IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケイジェイシーの特許一覧

<>
  • 特開-鼻水吸引器 図1
  • 特開-鼻水吸引器 図2
  • 特開-鼻水吸引器 図3
  • 特開-鼻水吸引器 図4
  • 特開-鼻水吸引器 図5
  • 特開-鼻水吸引器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038758
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】鼻水吸引器
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
A61M1/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143016
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】503301347
【氏名又は名称】株式会社ケイジェイシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 鍾植
(72)【発明者】
【氏名】右田 誠
(72)【発明者】
【氏名】市川 茜
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA17
4C077CC04
4C077DD12
4C077DD19
4C077KK17
4C077KK25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】手動で十分な吸引力を持って吸引動作を繰り返しても、吸引した鼻水の漏出を防止することができる鼻水吸引器を提供する。
【解決手段】鼻水吸引器1は、一端に開口部12を備えるシリンジ11と、ハンドル14を引くことでシリンジ内を前記開口部から離隔する方向に移動するピストン15と、ピストンを前記開口部側に付勢する弾性手段20と、を備える吸引部10と、前記開口部を介して前記吸引部と着脱可能に接続され、吸引した鼻水を一時的に保持する容器部30とを有し、前記容器部は略円筒状で、一端に位置する鼻水の吸入口41と、吸入口から容器内部に延在し、先端に逆止弁を備える導入管42と、他端近傍の前記吸引部側に位置する排気弁51と、前記導入管と前記排気弁との間を部分的に仕切るように他端側から立設される隔壁52と、前記一端と他端との中間部に位置して前記吸引部に接続する中空の接続部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を備えるシリンジと、ハンドルを引くことでシリンジ内を前記開口部から離隔する方向に移動するピストンと、ピストンを前記開口部側に付勢する弾性手段と、を備える吸引部と、
前記開口部を介して前記吸引部と着脱可能に接続され、吸引した鼻水を一時的に保持する容器部とを有し、
前記容器部は略円筒状で、一端に位置する鼻水の吸入口と、吸入口から容器内部に延在し、先端に逆止弁を備える導入管と、他端近傍の前記吸引部側に位置する排気弁と、前記導入管と前記排気弁との間を部分的に仕切るように他端側から立設される隔壁と、前記一端と他端との中間部に位置して前記吸引部に接続する中空の接続部と、を備えることを特徴とする鼻水吸引器。
【請求項2】
前記接続部は前記吸入口が前記吸引部から離隔する方向に前記容器部が傾くように前記吸引部に接続することを特徴とする請求項1に記載の鼻水吸引器。
【請求項3】
前記容器部は、前記吸入口と前記導入管とを備え、鼻水吸引の対象者が仰向けの状態である第1姿勢の時に吸引した鼻水を主に保持する第1容器と、前記排気弁と前記隔壁とを備え、鼻水吸引の対象者が起き上がった状態である第2姿勢の時に吸引した鼻水を主に保持する第2容器と、を分離可能に嵌合したものであり、
前記隔壁は前記導入管の先端の前記逆止弁の先端位置より前記吸入口方向に長く延在して立設されることを特徴とする請求項1に記載の鼻水吸引器。
【請求項4】
