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特開2024-38709放射線検出モジュール及び放射線検出器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038709
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】放射線検出モジュール及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 G
G01T1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142940
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩太
(72)【発明者】
【氏名】會田 博之
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188AA27
2G188BB02
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD11
2G188DD12
2G188DD36
2G188DD42
2G188DD44
(57)【要約】
【課題】 製造歩留まりの高い放射線検出モジュール及びその放射線検出モジュールを備えた放射線検出器を提供する。
【解決手段】 可撓性の基材と、基材上に設けられた光電変換部と、基材上に設けられて光電変換部と電気的に接続された複数の電極部と、を備えた光電変換基板と、光電変換部の上に設けられたシンチレータ層と、各電極部に対応して設けたフレキシブル回路基板と、フレキシブル回路基板と電極部を接合すると共に電気的に接続する接着材と、フレキシブル回路基板の光電変換基板に対する変位を抑制する保持部材と、を備え、保持部材は基材接合部及び保持部を有し、基材接合部は、光電変換基板の光電変換部が設けられた側の面と反対側の面に接合されており、保持部は、フレキシブル回路基板に固定している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の基材と、前記基材上に設けられた光電変換部と、前記基材上に設けられて前記光電変換部と電気的に接続された複数の電極部と、を備えた光電変換基板と、
前記光電変換部の上に設けられたシンチレータ層と、
前記各電極部に対応して設けたフレキシブル回路基板と、
前記フレキシブル回路基板と前記電極部を接合すると共に電気的に接続する接着材と、
前記フレキシブル回路基板の前記光電変換基板に対する変位を抑制する保持部材と、を備え、
前記保持部材は基材接合部及び保持部を有し、
前記基材接合部は、前記光電変換基板の、前記光電変換部が設けられた側の面と反対側の面に接合されており、
前記保持部は、フレキシブル回路基板に固定している放射線検出モジュール。
【請求項2】
前記保持部材は可撓性を有する請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項3】
前記基材接合部において、前記基材の外周縁から最も離れた端部は、前記光電変換部の領域よりも外周側に位置する請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項4】
前記基材接合部において、前記基材の外周縁から最も離れた端部は、前記接着材における前記基材の外縁周から最も離れた端部よりも内周側に位置する請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項5】
前記シンチレータ層の上面を覆う防湿層と、前記シンチレータ層の外周に設けられた封止部とを有し、前記基材接合部における前記基材の外周縁から最も離れた端部は、前記封止部の外周縁よりも内周側に位置する請求項4に記載の放射線検出モジュール。
【請求項6】
前記保持部材は、樹脂シートの片面に粘着層を有する請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項7】
前記基材は、光電変換部が形成される側と反対側の面に設けられ、前記基材の局所的な変形を抑制する補助部材を含む請求項1に記載の放射線検出モジュール。
【請求項8】
前記補助部材は導電層を有する請求項7に記載の放射線検出モジュール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線検出モジュールと、
フレキシブル回路基板に電気的に接続されて光電変換基板を駆動する回路基板と、
放射線検出モジュール及び回路基板を収納する筐体と、を備えた放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出モジュール及び放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を蛍光に変換するシンチレータと、蛍光を電荷に変換する光電変換基板とを備えるX線検出器が公知である。
係るX線検出器において、軽量化及び耐衝撃性向上を目的として、光電変換基板の基材に可撓性の基材を適用する技術開発が進められている。
しかし、可撓性を持つ基材は、外力に対する変形が大きく、基材に局所的な変形が生じた場合、各層、各部材間に応力が発生し、層や部材の界面で剥離が生じるおそれがある。
また、X線検出器の製造時において、基材に外力が加わる場合がある。例えば、基材にフレキシブル回路基板が接続された状態で、フレキシブル回路基板を光電変換基板から引き剥がす方向に外力が加わった場合、前述の応力の影響により、光電変換基板とフレキシブル回路基板との接続部が剥離するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-156204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光電変換基板とフレキシブル回路基板との接続部が剥離すると放射線検出モジュールの製造歩留まりが低下するという問題があった。
【0005】
