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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038721
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ブレーキ機構
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/10 20060101AFI20240313BHJP
   G05G 1/04 20060101ALI20240313BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B60T7/10 L
B60T7/10 P
G05G1/04 A
B62B5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142957
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】紙屋 潤一郎
【テーマコード(参考)】
3D050
3D124
3J070
【Fターム(参考)】
3D050AA03
3D050AA04
3D050DD01
3D050GG06
3D050JJ01
3D050JJ07
3D124AA12
3D124BB02
3D124BB11
3D124CC28
3D124CC31
3D124DD06
3D124DD31
3J070AA03
3J070BA13
3J070BA65
3J070CB02
3J070CC02
3J070CC23
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】ブレーキを操作する操作レバー部を、長期に亘って滑らか且つ安定して傾動させることができるブレーキ機構を提案する。
【解決手段】操作レバー部3、第一リンク部材21、第二リンク部材22、および第三リンク部材により構成され、操作レバー部3の傾動によって、常態でブレーキをかけない非制動態様と、ブレーキをかける制動通常態様と、ブレーキをかけた状態で保持される制動保持態様とに変換されるリンク機構部4を備える。非制動態様では、操作レバー部3が非操作位置に保持され且つ第一リンク部材21が非制動位置に保持される。制動通常態様では、操作レバー部3が操作位置へ傾動されることによって、第一リンク部材21が制動位置に変換される。制動保持態様では、操作レバー部3がロック位置へ傾動されることによって、第一リンク部材21が制動位置に変換されて保持される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を走行させる車輪にブレーキをかけるブレーキ部と、
前記車体の走行を操作するハンドル部に取り付けられ、前記ブレーキ部に連結されたワイヤを介して、該ブレーキ部を操作するブレーキ操作部と
を備え、
前記ブレーキ操作部が、
前記ハンドル部に固定される操作ベース部と、該操作ベース部に傾動可能に設けられた操作レバー部とを備え、
前記操作レバー部を、前記ブレーキ部によりブレーキをかけない非操作位置で保持する一方、該非操作位置からハンドル部側へ傾動させることにより、前記ブレーキ部によりブレーキをかける操作位置に位置変換させるものであるブレーキ機構において、
前記ブレーキ操作部は、前記操作レバー部、第一リンク部材、第二リンク部材、および第三リンク部材により構成されるリンク機構部を備えてなり、
前記第一リンク部材は、前記操作ベース部に設けられた傾動軸に一端部が傾動可能に取り付けられ且つ他端部に前記ワイヤが取り付けられ、傾動によって、該ワイヤを介して前記ブレーキ部によりブレーキをかける制動位置とブレーキをかけない非制動位置とに位置変換されるものであり、
前記第二リンク部材は、前記傾動軸に傾動可能に取り付けられており、
前記第三リンク部材は、前記第二リンク部材に傾動可能に接続され、前記制動位置にある第一リンク部材に当接される制動保持部が設けられたものであり、
前記操作レバー部は、前記第一リンク部材に傾動可能に接続された第一枢結部と、該第一枢結部と異なる部位に設けられて前記第三リンク部材に傾動可能に接続された第二枢結部とを備えたものであり、
前記リンク機構部は、
常態で、前記操作レバー部を前記非操作位置とし且つ前記第一リンク部材を前記非制動位置とした非制動態様に保たれ、