前記吸引部と前記容器部の接続部との間に、前記吸引部の吸引動作の際、前記吸引部に加わる外力に伴う意図しない前記吸引部の変動を前記容器部に伝わりにくくする柔軟な接続チューブをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の鼻水吸引器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻水吸引器に関し、特に吸引した鼻水を一時的に保持する容器部に、排気弁と、鼻水が排気弁に到達しないように仕切る隔壁を備えることにより、手動で十分な吸引力を持って吸引動作を繰り返しても、吸引した鼻水の漏出を防止することができる鼻水吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
小さな子供や体が不自由となった高齢者など、自身で上手に鼻をかめない人間にとって鼻に溜まった鼻水を除去するのは容易ではない。
そこで親や介護者などが、こうした小さな子供や高齢者の鼻水を吸引して除去することができるように、様々な形態の鼻水吸引器が開発され実用化されている。一般的な鼻水吸引器は、鼻水を吸引される人間(以下、鼻水吸引の対象者と称す)の鼻腔に挿入して鼻水を吸引する吸入口と、吸引した鼻水を一時的に保持する容器と、鼻水吸引のための負圧を生ずる吸引手段とを有し、吸引手段としては電動のポンプなどを使用する自動式と、口で吸ったり手を使って動かしたりする手動式のものがある。
自動式のものは高価であり、又電池切れ等により必要な時に動かせないなどの課題がある。手動式は自動式に比べて廉価であり、吸引の程度も使用者の加減により調整が可能であり、また構造が簡単で分解掃除がしやすいなど様々なメリットが挙げられる。
【0003】
特許文献1は、手動式の鼻水吸引器の事例であり、特許文献1には、手の操作で収縮復元するポンプと、このポンプの開口に挿通した円筒状の接続筒と、この接続筒の上側開口に嵌合し、下部がポンプと連通するノズル本体とからなり、接続筒の一部には外部からの流入を遮蔽する逆止弁を設けるとともに、ノズル本体の基端部にはポンプからノズル本体への流出を遮蔽する逆止弁を設けた鼻水吸引器具が開示されている。
特許文献1に記載の発明によれば、手に持った状態でポンプを操作するだけで鼻水を効果的に吸引することができるという効果を得られるものの、吸引力は収縮復元するポンプの復元力に依存するため、吸引力を高めるようとすると簡単ではない。
【0004】
特許文献2は、同じ手動鼻水吸引器の事例であるが、吸引手段が収縮復元するポンプではなく、ピストンの引き抜き時の負圧を利用したものの事例である。特許文献2には、注射器のピストンをシリンダから引き抜く時に発生する負圧を利用して鼻汁などを吸い込む注射器型吸引器において、ピストンの後端に係止され、シリンダに沿ってガイドされる操作ロッドを押すことにより鼻汁を取り除くようにした注射器型吸引器が開示されている。
特許文献2に記載の発明によれば、装置を保持した状態で、親指によりレバーを介して操作ロッドを押すことで注射器のピストンが引き抜かれるように動いて鼻水が十分な吸引力で吸引される。しかしこの注射器型吸引器は、吸引した鼻水は1回吸引する毎にピストンを戻して排除する必要がある。
【0005】
そこで手動で十分な吸引力を有しながらも、一回吸引する毎に吸引した鼻水を排除する必要がなく、繰り返しの吸引が可能であり、また吸引した鼻水を保持した状態で繰り返しの吸引を行っても保持した鼻水が漏洩することのない、使い勝手の良い鼻水吸引器の提供が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-108820号公報
【特許文献2】特開2003-52807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の鼻水吸引器における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、吸引した鼻水を一時的に保持する容器部に、排気弁と、鼻水が排気弁に到達しないように仕切る隔壁を備えることにより、手動で十分な吸引力を持って吸引動作を繰り返しても、吸引した鼻水の漏出を防止することができる鼻水吸引器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明による鼻水吸引器は、一端に開口部を備えるシリンジと、ハンドルを引くことでシリンジ内を前記開口部から離隔する方向に移動するピストンと、ピストンを前記開口部側に付勢する弾性手段と、を備える吸引部と、前記開口部を介して前記吸引部と着脱可能に接続され、吸引した鼻水を一時的に保持する容器部とを有し、前記容器部は略円筒状で、一端に位置する鼻水の吸入口と、吸入口から容器内部に延在し、先端に逆止弁を備える導入管と、他端近傍の前記吸引部側に位置する排気弁と、前記導入管と前記排気弁との間を部分的に仕切るように他端側から立設される隔壁と、前記一端と他端との中間部に位置して前記吸引部に接続する中空の接続部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記接続部は前記吸入口が前記吸引部から離隔する方向に前記容器部が傾くように前記吸引部に接続することが好ましい。
【0010】
前記容器部は、前記吸入口と前記導入管とを備え、鼻水吸引の対象者が仰向けの状態である第1姿勢の時に吸引した鼻水を主に保持する第1容器と、前記排気弁と前記隔壁とを備え、鼻水吸引の対象者が起き上がった状態である第2姿勢の時に吸引した鼻水を主に保持する第2容器と、を分離可能に嵌合したものであり、前記隔壁は前記導入管の先端の前記逆止弁の先端位置より前記吸入口方向に長く延在して立設されることが好ましい。
【0011】
前記吸引部と前記容器部の接続部との間に、前記吸引部の吸引動作の際、前記吸引部に加わる外力に伴う意図しない前記吸引部の変動を前記容器部に伝わりにくくする柔軟な接続チューブをさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鼻水吸引器によれば、吸引部を保持した状態で手を握るようにハンドルを引くことで、ピストンが開口部から離隔する方向に移動して吸引に必要な負圧を生じるので、吸引力が制御しやすく、また、ピストンは弾性手段により開口部側に付勢されているのでハンドルを引いた後、ハンドルを引く力を解除すればピストンは元の位置に戻り、次の吸引の準備状態に移行するため、使い勝手の良い鼻水吸引器が提供される。
【0013】
本発明に係る鼻水吸引器によれば、鼻水を一時的に保持する容器部には排気弁と、吸引した鼻水が排気弁に流れ込むのを抑制する隔壁とを備えるため、鼻水吸引の対象者が仰向けであっても、起き上がった状態であっても吸引動作を繰り返し行うことができ、その場合にも一時的に保持した鼻水が排気弁から漏出することがない。
【0014】
また、本発明に係る鼻水吸引器によれば、吸入口が吸引部から離隔する方向に容器部が傾くようにして容器部が吸引部に接続されるので、鼻水吸引の対象者が仰向けであっても、起き上がった状態であっても鼻水吸引器の操作者は無理のない姿勢で対象者の鼻水を吸引することができる。
【0015】
更に、本発明に係る鼻水吸引器によれば、吸引部と容器部の接続部との間に柔軟な接続チューブを介在させることもできるので、吸引動作の際の吸引部に加わる外力に伴う意図しない吸引部の変動が容器部を介して鼻水吸引の対象者に伝わるのを抑止することができる。
【0016】
また、本発明に係る鼻水吸引器によれば、吸引した鼻水は吸引部とは着脱が容易に形成された容器部に収容され、通常の使用状態では吸引部のシリンジ内には流れ込まないので、使用後は容器部を取り外して、容器部のみを洗浄すればよく、使い勝手が良い構造となっている。容器部は第1容器と第2容器とを着脱可能に嵌合した構造であるので、取り外した容器部は嵌合部を外して簡単に洗浄することができる。吸引部とは接続部を有する第2容器が接続されるので、使い方によっては、吸引部に容器部を取り付けたままで第1容器のみを嵌合を外して取り外し、それぞれの容器を洗浄することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による鼻水吸引器の全体構造を概略的に示す外観図である。
図2】本発明の実施形態による鼻水吸引器の内部構造を概略的に示す縦断面図である
図3】本発明の実施形態による鼻水吸引器の吸引動作中の流体の流れを示す図である。
図4】本発明の実施形態による鼻水吸引器の復帰動作中の流体の流れを示す図である。
