IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトバンクモバイル株式会社の特許一覧

特開2024-38686無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム
<>
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図1
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図2
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図3
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図4
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図5
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図6
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図7
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図8
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図9
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図10
  • 特開-無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038686
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】無線電力伝送を行うシステム、基地局、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240313BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20240313BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240313BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240313BHJP
【FI】
H02J50/80
H04W72/04 131
H04W72/04 132
H02J50/20
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142898
(22)【出願日】2022-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】基地局の無線処理部における低消費電力化及び無線電力伝送(WPT)用の信号の高出力化を図ることができるシステムを提供する。
【解決手段】基地局は、複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、通信用の無線リソースを用いる通信信号と無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成し、送信信号に含まれる通信信号及び無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して端末装置に送信する。端末装置は、基地局から送信された無線電力伝送用信号を含む送信信号を受信し、無線電力伝送用信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線リソースを選択的に用いて通信可能な基地局を備え、前記基地局から端末装置に無線電力伝送を行うシステムであって、
前記基地局は、
前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成する通信信号処理部と、
前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して前記端末装置に送信する無線処理部と、を有し、
前記端末装置は、
前記基地局から送信された前記ダミー信号を含む送信信号を受信する無線処理部と、
前記ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力する電力出力部と、を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記基地局の前記通信信号処理部は、
前記複数の無線リソースのうち通信用の無線リソースを用いる通信信号と通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信ベースバンド信号を生成する送信ベースバンド信号処理部と、
前記送信ベースバンド信号の時間軸上における前記通信信号の期間と前記無線電力伝送用のダミー信号の期間との境界を識別可能なトリガー信号を生成するトリガー信号生成部と、
前記トリガー信号に基づいて、前記送信ベースバンド信号処理部で生成された前記送信ベースバンド信号を、前記通信信号からなる第1送信ベースバンド信号と前記無線電力伝送用のダミー信号からなる第2送信ベースバンド信号とに分離する信号分離部と、を有し、
前記基地局の前記無線処理部は、
前記第1送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第1送信無線信号を生成する第1送信無線処理部と、
前記第2送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第2送信無線信号を生成する第2送信無線処理部と、
前記第1送信無線信号を増幅する第1電力増幅器と、
前記第2送信無線信号を増幅する第2電力増幅器と、
前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを合成して送信無線信号を出力する信号合成部と、を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2のシステムにおいて、
前記第1電力増幅器は、ドハティ増幅器、エンベロープトラッキング増幅器又はアウトフェージング増幅器であり、
