(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038742
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240313BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240313BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142990
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 ゆみ
(72)【発明者】
【氏名】荻原 敦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】東方 良介
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DA03
5B146DE05
5B146DG07
5B146DJ15
5B146DL09
5B146EA07
5B146EC04
5B146EC08
(57)【要約】
【課題】3次元モデルデータと2次元図面データとの間の差異を、ユーザによる手間を必要とせずに検出する。
【解決手段】制御部34は、2次元図面データに含まれる複数のPMI間の関係性を判定して、判定された関係性に基づき、複数のPMI間の関係性を示す第1の情報を生成する。また、制御部34は、3次元モデルデータに含まれる複数のPMI間の関係性を判定して、判定された関係性に基づき、複数のPMI間の関係性を示す第2の情報を生成する。そして、制御部34は、生成した第1の情報と第2の情報との間における差異を検出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
2次元図面データに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第1の情報を生成し、
3次元モデルデータに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第2の情報を生成し、
前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を特定することで、前記第1の情報と前記第2の情報との間の差異を検出する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、第1の製品製造情報と、当該第1の製品製造情報の指示先の部位を指示先とする第2の製品製造情報との間に関係性があると判定し、前記第1の製品製造情報と前記第2の製品製造情報との間に親子関係がある旨の情報を生成し、
前記第1の情報と前記第2の情報とにおける製品製造情報が親子単位で一致する場合に対応関係があると判定する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて、製品製造情報どうしが1対1、1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応する場合に対応関係があると判定する請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記特定した対応関係の前記第1の情報と前記第2の情報のそれぞれに含まれる製品製造情報の数に差がある場合、2次元図面データまたは3次元モデルデータのうち対応関係となっている製品製造情報の多い方の、製品製造情報の指示先となる部位の相対位置を特定し、もう一方の製品製造情報の相対位置と比較することで、1:1の対応関係を特定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて、製品製造情報どうしが1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応している場合に、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて1対1で対応する製品製造情報を基準座標として、2次元図面及び3次元モデル中の基準座標が相対的に一致するように、2次元図面又は3次元モデルのいずれか一方の座標を変換することにより、前記第1の情報と前記第2の情報における製品製造情報どうしを1対1の関係で対応させる請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて、製品製造情報どうしが一致せずに対応していない場合でも、予め設定された許容範囲内で製品製造情報どうしが対応している場合には、前記第1の情報と前記第2の情報との間には対応関係があると判定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、1つの幾何公差を定義する製品製造情報と、当該幾何公差の指示先の部位を指示先とする理論寸法を定義する製品製造情報との間に関係性があると判定し、前記幾何公差を定義する製品製造情報を親とし、前記理論寸法を定義する製品製造情報を子とする親子関係を示す情報を生成する請求項2記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、定義された幾何公差またはサイズ公差が同一の部位を指示先とする少なくとも2つ以上の製品製造情報の組を対応関係があると判定し、判定した製品製造情報の組が対応関係を有することを示す情報を生成する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、対応関係があると判定した製品製造情報の複数の組を同一のグループに属する関係性があると判定し、判定した製品製造情報の組が同一のグループに属することを示す情報を生成する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、幾何公差を定義する製品製造情報、又はサイズ公差を定義する製品製造情報と、当該製品製造情報の補足情報を定義する製品製造情報との間に関係性があると判定し、前記幾何公差又はサイズ公差を定義する製品製造情報を親とし、前記補足情報を定義する製品製造情報を子とする親子関係を示す情報を生成する請求項2記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、同一のサイズ公差を定義する少なくとも2つ以上の製品製造情報、又は、同一の幾何公差を定義する少なくとも2つ以上の製品製造情報を同一のグループに属する関係性があると判定し、判定した複数の製品製造情報が同一のグループに属することを示す情報を生成する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報との間で差異として検出された製品製造情報の2次元図面上又は3次元モデル上における表示態様を、他の製品製造情報とは異なる表示態様として表示する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報との間で検出された差異がなくなるように、前記2次元図面データ又は前記3次元モデルデータにおける製品製造情報を修正する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項14】
2次元図面データに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第1の情報を生成するステップと、
3次元モデルデータに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第2の情報を生成するステップと、
前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を特定することで、前記第1の情報と前記第2の情報との間の差異を検出するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設計図面情報から比較基準となる検査図面情報と、測定手段を制御する測定情報を作成し、測定手段から入力した測定結果と検査図面情報から製造誤差を評価し、設計図面情報に関連付けて、検査図面情報と測定結果を比較した検査成績情報を所望の表示形式に対応させて作成するようにした工程管理システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、作成した寸法、サイズ公差などの属性情報が付加されたCADモデルに対して、作業段取り毎に属性情報をグループ化および測定作業情報の付加を行い、測定後工程における効率向上が目的の後工程活用情報入力を行うようにしたCAD装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-104827号公報
【特許文献2】特開2002-328952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、製造業では3次元モデルを作成して、部品又は製品の設計を行うことが主流となっている。ここで、3次元モデルデータから2次元図面データを生成して、2次元図面を紙に印刷して使用する場合がある。特にパーソナルコンピュータ等の装置が無い製造現場では紙に印刷した2次元図面が必須となる。
【0006】
しかし、一旦2次元図面を作成した後に設計変更が発生した場合に、3次元モデルデータには変更を反映したのに2次元図面データはそのままにしてしまうと、3次元モデルデータと2次元図面データとの間に差異が発生してしまう。また、製造現場で2次元図面データを修正したがその修正内容が3次元モデルデータに反映されていない場合にも、3次元モデルデータと2次元図面データとの間に差異が発生してしまう。そのような差異をそのままとしたのでは、設計途中で変更した内容が反映されない状態で量産品が製造されてしまう等の問題が発生する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、3次元モデルデータと2次元図面データとの間の差異を、ユーザによる手間を必要とせずに検出することが可能な情報処理装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様の情報処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、2次元図面データに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第1の情報を生成し、
