(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038768
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143033
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FD20
2C056HA15
2C056HA36
2C056HA37
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】光照射装置を備えたインクジェットプリンタにおいて、インクヘッドへの反射光の拡散を抑制しながらインクヘッドの温度上昇を抑制する。
【解決手段】プリンタ10は、光硬化性インクを吐出するインクヘッド40と、カバーケース32と、ダクト33と、排気ファン35と、光照射装置65、66を備えている。ダクト33からカバーケース32の内部に流入した空気が排気ファン35によりカバーケース32の外部に排出されることで、インクヘッド40の温度上昇が抑制される。一方、光照射装置65、66から照射され反射した反射光は、ダクト33を通過してからカバーケース32の内部に到達する。このことにより、カバーケース32の内部に到達する反射光が減衰しているため、カバーケース32の内部において反射光によりインクの硬化が抑制される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に光硬化性のインクを吐出するインクヘッドと、
前記インクが吐出された前記記録媒体に光を照射する光照射装置と、
前記インクヘッドが備えられ、前記記録媒体に対して相対移動するキャリッジと、を備え、
前記キャリッジは、前記インクヘッドを覆うキャリッジカバーを備え、
前記キャリッジカバーは、
前記インクヘッドの上方を覆う上壁と、前記上壁から下方に延び、前記インクヘッドの側方を覆う側壁と、を有するカバーケースと、
前記上壁または前記側壁に形成されたダクト入口と、前記ダクト入口から延びる筒状の空気流路と、前記空気流路から前記カバーケースの内部に向かって開口するダクト出口と、を有するダクトと、備え、
前記カバーケースの内部の空気を前記カバーケースの外部に排気する排気ファンを備えるインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記光照射装置の下方に配置され、前記記録媒体を支持するプラテンを備え、
前記ダクト入口は、前記上壁に設けられている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記キャリッジカバーは、前記側壁から側方に延び、前記上壁と対面する底壁を備え、
前記ダクト出口は、前記底壁に向かって開口している、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ダクト出口は、前記側壁の上下方向の中間位置よりも下方に配置され、
前記ダクト入口は、前記側壁の上下方向の中間位置よりも上方に配置されている、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記排気ファンは、前記ダクトに対して前後方向または左右方向の一方に配置され、
前記インクヘッドは、前記排気ファンと前記ダクトとの間に配置されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ダクト出口は、前記インクヘッドの上端よりも低い位置に配置され、
前記排気ファンは、前記インクヘッドの上端よりも高い位置に配置されている、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記ダクトは、前記空気流路の長手方向と前記側壁とが互いに平行となるように配置され、かつ前記空気流路と前記側壁とが隣接して設けられている、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記インクヘッドに接触し、前記インクヘッドが発する熱を逃がす冷却フィンを備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記キャリッジカバーの外部に搭載され、前記インクヘッドを駆動する制御基板を備え、
