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特開2024-38717船舶等用の照明器具及びその電蝕防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038717
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】船舶等用の照明器具及びその電蝕防止方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240313BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20240313BHJP
   F21V 29/74 20150101ALI20240313BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20240313BHJP
   F21V 21/30 20060101ALI20240313BHJP
   B63B 45/00 20060101ALI20240313BHJP
   F21W 107/20 20180101ALN20240313BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20240313BHJP
   F21Y 103/00 20160101ALN20240313BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240313BHJP
【FI】
F21S2/00 600
F21V29/503
F21V29/74
F21V31/00 100
F21V31/00 400
F21V21/30 100
B63B45/00
F21W107:20
F21Y101:00 100
F21Y103:00
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142950
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】515210156
【氏名又は名称】株式会社マリンテック
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】230128875
【弁護士】
【氏名又は名称】原 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】大森 康生
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014NA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】照明器具が雨などに曝されたときに異種金属の接触による電蝕を防止した照明器具及び電蝕防止技術を提供する。
【解決手段】光源を備える基板2と、透光性のカバー部3と、放熱フィン5を有する金属製の筐体部4と、トンネル状の開口部とを備える本体部1と、本体部1を設置部位へ固定するための金属製の固定具10と、固定具10を本体部1へ固定するために前記トンネル状の開口部内部へ設置される金属棒と、金属製の固定具10と金属棒とを本体部1へ回動可能に固定するための金属製のナット9と、を備える固定部とを具備する照明器具であって、前記金属棒と前記トンネル状の開口部との接触部分への水の浸入を防止する水侵入防止手段を有する照明器具。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)光源を備える基板と;
透光性のカバー部と;
放熱フィンを有する金属製の筐体部と;
トンネル状の開口部と;
を備える本体部と、
(2)本体部を設置部位へ固定するための金属製の固定具と;
前記固定具を本体部へ固定するために前記トンネル状の開口部内部へ設置される
金属棒と;
前記金属製の固定具と金属棒とを本体部へ回動可能に固定するための金属製のナ
ットと;
を備える固定部と、
を具備する照明器具であって、
前記金属棒と前記トンネル状の開口部との接触部分への水の浸入を防止する
水侵入防止手段を有する照明器具。
【請求項2】
樹脂、プラスチック、潤滑剤、エラストマー及びコーティング剤から選ばれた少な
くとも1種の手段により水の浸入を防止する請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記金属製の固定具の金属棒との接触部分が切り欠き状に形成されている請求項1
~2のいずれかに記載の照明器具。
【請求項4】
前記金属製の固定具の金属棒との接触部分の2ヶ所が切り欠き状に形成され、かつ
当該2ヶ所の切り欠きが上下反対方向に形成されたものである請求項3に記載の照明
器具。
【請求項5】
さらに本体部に電源用の電線を備え、当該電線の一部において、適宜方法により照
明器具本体部への水侵入を防止する請求項1~2のいずれかに記載の照明器具。
【請求項6】
さらに本体部に電源用の電線を備え、当該電線の一部において、適宜方法により照
明器具本体部への水侵入を防止する請求項4に記載の照明器具。
【請求項7】
本体の一部が切り欠き状に形成され、照明器具へ回動可能に固定するための金属製
の固定具。
【請求項8】
(1)光源を備える基板と;
透光性のカバー部と;
放熱フィンを有する金属製の筐体部と;
トンネル状の開口部と;
を備える本体部と、
(2)本体部を設置部位へ固定するための金属製の固定具と;
前記固定具を本体部へ固定するために前記トンネル状の開口部内部へ設置される
金属棒と;
前記金属製の固定具と金属棒とを本体部へ回動可能に固定するための金属製のナ
ットと;
を備える固定部と、
を具備する照明器具において、
水侵入防止手段により前記金属棒と前記トンネル状の開口部との接触部分への水の浸
入を防止する照明器具の電蝕防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶等の主に船外で使用される照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具は、例えば蛍光ランプやHIDランプなどを光源として、支柱などに固定して道路、居室等、目的とする照射部位を照明するために使用される。
【0003】
光源には蛍光灯やHIDランプに加え、近年では発光ダイオード(以下「LED」という)が使用されている。
【0004】
LEDは、消費電力量が少なく寿命が長い等、従来の光源と比較して有利な点がある反面、点灯時の発熱量が比較的多く、発熱による発光部の効率低下や熱膨張等による損傷を回避するために発光部の周囲を覆うように熱伝導部材や放熱用の放熱板、ヒートシンクが用いられている。
【0005】
特に、船舶等の主に船外で使用される照明器具の場合、防水のために光源を密封状態とするため、熱が光源周囲にこもり易く、放熱性、熱伝導性に優れる金属性の材料を使用する必要があった。さらに、光源冷却のため冷媒を循環させる方法(特許文献1)、放熱フィンを組み合わせる方法(特許文献2)等が提案されている。
【0006】
一方、照明器具を船外に固定する際、錆に強く、固定に必要な強度、耐久性を備えた金属性の材料を使用して固定する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-236724号公報
【特許文献2】特開2010-170696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の放熱性、熱伝導性に優れる材料と固定に必要な強度、耐久性を備えた材料が異なる金属である場合、海水に曝されることにより異種金属の接触による電蝕が引き起こされるおそれがあり、照明器具の劣化や故障等の問題が懸念されていた。
【0009】
前記の電蝕は、例えば金属接触面を塗装、コーティング等によって接触しない状態とすることにより予防可能である。しかしながら、製造上塗装、コーティング等が困難な部位の存在や、また、金属同士の接触により塗装、コーティング等が剥がれる問題があり、抜本的な改善に至っていない。
【0010】
そこで、本発明は、照明器具が異種金属の接触による電蝕を起こすことを防止する照明器具及びその電蝕防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有することを特徴とする。
【0012】
光源を備える基板、透光性のカバー部、放熱フィンを有する金属製の筐体部及びトンネル状の開口部を備える本体部と、
前記本体部を設置部位へ固定するための金属製の固定具、前記固定具を本体部へ固定するために前記トンネル状の開口部内部へ設置される金属棒、前記金属製の固定具と金属棒とを本体部へ回動可能に固定するための金属製のナットを備える固定部を具備する照明器具であって、
前記金属棒と前記トンネル状の開口部との接触部分への水の浸入を防止する水侵入防止手段を有する照明器具。
【発明の効果】
【0013】
本発明の照明器具及びその電蝕防止方法は、照明器具に異種の金属を使用した場合であっても異種金属の接触による電蝕を防止することができ、金属接触部分の塗装、コーティング、特殊な材料や方法を使用することなく低コストで実施可能である。
【0014】
さらに、本発明の照明器具及びその電蝕防止方法は、金属接触部分を回動可能に固定でき、様々な種類の照明器具に利用できるため、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例の照明器具の本体部の正面図
図2】本発明の実施例の照明器具の本体部の側面図
図3】本発明の実施例の照明器具の本体部の背面図
図4】本発明の実施例の照明器具の金属棒及びナットの取り付け状態を示す参考図
図5】本発明の実施例の照明器具の固定具等の取り付け状態を示す参考図
図6】本発明の実施例の照明器具の正面図
図7】本発明の実施例の照明器具の側面図
図8】本発明の実施例の照明器具の背面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0017】
本発明の照明器具は、光源を含む本体部と、本体部を船外の特定部へ固定するための固定部から構成される。
【0018】
本発明の照明器具の本体部は、光源を備える基板、光源から発する光を目的とする照射部位へ照射するための透光性のカバー部、及び光源を備える基板を保護するために透光性のカバー部と共に基板を覆う筐体部から構成される。
【0019】
さらに、本体部と固定部とを連結するために使用する金属棒を設置するため、筐体部の一部に金属棒を挿入するための開口部を有する。
【0020】
光源には白熱電球、蛍光灯、ハロゲンランプ等の通常使用される電灯等が使用され、特に明るくて消費電力が少ないLEDが好ましい。
【0021】
透光性のカバー部には透明のプラスチック、ガラス、レンズ板等の通常使用される材料を使用することができる。
【0022】
放熱フィンを有する金属製の筐体部には、アルミニウム、銅等の熱伝達に優れる金属性の材質のものを使用することができる。特に、熱伝導性に優れかつ加工性、耐久性に優れるアルミニウムが好ましい。
【0023】
本発明の照明器具の固定部は、本体部を設置部位へ固定するための金属製の固定具、前記固定具を本体部へ固定するために前記トンネル状の開口部内部へ設置される金属棒、前記金属製の固定具と金属棒とを本体部へ回動可能に固定するための金属製のナット、から構成される。
【0024】
前記の固定具、金属棒及び金属製のナットは、ステンレス等の錆びにくく、加工が容易で、耐久性を備えた金属性の材質のものを使用することができる。
【0025】
前記金属棒は、本体部における開口部に挿入して使用するため、開口部の形状にあわせて丸、三角、四角等の断面形状とすることができる。
【0026】
前記金属棒は、一方または両方の端部に固定具を金属製のナットで回動可能に固定するための結合要素を備える。
【0027】
前記固定具は、金属棒と嵌合して固定させるため、金属棒との接触部分を切り欠き状に形成することができる。切り欠き状とすることにより、ナットを完全に外すことなく少し緩めた状態で固定具を脱着することが可能となる。