図5】本発明の実施形態による鼻水吸引器の第1姿勢のときの使用状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態による鼻水吸引器の第2姿勢のときの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る鼻水吸引器を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による鼻水吸引器の全体構造を概略的に示す外観図であり、図2は本発明の実施形態による鼻水吸引器の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
図1、2を参照すると、本発明の実施形態による鼻水吸引器1は、鼻水を吸引するための吸引力を発生させる吸引部10と、吸引した鼻水を収容して一時的に保持する容器部30とを有する。容器部30は、使用後に吸引部10から取り外して簡単に洗浄しやすいように吸引部10に着脱可能に接続される。容器部30は吸引部10に直接接続してもよいが、一実施形態では容器部30と吸引部10は柔軟な接続チューブ60を介して接続する。
【0019】
本発明の実施形態による鼻水吸引器1は、手動でシリンジ11内のピストン15を引いて吸引力が調整可能な吸引部10と、鼻水吸引の対象者の鼻腔に挿入して鼻水を吸引し、吸引した鼻水を収容し一時的に保持する容器部30とを着脱可能に接続し、容器部30には排気弁51と排気弁51に吸引した鼻水が入り込まないようにする隔壁52とを設けることにより、鼻水吸引の対象者が仰向けの状態である第1姿勢の時でも、鼻水吸引の対象者が起き上がった状態である第2姿勢の時でも、鼻腔に挿入したままで繰り返しの吸引動作により鼻水吸引ができ、繰返しの鼻水吸引によっても排気弁51から鼻水が漏出しないという特徴を備える鼻水吸引器1である。
【0020】
吸引部10は一端に開口部12を備えるシリンジ11と、ハンドル14を引くことでシリンジ11内を開口部12から離隔する方向に移動するピストン15と、ピストン15を開口部12側に付勢する弾性手段20と、を備える。
【0021】
シリンジ11は、全体が略円筒形状であり、一端は内部が中空の状態を保ったまま細く絞られ、端部に開口部12を備え、他端は円筒形状のまま開口するが、円筒形状の側壁の開口の中心を挟んで対向する2か所に、ピストン15のハンドル14を摺動させるためのハンドルガイド溝13が形成される。ハンドルガイド溝13は他端の開口からハンドル14の厚さに相当する幅で、一端の開口部12に向けてハンドル14の摺動に必要な長さ分を切り欠いて形成される。シリンジ11の内空にはピストン15が摺動可能に収納される。
【0022】
ピストン15は円筒状であり、シリンジ11に挿入された状態でシリンジ11の開口部12に向かう一端側の近傍の外周にOリング16を収納するためのリング状の凹部を備え、他端はピストン15を引くためのハンドル14がピストン15と一体に形成される。リング状の凹部の深さはOリング16の断面の直径より浅くすることで凹部にはめ込んだOリング16が凹部から突出しシリンジ11とピストン15との間の隙間を塞ぐ役割を果たす。
【0023】
ハンドル14はピストン15から対向する2方向に張り出すように形成され、それぞれの方向の張り出し量はシリンジ11の外周の半径より大きく、シリンジ11の外壁を貫通して張り出すことから、ピストン15をシリンジ11に挿入する際は、ハンドル14の向きをハンドルガイド溝13に合わせ、ハンドル14がハンドルガイド溝13から外周部に張り出すようにして挿入する。
【0024】
ピストン15の内部には、ピストン15をシリンジ11の開口部12側に付勢する弾性手段20を収納するための空洞が設けられる。弾性手段20は例えばばねであり、一実施形態では図2に示すように圧縮コイルばねである。一実施形態ではピストン15の内部の空洞には、弾性手段20の変形をガイドする弾性手段ガイド部17が設けられる。弾性手段ガイド部17は例えば外径の異なることで段差となるように形成した円柱又は円管状の突起として形成される。外径の小さな部分の周りでコイルばねの伸縮方向をガイドし、段差の部分でコイルばねの一端を支持する。
【0025】