前記制御基板は、前記排気ファンに対して、前記排気ファンが形成する空気の流れの下流側に配置され、かつ前記制御基板の上端から下端までの範囲と、前記排気ファンの上端から下端までの範囲と、が上下方向について少なくとも一部が重なるように配置され、かつ前記制御基板の右端から左端までの範囲と、前記排気ファンの右端から左端までの範囲と、が左右方向について少なくとも一部が重なるように配置されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを吐出するインクヘッドと、インクヘッドの少なくとも一部を被覆する筐体を有するキャリッジと、筐体の内部を冷却する冷却ファンと、を備えたインクジェットプリンタが知られている。上記のようなインクジェットプリンタでは、例えば、インクヘッドの内部に備えられたアクチュエータが駆動することにより、インクが吐出される。インクが吐出されるとき、アクチュエータの駆動により、インクヘッドが熱を発する。インクヘッドが筐体に覆われているため、インクヘッドが発する熱は、筐体の内部にこもる。したがって、インクの吐出に伴いインクヘッドの温度が上昇する。インクヘッドの温度が上昇し続けると、インクヘッドが故障するおそれがある。よって、筐体の内部にこもった熱を筐体の外部に放出し、インクヘッドを冷却する必要がある。特許文献1には、インクヘッドを気流により冷却するインクジェットプリンタが開示されている。このインクジェットプリンタでは、筐体の後方部から空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、筐体内部のダクト構造を通り、筐体の下方部に備えられた排気口から排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェットプリンタには、インクとして光硬化性インクを用い、光照射装置により光硬化性インクに向かって光(典型的には紫外線)を照射するものがある。かかるインクジェットプリンタの場合、光照射装置が照射した光は、記録媒体を載置するプラテンなどで反射し、反射光が生じる。このような反射光が筐体の内部に拡散すると、例えば、ダンパーおよびインクチューブ内のインクの硬化を促進してしまう虞がある。したがって、筐体の内部に反射光が拡散することは望ましくない。インクヘッドを気流により冷却するインクジェットプリンタでは、筐体に吸気口および排気口が形成される。例えば、特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、排気口がプラテンに対して対面するように開口している。そのため、インクヘッドの温度上昇を抑制することができるが、反射光が進入しやすく、筐体の内部に反射光が拡散しやすい。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光照射装置を備えたインクジェットプリンタにおいて、インクヘッドへの反射光の拡散を抑制しながら、インクヘッドの温度上昇を抑制できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットプリンタは、記録媒体に光硬化性のインクを吐出するインクヘッドと、前記インクが吐出された前記記録媒体に光を照射する光照射装置と、前記インクヘッドが備えられ、前記記録媒体に対して相対移動するキャリッジと、を備えている。前記キャリッジは、前記インクヘッドを覆うキャリッジカバーを備えている。前記キャリッジカバーは、前記インクヘッドの上方を覆う上壁と、前記上壁から下方に延び、前記インクヘッドの側方を覆う側壁と、を有するカバーケースと、前記上壁または前記側壁に形成されたダクト入口と、前記ダクト入口から延びる筒状の空気流路と、前記空気流路から前記カバーケースの内部に向かって開口するダクト出口と、を有するダクトと、備えている。前記インクジェットプリンタは、前記カバーケースの内部の空気を前記カバーケースの外部に排気する排気ファンを備えている。
【0007】
本発明のインクジェットプリンタによると、前記ダクトから前記カバーケースの内部に空気が流入し、かつ前記排気ファンにより前記カバーケースの外部へ空気が排気される。このことにより、前記ダクトから前記排気ファンに向かう気流が前記カバーケースの内部に生じる。前記カバーケースの内部に生じた気流により、前記インクヘッドから発せられる熱が前記カバーケースの外部へ放出される。したがって、前記インクヘッドの温度上昇が抑制される。一方、プラテンなどで反射した反射光が前記ダクト入口に到達することがある。しかしながら、前記ダクト入口に到達した反射光は、前記空気流路の内部を反射しながら前記ダクト出口まで進む。したがって、反射光が前記ダクト出口に到達するとき、反射光は、十分に減衰している。反射光が十分に減衰しているため、前記カバーケースの内部において、反射光によるインクの硬化が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光照射装置を備えたインクジェットプリンタにおいて、インクヘッドへの反射光の拡散およびインクヘッドの温度上昇を抑制できるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】一実施形態に係るインクヘッドの底面の構成を示す模式図である。
【
