー内にて前記基板の前記加熱処理を実行しているときは、前記基板の前記加熱処理が終了して前記基板が前記チャンバーから搬出された後に前記リーク判定処理を開始することを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項8】
請求項1に記載のリーク判定方法において、
前記加熱工程では、連続点灯ランプおよびフラッシュランプから光照射を行って前記基板に加熱処理を行うことを特徴とする、リーク判定方法。
【請求項9】
基板に加熱処理を行う基板処理装置であって、
前記基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバーに収容された前記基板を加熱する加熱部と、
前記チャンバー内に気体を供給する気体供給部と、
前記チャンバーから気体を排出する気体排出部と、
前記チャンバー内の雰囲気温度を計測する温度計と、
前記チャンバー内の気圧を計測する圧力計と、
を備え、
加熱処理が終了した前記基板を前記チャンバーから搬出した後に前記雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機し、前記雰囲気温度が前記待機指定温度に到達したときに前記チャンバーのリーク判定処理を開始することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置において、
前記リーク判定処理は、
前記チャンバー内への気体の供給を停止しつつ、前記チャンバーから気体の排出を行い、前記チャンバー内の気圧が第1期間で第1の閾値未満にまで減圧されるか否かによりリークの有無を判定する第1の判定と、
前記チャンバー内への気体の供給および気体の排出を停止し、前記チャンバー内を減圧状態に維持し、第2期間で前記チャンバーからのリーク量が第2の閾値未満となるか否かによりリークの有無を判定する第2の判定と、
のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理装置において、
前記チャンバー内への気体の供給および前記チャンバーからの気体の排出を停止する封じ込め期間の始期よりも前記第2期間の始期が後であり、前記封じ込め期間の終期と前記第2期間の終期とが一致することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記待機指定温度は常温であることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載の基板処理装置において、
前記待機指定温度は常温よりも高温であり、
前記待機指定温度と前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
指定された前記待機指定温度に対応する前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つを前記対応テーブルから抽出して前記リーク判定処理を行うことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項14】
請求項9に記載の基板処理装置において、
前記リーク判定処理を実行する時期を設定するスケジュール設定部をさらに備えることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項15】
請求項14に記載の基板処理装置において、
前記スケジュール設定部において設定された前記時期に到達した時点で前記チャンバー内にて前記基板の前記加熱処理を実行しているときは、前記基板の前記加熱処理が終了して前記基板が前記チャンバーから搬出された後に前記リーク判定処理を開始することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項16】
請求項9に記載の基板処理装置において、
前記加熱部は、
前記基板に光照射を行う連続点灯ランプと、
前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
を含むことを特徴とする、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)を加熱する基板処理装置および基板処理装置のリーク判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、基板を加熱する基板処理装置が利用される。このような基板処理装置において、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
一方、フラッシュランプアニールをアンモニア等の反応性ガスの雰囲気中にて行うことも試みられている。例えば、高誘電率ゲート絶縁膜(high-k膜)を形成した半導体ウェハーを収容したチャンバー内を減圧状態に維持しつつアンモニア雰囲気を形成し、当該半導体ウェハーに対してフラッシュ光を照射して加熱することにより、高誘電率ゲート絶縁膜の成膜後熱処理を行うことが開示されている。高誘電率ゲート絶縁膜は、ゲート絶縁膜の薄膜化の進展にともなってリーク電流が増大する問題を解決するために、ゲート電極に金属を用いたメタルゲート電極とともに新たな電界効果トランジスタのスタック構造として開発が進められているものである。
【0006】
特許文献1に開示されるフラッシュランプアニール装置では、チャンバー内に反応性ガスを供給する前にチャンバー内の雰囲気を排気して約100Paにまで減圧している。また、フラッシュ加熱処理が終了した後も、チャンバー内を減圧して反応性ガスを排出するようにしている。このようなチャンバー内を大気圧未満にまで減圧する装置では、チャンバーにリークが発生していると減圧できなくなるという問題が生じる。特に、アンモニア等の反応性ガスを扱う場合には、チャンバーにリークが発生していると危険な反応性ガスがチャンバー外に漏出するという問題も生じる。したがって、チャンバーにおけるリークの有無を検出することが重要となる。なお、フラッシュランプアニール装置のチャンバーにリークが発生する原因としては、チャンバーに設けられた石英窓の破損やチャンバーに給排気を行う配管の不具合等が挙げられる。
【0007】
リークの有無を検出する手法として、例えば石英窓に割れ検出のためのセンサー等のハードウェア構成を搭載することも考えられるが、フラッシュ光照射に支障が生じるおそれがある。このような問題に備えて、特許文献1には、排気部によるチャンバー内の減圧開始からの経過時間が予め設定された閾値を超えても圧力計の測定値が目標圧力に到達しているか否かでチャンバーのリーク発生の有無を判定する技術が開示されている。このような特許文献1に記載の技術によれば、減圧開始からの経過時間を監視してリーク発生を判定しており、簡易な構成にてチャンバーのリークの有無を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、チャンバー内の温度によってリーク量やガス排出効率が異なるため、チャンバー内の温度によってはリーク判定の精度が低下するおそれがあった。例えば、チャンバー内の温度が高い場合には、チャンバー内に存在しているガスの温度も高いため、ガス密度が小さくなる。ガス密度が小さくなると、ガス排出効率が高くなる一方で、チャンバー内にガスを封じ込めたときのリーク量が増える傾向にある、微少なリークを検出する際には、このような温度依存したガスの挙動が誤検知の原因となる懸念がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、チャンバーのリークの有無を精度よく検出することができる基板処理装置および基板処理装置のリーク判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、チャンバーに収容された基板を加熱する基板処理装置のリーク判定方法であって、前記チャンバー内にて前記基板に加熱処理を行う加熱工程と、前記加熱工程の後に前記チャンバーから前記基板を搬出する搬出工程と、前記チャンバー内の雰囲気温度を計測する温度計測工程と、前記チャンバーのリーク判定処理を行うリーク判定工程と、を備え、前記基板を前記チャンバーから搬出した後に前記雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機し、前記雰囲気温度が前記待機指定温度に到達したときに前記リーク判定処理を開始することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記リーク判定工程は、前記チャンバー内への気体の供給を停止しつつ、前記チャンバーから気体の排出を行い、前記チャンバー内の気圧が第1期間で第1の閾値未満にまで減圧されるか否かによりリークの有無を判定する第1の判定工程と、前記チャンバー内