(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038683
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】分岐ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20240313BHJP
C08G 63/42 20060101ALI20240313BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/42
C09D167/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142892
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 成人
【テーマコード(参考)】
4J029
4J038
【Fターム(参考)】
4J029AA01
4J029AB04
4J029AC05
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4J029BH01
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4J038DD041
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4J038KA08
4J038MA06
4J038MA10
4J038NA25
4J038NA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的低極性の溶媒や樹脂と相溶性(溶解性)が良好である分岐型のポリエステル樹脂の製造方法を提供することであり、さらに比較的高濃度な溶剤型顔料分散組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】分岐ポリエステル(A)の製造方法であって、3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)とを含む成分を反応させて中間生成物を形成する工程、前記中間生成物と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を反応させる工程を順次行う工程、若しくは、3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を同時に反応させる工程を含有する製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐ポリエステル(A)の製造方法であって、
工程1-1:3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)とを含む成分を反応させて中間生成物を形成する工程、
工程1-2:前記中間生成物と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を反応させる工程、
を順次行う工程を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
請求項1の工程1-1及び1-2の後に、
工程1-3:さらに鎖延長剤(a4)を含む成分を反応させる工程、
を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)の酸価が、10mgKOH/g未満である、請求項1に記載の分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
分岐ポリエステル(A)の製造方法であって、
工程2-1:3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を同時に反応させる工程、
を行う工程を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
請求項4の工程2-1の後に、
工程2-2:さらに鎖延長剤(a4)を含む成分を反応させる工程、
を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)の酸価が、10mgKOH/g未満である、請求項4に記載の分岐ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法で得られた分岐ポリエステル(A)、顔料分散樹脂(B)、顔料(C)、及び有機溶媒(D)を混合し、次いでメディアを用いた顔料分散をして得られる、溶剤型顔料分散組成物の製造方法。
【請求項8】
溶剤型顔料分散組成物の固形分を基準として、分岐ポリエステル(A)を5~70質量%含有する、請求項7に記載の溶剤型顔料分散組成物の製造方法。
【請求項9】
溶剤型顔料分散組成物の全質量を基準として、顔料を5~70質量%含有する請求項7に記載の溶剤型顔料分散組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐ポリエステル及び溶剤型顔料分散組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料やインキ等の分野において、環境対応、省資源、コスト低減などの観点から、有機溶剤の使用量削減が重要な課題となっている。近年はその対策として、塗料中の有機溶剤量を減少させるために塗料の水性化、粉体化、及び高固形分化の開発が進められている。
【0003】
ポリエステル樹脂は塗料やインキ等の分野において幅広く使用されており、例えば、顔料(有機又は無機顔料)の分散時の顔料分散樹脂又は添加樹脂として幅広く用いられており、これら顔料を分散した結果、顔料分散組成物(顔料分散ペーストとも言う)を製造している。
