(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038763
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20240313BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240313BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143025
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】512280080
【氏名又は名称】AZAPA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】守屋 一成
(72)【発明者】
【氏名】前田 真志
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA23
5H770DA30
5H770DA31
5H770EA27
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】蓄電容量と電流出力とを両立させることが容易な電力変換装置を提供する。
【解決手段】レグ2と制御部5とを備え、上アーム3H及び下アーム3Lのそれぞれは、複数の高電流モジュールPMと複数の高容量モジュールEMとが直列接続された直列回路を含み、高電流モジュールPMは、高電流蓄電部BPと第一切換回路とを含み、高容量モジュールEMは、高容量蓄電部BEと第二切換回路とを含み、高電流蓄電部BPの定格電流値は、高容量蓄電部BEの定格電流値よりも大きく、高容量蓄電部BEの蓄電容量は、高電流蓄電部BPの蓄電容量よりも大きく、制御部5は、各第一切換回路及び各第二切換回路を制御することによって、複数の高電流蓄電部BP及び複数の高容量蓄電部BEのうちから選択的に電流を出力させる第一モードと、複数の高電流蓄電部BPのみのうちから選択的に電流を出力させる第二モードとを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームとインダクタと下アームとが、この順に直列接続されたレグと、
制御部とを備え、
前記上アーム及び前記下アームのそれぞれは、複数の高電流モジュールと複数の高容量モジュールとが直列接続された直列回路を含み、
前記各高電流モジュールは、
第一及び第二端子と、
電荷を蓄える高電流蓄電部と、
前記第一及び第二端子へ前記高電流蓄電部を接続する加入状態と前記第一及び第二端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第一切換回路とを含み、
前記各高容量モジュールは、
第三及び第四端子と、
電荷を蓄える高容量蓄電部と、
前記第三及び第四端子へ前記高容量蓄電部を接続する加入状態と前記第三及び第四端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第二切換回路とを含み、
前記高電流蓄電部の定格電流値は、前記高容量蓄電部の定格電流値よりも大きく、
前記高容量蓄電部の蓄電容量は、前記高電流蓄電部の蓄電容量よりも大きく、
前記制御部は、
前記各第一切換回路及び前記各第二切換回路による前記接続状態の切り換えを制御することによって、前記複数の高電流蓄電部及び前記複数の高容量蓄電部のうちから選択的に電流を出力させる第一モードと、前記複数の高電流蓄電部のみのうちから選択的に電流を出力させる第二モードとを実行する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値に満たない期間、前記第一モードを実行し、前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値を超える期間、前記第二モードを実行する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記高電流モジュールのみを用いて出力可能な最大の電圧である最大直列電圧を超える期間、前記第一モードを実行し、前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記最大直列電圧に満たない期間、前記第二モードを実行する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値に満たず、かつ前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記高電流モジュールのみを用いて出力可能な最大の電圧である最大直列電圧を超える期間、前記第一モードを実行し、前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値を超える期間及び前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が前記最大直列電圧に満たない期間、前記第二モードを実行する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記各第一切換回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路であり、
前記各第二切換回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路である請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記レグを三つ備え、