シリンジ11のハンドルガイド溝13を形成する開口には、ピストンガイド18が挿入される。ピストンガイド18の上端部にはシリンジ11の開口を覆う円盤状のキャップ部を備え、キャップ部からシリンジ11の開口部12側に向かって円管状のガイド部が延在する。円管状のガイド部の外周はピストン15の内壁に挿入可能な外形に形成される。逆にピストン15が鼻水吸引のために引かれる際、ピストン15の内壁がピストンガイド18の円管状の突起の外壁にガイドされ、円管状の突起に沿って移動する。ピストンガイド18の内壁には部分的に内径を大きくした弾性手段収容凹部19が形成され、弾性手段収容凹部19には一端がピストン15で支持された弾性手段20の他端が収納される。
【0026】
弾性手段20は、一端がピストン15の内部空間に設けられた弾性手段ガイド部17の段差部で支持され、他端がピストンガイド18の弾性手段収容凹部19の底部で支持される結果、固定されたピストンガイド18を支持体としてピストン15をシリンジ11の開口部12側に付勢するように作用する。
吸引部10は特に材質は問わないが、一実施形態では、弾性手段20以外は成形しやすい樹脂材料を使用して形成する。
【0027】
容器部30は、両端部に丸みを帯びた曲面を有する略円筒状で、一端に位置する鼻水の吸入口41と、吸入口41から容器部30内部に延在し、先端に逆止弁43を備える導入管42と、他端近傍の吸引部10側に位置する排気弁51と、導入管42と排気弁51との間を部分的に仕切るように他端側から立設される隔壁52と、一端と他端との中間部に位置して吸引部10に接続する中空の接続部53と、を備える。
一実施形態では、容器部30は、分解して洗浄しやすいように第1容器40と第2容器50とで構成され、鼻水の吸入口41、導入管42、及び逆止弁43は第1容器40に備えられ、排気弁51、隔壁52、及び接続部53は第2容器50に備えられる。
【0028】
吸入口41は、第1容器40の曲面状の一端から鼻腔に挿入しやすいように突出した部分の先端部に開口し、この開口は吸入口41に続けて第1容器40の曲面状の外壁と一体に成形され容器部30内部に円管状に突出する導入管42の内部を通って容器部30内部に連通しており、鼻水吸引の対象者から吸引した鼻水は吸入口41から導入管42の内部を通って容器部30内に導入される。本発明の実施形態による鼻水吸引器1は、ハンドル14の繰り返しの引き動作により、継続して吸引作業が可能であるが、導入管42の先端には逆止弁43を備えるため、繰り返しの吸引時において一度吸引して容器内に取り込まれた鼻水が鼻水吸引の対象者に向けて逆流することはない。
【0029】
一実施形態では第1容器40は、柔軟性のある樹脂で導入管42を含めて一体に成形する。導入管42の容器部30内に向かう先端部をドーム状に閉塞させた状態で、閉塞させた先端部に隙間が生じないように切込みを入れることにより逆止弁43の機能を果たせるようになるため、一実施形態では逆止弁43までを含めて一体で形成する。他の実施形態では導入管42の先端は開口した状態で成形し、導入管42の容器部30内に向かう先端には別に用意した逆止弁43を挿入して取り付ける。
【0030】
第1容器40の外周壁の端部には第2容器50と嵌合するための嵌合用凹部44が端部に沿ってリング状に形成される。嵌合用凹部44の内壁には第2容器50と嵌合した際抜けにくくなるようにリング状に突起が設けられる。また図1に示すように、第1容器40の外周壁の端部近傍には第1容器40と第2容器50を分離する際、容易に分離しやすいように着脱用補助突起45を備える。
【0031】
排気弁51は、吸入動作後、引き寄せられたピストン15が弾性手段20により元の位置まで復帰する際、シリンダ11内から逆流してくる空気を容器部30の外に排気する際に使用する。排気弁51は容器部30の内圧が外気より高いときに開口し、容器部30の内圧が外気より低くなると閉じるように形成された弁である。繰返しの吸引作業により吸引時と復帰時で排気弁51は開いたり閉じたりするが、この間に吸引して容器部30の内部に保持された鼻水が排気弁51に到達してしまうと、排気に伴い鼻水が容器部30外に噴出又は漏出してしまう。そのため、鼻水が排気弁51に到達しないようにする必要がある。
【0032】