図6】キャリッジの内部の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、所謂、Roll-to-Rollタイプのインクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、記録媒体11に印刷を行う。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは、主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Zは、上下方向を示している。図面中の符号Xは、副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)する方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体11に印刷を行う。記録媒体11は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体11は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体11は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体11は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体11には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0013】
図2に示すように、プリンタ10は、プラテン12と、キャリッジ移動機構20と、キャリッジ30と、インク供給システム60と、第1光照射装置65と、第2光照射装置66と、本体ケース70と、脚部72と、制御装置80と、を備えている。キャリッジ30には、インクヘッド40が備えられている。インクヘッド40は、第1インクヘッド40Aと第2インクヘッド40Bとを有する。第1光照射装置65は、キャリッジ30の左方に接続され、第2光照射装置66は、キャリッジ30の右方に接続されている。
【0014】
プラテン12は、記録媒体11への印刷の際、記録媒体11を支持する部材である。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には、記録媒体11が載置される。プラテン12は、本体ケース70に設けられている。
【0015】
プリンタ10は、媒体搬送機構50を備えている。媒体搬送機構50は、プラテン12に載置された記録媒体11を副走査方向Xに移動させる機構である。媒体搬送機構50は、グリットローラ51と、ピンチローラ52と、フィードモータ53と、を備えている。グリットローラ51は、プラテン12に設けられている。ここでは、グリットローラ51の一部はプラテン12に埋設されている。ピンチローラ52は、グリットローラ51と上下方向に対向するように、グリットローラ51の上方に配置されている。ピンチローラ52は、記録媒体11を上から押え付ける部材である。ピンチローラ52は、記録媒体11の厚みに応じて、上下方向に移動可能に構成されていてもよい。なお、グリットローラ51およびピンチローラ52のそれぞれの配置位置および数は特に限定されない。フィードモータ53は、グリットローラ51に接続されている。グリットローラ51とピンチローラ52との間に記録媒体11が挟まれた状態で、フィードモータ53が駆動してグリットローラ51が回転すると、記録媒体11は副走査方向Xに搬送される。
【0016】
本体ケース70のうち右前カバー71Rの前方には、操作パネル13が設けられている。操作パネル13には、プリンタの状態を表示する表示部14と、ユーザによって操作される入力キー15が備えられている。操作パネル13は、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置80に接続されている。
【0017】
キャリッジ移動機構20は、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させる機構である。キャリッジ移動機構20は、ガイドレール21と、プーリ22と、プーリ23と、無端状のベルト24と、キャリッジモータ25とを備えている。ガイドレール21は、キャリッジ30の主走査方向Yへの移動をガイドする。ガイドレール21は、プラテン12の上方に配置されている。ガイドレール21は、本体ケース70に設けられている。ガイドレール21は主走査方向Yに延びている。プーリ22は、ガイドレール21の左端より左方に設けられている。プーリ23は、ガイドレール21の右端より右方に設けられている。ベルト24は、プーリ22とプーリ23とに巻き掛けられている。右側のプーリ23には、キャリッジモータ25が接続されている。ただし、キャリッジモータ25は、左側のプーリ22に接続されていてもよい。キャリッジモータ25が駆動して、プーリ23が回転することにより、プーリ22とプーリ23との間においてベルト24が走行する。キャリッジ30は、ベルト24に取り付けられている。キャリッジ30は、ガイドレール21に係合しており、ガイドレール21と摺動自在に設けられている。したがって、キャリッジモータ25の駆動によって、ベルト24が走行し、キャリッジ30は主走査方向Yに移動する。
【0018】
キャリッジ30には、インクヘッド40が備えられている。キャリッジ30が主走査方向Yに移動するときに、記録媒体11に光硬化性を有するインク(光硬化性インク)が、インクヘッド40から吐出されることにより印刷が行われる。光硬化性インクは、インク供給システム60により、インクヘッド40に供給される。