前記操作レバー部が前記非操作位置から前記操作位置へ傾動されることにより、前記第一リンク部材が前記非制動位置から前記制動位置に位置変換され、且つ前記第三リンク部材の制動保持部が該第一リンク部材と非接触となる制動通常態様に変換される一方、
前記操作レバー部が、前記ハンドル部と反対側のロック位置へ前記非制動位置から傾動されることにより、前記第一リンク部材が前記非制動位置から前記制動位置に位置変換され、且つ前記第三リンク部材の制動保持部が該第一リンク部材に当接されることにより該第一リンク部材が該制動位置で保持される制動保持態様に変換されるものであることを特徴とするブレーキ機構。
【請求項2】
リンク機構部の第二リンク部材は、操作レバー部と互いに接触しないように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いす、歩行器、および歩行補助車などに配設されるブレーキ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車いす、歩行器、および歩行補助車などには、使用者または介助者により操作されるハンドル部が設けられており、該ハンドル部に、ブレーキレバーを備えたブレーキ装置が配設されている。こうした車いすや歩行器等では、ハンドル部を把持した使用者や介助者がブレーキレバーを操作することによって、車輪にブレーキをかけることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、ブレーキレバーを有するブレーキ装置が提案されている。このブレーキ装置は、ブレーキレバーを、待機位置と、該待機位置よりも上側(ハンドル部側)へ傾動させたブレーキ位置と、該待機位置よりも下側(ハンドル部と反対側)へ傾動させたロック位置とに変位可能となっている。このブレーキレバーが待機位置にあると、車輪にブレーキがかからず、該ブレーキレバーがブレーキ位置へ傾動されると、該車輪にブレーキがかかる。さらに、ブレーキレバーがロック位置へ傾動されると、車輪の回転を禁止させる。かかる構成は、ブレーキレバーに設けられた回動軸が、カバー部材の軸孔部に回動可能に支持されると共に、該ブレーキレバーに設けられた突出部が、該カバー部材に形成された案内通路に沿って移動可能に設けられている。ブレーキレバーは、回動軸を中心として傾動しつつ該突出部が案内通路に沿って移動することにより、前記した待機位置とブレーキ位置とロック位置とに変位できる。ここで、案内通路は、略く字形の上側通路部と、該上側通路部の下端から前方へ屈曲された下側通路部とから構成されており、前記ブレーキレバーは、突出部を上側通路部に沿って上下動させることによって、待機位置とブレーキ位置とに変位する一方、該突出部を下側通路部に移動させることによって、ロック位置に変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-180615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来構成のブレーキ装置にあっては、ブレーキレバーを案内する案内通路が上側通路部と下側通路部とを屈曲させた構成であり、この屈曲部位が前記突出部を移動させる障害となっていたから、ブレーキレバーを滑らかに傾動させ難くなっていた。また、ブレーキレバーが上側通路部と下側通路部とを行き来する際に、該上側通路部と下側通路部との屈曲部位に、該ブレーキレバーの突出部がぶつかることから、両者に摩耗を生じ易く、該摩耗によって該ブレーキレバーをロック位置へ変位させる動きの安定性が低減してしまう虞もあった。このように従来のブレーキ装置には、改良の余地があった。
【0006】
本発明は、ブレーキレバーを滑らかに傾動させることができると共に、長期に亘って所定位置に安定して変位させ得るブレーキ機構を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体を走行させる車輪にブレーキをかけるブレーキ部と、前記車体の走行を操作するハンドル部に取り付けられ、前記ブレーキ部に連結されたワイヤを介して、該ブレーキ部を操作するブレーキ操作部とを備え、前記ブレーキ操作部が、前記ハンドル部に固定される操作ベース部と、該操作ベース部に傾動可能に設けられた操作レバー部とを備え、前記操作レバー部を、前記ブレーキ部によりブレーキをかけない非操作位置で保持する一方、該非操作位置からハンドル部側へ傾動させることにより、前記ブレーキ部によりブレーキをかける操作位置に位置変換させるものであるブレーキ機構において、前記ブレーキ操作部は、前記操作レバー部、第一リンク部材、第二リンク部材、および第三リンク部材により構成されるリンク機構部を備えてなり、前記第一リンク部材は、前記操作ベース部に設けられた傾動軸に一端部が傾動可能に取り付けられ且つ他端部に前記ワイヤが取り付けられ、傾動によって、該ワイヤを介して前記ブレーキ部によりブレーキをかける制動位置とブレーキをかけない非制動位置とに位置変換されるものであり、前記第二リンク部材は、前記傾動軸に傾動可能に取り付けられており、前記第三リンク部材は、前記第二リンク部材に傾動可能に接続され、前記制動位置にある第一リンク部材に当接される制動保持部が設けられたものであり、前記操作レバー部は、前記第一リンク部材に傾動可能に接続された第一枢結部と、該第一枢結部と異なる部位に設けられて前記第三リンク部材に傾動可能に接続された第二枢結部とを備えたものであり、前記リンク機構部は、常態で、前記操作レバー部を前記非操作位置とし且つ前記第一リンク部材を前記非制動位置とした非制動態様に保たれ、前記操作レバー部が前記非操作位置から前記操作位置へ傾動されることにより、前記第一リンク部材が前記非制動位置から前記制動位置に位置変換され、且つ前記第三リンク部材の制動保持部が該第一リンク部材と非接触となる制動通常態様に変換される一方、前記操作レバー部が、前記ハンドル部と反対側のロック位置へ前記非制動位置から傾動されることにより、前記第一リンク部材が前記非制動位置から前記制動位置に位置変換され、且つ前記第三リンク部材の制動保持部が該第一リンク部材に当接されることにより該第一リンク部材が該制動位置で保持される制動保持態様に変換されるものであることを特徴とするブレーキ機構である。
【0008】
かかる構成にあっては、操作レバー部の傾動により、リンク機構部が、ブレーキ部でブレーキをかけない非制動態様と、ブレーキをかける制動通常態様と、ブレーキをかけた状態で保持する制動保持態様とに変換されるものである。このように本構成は、操作レバー部と第一~三リンク部材とを連係させたリンク作動によってブレーキ部を操作することから、前述した従来構成(案内通路を案内させる構成)に比して、操作レバー部を滑らかに傾動(位置変換)させることができると共に、該従来構成で生じ易い摩耗の発生を抑制できる。したがって、操作レバー部を位置変換させる作動(換言すれば、リンク機構部を各態様に変換させるリンク作動)を長期に亘って安定して行うことができる。
【0009】
尚、本構成にあって、リンク機構部は、制動保持態様で第三リンク部材の制動保持部を第一リンク部材に当接させることによって、該第一リンク部材を制動位置に保持する構成であり、該第三リンク部材の制動保持部と第一リンク部材との当接を解除することによって制動保持態様から変換できる。具体的には、操作レバー部をロック位置から非操作位置へ傾動させることによって、前記当接を比較的容易に解除でき、常態の非制動態様に変換できる。このように使用者等が操作レバー部を傾動させる力で、制動保持態様における第三リンク部材の制動保持部と第一リンク部材との当接を解除できる。
【0010】
前述した本発明のブレーキ機構にあって、リンク機構部の第二リンク部材は、操作レバー部と互いに接触しないように設けられている構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあっては、操作レバー部と直に接続されていない第二リンク部材を、該操作レバー部と接しないように設けたものであるから、リンク機構部が全体的として一層滑らかにリンク作動でき、該操作レバー部を一層滑らかに傾動させることができる。これにより、リンク機構部で摩耗が生ずることを一層抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブレーキ機構は、リンク機構部のリンク作動によりブレーキ部を安定して操作できると共に、操作レバー部を非操作位置と操作位置とロック位置とに長期に亘って円滑かつ安定して傾動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ハンドル部101にブレーキ操作部2が取り付けられた状態を示す外観図である。
図2】操作ベース部5の内部に配設されたリンク機構部4を示す説明図である。
図3】(A)リンク機構部4の一部を切り欠いて示す説明図と、(B)リンク機構部4の横断面図である。
図4】リンク機構部4の、非制動態様から制動通常態様への変換を示す説明図である。
