(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038697
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/06 20060101AFI20240313BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L29/78 652K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142921
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳田 悟
(57)【要約】
【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体装置は、n型の半導体基板SUB中に形成されたトレンチTRと、p型のボディ領域PBと、n型のソース領域NSと、トレンチTRの下部に形成されたフィールドプレート電極FPと、トレンチTRの上部に形成されたゲート電極GEと、を備える。ゲート電極GEには、ゲート電位が供給され、ソース領域NSおよびボディ領域PBには、ソース電位が供給され、半導体基板SUBには、ドレイン電位が供給される。フィールドプレート電極FPには、ソース電位よりも高く、且つ、ドレイン電位よりも低い電位が供給される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の前記上面に形成されたトレンチと、
断面視において前記トレンチの深さよりも浅くなるように前記半導体基板に形成され、且つ、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域に形成された前記第1導電型のソース領域と、
前記トレンチの内部において、前記トレンチの下部に形成されたフィールドプレート電極と、
前記トレンチの前記内部において、前記トレンチの上部に形成され、且つ、前記フィールドプレート電極から電気的に絶縁されたゲート電極と、
前記トレンチの前記内部において、前記半導体基板と前記フィールドプレート電極との間に形成された第1絶縁膜と、
前記トレンチの前記内部において、前記半導体基板と前記ゲート電極との間に形成されたゲート絶縁膜と、
を備え、
前記ゲート電極には、ゲート電位が供給され、
前記ソース領域および前記ボディ領域のそれぞれには、ソース電位が供給され、
前記半導体基板には、ドレイン電位が供給され、
前記フィールドプレート電極には、前記ソース電位よりも高く、且つ、前記ドレイン電位よりも低い第1電位が供給され、
前記第1絶縁膜の厚さは、前記ゲート絶縁膜の厚さの2倍の厚さよりも薄い、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1電位は、前記ドレイン電位よりも前記ゲート電位に近く、
前記第1絶縁膜の厚さは、前記ゲート絶縁膜の厚さよりも厚い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1電位は、前記ゲート電位よりも前記ドレイン電位に近く、
前記第1絶縁膜の厚さは、前記ゲート絶縁膜の厚さよりも薄い、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板、前記トレンチ、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極、前記第1絶縁膜、前記フィールドプレート電極、前記ボディ領域および前記ソース領域を含むMOSFETを備え、
前記MOSFETのオフ動作時に前記フィールドプレート電極に供給される前記第1電位は、前記MOSFETのオン動作時に前記フィールドプレート電極に供給される前記第1電位と異なる、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成されたソース電極と、
平面視において前記ソース電極を囲むように、前記層間絶縁膜上に形成されたフィールドプレート配線と、
平面視において前記フィールドプレート配線を囲むように、前記層間絶縁膜上に形成されたゲート配線と、
前記半導体基板の前記下面下に形成されたドレイン電極と、
を更に備え、
前記フィールドプレート電極の一部は、前記トレンチの前記内部において、前記トレンチの前記下部だけでなく前記トレンチの前記上部にも形成され、且つ、前記フィールドプレート電極のコンタクト部を成し、
前記層間絶縁膜中には、前記ソース領域および前記ボディ領域に達する第1孔と、前記ゲート電極に達する第2孔と、前記コンタクト部に達する第3孔とが形成され、
前記ソース電極は、前記第1孔内に埋め込まれ、前記ソース領域および前記ボディ領域に電気的に接続され、且つ、前記ソース領域および前記ボディ領域に前記ソース電位を供給し、
前記ゲート配線は、前記第2孔内に埋め込まれ、前記ゲート電極に電気的に接続され、且つ、前記ゲート電極に前記ゲート電位を供給し、
前記フィールドプレート配線は、前記第3孔内に埋め込まれ、前記フィールドプレート電極に電気的に接続され、且つ、前記フィールドプレート電極に前記第1電位を供給し、
前記ドレイン電極は、前記半導体基板に前記ドレイン電位を供給する、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記半導体基板には、複数の前記トレンチが形成され、
前記複数の前記トレンチは、それぞれ平面視における第1方向に延在し、且つ、平面視で前記第1方向と直交する第2方向に延在する連結部によって、互いに連通し、
前記コンタクト部は、前記第1方向に延在する前記複数の前記トレンチのうちの一部に形成されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記トレンチを覆うように、前記半導体基板の前記上面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成されたソース電極と、
平面視において前記ソース電極を囲むように、前記層間絶縁膜上に形成されたゲート配線と、
平面視において前記ゲート配線を囲むように、前記層間絶縁膜上に形成されたフィールドプレート配線と、
前記半導体基板の前記下面下に形成されたドレイン電極と、
を更に備え、
前記フィールドプレート電極の一部は、前記トレンチの前記内部において、前記トレンチの前記下部だけでなく前記トレンチの前記上部にも形成され、且つ、前記フィールドプレート電極のコンタクト部を成し、
前記層間絶縁膜中には、前記ソース領域および前記ボディ領域に達する第1孔と、前記ゲート電極に達する第2孔と、前記コンタクト部に達する第3孔とが形成され、
前記ソース電極は、前記第1孔内に埋め込まれ、前記ソース領域および前記ボディ領域に電気的に接続され、且つ、前記ソース領域および前記ボディ領域に前記ソース電位を供給し、
前記ゲート配線は、前記第2孔内に埋め込まれ、前記ゲート電極に電気的に接続され、且つ、前記ゲート電極に前記ゲート電位を供給し、
前記フィールドプレート配線は、前記第3孔内に埋め込まれ、前記フィールドプレート電極に電気的に接続され、且つ、前記フィールドプレート電極に前記第1電位を供給し、
前記ドレイン電極は、前記半導体基板に前記ドレイン電位を供給する、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記半導体基板には、複数の前記トレンチが形成され、
前記複数の前記トレンチは、それぞれ平面視における第1方向に延在し、且つ、平面視で前記第1方向と直交する第2方向で互いに分離している、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、トレンチの内部にゲート電極およびフィールドプレート電極を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のような半導体素子を備えた半導体装置では、トレンチの内部にゲート電極が埋め込まれたトレンチゲート構造が適用されている。トレンチゲート構造の一種として、トレンチの内部において、トレンチの下部にフィールドプレート電極を形成し、トレンチの上部にゲート電極を形成したスプリットゲート構造がある。フィールドプレート電極には、ソース電極に供給(印加)される電位と同じ電位が供給(印加)される。このフィールドプレート電極によって、ドリフト領域において空乏層を広げることで、ドリフト領域を高濃度化することが可能となり、ドリフト領域の低抵抗化が可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゲート電極およびフィールドプレート電極を有するスプリットゲート構造を適用した半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーMOSFETのオン抵抗を低減するために、セルピッチをシュリンクし、ドリフト領域およびチャネル領域を低抵抗化する手法が行われている。しかし、そのような手法では、トレンチおよび各コンタクトホールの寸法をシュリンクする必要があるので、それらの加工が難しくなる。また、シュリンクに伴い、チャージバランス(より具体的には、チャージバランスを示す曲線の傾き)が急峻(不安定)になる虞もある。