3次元モデルデータに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第2の情報を生成し、
前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を特定することで、前記第1の情報と前記第2の情報との間の差異を検出する。
【0009】
第2態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、第1の製品製造情報と、当該第1の製品製造情報の指示先の部位を指示先とする第2の製品製造情報との間に関係性があると判定し、前記第1の製品製造情報と前記第2の製品製造情報との間に親子関係がある旨の情報を生成し、
前記第1の情報と前記第2の情報とにおける製品製造情報が親子単位で一致する場合に対応関係があると判定する。
【0010】
第3態様の情報処理装置は、第2態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて、製品製造情報どうしが1対1、1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応する場合に対応関係があると判定する。
【0011】
第4態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記特定した対応関係の前記第1の情報と前記第2の情報のそれぞれに含まれる製品製造情報の数に差がある場合、2次元図面データまたは3次元モデルデータのうち対応関係となっている製品製造情報の多い方の、製品製造情報の指示先となる部位の相対位置を特定し、もう一方の製品製造情報の相対位置と比較することで、1:1の対応関係を特定する。
【0012】
第5態様の情報処理装置は、第4態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて、製品製造情報どうしが1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応している場合に、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて1対1で対応する製品製造情報を基準座標として、2次元図面及び3次元モデル中の基準座標が相対的に一致するように、2次元図面又は3次元モデルのいずれか一方の座標を変換することにより、前記第1の情報と前記第2の情報における製品製造情報どうしを1対1の関係で対応させる。
【0013】
第6態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報とにおいて、製品製造情報どうしが一致せずに対応していない場合でも、予め設定された許容範囲内で製品製造情報どうしが対応している場合には、前記第1の情報と前記第2の情報との間には対応関係があると判定する。
【0014】
第7態様の情報処理装置は、第2態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、1つの幾何公差を定義する製品製造情報と、当該幾何公差の指示先の部位を指示先とする理論寸法を定義する製品製造情報との間に関係性があると判定し、前記幾何公差を定義する製品製造情報を親とし、前記理論寸法を定義する製品製造情報を子とする親子関係を示す情報を生成する。
【0015】
第8態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、定義された幾何公差またはサイズ公差が同一の部位を指示先とする少なくとも2つ以上の製品製造情報の組を対応関係があると判定し、判定した製品製造情報の組が対応関係を有することを示す情報を生成する。
【0016】
第9態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、対応関係があると判定した製品製造情報の複数の組を同一のグループに属する関係性があると判定し、判定した製品製造情報の組が同一のグループに属することを示す情報を生成する。
【0017】
第10態様の情報処理装置は、第2態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、幾何公差を定義する製品製造情報、又はサイズ公差を定義する製品製造情報と、当該製品製造情報の補足情報を定義する製品製造情報との間に関係性があると判定し、前記幾何公差又はサイズ公差を定義する製品製造情報を親とし、前記補足情報を定義する製品製造情報を子とする親子関係を示す情報を生成する。
【0018】
第11態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報又は前記第2の情報として、同一のサイズ公差を定義する少なくとも2つ以上の製品製造情報、又は、同一の幾何公差を定義する少なくとも2つ以上の製品製造情報を同一のグループに属する関係性があると判定し、判定した複数の製品製造情報が同一のグループに属することを示す情報を生成する。
【0019】
第12態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報との間で差異として検出された製品製造情報の2次元図面上又は3次元モデル上における表示態様を、他の製品製造情報とは異なる表示態様として表示する。
【0020】
第13態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、前記第1の情報と前記第2の情報との間で検出された差異がなくなるように、前記2次元図面データ又は前記3次元モデルデータにおける製品製造情報を修正する。
【0021】
第14態様のプログラムは、2次元図面データに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第1の情報を生成するステップと、
3次元モデルデータに含まれる複数の製品製造情報間の関係性を判定して、判定された前記関係性に基づき、複数の製品製造情報間の関係性を示す第2の情報を生成するステップと、
前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を特定することで、前記第1の情報と前記第2の情報との間の差異を検出するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0022】
第1態様の情報処理装置によれば、3次元モデルデータと2次元図面データとの間の差異を、ユーザによる手間を必要とせずに検出することが可能となる。
【0023】
第2態様の情報処理装置によれば、製品製造情報間の親子関係も含めて差異の有無を判定することができる。
【0024】
第3態様の情報処理装置によれば、製品製造情報どうしが1対1の関係で対応していない場合でも対応関係があると判定することができる。
【0025】
第4態様の情報処理装置によれば、1対1の関係で対応していない製品製造情報を1対1の関係で対応させることができる。
【0026】
第5態様の情報処理装置によれば、1対1の関係で対応していない製品製造情報を、1対1で対応する製品製造情報を基準座標として用いることにより、1対1の関係で対応させることができる。
【0027】
第6態様の情報処理装置によれば、製品製造情報どうしが一致していない場合でも実質的に一致している製品製造情報どうしを対応付けることができる。
【0028】
第7態様の情報処理装置によれば、同一の部位を指定先とする幾何公差の製品製造情報と理論寸法の製品製造情報との間に親子関係の関係性があるとして、製品製造情報間の親子関係も含めて差異の有無を判定することができる。
【0029】
第8態様の情報処理装置によれば、同一の形体を指定先とする複数の製品製造情報に対応関係があるとして、2次元図面データと3次元モデルデータとの間の差異の有無を判定することができる。
【0030】
第9態様の情報処理装置によれば、同一のグループに属する複数の製品製造情報に対応関係があるとして、2次元図面データと3次元モデルデータとの間の差異の有無を判定することができる。
【0031】
第10態様の情報処理装置によれば、幾何公差又はサイズ公差を定義する製品製造情報と補足情報を定義する製品製造情報との間に親子関係の関係性があるとして、製品製造情報間の親子関係も含めて差異の有無を判定することができる。
【0032】
第11態様の情報処理装置によれば、同一のグループに属する複数の製品製造情報に対応関係があるとして、2次元図面データと3次元モデルデータとの間の差異の有無を判定することができる。
【0033】
第12態様の情報処理装置によれば、2次元図面データと3次元モデルデータとの間で対応しない製品製造情報を表示態様により把握することが可能となる。
【0034】
第13態様の情報処理装置によれば、2次元図面データと3次元モデルデータとの間で対応しない製品製造情報を修正して差異を無くすことができる。
【0035】
第14態様のプログラムによれば、3次元モデルデータと2次元図面データとの間の差異を、ユーザによる手間を必要とせずに検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態の図面データ処理システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】PMIを含んだ3次元モデルデータの一例を示す図である。
【
図3】PMIを含んだ2次元図面データの一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における端末装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態における端末装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】2次元図面データと3次元モデルデータの差異を検出する際の端末装置10の動作の概略を説明するためのフローチャートである。
【