への気体の供給および気体の排出を停止し、前記チャンバー内を減圧状態に維持し、第2期間で前記チャンバーからのリーク量が第2の閾値未満となるか否かによりリークの有無を判定する第2の判定工程と、のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記チャンバー内への気体の供給および前記チャンバーからの気体の排出を停止する封じ込め期間の始期よりも前記第2期間の始期が後であり、前記封じ込め期間の終期と前記第2期間の終期とが一致することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項の発明において、前記待機指定温度は常温であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項2の発明において、前記待機指定温度は常温よりも高温であり、前記待機指定温度と前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルを作成するテーブル作成工程をさらに備え、前記リーク判定工程では、指定された前記待機指定温度に対応する前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つを前記対応テーブルから抽出して前記リーク判定処理を行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記リーク判定工程を実行する時期を設定するスケジュール設定工程をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記スケジュール設定工程において設定された前記時期に到達した時点で前記チャンバー内にて前記基板の前記加熱処理を実行しているときは、前記基板の前記加熱処理が終了して前記基板が前記チャンバーから搬出された後に前記リーク判定処理を開始することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1の発明において、前記加熱工程では、連続点灯ランプおよびフラッシュランプから光照射を行って前記基板に加熱処理を行うことを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、基板に加熱処理を行う基板処理装置であって、前記基板を収容するチャンバーと、前記チャンバーに収容された前記基板を加熱する加熱部と、前記チャンバー内に気体を供給する気体供給部と、前記チャンバーから気体を排出する気体排出部と、前記チャンバー内の雰囲気温度を計測する温度計と、前記チャンバー内の気圧を計測する圧力計と、を備え、加熱処理が終了した前記基板を前記チャンバーから搬出した後に前記雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機し、前記雰囲気温度が前記待機指定温度に到達したときに前記チャンバーのリーク判定処理を開始することを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記リーク判定処理は、前記チャンバー内への気体の供給を停止しつつ、前記チャンバーから気体の排出を行い、前記チャンバー内の気圧が第1期間で第1の閾値未満にまで減圧されるか否かによりリークの有無を判定する第1の判定と、前記チャンバー内への気体の供給および気体の排出を停止し、前記チャンバー内を減圧状態に維持し、第2期間で前記チャンバーからのリーク量が第2の閾値未満となるか否かによりリークの有無を判定する第2の判定と、のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記チャンバー内への気体の供給および前記チャンバーからの気体の排出を停止する封じ込め期間の始期よりも前記第2期間の始期が後であり、前記封じ込め期間の終期と前記第2期間の終期とが一致することを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項9から請求項11のいずれか一項に発明において、前記待機指定温度は常温であることを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項10または請求項11の発明において、前記待機指定温度は常温よりも高温であり、前記待機指定温度と前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルを記憶する記憶部をさらに備え、指定された前記待機指定温度に対応する前記第1の閾値および前記第2の閾値のうちの少なくとも一つを前記対応テーブルから抽出して前記リーク判定処理を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項14の発明は、請求項9の発明において、前記リーク判定処理を実行する時期を設定するスケジュール設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0025】
請求項15の発明は、請求項14の発明において、前記スケジュール設定部において設定された前記時期に到達した時点で前記チャンバー内にて前記基板の前記加熱処理を実行しているときは、前記基板の前記加熱処理が終了して前記基板が前記チャンバーから搬出された後に前記リーク判定処理を開始することを特徴とする。
【0026】
請求項16の発明は、請求項9の発明において、前記加熱部は、前記基板に光照射を行う連続点灯ランプと、前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1から請求項16の発明によれば、基板をチャンバーから搬出した後に雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機し、雰囲気温度が待機指定温度に到達したときにリーク判定処理を開始することにより、チャンバーのリークの有無を精度よく検出することができる。
【0028】
請求項3,11の発明によれば、封じ込め期間の始期よりも第2期間の始期が後であり、封じ込め期間の終期と第2期間の終期とが一致することにより、第2期間において、気体の供給および気体の排出の停止の状態が安定した後にリーク判定処理ができる。これにより、チャンバーのリークの有無を精度よく検出することができる。
【0029】
請求項5,13の発明によれば、指定された待機指定温度に対応する第1の閾値および第2の閾値のうちの少なくとも一つを対応テーブルから抽出してリーク判定処理を行うことから、リーク判定処理の行われる温度に対応する第1の閾値または第2の閾値によりリーク判定処理が行われる。これにより、チャンバーのリークの有無を精度よく検出することができる。
【0030】
請求項7,15の発明によれば、加熱処理が終了して基板がチャンバーから搬出された後にリーク判定処理を開始する。これにより、常にチャンバー内に基板がない状態でチャンバーのリーク判定処理が行われる。したがって、チャンバーのリークの有無を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】チャンバーに対する給排気機構を示す図である。
【
図9】制御部と各部との関係を示すブロック図である。
【
図10】本発明に係るリーク判定処理の流れを示すフロー図である。
【
図11】本発明に係る第1の判定処理の流れを示すフロー図である。
【
図12】第1の判定におけるチャンバー内の圧力変化を示す図である。
【
図13】本発明に係る第2の判定処理の流れを示すフロー図である。
【
図14】第2の判定におけるチャンバー内の圧力変化を示す図である。
【
図15】待機指定温度と第1の閾値ないし第4の閾値とを相互に対応付けた対応テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0033】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0034】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0035】
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0036】
