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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038695
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
F16F13/10 E
F16F13/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142919
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】中脇 良貴
(72)【発明者】
【氏名】有田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】数面 宏昭
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047AB01
3J047CA04
3J047CA11
3J047CC01
3J047FA01
(57)【要約】
【課題】防振装置を、特定方向への変位を制限できるように構成する。
【解決手段】支持体B及び被支持体の間に取り付けられる液封マウントMであって、支持体Bに取り付けられるコア部1と、被支持体に取り付けられる取付部2と、コア部1から上方に離れた位置に設けられた取付部2と一体の被連結部3であって、上下方向に貫通する空洞3aが設けられた被連結部3と、コア部1及び被連結部3の間の空間S1を、空洞3aの内周部の周方向に沿って囲み、コア部1と空洞3aの内周部とを連結する弾性部4と、支持体Bに取り付けられ、コア部1及び被連結部3の相対変位を制限するブラケット6とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が振動する支持体及び被支持体の間に取り付けられる防振装置であって、
前記支持体に取り付けられる、剛性を有するコア部と、
前記被支持体に取り付けられる、剛性を有する取付部と、
前記コア部からZ方向一方側に離れた位置に設けられ、前記取付部と一体の、剛性を有する被連結部であって、Z方向に貫通する空洞が設けられた被連結部と、
前記コア部及び前記被連結部の間の空間を、前記空洞の内周部の周方向に沿って囲み、前記コア部と前記空洞の内周部とを連結する弾性部と、
前記支持体に取り付けられ、前記コア部及び前記被連結部の相対変位を制限する制限部材と
を備え、
Z方向に対して垂直で且つ互いに垂直な2つの方向を、X方向及びY方向とするとき、前記被連結部は、Y方向長さがX方向長さよりも長く、
前記制限部材は、前記被連結部のX方向一方側及びX方向他方側にそれぞれ設けられた一対のストッパを有し、
前記一対のストッパは、前記被連結部が前記コア部に対してX方向のいずれか一方へ変位する際、前記被連結部のX方向両端部のいずれか一方に当接して前記被連結部の変位を制限する、防振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置において、
前記コア部及び前記被連結部の間における、前記弾性部により囲まれた前記空間を、Z方向一方側から塞ぐ液封部を備え、
前記防振装置は、前記液封部により塞がれた前記空間を主液室とする液封マウントであり、
前記液封部の内部には、
副液室としての空間と、
前記空洞の内周部の周方向に沿って延び、前記主液室と前記副液室とを連通させる液体の流路と
が設けられている、防振装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防振装置において、
前記被連結部は、前記取付部のY方向一方側に設けられ、
前記制限部材は、
前記被連結部のX方向一方側及びX方向他方側にそれぞれ設けられた、前記支持体に固定される一対の固定部と、
それぞれ、前記一対の固定部のZ方向一方側に設けられ、前記被連結部のX方向一方側及びX方向他方側を覆う、前記一対のストッパと、
前記被連結部のZ方向一方側に設けられ、前記一対のストッパを互いに連結する第1補強部と、
前記被連結部のY方向一方側に設けられ、前記一対のストッパを互いに連結する第2補強部と