図5】リンク機構部4の、非制動態様から制動保持態様への変換を示す説明図である。
図6図5から続く、リンク機構部4の変換を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかるブレーキ機構を具体化した実施例を、以下で詳細に説明する。
本実施例のブレーキ機構1は、主に車いす、歩行器、および歩行補助車などに配設されるものであり、図1に示すように、車いす等のハンドル部101に固定されるブレーキ操作部2を備える。こうした車いす、歩行器、および歩行補助車などには、これらの使用者または介助者により操作される左右一対のハンドル部101が設けられているものがあり、本実施例のブレーキ操作部2が左右のハンドル部101に夫々配設されている。以下では、左右一方のハンドル部101に固定されるブレーキ操作部2についてのみ説明するが、当然ながら他方のハンドル部101にも同じブレーキ操作部2を配設できる。
【0015】
前記した車いす、歩行器、および歩行補助車は、フレームにより車体(図示せず)が構成され、該フレームに少なくとも左右一対の車輪(図示せず)が配設されている。フレームは、金属製パイプ等で形成されており、前記ハンドル部101を構成するハンドルフレーム部102が設けられている。図1に示すように、ハンドルフレーム部102にグリップ部103が取り付けられて、前記ハンドル部101が構成されている。また、前記した左右の車輪には、該車輪にブレーキをかけるブレーキ部(図示せず)が夫々配設されている。このブレーキ部には、ワイヤ9(図1参照)の一端部が連結されており、該ワイヤ9が引張られることによって前記車輪にブレーキがかかる(換言すれば、制動力が作用する)。また、ブレーキ部には、前記ワイヤ9を一端部側(ブレーキ部側)へ付勢する付勢手段(例えば、コイルバネ)が配設されている。これにより、ワイヤ9は、常態で、ブレーキ部側へ付勢されていることから、ブレーキ部によるブレーキが車輪にかかっていない。尚、こうしたブレーキ部は、前記車いすや歩行器などに一般的に適用されるドラムブレーキ、リムブレーキ、またはディスクブレーキなどにより構成できることから、詳細な説明を省略する。
【0016】
本発明の要部について説明する。
ブレーキ機構1は、前述したブレーキ部とブレーキ操作部2とより構成される。ブレーキ操作部2は、図1に示すように、ハンドルフレーム部102に取り付けられる操作ベース部5と、該操作ベース部5に傾動可能に取り付けられた操作レバー部3とを備える。操作ベース部5は、ハンドルフレーム部102に固定される固定部11と、後述するリンク機構部4が配設されたケース部12とが一体的に設けられたものである。
【0017】
ブレーキ操作部2のケース部12は、図1~3に示すように、所定間隔をおいて対向状に設けられた表裏一対のケース板部13,13と、両ケース板部13,13を連設させた壁部14とにより構成されており、各図の紙面上における右方へ開口された開口部15が形成されている。また、ケース部12の壁部14の下部には、前記ワイヤ9が挿通される挿通孔16が開口形成されている。
【0018】
ケース部12にリンク機構部4が設けられている。リンク機構部4は、前記した操作レバー部3、第一リンク部材21、第二リンク部材22、および第三リンク部材23により構成されており、該第一~三リンク部材21~23がケース部12の内部に収容されている。第一リンク部材21と第二リンク部材22とは、ケース部12に設けられた傾動軸17に傾動可能に取り付けられている。ここで、傾動軸17は、表裏のケース板部13,13に差し渡されている。
【0019】
操作レバー部3は、前記使用者や介助者により操作されるレバー主部31と該レバー主部31から二股に分けて設けられた表裏一対のレバー基部32,32とにより構成されている。そして、操作レバー部3は、レバー基部32,32がケース部12の内部に配置され、レバー主部31が該ケース部12の開口部15を介して該ケース部12の右方(図面上の右方)へ突出されている。表裏のレバー基部32,32は、所定間隙をおいて対向状に設けられており、該間隙を前記第一リンク部材21と前記第三リンク部材23とが挿通可能となっている。さらに、表裏のレバー基部32,32には、前記第一リンク部材21に傾動可能に接続される第一枢結部33と、前記第三リンク部材23に傾動可能に接続される第二枢結部34とが夫々設けられている。そして、表裏の第一枢結部33,33に第一軸部36が差し渡されおり、表裏の第二枢結部34に第二軸部37が差し渡されている。これら第一軸部36と第二軸部37とは、前記傾動軸17と平行に設けられている。