前記第2電力増幅器は、C級増幅器、E級増幅器、F級増幅器又はJ級増幅器である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2又は3のシステムにおいて、
前記信号合成部は、
前記第1電力増幅器の出力側に接続された第1アイソレータと、
前記第2電力増幅器の出力側に接続された第2アイソレータと、
前記第1アイソレータから出力された前記第1送信無線信号と前記第2アイソレータから出力された前記第2送信無線信号とを同相で合成して前記送信無線信号を出力する同相合成回路と、を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2又は3のシステムにおいて、
前記信号合成部は、
前記トリガー信号生成部で生成されたトリガー信号を所定時間遅延させて出力する遅延回路と、
前記遅延回路で遅延させたトリガー信号が入力され、前記トリガー信号に基づいて、前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを切り替え、前記送信無線信号として出力する合成スイッチ回路と、を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
複数の無線リソースを選択的に用いて通信可能な基地局であって、
前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成する通信信号処理部と、
前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して端末装置に送信する無線処理部と、
を備える、ことを特徴とする基地局。
【請求項7】
請求項6の基地局において、
前記通信信号処理部は、
前記複数の無線リソースのうち通信用の無線リソースを用いる通信信号と通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信ベースバンド信号を生成する送信ベースバンド信号処理部と、
前記送信ベースバンド信号の時間軸上における前記通信信号の期間と前記無線電力伝送用のダミー信号の期間との境界を識別可能なトリガー信号を生成するトリガー信号生成部と、
前記トリガー信号に基づいて、前記送信ベースバンド信号処理部で生成された前記送信ベースバンド信号を、前記通信信号からなる第1送信ベースバンド信号と前記無線電力伝送用のダミー信号からなる第2送信ベースバンド信号とに分離する信号分離部と、を有し、
前記無線処理部は、
前記第1送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第1送信無線信号を生成する第1送信無線処理部と、
前記第2送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第2送信無線信号を生成する第2送信無線処理部と、
前記第1送信無線信号を増幅する第1電力増幅器と、
前記第2送信無線信号を増幅する第2電力増幅器と、
前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを合成して送信無線信号を出力する信号合成部と、を有する、
ことを特徴とする基地局。
【請求項8】
請求項7の基地局において、
前記第1電力増幅器は、ドハティ増幅器、エンベロープトラッキング増幅器又はアウトフェージング増幅器であり、
前記第2電力増幅器は、C級増幅器、E級増幅器、F級増幅器又はJ級増幅器である、
ことを特徴とする基地局。
【請求項9】
請求項7又は8の基地局において、
前記信号合成部は、
前記第1電力増幅器の出力側に接続された第1アイソレータと、
前記第2電力増幅器の出力側に接続された第2アイソレータと、
前記第1アイソレータから出力された前記第1送信無線信号と前記第2アイソレータから出力された前記第2送信無線信号とを同相で合成して前記送信無線信号を出力する同相合成回路と、を有する、
ことを特徴とする基地局。
【請求項10】
請求項7又は8の基地局において、
前記信号合成部は、前記トリガー信号生成部で生成されたトリガー信号が所定時間遅延されて入力され、前記トリガー信号に基づいて、前記第1電力増幅器から出力される前記第1送信無線信号と前記第1電力増幅器から出力される前記第2送信無線信号とを同相で合成して出力する同相合成回路を、有する、
ことを特徴とする基地局。
【請求項11】
基地局及び端末装置が複数の無線リソースを選択的に用いて互いに通信を行う方法であって、
前記基地局が、前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成することと、
前記基地局が、前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して前記端末装置に送信することと、
前記端末装置が、前記基地局から送信された前記ダミー信号を含む送信信号を受信することと、
前記端末装置が、前記ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力することと、
を含む、ことを特徴する方法。
【請求項12】
複数の無線リソースを選択的に用いて端末装置と通信を行う基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成するためのプログラムコードと、
前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して前記端末装置に送信するためのプログラムコードと、
を含む、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送(WPT)を行うことができるシステム、基地局、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線フレームに設定された複数の無線リソースの少なくとも一部を用いて基地局と端末装置との間で通信を行う通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/164220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の通信システムにおいて基地局に接続して通信する端末装置として、内蔵電池から供給される電力を主に利用する携帯型の端末装置がある。この端末装置では、内蔵電池の残量が少なくなったときに内蔵電池を充電する煩雑な作業が必要である。また、内蔵電池ではなく有線接続の電源ラインから供給される電力を利用する端末装置は、そのような電源ラインを利用可能な場所での使用に制限される。このように基地局に接続して通信を行う様々な端末装置への給電をまかなうことができるような給電インフラが未整備である。
