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特開2024-3877半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003877
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240109BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L25/04 C
H01L23/28 K
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103201
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市田 英之
【テーマコード(参考)】
4M109
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA02
4M109DB10
4M109GA05
5F136BA03
5F136DA26
5F136DA27
5F136EA27
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
5H770PA11
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
(57)【要約】
【課題】ベース部材に対してケース部材が接着される半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法において、ベース部材に対してケース部材が剥離することを抑止する。
【解決手段】電力変換装置Aであって、半導体チップ4が実装された絶縁回路基板3と、絶縁回路基板3を支持する放熱器1と、放熱器1に接着層20を介して接着される樹脂製の樹脂ケース2とを備え、樹脂ケース2は、接着層20と接触する接着面2bを有し、接着面2bの少なくとも一部が、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面よりも粗面化された粗面化接着面30である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が実装された基板と、
前記基板を支持するベース部材と、
前記ベース部材に接着層を介して接着される樹脂製のケース部材と
を備え、
前記ケース部材は、前記接着層と接触する接着面を有し、
前記接着面の少なくとも一部は、前記接着面と異なる前記ケース部材の表面よりも粗面化された粗面化接着面である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記粗面化接着面は、複数の窪みを有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ケース部材は、複数のガラスフィラーが含有されていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記粗面化接着面は、前記接着面と異なる前記ケース部材の表面よりも前記ガラスフィラーの露出割合が高いことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接着層は、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から形成されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記粗面化接着面は、前記接着面をレーザ加工により粗面化することで形成されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ケース部材は、前記接着面として直線状に延伸する直線状接着面を有し、
前記直線状接着面の延伸方向における両端部が少なくとも前記粗面化接着面である
ことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項8】
前記直線状接着面の延伸方向における中央部に前記粗面化接着面よりも平坦な平坦面が設けられていることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
請求項1または2記載の半導体装置を含むことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
ベース部材に対して樹脂製のケース部材を接着層により接着するケース部材接着工程と、
前記ベース部材に基板及び半導体素子を配置する配置工程と、
前記基板及び前記半導体素子をロウ材により接合するリフロー工程と
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ケース部材接着工程よりも前に行う粗面化工程を有し、
前記粗面化工程にて、前記ケース部材の前記接着層と接触する接着面の少なくとも一部を、前記接着面と異なる前記ケース部材の表面よりも粗面化された粗面化接着面とする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記粗面化工程にて、前記粗面化接着面に複数の窪みを形成することを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ケース部材に対してガラスフィラーが含有されていることを特徴とする請求項10または11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記粗面化工程にて、前記接着面と異なる前記ケース部材の表面よりも前記粗面化接着面における前記ガラスフィラーの露出割合を高くすることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記ケース部材接着工程にて、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から前記接着層を形成することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記粗面化工程にて、前記接着面をレーザ加工により粗面化することで前記粗面化接着面を形成することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ケース部材は、前記接着面として直線状に延伸する直線状接着面を有し、