【0019】
光硬化性インクは、光が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インク(例えば紫外線硬化型インクや赤外線硬化型インク)は、顔料等の着色剤と光重合性モノマーと光重合開始剤とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、溶剤等を含み得る。光硬化性インクは、例えば、プロセスカラーインクやホワイトインクである。例えば、プロセスカラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。なお、光硬化性インクは、無色インクであってもよい。光硬化性インクとしては、例えば、紫外線硬化型のインクが挙げられる。
【0020】
図3に示すように、キャリッジ30にはインクヘッド40が備えられている。本実施形態では、インクヘッド40は、第1インクヘッド40Aと、第2インクヘッド40Bとを有している。第1インクヘッド40Aは、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル41Aと、ノズル41Aが形成されたノズル面42Aと、を備えている。第2インクヘッド40Bは、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル41Bと、ノズル41Bが形成されたノズル面42Bと、を備えている。ノズル41Aおよびノズル41Bは、光硬化性インクを吐出する微小な穴である。各ノズル41Aおよび各ノズル41Bは微小であるため、
図3では、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル41Aと副走査方向Xに並ぶ複数のノズル41Bとを、それぞれ直線により表している。第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bは、副走査方向Xの長さが、主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bは、副走査方向Xに対して互いにずれて配置されている、所謂、スタガー配置となっている。ここでは、第1インクヘッド40Aの一部が第2インクヘッド40Bよりも前方に配置されている。すなわち、第1インクヘッド40Aの一部が、副走査方向Xにおいて第2インクヘッド40Bと重なっている。例えば、第1インクヘッド40Aのノズル41Aからプロセスカラーインクが吐出され、第2インクヘッド40Bのノズル41Bから下地のインクが吐出される。ただし、インクヘッド40の配置は、スタガー配置に限定されない。第1インクヘッド40Aと第2インクヘッド40Bとは、副走査方向Xに対して、同じ位置に配置されていてもよい。本実施形態では、ノズル41Aおよびノズル41Bは、それぞれ4列に並んでいる。ただし、ノズル41Aおよびノズル41Bの並び方はこれに限定されない。また、本実施形態では、インクヘッドの数は2つであるが、これに限定されない。インクヘッドの数は、1つでもよく3つ以上でもよい。
【0021】
図4は、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの一部の鉛直断面図であり、詳しくは、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの左右方向の中心を通る鉛直断面図である。
図4に示すように、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bは、インクが充填された圧力室45と、圧力室45内のインクを吐出するために駆動されるアクチュエータ46と、を有している。アクチュエータ46は、本実施形態では圧電素子からなり、圧力室45の一部を仕切る振動板47に接続されている。アクチュエータ46は、制御装置80に通電可能に接続されている。制御装置80がアクチュエータ46に電位を印加し、アクチュエータ46が上下に歪むことによって振動板47が撓み、圧力室45内のインクが加圧または減圧される。このことにより、ノズル41A,41Bからインクが吐出される。アクチュエータ46は圧電素子であるため、アクチュエータ46を駆動すると、アクチュエータ46から熱が発生する。アクチュエータ46から発生した熱により第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの温度が上昇する。アクチュエータの方式は特に限定されない。例えば、第1インクヘッド40Aおよび/または第2インクヘッド40Bは、サーマル式のインクヘッド等であってもよい。
【0022】
図2に示すように、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bは、ダンパー43を備えている。ダンパー43は、インクを一時的に貯留する中間容器である。ダンパー43は、インク供給システム60を通るインクの圧力変動を緩和するものである。