を有する、防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1取付部材と、第2取付部材と、前記第1取付部材と第2取付部材とを連結するインシュレータと、前記インシュレータの内空を利用して形成され、作動液体が封入される液室と、前記液室を主液室と副液室とに区画する仕切部材を備えた防振ユニットと、前記第2取付部材に設けられ、前記防振ユニットが入る収容空間とを備えた液封防振装置が開示されている。当該液封防振装置は、前記第2取付部材に設けられ、前記インシュレータが固着される外筒部と、前記外筒部の外面から振動源に向けて張り出す固定部と、を備え、前記固定部には、振動源に固定するためのボルト固定部が設けられており、前記収容空間の一部は前記固定部に及んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6615485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載される防振装置は、振動源の振動によって大きな振幅で振動すると、車両の乗り心地がわるくなるので、大きな振幅で振動しないように防振装置の変位を制限したい。また、車両によっては、防振装置の特定方向への変位を特に制限したい場合がある。しかし、車両の設計上の理由などから、その特定方向への変位を制限できるように構成しにくい場合がある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、防振装置を、特定方向への変位を制限できるように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、少なくとも一方が振動する支持体及び被支持体の間に取り付けられる防振装置であって、前記支持体に取り付けられる、剛性を有するコア部と、前記被支持体に取り付けられる、剛性を有する取付部と、前記コア部からZ方向一方側に離れた位置に設けられ、前記取付部と一体の、剛性を有する被連結部であって、Z方向に貫通する空洞が設けられた被連結部と、前記コア部及び前記被連結部の間の空間を、前記空洞の内周部の周方向に沿って囲み、前記コア部と前記空洞の内周部とを連結する弾性部と、前記支持体に取り付けられ、前記コア部及び前記被連結部の相対変位を制限する制限部材とを備え、Z方向に対して垂直で且つ互いに垂直な2つの方向を、X方向及びY方向とするとき、前記被連結部は、Y方向長さがX方向長さよりも長く、前記制限部材は、前記被連結部のX方向一方側及びX方向他方側にそれぞれ設けられた一対のストッパを有し、前記一対のストッパは、前記被連結部が前記コア部に対してX方向のいずれか一方へ変位する際、前記被連結部のX方向両端部のいずれか一方に当接して前記被連結部の変位を制限する。
【0007】
この第1の発明では、被連結部のY方向長さがX方向長さよりも長いので、Y方向よりもX方向の方が、被連結部が占有しないスペースが広い。したがって、X方向の広いスペースを利用して、X方向一方側及び他方側に一対のストッパを設けやすい。そして、被連結部がコア部に対してX方向への変位する際、被連結部のX方向両端部に当接して被連結部の変位が制限される。このように、防振装置を、X方向への変位を制限できるように構成できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記コア部及び前記被連結部の間における、前記弾性部により囲まれた前記空間を、Z方向一方側から塞ぐ液封部を備え、前記防振装置は、前記液封部により塞がれた前記空間を主液室とする液封マウントであり、前記液封部の内部には、副液室としての空間と、前記空洞の内周部の周方向に沿って延び、前記主液室と前記副液室とを連通させる液体の流路とが設けられている。
【0009】
この第2の発明は、主液室と、副液室と、これらを連通させる液体の流路とが設けられた液封マウントに係るものである。液封マウントは、低周波数領域の振動を減衰させるために液体の流路を長くしたい場合がある。第2の発明では、被連結部のY方向長さがX方向長さよりも長いので、空洞の内周部の周方向に沿って延び流路も、Y方向に長くしやすい。したがって、防振装置を、X方向への変位を制限できるように構成でき、しかも低周波数領域の振動を減衰しやすい液封マウントとすることができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記被連結部は、前記取付部のY方向一方側に設けられ、前記制限部材は、前記被連結部のX方向一方側及びX方向他方側にそれぞれ設けられた、前記支持体に固定される一対の固定部と、それぞれ、前記一対の固定部のZ方向一方側に設けられ、前記被連結部のX方向一方側及びX方向他方側を覆う、前記一対のストッパと、前記被連結部のZ方向一方側に設けられ、前記一対のストッパを互いに連結する第1補強部と、前記被連結部のY方向一方側に設けられ、前記一対のストッパを互いに連結する第2補強部とを有する。
【0011】
この第3の発明では、コア部及び被連結部の相対変位を制限する一対のストッパは、第1補強部及び第2補強部により補強されているため、強度が高い。また、第2補強部は、被連結部のY方向一方側に設けられているので、被連結部のコア部に対するY方向一方側への変位も制限できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によると、防振装置を、特定方向への変位を制限できるように構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る液封マウントを、右前方から示す斜視図である。
図2】実施形態に係る液封マウントを、左後方から示す斜視図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】コア部、取付部及び被連結部を、上方から示す平面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物又はその用途を制限することを意図しない。
【0015】
(実施形態)
図1~4は本発明に係る防振装置の一実施形態である液封マウントMを示す。液封マウントMは、エンジンの動力を伝達するトランスミッション(被支持体)と、エンジン及びトランスミッションを下方で支持する車体の一部である支持体Bとの間に取り付けられる。以下では、前後方向(X方向)、左右方向(Y方向)及び上下方向(Z方向)とは、それぞれ車両の前後方向、左右方向及び上下方向を意味する。
【0016】
図3は、図1及び2のY方向及びZ方向に沿った切断面で切断した断面(以下「YZ断面」という)を示し、図4は、図1及び2のZ方向及びX方向に沿った切断面で切断した断面(以下「ZX断面」という)を示す。
【0017】
液封マウントMは、支持体Bに固定されるコア部1と、トランスミッションに固定される取付部2と、コア部1から上方(Z方向一方側)に離れた位置に設けられ、右側で取付部2と一体となった被連結部3とを備える。また、液封マウントMは、コア部1及び被連結部3の間の空間S1を囲み、コア部1及び被連結部3を連結する弾性部4と、コア部1及び被連結部3の間における弾性部4により囲まれた空間S1を、上方から塞ぐ液封部5を備える。また、液封マウントMは、被連結部3の上方、前方(X方向一方側)、後方(X方向他方側)及び左方(Y方向一方側)を覆うブラケット6(制限部材)を備える。コア部1、取付部2、被連結部3及びブラケット6は、いずれも剛性を有する、例えば樹脂製又は金属製のものであり、弾性部4は、弾性を有する、例えばゴム製のものである。
【0018】
図5は、上方から見た、コア部1、取付部2及び被連結部3を示す。なお、図5では、コア部1は、外形のみ破線によって示す。
【0019】
―コア部―
コア部1は、図5に破線で示すように、上方から見た外形が左右方向を長軸とする略楕円形状に形成されている。コア部1を上方から見た外形において、前後方向に対向する一対の端部は、それぞれ左右方向に延びる直線状に形成され、左右方向に対向する一対の端部は、それぞれ上方から見たコア部1中心を円の中心とする円弧状に形成されている。
【0020】
コア部1は、図3及び4に示すように、左右方向長さ及び前後方向長さが、いずれも上方にいくに従い徐々に小さくなるように形成されている。このため、コア部1の外周部は、被連結部3と対向する上端部近くの部位において、上方にいくに従い、後述する中心線C(図3及び4の一点鎖線を参照)に近づくように傾斜した外周面1aを有している。
【0021】
コア部1及び支持体Bには、ボルトにより互いに固定されるための孔部1b,1bが2つ、上下方向に貫通形成されている。
【0022】
―取付部―
取付部2は、コア部1の右方に設けられている。取付部2は、図1に示すように、上下方向の高さが最も高い中央部21と、中央部21から前方及び後方に向かって、それぞれ高さが徐々に低くなった前部22及び後部23を有する。中央部21の上下方向高さは、コア部1の上下方向高さよりも3倍以上高く、取付部2全体の前後方向長さは、コア部1の前後方向長さよりも3倍以上長い。
【0023】