前記粗面化工程にて、前記直線状接着面の延伸方向における両端部を少なくとも前記粗面化接着面とする
ことを特徴とする請求項10または11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記粗面化工程にて、前記直線状接着面の延伸方向における中央部に前記粗面化接着面よりも平坦な平坦面を設けることを特徴とする請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、半導体素子が搭載された絶縁基板の裏面にベース部材板が接合されたパワーモジュールが開示されている。特許文献1に開示されたパワーモジュールは、底面がベース部材板の表面と接するケース部材を備えている。このケース部材は、絶縁基板を取り囲む。さらに、特許文献1においては、ケース部材の底面に、ベース部材板の外周側へ向かうほどベース部材板の表面から遠ざかる傾斜面が設けられている。特許文献1に開示されたパワーモジュールでは、ベース部材板と傾斜面との間に充填された接着部材によりベース部材板とケース部材とが接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6399272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、ケース部材の底面に傾斜面を設けることで、車両搭載時の熱サイクルによってケース部材が取り囲む領域に充填される充填部材と接着部材とが剥離することを抑制する。しかしながら、特許文献1に開示されたパワーモジュール等の半導体素子を備える半導体装置は、いわゆるリフロー工程を経て製造される。リフロー工程における温度は、車両搭載時における温度よりも高い。特許文献1に開示された構造では、リフロー工程における温度が高い場合には、ベース部材に対してケース部材が剥離する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ベース部材に対してケース部材が接着される半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法において、ベース部材に対してケース部材が剥離することを抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、半導体装置であって、半導体素子が実装された基板と、上記基板を支持するベース部材と、上記ベース部材に接着層を介して接着される樹脂製のケース部材とを備え、上記ケース部材が、上記接着層と接触する接着面を有し、上記接着面の少なくとも一部は、上記接着面と異なる上記ケース部材の表面よりも粗面化された粗面化接着面であるという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、ベース部材に対して樹脂製のケース部材を接着層により接着するケース部材接着工程と、上記ベース部材に基板及び半導体素子を配置する配置工程と、上記基板及び上記半導体素子をロウ材により接合するリフロー工程とを有する半導体装置の製造方法であって、上記ケース部材接着工程よりも前に行う粗面化工程を有し、上記粗面化工程にて、上記ケース部材の上記接着層と接触する接着面の少なくとも一部を、上記接着面と異なる上記ケース部材の表面よりも粗面化された粗面化接着面とするという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケース部材の接着面の少なくとも一部が粗面化される。このため、接着面が粗面化されていない場合と比較して、ケース部材とベース部材との接着強度が向上する。したがって、本発明によれば、ベース部材に対してケース部材が接着される半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法において、ベース部材に対してケース部材が剥離することを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態における電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
図2】本発明の第1実施形態の電力変換装置のパワーデバイスを含む模式的な部分拡大断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の電力変換装置の樹脂ケースが有する接着面を含む拡大図である。
図4】本発明の第1実施形態の電力変換装置の樹脂ケースが有する接着面に設けられた凹部の模式的な拡大図である。
図5】本発明の第1実施形態の電力変換装置の製造方法を説明するための模式図である。
図6】本発明の第1実施形態の電力変換装置の製造方法を説明するための模式図である。
図7】本発明の第2実施形態の電力変換装置が備える樹脂ケースの下面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る半導体装置、電力変換装置及び半導体装置の製造方法の一実施形態について説明する。以下の実施形態においては、本発明に係る半導体装置を電力変換装置に適用した例について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の電力変換装置Aの電気的な概略構成を示す回路図である。本実施形態の電力変換装置Aは、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されるPCU(パワーコントロールユニット)であり、昇降圧回路E1及び2つのインバータ回路(第1インバータ回路E2と第2インバータ回路E3)を備えている。また、本実施形態の電力変換装置Aは、昇降圧回路E1と2つのインバータ回路や、インバータ回路とモータを接続するバスバーB(配線)を備えている。
【0013】
このような本実施形態の電力変換装置Aは、バッテリから供給された電力を三相交流電力に変換してモータに供給する。また、電力変換装置Aは、モータからの回生電力をバッテリに供給する。