【0006】
チャージバランスが急峻になると、ドリフト領域の抵抗値、トレンチの幅およびフィールドプレート電極用の絶縁膜の厚さにバラつきが生じた場合、ソースとドレインとの間の耐圧が大きく変動する。従って、製造マージンを確保することが困難になる。
【0007】
本願の主な目的は、セルピッチのシュリンクを行うことなく、製造マージンを確保しながら、オン抵抗を低減できる技術を提供することにある。それにより、半導体装置の性能を向上させる。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置は、上面および下面を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の前記上面に形成されたトレンチと、断面視において前記トレンチの深さよりも浅くなるように前記半導体基板に形成され、且つ、前記第1導電型とは反対の導電型である第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域に形成された前記第1導電型のソース領域と、前記トレンチの内部において、前記トレンチの下部に形成されたフィールドプレート電極と、前記トレンチの前記内部において、前記トレンチの上部に形成され、且つ、前記フィールドプレート電極から電気的に絶縁されたゲート電極と、前記トレンチの前記内部において、前記半導体基板と前記フィールドプレート電極との間に形成された第1絶縁膜と、前記トレンチの前記内部において、前記半導体基板と前記ゲート電極との間に形成されたゲート絶縁膜と、を備える。ここで、前記ゲート電極には、ゲート電位が供給され、前記ソース領域および前記ボディ領域のそれぞれには、ソース電位が供給され、前記半導体基板には、ドレイン電位が供給され、前記フィールドプレート電極には、前記ソース電位よりも高く、且つ、前記ドレイン電位よりも低い第1電位が供給され、前記第1絶縁膜の厚さは、前記ゲート絶縁膜の厚さの2倍の厚さよりも薄い。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
【
図3】実施の形態1における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
【
図4】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図6】検討例における半導体装置を示す断面図である。
【
図7】本願発明者によるシミュレーションの結果を示す模式図である。
【
図8】本願発明者によるシミュレーションの結果を示す模式図である。
【
図9】本願発明者によるシミュレーションの測定結果を示す表である。
【
図10】本願発明者による検討結果を示す表である。
【
図11】実施の形態2における半導体装置を示す平面図である。
【
図12】実施の形態2における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
【
図13】実施の形態2における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
【
図14】実施の形態2における半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0014】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に
図1~
図5を用いて、実施の形態1における半導体装置100について説明する。半導体装置100は、半導体素子としてトレンチゲート構造のMOSFETを含む。また、実施の形態1のMOSFETは、ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPを備えたスプリットゲート構造を成している。
【0015】
図1は、半導体装置100である半導体チップの平面図である。
図2および
図3は、
図1の拡大領域1Aを拡大した要部平面図である。
図1および