また、以下に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置としての熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、チャンバー6に収容された基板を加熱する装置である。より詳細には、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWにはゲート絶縁膜として高誘電率膜(high-k膜)が形成されており、熱処理装置1による加熱処理によって高誘電率膜の成膜後熱処理(PDA:Post Deposition Anneal)が実行される。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0038】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、半導体ウェハーWに光照射を行うハロゲン加熱部4と、半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射するフラッシュ加熱部5とを備える。ハロゲン加熱部4は、連続点灯ランプとしての複数のハロゲンランプHLを内蔵する。また、フラッシュ加熱部5は、複数のフラッシュランプFLを内蔵する。フラッシュ加熱部5はチャンバー6の上側に設けられ、ハロゲン加熱部4はチャンバー6の下側に設けられる。フラッシュ加熱部5とハロゲン加熱部4とは、チャンバー6に収容された半導体ウェハーWを加熱する。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。また、熱処理装置1は、熱処理装置1の処理状況や各種処理条件の設定画面を表示する表示部8を備える。表示部8は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)パネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。
【0039】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0040】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0041】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0042】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0043】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0044】
また、チャンバー6には、雰囲気温度計22が設けられている。雰囲気温度計22は、例えば熱電対を備えており、チャンバー6内の熱処理空間65の雰囲気温度を計測する(温度計測工程)。なお、
図1では図示の便宜上、雰囲気温度計22はチャンバー6内に配置されるように記載しているが、放射温度計20と同様に、チャンバー側部61に取り付けられても良い。
【0045】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2)およびアンモニア(NH3))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。処理ガス供給源85は、制御部3の制御下にて、窒素ガス、または、アンモニアと窒素ガスとの混合ガスを処理ガスとしてガス供給管83に送給する。また、ガス供給管83の経路途中には供給バルブ84および流量調整バルブ90が介挿されている。供給バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。ガス供給管83を流れて緩衝空間82に送給される処理ガスの流量は流量調整バルブ90によって調整される。流量調整バルブ90が規定する処理ガスの流量は制御部3の制御によって可変とされる。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガス供給源85、供給バルブ84および流量調整バルブ90によってチャンバー6内に所定の処理ガスを供給するガス供給部180が構成される。なお、処理ガスは窒素ガス、アンモニアに限定されるものではなく、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O2)、水素(H2)、塩素(Cl2)、塩化水素(HCl)、オゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)などの反応性ガスであっても良い。
【0046】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気(排出)するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。
【0047】
図8は、チャンバー6に対する給排気機構を示す図である。排気部190は、自動調整バルブ圧力計91、真空圧力計92、排気バルブ93、圧力自動調整バルブ94および真空ポンプ95を備える。
図8に示すように、チャンバー6には搬送開口部66の側およびその反対側の2箇所にガス排気管88が接続され(
図1では1本のみ図示)、それら2本のガス排気管88が合流して真空ポンプ95に接続される。ガス排気管88の経路途中に自動調整バルブ圧力計91、真空圧力計92、排気バルブ93および圧力自動調整バルブ94が設けられる。
【0048】
真空ポンプ95は、ガス排気管88を介してチャンバー6内を少なくとも100Pa以下にまで減圧することが可能なポンプである。排気バルブ93は、例えば電磁弁等のガス排気管88の経路を開閉するためのバルブである。真空ポンプ95を作動させつつ排気バルブ93が開放されると、チャンバー6内の雰囲気がガス排気孔86から吸引されて緩衝空間87を経てガス排気管88へと排気される。真空圧力計92は、ガス排気管88の圧力を測定することによって、チャンバー6内の圧力を測定する。
【0049】
自動調整バルブ圧力計91と圧力自動調整バルブ94とは協働してチャンバー6内の圧力を所定値に維持する。自動調整バルブ圧力計91も、ガス排気管88の圧力を測定することによって、チャンバー6内の圧力を測定する。圧力自動調整バルブ94には制御部3からチャンバー6内の圧力の設定値(指示値)が与えられる。真空ポンプ95を作動させつつ排気バルブ93が開放された状態にて、自動調整バルブ圧力計91がチャンバー6内の圧力を測定し、その測定値に基づいて圧力自動調整バルブ94が開度を制御してチャンバー6内の圧力を上記設定値に調整する。すなわち、自動調整バルブ圧力計91がチャンバー6内の圧力を測定した測定結果に基づいて、チャンバー6内の圧力が上記設定値となるように圧力自動調整バルブ94がその開度をフィードバック制御するのである。
【0050】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0051】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0052】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0053】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0054】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0055】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0056】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0057】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0058】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0059】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0060】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0061】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0062】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0063】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0064】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0065】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する(予備加熱工程)。
【0066】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0067】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0068】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0069】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0070】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0071】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、
図9に示すように、制御部3は、記憶部31と演算部32とを備える。記憶部31は、待機指定温度と対応付けられた第1の閾値ないし第4の閾値を記憶する。第1の閾値ないし第4の閾値についてはさらに後述する。また、演算部32は、リーク判定部34、タイマー35、および、スケジュール設定部36を備える。リーク判定部34は、制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。タイマー35は計時機能を有する。なお、リーク判定部34およびスケジュール設定部36の処理内容についてはさらに後述する。また、制御部3は、表示部8、雰囲気温度計22、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5、自動調整バルブ圧力計91、真空圧力計92、圧力自動調整バルブ94、排気バルブ93等と接続され、各機能を制御する。
【0072】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えていてもよい。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0073】
<半導体ウェハーWの処理手順>
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWは、ゲート絶縁膜として高誘電率膜が形成されたシリコンの半導体基板である。高誘電率膜は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等の手法によって半導体ウェハーWの表面に堆積されて成膜されている。その半導体ウェハーWに対して熱処理装置1がアンモニア雰囲気中にてフラッシュ光を照射して成膜後熱処理(PDA)を行うことにより、成膜後の高誘電率膜中の欠陥を消滅させる。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0074】
まず、高誘電率膜が形成された半導体ウェハーWが熱処理装置1のチャンバー6に搬入される。半導体ウェハーWの搬入時には、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して高誘電率膜が形成された半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。この際に、チャンバー6の内外はともに大気圧であるため、半導体ウェハーWの搬入にともなってチャンバー6内の熱処理空間65に装置外雰囲気が巻き込まれる。そこで、供給バルブ84を開放して処理ガス供給源(気体供給部)85からチャンバー6内に窒素ガスを供給し続けることによって搬送開口部66から窒素ガス流を流出させ、装置外部の雰囲気がチャンバー6内の流入するのを最小限に抑制するようにしても良い。さらに、ゲートバルブ185の開放時には、排気バルブ93を閉止してチャンバー6からの排気を停止するのが好ましい。これにより、チャンバー6内に供給された窒素ガスは搬送開口部66のみから流出することとなるため、外部雰囲気の流入をより効果的に防ぐことができる。
【0075】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0076】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、高誘電率膜が成膜された表面を上面としてサセプタ74に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0077】
半導体ウェハーWがチャンバー6に収容され、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖された後、チャンバー6内を大気圧よりも低い気圧に減圧する。はじめに半導体ウェハーWが大気圧Ps(=約101325Pa)のチャンバー6内に搬入された後、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖されることによって、チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間となる。この状態にて、制御部3が真空ポンプ(気体排出部)95を作動させるとともに、排気バルブ93を開放することによって、チャンバー6内の雰囲気がガス排気孔86から吸引されてガス排気管88へと排気される。また、制御部3は給気のための供給バルブ84を閉止する。これにより、チャンバー6内に対してはガス供給が行われることなく排気が行われることとなり、チャンバー6内の熱処理空間65が減圧される。
【0078】
また、制御部3は、圧力自動調整バルブ94を制御して比較的小さな排気流量にて気圧P1(例えば約20000Pa)まで排気を行った後、排気流量を増大させる。すなわち、減圧の初期段階では小さな排気流量で排気を行った後に、それよりも大きな排気流量に切り換えて排気を行っているのである。減圧の開始時から大きな排気流量にて急速に排気を行うと、チャンバー6内に大きな気流変化が生じてチャンバー6の構造物(例えば、下側チャンバー窓64)に付着していたパーティクルが巻き上げられて半導体ウェハーWに再付着して汚染するおそれがある。減圧の初期段階では小さな排気流量で静かに排気を行った後に、大きな排気流量に切り換えて排気を行うようにすれば、そのようなチャンバー6内のパーティクルの巻き上げを防止することができる。
【0079】
やがてチャンバー6の圧力(真空度)が気圧P2に到達する。気圧P2は、例えば約100Paである。チャンバー6内の圧力が気圧P2に到達したときに、給気のための供給バルブ84を開放し、処理ガス供給源85からチャンバー6内の熱処理空間65にアンモニアと希釈ガスとしての窒素ガスとの混合ガスを供給する。その結果、チャンバー6内にて保持部7に保持された半導体ウェハーWの周辺にはアンモニア雰囲気が形成される。アンモニア雰囲気中におけるアンモニアの濃度(つまり、アンモニアと窒素ガスとの混合比)は、特に限定されるものではなく適宜の値とすることができるが、例えば10vol.%以下であれば良い(本実施形態では約2.5vol.%)。
【0080】
チャンバー6内に混合ガスが供給されることによって、チャンバー6内の圧力が気圧P2から上昇して気圧P3にまで復圧している。半導体ウェハーWの処理圧力である気圧P3は、気圧P2より高く、かつ、大気圧Psよりも低く、例えば約5000Paである。チャンバー6内を一旦気圧P2にまで減圧してから気圧P3に復圧しているため、復圧後のチャンバー6内のアンモニア雰囲気中における酸素濃度を約200ppb以下とすることができる。
【0081】
チャンバー6内の圧力が気圧P3に復圧して以降は、チャンバー6に対するアンモニア・窒素混合ガスの供給流量とチャンバー6からの排気流量とを概ね等しくしてチャンバー6内の圧力を気圧P3に維持する。また、チャンバー6内の圧力を大気圧未満の気圧P3に維持するときには、圧力自動調整バルブ94に制御部3からチャンバー6内の圧力の設定値(指示値)として気圧P3が与えられる。圧力自動調整バルブ94は、自動調整バルブ圧力計91がチャンバー6内の圧力を測定した測定結果に基づいて、チャンバー6内の圧力が上記設定値(気圧P3)となるように開度をフィードバック制御する。
【0082】
また、チャンバー6内の圧力が気圧P3に復圧して以降にハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して半導体ウェハーWの予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの裏面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0083】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度Txに到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度TxとなるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度Txは300℃以上600℃以下であり、本実施形態では450℃である。