この顔料分散組成物を色の数だけ用意し、目的の塗色になるように混ぜ合わせ、さらに塗料の性能(使用目的)に合わせた樹脂や添加剤等を添加して最終的な着色塗料組成物を製造する。
【0004】
ここで、複数の顔料分散組成物を混ぜ合わせた時、または顔料分散組成物に樹脂や添加剤を混ぜ合わせた時に、顔料の分散安定性が不十分で再凝集したり、流動性が悪かったり、塗膜にしたときの色相がズレたり光沢が不十分だったりする場合があった。このような問題を解決するために、これまで様々な提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1は、酸成分およびアルコール成分から調製され、酸成分が炭素数12以上の直鎖を有する酸をポリエステル樹脂の総モノマー量に基づいて25重量%以下の量で含有するポリエステル樹脂を顔料分散樹脂として提案されているが、相溶性等の性能が十分ではなかった。
さらに近年、地球環境保全の点から塗料の有機溶剤量を低減させ高固形分化することが、塗料業界の急務となっている。高固形分化の手法としては、一般に塗料用樹脂を低分子量化して粘度を下げる方向で検討が進められている。しかしながら、樹脂の分子量を下げると硬化性が低下したり、塗膜性能が低下する等の問題を生じることになる。
塗料の高固形分化を図る手法としては、塗料用樹脂の低分子量化のほかに、塗料の高顔料濃度化(同一量の顔料を分散するのに使用する樹脂量の低減)も挙げられる。しかしながら一般に塗料を高顔料濃度化しようとすると、顔料分散組成物の増粘、顔料分散組成物や塗料中における顔料同士の凝集、さらには塗料化する際のレットダウン安定性の欠如等が起こりやすく、安定な顔料分散組成物や塗料を得ることが困難であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決すべき課題は、比較的低極性の溶媒や樹脂と相溶性(溶解性)が良好である分岐型のポリエステル樹脂を提供することであり、さらに比較的高濃度な溶剤型顔料分散組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造及び特数値を有する分岐ポリエステルを用いることにより上記課題を解決できることを見出した。本発明はかかる新規の知見に基づくものである。
【0009】
従って、本発明は以下の項を提供する。
項1.分岐ポリエステル(A)の製造方法であって、
工程1-1:3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)とを含む成分を反応させて中間生成物を形成する工程、
工程1-2:前記中間生成物と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を反応させる工程、
を順次行う工程を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
項2.前記項1の工程1-1及び1-2の後に、
工程1-3:さらに鎖延長剤(a4)を含む成分を反応させる工程、
を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
項3.前記3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)の酸価が、10mgKOH/g未満である、前記項1に記載の分岐ポリエステルの製造方法。
項4.分岐ポリエステル(A)の製造方法であって、
工程2-1:3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を同時に反応させる工程、
を行う工程を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
項5.前記項4の工程2-1の後に、
工程2-2:さらに鎖延長剤(a4)を含む成分を反応させる工程、
を含有する、分岐ポリエステルの製造方法。
項6.前記3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)の酸価が、10mgKOH/g未満である、前記項1~5のいずれか1項に記載の分岐ポリエステルの製造方法。
項7.前記項1~6のいずれか1項に記載の製造方法で得られた分岐ポリエステル(A)、顔料分散樹脂(B)、顔料(C)、及び有機溶媒(D)を混合し、次いでメディアを用いた顔料分散をして得られる、溶剤型顔料分散組成物の製造方法。
項8.溶剤型顔料分散組成物の固形分を基準として、分岐ポリエステル(A)を5~70質量%含有する、前記項7に記載の溶剤型顔料分散組成物の製造方法。
項9.溶剤型顔料分散組成物の全質量を基準として、顔料を5~70質量%含有する前記項7に記載の溶剤型顔料分散組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法で製造した分岐ポリエステルにより、相溶性(分散安定性、貯蔵安定性を含む)に優れた溶剤型顔料分散組成物を得ることができる。また、特に、溶剤型顔料分散組成物及び/又は溶剤型塗料組成物の高固形分化(高濃度化)を図ることができ、仕上がり性に優れた塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の分岐ポリエステルの製造方法について具体的に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0012】
分岐ポリエステル(A)の製造方法