図2は、主に半導体基板SUBの上方に形成される配線パターンを示している。
図3は、
図2の下方の構造体を示し、半導体基板SUBに形成されたトレンチゲートの構造を示している。
【0016】
また、半導体装置100は、セル領域CRと、平面視においてセル領域CRを囲む外周領域ORとを含んでいる。セル領域CRには、複数のMOSFETのような主要な半導体素子が形成される。外周領域ORには、ゲート配線GWおよびフィールドプレート配線FPWが設けられている。外周領域ORにおいて、ゲート配線GWは、ゲート電極GEに電気的に接続され、フィールドプレート配線FPWは、フィールドプレート電極FPに電気的に接続される。
【0017】
図1に示されるように、半導体装置100の大部分はソース電極SEで覆われている。フィールドプレート配線FPWは、平面視においてソース電極SEを囲んでいる。ゲート配線GWは、平面視においてフィールドプレート配線FPWを囲んでいる。
【0018】
ここでは図示していないが、ソース電極SE、ゲート配線GWおよびフィールドプレート配線FPWは、ポリイミド膜などの保護膜で覆われている。上記保護膜の一部には開口部が設けられ、その開口部で露出しているソース電極SE、ゲート配線GWおよびフィールドプレート配線FPWが、ソースパッドSP、ゲートパッドGPおよびフィールドプレートパッドFPPになる。ソースパッドSP上、ゲートパッドGP上およびフィールドプレートパッドFPP上に、ワイヤまたはクリップ(銅板)などの外部接続用部材が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップまたは配線基板などに電気的に接続される。
【0019】
本願の主な特徴は、フィールドプレート電極FPにソース電位以外の他の電位が供給される点にある。そのため、従来技術と異なり、フィールドプレート電極FPに独立の電位を供給するためのフィールドプレート配線FPWが設けられている。そのようなフィールドプレート電極FPに関する特徴については、後で詳細に説明する。
【0020】
図3に示される孔CH1~CH3の位置は、
図2に示される孔CH1~CH3の位置と一致している。
図3に示されるように、セル領域CRおよび外周領域ORにおいて、複数のトレンチTRは、Y方向に延在し、X方向において互いに隣接している。また、Y方向に延在する複数のトレンチTRは、X方向に延在する連結部TRaによって、互いに連通している。トレンチTRの内部において、トレンチTRの下方(下部)にはフィールドプレート電極FPが形成され、トレンチTRの上方(上部)にはゲート電極GEが形成されている。
【0021】
フィールドプレート電極FPの一部は、コンタクト部FPaを成している。コンタクト部FPaを構成するフィールドプレート電極FPは、セル領域CRのトレンチTRの内部において、トレンチTRの下方だけでなく、トレンチTRの上方にも形成されている。
【0022】
図3に示されるように、ゲート電極GEおよびコンタクト部FPaは、半導体基板SUBから露出している。外周領域ORにおいて、ゲート電極GE上には、孔CH2が形成され、コンタクト部FPa上には、孔CH3が形成されている。ゲート電極GEは、孔CH2を介してゲート配線GWに電気的に接続されている。コンタクト部FPaは、孔CH3を介してフィールドプレート配線FPWに電気的に接続されている。また、セル領域CRにおいて、ソース領域NS上およびボディ領域PB上には、孔CH1が形成されている。ソース領域NSおよびボディ領域PBは、孔CH1を介してソース電極SEに電気的に接続されている。
【0023】
上述のように、複数のトレンチTRは、連結部TRaによって互いに連通しているので、複数のトレンチTRの内部に形成されているフィールドプレート電極FPおよびゲート電極GEは、一体化し、互いに導通している。従って、外周領域ORにおいて、コンタクト部FPaに供給されたフィールドプレート電位は、セル領域CRの全てのフィールドプレート電極FPに供給される。
【0024】
また、コンタクト部FPaによって、外周領域ORのゲート電極GEはY方向で分断されることになるが、コンタクト部FPaは、Y方向に延在する複数のトレンチTRのうちの一部に形成され、全てのトレンチTRには形成されていない。そのため、外周領域ORにおいて供給されたゲート電位は、セル領域CRの全てのゲート電極GEに供給される。
【0025】