【0084】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度Txに到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度Txに暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度Txに到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度Txに維持している。
【0085】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度Txに均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。なお、予備加熱時のチャンバー6内の圧力は気圧P3に維持されている。
【0086】
次に、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度Txに到達して所定時間が経過した時刻t6にフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる(フラッシュ加熱工程)。
【0087】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、高誘電率膜が成膜された半導体ウェハーWの表面にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することによって、高誘電率膜を含む半導体ウェハーWの表面は瞬間的に処理温度Tyにまで昇温して成膜後熱処理が実行される。フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面が到達する最高温度(ピーク温度)である処理温度Tyは600℃以上1200℃以下であり、本実施形態では1000℃である。
【0088】
アンモニア雰囲気中にて半導体ウェハーWの表面が処理温度Tyにまで昇温して成膜後熱処理が実行されると、高誘電率膜の窒化が促進されるとともに、高誘電率膜中に存在していた点欠陥等の欠陥が消滅する。なお、フラッシュランプFLからの照射時間は0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の短時間であるため、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度Txから処理温度Tyにまで昇温するのに要する時間も1秒未満の極めて短時間である。フラッシュ光照射後の半導体ウェハーWの表面温度は処理温度Tyからただちに急速に下降する。
【0089】
フラッシュ加熱処理が終了して所定時間が経過したときに、制御部3が供給バルブ84を閉止してチャンバー6内を再び気圧P2にまで減圧する。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65から有害なアンモニアを排出することができる。続いて、チャンバー6内が気圧P2にまで到達したときに、制御部3が排気バルブ93を閉止して供給バルブ84を開放し、処理ガス供給源85からチャンバー6内に不活性ガスである窒素ガスを供給して大気圧Psにまで復圧する。また、ハロゲンランプHLも消灯し、これによって半導体ウェハーWが予備加熱温度Txからも降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、チャンバー6が窒素雰囲気に置換されて大気圧Psにまで復圧し、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0090】
<リーク判定処理>
図9は、本実施形態のリーク判定処理を行う各部との関係を示すブロック図であり、
図10は、本実施形態のリーク判定処理の流れを示すフロー図である。
【0091】
本実施形態の熱処理装置1は、仮にチャンバー6内にリークが発生すると、チャンバー6内が所定気圧にまで減圧できなくなるのみならず、有害なアンモニアが漏出するおそれがある。そこで、チャンバー6におけるリークの有無を検出することが重要となる。本実施形態の熱処理装置1の制御を行う制御部3は、記憶部31と演算部32とを有する。記憶部31には待機指定温度と第1の閾値ないし第4の閾値との関係が記憶されている。本実施形態においては、待機指定温度は常温である。
【0092】
また、演算部32には、リーク判定部34、タイマー35、およびスケジュール設定部36が備えられる。リーク判定部34によるチャンバー6のリーク判定処理は、次に説明する手順により行われる(リーク判定工程)。また、スケジュール設定部36によるスケジュールの設定は、リーク判定処理を実行する時期を設定することにより行われる(スケジュール設定工程)。例えば、「実施しない」「毎日」「週に一回」「月に一回」のスケジュール間隔から選択されて設定される。なお、上記以外の選択肢が設定されてもよい。また、操作者の任意のタイミングでリーク判定処理が行われてもよい。
【0093】
本実施形態のリーク判定処理を行うには、まず、スケジュール設定部36において予め設定されたリーク判定処理を実行する時期に到達したか否かが判断される(ステップS1)。スケジュール設定部36において設定された時期に到達したと判断されると、次のステップへと進む。一方、スケジュール設定部36において設定された時期に到達したと判断されなければ、リーク判定処理は行われない。そして、設定された時期に到達したと判断されてからリーク判定処理が実行される。
【0094】
ステップS1で、スケジュール設定部36において設定された時期に到達したと判断されれば、その時点でチャンバー6内にて半導体ウェハーWの加熱処理を実行しているか否かが判断される(ステップS2)。スケジュール設定部36において設定された時期に到達していても、チャンバー6内にて半導体ウェハーWの加熱処理が実行されているときは、リーク判定処理が行われない。このときは、半導体ウェハーWの加熱処理が終了して半導体ウェハーWがチャンバー6内から搬出された後にリーク判定処理を開始する。これにより、常にチャンバー6内に半導体ウェハーWがない状態でチャンバー6のリーク判定処理が行われる。したがって、チャンバー6のリークの有無を半導体ウェハーWによる影響を受けずに、精度よく検出することができる。また、仮に、チャンバー6内に半導体ウェハーWが収容されている状況でリーク判定処理が行われれば、半導体ウェハーWが不良品になり得るためである。このように半導体ウェハーWのチャンバー6外へ搬出されるまで待機してからリーク判定処理が行われるように設定することで、半導体ウェハーWの不良品の生産リスクを低減できる。
【0095】
ステップS2で、チャンバー6内にて半導体ウェハーWの加熱処理が実行されていないと判断されれば、新たな半導体ウェハーWのチャンバー6内への搬入を停止する(ステップS3)。これにより、次のリーク判定処理が行われるまで、チャンバー6内で新たな半導体ウェハーWの加熱処理が実行されない。
【0096】
ステップS3で、新たな半導体ウェハーWのチャンバー6内への搬入が停止されると、チャンバー6内の雰囲気温度が所定の待機指定温度に降温するまで待機する(ステップS4)。雰囲気温度は、例えば、雰囲気温度計22で計測される。なお、本実施形態の所定の待機指定温度は、常温である。常温とは、JIS Z 8703に記載されている通り、20℃±15℃(すなわち、5~35℃)を意味する。雰囲気温度計22で計測された雰囲気温度が、所定の待機指定温度(常温)になるまで待機する。そして、ステップS4で、雰囲気温度が待機指定温度にまで到達したとき、リーク判定処理を開始する(ステップS5)。そして、リーク判定処理で、リークの有無が判定される(ステップS6)。リーク判定処理で「リークが無い」と判断されれば、一連の処理が終了する。一方で、リーク判定処理で「リークの可能性が有る」または「リークが有る」と判断されれば、リーク判定処理が停止、または待機される(ステップS7)。なお、本実施形態においては、リーク判定処理には、第1の判定処理と第2の判定処理とが含まれる。
【0097】
<第1の判定工程>
ここで、第1の判定工程の処理手順について説明する。
図11は、本実施形態の第1の判定処理の流れを示すフロー図である。また、
図12は、常温時の第1の判定におけるチャンバー6内の圧力変化を示す図である。
図12に示す縦軸はチャンバー6内の圧力を示し、横軸は時間を示している。なお、T1は第1期間であり、Pαは第1の閾値であり、Pβは第2の閾値である。
【0098】