【0020】
第一リンク部材21は、短冊板状に形成されており、一端部が前記傾動軸17に傾動可能に取り付けられ、他端部に前記ワイヤ9の他端部が取り付けられている。この第一リンク部材21は、ケース部12の内部で、前記傾動軸17を中心として上下方向へ傾動する。第一リンク部材21の他端部には、円弧状の切欠き部26が形成されており、該切欠き部26に、前記ワイヤ9の他端部を取り付けた円柱状の摺動部材10が摺動可能に支持されている。この摺動部材10に取り付けられたワイヤ9は、ケース部12の挿通孔16を介して、前記したブレーキ部に至るように配設されている。さらに、第一リンク部材21の一端部と他端部との間の部位には、前記操作レバー部3の第一枢結部33,33に設けられた第一軸部36が、傾動可能に挿通されている。これにより、第一リンク部材21と操作レバー部3とが相対的に傾動可能に接続されている。
【0021】
こうした第一リンク部材21は、前記傾動軸17を中心として傾動することにより、図2の非制動位置と、図4(B)および図6(B)の制動位置とに位置変換する。ここで、第一リンク部材21が非制動位置にある状態では、ワイヤ9の他端部(摺動部材10)が制動位置に比して前記ブレーキ部側にあることから、前記ブレーキ部によりブレーキがかかっていない。一方、第一リンク部材21が制動位置にある状態では、前記制動位置に比して、ワイヤ9がブレーキ部と反対側へ引っ張られることから、前記ブレーキ部によりブレーキがかかる。さらに、第一リンク部材21は、他端部(切欠き部26)が前記ブレーキ部の付勢手段(コイルバネ)によりワイヤ9を介して引っ張られており、図2の紙面上で右回り方向に常に付勢されている。
【0022】
第二リンク部材22は、湾曲板状に形成されており、一端部が前記傾動軸17に傾動可能に取り付けられており、他端部に前記第三リンク部材23が傾動可能に接続されている。本実施例にあっては、図3(B)に示すように、二個の第二リンク部材22,22が、前記第一リンク部材21(および第三リンク部材23)の表裏両側に所定間隔をおいて配置されて、前記傾動軸17に夫々取り付けられている。こうした二個の第二リンク部材22,22と前記第一リンク部材21とは、前記傾動軸17を中心として夫々傾動できる。こうした第二リンク部材22は、図4に示すように、ケース部12の内部で左右方向(紙面上上の左右方向)へ傾動可能であるものの、該ケース部12の壁部14に当接されることによって、左方へ傾動できる限界位置が定まっている。
【0023】
こうした第二リンク部材22は、前記操作レバー部3と互いに接触しないように設けられている。特に、第二リンク部材22には、操作レバー部3のレバー基部32に対向する部位に、湾曲凹部27が設けられており、後述するように操作レバー部3が下方へ傾動された際に、該操作レバー部3の第二枢結部34と第二リンク部材22の湾曲凹部27とが接触しないように構成されている。
【0024】
第三リンク部材23は、短冊板状に形成されており、一端部が前記第二リンク部材22の他端部に傾動可能に接続されている。ここで、第三リンク部材23の一端部が、表裏の第二リンク部材22,22に差し渡された第三軸部38に挿通されていることにより、第二リンク部材22,22と第三リンク部材23とが傾動可能に接続されている。また、第三リンク部材23の他端部には、前記第一リンク部材21に当接される制動保持部41と傾動制限部42とが連成されている。第三リンク部材23は、前記第三軸部38を中心として傾動し、前記傾動制限部42が前記非制動位置にある第一リンク部材21に当接されることによって該非制動位置で保持する一方、前記制動保持部41が前記制動位置にある第一リンク部材21に当接された場合に、該制動位置で保持できる。尚、第三軸部38は、前記した傾動軸17と平行に設けられている。
【0025】
さらに、前記第三リンク部材23は、前記制動保持部41および傾動制限部42寄りの部位が、前記操作レバー部3の表裏の第二枢結部34,34に設けられた前記第二軸部37に、傾動可能に挿通される。これにより、第三リンク部材23と操作レバー部3とが相対的に傾動可能に接続されている。
【0026】