図7】PMIが含まれた3次元モデルデータに基づいて、複数のPMI間の関係性を示す情報を生成する際の端末装置10の動作の概略を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図8に示した3次元モデルデータにおける長孔50の斜視図である。
【
図10】3次元モデルデータの他の例を示す図である。
【
図11】
図8、
図10に示したような3次元モデルデータから検出したPMIの情報例を示す図である。
【
図12】サイズ公差42を親、幾何公差43、理論寸法41間の関係性の判定結果を説明するための図である。
【
図13】サイズ公差44を親、バルーン記号45、キャリパー指示46間の関係性の判定結果を説明するための図である。
【
図14】複数のPMI間の関係性を示す情報例を示す図である。
【
図15】DXFデータによる2次元図面例を示す図である。
【
図16】
図15に示した2次元図面のDXFデータに含まれている各PMIの種類の一覧を示す図である。
【
図17】DXFデータからPMIを検出する際の検出方法を説明するためのフローチャートである。
【
図18】DXFデータから検出したPMI情報に基づいて、複数のPMI間の関係性の判定を行う際の具体例を示す図である。
【
図19】DXFデータから検出したPMI情報に基づいて、複数のPMI間の関係性の判定を行う際の具体例を示す図である。
【
図20】
図18、
図19に示したような関係性を判定する際の判定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図21】ある部品の2次元図面データ例を示す図である。
【
図22】ある部品の3次元モデルデータ例を示す図である。
【
図23】グループ化された親子関係セットの一例を示す図である。
【
図24】2D図面と3Dモデルとの間において、2:2でPMIの親子関係セットが対応している場合の一例を示す図である。
【
図25】2D図面と3Dモデルとの間において、1:1でPMIの親子関係セットが対応している場合の一例を示す図である。
【
図26】2D図面と3Dモデルとの間において、1:4でPMIの親子関係セットが対応している場合の一例を示す図である。
【
図27】2D図面における側面図と3Dモデルにおける平面図との間でPMIの親子関係セットが一致する場合を示す図である。
【
図28】2D図面における側面図と3Dモデルにおける側面図との間、及び、2D図面における平面図と3Dモデルにおける正面図との間で、PMIの親子関係セットが一致する場合を示す図である。
【
図29】2D図面と3Dモデルとの間において1対1で対応するPMIの親子関係セットが指し示す孔の中心座標をそれぞれ基準座標として抽出する様子を説明するための図である。
【
図30】3DモデルをデータムのB軸基準で上下反転することにより、2D図面及び3Dモデルにおける基準座標を相対的に一致させる様子を説明するための図である。
【
図31】B軸基準で上下反転した後の3Dモデルと、2D図面との間において、対応する基準座標のデータム軸に対する相対的な位置が一致する様子を説明するための図である。
【
図32】2D図面と3Dモデルとの間において1対4で対応するPMIの親子関係セットが存在する場合を示す図である。
【
図33】1対4対応となっていたPMIの親子関係セットを、それぞれ、1対1対応の関係となるように特定する様子を説明するための図である。
【
図34】1対4対応となっていたPMIの親子関係セットを、それぞれ、1対1対応の関係となるように特定する様子を説明するための図である。
【
図35】多対多で一致するものを1対1対応させる場合について説明するための図である。
【
図36】多対多で一致するが、必ずしも全てが1対1対応するとは限らない場合について説明するための図である。
【
図37】2D図面と3Dモデルとの間において、PMIの親子関係セットを1対1対応の関係となるように特定する理由を説明するための図である。
【
図38】2D図面と3Dモデルとの間におけるPMI間の対応関係を、2D図面上において表示色を変えることにより可視化した場合の例を示す図である。
【
図39】2D図面においてある孔の幾何公差をつけ忘れてしまった場合の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1は本発明の一実施形態の図面データ処理システムのシステム構成を示す図である。
【0039】
本発明の一実施形態の図面データ処理システムは、
図1に示されるように、ネットワーク30により相互に接続された複数の端末装置10、および図面データ管理サーバ20により構成される。図面データ管理サーバ20は、各種製品を設計する際の部品図面及び製品図面等の図面データを管理している。端末装置10は、図面データ管理サーバ20に管理されている図面データをダウンロードして表示させたり、ダウンロードした図面データの修正、変更等の各種作業を行って図面データ管理サーバ20にアップロードしたりすることができる機能を有する情報処理装置である。
【0040】
ここで、図面データ管理サーバ20において管理されている図面データは、例えば、成形製品の形状を示す製品形状情報だけでなく、基準寸法や公差等の規格情報を製品製造情報(以下、PMI(Product Manufacturing Information)と略す。)として含めるようにした3次元モデルデータである。また、図面データ管理サーバ20は、3次元モデルデータだけでなく、3次元モデルデータに基づいて生成された2次元図面データも管理している。
【0041】
このようなPMIを含んだ3次元モデル(3Dモデルと略す場合もある。)データの一例を
図2に示す。
図2を参照すると、サイズ公差、幾何公差、理論的に正しい寸法(Theoretically Exact Dimension:以下理論寸法と略す。)等の様々なPMIが3次元モデル上に3次元アノテーションとして表示されているのが分かる。
【0042】
また、このようなPMIを含んだ2次元図面(2D図面と略す場合もある。)データの一例を
図3に示す。
図3に示された2次元図面データは、
図2に示された3次元モデルを印刷可能な2次元の図面に変換したものとなっている。この2次元図面上にも、サイズ公差、幾何公差、理論寸法等の様々なPMIが表示されている。このような2次元図面データであれば、紙上に印刷することが可能である。そのため、パーソナルコンピュータ等の装置が無い製造現場等においては、3次元モデルとして設計した部品又は製品を2次元図面に変換して紙上に印刷して利用することになる。
【0043】
しかし、一旦2次元図面を作成した後に設計変更が発生した場合に、3次元モデルデータには変更を反映したのに2次元図面データはそのままにしてしまうと、3次元モデルデータと2次元図面データとの間に差異が発生してしまう。また、製造現場で2次元図面データを修正したがその修正内容が3次元モデルデータに反映されていない場合にも、3次元モデルデータと2次元図面データとの間に差異が発生してしまう。そのような差異をそのままとしたのでは、設計途中で変更した内容が反映されない状態で量産品が製造されてしまう等の問題が発生する可能性がある。
【0044】
そのため、本実施形態の図面データ管理サーバ20では、下記において説明するような処理によって、3次元モデルデータと2次元図面データとの間の差異を、ユーザによる手間を必要とせずに検出するようにしている。
【0045】
次に、本実施形態の図面データ処理システムにおける端末装置10のハードウェア構成を
図4に示す。
【0046】
端末装置10は、
図4に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)14、液晶ディスプレイ等の表示装置15と、タッチパネル又はキーボードを含む操作入力装置16を有する。これらの構成要素は、制御バス17を介して互いに接続されている。
【0047】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、端末装置10の動作を制御するプロセッサである。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、これに限定されるものではない。この制御プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、このプログラムをCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、この制御プログラムを、通信インタフェース14に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしてもよい。
【0048】
図5は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される端末装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0049】
本実施形態の端末装置10は、
図5に示されるように、操作受付部31と、表示部32と、データ送受信部33と、制御部34と、データ記憶部35とを備えている。
【0050】
データ送受信部33は、図面データ管理サーバ20等の外部の装置との間でデータの送受信を行う。
【0051】
表示部32は、制御部34により制御され、ユーザに各種情報を表示する。操作受付部31は、ユーザにより行われた各種操作を受け付ける。
【0052】
制御部34は、データ送受信部33を介して図面データ管理サーバ20から図面データを受信してデータ記憶部35に記憶させ、データ記憶部35に記憶した図面データを表示部32に表示する。また、制御部34は、操作受付部31により受け付けられたユーザの操作に基づいて、データ記憶部35に記憶された図面データを変更して、変更した図面データをデータ送受信部33経由で図面データ管理サーバ20にアップロードする。さらに、制御部34は、データ記憶部35に記憶された3次元モデルデータを2次元図面に変換する機能を備えている。
【0053】
上述したような図面データは、設計工程以降においても、見積工程、検図工程、型設計工程、治具設計工程、検査工程等の様々な工程において使用される。そのため、端末装置10は、必要に応じて3次元モデルデータを2次元図面データに変換して紙上に印刷して様々な場所において利用可能としている。