熱処理装置1においては、半導体ウェハーWがチャンバー6内から搬出され(搬出工程)、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖されている。ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖されることによって、チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間となる。この状態で、チャンバー6内の気圧を減圧する(ステップS11)。このチャンバー6内の気圧の減圧は、チャンバー6内への気体の供給を停止しつつ、チャンバー6から気体の排出を行うことで実行される。具体的には、制御部3は供給バルブ84を閉止するとともに、真空ポンプ95を作動させつつ排気バルブ93を開放させる。なお、チャンバー6内の減圧を開始してからの経過時間はタイマー35(
図9参照)によって計時される。
【0099】
チャンバー6内へのガスの流入またはチャンバー6外へのガスの流出の速さは、温度によって異なると考えられる。このため、リーク判定処理は、略同一の温度の条件にて行われることが好ましい。ここで、本実施形態においては、所定期間(第1期間T1)減圧した場合の待機指定温度(本実施形態においては常温)におけるチャンバー6内の圧力の経時的な変化とリークの有無との関係が予め対応付けられて記憶部31に記憶されている。
【0100】
次に、第1の閾値(Pα)が、記憶部31から抽出される(ステップS12)。この抽出された第1の閾値(Pα)は、演算部32での計算に利用される。そして、演算部32のリーク判定部34により、第1期間T1後の圧力と第1の閾値(Pα)とが比較される。リーク判定のための第1期間T1は、予め制御部3に設定されている(例えば、T1=1800秒)。この設定は、操作者によって変更可能であってよい。また、チャンバー6内の圧力は真空圧力計92(
図8参照)によって測定される。なお、上記の
図12の例では排気流量を切り換えて2段階で減圧を行っており、時刻Taに第2段階のチャンバー6内の減圧を開始している。第1の判定は、チャンバー6内の気圧が第1期間T1で第1の閾値(Pα)(または第2の閾値(Pβ))未満にまで減圧されるか否かによりリークの有無を判定する。より具体的には、リーク判定部34で、第1期間T1後の圧力が第1の閾値(Pα)未満であるかどうか判定される(ステップS13)。ステップS13の判定で、第1期間T1後のチャンバー6内の圧力が第1の閾値(Pα)未満であれば、「リークが無い」と判断される(ステップS14)。例えば、
図12に示される実線Aは、第1期間T1で圧力PAにまで降下している。つまり、第1期間T1で第1の閾値(Pα)(例えば、Pα=100Pa)未満となるので、実線Aのように圧力が推移がする場合には、チャンバー6において「リークが無い」と判断されて、第1の判定が終了する。
【0101】
一方で、ステップS13の判定で、第1期間T1後の圧力が第1の閾値(Pα)以上であれば、第2の閾値(Pβ)が、記憶部31から抽出される(ステップS15)。この抽出された第2の閾値(Pβ)は、演算部32での計算に利用される。そして、演算部32のリーク判定部34により、第1期間T1後の圧力と第2の閾値(Pβ)とが比較される。リーク判定部34で、第1期間T1後の圧力が第2の閾値(Pβ)未満であるかどうか判定される(ステップS16)。
【0102】
ステップS16の判定で、第1期間T1後の圧力が第2の閾値(Pβ)未満であれば、「リークの可能性が有る」と判断される(ステップS17)。例えば、
図12に示される点線Bは、第1期間T1で圧力PBにまで下降している。この圧力PBは、第1の閾値(Pα)以上かつ第2の閾値(Pβ)(例えば、Pβ=500Pa)未満となっている。つまり、第1期間T1で第1の閾値(Pα)以上第1¥2の閾値(Pβ)未満となるので、チャンバー6において「リークの可能性が有る」と判断される。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークの可能性が有る」旨の警告のメッセージが表示されてもよい。
【0103】
他方、ステップS16の判定で、第1期間T1後の圧力が第2の閾値(Pβ)以上であれば、「リークが有る」と判断される(ステップS18)。例えば、
図12に示される一点鎖線Cは、第1期間T1で圧力PCまでしか下降していない。この圧力PCは、第2の閾値(Pβ)以上である。つまり、第1期間T1で第2の閾値(Pβ)以上となるので、チャンバー6において「リークが有る」と判断される。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークが有る」旨のアラームのメッセージが表示されてもよい。
【0104】
なお、上記のステップS17において「リークの可能性が有る」との判断であればリーク判定処理が待機され(ステップS19)、ステップS18において「リークが有る」との判断であればリーク判定処理が停止される(ステップS19)。
【0105】
<第2の判定工程>
本実施形態では、上述の第1の判定において、チャンバー6においてリークは無いと判断された場合に、第2の判定の処理が開始される。
【0106】
ここで、第2の判定工程の処理手順について説明する。
図13は、本実施形態の第2の判定処理の流れを示すフロー図である。また、
図14は、常温時の第2の判定におけるチャンバー6内の圧力変化を示す図である。
図14に示す縦軸はチャンバー6内の圧力を示し、横軸は時間を示している。なお、なお、T2は第2期間であり、Tbは第2期間T2の始期であり、Tcは第2期間T2の終期である。また、第2期間T2の始期Tbの圧力と終期Tcの圧力との差をΔPとしている。
【0107】
熱処理装置1においては、第1の判定の後、ゲートバルブ185によって搬送開口部66の閉鎖状態が維持されている。したがって、チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間となっている。この状態で、チャンバー6内への気体の供給を停止しつつ、チャンバー6から気体の排出も停止する(ステップS21)。また、第1の判定の処理によりチャンバー6内は外気と比べて減圧状態になっており、そのままチャンバー6内を減圧状態に維持する。具体的には、制御部3は供給バルブ84を閉止するとともに、排気バルブ93を閉止する。この状態のことを封じ込め状態といい、供給バルブ84および排気バルブ93を閉止する期間を封じ込め期間(
図14参照)という。なお、第2の判定を開始してからの経過時間(第2期間T2)はタイマー35(
図9参照)によって計時される。
【0108】
第2のリーク判定は、第2期間T2でチャンバー6のリーク量が第3の閾値(または第4の閾値)未満となるか否かによりリークの有無を判定する。本実施形態においては、リーク量として、所定期間内のチャンバー6内の圧力変化の量が採用されている。また、本実施形態においては、チャンバー6内を減圧状態に維持し始めてから、一定期間(例えば、1200秒)待機した後の第2期間T2でのチャンバー6の圧力変化の量によりリークの有無が判定される。つまり、封じ込め期間の始期よりも、第2期間T2の始期Tbの方が遅くなっている。また、封じ込め期間の終期と第2期間の終期Tcとが一致している。
【0109】
封じ込め期間の始期よりも、第2期間T2の始期Tbの方が遅くなるように設定する理由は、以下の通りである。例えば、供給バルブ84および排気バルブ93の機種の差異により閉止状態となるタイミングのズレが生じる場合がある。仮に、供給バルブ84または排気バルブ93の閉止状態となるタイミングにズレがあると、供給バルブ84または排気バルブ93自体から漏れるガスによる圧力の変化までリーク有無の判定に影響を及ぼす可能性が高いためである。したがって、封じ込め期間の始期よりも第2期間T2の始期Tbの方が遅くなるように設定して、供給バルブ84と排気バルブ93との機種の差異による閉止状態のタイミングのズレによる影響を低減できる。このため、気体の供給および気体の排出の停止の状態が安定した後にリーク判定処理ができる。これにより、チャンバー6のリークの有無を精度よく検出することができる。
【0110】
第1の判定処理と同様に、チャンバー6内へのガスの流入またはチャンバー6外へのガスの流出の速さは、温度によって異なると考えられ、第2のリーク判定処理もまた、略同一の温度の条件にて行われることが好ましい。ここで、本実施形態においては、所定期間(第2期間T2)減圧状態を維持した場合の待機指定温度(本実施形態においては常温)におけるチャンバー6内の圧力変化の量(リーク量)とリーク有無との関係が予め対応付けられて記憶部31に記憶されている。
【0111】
次に、第3の閾値(Δδ)が、記憶部31から抽出される(ステップS22)。この抽出された第3の閾値(Δδ)は、演算部32での計算に利用される。そして、演算部32のリーク判定部34により、第2期間T2後の圧力と第3の閾値(Δδ)とが比較される。リーク判定のための第2期間T2は、予め制御部3に設定されている(例えば、T2=600秒)。この設定は、操作者によって変更可能であってよい。また、チャンバー6内の圧力は真空圧力計92(
