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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038753
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】紙製緩衝材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/05 20060101AFI20240313BHJP
   B65D 81/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B65D81/05 400
B65D81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143006
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】野崎 健吾
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】増井 久剛
(72)【発明者】
【氏名】久郷 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 保
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA53
3E066CA03
3E066CB03
3E066JA03
3E066MA01
(57)【要約】
【課題】輸送による振動が加わった際に商品に傷がつくおそれがない、三角錐状の空袋が連続する形状の紙製緩衝材を提供する。
【解決手段】長手方向に延びる紙の中空筒部2とその中空筒部2の外周から突出して一定幅で長手方向に延びる紙の合掌部3とを有し、中空筒部2に長手方向に間隔をおいて第1シール部5と第2シール部6とを交互に形成し、合掌部3の根元が、長手方向から見て第1シール部5の延在方向と第2シール部6の延在方向との間の位置にあり、合掌部3は、中空筒部2の外周に沿って第1シール部5の側に向けて倒伏した状態に設けられ、長手方向から見て合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bが、合掌部3の幅寸法aよりも大きい紙製緩衝材1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる紙の中空筒部(2)とその中空筒部(2)の外周から突出して一定幅で長手方向に延びる紙の合掌部(3)とを有し、
前記中空筒部(2)に長手方向に間隔をおいて第1シール部(5)と第2シール部(6)とを交互に形成し、
前記第1シール部(5)は、前記中空筒部(2)を挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分であり、
前記第2シール部(6)は、長手方向から見て前記第1シール部(5)の挟み付け方向と直交する方向に前記中空筒部(2)を挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分であり、
前記中空筒部(2)の前記第1シール部(5)と前記第2シール部(6)とで区画される部分で三角錐状の空袋が形成され、
前記合掌部(3)の根元が、長手方向から見て前記第1シール部(5)の延在方向と前記第2シール部(6)の延在方向との間の位置にあり、
前記合掌部(3)は、前記中空筒部(2)の外周に沿って前記第1シール部(5)の側に向けて倒伏した状態に設けられ、
長手方向から見て前記合掌部(3)の根元から前記合掌部(3)の倒伏方向に向かって前記第1シール部(5)の位置までの前記中空筒部(2)の周長(b)が、前記合掌部(3)の幅寸法(a)よりも大きい、紙製緩衝材。
【請求項2】
前記合掌部(3)の先端縁(12)は、前記第1シール部(5)から、前記第1シール部(5)の延在方向の端と前記第2シール部(6)の延在方向の端とをつなぐ三角錐の稜線(13)を跨いで第2シール部(6)に至るように延び、
前記合掌部(3)の先端縁(12)の前記第1シール部(5)から前記三角錐の稜線(13)までのスパン(d)と、前記合掌部(3)の先端縁(12)の前記三角錐の稜線(13)から前記第2シール部(6)までのスパン(c)とのうち、短い方のスパン(d)が、長い方のスパン(c)の1/20以上の長さを有する、請求項1に記載の紙製緩衝材。
【請求項3】
前記第1シール部(5)に、前記第1シール部(5)の延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第1貫通穴(7)が形成され、
前記第2シール部(6)に、前記第2シール部(6)の延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第2貫通穴(8)が形成されている、請求項1または2に記載の紙製緩衝材。
【請求項4】
第1貫通穴(7)は、前記合掌部(3)を前記第1シール部(5)に重ね合わせた状態で、前記合掌部(3)と前記第1シール部(5)とを貫通して形成され、
前記合掌部(3)に形成される前記第1貫通穴(7)の穴縁部と、前記第1シール部(5)に形成される前記第1貫通穴(7)の穴縁部のうちの一方の穴縁部が他方の穴縁部に食い込むことで、前記合掌部(3)が前記第1シール部(5)から起き上がらないように前記第1シール部(5)に重ね合わせた状態に保持され、
第2貫通穴(8)は、前記合掌部(3)を前記第2シール部(6)に重ね合わせた状態で、前記合掌部(3)と前記第2シール部(6)とを貫通して形成され、