【0023】
インク供給システム60は、インクヘッド40にインクを供給するシステムである。インク供給システム60は、インクカートリッジ61と、インク供給路62と、送液ポンプ(図示せず)と、を備えている。インクカートリッジ61には、それぞれインクが収容されている。インク供給路62は、インクカートリッジ61とダンパー43とインクヘッド40とを接続している。1つのインクカートリッジ61につき、インク供給路62が1つ接続されているが、
図2では簡略化して図示している。本実施形態では、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bにそれぞれ4つずつインクカートリッジ61が接続されている。
【0024】
図2に示すように、キャリッジ30の左方および右方には、第1光照射装置65と第2光照射装置66とが接続されている。第1光照射装置65および第2光照射装置66は、記録媒体11に吐出された光硬化性インクに向けて光(典型的には紫外線)を照射することで、記録媒体11上にインク層を形成するものである。ここで、
図3に示すように、第1光照射装置65および第2光照射装置66は、それぞれ複数の紫外線照射LED67を備えている。複数の紫外線照射LED67は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに並んで配置されている。しかし、紫外線照射LED67の配置はこれに限定されない。紫外線照射LED67が主走査方向Yと副走査方向Xのいずれか一方向にのみ並んで配置されていてもよいし、1つの紫外線照射LED67のみが配置されていてもよい。第1光照射装置65および第2光照射装置66は、キャリッジ30に接続されているため、キャリッジ30が主走査方向Yに移動するとき、第1光照射装置65および第2光照射装置66も一緒に主走査方向Yに移動する。
【0025】
図5は、キャリッジ30の鉛直断面図である。
図5に示すように、キャリッジ30にはインクヘッド40を覆うキャリッジカバー31が設けられている。キャリッジカバー31は、インクヘッド40を覆う筐体であるカバーケース32と、ダクト33と、を備えている。カバーケース32には、排気ファン35が設けられている。キャリッジ30は、カバーケース32に接続されたレール接続部36を介してガイドレール21に係合している。ダクト33は、ダクト入口33aによりキャリッジカバー31の外部と通じている。ダクト33は、ダクト出口33により、カバーケース32の内部と通じている。
【0026】
カバーケース32は、インクヘッド40の上方を覆う上壁32U、前壁32F、右壁32R(
図2参照)、左壁32L(
図2参照)、後壁32Rr、および底壁32Dを有する。前壁32F、右壁32R、左壁32L、および後壁32Rrは、側壁の一例である。本実施形態では、上壁32Uは、前後方向に水平に延びる第1上壁32Uaと、第1上壁32Uaから前斜め下方に延びる第2上壁32Ubと、を備えている。前壁32F、右壁32R、左壁32L、および後壁32Rrは、上下方向にほぼ垂直に延びている。前壁32Fは、第2上壁32Ubと接続されている。後壁32Rrは、第1上壁32Uaと接続されている。右壁32Rおよび左壁32Lは、第1上壁32Uaと第2上壁32Ubとに接続されている。第1底壁32Dは、前壁32F、右壁32R、左壁32L、および後壁32Rrに接続し、第1上壁32Uaとほぼ平行となっている。底壁32Dには、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bが配置されている。すなわち、底壁32Dは、上下方向の平面視において、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの外形をくり抜かれた矩形の形状となっている。後壁32Rrは、レール接続部36を備えている。レール接続部36は、ガイドレール21と係合している。レール接続部36がガイドレール21と係合していることにより、キャリッジ30が主走査方向Yに移動することができる。カバーケース32を形成する材料は、特に限定されない。例えば、カバーケース32は、プラスチックにより形成される。
【0027】
カバーケース32の後壁32Rrには、排気ファン35が設けられている。排気ファン35は、レール接続部36の上方に備えられている。排気ファン35は、カバーケース32の内部の空気をカバーケース32の外部に向けて送風するものである。
図6に示すように、排気ファン35の左右方向の位置は、本実施形態では、後壁32Rrの左右方向のほぼ中央に配置されている。
【0028】