前部22及び後部23は、それぞれの下部に、トランスミッションに取り付けられるためにボルトにより挿通される孔22a,23aが設けられている。前部22及び後部23の間には、両者を前後方向に連結する連結部24が設けられている。連結部24は、前後方向に延びて形成されており、前側で前部22と一体に結合し、後側で後部23と一体に結合している。連結部24の前後方向中央部には、トランスミッションに取り付けられるためにボルトにより挿通される孔24aが設けられている。
【0024】
―被連結部―
被連結部3は、コア部1の上方で、且つ取付部2の中央部21の左方に設けられている。被連結部3は上方から見た外形が略矩形状である。被連結部3は、左右方向長さが前後方向長さよりも長く形成されている。被連結部3には、取付部2の上方で、上下方向に貫通した空洞3aが設けられている。空洞3aを上方から見た形状は、図5に示すように、コア部1を上方から見た外形を拡大したような形状である。すなわち、空洞3aを上方から見た形状は、左右方向を長軸方向とする略楕円形状である。空洞3aは、上方から見て、前後方向に対向する一対の内周部がそれぞれ左右方向に延びる直線状に形成されている。空洞3aは、上方から見て、左右方向に対向する一対の内周部が、空洞3a中心を円の中心とする円弧状に形成されている。空洞3aは、左右方向長さが前後方向長さよりも長く、且つ前後方向及び左右方向のいずれにおいてもコア部1の外形よりも大きく形成されている。
【0025】
図6は、図3における取付部2及び被連結部3のみ示すYZ断面(図5のVI-VI断面)を示す。空洞3aの内周部は、弾性部4により結合された結合部31を有する。結合部31は、図3及び4からもわかるように、空洞3aの内周部の下側の部位に設けられている。結合部31の上端部は、図3~5に示すように、空洞3aの内周部における上側の部位(結合部31以外の部位)よりも、全周にわたって内周側に突出している。
【0026】
各部位の名称を、以下のように定義する。図3及び6に示される、結合部31において左右方向に対向する一対の部位を、一対の第1結合部31a,31aとする。図4に示される、結合部31において前後方向に対向する部位を、一対の第2結合部31b,31bとする。各第1結合部31aにおいて最も下方に位置する端部を第1端部31cとする。各第2結合部31bにおいて最も下方に位置する端部を第2端部31dとする。また、空洞3aの中央部を通過して上下方向に延びる直線を中心線Cとする。
【0027】
各第1結合部31aは、図3に示すように、コア部1に向かって突出した突出部32を有している。各突出部32は、先端部32aにいくに従いコア部1までの距離が近くなるように突出している。各突出部32は、図5に示すように、空洞3aの内周部における、左右方向に対向する一対の円弧状の部位の周方向に沿って設けられている。
【0028】
各第2結合部31bは、図4に示すように、下方にいくに従い中心線Cから遠ざかるように傾斜した傾斜面33を有している。各傾斜面33は、空洞3aの内周部における、前後方向に対向する、左右方向に延びる一対の直線状の部位に設けられている。
【0029】
一対の第1端部31c,31cは、図6からもわかるように、いずれも一対の第2端部31d,31dよりも下方に位置している。このため、第1端部31c,31cと、第2端部31d,31dとの間には、上下方向に段差Stが形成されている。
【0030】
―弾性部―
弾性部4は、図3及び4に示すように、被連結部3の内周部における結合部31と、コア部1の外周部及びコア部1の上面とを連結している。弾性部4は、肉厚の略ボウル状に形成されている。弾性部4は、コア部1及び被連結部3の間の空間S1を、被連結部3の空洞3aの内周部の周方向に沿って、全周にわたって囲むように設けられている。弾性部4は、被連結部3の空洞3aの内周部における結合部31から、下方にいくに従い、中心線Cに近づくように延びている。
【0031】
弾性部4は、コア部1と被連結部3とが互いに振動すると、当該振動を吸収する。コア部1及び被連結部3が互いに前後方向に相対的に振動する場合、コア部1及び被連結部3が左右方向に相対的に振動する場合よりも、振動を吸収しやすく構成されている。すなわち、弾性部4は、左右方向よりも前後方向にやわらかい。
【0032】
―液封部―
液封部5は、図3及び4に示すように、弾性部4により囲まれた空洞3a内の空間S1の上方を塞ぎ、これによって当該空間S1を主液室としている。液封部5の内部には、後述するように、副液室としての空間S2と、空洞3aの内周部の周方向に沿って延び、副液室S2と主液室S1とを連通させる液体の流路S3とが設けられている。
【0033】