そこで、実施形態では、導入管42と排気弁51との間を部分的に仕切るように第2容器50の曲面状の端部又は端部近傍から立設される側壁52を備える。隔壁52は、導入管42の先端の逆止弁43の先端位置より吸入口41方向に長く延在して立設される。これにより導入管42の先端の逆止弁43の先端から容器部30内に吸引される鼻水は、隔壁52にさえぎられて排気弁51には向かわない。また図5、6を参照して後述するように、通常の使用状態、即ち鼻水吸引の対象者が仰向けの状態である第1姿勢の状態又は起き上がった状態である第2姿勢の状態で吸引して容器部30内に吸い込まれた鼻水は第1容器40内、又は第2容器50の排気弁51とは隔壁52で仕切られた側の内部に保持されるので排気弁51には向かわない。
【0033】
一実施形態では、第2容器50は図1に示すように内部が確認できるような透明な素材で形成し、隔壁52は第2容器50の外周壁と共に一体に成形される。また排気弁51は第2容器50の曲面状の外周壁端部近傍の吸引部10側に開口を含んで形成された取付け部に、別に用意した排気弁51を取り付ける。
【0034】
接続部53は、容器部30を吸入部10に着脱可能に接続するためのものである。図1、2では容器部30と吸入部10とは、間に接続チューブ60を介して接続するように示したが、容器部30と吸入部10とは、接続チューブ60を介さずに直接接続してもよい。
直接接続する場合は、接続部53は、吸入部10の開口部12に挿入できる外径にする。また一実施形態では、接続部53は、外径の異なる段付きの管状に形成し、先端の外径の小さい部分は吸入部10の開口部12に挿入できる外径とし、付け根側の外径の大きい部分は内径の一定の接続チューブ60で共通に接続できるように、吸入部10の開口部12の外径に合わせることで、容器部30は、吸入部10に直接挿入して接続するか、接続チューブ60を介して接続するかを選択して使い分けることが可能である。
容器部30と吸入部10とを直接接続せず、間に接続チューブ60を介して接続する場合は、接続部53は、このように外径に段を付ける必要はなく吸入部10の開口部12の外径に合わせるようにするのが好ましい。
【0035】
実施形態では、接続部53は、容器部30の外周壁の垂直方向に対し角度θだけ排気弁51側に傾いて形成される。これにより接続部53は、吸入口41が吸引部10から離隔する方向に容器部30が傾くように吸引部10に接続する。一実施形態では角度θは、10°~40°である。通常の使用状態では、鼻水吸引の対象者が仰向けであっても、起き上がった状態であっても鼻水吸引器1の操作者は無理のない姿勢で鼻水吸引の対象者の鼻水を吸引することができる。
【0036】
また、第2容器50は、第1容器40と嵌合するためのリング状の嵌合用凸部54を備える。嵌合用凸部54の、第1容器40の嵌合用凹部44の内壁の突起と対向する面には鍵状の突起が備えられ、嵌合用凸部54を第1容器40の嵌合用凹部44に押し込むと、嵌合用凸部54の鍵状の突起が嵌合用凹部44内のリング状の突起に係合し抜けにくくなる。第1容器40と第2容器50を分離する際は、着脱用補助突起45に指をかけて第1容器40と第2容器50を引きはがすように引っ張れば嵌合用凹部44が変形することで嵌合が外れ両者を分離することができる。
【0037】
接続チューブ60は、吸引部10と容器部30とを接続するものであり、柔軟性又は弾力性のある樹脂やゴムなどのチューブにより形成される。鼻水吸引器1は、鼻水を吸引する際に、ハンドル14を握って引くが、ハンドル14を引いたり解除したりする際に吸引部10に加わる力や衝撃に伴う意図しない吸引部10の横揺れ等の動きが、容器部30や容器部30を介して鼻水吸引の対象者に伝わってしまい、容器部30がずれてしまったり、鼻水吸引の対象者に不快感を生じさせたりするおそれがある。接続チューブ60は、吸引部10に加わる力や衝撃に伴う意図しない吸引部10の動きを容器部30に伝搬しにくくするのに有効である。
【0038】
接続チューブ60は、長くしすぎると容器部30の場所が定まらず、鼻水吸引器1の操作者は片手で容器部30を保持し、片手で吸引部10の操作をする必要があり、両手がふさがってしまう。一方接続チューブ60が長いことにより、鼻水吸引器1の操作者は自身の鼻水吸引を行うのが容易となる。一実施形態では鼻水吸引器1は短くて弾力性のある接続チューブ60-1と長くて柔軟な接続チューブ60-2とをセットで組合せ、操作者に選択可能に提供する。ここで短い接続チューブ60-1とは例えば長さが20~50mmであり、長い接続チューブ60-2とは、例えば100~300mmである。