前記三つのレグは、互いに並列接続されて三相インバータを構成する請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換を行う電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流-交流変換を行うインバータとして、単位変換器を複数直列接続したモジュールを組み合わせる、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。モジュラーマルチレベル変換器は、単位変換器に含まれるエネルギ貯蔵要素の端子電圧を加算することによって、任意の出力電圧を出力可能とされている。モジュラーマルチレベル変換器を用いたインバータは、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両に、好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単位変換器のエネルギ貯蔵要素は、放電すると端子電圧が低下する。そのため、モジュラーマルチレベル変換器を安定的に継続動作させるためには、エネルギ貯蔵要素の蓄電容量が大きいことが望ましい。一方、一般的に市場で入手可能な蓄電容量の大きなエネルギ貯蔵要素は、定格電流が小さい。そのため、蓄電容量と電流出力とを両立させることが難しい。
【0005】
本発明の目的は、蓄電容量と電流出力とを両立させることが容易な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力変換装置は、上アームとインダクタと下アームとが、この順に直列接続されたレグと、制御部とを備え、前記上アーム及び前記下アームのそれぞれは、複数の高電流モジュールと複数の高容量モジュールとが直列接続された直列回路を含み、前記各高電流モジュールは、第一及び第二端子と、電荷を蓄える高電流蓄電部と、前記第一及び第二端子へ前記高電流蓄電部を接続する加入状態と前記第一及び第二端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第一切換回路とを含み、前記各高容量モジュールは、第三及び第四端子と、電荷を蓄える高容量蓄電部と、前記第三及び第四端子へ前記高容量蓄電部を接続する加入状態と前記第三及び第四端子間を短絡する離脱状態とを含む接続状態を切り換える第二切換回路とを含み、前記高電流蓄電部の定格電流値は、前記高容量蓄電部の定格電流値よりも大きく、前記高容量蓄電部の蓄電容量は、前記高電流蓄電部の蓄電容量よりも大きく、前記制御部は、前記各第一切換回路及び前記各第二切換回路による前記接続状態の切り換えを制御することによって、前記複数の高電流蓄電部及び前記複数の高容量蓄電部のうちから選択的に電流を出力させる第一モードと、前記複数の高電流蓄電部のみのうちから選択的に電流を出力させる第二モードとを実行する。
【0007】
この構成によれば、加入状態とされた高電流モジュールの高電流蓄電部及び高容量モジュールの高容量蓄電部は直列接続され、離脱状態とされた高電流モジュールの高電流蓄電部及び高容量モジュールの高容量蓄電部は直列接続されない。従って、第一及び第二切換回路によって、加入状態の高電流モジュール及び高容量モジュールの数を増減することによって、レグの電圧を制御することが可能となる。そして、複数の高電流蓄電部及び複数の高容量蓄電部のうちから選択的に電流を出力させる第一モードと、複数の高電流蓄電部のみのうちから選択的に電流を出力させる第二モードとを適宜実行することによって、入手しやすい、定格電流値が大きく蓄電容量が小さい高電流蓄電部及び定格電流値が小さく蓄電容量が大きい高容量蓄電部を、組み合わせて用いることができ、蓄電容量と電流出力とを両立させることが容易となる。
【0008】
また、前記制御部は、前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値に満たない期間、前記第一モードを実行し、前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値を超える期間、前記第二モードを実行することが好ましい。
【0009】
レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値を超える場合、高容量蓄電部はその電流を流すことができない。この構成によれば、レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が高容量蓄電部の定格電流値を超える期間、第二モードが実行され、定格電流値が大きな高電流蓄電部のみから電流を出力させることによって、レグによる電流出力を行うことが可能となる。
【0010】
また、前記制御部は、前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記高電流モジュールのみを用いて出力可能な最大の電圧である最大直列電圧を超える期間、前記第一モードを実行し、前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記最大直列電圧に満たない期間、前記第二モードを実行することが好ましい。
【0011】
レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記最大直列電圧を超える場合、高電流モジュールのみでは、その電圧を出力することができない。この構成によれば、レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が前記最大直列電圧を超える期間、第一モードが実行され、高電流蓄電部及び高容量蓄電部の両方を用いて電圧出力することができるので、レグによる電圧出力を行うことが可能となる。