液封部5は、下側プレート51と、メンブラン52と、上側プレート53と、ダイヤフラム54と、リング55とを有する。下側プレート51、メンブラン52、上側プレート53、ダイヤフラム54及びリング55は、上方から見た外形が、いずれも空洞3aの内周部の周方向に沿った略楕円形状に形成されている。下側プレート51、上側プレート53及びリング55は、いずれも例えば金属製の、剛性のものであり、メンブラン52及びダイヤフラム54は、いずれもゴム製のものである。
【0034】
下側プレート51、メンブラン52、上側プレート53及びダイヤフラム54は、弾性部4によって囲まれた空間S1の上方において、下方から上方に向かってこの順序で設けられている。下側プレート51は、底部51aと、底部51aの外周を囲む外周部51bとを有する。底部51aの上面には、下方に窪んだ凹部51cが設けられている。下側プレート51の外周部51bは、底部51aの外周側で且つ底部51aよりも上方に設けられている。このため、外周部51bの上面は、底部51aの上面よりも上方に位置し、底部51aの上方の空間は、外周部51bによって囲まれている。外周部51bの上面には、周方向に延びる溝が設けられている。
【0035】
メンブラン52は、下側プレート51の凹部51cに収容されている。上側プレート53は、上方からみた外形が、下側プレート51の外周部51bの内周面と略同じ形状に形成されている。上側プレート53は、下側プレート51の外周部51bによって囲まれた、底部51aの上方の空間に配置されている。
【0036】
ダイヤフラム54は、厚さが略均一な薄板がYZ断面及びZX断面において波状となるように湾曲し、上側プレートの上方を覆うように設けられている。上側プレート53及びダイヤフラム54の間には、ダイヤフラム54の周方向に全周にわたって延びる、副液室としての空間S2が構成されている。ダイヤフラム54を上から見た外形は、下側プレート51の外周部51bの外形と略同じである。ダイヤフラム54において、下側プレート51の外周部51bの溝と上方で重なる部位には、ダイヤフラム54の厚さ方向全体が上方に隆起した隆起部が設けられている。隆起部の下面側は、下側プレート51の外周部51bの溝を上下反転させた溝となっており、隆起部の上面側は上方に突出している。下側プレート51の外周部51bの溝、及びダイヤフラム54の下面側の溝は、上下で一体となって、液体の流路S3を構成している。流路S3は、主液室S1及び副液室S2と連通している。
【0037】
リング55は、下側プレート51の外周部51bの周方向に沿って延びる環状に形成されている。リング55の下面には、隆起部に対応する溝が設けられており、当該溝にダイヤフラム54の隆起部が下方から嵌合している。
【0038】
―ブラケット―
ブラケット6は、支持体Bに固定される一対の第1固定部61,61を有する。第1固定部61,61は、上下方向視で略矩形状の板状に形成され、被連結部3の前方及び後方にそれぞれ設けられている。各第1固定部61には、ボルトを挿通して車体Bに固定されるための、上下方向に貫通する孔61a,61aが設けられている。
【0039】
ブラケット6は、一対の第1固定部61,61の上方で、被連結部3の前方及び後方に設けられた、一対の壁部62,62(ストッパ)を有する。一対の壁部62,62は、それぞれ、前側の第1固定部61の後端部及び後側の第1固定部61の前端部と連続し、上方に突出している。一対の壁部62,62は、前後方向視で、左右方向に長い矩形状に形成されている。一対の壁部62,62は、被連結部3の前端部の前側及び後端部の後側をそれぞれ覆っている。一対の壁部62,62は、被連結部3がコア部1に対して前後方向への変位する際、被連結部3の前端部及び後端部にそれぞれ当接して被連結部3の変位を制限する、一対のストッパとして機能する。
【0040】
ブラケット6は、被連結部3の上方に設けられた、一対の壁部62,62を互いに連結する第1補強部63を有する。第1補強部63は、前側の壁部62の上端部から後側の壁部62の上端部まで連続する、上下方向視で略矩形状に形成されている。第1補強部63は、被連結部3の上方を覆っている。
【0041】
ブラケット6は、被連結部3の左方に設けられた、一対の壁部62,62を互いに連結する第2補強部64を有する。第2補強部64は、前側の壁部62の左端部から後側の壁部62の左端部まで連続する、左右方向視で略矩形状に形成されている。第2補強部64の上端部は、第1補強部63の左端部と連続して形成されている。第2補強部64は、被連結部3の左方を覆っている。
【0042】