また接続チューブ60には途中に開口を設け、開口を接続チューブ60の外周から自在に塞いで開口面積を調整可能な円管状の開口調整部をさらに備え、吸引部10の吸引力をより細かく調整できるようにしてもよい。
【0039】
図3は、本発明の実施形態による鼻水吸引器の吸引動作中の流体の流れを示す図である。
図3を参照すると、鼻水を吸引する際、鼻水吸引器1の操作者がハンドル14を引く状態を示す。具体的には、例えば操作者はピストンガイド18の頭頂部に親指をかけ、中指と人差し指をハンドル14に掛けて手を握るようにして矢印a1のように引く。これによりハンドル14と一体に形成されたピストン15は矢印a2のように引かれる。
【0040】
ピストン15の移動と共にシリンジ11内の圧力は低下するため、容器部30から矢印A1に示すような吸引部10に向かう空気の流れが生じ、容器部30内の圧力が低下する。外気圧より容器部30内の圧力が低下するため、排気弁51は閉じたままとなり、唯一開口する吸入口41から矢印A2のように鼻水又は鼻水を含む空気が吸引される。逆止弁43は容器部30内の圧力が低下している間は、外部から流入する流れをせき止めないので、吸引された鼻水又は鼻水を含む空気は逆止弁43を通過して容器部30内に取り込まれる。空気は、矢印A3のように吸引部10に向かう方向に流れ、空気より重い鼻水は矢印B1のように容器部30内で落下し、図3の状態では第1容器40内部に向かって流れ落ちていく。
【0041】
図4は、本発明の実施形態による鼻水吸引器の復帰動作中の流体の流れを示す図である。
図4を参照すると、鼻水の吸引終了後、鼻水吸引器1の操作者がハンドル14に掛ける力を抜くと、鼻水吸引時にハンドル14の引き動作に伴い圧縮されていた弾性手段20が、ピストンガイド18を支持体として元の長さに戻ろうとする力により、ピストン15を矢印aのように押し下げる。ピストン15と一体に形成されるハンドル14も矢印aのように元の位置に戻ろうとする。
【0042】
ピストン15の下降に伴いシリンジ11内の圧力が高まり、シリンジ11内に引き込まれていた空気が矢印A1のように押し出され、容器部30内の圧力も高まる。容器部30内の圧力が外気より高まると逆止弁43は開口することがなくなり、排気弁51は開口する。その結果、圧力が高まった容器部30内の空気は矢印A2のように排気弁51を通過して容器部30の外部に排気される。この排気の流れはピストン15が元の位置に戻るまで続き、容器部30の内部が外気の圧力と等しくなると終了する。
図4の状態では、吸引した鼻水は第1容器40の中にたまって保持されるため、排気の際、排気弁51から鼻水が噴出したり漏出したりすることはない。
排気が終了した時点では容器部30の内部が外気の圧力と等しくなっているので、ハンドル14を引けば引き続き鼻水の吸引が可能となる。
【0043】
図5は、本発明の実施形態による鼻水吸引器の第1姿勢のときの使用状態を示す図である。
図5を参照すると、鼻水吸引の対象者80が仰向けの状態である第1姿勢のときに鼻水吸引器1により鼻水を吸引するときの使用状態が示される。
【0044】
鼻水吸引の対象者80が仰向けの状態では、鼻水吸引の対象者80の鼻腔は斜め上方を向くため、鼻水吸引器1の吸入口41は鼻腔に合わせて斜め下方を向くように鼻腔に挿入される。図5では吸入部10は省略して示すが、吸入口41が鼻腔に挿入された状態で鼻水吸引器1の操作者が吸入部10のハンドル14を引くと、ハンドル14と一体に形成されたピストン15の上昇に伴い容器部30内が負圧となり、鼻水吸引の対象者80の鼻水70が導入管42を通って容器部30内に吸引される。
容器部30内が負圧のときは、導入管42先端に備えられる逆止弁43は、流入してくる鼻水70又は鼻水70を含む空気の圧力により開口し、鼻水70の流入を妨げない。吸引された鼻水70は、逆止弁43を抜けてから落下し、第1容器40の内部の底部から溜まっていく。
【0045】
鼻水吸引の対象者80の鼻水70が1回では取り切らないときは、鼻水吸引器1の操作者は、吸入口41が鼻腔に挿入されたままの状態で、繰り返しの吸引を行うことができる。その場合、操作者は一旦ハンドル14を引く力を抜くことにより、弾性手段20の復元力によってハンドル14が元の位置まで復帰するため、再度ハンドル14を引くように力を加えることで次の吸引を行うことができる。