【0005】
第5世代及びその後の次世代の移動通信システムでは、基地局に接続して通信する端末装置(例えば、ユーザ装置、IoTデバイス等)が急増してくるのが予想され、膨大なトラフィックを捌く通信インフラの整備が進められている。しかしながら、上記通信を行う膨大な数の端末装置への給電をまかなうことができる給電インフラは未整備のままである。
【0006】
上記端末装置へ給電する給電インフラとして、移動通信の基地局を用いて無線電力伝送(WPT)を行うシステムが検討されている。かかるシステムの課題の一つとして、基地局の無線処理部(無線機送信部)における低消費電力化及び無線電力伝送(WPT)用の信号の高出力化を図ることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るシステムは、複数の無線リソースを選択的に用いて通信可能な基地局を備え、前記基地局から端末装置に無線電力伝送を行うシステムである。前記基地局は、前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成する通信信号処理部と、
前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して前記端末装置に送信する無線処理部と、を有する。前記端末装置は、前記基地局から送信された前記ダミー信号を含む送信信号を受信する無線処理部と、前記ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力する電力出力部と、を有する。
【0008】
前記システムにおいて、前記基地局の前記通信信号処理部は、前記複数の無線リソースのうち通信用の無線リソースを用いる通信信号と通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信ベースバンド信号を生成する送信ベースバンド信号処理部と、前記送信ベースバンド信号の時間軸上における前記通信信号の期間と前記無線電力伝送用のダミー信号の期間との境界を識別可能なトリガー信号を生成するトリガー信号生成部と、前記トリガー信号に基づいて、前記送信ベースバンド信号処理部で生成された前記送信ベースバンド信号を、前記通信信号からなる第1送信ベースバンド信号と前記無線電力伝送用のダミー信号からなる第2送信ベースバンド信号とに分離する信号分離部と、を有してもよい。又、前記基地局の前記無線処理部は、前記第1送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第1送信無線信号を生成する第1送信無線処理部と、前記第2送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第2送信無線信号を生成する第2送信無線処理部と、前記第1送信無線信号を増幅する第1電力増幅器と、前記第2送信無線信号を増幅する第2電力増幅器と、前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを合成して送信無線信号を出力する信号合成部と、を有してもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記第1電力増幅器は、ドハティ増幅器、エンベロープトラッキング増幅器又はアウトフェージング増幅器であってもよく、前記第2電力増幅器は、C級増幅器、E級増幅器、F級増幅器又はJ級増幅器であってもよい。
【0010】
前記システムにおいて、前記信号合成部は、前記第1電力増幅器の出力側に接続された第1アイソレータと、前記第2電力増幅器の出力側に接続された第2アイソレータと、前記第1アイソレータから出力された前記第1送信無線信号と前記第2アイソレータから出力された前記第2送信無線信号とを同相で合成して前記送信無線信号を出力する同相合成回路と、を有してもよい。
【0011】
前記システムにおいて、前記信号合成部は、前記トリガー信号生成部で生成されたトリガー信号を所定時間遅延させて出力する遅延回路と、前記遅延回路で遅延させたトリガー信号が入力され、前記トリガー信号に基づいて、前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを切り替え、前記送信無線信号として出力する信号切替合成部と、を有してもよい。
【0012】
本発明の他の態様に係る基地局は、複数の無線リソースを選択的に用いて通信可能な基地局である。この基地局は、前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成する通信信号処理部と、前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して端末装置に送信する無線処理部と、を備える。
【0013】
前記基地局において、前記通信信号処理部は、前記複数の無線リソースのうち通信用の無線リソースを用いる通信信号と通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信ベースバンド信号を生成する送信ベースバンド信号処理部と、前記送信ベースバンド信号の時間軸上における前記通信信号の期間と前記無線電力伝送用のダミー信号の期間との境界を識別可能なトリガー信号を生成するトリガー信号生成部と、前記トリガー信号に基づいて、前記送信ベースバンド信号処理部で生成された前記送信ベースバンド信号を、前記通信信号からなる第1送信ベースバンド信号と前記無線電力伝送用のダミー信号からなる第2送信ベースバンド信号とに分離する信号分離部と、を有してもよい。また、前記無線処理部は、前記第1送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第1送信無線信号を生成する第1送信無線処理部と、前記第2送信ベースバンド信号に基づいて所定の送信周波数からなる第2送信無線信号を生成する第2送信無線処理部と、前記第1送信無線信号を増幅する第1電力増幅器と、前記第2送信無線信号を増幅する第2電力増幅器と、前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを合成して送信無線信号を出力する信号合成部と、を有してもよい。