図5に示すように、カバーケース32の前壁32Fには、ダクト33が設けられている。ダクト33は、ダクト入口33aと、空気流路33bと、ダクト出口33cと、を備えている。ダクト入口33aは、カバーケース32の外部に向けて開口されており、ダクト入口33aから空気が流入する。本実施形態では、ダクト入口33aは、第2上壁32Ubに備えられている。本実施形態では、ダクト入口33aの左右方向の長さは、第2上壁32Ubの左右方向の長さと同じである。ただし、ダクト入口33aは、第1上壁32Ua、前壁32F、右壁32R、左壁32L、および後壁32Rrのいずれか一つに備えられていてもよい。空気流路33bは、ダクト入口33aから流入した空気が流れる筒状の流路である。本実施形態では、空気流路33bは、前壁32Fに沿って設けられている。すなわち空気流路33bは、上下方向にほぼ鉛直に設けられている。ダクト出口33cは、ダクト33とカバーケース32との接続口である。すなわち、空気流路33bを通った空気は、ダクト出口33cを通り、カバーケース32の内部に流れる。本実施形態では、ダクト出口33cは、前壁32Fの上下方向の中間位置よりも下方に設けられている。ダクト入口33aは、第2上壁32Ubに設けられているため、ダクト入口33aからダクト出口33cまでの距離は、比較的長くなっている。例えば、ダクト出口33cの位置は、底壁32Dよりも10mm上方に配置されている。本実施形態では、ダクト出口33cは、底壁32Dと対面する向きに配置されている。ダクト出口33cから流出した空気は、底壁32Dに向かって流れる。ダクト33を形成する材料は、特に限定されない。例えば、ダクト33は、プラスチックにより形成される。また、ダクト33およびカバーケース32は、単一の部品となっていてもよい。
【0029】
第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bには、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの内部の熱の放出を促進させるために冷却フィン44が備えられている。本実施形態では、冷却フィン44は板状の形状をしている。冷却フィン44の左右方向の長さは、上下方向の長さよりも長い。しかしながら、冷却フィン44の形状は、特に限定されない。冷却フィン44は、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bに対して4つ並べられているが、その数は特に限定されない。冷却フィン44を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、熱伝導率の高い金属材料により形成される。
【0030】
図6に示すように、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの左方には、送風ファン37が設けられている。送風ファン37は、制御装置80と電気的に接続されている。送風ファン37が駆動することにより、冷却フィン44に向かって風が送られる。送風ファン37の配置は、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの左方に限定されない。例えば、送風ファン37は、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの右方に配置されていてもよい。
【0031】
図5に示すように、排気ファン35の後方には、制御基板81が配置されている。制御基板81は、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの動作を制御するための回路が組み込まれている。制御基板81は、制御装置80に電気的に接続されている。制御基板81は、制御基板81の上端から下端までの範囲と、排気ファン35の上端から下端までの範囲とが上下方向について少なくとも一部が重なるように配置されている。本実施形態では、制御基板81の上下方向の中心と、排気ファン35の上下方向の中心と、が一致している。制御基板81は、制御基板81の右端から左端までの範囲と、排気ファン35の右端から左端までの範囲とが左右方向について少なくとも一部が重なるように配置されている。本実施形態では、
図6に示すように、制御基板81の左右方向の中心と、排気ファン35の左右方向の中心と、が一致している。制御基板81は、排気ファン35が形成する空気の流れの下流側に配置されている。すなわち、制御基板81には、排気ファン35が形成する空気が当たる。
【0032】
次に、ダクト33からカバーケース32に流入した空気の挙動について説明する。
図5の矢印ARは、ダクト33から流入する空気の一例である。
図5に示すように、空気ARは、ダクト入口33aから流入し、空気流路33bを下降し、ダクト出口33cに到達し、カバーケース32の内部に流入する。排気ファン35が、ダクト出口33cよりも高い位置に配置されているため、カバーケース32の内部には、上方に向かう気流が形成されている。ダクト出口33cが底壁32Dと対面しているため、空気ARは、底壁32Dに当たる。底壁32Dに当たった空気の一部は、底壁32Dに沿って後方に進みつつ、徐々に上昇する。