前記合掌部(3)に形成される前記第2貫通穴(8)の穴縁部と、前記第2シール部(6)に形成される前記第2貫通穴(8)の穴縁部のうちの一方の穴縁部が他方の穴縁部に食い込むことで、前記合掌部(3)が前記第2シール部(6)から起き上がらないように前記第2シール部(6)に重ね合わせた状態に保持されている、請求項3に記載の紙製緩衝材。
【請求項5】
前記中空筒部(2)および前記合掌部(3)は、70~220g/mの坪量を有する紙で形成されている、請求項1または2に記載の紙製緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙製緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
通信販売などで販売される商品を配送するとき、配送中の振動や衝撃などから商品を保護するため、包装箱と商品の間に緩衝材を詰めることが多い。この緩衝材として、従来、特許文献1,2のように、プラスチックフィルムを、空気を封入した三角錐状の空袋が連続する形状に成形したものが知られている。
【0003】
一方、近年、SDGsや海洋プラスチック問題への対応として、紙で形成した緩衝材が注目されている。紙で形成した緩衝材として、例えば、特許文献3,4のものが知られている。特許文献3,4の緩衝材は、途切れずに連続する帯状のクラフト紙を給紙部から繰り出し、そのクラフト紙をクシャクシャの状態にして包装箱に詰めるというものである。しかしながら、特許文献3,4の緩衝材は、使用する資材(クラフト紙)の量が非常に多いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3-43123号公報
【特許文献2】実開昭62-159366号公報
【特許文献3】特表2008-518859号公報
【特許文献4】特表2003-535716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願の発明者らは、使用する資材の量が少ない紙製緩衝材を得ることを検討し、特許文献1,2のように三角錐状の空袋が連続する形状のプラスチックフィルム製緩衝材を、プラスチックフィルムではなく、紙で形成することを検討した。そして、紙製緩衝材(三角錐状の空袋が連続する形状のもの)を試作し、その紙製緩衝材を、包装箱と商品の間に詰めた状態で、包装箱に振動を加えたところ、紙製緩衝材の一部を構成する紙の合掌部の先端縁が商品に接触することで、商品に傷がつくおそれがあることが判明した。以下説明する。
【0006】
特許文献1,2のプラスチックフィルム製緩衝材は、次の構成からなる。すなわち、長手方向に帯状に延びるプラスチックフィルムの幅方向一端と幅方向他端を合掌状に重ねて接合することで、長手方向に延びる筒状フィルムを形成し、その筒状フィルムに縦シール部と横シール部とを長手方向に間隔をおいて交互に形成した緩衝材である。ここで、縦シール部は、筒状フィルムを水平方向の両側から挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分であり、一方、横シール部は、筒状フィルムを上下方向の両側から挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分である。この縦シール部と横シール部とで区画される筒状フィルムの部分が、三角錐状の空袋を形成する。また、この緩衝材は、筒状フィルムの外周から突出して一定幅で長手方向に延びるフィルム合掌部を有する。フィルム合掌部の根元は、筒状フィルムの長手方向から見て、縦シール部の延在方向の上端に対応する位置に配置されている。
【0007】
この特許文献1,2のプラスチックフィルム製緩衝材を、プラスチックフィルムではなく、紙で形成する場合、次の構成となる。すなわち、長手方向に帯状に延びる連続紙の幅方向一端と幅方向他端を合掌状に重ねて接合することで紙の中空筒部を形成し、その紙の中空筒部に縦シール部と横シール部とを長手方向に間隔をおいて交互に形成した緩衝材である。ここで、縦シール部は、紙の中空筒部を水平方向の両側から挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分であり、一方、横シール部は、紙の中空筒部を上下方向の両側から挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分である。この縦シール部と横シール部とで区画される紙の中空筒部の部分が、三角錐状の空袋を形成する。また、この緩衝材は、紙の中空筒部の外周から突出して一定幅で長手方向に延びる紙の合掌部を有する。紙の合掌部の根元は、紙の中空筒部の長手方向から見て、縦シール部の延在方向の上端に対応する位置に配置されている。
【0008】
そして、発明者らが、上記構成の紙製緩衝材を実際に試作し、その紙製緩衝材を、包装箱と商品の間に詰めた状態で、包装箱に振動を加える試験を実施したところ、長手方向から見て、縦シール部の延在方向の上端(紙製緩衝材の三角錐の頂点)から出っ張った紙の合掌部の先端縁が商品に接触することで、商品に傷がつく(例えば、商品を包むシュリンクフィルムに穴あきや破れが生じる)おそれがあることが判明した。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、輸送による振動が加わった際に商品に傷がつくおそれがない、三角錐状の空袋が連続する形状の紙製緩衝材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者は、上記構成の紙製緩衝材において、長手方向から見て、紙の合掌部の根元の位置を、縦シール部の延在方向(上下方向)と横シール部の延在方向(左右方向)の間の角度位置にずらすことで、紙の合掌部の先端縁を、縦シール部および横シール部のいずれの延在方向の端(三角錐の頂点)からも外側に出っ張らなくすることができ、その結果、紙の合掌部の先端縁が商品に接触するのが防止され、商品に傷がつく(例えば、商品を包むシュリンクフィルムに穴あきや破れが生じる)のを防ぐことが可能となるという着想を得た。