【0054】
そして、制御部34は、2次元図面データに含まれる複数のPMI間の関係性を判定して、判定された関係性に基づき、複数のPMI間の関係性を示す第1の情報を生成する。また、制御部34は、3次元モデルデータに含まれる複数のPMI間の関係性を判定して、判定された関係性に基づき、複数のPMI間の関係性を示す第2の情報を生成する。そして、制御部34は、生成した第1の情報と第2の情報との対応関係を特定することで、第1の情報と第2の情報との間の差異を検出する。
【0055】
例えば、制御部34は、第1のPMIと、その第1のPMIの指示先の部位を指示先とする第2のPMIとの間に関係性があると判定し、第1のPMIと第2のPMIとの間に親子関係がある旨の情報を生成する。そして、制御部34は、第1の情報と第2の情報とにおけるPMIが親子単位で一致する場合に対応関係があると判定する。
【0056】
また、制御部34は、第1の情報と第2の情報とにおいて、PMIどうしが1対1、1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応する場合に対応関係があると判定する。
【0057】
そして、制御部34は、特定した対応関係の前記第1の情報と第2の情報のそれぞれに含まれるPMIの数に差がある場合、2次元図面データまたは3次元モデルデータのうち対応関係となっているPMIの多い方の、PMIの指示先となる部位の相対位置を特定し、もう一方のPMIの相対位置と比較することで、1:1の対応関係を特定するようにしてもよい。
【0058】
具体的には、制御部34は、第1の情報と第2の情報とにおいて、PMIどうしが1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応している場合に、第1の情報と第2の情報とにおいて1対1で対応するPMIを基準座標として、2次元図面及び3次元モデル中の基準座標が相対的に一致するように、2次元図面又は3次元モデルのいずれか一方の座標を変換することにより、第1の情報と第2の情報におけるPMIどうしを1対1の関係で対応させる。
【0059】
なお、制御部34は、第1の情報と第2の情報とにおいて、PMIどうしが一致せずに対応していない場合でも、予め設定された許容範囲内でPMIどうしが対応している場合には、第1の情報と第2の情報との間には対応関係があると判定する。具体的には、制御部34は、標記上の差異により実質的に同じ内容を意味しているにもかかわらず記載形式が一致しないPMIどうしであっても、実質的に同じ内容を意味している場合にはそのPMIどうしは一致しているものとみなす。
【0060】
そして、制御部34は、第1の情報又は第2の情報として、1つの幾何公差を定義するPMIと、その幾何公差の指示先の部位を指示先とする理論寸法を定義するPMIとの間に関係性があると判定し、幾何公差を定義するPMIを親とし、理論寸法を定義するPMIを子とする親子関係を示す情報を生成する。
【0061】
また、制御部34は、第1の情報又は第2の情報として、定義された幾何公差またはサイズ公差が同一の部位を指示先とする少なくとも2つ以上のPMIの組を対応関係があると判定し、判定したPMIの組が対応関係を有することを示す情報を生成する。
【0062】
また、制御部34は、第1の情報又は第2の情報として、対応関係があると判定したPMIの複数の組を同一のグループに属する関係性があると判定し、判定したPMIの組が同一のグループに属することを示す情報を生成する。ここで、同一グループのPMIとは、異なる部位に対する同一のサイズ公差又は幾何公差等の規格を定義する複数のPMIを意味する。
【0063】
また、制御部34は、第1の情報又は第2の情報として、幾何公差を定義するPMI、又はサイズ公差を定義するPMIと、そのPMIの補足情報を定義するPMIとの間に関係性があると判定し、幾何公差又はサイズ公差を定義するPMIを親とし、補足情報を定義するPMIを子とする親子関係を示す情報を生成する。
【0064】
さらに、制御部34は、第1の情報又は第2の情報として、同一のサイズ公差を定義する少なくとも2つ以上のPMI、又は、同一の幾何公差を定義する少なくとも2つ以上のPMIを同一のグループに属する関係性があると判定し、判定した複数のPMIが同一のグループに属することを示す情報を生成する。
【0065】
なお、制御部34は、第1の情報と第2の情報との間で差異として検出されたPMIの2次元図面上又は3次元モデル上における表示態様を、他のPMIとは異なる表示態様として表示するようにしてもよい。具体的には、制御部34は、2次元図面と3次元モデルとの間で対応していないと判定されたPMIを、他のPMIとは異なる色彩、形状で表示したり、対応していないことが分かるような強調表示、警告表示を付加して表示したりするようにしてもよい。このような表示が行われることにより、ユーザは、2次元図面、又は3次元モデルを表示させた際に、2次元図面と3次元モデルとの間で対応していない箇所を把握することができる。
【0066】
さらに、制御部34は、第1の情報と第2の情報との間で検出された差異がなくなるように、2次元図面データ又は3次元モデルデータにおけるPMIを修正するようにしてもよい。この場合には、制御部34は、2次元図面データ及び3次元モデルデータのうちのいずれかを正のデータとして、正のデータではない方のデータを修正するようにする。例えば、3次元モデルデータを正のデータとする場合には、制御部34は、PMI間で対応していないPMIがある場合には、2次元図面データにおけるPMIを修正する。
【0067】
次に、本実施形態の図面データ処理システムにおける端末装置10の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
【0068】
先ず、2次元図面データと3次元モデルデータの差異を検出する際の端末装置10の動作の概略について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
制御部34は、ステップS10において、2次元図面データに含まれる複数のPMI間の関係性を判定して、判定された関係性に基づき、複数のPMI間の関係性を示す第1の情報を生成する。
【0070】
そして、制御部34は、ステップS20において、3次元モデルデータに含まれる複数のPMI間の関係性を判定して、判定された関係性に基づき、複数のPMI間の関係性を示す第2の情報を生成する。
【0071】
最後に、制御部34は、ステップS30において、生成した第1の情報と第2の情報との間における差異を検出する。
[複数のPMI間の関係性の判定]
【0072】
先ず、
図6のフローチャートにおけるステップS10、S20において説明した、PMIが含まれた3次元モデルデータ又は2次元図面データに基づいて、複数のPMI間の関係性を示す情報を生成する際の端末装置10の動作の概略について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0073】
まず、制御部34は、ステップS101において、データ記憶部35に記憶されている3次元モデルデータ等の図面データから、含まれているPMIの情報を検出する。
【0074】
次に、制御部34は、ステップS102において、検出されたPMIの情報に基づいて、複数のPMI間の関係性を判定する。
【0075】
そして、制御部34は、ステップS103において、判定した複数のPMI間の関係性を示す情報を生成する。なお、制御部34は、生成した複数のPMI間の関係性を示す情報を、関係性があると判定されたそれぞれのPMIに付与するようにしてもよいし、または関係性があると判定されたPMIとは独立した別の情報として3次元モデルデータに付与するようにしてもよい。さらに、制御部34は、生成した複数のPMI間の関係性を示す情報を、3次元モデルデータとは別の情報として、独立して保持するようにしてもよい。
【0076】
次に、
図7のフローチャートのステップS101において説明したPMI情報の検出処理の具体例を
図8~
図11を参照して説明する。
【0077】
一般的に、3次元モデルデータ上では、図示サイズとも呼ばれる基準寸法、及び公差がどの部分に該当するかを表わすために、PMIは3次元形状に関係する部位と関連付けられている。例えば、
図8に示した3次元モデルデータでは、平板状の部品の一部に長孔50が設けられており、理論寸法41、サイズ公差42、幾何公差43がPMIにより定義されている。
【0078】
ここで、長孔50の斜視図を
図9に示す。ここで、長孔50の2つの側面を、それぞれ部位51、52として表すものとする。
【0079】
この場合、理論寸法41は、データムCから部位51、52の中心線までの距離を表している。また、サイズ公差42は、部位51と部位52との間の距離を表している。そして、幾何公差43は、理論寸法41、つまりデータムCから部位51、52の中心線までの距離の許容される誤差を表している。
【0080】
また、3次元モデルデータ上では、特定のPMIの補足情報を表すために別のPMIが付属した状態で管理される場合がある。例えば、
図10では、サイズ公差44、バルーン記号45、キャリパー指示46は、下記に示すような付属関係がある。バルーン記号45は、サイズ公差44が79番目の検査項目であることを表わしている。また、キャリパー指示46は、サイズ公差44を測定する際の測定方法を指示している。ここで、キャリパー指示とは、例えば、「ある2面間の距離を測定する際にある1か所を測定すればよい。」という意味の指示であり、測定方法に関する指示である。
【0081】
図8、
図10に示したような3次元モデルデータから検出したPMIの情報例を
図11に示す。なお、3次元モデルデータでは、どのPMIがどの形体と関連付けられているかの情報をSDK(Software Development Kit)等を用いて抽出することができる。また、
図11に示したPMIの情報例では、説明を簡単にするために取得可能な情報のうちの一部の情報のみが示されており、実際にはこの情報以外の情報も取得可能である。
【0082】
また、実際にはPMIには、それぞれ識別番号が設定されており、この識別番号により各PMIを特定しているが、
図11では、説明を簡単にするために各PMIに対して付した符号を識別番号の代わりに用いて各PMIを特定するものとして説明する。