ブラケット6は、支持体Bに固定される第2固定部65と第3固定部66とを有する。第2固定部65は、前後方向に延びる、第1補強部63左端部と第2補強部64上端部との接続部から、左上方向に突出した、板状に形成されている。第3固定部66は、第2補強部64右後端部において、後側の壁部62上端部との接続部から、右後方向に突出した前後方向及び左右方向に平たい板状に形成されている。第2固定部65及び第3固定部66には、ボルトを挿通して車体Bに固定されるための、厚さ方向に貫通する孔65a,66aが、それぞれ設けられている。
【0043】
―実施形態の作用・効果―
本実施形態では、被連結部3の左右方向長さが前後方向長さよりも長いので、左右方向よりも前後方向の方が、被連結部3が占有しないスペースが広い。したがって、前後方向の広いスペースを利用して、前後方向にストッパとしての一対の壁部62,62を設けやすい。そして、被連結部3がコア部1に対して前後方向への変位する際、被連結部3の前後方向両端部に当接して被連結部3の変位が制限される。このように、液封マウントMを、前後方向への変位を制限できるように構成できる。
【0044】
ところで、液封マウントMは、低周波数領域の振動を減衰させるために液体の流路を長くしたい場合がある。本実施形態では、被連結部3の左右方向長さが前後方向長さよりも長いので、空洞3aの内周部の周方向に沿って延びる流路S3も、左右方向に長くしやすい。本実施形態によれば、液封マウントMを、前後方向への変位を制限できるように構成でき、しかも低周波数領域の振動を減衰しやすくできる。
【0045】
本実施形態では、コア部1及び被連結部2の相対変位を制限する一対の壁部62,62は、第1補強部63及び第2補強部64により補強されているため、強度が高い。また、第2補強部64は、被連結部3の左方に設けられているので、被連結部2のコア部1に対する左方への変位も制限できる。
【0046】
ところで、車両は、発車及び停車にともない、前後方向に振動を受けやすいので、液封マウントMで前後方向の振動を特に吸収したい場合がある。本実施形態に係る液封マウントMは、前記のように前後方向への振動を吸収しやすいので、前後方向の振動を吸収しやすい液封マウントMとして、特に有用である。
【0047】
また、本実施形態に係る液封マウントMは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)のうち、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」及び目標12「つくる責任・つかう責任」の達成に貢献できる。
【0048】
(その他の実施形態)
本発明に係る防振装置は、液封マウントMに限られず、少なくとも一方が振動する支持体と被支持体との間に取り付けられるものであればよい。
【0049】
前記実施形態では、X方向、Y方向及びZ方向は、それぞれ車両の前後方向、左右方向及び上下方向に対応するが、これに限られず、X方向及びY方向がZ方向に対して垂直で且つ互いに垂直な2つの方向であればよい。
【0050】
また、前記実施形態の液封マウントMを上下逆の構成にしてもよい。すなわち、被連結部3がコア部1の下方に位置し、弾性部4が、被連結部3から上方にいくに従い、中心線Cに近づくように延びていてもよい。
【0051】
また、前記実施形態の液封マウントMを、Z方向を回転軸として90度回転させて配置してもよい。すなわち、前記実施形態の前後方向が左右方向を向き、前記実施形態の左右方向が前後方向を向くように液封マウントMを配置してもよい。
【0052】
また、制限部材の構成は、前記実施形態のブラケット6の構成に限られない。制限部材は、第1補強部63及び第2補強部64のうち一方又は両方を有していてないブラケットであってもよい。また、制限部材は、被連結部3のX方向一方側及びX方向他方側にそれぞれ設けられ、被連結部3のX方向両端部に当接して被連結部3のX方向の変位を制限する、一対のストッパを有していればよいので、ブラケットでなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、防振装置として有用である。
【符号の説明】
【0054】
M 液封マウント(防振装置)
B 支持体
1 コア部
2 取付部
3 被連結部
3a 空洞
4 弾性部
5 液封部
S1 空間(主液室)
S2 空間(副液室)
S3 流路
6 ブラケット(制限部材)
62 壁部(ストッパ)
63 第1補強部
64 第2補強部
図1
図2
図3
図4
図5
図6