【0012】
また、前記制御部は、前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値に満たず、かつ前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が、前記高電流モジュールのみを用いて出力可能な最大の電圧である最大直列電圧を超える期間、前記第一モードを実行し、前記レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が前記高容量蓄電部の定格電流値を超える期間及び前記レグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が前記最大直列電圧に満たない期間、前記第二モードを実行することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、レグから出力される電流の瞬時値の絶対値が高容量蓄電部の定格電流値に満たず、かつレグから出力される電圧の瞬時値の絶対値が高電流モジュールのみを用いて出力可能な最大の電圧である最大直列電圧を超える期間、すなわち高容量蓄電部が出力可能な電流範囲内で電圧出力のために高電流蓄電部及び高容量蓄電部の両方を用いる必要がある場合に、第一モードが実行されて高電流蓄電部及び高容量蓄電部の両方を効果的に用いることができる。
【0014】
また、前記各第一切換回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路であり、前記各第二切換回路は、ハーフブリッジ又はフルブリッジのブリッジ回路であってもよい。
【0015】
ハーフブリッジの第一及び第二切換回路は、高電流モジュール及び高容量モジュールの接続状態を、加入状態と離脱状態とに切り換えることができる。フルブリッジの第一及び第二切換回路は、高電流モジュール及び高容量モジュールの接続状態を、加入状態及び離脱状態に加えて、加入状態とは逆極性で高電流蓄電部及び高容量蓄電部を接続する反転状態に切り換えることができる。
【0016】
また、前記レグを三つ備え、前記三つのレグは、互いに並列接続されて三相インバータを構成することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、三相交流電力を出力することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このような構成の電力変換装置は、蓄電容量と電流出力とを両立させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMの構成の一例を示す概念的な回路図である。
【
図3】第一切換回路、第二切換回路としてフルブリッジを用いた高電流モジュールPM、高容量モジュールEMの一例を示す概念的な回路図である。
【
図4】
図1に示す電力変換装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す電力変換装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】瞬時電流値Ir(u)と、出力電流Iuと、定格電流値Ieと、第一モードM1及び第二モードM2との関係を示す説明図である。
【
図7】瞬時電圧値Vr(u)と、出力電圧Vuと、最大直列電圧Vp(u)と、第一モードM1及び第二モードM2との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
図1に示す電力変換装置1は、大略的に、レグ2u,2v,2wと、キャパシタCと、制御部5と、外部端子Tu,Tv,Twとを備えている。レグ2u,2v,2wが並列接続されて、三相インバータ6が構成されている。
【0022】
三相インバータ6、及びキャパシタCは、高電位側の電力線WHと、低電位側の電力線WLによって、並列接続されている。キャパシタCは、平滑や電圧安定化等を行う。なお、電力変換装置1は、必ずしもキャパシタCを備えていなくてもよい。
【0023】
レグ2uは、上アーム3HとインダクタLと下アーム3Lとが、この順に直列接続されて構成されている。レグ2v,2wは、レグ2uと同様に構成されているのでその説明を省略する。以下、レグ2u,2v,2wを総称してレグ2と称する。
【0024】
レグ2uのインダクタLの中点が外部端子Tuと接続され、レグ2vのインダクタLの中点が外部端子Tvと接続され、レグ2wのインダクタLの中点が外部端子Twと接続されている。これにより、外部端子Tu,Tv,Twが、電力変換装置1の三相電力出力端子、又は三相回生電流入力端子として機能する。外部端子Tu,Tv,Twには、例えば三相モータ等の、種々の三相電力負荷を接続することができ、電力変換装置1を電動車両に搭載してもよい。
【0025】
インダクタLは、例えばセンタータップ付リアクトルであってもよく、二つのインダクタを直列接続し、その接続点を外部端子Tu,Tv,Twに接続したものであってもよい。レグ2u,2v,2wの出力電圧、すなわち外部端子Tu,Tv,Twの電圧を、出力電圧Vu,Vv,Vwとする。また、レグ2u,2v,2wの出力電流、すなわち外部端子Tu,Tv,Twから外部へ出力される電流を、出力電流Iu,Iv,Iwとする。
【0026】
上アーム3H及び下アーム3Lのそれぞれは、複数の高電流モジュールPMと複数の高容量モジュールEMとが直列接続された直列回路を含んでいる。