図8参照)によって測定される。そして、第2期間T2でのチャンバー6の圧力変化が第3の閾値(Δδ)(または第4の閾値(Δε))未満となるか否かによりリークの有無を判定する。具体的には、リーク判定部34で、第2期間T2での圧力変化(第2期間T2の始期Tbの圧力と終期Tcの圧力との差ΔP)が第3の閾値(Δδ)未満であるかどうか判定される(ステップS23)。ステップS23の判定で、第2期間T2でのチャンバー6内の圧力変化ΔPが第3の閾値(Δδ)未満であれば、「リークが無い」と判断される(ステップS24)。例えば、
図14に示される実線Aは、第2期間T2でΔPA(>Δδ)(例えば、ΔPA=3Pa,Δδ=4.8Pa)だけの圧力変化が生じている。つまり、第2期間T2で第3の閾値(Δδ)未満となるので、実線Aのような圧力の推移が行われる場合には、チャンバー6において「リークが無い」と判断されて、第2のリーク判定が終了する。
【0112】
一方で、ステップS23の判定で、第2期間T2での圧力変化ΔPが第3の閾値(Δδ)以上であれば、第4の閾値(Δε)が、記憶部31から抽出される(ステップS25)。この抽出された第4の閾値(Δε)は、演算部32での計算に利用される。そして、演算部32のリーク判定部34により、第2期間T2での圧力変化ΔPと第4の閾値(Δε)とが比較される。リーク判定部34で、第2期間T2での圧力変化ΔPが第4の閾値(Δε)未満であるかどうか判定される(ステップS26)。
【0113】
ステップS26の判定で、第2期間T2での圧力変化ΔPが第4の閾値(Δε)未満であれば、「リークの可能性が有る」と判断される(ステップS27)。例えば、
図14に示される点線Bは、第2期間T2でΔPB(<Δε)(例えば、ΔPB=13Pa,Δε=24Pa)だけの圧力変化が生じている。この圧力変化ΔPBは、第3の閾値(Δδ)以上かつ第4の閾値(Δε)未満となっている。つまり、第2期間T2での圧力変化ΔPBが第3の閾値(Δδ)以上かつ第4の閾値(Δε)未満となるので、チャンバー6において「リークの可能性が有る」と判断される。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークの可能性が有る」旨の警告のメッセージが表示されてもよい。
【0114】
他方、ステップS26の判定で、第2期間T2での圧力変化が第3の閾値(Δε)以上であれば、「リークが有る」と判断される(ステップS28)。例えば、
図14に示される一点鎖線Cは、第2期間T2でΔPC(>Δε)(例えば、ΔPC=27Pa)だけの圧力変化が生じている。この圧力変化ΔPCは、第3の閾値(Δε)以上である。つまり、第2期間T2での圧力変化ΔPCが第3の閾値(Δε)以上となるので、チャンバー6において「リークが有る」と判断される。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークが有る」旨のアラームのメッセージが表示されてもよい。
【0115】
なお、上記のステップS27において「リークの可能性が有る」との判断であればリーク判定処理が待機され(ステップS29)、ステップS28において「リークが有る」との判断であればリーク判定処理が停止される(ステップS29)。
【0116】
以上のリーク判定処理において、「リークの可能性が有る」と判断された場合や「リークが有る」と判断された場合には、リーク箇所の確認処理、リーク箇所の修理交換などのメンテナンス処理に移行してもよい。
【0117】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置1の構成は第1実施形態と同様である。また、第2実施形態の熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同様である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、チャンバー6におけるリーク判定処理である。
【0118】
第2実施形態においては、
図9における記憶部31が対応テーブル233(
図15参照)を記憶する点で、第1実施形態と異なる。なお、
図15は、待機指定温度と第1の閾値ないし第4の閾値とを相互に対応付けた対応テーブル233を示す図である。
【0119】
第2実施形態では、
図10におけるステップS4での、所定の待機指定温度は、常温よりも高温である。また、対応テーブル233は、待機指定温度とチャンバー6内の第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、および第4の閾値とを相互に対応付けたものである。この対応テーブル233は、第1の判定や第2の判定が行われるまでに予め作成されている。この対応テーブル233は、待機指定温度と第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、および前記第4の閾値とを相互に対応付けた対応テーブルを作成するテーブル作成工程において作成される。そして、作成された対応テーブル233は記憶部31に記憶される。対応テーブル233は、これまでに得られた実験データ等に基づいて作成されてもよい。
【0120】
対応テーブル233は、
図15に示されるように、所定の待機指定温度として、例えば、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃の温度での第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、および第4の閾値が対応付けられている。このため、チャンバー6内の雰囲気温度が常温に降下するまで待機せずにリーク判定処理を行うことが可能である。このため、リーク判定処理に要する時間を短縮できる。また、様々の雰囲気温度に対応することができるので、リーク判定処理の精度が向上する。ただし、様々な雰囲気温度に応じてリーク判定の条件を第1実施形態のものとは変える必要がある。なお、温度が高くなるほど、ガス密度が小さくなり、排気効率が高くなると考えられる。このため、待機指定温度が高いほど、第1の判定の閾値(第1の閾値(Pα)および第2の閾値(Pβ))の圧力は低く設定される。また、待機指定温度が高いほど、第2の判定の閾値(第3の閾値(Δδ)および第4の閾値(Δε))の圧力変化の値が大きく設定される。
【0121】
例えば、直前の半導体ウェハーWの加熱処理において、雰囲気温度が300℃強まで昇温した場合には、直近の300℃に対応する第1の閾値、第2の閾値、第3の閾値、および第4の閾値でリーク判定処理を行うことができる。具体的には、
図10におけるステップS4で、雰囲気温度が待機指定温度(300℃)にまで到達したときに、リーク判定処理が開始される(ステップS5)。この待機指定温度は、リーク判定処理が開始される直前の雰囲気温度よりも低い温度であることが好ましい。直前の雰囲気温度よりも高い温度であると、チャンバー6内を再加熱する必要があるからである。また、待機指定温度は、対応テーブル233に格納される複数の温度のうち直近の温度が選択されることが好ましい。直近の温度である方が、待機指定温度まで降温するまでの待機時間を低減できるからである。
【0122】
第2実施形態における第1の判定は、第1実施形態と同様に、まずチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間となる状態で、チャンバー6内の気圧を減圧する(ステップS11)。次に、指定された待機指定温度に対応する第1の閾値(Pα)が対応テーブル233から抽出される(ステップS12)。
図15に示すように、例えば、待機指定温度が300℃のときにおける第1の閾値(Pα)として、対応テーブル233から90Paが抽出される。そこで、フローの一例として、待機指定温度が300℃の場合について、以下説明する。
【0123】
次に、リーク判定部34で、第1期間T1後の圧力が第1の閾値(90Pa)未満であるかどうか判定される(ステップS13)。チャンバー6内の圧力が第1期間T1で第1の閾値(90Pa)未満となる場合には、チャンバー6において「リークが無い」と判断される(ステップS14)。そして、第1の判定が終了する。
【0124】
一方で、ステップS13の判定で、第1期間T1後の圧力が第1の閾値(90Pa)以上であれば、次に、指定された待機指定温度に対応する第2の閾値(Pβ)が対応テーブル233から抽出される。
図15に示すように、待機指定温度が300℃のときにおける第2の閾値(Pβ)として、対応テーブル233から450Paが抽出される(ステップS15)。そして、リーク判定部34で、第1期間T1後の圧力が第2の閾値(450Pa)未満であるかどうか判定される(ステップS16)。