なお、連結部TRaは、セル領域CRと外周領域ORとの境界付近に設けられ、孔CH1と、孔CH3との間で、各トレンチTRを繋いでいる。
【0026】
以下に
図4および
図5を用いて、半導体装置100の断面構造について説明する。
図4は、
図2および
図3に示されるA-A線およびB-B線に沿った断面図である。
図5は、
図2および
図3に示されるC-C線に沿った断面図である。
【0027】
まず、
図4のA-A断面を用いて、MOSFETが含む基本的な構成について説明する。半導体装置100は、上面TSおよび下面BSを有するn型の半導体基板SUBを備える。半導体基板SUBは、低濃度のn型のドリフト領域NVを有する。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型の半導体層であってもよい。本願では、そのようなn型のシリコン基板およびn型の半導体層からなる積層体も半導体基板SUBであるとして説明する。
【0028】
半導体基板SUBの上面TS側において、半導体基板SUB中には、半導体基板SUBの上面TSから所定の深さに達するトレンチTRが形成されている。トレンチTRの内部において、トレンチTRの下方には、絶縁膜IF1を介してフィールドプレート電極FPが形成され、トレンチTRの上方には、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが形成されている。
【0029】
絶縁膜IF1の上面の位置は、フィールドプレート電極FPの上面の位置よりも低くなっている。ゲート絶縁膜GIは、絶縁膜IF1上のトレンチTRの内部に形成されている。絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPの上面および側面には、絶縁膜IF2が形成されている。
【0030】
絶縁膜IF1は、半導体基板SUBとフィールドプレート電極FPとの間に形成されている。絶縁膜IF2は、ゲート電極GEとフィールドプレート電極FPとの間に形成されている。ゲート絶縁膜GIは、半導体基板SUBとゲート電極GEとの間に形成されている。これらの絶縁膜によって、半導体基板SUB、ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPは、互いに電気的に絶縁されている。
【0031】
ゲート電極GEの上面は、半導体基板SUBの上面TSよりも若干後退している。ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜からなる。絶縁膜IF1、絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0032】
半導体基板SUBの上面TS側において、半導体基板SUBには、トレンチTRの深さよりも浅くなるように、p型のボディ領域PBが形成されている。ボディ領域PBには、n型のソース領域NSが形成されている。ソース領域NSは、ドリフト領域NVよりも高い不純物濃度を有している。
【0033】
半導体基板SUBの下面BS側において、半導体基板SUBには、n型のドレイン領域NDが形成されている。ドレイン領域NDは、ドリフト領域NVよりも高い不純物濃度を有している。半導体基板SUBの下面BS下には、ドレイン電極DEが形成されている。ドレイン領域NDおよび半導体基板SUBには、ドレイン電極DEからドレイン電位が供給される。ドレイン電極DEは、例えばアルミニウム膜、チタン膜、ニッケル膜、金膜若しくは銀膜のような単層の金属膜、または、これらの金属膜を適宜積層させた積層膜からなる。
【0034】
半導体基板SUBの上面TS上には、トレンチTRを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなる。なお、層間絶縁膜ILは、薄い酸化シリコン膜と、リンを含む厚い酸化シリコン膜(PSG:Phospho Silicate Glass膜)との積層膜であってもよい。
【0035】
層間絶縁膜IL中には、ソース領域NSおよびボディ領域PBに達する孔CH1が形成されている。孔CH1の底部において、ボディ領域PBには、高濃度拡散領域PRが形成されている。高濃度拡散領域PRは、ボディ領域PBよりも高い不純物濃度を有する。
【0036】
図4のA-A断面に示されるように、セル領域CRにおいて、層間絶縁膜IL上には、ソース電極SEが形成されている。ソース電極SEは、孔CH1の内部に埋め込まれている。また、ソース電極SEは、ソース領域NS、ボディ領域PBおよび高濃度拡散領域PRに電気的に接続され、これらにソース電位を供給する。