図1に示す例では、上アーム3H及び下アーム3Lは、複数の高電流モジュールPMと複数の高容量モジュールEMとが直列接続された直列回路のみから構成される例を示しているが、上アーム3H及び下アーム3Lは、複数の高電流モジュールPMと複数の高容量モジュールEMとの直列回路を含んでいればよく、複数の高電流モジュールPMと複数の高容量モジュールEMとの直列回路以外のものを含んでいてもよい。
【0027】
図2は、
図1に示す高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMの構成の一例を示す概念的な回路図である。
図2では、高容量モジュールEMに係る構成の符号を括弧書きで示している。
【0028】
レグ2の高電流モジュールPMは、端子T1(第一端子)、端子T2(第二端子)、電荷を蓄える高電流蓄電部BP、及び端子T1及び端子T2への高電流蓄電部BPの電気的な接続状態を切り換えるスイッチング素子SW1,SW2(第一切換回路)を含んでいる。高電流モジュールPMに用いられるスイッチング素子SW1,SW2は第一切換回路の一例に相当し、高容量モジュールEMに用いられるスイッチング素子SW1,SW2は第二切換回路の一例に相当する。
図2に示す例では、第一切換回路及び第二切換回路は、ハーフブリッジを構成している。
【0029】
具体的には、高電流モジュールPMは、高電流蓄電部BPとスイッチング素子SW1とが直列接続され、高電流蓄電部BPとスイッチング素子SW1の直列回路と並列にスイッチング素子SW2が接続されている。スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2の接続点が端子T1に接続され、スイッチング素子SW2と高電流蓄電部BPの接続点が端子T2に接続されている。
【0030】
高容量モジュールEMは、高電流モジュールPMとは、高電流蓄電部BPの代わりに高容量蓄電部BEを用いる点、端子T1及び端子T2の代わりに端子T3(第三端子)及び端子T4(第四端子)を用いる点が異なる。その他の点では高容量モジュールEMは、高電流モジュールPMと同様に構成されているのでその説明を省略する。
【0031】
高電流モジュールPMの端子T1は、自モジュールよりも高電位側の、高電流モジュールPMの端子T2又は高容量モジュールEMの端子T4に接続される。高電流モジュールPMの端子T2は、自モジュールよりも低電位側の、高電流モジュールPMの端子T1又は高容量モジュールEMの端子T3に接続される。
【0032】
同様に、高容量モジュールEMの端子T3は、自モジュールよりも高電位側の、高電流モジュールPMの端子T2又は高容量モジュールEMの端子T4に接続される。高容量モジュールEMの端子T4は、自モジュールよりも低電位側の、高電流モジュールPMの端子T1又は高容量モジュールEMの端子T3に接続される。これにより、複数の高電流モジュールPMと複数の高容量モジュールEMとが直列接続されている。
【0033】
図1に示す例では、複数の高電流モジュールPMのみの直列回路と、複数の高容量モジュールEMのみの直列回路とが直列接続される例を示したが、高電流モジュールPMと高容量モジュールEMとが混在して直列接続されていてもよい。
【0034】
上アーム3H内で最も高電位側の、高電流モジュールPMの端子T1又は高容量モジュールEMの端子T3は電力線WHに接続される。上アーム3H内で最も低電位側の、高電流モジュールPMの端子T2又は高容量モジュールEMの端子T4はインダクタLの一端に接続される。下アーム3L内で最も高電位側の、高電流モジュールPMの端子T1又は高容量モジュールEMの端子T3はインダクタLの他端に接続される。下アーム3L内で最も低電位側の、高電流モジュールPMの端子T2又は高容量モジュールEMの端子T4は電力線WLに接続される。
【0035】
スイッチング素子SW1,SW2としては、種々のスイッチング素子を用いることができ、例えばトランジスタ等の半導体スイッチング素子を好適に用いることができる。スイッチング素子SW1,SW2は、制御部5からの制御信号に応じてオン、オフする。
【0036】
高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEとしては、種々の蓄電素子を好適に用いることができ、単体の蓄電素子に限られず、複数の蓄電素子を組み合わせた組電池等を高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEとして用いてもよい。
【0037】
高電流蓄電部BPの定格電流値Ipは、高容量蓄電部BEの定格電流値Ieよりも大きい。また、高容量蓄電部BEは、高電流蓄電部BPよりも蓄電容量が大きい。高電流蓄電部BPに用いられる蓄電素子と、高容量蓄電部BEに用いられる蓄電素子は、種類が異なっていてもよい。例えば、高電流蓄電部BP用の蓄電素子として電気二重層コンデンサ等のキャパシタを用い、高容量蓄電部BE用の蓄電素子としてリチウムイオン二次電池等の二次電池を用いてもよい。
【0038】
符号Aで示す高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMは、接続状態が加入状態とされており、符号Bで示す高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMは、接続状態が離脱状態とされている。加入状態ではスイッチング素子SW1がオン、スイッチング素子SW2がオフし、離脱状態ではスイッチング素子SW1がオフ、スイッチング素子SW2がオンする。