【0083】
3次元モデルデータから取得したPMI情報は、
図11に示されるように、それぞれ、識別番号、種類、値、理論寸法か否かの情報、関連部位の情報により構成されている。
【0084】
次に、制御部34は、3次元モデルデータから検出したPMI情報に基づいて、複数のPMI間の関係性を判定する。関係性の種類と条件の一例を下記の(1)~(3)に示す。
【0085】
(1)サイズ公差を親、幾何公差を子とする親子関係
種類がサイズ公差であるPMIと、種類が幾何公差であるPMIにおいて、種類がサイズ公差であるPMIの関連部位と、種類が幾何公差であるPMIの関連部位のうち一致するものがある場合、制御部34は、そのサイズ公差と幾何公差との間には親子関係という関係性があると判定する。
【0086】
具体的には、
図8に示した例の場合には、制御部34は、
図12に示すように、サイズ公差42を親、幾何公差43を子とする親子関係があると判定する。
【0087】
(2)幾何公差を親、理論寸法を子とする親子関係
種類が幾何公差であるPMIと、種類が理論寸法であるPMIにおいて、種類が幾何公差であるPMIの関連部位と、種類が理論寸法であるPMIの関連部位のうち一致するものがある場合、制御部34は、その幾何公差と理論寸法との間には親子関係という関係性があると判定する。
【0088】
具体的には、
図8に示した例の場合には、制御部34は、
図12に示すように、幾何公差43を親、理論寸法41を子とする親子関係があると判定する。
【0089】
(3)サイズ公差または幾何公差を親、親のPMIの補足情報を定義するPMIを子とする親子関係
種類がサイズ公差または幾何公差のPMIに付属するPMIが存在する場合、制御部34は、そのサイズ公差または幾何公差と、付属するPMIとの間には親子関係という関係性があると判定する。
【0090】
具体的には、
図10に示した例の場合には、制御部34は、
図13に示すようにサイズ公差44を親、バルーン記号45およびキャリパー指示46を子とする親子関係があると判定する。なお、サイズ公差または幾何公差と、その補足情報とは、3次元アノテーションとして表示する際に、まとまって表示されるように表示位置が設定されていることを利用することにより、このような親子関係を判定することができる。
【0091】
このような判定方法により複数のPMI間の関係性を判定した結果に基づいて、制御部34は、複数のPMI間の関係性を示す情報を生成する。このようにして生成される複数のPMI間の関係性を示す情報例を
図14に示す。
図14は、
図12、
図13において判定された関係性を示す情報例である。
【0092】
図14では、各PMIに対して、親であるPMIの識別番号、子であるPMIの識別番号が付与されているのが分かる。例えば、理論寸法41に対して親の関係性を有するPMIが幾何公差43であり、サイズ公差42に対して子の関係性を有するPMIが幾何公差43であることが分かる。また、同様に、幾何公差43に対して親の関係性を有するPMIがサイズ公差42であり、幾何公差43に対して子の関係性を有するPMIが理論寸法41であることが分かる。
【0093】
そして、
図14を参照すると、サイズ公差44に対して子の関係性を有するPMIがバルーン記号45とキャリパー指示46であり、バルーン記号45、キャリパー指示46に対してそれぞれ親の関係性を有するPMIがサイズ公差44であることが分かる。
【0094】
つまり、
図14に示す情報は、
図12、
図13で説明したPMI間の親子関係を示すものとなっている。なお、
図14では、2つのPMI間に親子関係がある場合に、親の関係にあるPMIと子の関係にあるPMIの両方に、親子関係であることを示す情報をそれぞれ付与するものとして説明した。しかし、親の関係にあるPMIと子の関係にあるPMIのいずれか一方のみに、親子関係を示す情報を付与するようにすることも可能である。
【0095】
また、PMI間の親子関係を示す情報を3次元モデルデータに付与して保持させる場合でも、各PMIの情報とは別に保持するようにしてもよい。さらに、PMI間の親子関係を示す情報を3次元モデルデータ内に保持するのではなく、PMI間の親子関係を示す定義ファイルとして3次元モデルデータとは別の情報として管理するようにしてもよい。
【0096】
なお、上記では3次元モデルデータからPMIを検出して、複数のPMIの関係性を判定する場合について説明したが、DXF(Drawing Exchange Format)データ等の汎用の2次元図面データからPMIを検出して、複数のPMIの関係性を判定することも可能である。
【0097】
このようなDXFデータによる2次元図面例を
図15に示す。
【0098】
図15に示した2次元図面には、サイズ公差61、幾何公差62、理論寸法63、データムターゲット64、注記フラグ65、キャリパー指示66、設計変更記号67、バルーン記号68を定義するPMIが含まれている。この
図15に示した2次元図面のDXFデータに含まれている各PMIの種類の一覧を
図16に示す。
【0099】
図16を参照すると、基準寸法とサイズ公差は、長さ、角度、径などの寸法を規定するものであり、DXFデータにおけるエンティティタイプは「DIMENSION(寸法)」であることが分かる。ここで、エンティティとは、DXFデータにおいてPMIにより表現された幾何公差、サイズ公差等の記号のそれぞれを意味する。
【0100】
また、
図16を参照すると、幾何公差62、理論寸法63、データムターゲット64、注記フラグ65、キャリパー指示66、設計変更記号67、バルーン記号68についても、それぞれ、PMIの種類、どのような内容を意味しておりどのような特徴を有するかという情報と、エンティティタイプとが規定されているのが分かる。
【0101】
次に、このようなPMIをDXFデータから検出する際の検出方法について
図17のフローチャートを参照して説明する。
【0102】
まず、制御部34は、ステップS201において、データ記憶部35に記憶されたDXFデータを読み込み、ステップS202においてエンティティを1つ選択する。
【0103】
次に、制御部34は、ステップS203において、選択したエンティティのエンティティタイプが「寸法」であるか否かを判定する。そして、ステップS203において、選択したエンティティのエンティティタイプが「寸法」であると判定された場合、制御部34は、そのエンティティの表わす記号が、「寸法値」が四角形で囲まれている記号であるか否かを判定する。
【0104】
ステップS204において、そのエンティティの表わす記号が、「寸法値」が四角形で囲まれている記号であると判定されなかった場合、制御部34は、ステップS205において、選択したエンティティにより現されたPMIはサイズ公差であると判定する。また、ステップS204において、そのエンティティの表わす記号が「寸法値」が四角形で囲まれている記号であると判定された場合、制御部34は、ステップS206において、選択したエンティティにより現されたPMIは理論寸法であると判定する。
【0105】
さらに、ステップS203において、選択したエンティティのエンティティタイプが「寸法」ではないと判定された場合、制御部34は、ステップS207において、選択したエンティティのエンティティタイプが「幾何公差」であるか否かを判定する。
【0106】
ステップS207において、選択したエンティティのエンティティタイプが「幾何公差」であると判定された場合、制御部34は、ステップS208において、そのエンティティにおける引き出し線の有無に関する情報を取得するとともに、ステップS209において、選択したエンティティにより現されたPMIは幾何公差であると判定する。
【0107】
また、ステップS207において、選択したエンティティのエンティティタイプが「幾何公差」ではないと判定された場合、制御部34は、ステップS210において、選択したエンティティのエンティティタイプが「ブロック挿入」であるか否かを判定する。
【0108】
そして、ステップS210において、選択したエンティティのエンティティタイプが「ブロック挿入」であると判定された場合、制御部34は、ステップS211において、そのエンティティの表す記号が、「データムを表す英大文字1文字+数字」が四角形で囲まれている記号であるか否かを判定する。
【0109】
ステップS211において、そのエンティティの表す記号が、「データムを表す英大文字1文字+数字」が四角形で囲まれている記号であると判定された場合、制御部34は、ステップS212において、選択したエンティティにより現されたPMIはデータムターゲットであると判定する。
【0110】
ステップS211において、そのエンティティの表す記号が、「データムを表す英大文字1文字+数字」が四角形で囲まれている記号ではないと判定された場合、制御部34は、ステップS213において、そのエンティティの表す記号が、「数字」が五角形で囲まれている記号であるか否かを判定する。
【0111】
ステップS213において、そのエンティティの表す記号が、「数字」が五角形で囲まれている記号であると判定された場合、制御部34は、ステップS214において、選択したエンティティにより現されたPMIは注記フラグであると判定する。
【0112】
ステップS213において、そのエンティティの表す記号が、「数字」が五角形で囲まれている記号ではないと判定された場合、制御部34は、ステップS215において、そのエンティティの表す記号が、「大文字のI/L」が三角形で囲まれている記号であるか否かを判定する。
【0113】
ステップS215において、そのエンティティの表す記号が、「大文字のI/L」が三角形で囲まれている記号であると判定された場合、制御部34は、ステップS216において、選択したエンティティにより現されたPMIはキャリパー指示であると判定する。
【0114】
ステップS215において、そのエンティティの表す記号が、「大文字のI/L」が三角形で囲まれている記号ではないと判定された場合、制御部34は、ステップS217において、そのエンティティの表す記号が、「3桁の数字」が三角形で囲まれている記号であるか否かを判定する。
【0115】
ステップS217において、そのエンティティの表す記号が、「3桁の数字」が三角形で囲まれている記号であると判定された場合、制御部34は、ステップS218において、選択したエンティティにより現されたPMIは設計変更記号であると判定する。
【0116】
ステップS217において、そのエンティティの表す記号が、「3桁の数字」が三角形で囲まれている記号ではないと判定された場合、制御部34は、ステップS219において、そのエンティティの表す記号が、「数字」が丸で囲まれている記号であるか否かを判定する。
【0117】
ステップS219において、そのエンティティの表す記号が、「数字」が丸で囲まれている記号であると判定された場合、制御部34は、ステップS220において、選択したエンティティにより現されたPMIはバルーン記号であると判定する。
【0118】
そして、ステップS205、S206、S209、S212、S214、S216、S218、S220のいずれかにおいて、選択したエンティティにより現されたPMIの種類を特定した後、制御部34は、ステップS221において、種類を特定したPMIの外接矩形の情報を取得する。
【0119】
そして、制御部34は、ステップS222において、DXFデータ中に次のエンティティがあるか否かを判定する。なお、ステップS219において、そのエンティティの表す記号が、「数字」が丸で囲まれている記号ではないと判定された場合、及びステップS210において、選択したエンティティのエンティティタイプが「ブロック挿入」ではないと判定された場合も同様に、制御部34は、ステップS222において、DXFデータ中に次のエンティティがあるか否かを判定する。
【0120】
そして、制御部34は、ステップS222においてDXFデータ中に次のエンティティがあると判定した場合、ステップS223において、次のエンティティを選択して、ステップS204の処理に戻る。また、制御部34は、ステップS222においてDXFデータ中に次のエンティティがないと判定した場合、処理を終了する。
【0121】
次に、制御部34は、このようにしてDXFデータから検出したPMI情報に基づいて、複数のPMI間の関係性の判定を行う。関係性の種類の具体例を
図18、
図19に示す。
【0122】
例えば、制御部34は、
図18に示すように、パターン1として、種類がサイズ公差であるPMIを親として、種類が幾何公差、データムターゲット、注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号であるPMIを子とする親子関係があると判定する。
【0123】
また、例えば、制御部34は、
図19(A)に示すように、パターン2として、種類がサイズ公差であるPMIを親として、種類が幾何公差、データムターゲット、注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号であるPMIを子とし、注記フラグ、設計変更記号、バルーン記号を孫とする親子関係があると判定する。なお、
図19(A)では、サイズ公差との間で孫の関係にある注記フラグ、設計変更記号、バルーン記号は、幾何公差に対して子の関係にあると判定されている。
【0124】
なお、制御部34は、
図19(B)に示すように、パターン3として、幾何公差、注記フラグ、設計変更記号、バルーン記号の間の関係において、幾何公差であるPMIを親として、注記フラグ、設計変更記号、バルーン記号であるPMIを子とする親子関係があるとのみ判定するようにしてもよい。
【0125】
次に、
図18、
図19に示したような関係性を判定する際の判定方法例について
図20のフローチャートを参照して説明する。
【0126】
まず、制御部34は、ステップS301において、「サイズ公差」のPMIをセットに1つずつ設定し、各セットに番号を付与する。ここで、セットとは、
図18、
図19に示したいずれかのパターンの親子関係を有する複数のPMIの組を意味する。
【0127】
次に、制御部34は、ステップS302~S306の処理により幾何公差についての判定を行う。具体的には、制御部34は、ステップS302において、DXFデータ中の「幾何公差」のPMIを1つ選択して、この「幾何公差」のPMIが引き出し線を保持しているか否かを判定する。ステップS302において、「幾何公差」のPMIが引き出し線を保持していると判定された場合、制御部34は、ステップS303において、その「幾何公差」のPMIを新たなセットに設定して、そのセットに番号を付与する。
【0128】
そして、ステップS302において、「幾何公差」のPMIが引き出し線を保持していないと判定された場合、制御部34は、ステップS304において、直上のセットPに「幾何公差」のPMIを追加する。ここで、直上とはDXFデータ上における位置において直ぐ上を意味する。そして、制御部34は、ステップS305において、「幾何公差」のPMIを追加したセットPの外接矩形座標を更新する。
【0129】
制御部34は、ステップS306において、DXFデータ中に次の「幾何公差」のPMIがあるか否かを判定して、判定していない「幾何公差」のPMIがなくなるまでステップS302~S305の処理を繰り返す。
【0130】
次に、制御部34は、ステップS307~S309の処理によりデータムターゲットについての判定を行う。具体的には、制御部34は、ステップS307において、DXFデータ中の「データムターゲット」のPMIを1つ選択して、この「データムターゲット」のPMIの直上の「幾何公差」のPMIが属するセットPに、選択した「データムターゲット」のPMIを追加する。そして、制御部34は、ステップS308において、「データムターゲット」のPMIを追加したセットPの外接矩形座標を更新する。
【0131】
制御部34は、ステップS309において、DXFデータ中に次の「データムターゲット」のPMIがあるか否かを判定して、判定していない「データムターゲット」のPMIがなくなるまでステップS307、S308の処理を繰り返す。
【0132】
次に、制御部34は、ステップS310~S316の処理により注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号についての判定を行う。なお、
図20のフローチャートにおいては、注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号のPMIのいずれかをXとして表現する。
【0133】
制御部34は、ステップS310において、DXFデータ中の注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号のPMIを1つ選択して、ステップS310において、このPMIの外接矩形とセットPの外接矩形が交わるか否かを判定する。ステップS310において、注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号のPMIのいずれかの外接矩形とセットPの外接矩形が交わる場合、制御部34は、ステップS311において、このPMIをセットPに追加する。
【0134】
ステップS310において、注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号のPMIのいずれかの外接矩形とセットPの外接矩形が交わらない場合、制御部34は、ステップS312において、注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号のPMIのいずれかのPMIと、このPMIの上下左右に存在するセットP1、P2、P3、P4との間の最短距離を求める。
【0135】
そして、制御部34は、ステップS313において、求めた最短距離が1つだけであるか否かを判定する。ステップS313において、求めた最短距離が1つだけであると判定された場合、制御部34は、ステップS314において、最短距離のセットPnにこのPMIを追加する。
【0136】
また、ステップS313において、求めた最短距離が1つだけではないと判定された場合、制御部34は、ステップS315において、右、下、左、上の順で探して最初に見つけたセットPnにこのPMIを追加する。
【0137】
そして、ステップS311、S314、又は、S315のいずれかにおいて、選択した注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、バルーン記号のPMIのいずれかのPMIをセットPに追加した後、制御部34は、ステップS316において、DXFデータ中に次の注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、または、バルーン記号のPMIがあるか否かを判定して、判定していない注記フラグ、キャリパー指示、設計変更記号、または、バルーン記号のPMIがなくなるまでステップS310~S315の処理を繰り返す。
【0138】
上記で説明した処理が行われることにより、DXFデータ中に含まれるPMIは、
図18、
図19に示したいずれかのパターンの複数のPMIのセットに設定されることになる。
【0139】
なお、上記では複数のPMI間において親子関係の関係性を判定して、この関係性を示す情報を生成する場合について説明したが、制御部34は、親子関係以外にも同一グループに属するという関係性、同一セットに属するという関係性を判定し、これらの関係性を示す情報を制定する。
【0140】
例えば、制御部34は、定義された幾何公差またはサイズ公差が同じ種類の形体を指示先とする少なくとも2つ以上のPMIの組を対応関係がある同一グループと判定し、対応関係があると判定したPMIの組を同一のグループに属する関係性があることを示す情報を生成する。具体的には、同一形状、同一規格の複数の穴、複数の突起部等の規格を定義するPMIは同一グループに属すると判定される。
【0141】
また、制御部34は、定義された幾何公差またはサイズ公差が同一の形体を指示先とする少なくとも2つ以上のPMIの組を対応関係がある同一セットと判定し、判定したPMIの組に対し同一セットに属するという情報を生成する。具体的には、ある形体の中心軸を同一とする内径と外径、ある形体の高さと幅のように、同一の形体に関する規格を定義するPMIは同一セットに属すると判定される。
【0142】
[2D図面データと3Dモデルデータとの間の差異の検出]
次に、上記において説明した方法により判定された2次元図面データにおける複数のPMI間の関係性の情報と、3次元モデルデータにおける複数のPMI間の関係性の情報を用いて、2D図面データと3Dモデルデータとの間の差異を検出する方法の具体例を説明する。
【0143】
例えば、ある部品の2次元図面データ例を
図21に示す。そして、この部品の3次元モデルデータ例を
図22に示す。そして、この
図21に示した2次元図面データと、
図22に示した3次元モデルデータとの間の差異を検出する場合の動作について具体的に説明する。
【0144】
まず、制御部34は、
図21に示した2次元図面データからPMIを抽出し、抽出したPMI間の関係性を判定して、親子関係となるPMIのセットを作成し、同一の親子関係IDを設定する。制御部34は、親子関係が等しい複数のPMIセットがある場合、グループ関係となるPMIセットを作成し、同一のグループIDを設定する。同様に、制御部34は、
図22に示した3次元モデルデータからPMIを抽出し、抽出したPMI間の関係性を判定して、親子関係となるPMIのセットを作成し、同一の親子関係セットをグループ化する。
【0145】
このようにしてグループ化された親子関係セットの一例を
図23に示す。
【0146】
図23を参照すると、親子関係があると判定された複数のPMIには同じ親子関係IDが設定されているのが分かる。例えば、2次元図面データから抽出されたPMIでは、3D3、465、455というPMI-IDを持つ3つのPMIが、親子関係があると判定され、「P2-11」という同一の親子関係IDが設定されているのが分かる。同様に3FE、468、3C8というPMI-IDを持つ3つのPMIが、親子関係があると判定され「P2-28」という同一の親子関係IDが設定されている。
【0147】
そして、同一の親子関係セットはさらに同一のグループとして設定されている。例えば、「P2-11」という親子関係IDが設定された3つのPMIと、「P2-28」という親子関係IDが設定された3つのPMIとは、親がサイズ公差であり、その子の1つが幾何公差、もう一つがフラグ、という親子関係の構造が等しく、かつ、親子関係を構築している各要素が、サイズ公差及び幾何公差ならば、PMI種類、公差種類、ノミナル値、公差上限値、公差下限値が一致し、フラグならばフラグ値が一致すれば同じと判定する。そのため、「P2-11」と「P2-28」の2つの親子関係セットは、同一のグループであると判定され「G2-1」という同一のグループIDが設定されているのが分かる。そして、3次元モデルデータから抽出されたPMIにおいても同様に、抽出されたPMIにおける親子関係セットの判定、判定された親子関係セットのグループ化が行われる。
【0148】
そして、制御部34は、2次元図面データから抽出し、関係性判定されたPMIと、3次元モデルデータから抽出し、関係性判定されたPMIを参照して、各グループ内の1つの親子関係セットどうしを比較して差異があるか否かを判定する。比較対象となるPMI種類は、サイズ公差、幾何公差、フラグであるPMIのみであり、制御部34は、他の種類のPMIが親子関係に存在していても無視する。
【0149】
具体的には、
2次元図面データ:(親)サイズ公差―(子1)幾何公差
―(子2)バルーン記号
3次元図面データ:(親)サイズ公差―(子1)幾何公差
という場合には、2次元図面データの「(子2)バルーン記号」は比較対象外の為に、親子関係は一致することになる。
【0150】
このような比較結果により、例えば、
図23に示したデータでは、グループIDが「G2-1」の親子関係セットのグループと、グループIDが「G3-3」の親子関係セットのグループとが一致すると判定される。つまり、
図24に示すように、2D図面において同一グループであると判定された2つの親子関係セットと、3Dモデルにおいて同一グループであると判定された2つの親子関係セットとが、グループ単位で一致していると判定される。この
図24に示された場合は、2D図面と3Dモデルとの間において、2対2でPMIの親子関係セットが対応している場合の一例である。
【0151】
同様にして、2D図面と3Dモデルとの間において、1対1(図中では1:1と表記する。)の関係でPMIの親子関係セットが対応する場合の一例を
図25に示す。
図25を参照すると、2D図面と3Dモデルとの間で、それぞれ1つの親子関係セットが一致して対応する様子が示されている。
【0152】
さらに、2D図面と3Dモデルとの間において、1対多、具体的には1対4の関係でPMIの親子関係セットが対応する場合の一例を
図26に示す。
図26を参照すると、2D図面における1つの親子関係セットと、3Dモデルにおける4つの親子関係セットとが一致して対応する様子が示されている。ここで、2D図面における「φ4.5±0.1 (4)」というノミナル値、公差範囲の記述は、同じノミナル値、公差範囲の箇所が図面中において全部で4箇所あることを示している。なお、
図26では、2D図面と3Dモデルとの間において、1対多の関係でPMIの親子関係セットが対応する場合を示したが、多対1の関係でPMIの親子関係セットが対応する場合もあり得る。
【0153】
なお、2D図面と3Dモデルとでは、部品の外径寸法等のPMIは、見易さも考慮して異なるビューに配置される場合も多い。特に3Dモデルでは、1つの部品を様々な方向から見た場合のビューを表示することが可能となっている。しかし、本実施形態では、グループ化されたPMIの親子関係セットを親子単位で判定することにより、異なるビューに配置されたPMIにおいても、一致又は不一致を判定することが可能となっている。
【0154】
例えば、
図27では、2D図面における側面図と3Dモデルにおける平面図との間でPMIの親子関係セットが一致する場合が示されている。また、例えば、
図28では、2D図面における側面図と3Dモデルにおける側面図との間、及び、2D図面における平面図と3Dモデルにおける正面図との間で、PMIの親子関係セットが一致する場合が示されている。
【0155】
なお、上述したように2D図面と3Dモデルとの間でPMIの親子関係セットが1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応している場合に、2D図面及び3Dモデルのいずれか一方で、多数対応していると判定されたPMIのうち1つのPMIが変更された場合、2D図面又は3Dモデルのもう一方で対応するPMIがどれかを特定することができない。そのため、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間でPMIの親子関係セットが1対多、多対1、及び、多対多のうちのいずれか1つの関係で対応している場合に、2D図面または3Dモデルのうち対応関係となっているPMIの多い方の、PMIの指示先となる部位の相対位置を特定し、もう一方のPMIの相対位置と比較することで、1:1の対応関係を特定する。
【0156】
この際の制御部34における処理を
図29~
図37を参照して説明する。
【0157】
まず、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間において1対1で対応する親子関係セットのうち、同じデータム軸を有するビューに属するPMIの親子関係セットが指し示す座標を基準座標としてそれぞれ抽出する。
【0158】
例えば、制御部34は、
図29に示すように、データムのB軸とC軸が含まれるビューから、2D図面と3Dモデルとの間において1対1で対応するPMIの親子関係セットが指し示す孔の中心座標をそれぞれ基準座標として抽出する。なお、ビュー内の特徴点を基準座標として抽出しても良い。特徴点は、形状の屈曲箇所やエッジの交わる箇所など、一般的に画像処理や形状処理で用いられる特徴点を用いればよい。例えば
図29の符号1001、1002に示す穴の開いた形状の領域を基準座標として用いればよい。
【0159】
次に、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間で、データムの方向を合わせて、基準座標が相対的に一致するように、2D図面又は3Dモデルのいずれか一方の座標を変換する。例えば、制御部34は、
図30に示すように、3DモデルをデータムのB軸基準で上下反転することにより、2D図面及び3Dモデルにおける基準座標を相対的に一致させる。
【0160】
図31を参照すると、B軸基準で上下反転した後の3Dモデルと、2D図面との間では、対応する基準座標のデータム軸に対する相対的な位置が一致しているのが分かる。
【0161】
そして、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間において特定した対応関係のあるPMIの数に差がある場合、2D図面または3Dモデルのうち対応関係となっているPMIの多い方の、PMIの指示先となる部位の相対位置を特定し、もう一方のPMIの相対位置と比較することで、1:1の対応関係を特定する。
【0162】
例えば、
図32に示すように、2D図面と3Dモデルとの間において1対4で対応するPMIの親子関係セットが存在する場合について説明する。
図32では、2D図面におけるある1つのPMIの親子関係セットと、3Dモデルにおいて同一グループとなっている4つのPMIの親子関係セットとが、1対4で対応している場合が示されている。
【0163】
このような場合、制御部34は、基準座標の相対的位置関係から、1対4対応となっていたPMIの親子関係セットを、それぞれ、1対1対応の関係となるように特定する。具体的には、
図33に示すように、2D図面と3Dモデルとの間で1対4の対応関係であったPMIの親子関係セットに基づいて、4つの1対1対応の関係を特定する。この制御部34による対応関係の特定処理の具体的な動作を下記に説明する。
【0164】
制御部34では、2D図面側においては親となっているPMIのサイズ公差が「φ4.5±0.1 (4)」という表記になっていることにより、同じものが2D図面内に4箇所存在することが分かる。そして、制御部34は、2D図面内において残りの3箇所を探した結果、「φ4.5REF」というPMIが3つ存在するので、該当箇所として抽出する。そして、制御部34は、抽出した3箇所のPMIと、元のPMIの親子関係セットの合計4箇所と、3Dモデルにおける4箇所とを1対1対応させる。
【0165】