【0014】
前記基地局において、前記第1電力増幅器は、ドハティ増幅器、エンベロープトラッキング増幅器又はアウトフェージング増幅器であってもよく、前記第2電力増幅器は、C級増幅器、E級増幅器、F級増幅器又はJ級増幅器であってもよい。
【0015】
前記基地局において、前記信号合成部は、前記第1電力増幅器の出力側に接続された第1アイソレータと、前記第2電力増幅器の出力側に接続された第2アイソレータと、前記第1アイソレータから出力された前記第1送信無線信号と前記第2アイソレータから出力された前記第2送信無線信号とを同相で合成して前記送信無線信号を出力する同相合成回路と、を有してもよい。
【0016】
前記基地局において、前記信号合成部は、前記トリガー信号生成部で生成されたトリガー信号を所定時間遅延させて出力する遅延回路と、前記遅延回路で遅延させたトリガー信号が入力され、前記トリガー信号に基づいて、前記第1電力増幅器から出力された前記第1送信無線信号と前記第2電力増幅器から出力された前記第2送信無線信号とを切り替え、前記送信無線信号として出力する信号切替合成部と、を有してもよい。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る方法は、前記基地局が、前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成することと、前記基地局が、前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して前記端末装置に送信することと、前記端末装置が、前記基地局から送信された前記ダミー信号を含む送信信号を受信することと、前記端末装置が、前記ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力することと、を含む。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、複数の無線リソースを選択的に用いて端末装置と通信を行う基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記複数の無線リソースの互いに異なる期間に通信用の無線リソース及び無線電力伝送用の無線リソースが割り当てられ、前記通信用の無線リソースを用いる通信信号と前記無線電力伝送用の無線リソースを用いる無線電力伝送用のダミー信号とを含む送信信号を生成するためのプログラムコードと、前記送信信号に含まれる前記通信信号及び前記無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅して前記端末装置に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0019】
前記プログラムは、機械学習に用いられる学習済モデルを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基地局における低消費電力化及び無線電力伝送(WPT)用の信号の高出力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】実施形態に係るシステムを構成する基地局及び端末装置の構成の一例を示すブロック図。
図3】(a)は、実施形態に係る基地局から送信されるWPT用ダミー信号を含む送信信号の無線リソース(リソースブロック)におけるWPTブロックの割り当ての一例を示す説明図である。(b)は、実施形態に係る基地局から送信される送信信号のOFDM方式の二次変調における周波数軸上のスペクトルの一例を示す説明図である。
図4】本実施形態に係る基地局の電力増幅器の入出力電力特性及び効率特性の一例を示すグラフ。
図5】(a)は、実施形態に係る基地局から送信される通信信号のQAM方式の一次変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。(b)は、同基地局から送信されるWPT用ダミー信号の変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。
図6】実施形態に係る基地局の基地局装置の構成の一例を示すブロック図。
図7】同基地局装置における通信信号及びWPT用ダミー信号の分離及び合成それぞれの制御に用いるトリガー信号の一例を示す説明図。
図8】(a)~(d)はそれぞれ、通信信号及びWPT用ダミー信号を分離する前の送信信号、分離後の通信信号、分離後のWPT用ダミー信号及び合成後の送信信号の一例を示す説明図。
図9図6の基地局装置における信号合成部の一構成例を示すブロック図。
図10図6の基地局装置における信号合成部の他の構成例を示すブロック図。
図11】実施形態に係る基地局から複数の端末装置へのビームフォーミングによる端末装置毎の給電の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、移動通信の基地局から給電対象の端末装置(例えば、移動通信のUE(移動局)やIoTデバイス)に対して無線電力伝送(WPT)することができるシステムである。実施形態のシステムは、例えば、UEなどの端末装置への下りリンクの無線フレームに設定された複数の無線リソース(リソースブロック)のうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を端末装置への無線電力伝送(WPT)に有効活用したシステムである。実施形態のシステムは、基地局から端末装置への無線電力伝送(WPT)機能を有する、基地局と端末装置との間の無線通信システムであってもよい。また、実施形態のシステムは、基地局と端末装置との間の無線通信機能を有する、基地局から端末装置への無線電力伝送(WPT)システムであってもよい。
【0023】
特に、本実施形態のシステムでは、基地局の無線処理部において送信信号に含まれる通信信号及び無線電力伝送用のダミー信号を互いに異なる第1電力増幅器及び第2電力増幅器を個別に設け、無線電力伝送用のダミー信号を増幅する第2電力増幅器として、入出力電力特性における飽和領域(高出力電力領域)で電力効率が高い低消費電力の電力増幅器を用いることができるため、基地局の無線処理部における低消費電力化及び無線電力伝送(WPT)用の信号の高出力化が可能である。
【0024】