【0039】
加入状態の高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMにおける高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEは、上アーム3H及び下アーム3Lにおいて直列接続され、離脱状態の高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMは短絡される。これにより、上アーム3H、下アーム3Lにおける両端電圧は、上アーム3H、下アーム3Lにおける加入状態の高電流蓄電部BP及び高容量モジュールEMの合計電圧となる。
【0040】
以下、高容量モジュールEM及び高電流モジュールPMを総称してモジュールXMと称し、高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEを総称して蓄電部BXと称する場合がある。
【0041】
なお、高電流モジュールPMは第一切換回路としてフルブリッジを用いてもよく、高容量モジュールEMは第二切換回路としてフルブリッジを用いてもよい。
図3は、第一切換回路、第二切換回路としてフルブリッジを用いた高電流モジュールPM、高容量モジュールEMの一例を示す概念的な回路図である。
【0042】
図3に示すフルブリッジの高電流モジュールPM、高容量モジュールEMは、
図2に示すハーフブリッジの高電流モジュールPM、高容量モジュールEMに加えて、さらにスイッチング素子SW3,SW4を備える。スイッチング素子SW3,SW4としては、スイッチング素子SW1,SW2と同様のスイッチング素子を用いることができる。
【0043】
具体的には、スイッチング素子SW3,SW4の直列回路がスイッチング素子SW1,SW2の直列回路と並列に接続されている。スイッチング素子SW1,SW2の接続点が端子T1又は端子T3に接続され、スイッチング素子SW3,SW4の接続点が端子T2又は端子T4に接続されている。高電流モジュールPMに用いられるスイッチング素子SW1~SW4はフルブリッジの第一切換回路の一例に相当し、高容量モジュールEMに用いられるスイッチング素子SW1~SW4はフルブリッジの第二切換回路の一例に相当する。
【0044】
図3に示すフルブリッジの高電流モジュールPM、高容量モジュールEMは、符号Aで示す加入状態、符号Bで示す離脱状態に加えて、符号Cで示す反転状態とすることができる。反転状態の高電流モジュールPM、高容量モジュールEMでは、高電流蓄電部BP、高容量蓄電部BEが、極性を反転させて接続される。
【0045】
加入状態ではスイッチング素子SW1,SW4がオン、スイッチング素子SW2,SW3がオフする。離脱状態ではスイッチング素子SW1,SW3がオフ、スイッチング素子SW2,SW4がオンする。反転状態ではスイッチング素子SW1,SW4がオフ、スイッチング素子SW2,SW3がオンする。なお、離脱状態ではスイッチング素子SW1,SW3をオン、スイッチング素子SW2,SW4をオフさせてもよい。
【0046】
以下、制御部5が、スイッチング素子SW1,SW2を制御して加入状態及び離脱状態を含む接続状態を制御すること、又はスイッチング素子SW1~SW4を制御して加入状態、離脱状態、及び反転状態を含む接続状態を制御することを、単に、接続状態を制御する、と記載する。
【0047】
図3に示すフルブリッジの高電流モジュールPMを用いた場合、上アーム3H、下アーム3Lにおける両端電圧は、上アーム3H、下アーム3Lにおける加入状態の高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMの高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEの合計電圧から、反転状態の高電流モジュールPM及び高容量モジュールEMの高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEの合計電圧を減算した電圧となる。
【0048】
電力線WH,WLには、例えば図略の外部電源が接続され、高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEを適宜充電可能とされている。
【0049】
図1に示す制御部5は、例えば、所定の論理演算を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶装置、及びこれらの周辺回路等を備えて構成され、所定のプログラムを実行することによって動作する。また、制御部5は、電力変換装置1の外部例えば電動車両から、モータのロータの回転角R、要求トルクT、及びレグ2u,2v,2wからモータへ供給された出力電流Iu,Iv,Iwを示す情報等を取得可能とされている。
【0050】
ロータの回転角Rは、モータ軸に取り付けられた回転角センサ(レゾルバ等)によって検出される。要求トルクTは、電動車両の車両コントローラ等から出力される、モータトルクの要求値である。出力電流Iu,Iv,Iwは、電動車両側に設けられた電流センサによって検出される。なお、電力変換装置1が、出力電流Iu,Iv,Iwを検出する電流センサを備えていてもよい。
【0051】
制御部5は、各高電流モジュールPM及び各高容量モジュールEMにおけるスイッチング素子SW1,SW2(SW3,SW4)による接続状態の切り換えを制御することによって、レグ2u,2v,2wから外部端子Tu,Tv,Twを介して外部へ、所望の波形の出力電圧Vu,Vv,Vwを出力させる。そして、モータ等の外部負荷に出力電圧Vu,Vv,Vwが印加されることによって、出力電流Iu,Iv,Iwが流れることになる。