【0125】
ステップS16の判定で、第1期間T1後の圧力が第2の閾値(450Pa)未満であれば、「リークの可能性が有る」と判断される(ステップS17)。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークの可能性が有る」旨の警告のメッセージが表示されてもよい。
【0126】
他方、ステップS16の判定で、第1期間T1後の圧力が第2の閾値(450Pa)以上であれば、「リークが有る」と判断される(ステップS18)。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークが有る」旨のアラームのメッセージが表示される。
【0127】
なお、第1実施形態と同様に、上記のステップS17において「リークの可能性が有る」との判断であればリーク判定処理が待機され(ステップS19)、ステップS18において「リークが有る」との判断であればリーク判定処理が停止される(ステップS19)。
【0128】
上述の第1の判定において、「リークが無い」と判断された場合には、第2の判定が行われる。
【0129】
本実施形態における第2の判定は、第1の実施形態と同様に、チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間となっている状態で、チャンバー6内への気体の供給を停止しつつ、チャンバー6から気体の排出も停止する(ステップS21)。
【0130】
次に、第2の判定についても、待機指定温度に対応する第3の閾値(Δδ)が対応テーブル233から抽出される(ステップS22)。
図15に示すように、例えば、待機指定温度が300℃のときにおける第3の閾値Δδとして、対応テーブル233から5.5Paが抽出される。そこで、フローの一例として、本実施形態の第1の判定と同様に待機指定温度が300℃のときについて、以下説明する。
【0131】
リーク判定部34で、第2期間T2(600s)での圧力変化ΔPが第3の閾値(5.5Pa)未満であるかどうか判定される(ステップS23)。ステップS23の判定で、第2期間T2でのチャンバー6内の圧力変化ΔPが第3の閾値(5.5Pa)未満であれば、「リークが無い」と判断される(ステップS24)。そして、第2のリーク判定が終了する。
【0132】
一方で、ステップS23の判定で、第2期間T2での圧力変化ΔPが第3の閾値(5.5Pa)以上であれば、第4の閾値(Δε)が対応テーブル233から抽出される(ステップS25)。
図15に示すように、例えば、待機指定温度が300℃の場合における第4の閾値Δεとして、対応テーブル233から25.1Paが抽出される。そして、リーク判定部34で、第2期間T2での圧力変化ΔPが第4の閾値(25.1Pa)未満であるかどうか判定される(ステップS26)。
【0133】
ステップS26の判定で、第2期間T2での圧力変化ΔPが第4の閾値(25.1Pa)未満であれば、「リークの可能性が有る」と判断される(ステップS27)。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークの可能性が有る」旨の警告のメッセージが表示されてもよい。
【0134】
他方、ステップS26の判定で、第2期間T2での圧力変化が第4の閾値(25.1Pa)以上であれば、「リークが有る」と判断される(ステップS28)。この場合には、例えば、表示部8(
図9参照)に「リークが有る」旨のアラームのメッセージが表示されてもよい。
【0135】
なお、上記のステップS27において「リークの可能性が有る」との判断であればリーク判定処理が待機され(ステップS29)、ステップS28において「リークが有る」との判断であればリーク判定処理が停止される(ステップS29)。
【0136】
このような本実施形態のリーク判定処理によれば、リーク判定処理の行われる温度に対応する第1の閾値(Pα)、第2の閾値(Pβ)、第3の閾値(Δδ)、または第4の閾値(Δε)によりリーク判定処理が行われる。これにより、チャンバー6のリークの有無を精度よく検出することができる。
【0137】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においてリーク判定のために設定されている各閾値は装置の構成や仕様に応じた適宜の値とすることができる。
【0138】
また、上記各実施形態においては、チャンバー6内にアンモニア雰囲気を形成していたが、チャンバー6内にアンモニア等の反応性ガスの雰囲気を形成しない場合(例えば、チャンバー6内が窒素雰囲気とされている場合)であっても、本発明に係る技術を適用することは可能である。もっとも、漏出すると有害な反応性ガスの雰囲気をチャンバー6内に形成する場合の方が本発明に係る技術を好適に適用することができる。
【0139】
また、上記実施形態においては、第2の判定に、チャンバー6内の圧力変化の量が採用されているが、単位時間に移動した気体体積量(単位として、例えば、Pa・m3/sec(パスカルリューベパーセック))が用いられてもよい。この場合には、微少値でも表現し易い点で有益である。
【0140】
また、上記各実施形態においては、第1の判定と第2の判定との両方でリーク判定処理が行われているが、第1の判定または第2の判定のいずれか一方でリーク判定処理が行われても良い。
【0141】
また、上記第2実施形態においては、待機指定温度と第1の判定の閾値(第1の閾値および第2の閾値)および第2の判定の閾値(第3の閾値および第4の閾値)の両方と相互に対応付けた対応テーブル233に基づいてリーク判定処理が行われているが、これに限られない。待機指定温度と第1の判定の閾値および第2の判定の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルに基づいてリーク判定処理が行われてもよい。また同様に、第1の判定の閾値においても第1の閾値と第2の閾値との二種類の閾値の両方と相互に対応付けた対応テーブル233に基づいてリーク判定処理が行われることに限られず、第1の判定の閾値において第1の閾値および第2の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルに基づいてリーク判定処理が行われてもよい。さらに、第2の判定の閾値においても第3の閾値と第4の閾値との二種類の閾値の両方と相互に対応付けた対応テーブル233に基づいてリーク判定処理が行われることに限られず、第2の判定の閾値において第3の閾値および第4の閾値のうちの少なくとも一つとを相互に対応付けた対応テーブルに基づいてリーク判定処理が行われてもよい。
【0142】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。さらに、フラッシュランプFLまたはハロゲンランプHLに変えてLEDが備えられてもよい。
【0143】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【0144】
また、本発明に係る技術は、フラッシュランプアニール装置のみならず、チャンバー内を減圧する装置であれば、ハロゲンランプを使用した枚葉式のランプアニール装置やレーザアニール装置などの他の光源を用いた熱処理装置に適用することも可能である。また、本発明に係る技術は、チャンバー内を減圧する装置であれば、ホットプレートを用いて熱処理を行う装置等光照射以外の熱源を用いた熱処理装置に適用することも可能である。さらに、本発明に係る技術は、熱処理装置に限らず、チャンバー内を減圧して半導体ウェハーWの処理を行う装置に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0145】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
8 表示部
10 移載機構
20 放射温度計
21 透明窓
22 雰囲気温度計
31 記憶部
32 演算部
34 リーク判定部
35 タイマー
36 スケジュール設定部
65 熱処理空間
66 搬送開口部
74 サセプタ
75 保持プレート
76 ガイドリング
77 基板支持ピン
81 ガス供給孔
82 緩衝空間
83 ガス供給管
84 供給バルブ
85 処理ガス供給源
86 ガス排気孔
87 緩衝空間
88 ガス排気管
90 流量調整バルブ
91 自動調整バルブ圧力計
92 真空圧力計
93 排気バルブ
94 圧力自動調整バルブ
95 真空ポンプ
180 ガス供給部
185 ゲートバルブ
190 排気部
233 対応テーブル
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー