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特開2024-38684風力発電設備の点検方法および無人航空機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038684
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】風力発電設備の点検方法および無人航空機
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240313BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20240313BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20240313BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240313BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240313BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D7/04 E
B64C27/04
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64D47/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142894
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】森井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】角田 恵
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB03
3H178BB56
3H178DD31Z
3H178DD70X
3H178EE10
3H178EE32
(57)【要約】
【課題】洋上など遠距離にある風力発電設備を、自律飛行する無人航空機によって点検する方法、およびこの点検方法に利用する無人航空機の構成を提供する。
【解決手段】無人航空機に設けられたコントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸の方向を取得する。コントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと同じ側にある少なくとも1つの表側の円の円周に沿って、無人航空機を移動させながら、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードを撮影させる。コントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸と同一の方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと反対側にある少なくとも1つの裏側の円の円周に沿って、無人航空機を移動させながら、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードを撮影させる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備の点検方法であって、
無人航空機に設けられたコントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、
前記コントローラが、前記第1の時点における前記風車のブレードの回転軸と同一方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと同じ側にある少なくとも1つの表側の円の円周に沿って、前記無人航空機を移動させながら、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードを撮影させるステップと、
前記コントローラが、前記第1の時点における前記風車のブレードの回転軸と同一の方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと反対側にある少なくとも1つの裏側の円の円周に沿って、前記無人航空機を移動させながら、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードを撮影させるステップと、備えた風力発電設備の点検方法。
【請求項2】
前記中心軸の鉛直方向の位置は、前記回転軸の鉛直方向の位置と同じである、請求項1記載の風力発電設備の点検方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの表側の円は、2つの円を含み、前記少なくとも1つの裏側の側の円は、2つの円を含む、請求項1記載の風力発電設備の点検方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの表側の円は、第1の円および第2の円であり、
前記第1の円の中心と前記第2の円の中心とを結ぶ線分の中点を前記回転軸が通り、
前記少なくとも1つの裏側の円は、第3の円および第4の円であり、
前記第3の円の中心と前記第4の円の中心とを結ぶ線分の中点を前記回転軸が通る、請求項3記載の風力発電設備の点検方法。
【請求項5】
風力発電設備の点検方法であって、
無人航空機に設けられたコントローラが、第1の時点において、風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、
前記コントローラが、前記第1の時点における前記回転軸と同一方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと同じ側にある第1の円の周囲に沿って前記無人航空機を移動させ、前記無人航空機の前記移動中に、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、
前記無人航空機に設けられたコントローラが、第2の時点において、前記風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、
前記コントローラが、前記第2の時点における前記回転軸と同一方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと同じ側にある第2の円の周囲に沿って前記無人航空機を移動させ、前記無人航空機の前記移動中に、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、
前記無人航空機に設けられたコントローラが、第3の時点において、前記風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、
前記コントローラが、前記第3の時点における前記回転軸と同一方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと反対側にある第3の円の周囲に沿って前記無人航空機を移動させ、前記無人航空機の前記移動中に、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、
前記無人航空機に設けられたコントローラが、第4の時点において、前記風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、
前記コントローラが、前記第4の時点における前記回転軸と同一方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと反対側にある第4の円の周囲に沿って前記無人航空機を移動させ、前記無人航空機の前記移動中に、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、を備えた、風力発電設備の点検方法。
【請求項6】
前記風車のブレードは回転可能であり、
前記風車の緊急停止の時点において、風車のコントローラが、風の方向と前記ブレードの風受け面とが平行になるように前記ブレードのピッチ角を調整するステップを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の風力発電設備の点検方法。
【請求項7】
前記風車は、洋上に設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の風力発電設備の点検方法。
【請求項8】
無人航空機であって、
前記無人航空機を推進および空中停止させる推進機構と、
カメラと、
前記推進機構および前記カメラを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
風車のブレードの回転軸の方向を取得し、
前記風車のブレードの回転軸と同一方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと同じ側にある少なくとも1つの表側の円の周囲に沿って、前記無人航空機を移動させ、前記風車のブレードの回転軸と同一の方向の中心軸を有し、前記風車のタワーに対して前記ブレードと反対側にある少なくとも1つの裏側の円の周囲に沿って、前記無人航空機を移動させ、
前記無人航空機の前記移動中に、前記無人航空機に搭載されたカメラに、前記風車のブレードの点検用画像を撮影させる、無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電設備の点検方法および無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電の導入拡大およびコスト低減は、世界的に急速に進んでいる。特に、陸上風力発電の導入可能な適地が限定的である日本において、洋上風力発電の導入拡大は不可欠である。
【0003】
洋上風力発電設備のライフサイクルコストにおいて、建設後の運用費および維持管理費の構成比率は無視できない。近年、タービンおよび構造物などの建設に関係するコストの低減に伴い、運用・維持管理費の割合は、建設に関係するコストの割合に匹敵しつつある。したがって、定期点検および緊急発電停止後の臨時点検などに要する時間およびコストを低減することは、風力発電設備の稼働率を高め、発電コストを低減するために極めて重要である。
【0004】
従来、風力発電設備における風車のブレードを点検する際には、ハブから垂下させたロープを利用して作業員がブレードに沿って移動しながら、目視等で損傷の有無を確認していた。このため、点検作業に多くの時間を要していた。
【0005】
そこで、作業員の負担を減らし、点検時間およびコストを低減するために、ドローンなどの無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を利用して、風力発電設備を点検する方法が種々提案されている(たとえば、特開2019-73999号公報(特許文献1)を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-73999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
洋上風力発電設備において洋上の風車が落雷等を受けたために設備が緊急停止した場合、運転再開のためには臨時で設備の外観点検を行う必要がある。従来、外観点検のために船舶で洋上の設備まで向かう必要があり、この移動にも時間を要していた。さらに、波浪の程度によっては、洋上の設備に船舶で近付けない場合もあった。
【0008】
船舶による移動に代えて、陸上の拠点施設と洋上の風力発電設備との間でUAVを往復させて、UAVによって風車を点検することは、原理的には可能であるが、実際上は多くの課題を有している。課題の1つは、風力発電設備をUAVの自律飛行によって点検する具体的手順が明らかでないという点である。自律飛行ではなく、陸上の拠点施設から洋上のUAVをリアルタイムで遠隔制御しようとすると、通信遅延により制御にタイムラグが生じる。このため、制御指令がUAVに到達した時点でUAVの周囲の状況が変化している場合には、UAVを意図した通りに遠隔制御できない。
【0009】
同様の課題は、山岳地域などの陸上の僻地に設けられた風力発電設備の点検の場合にも生じ得る。従来技術は、風車の目視が容易な近距離地点からUAVを遠隔制御する場合を想定しており、上記の課題を解決するものではない。
【0010】
したがって、本開示の目的の1つは、洋上など目視が困難なほど遠距離にある風力発電設備を、自律飛行する無人航空機によって点検する方法、およびこの点検方法に利用する無人航空機の構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面における風力発電設備の点検方法は、無人航空機に設けられたコントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、コントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと同じ側にある少なくとも1つの表側の円の円周に沿って、無人航空機を移動させながら、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードを撮影させるステップと、コントローラが、第1の時点における風車のブレードの回転軸と同一の方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと反対側にある少なくとも1つの裏側の円の円周に沿って、無人航空機を移動させながら、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードを撮影させるステップと、備える。
【0012】
本開示の一局面における風力発電設備の点検方法は、無人航空機に設けられたコントローラが、第1の時点において、風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、コントローラが、第1の時点における回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと同じ側にある第1の円の周囲に沿って無人航空機を移動させ、無人航空機の移動中に、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、無人航空機に設けられたコントローラが、第2の時点において、風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、コントローラが、第2の時点における回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと同じ側にある第2の円の周囲に沿って無人航空機を移動させ、無人航空機の移動中に、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、無人航空機に設けられたコントローラが、第3の時点において、風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、コントローラが、第3の時点における回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと反対側にある第3の円の周囲に沿って無人航空機を移動させ、無人航空機の移動中に、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップと、無人航空機に設けられたコントローラが、第4の時点において、風車のブレードの回転軸の方向を取得するステップと、コントローラが、第4の時点における回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと反対側にある第4の円の周囲に沿って無人航空機を移動させ、無人航空機の移動中に、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードの点検用画像を撮影させるステップとを備える。
【0013】
本開示の他の局面における無人航空機は、無人航空機を推進および空中停止させる推進機構と、カメラと、推進機構およびカメラを制御するコントローラとを備える。コントローラは、風車のブレードの回転軸の方向を取得し、風車のブレードの回転軸と同一方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと同じ側にある少なくとも1つの表側の円の周囲に沿って、無人航空機を移動させ、風車のブレードの回転軸と同一の方向の中心軸を有し、風車のタワーに対してブレードと反対側にある少なくとも1つの裏側の円の周囲に沿って、無人航空機を移動させ、無人航空機の移動中に、無人航空機に搭載されたカメラに、風車のブレードの点検用画像を撮影させる。
【発明の効果】
【0014】
上記の一局面および他の局面によれば、洋上など目視が困難なほど遠距離にある風力発電設備を、自律飛行する無人航空機によって点検できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ドローンの構成例を概念的に示す外観図である。
図2図1のドローンの構成を示す機能ブロック図である。
図3】洋上風力発電設備の風車の構成例を概念的に示す図である。
図4】拠点施設に設けられた端末装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図5】第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40に対して斜め方向から見た図である。
図6】第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の正面方向から見た図である。
図7】第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の裏側方向から見た図である。
図8】第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の側面方向から見た図である。
図9】第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の上方から見た図である。
図10】第1の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
図11】第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40に対して斜め方向から見た図である。
図12】第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の正面方向から見た図である。
図13】第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の裏側方向から見た図である。
図14】第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の側面方向から見た図である。
図15】第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の上方から見た図である。
図16】第2の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
図17】第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40に対して斜め方向から見た図である。
図18】第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の正面方向から見た図である。
図19】第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の裏側方向から見た図である。
図20】第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の側面方向から見た図である。
図21】第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の上方から見た図である。
図22】第4の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
図23】第5の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面を参照して詳しく説明する。以下では、UAVを利用して洋上の風車を点検する場合を例に挙げて説明するが、山岳地域などの陸上の僻地に設けられた風車を点検する場合も同様である。また、UAVとしてドローンを例に挙げて説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない場合がある。
【0017】
[第1の実施形態]
(ドローンの構成例)
図1は、ドローンの構成例を概念的に示す外観図である。図1(A)は、ドローン10を正面から見た外観図を示し、図1(B)は、ドローン10を右側面から見た外観図を示す。
【0018】
図2は、図1のドローンの構成を示す機能ブロック図である。図2では、図1の本体部11の内部構成の一例がさらに詳細に示されている。
【0019】
図1および図2を参照して、ドローン10は、本体部11の上部に腕部12を介して接続されたプロペラモータ13およびプロペラ14と、本体部11の下部に取り付けられた脚部22とを備える。腕部12の内部には、プロペラモータ13を駆動するためのモータ駆動回路15が設けられている。さらに、ドローン10は、本体部11の下部に取り付けられたエンジン16および発電機17と、ジンバル19,21をそれぞれ介して本体部11の下部に搭載されたカメラ18,20と、本体部11の上部に取り付けられたLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)センサ24とを備える。
【0020】
図1の例では、プロペラモータ13およびプロペラ14は4セット設けられているが、これに限定されない。各プロペラモータ13の回転速度を制御することにより、ドローン10の垂直方向の上昇および下降、任意の斜め方向の上昇および下降、空中停止、前進、後退、右移動、左移動、右回転、左回転などが可能である。すなわち、プロペラモータ13およびプロペラ14によって、ドローン10を推進および空中停止させる推進機構23が構成される。
【0021】
発電機17は、エンジン16によって駆動されることにより、ドローン10の動作に必要な電力を生成する。これにより、長時間および低気温でのドローン10の飛行が可能になる。
【0022】
カメラ18は、ドローン10の前方を撮影するための前方用カメラ18であり、カメラ20は、ドローン10の直下を撮影するための直下用カメラ20である。前方用カメラ18は、点検用画像を撮影するための高解像度のカメラ18Aと、FPV(First Person View:一人称視点)用の動画像を撮影するための低解像度のカメラ18Bとを含む。同様に、直下用カメラ20は、点検用画像を撮影するための高解像度のカメラ20Aと、FPV用画像を撮影するための低解像度のカメラ20Bとを含む。低解像度のカメラ18B,20Bによって撮影された動画像は、拠点施設の端末装置70に送信される。これにより、拠点施設の点検員は、カメラ18B,20Bで撮影された映像をリアルタイムで見ることができる。なお、カメラ18,20の撮影方向は、それぞれジンバル19,21を構成するアクチュエータによって調整できる。ジンバル19,21を構成するアクチュエータは拠点施設の端末装置70からの信号でも調整できる。
【0023】
ジンバル19,21は、それぞれカメラ18,20の向きを3次元で調整できる電動アクチュエータである。ジンバル19,21は、加速度センサおよび角速度センサの検出値に基づいて、ドローン10の姿勢が変化してもカメラ18,20の撮像方向それぞれ一定に保つことができる。
【0024】
LiDARセンサ24は、パルス状のレーザー光を走査させることにより、対象物からの反射光に基づいて、対象物までの距離および角度を検出する。LiDARセンサ24に代えて他の距離センサを用いても構わない。
【0025】
図2に示すように、本体部11は、コントローラ30、記憶装置31、慣性計測ユニット32、送受信機33、GPS(Global Positioning System)受信機34、電源回路35、蓄電池36などを内蔵する。
【0026】
コントローラ30は、モータ駆動回路15、カメラ18、LiDARセンサ24などの動作を制御する。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、および不揮発性メモリを含むマイクロコンピュータによって構成されてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用回路によって構成されてもよい。また、コントローラ30は、これらのうちの少なくとも2つの組み合わせによって構成されてもよい。
【0027】
記憶装置31は、一例として、SDメモリカードなどの着脱可能な不揮発性の記録媒体38と、記録媒体38へのデータの書き込みおよび記録媒体38からのデータの読み出しを行うためのリーダライタ37とを含む。リーダライタ37は、コントローラ30の指令に従って、カメラ18によって撮影された点検用の静止画像、コントローラ30の制御内容、およびフライト情報などを記録媒体38に格納する。
【0028】
慣性計測ユニット32は、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、地磁気センサ、気圧センサ、温度センサなどを1つのパッケージに統合したセンサユニットである。コントローラ30は、慣性計測ユニット32の各種センサの検出値に基づいて、ドローン10の自律飛行および姿勢制御を行う。
【0029】
送受信機33は、点検対象の風車に設けられた送受信機および陸上拠点施設の端末装置の送受信機に対して信号、データなどの情報の送受信を行う。たとえば、送受信機33は、風車の稼働状態の情報、拠点施設の端末装置からの指令などを受信する。また、送受信機33は、コントローラ30の指令に従って、低解像度のカメラ18B,20Bによって撮影された監視用の動画像を拠点施設に向けて送信する。
【0030】
GPS受信機34は、GPS衛星からの信号を受信する。コントローラ30は、GPS受信機34の受信信号に基づいて、ドローン10の現在位置を検知する。
【0031】
電源回路35は、発電機17によって生成された電力に基づいて、ドローン10の各部を駆動するための電源電圧を生成する。
【0032】
蓄電池36は、ドローン10の補助電源として用いられる。たとえば、蓄電池36は、エンジン16および発電機17の停止中に、コントローラ30、記憶装置31、送受信機33などを駆動するための電源を供給する。
【0033】
(風車の構成例)
図3は、洋上風力発電設備の風車の構成例を概念的に示す図である。図3を参照して、風車40は、タワー44の上部に搭載されたナセル43と、ハブ42と、ハブ42に取り付けられた3枚のブレード41A,41B,41Cとを備える。また、タワー44の下部は、基底部45を介在して浮体46に連結される。これにより、タワー44を海水面49の上に浮上させることができる。
【0034】
ブレード41A,41B,41Cは、ハブ42に連結されたロータ軸50の回転によって、ロータ軸50の軸方向回りに回転する。また、ブレード41の長手方向の軸回りの角度(ピッチ角63)と、タワー44の長手方向の軸回りに回動可能なナセル43の角度(ヨー角)とが調整できる。ロータ軸50は、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDである。ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDは、ブレード41A,41B,41の回転面に垂直な方向である。
【0035】
ナセル43は、増速機52と、ブレーキ装置53と、発電機54と、コントローラ60と、送受信機61とを格納する。
【0036】
増速機52は、ロータ軸50と動力伝達軸51との間に設けられ、ロータ軸50の回転速度を増速し、増速した回転速度で動力伝達軸51を回転させる。ブレーキ装置53は、コントローラ60の指令に従って、動力伝達軸51の回転を停止させる。発電機54は、動力伝達軸51の回転によって交流電力を生成する。発電機54によって生成された交流電力は、電源ケーブル55によって変圧器56に伝送され、変圧器56によって昇圧される。さらに、変圧器56によって昇圧された交流電力は、電力ケーブル57を介して陸上の電力設備に送電される。
【0037】
コントローラ60は、風車40の全体の動作を制御する。たとえば、ナセル43の上部に設けられた図示されていない風向および風速計の計測結果に基づいて、ブレード41のピッチ角およびナセル43のヨー角を調整する。コントローラ60のハードウェア構成は、図2に示すドローン10のコントローラ30の場合と同様に種々の構成があり得る。
【0038】
コントローラ60は、さらに、送受信機61およびアンテナ62を介して、ドローン10および陸上の拠点施設との間で情報のやり取りを行う。送受信機61は、ドローン10と拠点施設との間の通信を中継するように構成されていてもよい。風車40と陸上の拠点施設との間の通信には、光ファイバ通信などの有線通信を用いてもよい。
【0039】
(拠点施設の端末装置の構成例)
図4は、拠点施設に設けられた端末装置の構成例を示す機能ブロック図である。端末装置70は、ドローン10の移動中および風車40の点検中における監視、および点検用画像の解析などに用いられる。
【0040】
図4に示すように、端末装置70は、CPU71、RAM72、および不揮発性メモリ73を含むコンピュータをベースに構成される。端末装置70は、さらに、ディスプレイ装置74と、入力装置75と、記憶装置76と、送受信機78とを含む。これの構成要素は、バス79を介して相互に接続される。
【0041】
ディスプレイ装置74として、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを利用できる。たとえば、ディスプレイ装置74は、風車40の点検中および陸上拠点施設と洋上の風車40との間の移動中にカメラ18B,20Bによって撮影された動画像を表示する。
【0042】
入力装置75は、点検員の端末装置70への入力を受け付けるためのキーボードおよびマウスなどを含む。
【0043】
記憶装置76は、着脱可能な記録媒体からデータを読み込むためのリーダライタを含むように構成されている。たとえば、記憶装置76のリーダライタには、ドローン10のカメラ18によって撮影された点検用画像などが格納された記録媒体38を装着することができる。
【0044】
送受信機78は、アンテナ77を介して、ドローン10の送受信機33および風車40の送受信機61と通信する。
【0045】
(ドローンの飛行経路)
図5は、第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40に対して斜め方向から見た図である。図6は、第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の正面方向から見た図である。図7は、第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の裏側方向から見た図である。図8は、第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の側面方向から見た図である。図9は、第1の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の上方から見た図である。
【0046】
図5図9には、ドローン10の飛行経路として、円CA、CBが示されている。
【0047】
円CAは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。円CAの半径は、raである。円CAの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面と距離は、d1である。
【0048】
円CBは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。円CBの半径は、rbである。円CBの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面との距離は、d2である。
【0049】
ここで、ra=rbとしてもよく、d1=d2としてもよい。
【0050】
円CAの中心軸SA、および円CBの中心軸SBの鉛直方向の位置は、回転軸KDの鉛直方向の位置と同一であっても、異なっていてもよい。
【0051】
ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向は、時間とともに変化しないか、あるいは時間とともに変化したとしても、変化量が小さいという条件が成り立つ場合において、本実施の形態の飛行経路は、より望ましい。この場合には、ドローン10は、第1の時点t1よりも後の時刻に、円CA、CBを飛行するが、風車40に対する円CA、CBの相対的な位置関係は、第1の時点と同じ、または大きく変化しない。
【0052】
(洋上の風車の点検手順)
以下、上記で説明したドローン10、風車40、および端末装置70の構成に基づいて、洋上風力発電設備の風車40の点検手順について説明する。
【0053】
図10は、第1の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS101において、陸上の拠点施設に設けられた端末装置70は、送受信機78を介して、洋上の風車40から発電機54の緊急停止の通知を受ける。
【0055】
ステップS102において、点検員がドローン10のエンジン16および発電機17をスタートさせ、さらに、たとえばプログラムを実行させることにより、ドローン10のコントローラ30に風車40の緊急点検を開始させる。これにより、ドローン10は、点検対象の風車40に向けて飛行を開始する。
【0056】
より詳細には、ドローン10のコントローラ30は、GPS受信機34によって受信したGPS信号に基づく自機の位置情報と、端末装置70から受信した点検対象の風車40の位置情報とに基づいて、自機の飛行方向を決定する。コントローラ30は、モータ駆動回路15を制御することにより、自機を十分な高さまで離陸させた後、決定した飛行方向に自機を移動させる。コントローラ30は、GPS信号による自機の位置情報に基づいて、点検対象の風車40に到達するまで自機の移動を続ける。
【0057】
ステップS103において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第1の時点t1として、第1の時点t1におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。具体的には、風車40のコントローラ60は、ブレード41A,41B,41Cの回転面が風を正面から受けるようにナセル43のヨー角を調整する。
【0058】
風車40のコントローラ60は、回転軸KDの方向をドローン10のコントローラ30に送信するものとしてもよい。
【0059】
あるいは、ドローン10のコントローラ30が、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を判定してもよい。より詳細には、コントローラ30は、直下用カメラ20を用いて、風車40の上空の位置からナセル43を撮影する。コントローラ30は、撮影したナセル43の画像に基づいて、停止しているナセル43の方向と自機の停止方向(たとえば、正面方向)とのずれ角を検出する。コントローラ30は、慣性計測ユニット32の地磁気センサによって地磁気の方向を検出する。地磁気の検出結果に基づいて、コントローラ30は、自機の現時点の方向を判定し、さらにこの判定結果から、ナセル43の現時点の方向、すなわち、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を判定する。
【0060】
ステップS104において、ドローン10のコントローラ30は、図5図6図8、および図9に示すような円CAの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0061】
ステップS105において、ドローン10のコントローラ30は、図5図7図8、および図9に示すような円CBの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0062】
ステップS106において、ドローン10のコントローラ30は、ステップS104およびS105において得られた撮影画像に基づいて、ブレード41A,41B,41Cの損傷箇所を判定する。
【0063】
(効果)
たとえば、風車を中心として水平円周上をドローンが自動飛行しながら、ブレードを撮影する方法(水平飛行)が考えられる。この方法では、飛行ルートの設定は、容易である。しかし、この方法では、ドローンが風車に衝突しないように、かつブレードの全箇所を撮影するために、飛行ルートを設定するには、ブレードとカメラとの距離が大きくなるため、撮影された画像の品質が低いとともに、点検時間が長くなる。
【0064】
本実施の形態の飛行によれば、水平飛行による方法に比べて、ブレードとカメラとの距離を半分以下にすることができるので、撮影された画像の品質を高くすることができるとともに、点検時間を短くすることができる。
【0065】
[第2の実施形態]
(ドローンの飛行経路)
図11は、第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40に対して斜め方向から見た図である。図12は、第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の正面方向から見た図である。図13は、第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の裏側方向から見た図である。図14は、第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の側面方向から見た図である。図15は、第2の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の上方から見た図である。
【0066】
図11図15には、ドローン10の飛行経路として、円CC、CD、CE、CFが示されている。
【0067】
円CCは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。円CCの半径は、rcである。円CCの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面と距離は、d3である。
【0068】
円CDは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。円CDの半径は、rdである。円CDの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面と距離は、d3である。
【0069】
円CCの円周と円CDの円周との最短距離は、d5である。円CCの中心と、円CDの中心との間の距離は、d7である。
【0070】
ここで、rc=rdとしてもよい。円CCの中心と円CDの中心とを結ぶ線分の中点を回転軸KDが通るものとしてもよい。
【0071】
円CEは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。円CEの半径は、reである。円CEの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面との距離は、d4である。
【0072】
円CFは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。円CFの半径は、rfである。円CFの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面との距離は、d4である。
【0073】
円CEの円周と円CFの円周との最短距離は、d6である。円CEの中心と、円CFの中心との間の距離は、d8である。
【0074】
ここで、re=rfとしてもよい。円CEの中心と円CFの中心とを結ぶ線分の中点を回転軸KDが通るものとしてもよい。
【0075】
ここで、rc=rd=re=rfとしてもよく、d3=d4としてもよい。また、d5=d6としてもよく、d7=d8としてもよい。
【0076】
円CCの中心軸SC、円CDの中心軸SD、円CEの中心軸SE、および円CFの中心軸SFの鉛直方向の位置は、回転軸KDの鉛直方向の位置と同一であっても、異なっていてもよい。
【0077】
ブレード41A,41B,41Cの回転面と回転軸KDとが交わる点Oと円CCの中心とを結ぶ線分と、回転軸KDとの間の角度が、たとえば45°であるが任意の角度でもよい。ブレード41A,41B,41Cの回転面と回転軸KDとが交わる点Oと円CDの中心とを結ぶ線分と、回転軸KDとの間の角度がたとえば45°であるが任意の角度でもよい。ブレード41A,41B,41Cの回転面と回転軸KDとが交わる点Oと円CEの中心とを結ぶ線分と、回転軸KDとの間の角度が、たとえば45°であるが任意の角度でもよい。ブレード41A,41B,41Cの回転面と回転軸KDとが交わる点Oと円CFの中心とを結ぶ線分と、回転軸KDとの間の角度が、たとえば45°であるが任意の角度でもよい。
【0078】
本実施の形態においても、第1の実施形態と同様に、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向は、時間とともに変化しないか、あるいは時間とともに変化したとしても、変化量が小さいという条件が成り立つ場合において、本実施の形態の飛行経路は、より望ましい。この場合には、ドローン10は、第1の時点t1よりも後の時刻に、円CC、CD、CE、CFを飛行するが、風車40に対する円CC、CD、CE、CFの相対的な位置関係は、第1の時点と同じ、または大きく変化しない。
【0079】
(洋上の風車の点検手順)
以下、上記で説明したドローン10、風車40、および端末装置70の構成に基づいて、洋上風力発電設備の風車40の点検手順について説明する。
【0080】
図16は、第2の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
【0081】
ステップS201において、陸上の拠点施設に設けられた端末装置70は、送受信機78を介して、洋上の風車40から発電機54の緊急停止の通知を受ける。
【0082】
ステップS202において、点検員がドローン10のエンジン16および発電機17をスタートさせ、さらに、たとえばプログラムを実行させることにより、ドローン10のコントローラ30に風車40の緊急点検を開始させる。これにより、ドローン10は、点検対象の風車40に向けて飛行を開始する。
【0083】
ステップS203において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第1の時点t1として、第1の時点t1におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。
【0084】
ステップS204において、ドローン10のコントローラ30は、図11図12図14、および図15に示すような円CCの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0085】
ステップS205において、ドローン10のコントローラ30は、図11図12図14、および図15に示すような円CDの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0086】