【0028】
また、前記固定具は、金属棒との接触部分の2ヶ所を切り欠き状に形成し、かつ当該2ヶ所の切り欠きを上下反対方向に形成することもできる。2ヶ所の切り欠きの方向を反対にすることにより、時間の経過とともにナットが緩んだり外れたりした場合に固定具が脱落することを予防することができる。
【0029】
本発明の照明器具は、筐体部のトンネル状の開口部と固定部の金属棒とが異なる金属の場合、雨水や海水の付着等に発生により電蝕が発生し、筐体部分の変形や破損により故障することを防止するための水侵入防止手段を有する。
【0030】
筐体部のトンネル状の開口部はその構造上、塗装、コーティング等することは困難であり、また、仮に塗装等行ったとしても、金属棒は回動可能な状態で存在するため、トンネル状の開口部と金属棒とが擦れることによって塗装等が剥がれる問題があり、塗装、コーティング等により異種金属の接触を回避することは困難であった。
【0031】
一方、水侵入防止手段は、異種金属が接触した状態で、金属に水等の通電性の液体が触れて通電することを防止する。そのため、水の浸入を防ぐための密封性、耐水性があり、かつ長期間の使用に耐え得る耐久性を備えることが重要である。
【0032】
水浸入防止手段として、例えば、上記の条件を備えた特定の材料を使用して、開口部と接触する部分の金属棒を覆い、当該材料にて上記接触部分を密封することによって、水と金属とが接触できないようにする方法が挙げられる。
【0033】
上記の特定の材料としては、水の浸入を防止できるものであれば特に限定はされないが、樹脂、プラスチック、潤滑剤、エラストマー及びコーティング剤から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、密封性、耐水性及び耐久性に優れる点でエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0034】
本発明の照明器具の固定部は、本体部を設置部位へ固定するための金属製の固定具、前記固定具を本体部へ固定するために前記トンネル状の開口部内部へ設置される金属棒、前記金属製の固定具と金属棒とを本体部へ回動可能に固定するための金属製のナット、固定具を金属棒へ固定する際に固定具とナットの間に使用するワッシャー、から構成されてもよい。
【0035】
前記ワッシャーとしては、市販のものを使用することができ、非金属性のものが好ましく、樹脂製のものが好ましい。金属製のワッシャーと比較して電蝕の原因となる電流を遮断することができ、さらに固定具の回動性を向上させることができる。
【0036】
本発明の照明器具は、さらに光源に電気を供給するための電線を備えることができる。
【0037】
上記電線は照明器具用に市販されているものを使用することができ、水の浸入や漏電を防止するために樹脂等で被覆されたものを使用する。
【0038】
なお、気温が低い地域等で照明器具を使用した場合、光源(LED)の発熱によって本体部の内部に負圧が発生し、被覆した電線の被覆内部を水が侵入し、結露や漏電等の問題が発生する場合がある。
【0039】
上記水侵入を防止する方法として、例えば、照明器具本体部の近傍の電線をハンダ等で加工して、加工した部位を樹脂等で被覆することにより、当該加工部位にて被覆電線からの水の浸入を遮断することができる。
【実施例0040】
本発明の好ましい実施形態の一例について図面を参照しつつ説明する。
【0041】
本発明の実施例の照明器具の本体部は、図1から図3の正面図、側面図、背面図に示した外観を有する。
【0042】
本発明の実施例の照明器具の本体部1は、光源を備える基板2と、樹脂製の透光性のカバー部3と、アルミニウム製の筐体部4とを有する。さらに、筐体部には放熱フィン5を設けており、光源の発熱による本体部の温度上昇を抑える効果を有する。
【0043】
本発明の実施例の照明器具の本体部は、筐体部の下部に、トンネル状の開口部6を備える。
【0044】
本発明の実施例の照明器具のトンネル状の開口部は、図4に示す通り、固定部の金属棒8を挿入し、金属製のナット9で固定するように設計されている。
【0045】
本発明の実施例の照明器具は、図5に示す通り、本体部1と金属棒8を組み合わせて使用することにより固定具10を本体部の下部に取り付け、ナット9及びワッシャー11で固定することにより、本体部と固定部とを一体化して使用する。
【0046】
すなわち、本発明の実施例の照明器具の固定部は、図6から図8の正面図、側面図、背面図に示したとおり、本体部の下部のトンネル状の開口部に取り付けて使用する。
【0047】
本発明の実施例の照明器具の水浸入防止手段は、開口部6と金属棒8とが接する部分に設置して用いる。例えば、水侵入防止手段としてエポキシ樹脂を開口部6に充填した状態で金属棒を挿入し、エポキシ樹脂が乾燥して硬化する前にワッシャー及びナットを使用して固定具を取り付ける。硬化する前に当該方法で固定することによりエポキシ樹脂に気泡や空隙が生じるのを防止することができる。また、樹脂製のワッシャーを使用することによりエポキシ樹脂による密封効果を高めることができ、有用である。
【0048】
本発明の実施例の照明器具は、光源を備える基板2の背面側の接続部7に電線または電線と基板とを接続するコネクターを設けても良い。当該方法により、筐体部を加工することなく外部から光源を備える基板へ安定して電気を供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、高輝度で長寿命な照明器具、特に船舶等用の照明器具に適用することができ、本発明の照明器具及びその電蝕防止方法は、照明器具に異種の金属を使用した場合であっても異種金属の接触による電蝕を防止することができるため、特殊な材料や方法を使用することなく低コストで船舶等用の照明器具を供給することができ有用である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8