【0052】
三相インバータ6、すなわちレグ2u,2v,2wによって、電圧や電圧波形等を変換又は回生する制御方法としては、公知のインバータ制御方法を用いることができ、例えばモジュラーマルチレベル変換器に関する制御方法を用いることができる。
【0053】
また、制御部5は、各第一切換回路及び各第二切換回路による接続状態の切り換えを制御することによって、複数の高電流蓄電部BP及び複数の高容量蓄電部BEのうちから選択的に電流を出力させる第一モードM1と、複数の高電流蓄電部BPのみのうちから選択的に電流を出力させる第二モードM2とを実行する。
【0054】
図4、
図5は、
図1に示す電力変換装置1の動作の一例を示すフローチャートである。以下の例では、電力変換装置1に接続される外部負荷が電動車両のモータである場合を例に説明する。まず、制御部5は、外部の電動車両等から信号を受信することによって、回転角R及び要求トルクTを取得する(ステップS1)。
【0055】
次に、制御部5は、要求トルクTに基づいて、三相インバータ6から出力するべき電流、すなわちモータに要求トルクTを発生させるために必要な電流である目標電流Itを取得する(ステップS2)。具体的には、制御部5は、予め設定された公知の数式を用いて要求トルクTから目標電流Itを算出してもよい。あるいは、制御部5は、予め設定された、トルクと電流の関係を示したルックアップテーブルを参照することによって、要求トルクTに対応する目標電流Itを取得してもよい。要求トルクTから目標電流Itを取得する方法は、特定の方法に限定されることなく、公知の種々の方法を用いることができる。
【0056】
次に、制御部5は、外部からリアルタイムに取得された出力電流Iu,Iv,Iwに基づくフィードバック制御により、出力電流Iu,Iv,Iwが目標電流Itとなるように、レグ2u,2v,2wにおける接続状態を制御することによって、出力電圧Vu,Vv,Vwを制御する(ステップS3)。ステップS3においては、後述するステップS13、S14,S23,S24.S33,S34で第一モードM1又は第二モードM2が既に設定されていた場合は、レグ2u,2v,2wに対してそれぞれ設定されたモードに応じてレグ2u,2v,2wにおける接続状態を制御する。
【0057】
具体的には、第一モードM1が設定されていた場合、制御部5は、各レグ内の、複数の高電流蓄電部BP及び複数の高容量蓄電部BEのうちから選択的に電流を出力させることによって、すなわち高電流蓄電部BPと高容量蓄電部BEとを両方用いて出力電流Iu,Iv,Iwが目標電流Itとなるように、レグ2u,2v,2wにおける接続状態を制御する。
【0058】
一方、第二モードM2が設定されていた場合、制御部5は、各レグ内の、高容量モジュールEMをすべて離脱状態にすることにより高容量蓄電部BEからは電流出力させることなく、複数の高電流蓄電部BPのうちから選択的に電流を出力させることによって、すなわち高電流蓄電部BPのみを用いて出力電流Iu,Iv,Iwが目標電流Itとなるように、レグ2u,2v,2wにおける接続状態を制御する。
【0059】
フィードバック制御としては、PI制御等の種々の制御方法を用いることができる。また、出力電流Iu,Iv,Iwを、目標電流Itに近づけるように制御することができればよく、制御方法はフィードバック制御に限らない。
【0060】
次に、制御部5は、ステップS3のフィードバック制御による接続状態から、出力電圧Vu,Vv,Vwの各相の瞬時電圧値Vr(u),Vr(v),Vr(w)を算出する(ステップS4)。制御部5は、ステップS3において得られたリアルタイムの接続状態に基づき、ハーフブリッジの場合であればレグ2u,2v,2wにおける加入状態のモジュールXMの蓄電部BXの電圧、フルブリッジの場合であればレグ2u,2v,2wにおける加入状態及び反転状態のモジュールXMの蓄電部BXの電圧から、出力電圧Vu,Vv,Vwの瞬時電圧値Vr(u),Vr(v),Vr(w)を算出することができる。各蓄電部BXの電圧は、例えば各蓄電部BXの電圧を検出する図略の電圧検出回路を備えることによって、取得することができる。
【0061】
次に、制御部5は、目標電流Itから、三相交流波形の出力電流Iu,Iv,Iwの瞬時電流値Ir(u),Ir(v),Ir(w)を算出する(ステップS5)。
【0062】
次に、制御部5は、ステップS11,S21,S31へ処理を移行する。以下、ステップS11~S14と、ステップS21~S24と、ステップS31~S34とは、並行して実行される。
【0063】
まず、レグ2uのU相に関する処理について説明する。瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ieを超えた場合(ステップS11でNO)、制御部5は、ステップS14へ処理を移行する。
【0064】
ステップS14において、制御部5は、レグ2uに対して第二モードM2を設定することによって、ステップS3において電流を出力させる蓄電部BXが、レグ2u内の複数の高電流蓄電部BPのみのうちから選択されるように設定し(ステップS14)、再びステップS1へ処理を移行する。
【0065】
図6は、瞬時電流値Ir(u)と、瞬時電流値Ir(u)が連続した波形で表される出力電流Iuと、定格電流値Ieと、第一モードM1及び第二モードM2との関係を示す説明図である。横軸は時間t、縦軸は電流値を示している。なお、
図6では、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が、後述の最大直列電圧Vp(u)以下である場合を例示している。