【0011】
この着想に基づき、この発明では、上記課題を解決するために、以下の構成の紙製緩衝材を提供する。
[構成1]
長手方向に延びる紙の中空筒部とその中空筒部の外周から突出して一定幅で長手方向に延びる紙の合掌部とを有し、
前記中空筒部に長手方向に間隔をおいて第1シール部と第2シール部とを交互に形成し、
前記第1シール部は、前記中空筒部を挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分であり、
前記第2シール部は、長手方向から見て前記第1シール部の挟み付け方向と直交する方向に前記中空筒部を挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士を接合した部分であり、
前記中空筒部の前記第1シール部と前記第2シール部とで区画される部分で三角錐状の空袋が形成され、
前記合掌部の根元が、長手方向から見て前記第1シール部の延在方向と前記第2シール部の延在方向との間の位置にあり、
前記合掌部は、前記中空筒部の外周に沿って前記第1シール部の側に向けて倒伏した状態に設けられ、
長手方向から見て前記合掌部の根元から前記合掌部の倒伏方向に向かって前記第1シール部の位置までの前記中空筒部の周長が、前記合掌部の幅寸法よりも大きい、紙製緩衝材。
【0012】
この構成を採用すると、長手方向から見て、紙の合掌部の根元が、第1シール部の延在方向と第2シール部の延在方向との間の位置にあり、その合掌部の根元から合掌部の倒伏方向に向かって第1シール部の位置までの中空筒部の周長が、合掌部の幅寸法よりも大きいので、合掌部の先端縁が第1シール部(第1シール部と第2シール部のうち合掌部の倒伏する側にあるシール部)の延在方向の端に届かず、その結果、紙の合掌部の先端縁が、第1シール部および第2シール部のいずれの延在方向の端(紙製緩衝材の三角錐の頂点)からも外側に出っ張らなくなる。そのため、紙の合掌部の先端縁が商品に接触するのが防止され、包装箱と商品の間に紙製緩衝材を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、商品に傷がつく(例えば、商品を包むシュリンクフィルムに穴あきや破れが生じる)のを防ぐことが可能となる。
【0013】
[構成2]
前記合掌部の先端縁は、前記第1シール部から、前記第1シール部の延在方向の端と前記第2シール部の延在方向の端とをつなぐ三角錐の稜線を跨いで第2シール部に至るように延び、
前記合掌部の先端縁の前記第1シール部から前記三角錐の稜線までのスパンと、前記合掌部の先端縁の前記三角錐の稜線から前記第2シール部までのスパンとのうち、短い方のスパンが、長い方のスパンの1/20以上の長さを有する、構成1に記載の紙製緩衝材。
【0014】
この構成を採用すると、三角錐の表面に沿って倒伏した状態の紙の合掌部が三角錐の表面から起き上がるのを抑制し、紙の合掌部の先端縁が商品に接触して商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能となる。すなわち、紙の合掌部の先端縁が、第1シール部から、第1シール部の延在方向の端と第2シール部の延在方向の端とをつなぐ三角錐の稜線を跨いで第2シール部に至る場合、合掌部は、第1シール部から三角錐の稜線までのスパンに対応する部分と、三角錐の稜線から第2シール部までのスパンに対応する部分とに分けられる。そして、その両スパンのうち、長い方のスパンは、三角錐の表面に沿って倒伏した状態から比較的起き上がりやすく、その起き上がった部分の合掌部の先端縁が商品に接触し、特に合掌部が高剛性の紙で形成されるときに商品に傷がつくおそれがある。この問題に対し、第1シール部から三角錐の稜線までのスパンと、三角錐の稜線から第2シール部までのスパンとのうち、短い方のスパンの長さを、長い方のスパンの1/20以上に確保すると、その分、長い方のスパンの合掌部の長さを抑えることができる。そのため、長い方のスパンの合掌部が三角錐の表面から起き上がるのを抑制し、包装箱と商品の間に紙製緩衝材を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、紙の合掌部の先端縁が商品に接触して商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能となる。
【0015】
[構成3]
前記第1シール部に、前記第1シール部の延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第1貫通穴が形成され、
前記第2シール部に、前記第2シール部の延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第2貫通穴が形成されている、構成1または2に記載の紙製緩衝材。
【0016】