図1は、本実施形態に係るシステムの概略構成の一例を示す説明図である。本実施形態のシステムは、通信エリア(セル)10Aを形成するセルラー方式の基地局10と、通信エリア10Aに在圏しているときに基地局10に接続して基地局10と無線通信可能な給電対象の端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)ともいう。)20と、を有する。
【0025】
UE20は、移動通信システムの移動局でもよいし、通信装置(例えば移動通信モジュール)と各種デバイスとを組み合わせたものであってもよい。UE20は、例えば複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナを備える。UE20はIoTデバイス(「IoT機器」ともいう。)であってもよい。
【0026】
図1において、基地局10は、多数のアンテナ素子を有する複数のアレーアンテナ110を備え、複数のUE20との間でmassive MIMO(以下「mMIMO」ともいう。)伝送方式の通信を行うことができる。mMIMOは、アレーアンテナ110を用いてデータ送受信を行うことにより大容量・高速通信を実現する無線伝送技術である。また、複数のUE20のそれぞれに対して時分割で又は同時にビーム10Bを形成するビームフォーミングを行うMU(Multi User)-MIMO伝送方式で通信を行うことができる。多素子のアレーアンテナを用いてMU-MIMO伝送を行うことにより、各UE20の通信環境に応じてUE20ごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。また、同一の無線リソース(時間・周波数リソース)を用いて複数のUE20との通信ができるため、システム容量を拡大することができる。
【0027】
また、図1において、通信エリア10A内の一部は、基地局10から端末装置20に向けて無線電力伝送を行う無線電力伝送エリア(以下「WPTエリア」という。)10A'になっている。WPTエリア10A'は図示のように通信エリア10Aよりも狭いエリアでもよいし、通信エリア10Aと同じ又はほぼ同じサイズ及び位置のエリアであってもよい。
【0028】
WPTエリア10A'では、基地局10からの下りリンクの無線フレームを構成する複数の無線リソース(時間・周波数リソース)であるリソースブロックのうち通信に用いられていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を無線電力伝送ブロックとして活用している。基地局10は、UE20への下りリンクの無線フレームにおいて、通信未使用の無線リソースである無線電力伝送ブロック(WPTブロック)に無線電力伝送用のダミー信号(以下「WPT用ダミー信号」ともいう。)を割り当てた送信信号を生成してUE20に送信する。
【0029】
特に、第5世代又はそれ以降の世代の移動通信システムにおいては、無線フレームの一部のサブキャリアのみに必要最小限の参照信号(RS)や制御信号を配置するリーンキャリアという技術が提案されており、無線フレームにおける通信未使用の無線リソースの部分を有効活用してUE20への無線電力伝送を行うことが期待される。
【0030】
基地局10とUE20との間で送受信される通信の信号の電波及び基地局10からUE20に送信されるWPT用ダミー信号を割り当てた送信信号の電波は、例えば、ミリ波又はマイクロ波である。
【0031】
図2は、実施形態に係るシステムを構成する基地局10及び端末装置(UE)20の主要構成の一例を示すブロック図である。基地局10は、基地局装置100とアンテナ110とを備える。アンテナ110は、例えば、図1に示すように多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナである。アンテナ110は単数でもよいし複数であってもよい。例えば、アンテナ110は複数のセクタセルに対応させて複数配置してもよい。
【0032】
基地局装置100は、通信信号処理部120と無線処理部130とを備える。通信信号処理部120は、UE20との間で送受信される各種のユーザデータや制御情報等の信号を処理する。
【0033】
通信信号処理部120は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、複数の無線リソースのうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を生成する。例えば、WPT用ダミー信号は、通信信号よりもPAPR(ピーク電力対平均電力比)(「波高比」ともいう。)が小さい変調方式で変調して生成することができる。例えば、WPT用ダミー信号は、Zadoff-Chu系列の符号を用いて変調され、時間に対して振幅が一定で位相が変化する変調信号であってもよく、また、デジタル変調方式の複数のシンボル点のうち振幅が最大又は最大近傍の複数のシンボル点で変調された信号であってもよい。また例えば、送信信号の生成は、通信信号用のQAM(直交振幅変調)やWPT用ダミー信号用のPAPRが小さい変調等の一次変調、並びに、OFDM(直交周波数多重)変調等の二次変調を含んでもよい。
【0034】
無線処理部130は、通信信号処理部120で生成した送信信号をアンテナ110からUE20に送信したり、UE20からアンテナ110を介して受信した受信信号を通信信号処理部120に出力したりする。
【0035】
UE20に対する下りリンク通信の送信信号に通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含める処理や、後述の信号の分離や信号の合成等に用いるトリガー信号の生成は、移動通信の無線フレームを構成するサブフレームに基づいて行ってもよい。
【0036】
また、UE20に対する下りリンク通信の送信信号に、通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含める処理は、基地局10が自律的に行ってもよいし、UE20からの要求若しくは指示又は外部プラットフォーム(例えば、サーバ、クラウドシステム)からの要求若しくは指示に基づいて行ってもよい。
【0037】
また、本実施形態において、無線処理部130は、BF制御信号に基づいてアレーアンテナ110で形成される一又は複数のビームを制御する。また、無線処理部130は、通信信号処理部120で生成されたWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を、アンテナ110を介してUE20に送信する。