【0066】
ステップS11,S14によれば、
図6に示すように、出力電流Iuの交流波形において、瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ieを超える期間であるタイミングt1からタイミングt2まで、タイミングt3からタイミングt4まで、タイミングt5からタイミングt6まで、及びタイミングt7からタイミングt8までの期間、ステップS3において第二モードM2が実行される。
【0067】
瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ieを超えた場合(ステップS11でNO)、高容量蓄電部BEはその瞬間、瞬時電流値Ir(u)の電流を出力できないことを意味する。そこで、瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ieを超えた場合(ステップS11でNO)、制御部5は、ステップS14において第二モードM2を設定し、ステップS3において第二モードM2を実行する。
【0068】
これにより、ステップS3におけるレグ2uからの電流出力が、高電流蓄電部BPのみによって行われ、高容量蓄電部BEからは電流出力されない。その結果、レグ2uから、定格電流値Ipを超える瞬時電流値Ir(u)を出力することが可能となる。
【0069】
一方、瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ie以下の場合(ステップS11でYES)、制御部5は、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値と、最大直列電圧Vp(u)とを比較する(ステップS12)。最大直列電圧Vp(u)は、レグ2uに含まれる高電流モジュールPMのみを用いて出力可能な最大の電圧である。
【0070】
具体的には、モジュールXMがハーブブリッジかフルブリッジかに関わらず、最大直列電圧Vp(u)は、瞬時電圧値Vr(u)が+のときはレグ2uの下アーム3Lに含まれるすべての高電流蓄電部BPの電圧の合計値となり、瞬時電圧値Vr(u)が-のときはレグ2uの上アーム3Hに含まれるすべての高電流蓄電部BPの電圧の合計値となる。制御部5は、上述の電圧検出回路によって検出された、各高電流蓄電部BPの電圧を合計することによって、最大直列電圧Vp(u)を算出することができる。
【0071】
あるいは、レグ2uに含まれる高電流モジュールPMのみを用いて出力可能な最大の電圧としておおよそ妥当な電圧値を、予め固定的に最大直列電圧Vp(u)として設定してもよい。
【0072】
上アーム3Hと下アーム3Lと両方を使う場合は、フルブリッジの効果は、蓄電部ごとに充電と放電を使いわけられられる点に限定される。下アーム3Lのみで構成された三相インバータ回路の場合、フルブリッジ回路を利用することで、正負の電圧出力が可能になり、正弦波交流出力が可能となる。
【0073】
最大直列電圧Vp(v),Vp(w)は、最大直列電圧Vp(u)と同様、レグ2v,2wに含まれる高電流モジュールPMのみを用いて、それぞれ出力可能な最大の電圧である。最大直列電圧Vp(v),Vp(w)は、レグ2v,2wに含まれる高電流モジュールPMに基づき、最大直列電圧Vp(u)と同様の方法により設定される。
【0074】
瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が、最大直列電圧Vp(u)を超えていた場合(ステップS12でYES)、高電流モジュールPMのみを用いる第二モードM2では瞬時電圧値Vr(u)を出力することができないので、制御部5は、ステップS13へ移行し、第一モードを設定する。
【0075】
ステップS13において、制御部5は、レグ2uに対して第一モードを設定することによって、電流を出力させる蓄電部BXが、レグ2u内の複数の高電流蓄電部BP及び複数の高容量蓄電部の両方の中からステップS3で選択されるように設定し(ステップS13)、再びステップS1へ処理を移行する。
【0076】
図7は、瞬時電圧値Vr(u)と、瞬時電圧値Vr(u)が連続した波形で表される出力電圧Vuと、最大直列電圧Vp(u)と、第一モードM1及び第二モードM2との関係を示す説明図である。横軸は時間t、縦軸は電圧値を示している。なお、
図7では、瞬時電流値Ir(u)の絶対値が、定格電流値Ie以下である場合を例示している。
【0077】
ステップS12,S13によれば、
図7に示すように、出力電圧Vuの交流波形において、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)を超える期間であるタイミングt11からタイミングt12まで、タイミングt13からタイミングt14まで、タイミングt15からタイミングt16まで、及びタイミングt17からタイミングt18までの期間、ステップS3において第一モードM1が実行される。
【0078】
瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)を超えた場合(ステップS12でYES)、レグ2uはその瞬間、高電流蓄電部BPだけでは瞬時電圧値Vr(u)の電圧を出力できないことを意味する。そこで、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)を超えた場合(ステップS12でYES)、制御部5は、第一モードM1(ステップS13)を設定し、ステップS3において第一モードM1を実行する。