【0037】
図4のB-B断面および
図5に示されるように、フィールドプレート電極FPの一部は、フィールドプレート電極FPのコンタクト部FPaを成している。コンタクト部FPa以外のフィールドプレート電極FPに接している絶縁膜IF1の上面の位置は、コンタクト部FPaに接している絶縁膜IF1の上面の位置よりも低くなっている。また、コンタクト部FPaの上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSの位置よりも高くなっている。なお、コンタクト部FPaの上面の位置は、半導体基板SUBの上面TSの位置よりも低い、または、同じ高さであってもよい。
【0038】
外周領域ORにおいて、層間絶縁膜IL中には、ゲート電極GEに達する孔CH2と、コンタクト部FPaに達する孔CH3とが形成されている。外周領域ORにおいて、層間絶縁膜IL上には、フィールドプレート配線FPWおよびゲート配線GWが形成されている。ゲート配線GWは、孔CH2の内部に埋め込まれ、ゲート電極GEに電気的に接続され、ゲート電極GEにゲート電位を供給する。フィールドプレート配線FPWは、孔CH3の内部に埋め込まれ、コンタクト部FPaに電気的に接続され、フィールドプレート電極FPにフィールドプレート電位を供給する。
【0039】
ソース電極SE、ゲート配線GWおよびフィールドプレート配線FPWは、例えば、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とからなる。上記バリアメタル膜は、例えば窒化チタン膜であり、上記導電性膜は、例えばアルミニウム膜である。
【0040】
なお、ソース電極SE、ゲート配線GWおよびフィールドプレート配線FPWは、孔CH1~CH3の内部を埋め込むプラグ層と、層間絶縁膜IL上に形成された配線層とから構成されていてもよい。その場合、配線層は、上記バリアメタル膜および上記導電性膜によって構成される。プラグ層は、例えば、窒化チタン膜のようなバリアメタル膜と、タングステン膜のような導電性膜との積層膜によって構成される。
【0041】
<検討例と、実施の形態1の主な特徴>
図6は、本願発明者が特許文献1などを基にして検討を行った検討例における半導体装置の断面図である。
図6に示されるように、検討例では、実施の形態1の絶縁膜IF1と比較して、絶縁膜IF0の厚さが、ゲート絶縁膜GIの厚さよりも十分に厚くなっている。また、検討例では、フィールドプレート配線FPWが設けられておらず、フィールドプレート電極FPは、ソース電極SEに電気的に接続されている。そのため、検討例のフィールドプレート電極FPには、ソース電位が供給される。
【0042】
以下に
図7~
図10を用いて、検討例と実施の形態1との比較を行いながら、実施の形態1の主な特徴について説明する。
【0043】
図7は、検討例および実施の形態1について、MOSFETのオフ動作時の電位分布を示している。
図8は、検討例および実施の形態1について、MOSFETのオン動作時の電位経路を示している。
図9は、検討例および実施の形態1について、ブレークダウン電圧BVdssおよびオン抵抗の測定結果を纏めた表である。
【0044】
ここでは、実施の形態1のフィールドプレート電極FPに供給される電位Vfpの値が10Vである。ゲート絶縁膜GIおよび絶縁膜IF2の各々の厚さは、検討例および実施の形態1で互いに同じ厚さであり、例えば300Åである。また、実施の形態1の絶縁膜IF1の厚さは、ゲート絶縁膜GIの厚さとほぼ同じ厚さであり、例えば300Åである。すなわち、絶縁膜IF1の厚さは、ゲート絶縁膜GIの厚さの2倍の厚さよりも薄い。一方、検討例の絶縁膜IF0の厚さは、例えば750Åである。すなわち、絶縁膜IF0の厚さは、ゲート絶縁膜GIの厚さの2倍の厚さよりも大きい。
【0045】
また、以降では、ゲート配線GWからゲート電極GEに供給される電位をゲート電位Vgとし、ソース電極SEからソース領域NSに供給される電位をソース電位Vsとし、ドレイン電極DEからドレイン電極DEに供給される電位をドレイン電位Vdとし、フィールドプレート配線FPWからフィールドプレート電極FPに供給される電位を電位Vfpとして説明する。なお、本実施の形態では、例えば、ゲート電位Vgは4.5Vであり、ソース電位Vsは0Vであり、ドレイン電位Vdは25Vである。ただし、前述の各電位値は何れも一例値であり、例えば、ソース電位Vsは0V以外の値であってもよい。