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエステル(A)は、3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)、ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)、並びに長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)を含む成分を構成成分として含有し、さらに必要に応じて鎖延長剤(a4)を構成成分として含有する。
上記分岐ポリエステル(A)の製造方法としては、下記の2種類の方法(段階反応と一括反応)を用いることができ、いずれも好適に使用できる。
【0013】
第一の態様の製造方法(段階反応)
第一の態様の製造方法(段階反応)としては、
工程1-1:3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)とを含む成分を反応させて中間生成物を形成する工程、
工程1-2:前記中間生成物と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を反応させる工程、
を順次行う工程を含有する、分岐ポリエステルの製造方法である。
【0014】
また、上記工程1-1及び1-2の後に、
工程1-3:さらに鎖延長剤(a4)を含む成分を反応させる工程、
を含有することが好ましい。
なお、本発明の製造方法においては、上記の工程1-1、工程1-2、及び必要に応じて適用できる工程1-3の前後及び/又は間に別の工程を入れることも含まれる。
【0015】
第二の態様の製造方法(一括反応)
第二の態様の製造方法(一括反応)としては、
工程2-1:3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)とジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)と長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)とを含む成分を同時に反応させる工程、
を行う工程を含有する、分岐ポリエステルの製造方法である。
また、上記工程2-1の後に、
工程2-2:さらに鎖延長剤(a4)を含む成分を反応させる工程、
を含有することが好ましい。
なお、本発明の製造方法においては、上記の工程2-1、及び必要に応じて適用できる工程2-2の前後及び/又は間に別の工程を入れることも含まれる。
【0016】
本発明においては、いずれの製造方法も好適に用いることができるが、省工程及び省エネルギー、樹脂の高分子量化抑制、縮合水抑制等の観点から、第二の態様の製造方法(一括反応)を好適に用いることができる。
【0017】
上記第一の態様及び第二の態様における合成条件は、特に限定されるものではないが、例えば、上記工程1-1~1-2及び工程2-1において、90~250℃で、5~10時間加熱し、水酸基とカルボキシル基のエステル化反応(エステル交換反応含む)、及び/又はエポキシ基とカルボキシル基のエステル化反応を行なうことにより合成することができる。その際の触媒として、ジブチルスズオキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどの公知の触媒を使用することができる。
必要に応じて反応することができる工程1-3及び工程2-2の鎖延長剤(a4)の反応(例えば、水酸基とイソシアネート基のウレタン化反応)においても、それ自体既知の触媒(例えば、有機錫触媒、ビスマス触媒、鉛触媒、亜鉛触媒等)を用いて、例えば、60~200℃(高分子量化抑制の観点から、好ましくは60~100℃)で、1~10時間加熱して反応することができる。
以下、上記分岐ポリエステル(A)を構成する成分について詳しく説明する。
【0018】
3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)
上記3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)としては、反応性の官能基を3個以上有し、かつ2個以上の水酸基を有する多価アルコールである。
上記反応性官能基とは、具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及びチオール基からなる群より選ばれる官能基である。
なかでも、上記成分(a1)として、反応性官能基が全て水酸基であり、3個(3官能)以上の水酸基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0019】
3官能の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、3,5,5-トリメチル-2,2-ジヒドロキシメチルヘキサン-1-オール、および1,2,6-ヘキサントリオール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0020】
4官能の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えば、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロールおよびジトリメチロールエタン等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0021】
5官能以上の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、キシリトール、及びソルビトール等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0022】
また、2官能以上の水酸基と1官能以上のカルボキシル基を有する多価アルコールとしては、例えば、ジヒドロキシカルボン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)、トリヒドロキシカルボン酸、及びジヒドロキシジカルボン酸等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0023】
また、2官能以上の水酸基と1官能以上のアミノ基を有する多価アルコールとしては、例えば、ジヒドロキシアミン(例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン)等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0024】
なかでも、反応性の観点から、3官能の水酸基を有する多価アルコールを用いることが好ましい。
【0025】
また、2官能の多価アルコール及び/又は単官能アルコールも、上記3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)と併用する形で必要に応じて使用できる。
【0026】
2官能の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0027】
単官能アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0028】
上記分岐ポリエステル(A)を構成する成分としては、低分岐になることから2官能の多価アルコール及び/又は単官能アルコールを実質的に含まないことが好ましく、特に単官能アルコールを実質的に含まないことが好ましい。上記の「実質的に含まない」とは、3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)の含有量を基準として、含有量が、好ましくは10mol%以下、より好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは1mol%以下、特に好ましくは0mol%のことである。
【0029】
ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)
上記ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)は、具体的には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、又はこれらの酸無水物などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。なかでも、反応性の観点と反応において縮合水を出さない観点からジカルボン酸無水物が好ましい。
縮合水が出ると、例えば、鎖延長剤(a4)としてイソシアネート化合物を使用している場合に縮合水とイソシアネートが反応して、イソシアネート基が一部失活してしまう。
【0030】
また、3官能以上の多価カルボン酸及び/又は単官能のカルボン酸も、上記ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)と併用する形で必要に応じて使用できる。
【0031】
3官能以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0032】
単官能のカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0033】
上記分岐ポリエステル(A)を構成する成分としては、分岐した枝部分の高分子量化(疎水化)を促進する観点から、単官能のカルボン酸は少ないことが好ましい。ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)の含有量を基準として、単官能のカルボン酸の含有量が、好ましくは50mol%以下、より好ましくは20mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下、特に好ましくは0mol%であることが好適である。
また、ゲル化を抑制する観点から、3官能以上の多価カルボン酸を実質的に含まないことが好ましい。上記の「実質的に含まない」とは、ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)の含有量を基準として、好ましくは10mol%以下、より好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは1mol%以下、特に好ましくは0mol%のことである。
【0034】
長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)
上記長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)は、炭素数4以上の炭化水素基を有するモノエポキシド化合物のことであり、分岐ポリエステル(A)を疎水化する事ができ相溶性が向上する。具体的には、例えば、ピバル酸グリシジルエステル、ヘキサン酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、2-エチルヘキサン酸グリシジルエステル、イソノナン酸グリシジルエステル、デカン酸グリシジルエステル、ウンデカン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、ミリスチン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、ネオデカン酸モノグリシジルエステル)などのグリシジルエステル;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル;及びスチレンオキシド、AOEX24(ダイセル化学工業製、α-オレフィンモノエポキシド混合物)などのα-オレフィンモノエポキシドを挙げることができる。
【0035】
また、上記炭素数4以上の炭化水素基には、例えば、水酸基などの置換基を有しているものも包含される。このような化合物として、具体的には、例えば、1,2-エポキシオクタノール、ヒドロキシオクチルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0036】
長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)は、1種を単独で又は2種以上を併用できる。なかでも、相溶性の観点から、炭素数の下限は6以上が好ましく、炭素数6以上かつ30以下の炭化水素基を有するモノエポキシド化合物がより好ましく、炭素数8以上かつ20以下のものが更に好ましい。
【0037】
鎖延長剤(a4)
上記鎖延長剤(a4)としては、上記分岐ポリエステル(A)同士を繋ぐことができる反応性官能基を有する化合物であれば好適に使用でき、ゲル化を防ぐために該反応性官能基は化合物中に2個有するものが好ましい。具体的には、例えば、ジイソシアネート化合物、ジフェニルカーボネート等のカーボネート化合物、珪酸エステル化合物等の鎖延長剤を使用しても良く、なかでも、樹脂骨格中にウレタン結合が生成することにより物性を向上させることができるためジイソシアネート化合物が好ましい。
【0038】
上記ジイソシアネート化合物としては、2個のイソシアネート基を有する化合物であればそれ自体既知のものを制限なく使用する事ができ、具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0039】
上記カーボネート化合物としては、具体的には、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0040】
上記珪酸エステル化合物としては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシラン等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
【0041】
上記分岐ポリエステル(A)の特数値としては、塗料化した場合に架橋剤と反応して各種塗膜性能を満足させる観点から、分岐ポリエステル(A)の水酸基価が、1~200mgKOH/gであることが好ましく、10~140mgKOH/gであることがより好ましく、20~100mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0042】
また、分岐ポリエステル(A)の酸価が、50mgKOH/g未満であるのが好ましく、10mgKOH/g未満であることがより好ましく、0.1mgKOH/g以上、かつ10mgKOH/g未満であることが更に好ましく、0.1mgKOH/g以上、かつ5mgKOH/g未満であることが特に好ましい。
本発明の分岐ポリエステル(A)は、溶剤型顔料分散組成物において相溶性を向上させる低極性の樹脂であるため、極性が高くなる酸価は低い方が好ましい。
【0043】
また、分岐ポリエステル(A)の数平均分子量は、500~50,000程度であるのが好ましく、1,000~10,000程度であるのがより好ましく、1,400~5,000程度であるのが更に好ましい。
【0044】
また、相溶性と樹脂の合成反応の観点から、分岐ポリエステル(A)の分岐度が、2.5以上かつ7以下であることが好ましく、3.0以上かつ6.5以下であることがより好ましく、3.5以上かつ5.5以下であることがさらに好ましい。
ここで、本発明の「分岐度」とは、樹脂原料がすべて反応した場合の樹脂分子1つに関する平均の理論値であり、多価アルコール(a1)及び鎖延長剤(a4)による樹脂骨格の分岐の数で計算するものであり、樹脂末端の分岐(例えば、モノエポキシド化合物の末端炭化水素基に分岐構造があった場合など)は考慮されない。
また、多価アルコール(a1)の反応性官能基数及び鎖延長剤(a4)による鎖延長剤で樹脂末端同士が繋がれた場合、その繋がれた末端の数は差し引くものである。
具体的には、例えば、分岐ポリエステルの原料として、3官能の多価アルコールを1モル、ジカルボン酸を3モル、モノエポキシド化合物を3モル使用した場合の樹脂の分岐度は3となる。さらに追加反応で鎖延長剤としてジイソシアネートを0.5モル使用した場合の分岐度は4となる。
また、樹脂骨格に分岐がない樹脂(末端が2個)の分岐度は2となる。
【0045】
尚、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0046】
3官能以上の反応性官能基を有する多価アルコール(a1)、ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物(a2)、長鎖炭化水素基を有するモノエポキシド化合物(a3)並びに鎖延長剤(a4)の配合量としては下記の通りである。
成分(a2)の配合量としては、成分(a1)の総量を基準として、成分(a2)が、100mol%以上であることが好ましく、100mol%~500mol%であることがより好ましく、200mol%~400mol%であることがさらに好ましい。
成分(a3)の配合量としては、成分(a2)の総量を基準として、成分(a3)が、30mol%~300mol%であることが好ましく、50mol%~200mol%であることがより好ましく、75mol%~150mol%であることがさらに好ましい。
成分(a1)の総量を基準とした場合の成分(a3)の配合量としては、成分(a3)が、100mol%以上であることが好ましく、100mol%~500mol%であることがより好ましく、200mol%~400mol%であることがさらに好ましい。
また、成分(a4)の配合量としては、成分(a1)の総量を基準として、0mol%~300mol%であることが好ましく、20mol%~200mol%であることがより好ましく、40mol%~100mol%であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエステル(A)が種々の樹脂成分と相溶性(分散性、貯蔵安定性)に優れる理由としては詳しく分かっていないが、比較的低極性のアルキル成分が分岐樹脂末端に存在し、また、比較的低酸価(低極性)であるためだと考えられる。
さらには比較的低分子量であることが相溶性や高濃度化に寄与していると考えられる。
【0048】
また、本発明の製造方法で得られた分岐ポリエステルは、特に溶剤型顔料分散組成物向けの分岐ポリエステルとして好適に使用することができるため、溶剤型顔料分散組成物向け分岐ポリエステルと言い換えることもできる。
以下に、溶剤型顔料分散組成物の製造方法及びその具体的組成について説明する。
【0049】
溶剤型顔料分散組成物の製造方法
本発明の溶剤型顔料分散組成物の製造方法としては、上記分岐ポリエステル(A)、顔料分散樹脂(B)、顔料(C)、及び有機溶媒(D)を含む成分を混合し、次いで公知の分散機を制限なく使用する事ができ、例えば、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ナノマイザー等の分散機を用いることができる。特にメディアを用いた分散方法が好ましい。
【0050】
また、分岐ポリエステル(A)に関しては、顔料分散前及び/又は顔料分散後に配合しても良いが、好ましくは顔料分散前に成分(B)、成分(C)、及び成分(D)と共に混合して、これらと一緒に顔料分散することが好ましい。
【0051】
顔料分散樹脂(B)
上記顔料分散樹脂としては、特に限定されず、アクリル樹脂系、成分(a1)以外のポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂等を好適に用いることができ、アニオン性、カチオン性、及びノニオン性等の吸着官能基を有するものが好ましい。また、市販品を使用することもできる。
【0052】
顔料(C)
上記顔料(C)としては、公知の顔料を制限なく使用でき、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができる。
【0053】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ベンガラ、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
【0054】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0055】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム顔料とリーフィング型アルミニウム顔料があるが、いずれも使用することができる。
【0056】
有機溶媒(D)
上記有機溶媒(D)としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ミネラルスプリット、シクロブタンなどの炭化水素溶剤;ソルベントナフサ、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶剤など、従来公知の溶剤を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
また、少量であれば溶解する範囲内で水を含有する事ができ、溶媒全体の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
その他の成分
上記溶剤型顔料分散組成物は、その他の成分として、各種樹脂や添加剤等を含有する事ができる。
【0058】
上記樹脂としては、例えば、分岐ポリエステル(A)以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、及びこれらの複合樹脂などが挙げられる。
【0059】
上記添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等)、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン類等)、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、防錆剤、キレート剤(アセチルアセトン等)、脱水剤、中和剤、可塑剤等の公知の塗料用添加剤を含むことができる。
【0060】
なお、本発明の製造方法で得られる溶剤型顔料分散組成物は、調色用の顔料分散組成物であるため、硬化剤は実質的に含有しないことが好ましく、硬化剤は塗料製造時に混合することが好ましい。
【0061】
以上に述べた溶剤型顔料分散組成物は1種類の着色顔料を含有する組成物であることができる。
【0062】
上記溶剤型顔料分散組成物の固形分としては、20~85質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、35~75質量%が更に好ましい。
また、溶剤型顔料分散組成物は高濃度の顔料を含有することが求められており、溶剤型顔料分散組成物の全質量を基準として、顔料(C)を5~70質量%含有することが好ましく、15~65質量%含有することがより好ましく、20~60質量%含有することが更に好ましい。
また、溶剤型顔料分散組成物の固形分を基準として、分岐ポリエステル(A)を5~70質量%含有することが好ましく、7~60質量%含有することがより好ましく、10~55質量%含有することが更に好ましい。
また、溶剤型顔料分散組成物の固形分を基準として、顔料分散樹脂(B)を1~50質量%含有することが好ましく、2~35質量%含有することがより好ましく、3~20質量%含有することが更に好ましい。
【0063】
溶剤型塗料組成物の製造方法
本発明の第二の態様として、上記溶剤型顔料分散組成物を複数種(複数色)準備して、目的の塗色となるように混合し、さらに目的に応じたベース塗料、樹脂、及び/又は添加剤等と混合して溶剤型塗料組成物を製造することができる。なお、上記ベース塗料とは、着色顔料の含有していない各種樹脂や添加剤を含有した塗料組成物、または白色の各種樹脂や添加剤を含有した塗料であり、必要に応じて体質顔料を含有することができる。
上記溶剤型塗料組成物の製造方法としては、調合タンクに本発明の溶剤型顔料分散組成物(複数種類)と、必要に応じてベース塗料、樹脂、及び/又は添加剤等を入れ、回転式攪拌翼で十分に攪拌混合して調色した塗料組成物を得ることができる。
【0064】
また、本発明の溶剤型顔料分散組成物においては相溶性が良好であるため、回転式攪拌翼による混合を用いない混合方法(調色方法)も好適に使用できる。
例えば、上記混合工程において、同一塗料缶に本発明の溶剤型顔料分散組成物(複数種)と、必要に応じてベース塗料、樹脂、及び/又は添加剤等を添加し、塗料缶の蓋を閉めて缶を振って均一に混合する混合方法(調色方法)によって溶剤型塗料組成物を得ることができる。
上記混合方法によって調合タンクを使用せずに製品である塗料缶が製造できるため、塗料を効率的及び安価に製造する事ができる。また、調合タンクの洗浄による洗浄溶剤の発生が低減できる。
【0065】
上記溶剤型塗料組成物としては、最終的に硬化剤と混合して、被塗物に塗装し、硬化剤により架橋された塗膜になることが好ましい。硬化剤としてはメラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物などが好ましい。
【0066】
上記溶剤型塗料組成物は、例えば、自動車、電気製品、鋼製家具、事務用品、建材、建築物、橋梁などの塗料用途として制限なしに適用でき、インキ及びインクジェット用途を除くものである。
【実施例0067】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0068】
分岐ポリエステル(A)の製造
実施例(1-1)
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、トリメチロールプロパン137部、無水フタル酸444部、及びネオデカン酸モノグリシジルエステル735部を仕込み、180℃で3時間反応させた。(縮合水は出なかった)
次いで100℃でヘキサメチレンジイソシアネート84部を2時間反応させ、その後、冷却しつつ「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)を添加した。その結果、酸価3mgKOH/g、水酸基価83mgKOH/g、数平均分子量2400、分岐度4.0である固形分50%の分岐ポリエステル(A-1)溶液を得た。
【0069】
実施例(1-16)
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、トリメチロールプロパン137部、及び無水フタル酸444部を仕込み、180℃で3時間反応させた。(若干量の縮合水が出た)
次いで、ネオデカン酸モノグリシジルエステル735部を仕込み、180℃で3時間反応させた。続いて、100℃でヘキサメチレンジイソシアネート84部を2時間反応させ、その後、冷却しつつ「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)を添加した。その結果、酸価3mgKOH/g、水酸基価83mgKOH/g、数平均分子量2400、分岐度4.0である固形分50%の分岐ポリエステル(A-16)溶液を得た。
【0070】
実施例(1-2)~(1-15)、比較例(1-1)及び(1-2)
下記表1の種類及び配合量とする以外は実施例1と同様にしてポリエステル(A-2)~(A-15)、(A-17)、及び(A-18)を製造した。樹脂の特数値を表中に示す。
【0071】
【0072】
TMP:トリメチロールプロパン
G:グリセリン
PE:ペンタエリスリトール
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
1,6HD:1,6-ヘキシレンジオール
HHPA:ヘキサヒドロ無水フタル酸
PA:無水フタル酸
BA:安息香酸
NDGE:ネオデカン酸モノグリシジルエステル
BGE:n-ブチルグリシジルエーテル
HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
上記表1中の略称名は上記の通りである。
【0073】
製造例1 顔料分散樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた製造フラスコに「スワゾール1500」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)300部を仕込み、115°Cまで昇温し、窒素気流中攪拌混合しながら下記組成のモノマー組成物を3時間かけて滴下した。
<モノマー組成物>
n-ブチルメタクリレート 450部、
2-エチルヘキシルメタクリレート 250部、
エチルアクリレート 150部、
ヒドロキシエチルメタクリレート 100部、
ジメチルアミノエチルメタクリレート 40部、
メタクリル酸 10部、
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 12部、
<触媒混合液>
「スワゾール1500」 300部、
2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 5部、
次いで上記触媒混合液を同温度で1時間かけて滴下し、115°Cで1時間熟成した後、
「スワゾール1500」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)を添加して、固
形分50%の顔料分散樹脂溶液を得た。
【0074】
溶剤型顔料分散組成物の製造
実施例1A
実施例1-1で得られたポリエステル樹脂(A-1)溶液20g(固形分10g)、製造例1で得られた顔料分散樹脂溶液10g(固形分5g)、カーボンブラック25g、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)30gを225mlの広口ガラス瓶に入れ、分散メディアとして直径約1.5mm径のガラズビーズを100g加えて密閉し、DASH2000-K DISPERSER(商品名、LAU社製、振とう型ペイントコンディショナー)にて60分間分散して、溶剤型顔料分散組成物(X-1A)を得た。
【0075】
実施例1B
上記実施例1Aである溶剤型顔料分散組成物(X-1A)のカーボンブラック25gを、ベンガラ35gに置き換えて同様にして製造した色違いの溶剤型顔料分散組成物(X-1B)を得た。
【0076】
実施例2A~17A及び比較例1A~3A
下記表2の配合(樹脂の種類と配合量)とする以外は実施例1Aの溶剤型顔料分散組成物(X-1A)と同様にして、溶剤型顔料分散組成物(X-2A)~(X-20A)を得た。
【0077】
実施例2B~17B及び比較例1B~3B
下記表2の配合(樹脂の種類と配合量)とする以外は実施例1Bの溶剤型顔料分散組成物(X-1B)と同様にして、溶剤型顔料分散組成物(X-2B)~(X-20B)を得た。
【0078】
すなわち、カーボンブラックを含有する黒色系(Aシリーズ)の顔料分散組成物(X-1A)~(X-20A)と、ベンガラを含有する赤色系(Bシリーズ)の顔料分散組成物(X-1B)~(X-20B)をそれぞれ製造した。
【0079】
【0080】
なお、上記表2中の配合量は固形分の値である。
また、上記表2中に後述する評価試験の結果を示す。(実施例1Cは、実施例1Aと実施例1Bの溶剤型顔料分散組成物をそれぞれ混合した成分を含む塗料を評価した評価結果である。その他の実施例及び比較例も同様にして評価した。)
本発明の溶剤型顔料分散組成物(溶剤型塗料組成物)においては、全ての評価試験に合格する必要がある。各評価試験の「×」が不合格であり、それ以外は合格である。
【0081】
<評価試験>
塗膜外観
関西ペイント社製「セラMレタン白」(商品名、アクリル/ウレタン系弱溶剤塗料)固形分100部に対し、実施例及び比較例で得られたカーボンブラックを含有する黒色系(Aシリーズ)の顔料分散組成物を固形分10部とベンガラを含有する赤色系(Bシリーズ)の顔料分散組成物を固形分10部配合し、ディスパー攪拌を30分して塗料組成物(ディスパー攪拌品)を製造した。
次いでアプリケーターで乾燥塗膜50μmとなるように塗装し、室温で3日間乾燥した後、塗膜の外観を下記基準で目視にて評価した。
○:ツヤ、鮮映性がすべて非常に良好、
△:ツヤ、鮮映性のいずれかが、やや劣る、
×:ツヤ、鮮映性の両方が、顕著に劣る。
【0082】
缶内調色性
関西ペイント社製「セラMレタン白」(商品名、アクリル/ウレタン系弱溶剤塗料)固形分100部に対し、実施例及び比較例で得られたカーボンブラックを含有する黒色系(Aシリーズ)の顔料分散組成物を固形分10部となるように塗料缶に混入し、さらにベンガラを含有する赤色系(Bシリーズ)の顔料分散組成物を固形分10部となるように塗料缶に混入した。続いて、蓋をして20分間缶を振って混合し、塗料組成物(缶内調色品)を製造した。
また、同じ配合でディスパー攪拌を30分した塗料組成物(ディスパー攪拌品)を別に製造した。
上記の通り、2種類の方法で混合した各塗料組成物を製造後1時間以内にブリキ板にアプリケーターで乾燥塗膜50μmとなるように塗装し、下記基準で目視にて評価した。
〇:缶内調色品とディスパー攪拌品による色差の違いが見られない、
△:缶内調色品とディスパー攪拌品による色差の違いが若干確認される、
×:缶内調色品とディスパー攪拌品による色差の違いが顕著に確認される。
【0083】
調色安定性(貯蔵安定性)
上記塗膜外観の評価試験で製造した塗料組成物(ディスパー攪拌品)を用いて製造後1時間以内にブリキ板にスプレー塗装(乾燥塗膜50μm)し、室温にて3日間乾燥後、同じ塗料組成物を用いてハケ及びローラーで塗装した。下記基準で目視にて評価した。本評価では貯蔵安定性のほかに塗装種(ずり速度などの違い)による色分かれ性を見ることができる。
〇:スプレー、ハケ、ローラーによる塗装面に色差の違いが見られない。
△:スプレー、ハケ、ローラーによる塗装面に色差の違いが若干確認される。
×:スプレー、ハケ、ローラーによる塗装面に色差の違いが顕著に確認される。