この構成を採用すると、包装箱と商品の間に紙製緩衝材を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能となる。すなわち、紙の中空筒部に長手方向に間隔をおいて第1シール部と第2シール部とを交互に形成し、その第1シール部と第2シール部とで区画される中空筒部の部分で三角錐状の空袋を形成した場合、その三角錐状の空袋のうち最も剛性が高く、潰れにくい部分は、第1シール部と第2シール部の部分である。そのため、三角錐状の空袋のうち最も剛性が高い第1シール部と第2シール部の部分に、その延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第1貫通穴および第2貫通穴を形成すると、第1シール部と第2シール部が外力で潰れやすくなるので、包装箱と商品の間に紙製緩衝材を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、緩衝性を発揮しながら商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能となる。
【0017】
[構成4]
第1貫通穴は、前記合掌部を前記第1シール部に重ね合わせた状態で、前記合掌部と前記第1シール部とを貫通して形成され、
前記合掌部に形成される前記第1貫通穴の穴縁部と、前記第1シール部に形成される前記第1貫通穴の穴縁部のうちの一方の穴縁部が他方の穴縁部に食い込むことで、前記合掌部が前記第1シール部から起き上がらないように前記第1シール部に重ね合わせた状態に保持され、
第2貫通穴は、前記合掌部を前記第2シール部に重ね合わせた状態で、前記合掌部と前記第2シール部とを貫通して形成され、
前記合掌部に形成される前記第2貫通穴の穴縁部と、前記第2シール部に形成される前記第2貫通穴の穴縁部のうちの一方の穴縁部が他方の穴縁部に食い込むことで、前記合掌部が前記第2シール部から起き上がらないように前記第2シール部に重ね合わせた状態に保持されている、構成3に記載の紙製緩衝材。
【0018】
この構成を採用すると、第1貫通穴の穴縁部の食い込みによって、合掌部を第1シール部に重ね合わせた状態に保持することができるとともに、第2貫通穴の穴縁部の食い込みによって、合掌部を第2シール部に重ね合わせた状態に保持することができる。そのため、三角錐の表面に沿って倒伏した状態の紙の合掌部が三角錐の表面から起き上がるのを確実に抑制することができ、紙の合掌部の先端縁が商品に接触して商品に傷がつくのを確実に防ぐことが可能となる。
【0019】
[構成5]
前記中空筒部および前記合掌部は、70~220g/mの坪量を有する紙で形成されている、構成1から4のいずれかに記載の紙製緩衝材。
【0020】
この構成を採用すると、70g/m以上の坪量の紙を使用するので、包装箱と商品の間に紙製緩衝材を詰めた状態で包装箱が落下したときにも商品を保護することができる程度の緩衝性能を確保することができる。また、220g/m以下の坪量の紙を使用するので、紙製緩衝材のコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の紙製緩衝材は、長手方向から見て、紙の合掌部の根元が、第1シール部の延在方向と第2シール部の延在方向との間の位置にあり、その合掌部の根元から合掌部の倒伏方向に向かって第1シール部の位置までの中空筒部の周長が、合掌部の幅寸法よりも大きいので、合掌部の先端縁が第1シール部(第1シール部と第2シール部のうち合掌部の倒伏する側にあるシール部)の延在方向の端に届かず、紙の合掌部の先端縁が、第1シール部および第2シール部のいずれの延在方向の端(紙製緩衝材の三角錐の頂点)からも外側に出っ張らない。そのため、紙の合掌部の先端縁が商品に接触するのが防止され、包装箱と商品の間に紙製緩衝材を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、商品に傷がつく(例えば、商品を包むシュリンクフィルムに穴あきや破れが生じる)のを防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施形態の紙製緩衝材の斜視図
図2】(a)は図1の紙製緩衝材の平面図、(b)は図1の紙製緩衝材の正面図近傍の拡大図
図3図2(a)のIII-III線に沿った断面図
図4図2(a)のIV-IV線に沿った断面図
図5図1の紙製緩衝材の製造装置を示す正面図
図6図5の三角錐成形部の近傍の拡大図
図7図6の平面図
図8図6の第2シールバーの突き合わせ部分の近傍の拡大部分断面図
図9図8の第2シールバーで形成された第2貫通穴の近傍の拡大断面図
図10】合掌部の根元を、第1シール部の延在方向の上端に対応する位置に配置した比較例の紙製緩衝材のサンプルを撮影した写真
図11】評価試験で使用したサンプル(段ボール製の包装箱に、商品に見立てた内箱を収容したもの)を示す写真
図12図11に示す包装箱の内面と内箱の外面との間に紙製緩衝材を詰めた状態を示す写真
図13図12に示す包装箱に振動試験機で振動を加えている状態を示す写真
図14】商品に見立てた内箱を包むシュリンクフィルムに生じた穴(紙製緩衝材の合掌部の先端縁との接触により生じたもの)を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図2(a)、(b)に、この発明の実施形態の紙製緩衝材1を示す。この紙製緩衝材1は、長手方向に延びる紙の中空筒部2と、その中空筒部2の外周から突出して一定幅で長手方向に延びる紙の合掌部3とを有する。
【0024】
中空筒部2と合掌部3は、長手方向に帯状に延びる連続紙4(図5参照)を筒状に変形し、その幅方向一端と幅方向他端を合掌状に重ねて接合することで形成されている。合掌部3は、連続紙4(図5参照)の幅方向一端と幅方向他端の同じ側の面同士(図3に示す中空筒部2の内周に対応する面同士)を接合した部分であり、中空筒部2は、紙製緩衝材1の合掌部3を除く部分である。