図6に示すように、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40B付近の空気ARは、送風ファン37により、左方向から右方向に向かって送風される。送風ファン37により送風された空気ARは、冷却フィン44に当たり、冷却フィン44から熱を奪う。
図5に示すように、カバーケース32に流入し、底壁32Dに当たった空気の一部は、カバーケース32内を上方に向かって進む。空気ARは、カバーケース32の内部の空気から熱を奪い、排気ファン35によりカバーケース32の外部に排出される。カバーケース32の外部に排出された空気ARは、制御基板81に当たりながら後方へ向かって進む。このとき、空気ARは、制御基板81周辺の空気から熱を奪う。
【0033】
次に、第1光照射装置65および第2光照射装置66から照射された光の挙動について説明する。第1光照射装置65および第2光照射装置66から照射された光の一部は、記録媒体11やプラテン12で反射し、ダクト入口33aに到達する。ダクト入口33aに到達した反射光UVは、空気流路33bの内部を反射しながら進み、ダクト出口33cに到達する。ダクト入口33aに到達したときの反射光UVの光量と、ダクト出口33cに到達したときの反射光UVの光量と、を比較すると、反射光UVが空気流路33bを通過した距離の分だけダクト出口33cに到達した反射光UVの方が、光量が少なくなっている。
【0034】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、ダクト33からカバーケース32の内部に空気が流入し、かつ排気ファン35によりカバーケース32の外部へ空気が排気される。このことにより、ダクト33から排気ファン35に向かう気流がカバーケース32の内部に生じる。カバーケース32の内部に生じた気流により、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bから発せられる熱がカバーケース32の外部へ放出される。したがって、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの温度上昇が抑制される。一方、第1光照射装置65および第2光照射装置66から照射された光がプラテン12などにより反射した反射光がダクト入口33aに到達することがある。しかしながら、ダクト入口33aに到達した反射光は、空気流路33bの内部を反射しながらダクト出口33cまで進む。したがって、反射光がダクト出口33cに到達するとき、反射光は十分に減衰している。反射光が十分に減衰しているため、キャリッジカバー31の内部において、反射光によるインクの硬化は抑制される。
【0035】
本実施形態のプリンタ10によると、ダクト入口33aは、カバーケース32の第2上壁32Ubに設けられている。第2上壁32Ubは、前壁32F、右壁32R、左壁32Lおよび後壁32Rrよりも上方に配置されている。すなわち、第2上壁32Ubは、前壁32F、右壁32R、左壁32Lおよび後壁32Rrよりもプラテン12から遠い位置に配置されている。ダクト入口33aに到達する反射光の量は、ダクト入口33aが前壁32F、右壁32R、左壁32Lまたは後壁32Rrに設けられている場合よりも、ダクト入口33aが第2上壁32Ubに設けられている方が少なくなる。このことから、カバーケース32の内部に進入する反射光の光量が抑制されている。
【0036】
本実施形態のプリンタ10によると、ダクト出口33cは、底壁32Dに向かって開口している。ここで、反射光が底壁32Dの下方から底壁32Dに向かって衝突すると、底壁32Dの温度が上昇する。底壁32Dの温度が上昇すると、キャリッジカバー31の内部の温度が上昇する。本実施形態では、ダクト出口33cが底壁32Dに向かって開口しているため、ダクト33を通過した空気が底壁32Dに当たる。このことにより、底壁32Dの温度上昇が抑制される。さらに、底壁32Dに衝突した空気が底壁32Dに沿って拡散することにより、底壁32D付近の空気も拡散される。例えば、ダクト出口33cが上方を向いていると、底壁32D付近に空気が流入しにくいため、底壁32D付近の空気が拡散されにくい。本実施形態のように、ダクト出口33cが底壁32Dに向かって開口していることにより、底壁32D付近の空気が拡散されるため、キャリッジカバー31の内部の冷却の効果が高くなる。
【0037】
本実施形態のプリンタ10によると、ダクト入口33aは、前壁32F、右壁32R、左壁32Lおよび後壁32Rrの上下方向の中間位置よりも下方に配置されている。また、ダクト出口33cは、第2上壁32Ubに配置されている。すなわち、前壁32F、右壁32R、左壁32Lおよび後壁32Rrの上下方向の中間位置よりも上方に配置されている。したがって、ダクト33は、上下方向に比較的長い形状となっている。ダクト33が上下方向に比較的長い形状のため、ダクト入口33aに到達した反射光が、ダクト出口33cに到達するまで距離が比較的長くなっている。このことにより、反射光がダクト33を進行する間に、反射光がより減衰される。さらにダクト33が上下方向に延びることにより、ダクト出口33cと底壁32Dとの距離が比較的近くなっている。このことにより、底壁32D付近の空気が拡散されやすくなっている。