【0046】
吸引したり復帰したりする際、操作者は吸引部10に力を加えたり抜いたりする操作を行うが、吸引部10と容器部30との間を、柔軟又は弾性のある接続チューブ60を介して接続することにより、吸引部10に加わる操作者からの外力やそれに伴う意図しない吸引部10の変動が、接続チューブ60が変形することで容器部30に伝搬するのを抑制することができる
【0047】
吸引と次の吸引との間でハンドル14が元の位置まで下降する際に、容器部30内の圧力が上昇するが、圧力が上昇する間は排気弁51が開口し、圧力を容器部30の外に逃がす。鼻水吸引の対象者80が仰向けの状態である第1姿勢の時には、排気弁51は容器部30の最上部付近に位置するため、吸引された鼻水70が排気弁51から噴出したり漏出したりすることはない。またこのとき逆止弁43は閉じているため、吸引された鼻水70が導入管42を通って鼻水吸引の対象者80に向けて逆流することもない。
【0048】
図6は、本発明の実施形態による鼻水吸引器の第2姿勢のときの使用状態を示す図である。
図6を参照すると、鼻水吸引の対象者80が起き上がった状態である第2姿勢のときに鼻水吸引器1により鼻水を吸引するときの使用状態が示される。
鼻水吸引の対象者80が起き上がった状態では、鼻水吸引の対象者80の鼻腔は斜め下方を向くため、鼻水吸引器1の吸入口41は鼻腔に合わせて斜め上方を向くように鼻腔に挿入される。
【0049】
図6でも吸入部10は省略して示すが、吸入口41が鼻腔に挿入された状態で鼻水吸引器1の操作者が吸入部10のハンドル14を引くと、ハンドル14と一体に形成されたピストン15の移動に伴い容器部30内が負圧となり、鼻水吸引の対象者80の鼻水70が導入管42を通って容器部30内に吸引される。吸引された鼻水70は、逆止弁43を抜けてから落下し、第2容器50の内部の底部から溜まっていく。
【0050】
第2姿勢の場合も、鼻水70が1回では取り切らないときは、鼻水吸引器1の操作者は、吸入口41が鼻腔に挿入されたままの状態で、繰り返しの吸引を行うことができる。この場合も操作者は、一端ハンドル14を引く力を抜いて弾性手段20によりハンドル14を基の下降状態に戻した後、再びハンドル14を引くように力を加えることで次の吸引を行う。
【0051】
吸引と次の吸引との間でハンドル14が元の位置まで下降する際に発生する容器部30内の圧力を排気弁51から、外部に逃がすことも図5の第1姿勢の場合と変わらないが、大きく異なるのは、第2姿勢の場合は、第2容器50が第1容器40より低い位置となり、第2容器50に設けられる排気弁51が容器部30の比較的低い位置に来てしまうことである。しかし、本発明の実施形態による鼻水吸引器1は、導入管42と排気弁51との間を部分的に仕切るように第2容器50の端部近傍から立設される隔壁52を備えており、第2容器50の内部の底部から溜まっていく鼻水70が排気弁51に掛かり、排気時に鼻水70が排気弁51から噴出したり漏出したりすることはない。
【0052】
図5及び図6に示したように、本発明の実施形態による鼻水吸引器1は、通常の使用状態において想定される鼻水吸引の対象者80の姿勢によらず、吸入口41を鼻水吸引の対象者80の鼻腔に挿入したまま、繰り返しの鼻水70の吸引を行うことができ、吸引した鼻水70を噴出したり漏出したりすることなく一時的に保持することが可能である。また吸引部10に対して容器部30を傾けて接続させることにより、通常の使用状態において鼻水吸引器1の操作者は無理のない姿勢で鼻水吸引器1を操作することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 鼻水吸引器
10 吸引部
11 シリンジ
12 開口部
13 ハンドルガイド溝
14 ハンドル
15 ピストン
16 Oリング
17 弾性手段ガイド部
18 ピストンガイド
19 弾性手段収容凹部
20 弾性手段
30 容器部
40 第1容器
41 吸入口
42 導入管
43 逆止弁
44 嵌合用凹部
45 着脱用補助突起
50 第2容器
51 排気弁
52 隔壁
53 接続部
54 嵌合用凸部
60 接続チューブ
70 鼻水
80 鼻水吸引の対象者
図1
図2
図3
図4
図5
図6