【0025】
中空筒部2には、第1シール部5と第2シール部6とが長手方向に間隔をおいて交互に形成され、その第1シール部5と第2シール部6とで区画される紙の中空筒部2の部分が、三角錐状の空袋を形成している。図において、紙製緩衝材1は、中空筒部2の長手方向が水平方向となるように配置されている。
【0026】
第1シール部5は、中空筒部2の長手方向に直交する水平方向(図2(a)では紙面に垂直な方向、図2(b)では上下方向)の両側から紙の中空筒部2を挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士をヒートシールした部分である。図4に示すように、第1シール部5は、中空筒部2の長手方向から見て、鉛直方向に直線状に延在している。
【0027】
第2シール部6は、中空筒部2の長手方向から見て第1シール部5の挟み付け方向(図2(a)では上下方向、図2(b)では紙面に垂直な方向)と直交する方向(図2(a)では紙面に垂直な方向、図2(b)では上下方向)の両側から紙の中空筒部2を挟み付けて押し潰し、その押し潰した部分の内面同士をヒートシールした部分である。第2シール部6は、中空筒部2の長手方向から見て、長手方向に直交する水平方向に直線状に延在している。
【0028】
中空筒部2および合掌部3は、図3に示す中空筒部2の内周に対応する面にヒートシール層を設けた紙で形成されている。ヒートシール層は、紙にヒートシール剤を塗布することで形成されている。ヒートシール層は、ヒートシール性をもつフィルムを紙にラミネートすることで形成してもよい。紙は、50~280g/m(好ましくは70~220g/m)の坪量を有するものが使用されている。紙の種類は、クラフト紙や、古紙を原料とする段ボール原紙(例えば、Kライナ、Cライナなど)を採用することができる。なお、図3図4では、合掌部3の構成を分かりやすくするために紙の厚さを誇張しているが、実際の紙の厚さは、0.1mm前後の薄いものである。
【0029】
図3に示すように、中空筒部2を第1シール部5と第2シール部6の間で長手方向に直角に破断した断面における合掌部3の根元は、長手方向から見て、第1シール部5の延在方向(図の一点鎖線の方向。図では上下方向)と第2シール部6の延在方向(図では水平方向)との間の位置にある。合掌部3は、中空筒部2の外周に沿って、第1シール部5の側に向けて倒伏した状態に設けられている。さらに、合掌部3は、長手方向から見て、合掌部3の根元から合掌部3の倒伏方向に向かって第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bが、合掌部3の幅寸法aよりも大きくなるように配置されている。
【0030】
合掌部3の幅寸法aは、5mm以上15mm以下の範囲で設定することができる。また、合掌部3の根元から合掌部3の倒伏方向に向かって第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bは、中空筒部2の全周の1/24(中空筒部2を真円に変形させたときの15°の中心角に相当する長さ)以上、5/24(中空筒部2を真円に変形させたときの75°の中心角に相当する長さ)以下に設定すると好ましい。このようにすると、第1シール部5および第2シール部6を形成する際に、中空筒部2にシワが入るのを効果的に防止することが可能となる。
【0031】
図1図2(a)に示すように、第1シール部5には、第1シール部5の延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第1貫通穴7が形成されている。図1図2(b)に示すように、第2シール部6にも、第2シール部6の延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第2貫通穴8が形成されている。
【0032】
図8に示すように、第2貫通穴8は、合掌部3を第2シール部6に重ね合わせた状態で、合掌部3と第2シール部6とを貫通して形成されている。具体的には、合掌部3を第2シール部6に重ね合わせ、その合掌部3および第2シール部6の厚さ方向の一方から他方(図では下方から上方)に穴加工用凸部9を刺し通すことで、合掌部3と第2シール部6とを一括して貫通する第2貫通穴8が形成されている。そして、図9に示すように、第2シール部6に形成される第2貫通穴8の穴縁部が、合掌部3に形成される第2貫通穴8の穴縁部に食い込むことで、図1に示す合掌部3が第2シール部6から起き上がらないように第2シール部6に重ね合わせた状態に保持されている。
【0033】
穴加工用凸部9(図8参照)を刺し通す方向を逆に設定することで、穴縁部の食い込み方向を逆にし、合掌部3に形成される第2貫通穴8の穴縁部が、第2シール部6に形成される第2貫通穴8の穴縁部に食い込むようにしてもよい。なお、図8図9では、合掌部3と第2シール部6を判別しやすくするために紙の厚さを誇張しているが、実際の紙の厚さは、0.1mm前後の薄いものである。
【0034】
第2貫通穴8と同様に、図1に示す第1貫通穴7も、合掌部3を第1シール部5に重ね合わせた状態で、合掌部3と第1シール部5とを貫通して形成されている。具体的には、合掌部3を第1シール部5に重ね合わせ、その合掌部3および第1シール部5の厚さ方向の一方から他方に穴加工用凸部9(図8参照)を刺し通すことで、合掌部3と第1シール部5とを一括して貫通する第1貫通穴7が形成されている。そして、第1シール部5に形成される第1貫通穴7の穴縁部が、合掌部3に形成される第1貫通穴7の穴縁部に食い込むことで、合掌部3が第1シール部5から起き上がらないように第1シール部5に重ね合わせた状態に保持されている。
【0035】
第1シール部5の長手方向の中央位置(第1貫通穴7の位置)と第2シール部6の長手方向の中央位置(第2貫通穴8の位置)との間の距離(シール部のピッチ)は、第1シール部5の延在方向の長さに対して90%以上(好ましくは100%以上)の大きさに設定されている。これにより、第1シール部5および第2シール部6を形成する際に、中空筒部2にシワが入るのを効果的に防止することが可能となる。なお、第1シール部5の延在方向の長さと第2シール部6の延在方向の長さは同一である。
【0036】
図1に示すように、合掌部3の先端縁12は、第1シール部5から、第1シール部5の延在方向の端と第2シール部6の延在方向の端とをつなぐ三角錐の稜線13を跨いで第2シール部6に至るように延びている。合掌部3の先端縁12の第1シール部5から三角錐の稜線13までのスパンdは、合掌部3の先端縁12の三角錐の稜線13から第2シール部6までのスパンcよりも短い。合掌部3の先端縁12の第1シール部5から三角錐の稜線13までのスパンdは、合掌部3の先端縁12の三角錐の稜線13から第2シール部6までのスパンcの1/20以上(好ましくは1/8以上、より好ましくは1/5以上)の長さを有する。
【0037】
上記の紙製緩衝材1の製造方法の一例を説明する。
【0038】
図5に示すように、紙製緩衝材1の製造装置は、途切れずに連続する帯状の連続紙4を繰り出す給紙部20と、給紙部20の下流側に配置された紙筒成形部21と、紙筒成形部21の下流側に配置された三角錐成形部22とを有する。
【0039】
給紙部20は、帯状の連続紙4を巻回した紙ロール23を回転可能に支持し、その紙ロール23から連続紙4を繰り出す。
【0040】
紙筒成形部21は、連続紙4の進行方向に延びる棒状コア24と、連続紙4を棒状コア24の外周に沿って筒状に変形させる複数のガイド部材25と、棒状コア24の外周に沿って筒状に変形した連続紙4の幅方向一端と幅方向他端とをヒートシールする一対の合掌シールバー26とを有する。一対の合掌シールバー26には、それぞれヒータ(図示せず)が組み込まれている。一対の合掌シールバー26は、重なり合った状態の連続紙4の幅方向両端を挟み付ける位置と、その挟み付けを解除する位置との間を進退することで、重なり合った状態の連続紙4の幅方向両端を互いにヒートシールする。
【0041】
ここで、複数のガイド部材25と一対の合掌シールバー26は、棒状コア24の長手方向(水平方向)から見て、上下方向(90°の方向)と、棒状コア24の長手方向に直交する水平方向(0°の方向)との間の方向(例えば15°~75°の間で設定される方向)に、合掌部3の根元を形成するように配置されている。合掌部3は、複数のガイド部材25のうち、最も下流側に位置するガイド部材25eで、棒状コア24の外周に沿って倒伏した状態となるように案内される。
【0042】
図6図7に示すように、三角錐成形部22は、中空筒部2と合掌部3とからなる紙筒27を間にして水平方向に対向配置された一対の第1シールバー28と、第1シールバー28の上流側に紙筒27を間にして上下方向に対向配置された一対の第2シールバー29とを有する。一対の第1シールバー28および一対の第2シールバー29には、それぞれヒータ(図示せず)が組み込まれている。
【0043】
図6に示すように、一対の第2シールバー29は、紙筒27を上下方向の両側から挟み付けて押し潰す位置(図6の位置)と、その挟み付けを解除する位置との間を進退することで、上下方向の両側から紙筒27を押し潰してその内面同士をヒートシールし、第2シール部6を形成する。
【0044】
図8に示すように、一対の第2シールバー29の紙筒27との接触面には、第2シール部6の延在方向に沿って複数の第2貫通穴8(図1参照)を形成する穴加工用凸部9および穴加工用凹部30が設けられている。穴加工用凹部30の縁には、穴加工用凹部30の縁に向かって深くなるように傾斜する面取り31が設けられている。この穴加工用凹部30の面取り31を設けることで、穴加工用凸部9が合掌部3および第2シール部6を貫通して第2貫通穴8を形成したときに、図9に示すように、第2シール部6に形成される第2貫通穴8の穴縁部が、合掌部3に形成される第2貫通穴8の穴縁部に確実に食い込むようになっている。
【0045】
図7に示すように、一対の第1シールバー28は、紙筒27を水平方向の両側から挟み付けて押し潰す位置と、その挟み付けを解除する位置(図7の位置)との間を進退することで、水平方向の両側から紙筒27を押し潰してその内面同士をヒートシールし、第1シール部5を形成する。一対の第1シールバー28の紙筒27との接触面には、第1シール部5の延在方向に沿って複数の第1貫通穴7(図1参照)を形成する穴加工用凸部および穴加工用凹部が設けられている。
【0046】
図5に示すように、第1シールバー28および第2シールバー28は、リニアガイド32で紙筒27の長手方向に移動可能に支持され、フレーム駆動装置33の駆動力により紙筒27の長手方向に往復動することができるようになっている。
【0047】
フレーム駆動装置33の動作を説明する。まず、第2シールバー29で紙筒27を挟み込んだ状態のままフレーム駆動装置33を作動させ、下流側(図では右側)に第1シールバー28および第2シールバー29を移動させる。この第1シールバー28および第2シールバー29の移動により紙筒27が下流側に送り出され、給紙部20からの連続紙4の繰り出しが行われる。その後、第2シールバー29による紙筒27の挟み込みを解除し、フレーム駆動装置33を逆向きに作動させ、上流側(図では左側)に軸方向第1シールバー28および第2シールバー29を移動させる。その後、一対の第1シールバー28で紙筒27を水平方向の両側から挟み付けて押し潰し、その紙筒27の押し潰した部分の内面同士を接合して第1シール部5を形成する。続いて、一対の第2シールバー29で、紙筒27の第1シール部5よりも上流側の部分を、上下方向の両側から挟み付けて押し潰し、その紙筒27の押し潰した部分の内面同士を接合して第2シール部6を形成する。その後、再び、第2シールバー29で紙筒27を挟み込んだ状態のままフレーム駆動装置33を作動させ、第1シールバー28および第2シールバー29を下流側(図では右側)に移動させる。以上の動作を繰り返すことで、三角錐状の空袋が連続する形状の紙製緩衝材1を製造することができる。
【0048】
この実施形態の紙製緩衝材1は、図3に示すように、紙の合掌部3の根元が、第1シール部5の延在方向と第2シール部6の延在方向との間の位置にあり、その合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bが、合掌部3の幅寸法aよりも大きいので、包装箱と商品の間に紙製緩衝材1を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、紙の合掌部3の先端縁12で商品に傷がつくのを防ぐことが可能である。
【0049】
すなわち、図3において、仮に、紙の合掌部3の根元を、第1シール部5の延在方向(図の一点鎖線の方向)の上端に対応する位置(図の鎖線と中空筒部2が交差する位置)に配置した場合、図10に示すように、合掌部3が、第1シール部5の延在方向の上端(紙製緩衝材1の三角錐の頂点)から出っ張った状態となり、その合掌部3の先端縁12が商品に接触することで、商品に傷がつく(例えば、商品を包むシュリンクフィルムに穴あきや破れが生じる)おそれがあるという問題がある。
【0050】
この問題に対して、上記実施形態の紙製緩衝材1は、図3に示すように、長手方向から見て、紙の合掌部3の根元が、第1シール部5の延在方向と第2シール部6の延在方向との間の位置にあり、その合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bが、合掌部3の幅寸法aよりも大きいので、図1に示す合掌部3の先端縁12が第1シール部5の延在方向の端に届かず、紙の合掌部3の先端縁12が、第1シール部5および第2シール部6のいずれの延在方向の端(紙製緩衝材1の三角錐の頂点)からも外側に出っ張らない。そのため、紙の合掌部3の先端縁12が商品に接触するのが防止され、商品に傷がつく(例えば、商品を包むシュリンクフィルムに穴あきや破れが生じる)のを防ぐことが可能である。また、人の手で紙製緩衝材1を包装箱に詰めるときに、紙の合掌部3の先端縁12が人の手に触れにくく、人の手を傷つけにくい。
【0051】
また、この紙製緩衝材1は、図1に示すように、合掌部3の先端縁12の第1シール部5から三角錐の稜線13までのスパンdが、合掌部3の先端縁12の三角錐の稜線13から第2シール部6までのスパンcの1/20以上(好ましくは1/8以上、より好ましくは1/5以上)の長さを有するので、三角錐の表面に沿って倒伏した状態の紙の合掌部3が三角錐の表面から起き上がるのを抑制し、紙の合掌部3の先端縁12が商品に接触して商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能である。
【0052】
すなわち、図1に示すように、紙の合掌部3の先端縁12が、第1シール部5から、第1シール部5の延在方向の端と第2シール部6の延在方向の端とをつなぐ三角錐の稜線13を跨いで第2シール部6に至る場合、合掌部3の先端縁12は、第1シール部5から三角錐の稜線13までのスパンdに対応する部分と、三角錐の稜線13から第2シール部6までのスパンcに対応する部分とに分けられる。そして、その両スパンc,dのうち、長い方のスパンcは、三角錐の表面に沿って倒伏した状態から比較的起き上がりやすく、その起き上がった部分の合掌部3の先端縁12が商品に接触し、特に合掌部3が高剛性の紙で形成されるときに商品に傷がつくおそれがある。
【0053】
この問題に対し、上記実施形態の紙製緩衝材1は、合掌部3の先端縁12の第1シール部5から三角錐の稜線13までのスパンdが、合掌部3の先端縁12の三角錐の稜線13から第2シール部6までのスパンcの1/20以上(好ましくは1/8以上、より好ましくは1/5以上)に確保されているので、その分、長い方のスパンcの合掌部3の長さを抑えることができる。そのため、長い方のスパンcの合掌部3が三角錐の表面から起き上がるのを抑制し、包装箱と商品の間に紙製緩衝材1を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、紙の合掌部3の先端縁12が商品に接触して商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能である。
【0054】
また、上記実施形態の紙製緩衝材1は、図1に示すように、第1シール部5に剛性低下用の第1貫通穴7を形成し、第2シール部6に剛性低下用の第2貫通穴8を形成しているので、包装箱と商品の間に紙製緩衝材1を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、緩衝性を発揮しながら商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能である。
【0055】