なお、「φ4.5REF」というPMIが3つ存在せず、「φ4.5±0.1 (4)」のみが1つだけ存在するケースについても説明する。
図34で示すように図面の中にφ4.5に相当する穴形状が明らかに4つのみ存在し、誤認識する懸念がない場合には、REFを記載しないこともある。例えば、符号2000で示す「φ4.5±0.1」が付与されているPMIが対応付く2次元図面データのPMIを特定する場合には、制御部34は、上記で説明した基準座標を用いてビューの方向を合わせた後に、3次元図面データにて符号2001、2002で示すデータム軸からの長さを取得し、2次元図面データでデータム軸から同じ長さをもつ形状を探す。具体的には、制御部34は、2次元図面データにてデータムC軸から符号2001の長さと同じ長さとなる位置と、データムB軸から符号2002と同じ長さとなる位置を求め、その位置に存在する穴形状2005を穴形状2000と対応付くと判定する。つまり、符号2003で示す長さが符号2001で示す長さと一致し、符号2004で示す長さが符号2002で示す長さと一致することになる。
【0166】
また、多対多で一致するものを1対1対応させる場合について
図35で示す。制御部34は、上記で説明した基準座標を用いてビューの方向を合わせた後に、1:4対応時の判定方法と同様に、相対位置関係から1対1対応を判定することが出来る。
図35に示すように3:4で対応する場合に、相対位置から穴形状3001と穴形状3004、穴形状3002と穴形状3005、穴形状3003と穴形状3006とがそれぞれ対応付くことが分かる。また、2次元図面データの穴形状3004のPMIは「φ4.5±0.1 (2)」となっている為、φ4.5に相当する穴形状が全部で2箇所存在することが分かる。3次元図面データの穴形状3000で示すPMIに対応するものを見つける為には、制御部34は、
図34に示した場合と同様に、3次元図面データ上でデータムB軸からの長さとデータムC軸からの長さを求め、この長さに相当する2次元図面データ上の位置を求めることにより、穴形状3007が穴形状3000と対応付くことが分かる。
【0167】
さらに、多対多で一致するが、必ずしも全てが1対1対応するとは限らない場合について
図36で示す。制御部34は、上記で説明した基準座標を用いてビューの方向を合わせた後に、1:4対応時の判定方法と同様に、相対位置関係から1対1対応を判定する。
図36に示すように3:4で対応する場合に、制御部34は、相対位置から穴形状3011と穴形状3014、穴形状3012と穴形状3015、穴形状3013と穴形状3016とがそれぞれ対応付くことが分かり、穴形状3010で示すPMIは対応付くものがないという判定となる。つまり、穴形状3010は3次元図面データ側で追加されたもの、又は2次元図面データ側で削除されたものとなる。
【0168】
このようにして2D図面と3Dモデルとの間において、PMIの親子関係セットを1対1対応の関係となるように特定する理由について
図37を参照して説明する。
【0169】
例えば、
図37に示すように、2D図面における3つの「φ4.5REF」というPMIのうちの1つが、「φ4.5±0.2」というPMIに変更された場合を用いて説明する。なお、このような変更が行われると2D図面中の「φ4.5±0.1 (4)」という表記は、「φ4.5±0.1 (3)」という表記に変更される。このような変更が行われた場合であっても、2D図面と3Dモデルとの間で、PMIの親子関係セットが1対1対応されていることにより、制御部34は、2D図面側において変更のあったPMIと対応する、3Dモデル側のPMIを特定することができる。その結果、
図37に示すように、3Dモデル側の対応するPMIを修正することが可能となる。
【0170】
なお、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間において、PMIどうしが一致せずに対応していない場合でも、予め設定された許容範囲内でPMIどうしが対応している場合には、対応関係があると判定する。例えば、2D図面上の表記が「31.1」という理論寸法であり、3Dモデル上の表記が「31.08」という理論寸法であった場合、制御部34は、小数点以下の桁数の表示方法が2D図面システムと3Dモデルシステムとで異なるためであり、実際は同じ値を意味すると判定すると、2つのPMIは実質的に一致すると判定する。
【0171】
また、例えば、2D図面上の表記が上限値「4.085」、下限値「4.010」という表記であり、3Dモデル上の表記が「4 +0.085 -0.01」という表記であった場合、制御部34は、どちらの表記も基準の長さが「4」で上限公差が「0.085」、下限公差が「0.010」であることを意味するため、2つのPMIは実質的に一致すると判定する。
【0172】
また、例えば、「4 +0.048 0」という公差は嵌め合い公差のH10級を表す定義であるとJISやISOで定められており、2D図面及び3Dモデルのいずれか一方が(H10)といった表記のみになっていたとしても、どちらの表記も基準の長さが「4」で上限公差が「0.048」、下限公差が「0」であることを意味するため、2つのPMIは実質的に一致すると判定する。
【0173】
さらに、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間におけるPMI又はPMIの親子関係セットとの対応関係を、2D図面又は3Dモデルにおける表示態様を変化させることにより可視化するようにしてもよい。
【0174】
例えば、このような対応関係を2D図面上において表示色を変えることにより可視化した場合の例を
図38に示す。
図38では、2D図面と3Dモデルとの間における対応関係が、1対1対応となっているPMI又はPMIの親子関係セットは緑色で表示され、1対多対応となっているPMI又はPMIの親子関係セットは黄色で表示されている。さらに、
図38では、多対多1対応となっているPMI又はPMIの親子関係セットは水色で表示され、未対応となっているPMI又はPMIの親子関係セットは紫色で表示されている。
【0175】
なお、
図38では、2D図面におけるPMIの表示態様を変更する場合を示したが、3DモデルにおけるPMIの表示態様を、PMI間の対応関係に応じて変更するようにしてもよい。また、2D図面と3Dモデルとの間で一致しない箇所にのみ2D図面と3Dモデル上においてそれぞれ表示色を変える等により表示態様を変更してもよい。つまり、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間で差異として検出されたPMIの2D図面上又は3Dモデル上における表示態様を、他のPMIとは異なる表示態様として表示するようにしてもよい。
【0176】
さらに、制御部34は、2D図面における員数表記と3Dモデル中に存在するPMIの数とが一致するもの、一致しないものを2次元図面上と3Dモデル上とでそれぞれ表示態様を変えるようにしてもよい。さらに、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間で1対1の対応関係で一致した箇所のみを2D図面又は3Dモデルにおいて表示色を変える等の表示態様の変更を行ってもよい。
【0177】
さらに、制御部34は、2D図面と3Dモデルとの間で検出された差異がなくなるように、2D図面データ又は3DモデルデータにおけるPMIを修正するようにしてもよい。
【0178】
例えば、2D図面においてある孔の幾何公差をつけ忘れてしまった場合を
図39に示す。このような場合には、制御部34は、
図39に示した2D図面における領域90に、「位置度φ0.1 A B C」という表記を子PMIとして自動的に追加する。この場合、制御部34は、サイズ公差と幾何公差の親子関係の情報に基づいて、2D図面と3Dモデルとの間の差異が無くなるように修正を行う。
【0179】
具体的には、制御部34は、2D図面データと3Dモデルデータとの間で、親子単位で差異のあるPMIの親子関係セットを抽出して、不足する親PMI又は子PMIを足りない方の親子関係セットに追加してもよいし、余った親PMI又は子PMIを多い方の親子関係セットから削除するようにしてもよい。さらに、制御部34は、親PMI間の差異、又は子PMI間の差異をいずれかのデータ側に合わせることにより変更するようにしてもよい。
【0180】
なお、2D図面データに合わせて3Dモデルデータを修正するのか、3Dモデルデータに合わせて2D図面データを修正するのかは予めユーザにより設定するようにしてもよい。または、制御部34は、3Dモデルデータ、又は2D図面データのいずれか一方のPMIが更新された場合に、他方のデータにおける対応するPMIの最終更新時刻を比較して、最終更新時刻の古い方のPMIを新しい方のPMIに合わせるように修正するようにしてもよい。
【0181】
なお、
図39に示した場合において、2D図面データに合わせて3Dモデルデータを修正するような設定となっていた場合には、制御部34は、3Dモデルにおける「位置度φ0.1 A B C」という子PMIを削除する。
【0182】
また、制御部34は、例えば、2D図面と3Dモデルとの間で対応するPMIが「φ3.6±0.3」と「φ3.6±0.2」となっている場合、いずれのデータを正データとするかに応じて、一方のPMIを他方に合わせる。
【0183】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0184】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0185】
10 端末装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース
15 表示装置
16 操作入力装置
17 制御バス
20 図面データ管理サーバ
30 ネットワーク
31 操作受付部
32 表示部
33 データ送受信部
34 制御部
35 データ記憶部
41 理論寸法
42 サイズ公差
43 幾何公差
44 サイズ公差
45 バルーン記号
46 キャリパー指示
50 長孔
51、52 部位
61 サイズ公差
62 幾何公差
63 理論寸法
64 データムターゲット
65 注記フラグ
66 キャリパー指示
67 設計変更記号
68 バルーン記号
90 領域