【0046】
図7に示されるように、実施の形態1では、オフ動作時における電位Vfpの値(電位値)がソース電位Vsの値(電位値)よりも大きい。すなわち、オフ動作時における電位Vfpの値は、ソース電位Vsの値とは異なる。より具体的には、オフ動作時における電位Vfpの値は、ソース電位Vsの値よりも大きく、且つ、ドレイン電位Vdの値よりも小さい。そのため、検討例(電位Vs=0V、電位Vfp=0V)と比較して、ドレイン電極DEとフィールドプレート電極FPとの間の電位差が低減され、フィールドプレート電極FPの底部付近の電界強度が低減されている。そのため、絶縁膜IF1を薄膜化しても、アバランシェ降伏電圧は維持され、ドレイン電極DEとソース電極SEとの間の耐圧も維持される。
【0047】
図8に示されるように、実施の形態1では、検討例と比較して、電流がトレンチTRの側面および底面に沿って流れやすい傾向がある。検討例では、オン動作時における電位Vfpの値がソース電位Vsの値と同じ値であるので、半導体基板SUBと絶縁膜IF1との界面におけるキャリア(電子)濃度は、他のドリフト領域NVと同等である。従って、電流経路は、比較的均一に広がっている。
【0048】
一方で、実施の形態1では、オン動作時における電位Vfpの値がソース電位Vsの値よりも大きい。すなわち、オン動作時における電位Vfpの値は、ソース電位Vsの値とは異なる。より具体的には、オン動作時における電位Vfpの値は、ソース電位Vsの値よりも大きく、且つ、ドレイン電位Vdの値よりも小さい。そのため、半導体基板SUBと絶縁膜IF1との界面において、キャリア(電子)が蓄積する。そのため、電流経路は、トレンチTRの側面および底面付近に集中する。従って、ドリフト抵抗が低減され、オン抵抗の低減を図ることができる。特に、絶縁膜IF1の厚さを薄くする程に、上記界面でキャリアが蓄積し易くなるので、更なるオン抵抗の低減を図れる。
【0049】
また、絶縁膜IF1の厚さを薄くできる分、トレンチTRの幅を縮小することも可能になる。その場合、各トレンチTR間のドリフト領域NVの幅を拡大できるので、更なるオン抵抗の低減を図れる。
【0050】
図9に示されるように、ブレークダウン電圧BVdssについては、検討例と実施の形態1との間で変化が無い。すなわち、実施の形態1では、アバランシェ降伏電圧は維持されているので、半導体装置100の信頼性を維持できる。また、実施の形態1では、検討例と比較して、オン抵抗が約25%低減されている。従って、実施の形態1によれば、セルピッチのシュリンクを行うことなく、製造マージンを確保し、且つ、半導体装置100の信頼性を維持しながら、半導体装置100の性能を向上させることができる。
【0051】
図10は、電位Vfpの値を変更した際に、最適となる絶縁膜IF1の厚さを検討したものである。
【0052】
電位Vfpの値を大きくする程に、ドレイン電極DEとフィールドプレート電極FPとの間の電位差が低減される。従って、絶縁膜IF1を薄膜化しても、アバランシェ降伏電圧は維持される。例えば、電位Vfpが5Vの際には、絶縁膜IF1の厚さを、ゲート絶縁膜GIの厚さよりも厚くすることができ、例えば400Åにすることができる。電位Vfpが10Vの際には、絶縁膜IF1の厚さを、ゲート絶縁膜GIの厚さとほぼ同じにすることができ、例えば300Åにすることもできる。電位Vfpが15Vの際には、絶縁膜IF1の厚さを、ゲート絶縁膜GIの厚さよりも薄くすることができ、例えば200Åにすることもできる。なお、ここで説明した各値は一例値であり、後述する条件の範囲内であれば、この限りではない。
【0053】
すなわち、電位Vfpの値がゲート電位Vgの値に近い値であれば、絶縁膜IF1の厚さを厚く設定でき、電位Vfpの値がドレイン電位Vdの値に近い値であれば、絶縁膜IF1の厚さを薄く設定できる。言い換えれば、電位Vfpの値がドレイン電位Vdの値よりもゲート電位Vgの値に近い場合、絶縁膜IF1の厚さを、ゲート絶縁膜GIの厚さよりも厚く設定することが好ましい。また、電位Vfpの値がゲート電位Vgの値よりもドレイン電位Vdの値に近い場合、絶縁膜IF1の厚さを、ゲート絶縁膜GIの厚さよりも薄く設定することが好ましい。
【0054】