【0038】
基地局10は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、UE20毎に又は複数のUE20が属するターゲットエリアのUEグループ毎に、個別のビーム10Bを形成するビームフォーミング(BF)制御を行い、UE20毎に又はUEグループ毎に無線電力伝送を行ってもよい。UE20毎又はUEグループ毎のBF制御は、通信信号処理部120における周波数領域のデジタルBF制御で行ってもよいし、無線処理部130におけるアナログBF制御で行ってもよい。
【0039】
図2において、UE20は、アンテナ210と無線処理部220と通信信号処理部230と電力出力部240と電池250とを含む。アンテナ210は、例えば複数のアンテナ素子を有する小型のアレーアンテナである。無線処理部220は、通信信号処理部230で生成したフィードバック情報やユーザデータ等の送信信号をアンテナ210から基地局10に送信したり、基地局10からアンテナ210を介して受信した受信信号を通信信号処理部230に出力したりする。
【0040】
本実施形態において、無線処理部220は、基地局10から送信されたWPT用ダミー信号を含む送信信号を受信する。また、電力出力部240は、例えば整流器を有し、基地局10からのWPT用ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、電池充電用の受電電力として出力する。電力出力部240から出力された受電電力により、電池250を充電することができる。
【0041】
図3(a)は、本実施形態に係る基地局10から送信されるWPT用ダミー信号を含む送信信号の無線リソース(リソースブロック)におけるWPTブロックの割り当ての一例を示す説明図である。また、図3(b)は、本実施形態に係る基地局10から送信される送信信号のOFDM方式の二次変調における周波数軸上のスペクトルの一例を示す説明図である。図3(a)に示すように、本実施形態のシステムにおける下りリンク通信及び上りリンク通信で用いられる複数の無線リソースは、周波数軸上のサブキャリアと時間軸上のスロットとにより定義される複数のリソースブロック30である。各リソースブロック30は、図3(b)に示すように周波数軸上で互いに直交する所定帯域幅のサブキャリア33を有する。
【0042】
図3(a)の無線リソースを構成するリソースブロック30は、移動通信の無線フレームを構成する連続の複数のサブフレームに割り当てられる。図示の例では、各サブフレームは所定数(例えば20個)のリソースブロックで構成され、通信用のサブフレーム(以下「通信用フレーム」という。)F1とWPT用のサブフレーム(以下「WPT用フレーム」という。)F2が交互に位置する。通信用フレームF1は、上りリンク及び下りリンクの通信用のリソースブロック31を含み、WPT用フレームF2は、図中のクロスハッチングを付しているWPT用のリソースブロック32を含む。通信用フレームF1のリソースブロック31のうち、上りリンクの複数のリソースブロックには、ユーザデータの上りリンク通信の信号及びUE20からのWPT用のフィードバック情報の通信の信号に割り当てられ、下りリンクの複数のリソースブロックには、ユーザデータや情報の下りリンク通信の信号に割り当てられる。また、WPT用フレームF2のリソースブロック32には、下りリンクのWPT用信号が割り当てられる。
【0043】
図4は、本実施形態に係る基地局10の電力増幅器の入力電力Pin[dBm]に対する出力電力Pout[dBm]及び効率PAE[%]の特性の一例を示すグラフである。図中の曲線Aは、電力増幅器の交流の入力電力Pin[dBm]に対する交流の出力電力Pout[dBm]のシミュレーション計算結果であり、「□」のプロット点は出力電力Pout[dBm]の測定結果である。また、図中の曲線Bは、電力増幅器の入力電力Pin[dBm]に対する効率の指標値の一つであるPAE(電力付加効率)[%]のシミュレーション計算結果であり、「○」のプロット点は効率PAE[%]の測定結果である。ここで、電力増幅器のPAE[%]は、(Pout-Pin)/Pdcで定義される。Pdcは電力増幅器に入力(印加)される直流電力である。また、図中の線形領域は、入力電力Pinと出力電力Poutとの関係が線形又はほぼ線形の関係にある領域である。図中の飽和領域は、入力電力Pinの増加に対して出力電力Poutが飽和又はほぼ飽和している領域である。線形領域と飽和領域の境界の近傍に、電力増幅器の効率PAEのピークが位置する。
【0044】
基地局10において、PAPR(ピーク電力対平均電力比)の高い変調信号からなる通信信号を電力増幅器で増幅するときは、電力増幅器の低出力電力及び低効率の線形領域が使用される。例えば、図4の飽和領域の開始点(左端)から低電力側に相応のバックオフをとった点(線形領域の中央部)に、通信信号(変調信号)の平均電力が位置するように、電力増幅器の動作パラメータ(例えば、平均電力の動作点)が設定される。例えば、FETを用いた電力増幅器の場合、所定の平均電力の動作点になるように、FETに印加するドレイン電圧が設定される。
【0045】
また、無線電力伝送(WPT)において電力増幅器の高出力電力の領域でWPT用ダミー信号を増幅できるように、WPT用ダミー信号として、PAPR(ピーク電力対平均電力比)が通信信号よりも低いOFDM変調信号を用いてもよい。
【0046】
図5(a)は、本実施形態に係る基地局10から送信される通信信号のQAM方式の一次変調におけるシンボル点41の配置の一例を示す説明図である。図5(a)は、64QAM方式の場合の複数のシンボル点(64値のシンボル点)の配置を示すコンスタレーションの図である。また、図5(b)は、本実施形態に係る基地局10から送信されるWPT用ダミー信号の変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。図5(a)及び図5(b)において、横軸は同相チャネル成分を示し,縦軸は直交チャネル成分を示している。
【0047】
本実施形態では、WPT用ダミー信号として、PAPR(ピーク電力対平均電力比)が通信信号よりも低いOFDM変調信号を用いる。例えば、図5(a)において、通信信号用のQAM方式の複数のシンボル点41のうち、振幅が最大である最外周又は最外周周辺の複数のシンボル点41Sのみで変調されたOFDM変調信号からなるWPT用ダミー信号を用いてもよい。