実施形態は、製造歩留まりの高い放射線検出モジュール及びその放射線検出モジュールを備えた放射線検出器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、可撓性の基材と、前記基材上に設けられた光電変換部と、前記基材上に設けられて前記光電変換部と電気的に接続された複数の電極部と、を備えた光電変換基板と、
前記光電変換部の上に設けられたシンチレータ層と、
前記各電極部に対応して設けたフレキシブル回路基板と、
前記フレキシブル回路基板と前記電極部を接合すると共に電気的に接続する接着材と、
前記フレキシブル回路基板の前記光電変換基板に対する変位を抑制する保持部材と、を備え、前記保持部材は基材接合部及び保持部を有し、前記基材接合部は、前記光電変換基板の、前記光電変換部が設けられた側の面と反対側の面に接合されており、前記保持部は、フレキシブル回路基板に固定している放射線検出モジュールである。
【0007】
一実施形態は、上記の放射線検出モジュールと、フレキシブル回路基板に電気的に接続されて光電変換基板を駆動する回路基板と、放射線検出モジュール及び回路基板を収納する筐体と、を備えた放射線検出器である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る放射線検出モジュールの断面図であり、一点鎖線で抜き出して示すのは底面図である。
図2図2は、図1に示す放射線検出モジュールの分解斜視図である。
図3図3は、比較例の図であり、フレキシブル回路基板に外力が作用した場合の作用を示す断面図であり、(a)は外力が作用する前の状態、(b)は外力によりフレキシブル回路基板と接着材の界面が剥離する状態、(c)は外力により光電変換基板の配線層と基材の界面とが剥離する状態である。
図4図4は、第1実施形態に係る放射線検出モジュールの作用を示す断面図であり、(a)は外力が作用する前の状態であり、(b)は外力が作用した状態である。
図5図5は、第2実施形態に係る放射線検出モジュールの断面図である。
図6図6は、第3実施形態に係る放射線検出モジュールの断面図である。
図7図7は、第4実施形態に係る放射線検出モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
一実施形態に係る放射線検出モジュール1は、放射線としてX線を検出する放射線検出モジュールである。この放射線検出モジュール1は、放射線画像であるX線画像を検出するX線平面センサであり、例えば、一般医療用途などに用いられる。放射線検出モジュール1の用途は、一般医療用途に限定されず、例えば、非破壊検査などに用いることもできる。
図1および図2に示すように、第1実施形態に係る放射線検出モジュール1は、光電変換基板3と、シンチレータ層5と、フレキシブル回路基板7と、接着材9と、保持部材11と、を備えている。
尚、放射線検出モジュール1は、フレキシブル回路基板7に電気的に接続されて光電変換基板3を駆動する駆動回路基板13(図2参照)と、これらを収納する筐体(図示せず)とで放射線検出器を構成するものである。
光電変換基板3は、可撓性の基材15と、前記基材15上に設けられた光電変換部17と、前記基材15上に設けられて光電変換部17と電気的に接続された複数の電極部19とを備えている。電極部19は、図2では概略的に示しており、平面視四角形形状の一辺に2つ並んで設けているが、実際には一辺に5~12の電極部19が並んで設けられている。
【0011】
基材15は、ポリイミド樹脂からなり、厚さは約38μmである。
光電変換部17は蛍光を電荷に変換し、配線層18(図2参照)を介して複数の電極部19へ電気信号を伝送する。
シンチレータ層5は、X線を蛍光に変換するものであり、光電変換部17の上に設けられている。シンチレータ層5は、本実施例ではヨウ化セシウムであり、蒸着により柱状結晶として形成されている。
また、シンチレータ層5には、防湿体21と封止部23からなる防湿構造が取られている。本実施例では防湿体21はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにアルミニウム箔を積層したフィルムであり、封止部23は熱可塑性樹脂である。
【0012】
フレキシブル回路基板7は電極部19に電気的に接続する接着材9により接合されている。このフレキシブル回路基板7は、本実施例ではICが実装されたCOF(chip on film)を用いた。
フレキシブル回路基板7は、図2に示すように、電極部19と駆動回路基板13とに接続されるときに、180度湾曲させる場合があるため、その場合でも可撓性を維持できることが好ましい。
図1に示すように、接着材9は、フレキシブル回路基板7と電極部19を接合すると共に電気的に接続するものであり、本実施例では、異方性導電フィルム(ACF)を熱圧着している。
【0013】
保持部材11は、フレキシブル回路基板7の光電変換基板3に対する変位を抑制するものであり、可撓性を有することが望ましく、基材シート12と粘着層14とから構成されている。基材シート12は樹脂材が好ましく、粘着層14としてはシリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかが用いられている。
本実施例では基材シート12はポリイミドフィルムであり、粘着層14はシリコーン系粘着剤であり、保持部材11としては、粘着剤が塗布されたポリイミドテープを用いている。
【0014】
保持部材11の厚さD2は、フレキシブル回路基板7の厚さD1の2倍以下であることが望ましい。本実施例ではフレキシブル回路基板7の厚さD1が約40~50μm、保持部材11(ポリイミドテープ)の厚さD2が約50μmである。
保持部材11は、電極部19に対応する位置に、電極部19と同数設けられており、各フレキシブル回路基板7と電極部19を接合している。
保持部材11は、基材接合部11a及び保持部11bを有し、基材接合部11aは、光電変換基板3の光電変換部17が設けられた側の面である表面3aと反対側の面である裏面3bに粘着層14により接合されている。保持部11bは、光電変換基板3の外周縁を越えた外周側で、フレキシブル回路基板7における接着材9側の面(裏面)7bに粘着層14により接合して固定されている。