こうしたリンク機構部4は、操作レバー部3および第一~三リンク部材21~23が連係して動くことにより、非制動態様、制動通常態様、および制動保持態様に変換される。非制動態様は、図2,3に示すように、第一リンク部材21が前記非制動位置にあり、第二リンク部材22がケース部12の壁部14に当接されると共に、第三リンク部材23の傾動制限部42が該第一リンク部材21に当接されている。すなわち、非制動態様では、前記壁部14に当接された第二リンク部材22と第一リンク部材21に傾動制限部42が当接された第三リンク部材23とにより、前記右回り方向へ常に付勢される第一リンク部材21が前記非制動位置で保持される。こうした非制動態様における操作レバー部3の位置が、非操作位置であり、リンク機構部4は、常態で非制動態様に保たれている。
【0027】
制動通常態様には、図4に示すように、操作レバー部3が前記非操作位置から上方(ハンドル部101のグリップ部103側)へ傾動されることにより、該非制動態様から変換される。本実施例にあっては、操作レバー部3および第一~三リンク部材21~23が傾動軸17を中心として一体的に傾動することにより、非制動態様から制動通常態様へ変換される。制動通常態様は、図4(B)に示すように、第一リンク部材21が前記制動位置にあり、第二リンク部材22が前記ケース部12の壁部14から離間している。このため、制動通常態様は保持されておらず、操作レバー部3を上方へ傾動させる力が解除されると、ワイヤ9を前記ブレーキ部側へ引っ張る付勢力によって第一リンク部材21が前記右回り方向へ傾動され、これに伴ってリンク機構部4が制動通常態様から非制動態様へ戻る。この制動通常態様における操作レバー部3の位置が、操作位置である。
【0028】
制動保持態様には、図5,6に示すように、操作レバー部3が前記非操作位置から下方(前記グリップ部103と反対側)へ傾動されることにより、該非制動態様から変換される。この制動保持態様への変換では、第二リンク部材22がケース部12の壁部14に当接されて左方(紙面上の左方)へ傾動不能であることから、操作レバー部3の傾動に従って、第一リンク部材21と第三リンク部材23とが連係して動く。詳述すると、図5(A)~(B)に示すように、第一リンク部材21が非制動位置から上方へ傾動すると共に、第三リンク部材23の傾動制限部42が該第一リンク部材21から離間する。さらに、操作レバー部3が傾動すると、図6(A)に示すように、該操作レバー部3の第二枢結部34が、第二リンク部材22の湾曲凹部27へ向かって動くと共に、第三リンク部材23が左方(紙面上の左方)へ傾動する。この後、図6(B)に示すように、第一リンク部材21が制動位置となると、操作レバー部3の第二枢結部34が第二リンク部材22の湾曲凹部27と対向する位置に配置されると共に、第三リンク部材23の制動保持部41が前記第一リンク部材21に当接される。このようにリンク機構部4が制動保持態様に変換される。
【0029】
この制動保持態様では、前記壁部14に当接された第二リンク部材22と第一リンク部材21に制動保持部41が当接された第三リンク部材23とにより、前記右回り方向へ常に付勢される第一リンク部材21を前記非制動位置で保持する。これにより、リンク機構部4は、外力(使用者や介助者による力)が操作レバー部3に働かない限り、制動保持態様で保持される。すなわち、前記ブレーキ部によりブレーキをかけた状態で保たれる。この制動保持態様における操作レバー部3の位置が、ロック位置であり、操作レバー部3をロック位置とすることによって、ワイヤ9を前記ブレーキ部側へ引っ張る付勢力に抗して第一リンク部材21を前記非制動位置で保持する(換言すれば、制動保持態様で保持する)。
【0030】
前記制動保持態様の保持は、前記使用者や介助者が操作レバー部3を上方(前記グリップ部103側)へ傾動させることにより解除されて、該制動保持態様から前記非制動態様へ変換される。この変換では、操作レバー部3の上方への傾動によって、前記第一リンク部材21と第三リンク部材23とが、前述した制動保持態様に至る動きと逆に動いて、前記非制動態様へ戻る(図5,6参照)。このように制動保持態様は、使用者等が操作レバー部3を握ることで比較的容易に解除できる。
【0031】