ステップS206において、ドローン10のコントローラ30は、図11図13図14、および図15に示すような円CEの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0087】
ステップS207において、ドローン10のコントローラ30は、図11図13図14、および図15に示すような円CFの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0088】
ステップS208において、ドローン10のコントローラ30は、ステップS204~S207において得られた撮影画像に基づいて、ブレード41A,41B,41Cの損傷箇所を判定する。
【0089】
[第3の実施形態]
(ドローンの飛行経路)
図17は、第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40に対して斜め方向から見た図である。図18は、第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の正面方向から見た図である。図19は、第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の裏側方向から見た図である。図20は、第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の側面方向から見た図である。図21は、第3の実施形態におけるドローン10の飛行経路を風車40の上方から見た図である。
【0090】
図17図21には、ドローン10の飛行経路として、円CG、CH、CI、CJ、CK、CLが示されている。
【0091】
円CGは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。円CGの半径は、rgである。円CGの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面と距離は、d9である。
【0092】
円CHは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。円CHの半径は、rhである。円CHの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面と距離は、d9である。
【0093】
円CIは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。円CIの半径は、riである。円CIの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面と距離は、d9である。
【0094】
回転軸KDは、円CHの中心を通ってもよいが、通らなくてもよい。円CGの中心と、円CHの中心との間の距離は、d11である。円CIの中心と、円CHの中心との間の距離は、d12である。ここで、rg=rh=riとしてもよく、d11=d12としてもよい。
【0095】
円CJは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。円CJの半径は、rjである。円CJの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面との距離は、d10である。
【0096】
円CKは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。円CKの半径は、rkである。円CKの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面との距離は、d10である。
【0097】
円CLは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。円CLの半径は、rlである。円CLの面と、ブレード41A,41B,41Cの回転面との距離は、d10である。
【0098】
回転軸KDは、円CKの中心を通ってもよいが、通らなくてもよい。円CJの中心と、円CKの中心との間の距離は、d13である。円CLの中心と、円CKの中心との間の距離は、d14である。ここで、rj=rk=rlとしてもよく、d13=d14としてもよい。
【0099】
ここで、rg=rh=ri=rj=rk=rlとしてもよく、d9=d10としてもよい。また、d11=d12=d13=d14としてもよい。
【0100】
円CGの中心軸SG、円CHの中心軸SH、円CIの中心軸SI、円CJの中心軸SJ、円CKの中心軸SK、および円CLの中心軸SLの鉛直方向の位置は、回転軸KDの鉛直方向の位置と同一であっても、異なっていてもよい。
【0101】
本実施の形態においても、第1および第2の実施形態と同様に、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向は、時間とともに変化しないか、あるいは時間とともに変化したとしても、変化量が小さいという条件が成り立つ場合において、本実施の形態の飛行経路は、より望ましい。この場合には、ドローン10は、第1の時点t1よりも後の時刻に、円CG、CH、CI、CJ、CK、CLを飛行するが、風車40に対する円CG、CH、CI、CJ、CK、CLの相対的な位置関係は、第1の時点と同じ、または大きく変化しない。
【0102】
(洋上の風車の点検手順)
第3の実施形態における風車40の点検手順は、第1および第2の実施形態における風車40の点検手順と同様なので、説明を繰り返さない。
【0103】
第1の実施形態では、円CAの円周、および円CBの円周に沿って、ドローン10を飛行させた。第2の実施形態では、円CCの円周、円CDの円周、円CEの円周、および円CFの円周に沿って、ドローン10を飛行させた。第3の実施形態では、円CGの円周、円CHの円周、円CIの円周、円CJ、円CKの円周、および円CLの円周に沿って、ドローン10を飛行させる。
【0104】
第3の実施形態における風車40の点検手順は、第1および第2の実施形態における風車40の点検手順とほぼ同様であり、飛行する円周とその数が相違するだけである。よって、第3の実施形態における風車40の点検手順の説明は繰り返さない。
【0105】
[第4の実施形態]
第1~第3の実施形態では、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向は、時間とともに変化しないか、あるいは時間とともに変化したとしても、変化量は小さいことを前提とした。本実施の形態では、ドローン10が各円周を飛行する前に、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得し、取得した方向に応じて定まる円周を飛行する。これによって、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向が、時間とともに変化する場合にでも、ドローン10は、望ましい飛行経路を飛行することができる。
【0106】
以下、第2の実施形態における飛行経路を、ドローン10が各円周を飛行する前に、ブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得し、取得した方向に応じて定まる円周を飛行するように変形させた例を説明する。第1の実施形態、および第3の実施形態についても、同様に変形させることができる。
【0107】
図22は、第4の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
【0108】
ステップS301において、陸上の拠点施設に設けられた端末装置70は、送受信機78を介して、洋上の風車40から発電機54の緊急停止の通知を受ける。
【0109】
ステップS302において、点検員がドローン10のエンジン16および発電機17をスタートさせ、さらに、たとえばプログラムを実行させることにより、ドローン10のコントローラ30に風車40の緊急点検を開始させる。これにより、ドローン10は、点検対象の風車40に向けて飛行を開始する。
【0110】
ステップS303において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第1の時点t1として、第1の時点t1におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。
【0111】
ステップS304において、ドローン10のコントローラ30は、円CCの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。円CCは、第1の時点t1における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。
【0112】
ステップS305において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第2の時点t2として、第2の時点t2におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。
【0113】
ステップS306において、ドローン10のコントローラ30は、円CD2の円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。円CD2は、第2の時点t2における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと同じ側にある表側の円である。
【0114】
ステップS307において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第3の時点t3として、第3の時点t3におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。
【0115】
ステップS308において、ドローン10のコントローラ30は、円CE2の円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。円CE2は、第3の時点t3における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。
【0116】
ステップS309において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第4の時点t4として、第4の時点t4におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。
【0117】
ステップS310において、ドローン10のコントローラ30は、円CF2の円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。円CF2は、第4の時点t4における風車40のブレード41A,41B,41Cの回転軸KDと同一方向の中心軸を有し、風車40のタワー44に対してブレードと反対側にある裏側の円である。
【0118】
ステップS311において、ドローン10のコントローラ30は、ステップS304、S306、S308、およびS310において得られた撮影画像に基づいて、ブレード41A,41B,41Cの損傷箇所を判定する。
【0119】
[第5の実施形態]
本実施の形態では、緊急停止の時点において、風車40のコントローラ60は、風の方向とブレード41の風受け面とが平行になるようにブレード41のピッチ角63を調整する。これによって、ブレード41は風から揚力を受けなくなるので、風車40の破損を防止できる。
【0120】
以下、第1の実施形態の風車40の点検手順に、上記のような制御を追加した例を説明する。
【0121】
図23は、第5の実施形態における風車40の点検手順を示すフローチャートである。
【0122】
ステップS101において、陸上の拠点施設に設けられた端末装置70は、送受信機78を介して、洋上の風車40から発電機54の緊急停止の通知を受ける。
【0123】
ステップS401において、風車40のコントローラ60は、風の方向とブレード41の風受け面とが平行になるようにブレード41のピッチ角63を調整する。
【0124】
ステップS102において、点検員がドローン10のエンジン16および発電機17をスタートさせ、さらに、たとえばプログラムを実行させることにより、ドローン10のコントローラ30に風車40の緊急点検を開始させる。これにより、ドローン10は、点検対象の風車40に向けて飛行を開始する。
【0125】
ステップS103において、ドローン10のコントローラ30は、現在時刻を第1の時点t1として、第1の時点t1におけるブレード41A,41B,41Cの回転軸KDの方向を取得する。
【0126】
ステップS104において、ドローン10のコントローラ30は、円CAの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0127】
ステップS105において、ドローン10のコントローラ30は、円CBの円周に沿って、ドローン10を飛行させながら、前方用カメラ18にブレード41A,41B,41Cを撮影させる。
【0128】
ステップS106において、ドローン10のコントローラ30は、ステップS104およびS105において得られた撮影画像に基づいて、ブレード41A,41B,41Cの損傷箇所を判定する。
【0129】
上述の実施形態で説明した風車の点検方法は、緊急時の点検を対象としているが、定期の点検にも適用することができる。
【0130】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
10 ドローン、11 本体部、12 腕部、13 プロペラモータ、14 プロペラ、15 モータ駆動回路、16 エンジン、17,54 発電機、18,18A,18B,20,20A,20B カメラ、19,21 ジンバル、22 脚部、23 推進機構、24 センサ、30,60 コントローラ、31,76 記憶装置、32 慣性計測ユニット、33,61,78 送受信機、34 受信機、35 電源回路、36 蓄電池、37 リーダライタ、38 記録媒体、40 風車、41A,41B,41C ブレード、42 ハブ、43 ナセル、44 タワー、45 基底部、46 浮体、49 海水面、50 ロータ軸、51 動力伝達軸、52 増速機、53 ブレーキ装置、55 電源ケーブル、56 変圧器、57 電力ケーブル、62,77 アンテナ、70 端末装置、72 RAM、73 不揮発性メモリ、74 ディスプレイ装置、75 入力装置、79 バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23