なお、オフ動作時およびオン動作時では、絶縁膜IF1bに与える影響度が互いに異なる。すなわち、絶縁膜IF1の厚さまたは印加する電位Vfpの値によっては、オン動作時において、絶縁膜IF1が破壊されるおそれもある。そのため、電位Vfpの値がゲート電位Vgの値よりもドレイン電位Vdの値に近い場合の例として、電位Vfpの値は15Vであると説明したが、電位Vfpの値は、例えば12.5Vでもよい。また、絶縁膜IF1の厚さをゲート絶縁膜GIの厚さよりも薄く設定する場合の例として、絶縁膜IF1の厚さが200Åであると説明したが、絶縁膜IF1の厚さは、例えば250Åでもよい。
【0055】
また、電位Vfpを可変にすることもでき、MOSFETのオフ動作時における電位Vfpの値を、MOSFETのオン動作時における電位Vfpの値と異ならせてもよい。例えば、オフ動作時には、電位Vfpが20Vに設定され、オン動作時には、電位Vfpが15Vに設定されるような仕様にすることもできる。この電位Vfpの可変動作によって、絶縁膜IF1の厚さに合わせて、アバランシェ降伏電圧およびオン抵抗のバランスを最適化できる。
【0056】
(実施の形態2)
以下に
図11~
図14を用いて、実施の形態2における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0057】
図11は、実施の形態2における半導体装置100である半導体チップの平面図である。
図12および
図13は、
図1の拡大領域2Aを拡大した要部平面図である。
図13は、
図12の下方の構造体を示し、半導体基板SUBに形成されたトレンチゲートの構造を示している。
図14は、
図12および
図13に示されるD-D線に沿った断面図である。
【0058】
実施の形態2では、フィールドプレート配線FPWおよびゲート配線GWの形成位置が、実施の形態1と異なっている。
図11および
図12に示されるように、ゲート配線GWは、平面視においてソース電極SEを囲んでいる。フィールドプレート配線FPWは、平面視においてゲート配線GWを囲んでいる。
【0059】
実施の形態1では、複数のトレンチTRは連結部TRaによって互いに連通していたが、実施の形態2では、
図13に示されるように、連結部TRaが設けられておらず、複数のトレンチTRは、X方向で互いに分離している。
【0060】
それ故、実施の形態1のように、フィールドプレート配線FPWの外周側にゲート配線GWを配置すると、コンタクト部FPaによって、外周領域ORのゲート電極GEがY方向で分断されてしまう。そうすると、孔CH2を介して外周領域ORのゲート電極GEにゲート配線GWを接続させても、セル領域CRのゲート電極GEへゲート電位Vgを供給できなくなる。
【0061】
図13および
図14に示されるように、実施の形態2では、ゲート配線GWの外周側にフィールドプレート配線FPWを配置し、トレンチTRの最端部付近にコンタクト部FPaを設けている。孔CH2を介して外周領域ORのゲート電極GEにゲート配線GWを接続させることで、セル領域CRのゲート電極GEへゲート電位Vgを供給できる。また、孔CH3を介してコンタクト部FPaにフィールドプレート配線FPWを接続させることで、セル領域CRのフィールドプレート電極FPへフィールドプレート電位Vfpを供給できる。
【0062】
このように、複数のトレンチTRが実施の形態2のような平面レイアウトであっても、実施の形態1と同様に、フィールドプレート電位Vfpを、ソース電位Vs、ゲート電位Vgおよびドレイン電位Vdとは独立して個別に制御できる。従って、実施の形態2においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 半導体装置
1A、2A 拡大領域
BS 下面
CH1~CH3 孔
CR セル領域
DE ドレイン電極
FP フィールドプレート電極
FPa コンタクト部
FPP フィールドプレートパッド
FPW フィールドプレート配線
GE ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GP ゲートパッド
GW ゲート配線
IF0、IF1、IF2 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
ND ドレイン領域
NS ソース領域
NV ドリフト領域
OR 外周領域
PB ボディ領域
PR 高濃度拡散領域
SE ソース電極
SP ソースパッド
SUB 半導体基板
TR トレンチ
TRa 連結部
TS 上面