【0038】
本実施形態のプリンタ10によると、排気ファン35が第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの後方に配置され、かつダクト33が第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの前方に配置されている。このことにより、ダクト33からカバーケース32に流入した空気は、第1インクヘッド40Aまたは/および第2インクヘッド40Bに当たってから排気ファン35によりカバーケース32の外部に排気される。カバーケース32に流入した空気が、熱を発するインクヘッド40A,40Bに当たるため、キャリッジカバー31の内部の冷却の効果が高くなる。
【0039】
本実施形態のプリンタ10によると、ダクト出口33cは、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの上端よりも低い位置に配置されている。また、排気ファン35は、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの上端よりも高い位置に配置されている。このことにより、ダクト出口33cと排気ファン35とが同一の高さに配置されている場合に比べ、カバーケース32の内部に形成される気流がより大きい範囲で形成される。また、ダクト出口33cから流入した空気がより多く第1インクヘッド40Aまたは/および第2インクヘッド40Bに当たるため、キャリッジカバー31の内部の冷却の効果が高くなる。
【0040】
本実施形態のプリンタ10によると、ダクト33の空気流路33bの上下方向と、前壁32Fの上下方向と、は互いに平行に配置されており、かつ空気流路33bと前壁32Fとが隣接して設けられている。本実施形態では、排気ファン35が第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの後方に配置されているため、ダクト33がより前方に配置されている方が、カバーケース32の内部に気流が形成される範囲が大きくなる。したがって、ダクト33が前壁32Fに隣接して配置されていることにより、カバーケース32の内部に気流が形成される範囲が比較的大きくなっている。したがって、キャリッジカバー31の内部の冷却の効果が高くなる。
【0041】
本実施形態のプリンタ10によると、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bは、冷却フィン44を備えている。冷却フィン44は、熱伝導率の高い材料によって形成されている。したがって、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bが発する熱は、冷却フィン44により、空気中に放出される。このことにより、第1インクヘッド40Aおよび第2インクヘッド40Bの温度上昇が防止される。
【0042】
本実施形態のプリンタ10によると、キャリッジカバー31の外部に制御基板81が配置されている。本実施形態では、制御基板81の上下方向の中心と、排気ファン35の上下方向の中心と、が一致し、かつ制御基板81の左右方向の中心と、排気ファン35の左右方向の中心と、が一致している。また、制御基板81は、排気ファン35が形成する空気の流れの下流側に配置されている。このことより、制御基板81が発する熱が、排気ファンの形成する風により冷却される。したがって、キャリッジカバー31の冷却と同時に制御基板81の冷却を行うことができる。また、制御基板81がキャリッジカバー31の内部に配置されていると、カバーケース32の内部に形成される気流を妨げる障害物となる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、制御基板81は、キャリッジカバー31の外部に配置されているため、カバーケース32の内部に形成される気流を妨げない。
【0043】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上述した実施形態に限定されない。
【0044】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えば、記録媒体を載置台の上に載置し、載置台を副走査方向Xに搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、載置台に対してキャリッジ30を主走査方向Y及び副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 プリンタ
11 記録媒体
30 キャリッジ
31 キャリッジカバー
31U 上壁
32F 前壁(側壁)
31R 右壁(側壁)
31L 左壁(側壁)
31Rr後壁(側壁)
32 カバーケース
33 ダクト
33a ダクト入口
33b 空気流路
33c ダクト出口
35 排気ファン
40 インクヘッド
65、66 光照射装置