【0048】
また、図5(b)のコンスタレーション図に示すように、時間に対して振幅が一定の条件で位相が変化するシンボル点42で変調されたOFDM変調信号からなるWPT用ダミー信号を用いてもよい。図5(b)のシンボル点42でOFDM変調信号は、例えばZadoff-Chu系列の符号を用いて生成することができる。
【0049】
上記構成の基地局10において、WPT用ダミー信号の高出力化とともに、基地局装置100の電力増幅器を含む無線処理部130における消費電力を低減したい、という課題がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、通信信号処理部120から出力される送信信号に含まれる通信信号及びWPT用ダミー信号を互いに異なる2つの第1電力増幅器及び第2電力増幅器で個別に増幅している。すなわち、第1電力増幅器は、下りリンクの送信信号のうち出力電力が低い通信信号の期間(フレーム)について選択的に増幅動作し、第2電力増幅器は、下りリンクの送信信号のうち出力電力が高いWPT用ダミー信号の期間(フレーム)について選択的に増幅動作する。WPT用ダミー信号の電力を増幅する高出力電力の第2電力増幅器は、広いダイナミック特性や高い線形性が要求されない。そのため、第2電力増幅器として、入出力電力特性における飽和領域(高出力電力領域)で電力効率(前述のPAE[%])が高く低消費電力の電力増幅器を用いることができ、第1電力増幅器及び第2電力増幅器を含む基地局装置100の低消費電力化を図ることができる。
【0051】
図6は、実施形態に係る基地局10の基地局装置100の構成の一例を示すブロック図である。図6において、基地局装置100の通信信号処理部120は、送信ベースバンド信号処理部121と、トリガー信号生成部122と、信号分離部としての信号分離スイッチ123を備える。
【0052】
送信ベースバンド信号処理部121は、所定のベースバンドのスケジューリング情報に基づいて、無線フレームを構成する複数のサブフレームのうち通信用の無線リソースである通信用フレームF1を用いる通信信号と、通信に使用されていない通信未使用の無線リソースであるWPT用フレームF2を用いるWPT用ダミー信号とを含む中間周波数の送信ベースバンド信号(図8(a)参照)を生成する。
【0053】
トリガー信号生成部122は、上記ベースバンドのスケジューリング情報に基づいて、送信ベースバンド信号の時間軸上における通信信号の期間(通信用フレームF1)とWPT用ダミー信号の期間(WPT用フレームF2)との境界を識別可能なトリガー信号を生成し、信号分離スイッチ123に出力する。例えば、トリガー信号生成部122は、図7に示すように、通信用フレームF1の期間中が低電位の「0」レベルになり、WPT用フレームF2の期間中が高電位の「1」レベルになるように変化する方形状のトリガー信号を生成して出力する。
【0054】
信号分離スイッチ123は、トリガー信号生成部122から出力されたトリガー信号に基づいて、送信ベースバンド信号処理部121で生成された中間周波数の送信ベースバンド信号を、通信信号からなる第1送信ベースバンド信号と、WPT用ダミー信号からなる第2送信ベースバンド信号とに分離する。
【0055】
図6の例では、信号分離スイッチ123は、トリガー信号が「0」レベルにある通信用フレームF1の期間に、送信ベースバンド信号の出力パスを図中の「0」の通信信号用パスに切り換えた状態で、中間周波数の通信信号からなる第1送信ベースバンド信号(図8(b)参照)を出力する。また、信号分離スイッチ123は、トリガー信号が「1」レベルにあるWPT用フレームF2の期間に、送信ベースバンド信号の出力パスを図中の「1」の通信信号用パスに切り換えた状態で、中間周波数のWPT用ダミー信号からなる第2送信ベースバンド信号(図8(c)参照)を出力する。
【0056】
無線処理部130は、第1送信無線処理部(送信RF処理部)132(1)と、第2送信無線処理部(送信RF処理部)132(2)と、第1電力増幅器131(1)と、第2電力増幅器131(2)と、信号合成部133と、出力回路134を備える。
【0057】
第1送信無線処理部132(1)は、信号分離スイッチ123から出力された中間周波数の第1送信ベースバンド信号と、所定周波数の局部発振信号とに基づいて、所定の送信周波数の通信信号からなる第1送信無線信号を生成する(図8(a)参照)。
【0058】
第2送信無線処理部132(2)は、信号分離スイッチ123から出力された中間周波数の第2送信ベースバンド信号と、所定周波数の局部発振信号とに基づいて、所定の送信周波数のWPT用ダミー信号からなる第2送信無線信号を生成する(図8(b)参照)。
【0059】
第1電力増幅器131(1)は、広ダイナミックレンジで高効率及び線形性に優れた電力増幅器であり、通信信号からなる第1送信無線信号を増幅する。第1電力増幅器131(1)は、例えば、ドハティ増幅器、エンベロープトラッキング増幅器又はアウトフェージング増幅器である。
【0060】
第2電力増幅器131(2)は、入出力電力特性における飽和領域(高出力電力領域)で電力効率が高い低消費電力の電力増幅器であり、WPT用ダミー信号からなる第2送信無線信号を増幅する。第2電力増幅器131(2)は、例えば、C級増幅器、E級増幅器、F級増幅器又はJ級増幅器である。
【0061】
第1電力増幅器131(1)及び第2電力増幅器131(2)はそれぞれ、例えば、高周波用のFETを用いて構成することができる。
【0062】
信号合成部133は、第1電力増幅器131(1)から出力された通信信号からなる第1送信無線信号(図8(b)参照)と、第2電力増幅器131(2)から出力されたWPT用ダミー信号からなる第2送信無線信号(図8(c)参照)とを合成し、合成した送信無線信号(図8(d)参照)を出力する。
【0063】
出力回路134は、例えば、所定の送信周波数の送信無線信号を選択的に通過させる帯域通過フィルタ(BPF)と、無線信号の送信と受信とでアンテナ110を共用するためのアンテナ共用器(DUP:Duplexer)を含む。
【0064】