本実施例のブレーキ機構1は、前述したように、車いすや歩行器等に配設されて、該車いすや歩行器等の使用者や該車いすの介助者により操作される。車いすや歩行器等を走行させる際には、ハンドル部101を握る使用者や介助者が、操作レバー部3を操作せずに非操作位置で保つ。これにより、リンク機構部4が前記非制動態様で保たれ、車輪にブレーキがかからないことから、容易に走行させることができる。車いす等を停止させる場合や走行速度を落とす場合には、前記使用者等が操作レバー部3を握って制動位置へ傾動させる。これにより、リンク機構部4が前記非制動態様から制動通常態様に変換され(図4参照)、車輪にブレーキがかかる。そして、車いすが停止した場合や所望の走行速度に低下した場合に、前記使用者が操作レバー部3の操作を解除することにより、リンク機構部4が前記非制動態様へ戻る。一方、車いす等を駐車させる場合には、前記使用者等が操作レバー部3を非操作位置から前記ロック位置へ傾動させる。これにより、リンク機構部4が前記非制動態様から制動保持態様へ変換され(図5,6参照)、該制動保持態様で保持されることから、車輪にブレーキがかかった状態で保たれる(駐車される)。この後、車いす等を動かす場合には、前記使用者等が操作レバー部3を握ってロック位置から非操作位置へ傾動させる。これにより、リンク機構部4が前記制動保持態様から非制動態様に変換され、ブレーキが解除される。
【0032】
このように本実施例のブレーキ機構1は、リンク機構部4を非制動態様と制動通常態様と制動保持態様とに随時変換させることにより、ブレーキ部で車輪にブレーキをかけるようにした構成である。リンク機構部4は、使用者等により操作される操作レバー部3と第一~三リンク機構21~23とを連係させて動かすことにより、前記各態様に変換させるものであるから、各態様への変換を容易且つ円滑に行うことができる。
【0033】
リンク機構部4は、各態様へ変換する際に第一リンク部材21と第三リンク部材23とを積極的に圧接させること以外、操作レバー部3と各リンク部材21~23とが接触しない構造としている。詳述すると、第一リンク部材21と第三リンク部材23とは、各態様への変換時に両者が接触したままで相対的に摺動させないように構成されていることから、両者間で摩耗が生じることを抑制できる。さらに、操作レバー部3と第二リンク部材22とが接触しないように構成されている。ここで、第二リンク部材22は、前述したように、非制動態様と制動保持態様とでケース部12の壁部14により傾動不能となる。この傾動不能な状態で、使用者等に操作される操作レバー部3と第二リンク部材22とを接触させないことにより、これら態様への変換時に摩耗が生じない。このように本実施例のリンク機構部4は、各態様へ変換する際に摩耗が発生することを抑制できることから、長期に亘って繰り返し変換されても、各態様へ安定かつ容易に変換させることができる。
【0034】
したがって、本実施例のブレーキ機構1によれば、操作レバー部3を非操作位置、操作位置、およびロック位置へ安定かつ滑らかに傾動させることができ、使用者や介助者が長期に亘って操作し易い。
【0035】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
実施例では、ワイヤがブレーキ部のコイルバネにより付勢される構成としたが、これに限らず、例えば、ワイヤを付勢する付勢手段(コイルバネ、板バネ、エアシリンダ、ガスシリンダ等)がブレーキ操作部に設けた構成とすることができる。又は、ブレーキ操作部に、操作レバー部を非操作位置に付勢する付勢手段を備えた構成とすることもできる。
実施例では、操作レバー(第一枢結部、第二枢結部)と第二リンク部材とを接触しない構成としたが、これに限らず、例えば、制動保持態様で操作レバーの第二枢結部を第二リンク部材と接触する構成とすることも可能である。
実施例では、第一リンク部材と第三リンク部材とが、操作レバー部の表裏のレバー基部と表裏の第二リンク部材とにより夫々傾動可能に接続された構造(いわゆる両持ちの構造)であるが、これに限らず、表裏一方に配された操作レバー部のレバー基部と第二リンク部材とにより夫々傾動可能に接続された構造(いわゆる片持ちの構造)であっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 ブレーキ機構
2 ブレーキ操作部
3 操作レバー部
4 リンク機構部
5 操作ベース部
9 ワイヤ
10 摺動部材
11 固定部
12 ケース部
13 ケース板部
14 壁部
15 開口部
16 挿通孔
17 傾動軸
21 第一リンク部材
22 第二リンク部材
23 第三リンク部材
26 切欠き部
27 湾曲凹部
31 レバー主部
32 レバー基部
33 第一枢結部
34 第二枢結部
36 第一軸部
37 第二軸部
38 第三軸部
41 制動保持部
42 傾動制限部
101 ハンドル部
102 ハンドルフレーム部
103 グリップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6