【0015】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図4(a)に示すように、フレキシブル回路基板7に外力が作用していない状態から、図4(b)に示すように、外力Fが作用した場合には、保持部材11は、フレキシブル回路基板7の変位を抑制し、接続部7aに作用する外力を低減する。これにより、接続部7aにおける接着材9と接続部7aとの間の剥離や、電極部19の剥離を防止できる。
即ち、フレキシブル回路基板7を光電変換基板3から引き剥がすような外力Fが加えられても、フレキシブル回路基板7の、保持部11bよりも内周側(接着材9側)においては、光電変換基板3との間の距離(接着材9の厚み方向の距離)の変化が抑制される。外力Fに対する応力は接着材9の近傍に集中せずに、保持部材11の変形や、光電変換基板3の曲げ応力として分散される。したがって、光電変換基板3とフレキシブル回路基板7との接続部7aの剥離を抑制することができ、製造歩留まりの高い放射線検出モジュールを提供することができる。
【0016】
これに対して、図3に比較例を示すように、保持部材11がない場合には、図3(a)に示す状態から、フレキシブル回路基板7を光電変換基板3から引き剥がすような外力Fが加えられると、図3(b)に示すように、接続部7aでは、フレキシブル回路基板7と共に変位するため接着材9から剥がれたり、図3(c)に示すように、接続部7aが接着材9と共に変位して、電極部19を剥がしたりすることがある。
【0017】
以下に、他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した一実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では一実施形態と主に異なる点を説明する。
図5に第2実施形態にかかる放射線検出モジュール1を示す。
第2実施形態では、補強部材25を設けたことが第1実施形態と異なっている。補強部材25は、保持部材11の基材接合部11aと基材15との間に設けている。保持部材11は補強部材25の裏面25d(光電変換基板側と反対側の面)及びフレキシブル回路基板7を接合している。
補強部材25は、樹脂シート25a及び粘着層25bからなり、樹脂シート25aは厚さ約100μmのPETである。補強部材25において、基材15の外周縁15aから最も離れた補強部材端部25cは、接着材9における光電変換部17側の端部9a及び封止部23の外周縁23aよりも内周側(光電変換部17側)に位置している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0018】
この第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができると共に、補強部材25により、接着材9における電変換部17側の端部9aと封止部23の外周縁23aとの間における光電変換基板3の剛性を高めることができる。
更に、補強部材25により、光電変換部17側の端部9aと封止部23の外周縁23aの各位置における局所的な変形が抑制されるため、これらの各位置を起点として生じる配線18(図2参照)と基材15の剥離を抑制することができる。
尚、補強部材25における、基材15の外周縁15aから最も離れた補強部材端部25cは、光電変換部17が配置された領域(X線検出領域)の外周縁17aよりも外周側に位置しているため、X線画像に対しムラ等の悪影響を与えることがない。
【0019】
図6に第3実施形態にかかる放射線検出モジュール1を示す。
この第3実施形態では、保持部材11が熱可塑性樹脂のみで形成されている。保持部材11は、光電変換基板3の外周に沿って、加熱された熱可塑性樹脂を塗布し、次に冷却することにより固化されて、光電変換基板3及びフレキシブル回路基板7の両方に接着されている。保持部材11に用いられる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤である。保持部材11を熱可塑性樹脂とすることにより、保持部材11を形成した後であっても、加熱することにより、光電変換基板3に機械的ストレスを与えずに、保持部材11の除去が可能である。これにより、フレキシブル回路基板7を実装する際のリワークが容易となる。
【0020】
図7に第4実施形態にかかる放射線検出モジュール1を示す。
この第4実施形態では、基材15は、その裏面15bに補助部材27を設けていることが上述した第1実施形態と異なっている。
保持部材11は、補助部材27の裏面27aとフレキシブル回路基板7の裏面7bとの間に固定されている。
補助部材27は、基材15の裏面15bに設けられて、基材15の剛性を高めることにより、局所的な変形を抑制する。
また、この補助部材27は面方向に導電性を持っている。これにより、補助部材27の表面は等電位となるため、光電変換部17に生じる寄生容量の変動成分の面内ムラが低減され、X線検出器の振動等によって生じる画像ムラを抑制することができる。
本実施例では、補助部材27は、ポリエステル不織布に金属めっきされた導電布と、PETを基材とした両面テープを貼り合わせたものである。
その他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
本発明の上記実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、図5に示す第2実施形態や図7に示す第4実施形態において、保持部材11として図6に示す熱可塑性樹脂製の保持部材11を用いても良い。
【符号の説明】
【0022】
1…放射線検出モジュール、3…光電変換基板、5…シンチレータ層、7…フレキシブル回路基板、9…接着材、11…保持部材、11a…基材接合部、11b…保持部、15…基材、17…光電変換部、19…電極部、21…防湿体、27…補助部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7