図9は、図6の基地局装置100における信号合成部133の一構成例を示すブロック図である。図9の信号合成部133は、第1電力増幅器131(1)の出力側に接続された第1アイソレータ1331(1)と、第2電力増幅器131(2)の出力側に接続された第2アイソレータ1331(2)と、RF同相合成回路1332を有する。第1アイソレータ1331(1)及び第2アイソレータ1331(2)は、第1電力増幅器131(1)と第2電力増幅器131(2)との間のパス間のアイソレーションを行い、送信無線信号の逆流を防止する。RF同相合成回路1332は、第1アイソレータ1331(1)から出力された通信信号からなる第1送信無線信号と、第2アイソレータ1331(2)から出力されたWPT用ダミー信号からなる第2送信無線信号とを同相で合成し、合成した信号を送信無線信号として出力する。
【0065】
第1アイソレータ1331(1)及び第2アイソレータ1331(2)はそれぞれ、例えば、高周波のサーキュレータと終端抵抗で構成することができる。また、RF同相合成回路1332は、例えば、ウィルキンソン分配器で構成することができる。なお、RF同相合成回路1332の入力側の第1電力増幅器131(1)と第2電力増幅器131(2)との間のパス間のアイソレーションが高い場合、第1アイソレータ1331(1)及び第2アイソレータ1331(2)は設けなくてもよい。
【0066】
図10は、図6の基地局装置100における信号合成部133の他の構成例を示すブロック図である。図10の信号合成部133は、遅延回路1333と、信号切替合成部としての合成スイッチ回路1334とを有する。
【0067】
遅延回路1333は、通信信号処理部120のトリガー信号生成部122で生成されたトリガー信号を所定時間遅延させて出力する。遅延回路1333で遅延させる遅延時間は、前述の第1送信無線処理部(送信RF処理部)132(1)、第2送信無線処理部(送信RF処理部)132(2)、第1電力増幅器131(1)及び第2電力増幅器131(2)における高周波信号処理に要した遅延時間に対応する。
【0068】
合成スイッチ回路1334は、遅延回路1333で遅延させたトリガー信号が入力され、そのトリガー信号に基づいて、通信用フレームF1とWPT用フレームF2との切り替わりタイミングに合わせて、第1電力増幅器131(1)から出力された第1送信無線信号(通信信号)と、第2電力増幅器131(2)から出力された第2送信無線信号(WPT用信号)とを切り替え、前記送信無線信号として出力する。
【0069】
上記構成の図1図10のシステムによれば、基地局10からUE20への下りリンク通信において、通信未使用の無線リソースを無線電力伝送ブロック(WPTブロック)として有効活用し、基地局10からUE20への無線電力伝送(WPT)を行うことができる。また、UE20への通信と無線電力伝送(WPT)に兼用される基地局10の基地局装置100の低消費電力化及びWPT用ダミー信号の高出力化を図ることができる。
【0070】
図11は、本実施形態に係る基地局10から複数のUE20へのビームフォーミングによるUE毎の給電の一例を示す説明図である。本実施形態において、図9に示すように通信エリア10A内のWPTエリア10A'(前述の図1参照)に複数のUE20(1)~20(3)が在圏し、UE毎に形成したビーム10B(1)~10B(3)を介して各UE20(1)~20(3)に給電してもよい。ビーム10B(1)~10B(3)は、例えば時分割で切り替えて形成してもよい。
【0071】
以上、本実施形態によれば、基地局10における低消費電力化及び無線電力伝送(WPT)用の信号の高出力化を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、通信信号よりも低いPAPRを有するWPT用ダミー信号を用いることにより、基地局10において、通信信号についてはスプリアスが発生しないように高いマージンをとった低めの出力電力の範囲で増幅できるとともに、WPT用ダミー信号を増幅するときの電力増幅器131の高出力化及び高効率化を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、基地局10と端末装置20との間の通信未使用の無線リソースを利用して端末装置20への給電を行うことができる。
【0074】
また、本発明は、基地局10から送信された電波を受信可能な多数の端末装置20への給電をまかなうことができる給電インフラを提供できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0075】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにシステム、端末装置(UE、IoTデバイス)、基地局、移動局、中継装置及び制御装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0076】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、基地局装置(Node B、Node G)、端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0077】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0078】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0079】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0080】
10 :基地局
10A :通信エリア
10A' :WPTエリア
10B :ビーム
20 :端末装置(UE)
100 :基地局装置
110 :アンテナ
120 :通信信号処理部
121 :送信ベースバンド信号処理部
122 :トリガー信号生成部
123 :信号分離スイッチ
130 :無線処理部
131(1) :第1電力増幅器
131(2) :第2電力増幅器
132(1) :第1送信無線処理部
132(2) :第2送信無線処理部
133 :信号合成部
134 :出力回路
210 :アンテナ
220 :無線処理部
230 :通信信号処理部
240 :電力出力部
250 :電池
1331(1) :第1アイソレータ
1331(2) :第2アイソレータ
1332 :RF同相合成回路
1333 :遅延回路
1334 :合成スイッチ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11