【0079】
これにより、ステップS3におけるレグ2uからの電圧出力を、第一モードM1によって高電流蓄電部BP及び高容量蓄電部BEの両方を用いて出力することができる。その結果、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)を超え、高電流蓄電部BPだけでは出力できない瞬時電圧値Vr(u)を、
図7に示すように、第一モードM1によって出力することが可能となる。
【0080】
一方、ステップS12において、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)を超えない場合(ステップS12でNO)、レグ2uの高電流蓄電部BPのみを用いて瞬時電圧値Vr(u)を出力することができるので、制御部5は、ステップS14へ移行して第二モードM2を設定し、ステップS3において第二モードM2を実行する。
【0081】
なお、瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ieに満たない場合(ステップS11でYES)にステップS12へ移行し、瞬時電流値Ir(u)の絶対値が定格電流値Ie以上の場合(ステップS11でNO)にステップS14へ移行してもよい。また、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)以上の場合(ステップS12でYES)、ステップS13へ移行し、瞬時電圧値Vr(u)の絶対値が最大直列電圧Vp(u)に満たない場合(ステップS12でNO)、ステップS14へ移行してもよい。
【0082】
レグ2vのV相に関するステップS21~S24、レグ2wのW相に関するステップS31~S34の処理は、瞬時電流値Ir(u)の代わりに瞬時電流値Ir(v),Ir(w)、瞬時電圧値Vr(u)の代わりに瞬時電圧値Vr(v),Vr(w)、レグ2uの代わりにレグ2v,2wとする点を除いてステップS11~S14と同様であるのでその説明を省略する。
【0083】
レグ2u,2v,2wの蓄電部BXは、三相交流等に変換された電圧波形で負荷へ電力を供給するので、負荷変動に追従して瞬間的に大電流を流す必要がある。そのため、蓄電部BXは、定格電流が大きい二次電池であることが好ましい。一方、蓄電部BXは、放電すると電圧が低下するため、電力変換装置1を安定的に継続動作させるためには蓄電部BXの蓄電容量が大きいことが望ましい。しかしながら、定格電流と、蓄電容量とが共に大きな蓄電素子は、入手が困難であったり、高価であったりする。
【0084】
そこで、入手しやすい、定格電流値Ipが大きく蓄電容量が小さい高電流蓄電部BP及び定格電流値Ieが小さく蓄電容量が大きい高容量蓄電部BEを、組み合わせて用いることによって、蓄電部BXの入手が容易となり、かつコストを低減することが容易となる。さらに、複数の高電流蓄電部BP及び複数の高容量蓄電部BEのうちから選択的に電流を出力させる第一モードM1と、複数の高電流蓄電部BPのみのうちから選択的に電流を出力させる第二モードM2とを実行することによって、高電流蓄電部BPと高容量蓄電部BEとを組み合わせて用いつつ、蓄電容量と電流出力とを両立させることが容易となる。
【0085】
なお、制御部5は、必ずしもステップS12,S22,S32を実行する必要はなく、ステップS11でYESのときステップS13へ処理を移行し、ステップS21でYESのときステップS23へ処理を移行し、ステップS31でYESのときステップS33へ処理を移行してもよい。
【0086】
また、制御部5は、必ずしもステップS11,S21,S31を実行する必要はなく、ステップS5からステップS12,S22,S32へ処理を移行してもよい。
【0087】
また、電力変換装置1は、電動車両に搭載される例に限られず、制御部5は、回転角R又は要求トルクTを取得しなくてもよく、ステップS1,S2を実行しなくてもよい。また、制御部5は、出力電流Iu,Iv,Iwを取得しなくてもよく、ステップS3において、出力電流Iu,Iv,Iwに基づくフィードバック制御を行う例に限らない。
【0088】
出力電流Iu,Iv,Iw及び出力電圧Vu,Vv,Vwは、種々の波形であってよく、モータの駆動波形に限らない。例えば、出力電流Iu,Iv,Iw及び出力電圧Vu,Vv,Vwは、振幅、周波数固定の正弦波交流であってもよく、直流であってもよい。
【0089】
また、電力変換装置1は、三つのレグ2u,2v,2wを備える例に限らない。電力変換装置1は、レグを一つ備える単相の電力変換装置であってもよく、レグを二つ、あるいは四つ以上備える電力変換装置であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 電力変換装置
2u,2v,2w レグ
3H 上アーム
3L 下アーム
5 制御部
6 三相インバータ
BE 高容量蓄電部
BP 高電流蓄電部
BX 蓄電部
C キャパシタ
EM 高容量モジュール
Ie,Ip 定格電流値
Ir(u),Ir(v),Ir(w) 瞬時電流値
It 目標電流
Iu,Iv,Iw 出力電流
L インダクタ
M1 第一モード
M2 第二モード
PM 高電流モジュール
R 回転角
SW1~SW4 スイッチング素子(第一切換回路、第二切換回路)
T 要求トルク
T1 端子(第一端子)
T2 端子(第二端子)
T3 端子(第三端子)
T4 端子(第四端子)
Tu,Tv,Tw 外部端子
Vp(u),Vp(v),Vp(w) 最大直列電圧
Vr(u),Vr(v),Vr(w) 瞬時電圧値
Vu,Vv,Vw 出力電圧
WH,WL 電力線
XM モジュール