すなわち、図1に示すように、紙の中空筒部2に長手方向に間隔をおいて第1シール部5と第2シール部6とを交互に形成し、その第1シール部5と第2シール部6とで区画される中空筒部2の部分で三角錐状の空袋を形成した場合、その三角錐状の空袋のうち最も剛性が高く、潰れにくい部分は、第1シール部5と第2シール部6の部分である。そのため、上記実施形態のように、三角錐状の空袋のうち最も剛性が高い第1シール部5と第2シール部6の部分に、その延在方向に間隔をおいて並ぶ複数の剛性低下用の第1貫通穴7および第2貫通穴8を形成すると、第1シール部5と第2シール部6が外力で潰れやすくなるので、包装箱と商品の間に紙製緩衝材1を詰めた状態で、包装箱に振動が加わったときに、緩衝性を発揮しながら商品に傷がつくのを効果的に防ぐことが可能となる。
【0056】
また、この実施形態の紙製緩衝材1は、図1に示す第1貫通穴7の穴縁部の食い込みによって、合掌部3が第1シール部5に重ね合わせた状態に保持されるとともに、第2貫通穴8の穴縁部の食い込みによって、合掌部3が第2シール部6に重ね合わせた状態に保持されている。そのため、三角錐の表面に沿って倒伏した状態の紙の合掌部3が三角錐の表面から起き上がるのを確実に抑制することができ、紙の合掌部3の先端縁12が商品に接触して商品に傷がつくのを確実に防ぐことが可能である。
【0057】
この紙製緩衝材1は、70g/m以上の坪量の紙を使用すると、包装箱と商品の間に紙製緩衝材1を詰めた状態で包装箱が落下したときにも商品を保護することができる程度の緩衝性能を確保することが可能であり、また、220g/m以下の坪量の紙を使用すると、紙製緩衝材1のコストを抑えることが可能である。
【0058】
図3に示す合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bを、合掌部3の幅寸法aよりも大きくすることで、紙の合掌部3の先端縁12で商品に傷がつくのを防ぐことが可能であることを確認する評価試験を行なった。評価試験の方法を説明する。
【0059】
図11に示すように、段ボール製の包装箱に、商品に見立てた内箱を収容した。ここで、包装箱の内面と内箱の外面との間には、大きなクリアランスが存在する。また、商品に見立てた内箱は、シュリンクフィルムで包まれている。シュリンクフィルムとしては、興人フィルム&ケミカルズ株式会社製のCLG15μmを使用した。
【0060】
次に、図12に示すように、包装箱の内面と内箱の外面との間に紙製緩衝材を詰め、包装箱を封かんした。このとき使用した紙製緩衝材の仕様は、次の表のとおりである。
【表1】
【0061】
そして、図13に示すように、包装箱を振動試験機にセットし、X軸方向に30分間、Y軸方向に30分間、Z軸方向に30分間の合計90分間、包装箱に振動を加え、その後、包装箱を開封し、内箱を包むシュリンクフィルムの傷つきの状態を確認した。
【0062】
上記試験の結果、上記表1の右端に示すように、合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bが、合掌部3の幅寸法aよりも大きい実施例1~4については、内箱を包むシュリンクフィルムに傷が発生しないことを確認することができた。
【0063】
一方、上記表1の右端に示すように、合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bが、合掌部3の幅寸法aよりも小さい比較例1~4については、内箱を包むシュリンクフィルムに小さい傷が発生し(上記表の「△」)、または大きい傷が発生した(上記表の「×」)。図14に、上記試験において傷が発生したシュリンクフィルムを示す。
【0064】
なお、実施例1~4、比較例1~4の紙製緩衝材は、いずれも120g/mの坪量を有する紙で形成されたものである。
【0065】
この試験結果から、図3に示す合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bを、合掌部3の幅寸法aよりも小さくした場合、紙の合掌部3の先端縁12で商品に傷がつくおそれがあり、一方、図3に示す合掌部3の根元から第1シール部5の位置までの中空筒部2の周長bを、合掌部3の幅寸法aよりも大きくすると、紙の合掌部3の先端縁12で商品に傷がつくのを防ぐことが可能となることが分かる。
【0066】
上記実施形態では、中空筒部2を挟み付けて押し潰した部分の内面同士の接合をヒートシールで行なった第1シール部5、第2シール部6を例に挙げて説明したが、第1シール部5、第2シール部6における中空筒部2の内面同士の接合は、例えば、特許第5080691号、特許第5361858号、特許第6903855号のように、一対の歯型で挟み付けて圧力を付与することで紙同士を接合する方法(いわゆるエコプレスバインダー)など、別の方法で行なうようにしてもよい。同様に、上記実施形態では、連続紙4(図5参照)の幅方向一端と幅方向他端の同じ側の面同士の接合をヒートシールで行なった合掌部3を例に挙げて説明したが、合掌部3における紙の接合も、例えばエコプレスバインダーなど、別の方法で行なうようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 紙製緩衝材
2 中空筒部
3 合掌部
5 第1シール部
6 第2シール部
7 第1貫通穴
8 第2貫通穴
12 合掌部の先端縁
13 三角錐の稜線
a 合掌部の幅寸法
b 合掌部の根元から第1シール部の位置までの中空筒部の周長
c 三角錐の稜線から第2シール部までのスパン
d 第1シール部から三角錐の稜線までのスパン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14