【0014】
図1に示すように、昇降圧回路E1は、4つのパワーデバイスDと、コンデンサCと、リアクトルLとを備えている。また、第1インバータ回路E2は、6つのパワーデバイスDを備えている。また、第2インバータ回路E3は、6つのパワーデバイスDを備えている。
【0015】
各々のパワーデバイスDは、パワートランジスタを有している。これらのパワートランジスタは、半導体チップ4(図2参照)に形成され、絶縁回路基板3(図2参照)に実装されている。なお、本実施形態においては、1つのパワーデバイスDが1つのパワートランジスタを備える例について説明する。しかしながら、1つのパワーデバイスDが複数のパワートランジスタを備えてもよい。
【0016】
図2は、1つのパワーデバイスDを含む電力変換装置Aの模式的な部分拡大断面図である。この図に示すように、電力変換装置Aは、放熱器1(ベース部材)と、樹脂ケース2(ケース)と、絶縁回路基板3(基板)と、半導体チップ4(半導体素子)と、外部端子5と、リードフレーム6と、リードワイヤ7と、封止材8とを備えている。なお、本実施形態では、パワーデバイスDは、絶縁回路基板3と、半導体チップ4とで構成されている。
【0017】
放熱器1は、例えばウォータジャケットである。放熱器1は、半導体チップ4等を冷却する。放熱器1は、例えば冷却液が内部に流れており、絶縁回路基板3等を介して半導体チップ4から伝達された熱を冷却液によって回収する。なお、図2においては、放熱器1の一部(天板部)のみを図示している。放熱器1の天板の表面(図2における上面)には樹脂ケース2等が配置されている。一方、天板の裏面(図2における下面)には複数のフィンが形成されている。フィンが形成された天板の裏面側には、例えば冷却液の水路が形成されている。このような放熱器1は、絶縁回路基板3等を支持するベース部材として機能する。
【0018】
樹脂ケース2は、接着層20を介して、放熱器1に接着されている。樹脂ケース2は、パワーデバイスDが収容される開口部2aを有している。樹脂ケース2は、パワーデバイスDの数と同数の開口部2aを有している。各々の開口部2aに対して1つのパワーデバイスDが収容されている。この樹脂ケース2は、バスバーBを保持している。図2に示すように、バスバーBは、リードフレーム6との接合箇所が開口部2aの内側に向けて露出された状態で保持されている。
【0019】
樹脂ケース2は、放熱器1の上面と接着される接着面2bを有している。本実施形態においては、樹脂ケースの放熱器1側の底面が接着面2bである。この接着面2bは、接着層20と接触する面であり、接着層20を介して、放熱器1と接着されている。
【0020】
図3は、接着面2bを含む拡大図である。図3に示すように、接着面2bには、複数の凹部2c(窪み)が形成されている。凹部2cが設けられた領域は、凹部2cが設けられていない領域と比較して粗面化されている。このような粗面化された接着面2bを粗面化接着面30と称する。本実施形態においては、接着面2bの全面に対して凹部2cが設けられている。つまり、本実施形態においては、接着面2bの全体が、粗面化された粗面化接着面30である。
【0021】
粗面化接着面30は、樹脂ケース2の接着面2bと異なる表面(例えば、図2に示す樹脂ケース2の外壁面2dや内壁面2e)よりも粗面化された面である。なお、ここで言う粗面化とは、算術平均粗さ、最大高さ、十点平均高さの値を大きくすることのみならず、図3に示すような複数の凹部2cを形成することも含む。
【0022】
凹部2cは、後述するように、樹脂ケース2の接着面2bに対してレーザを照射するレーザ加工によって形成される。レーザ加工を行う場合には、接着面2bの一部がレーザ照射により溶融し、溶融跡が凹部2cとなる。なお、凹部2cの形成方法は、本実施形態のようなレーザ加工に限定されるものではない。例えば、ブラスト処理等によって凹部2cを形成してもよい。
【0023】
このような凹部2cは、本実施形態においては、接着面2bに対して密に配置されている。ただし、凹部2c同士が離れて配置されるように凹部2cを形成してもよい。凹部2cの直径は、例えば数十μm~数百μmである。また、凹部2cの深さは、例えば数μm~数百μmである。なお、本実施形態においては、全ての凹部2cの直径及び深さは同一である。しかしながら、異なる直径の凹部2cを備えてもよい。また、異なる深さの凹部2cを備えてもよい。
【0024】
また、本実施形態において樹脂ケース2は、図4に示すガラスフィラー2fが含有された高耐熱性樹脂により形成されている。図4は、1つの凹部2cの模式的な拡大図である。図4に示すように、凹部2cの内壁面には、多数のガラスフィラー2fが露出されている。凹部2cの内壁面のガラスフィラー2fの露出割合は、凹部2cが設けられていない部分と比較して大きい。ここで言う露出割合とは、表面の単位面積あたりにおけるガラスフィラー2fの露出量を意味する。つまり、凹部2cの内壁面は、凹部2cが設けられていない樹脂ケース2の表面と比較して、表面の単位面積あたりにおけるガラスフィラー2fの露出量が多い。このように、多数のガラスフィラー2fが露出されることで、凹部2cの内壁面(すなわち粗面化接着面30)がより粗くなり、粗面化接着面30の粗面化がさらに促進されている。
【0025】
ガラスの溶融温度は、樹脂ケース2を形成する樹脂よりも高温である。このため、上述のように凹部2cをレーザ加工にて形成する場合に、樹脂が溶融してもガラスフィラー2fは溶融しない。この結果、凹部2cの形成範囲に位置するガラスフィラー2fが図4に示すように外部に露出され、凹部2cの内壁面におけるガラスフィラー2fの露出割合が大きくなる。
【0026】
このような凹部2cをレーザ加工にて形成する場合には、例えば炭酸ガスレーザを用いることができる。より具体的には、波長が10600nmの炭酸ガスレーザを用いることができる。このような炭酸ガスレーザは、波長が遠赤外線であるため樹脂へのエネルギ吸収が良く、樹脂ケース2に照射した場合に効率良く熱を発生させることができる。このため、樹脂を熱溶融させて、ガラスフィラー2fを露出させることが可能となる。
【0027】
また、樹脂ケース2がガラスフィラー2fを含む場合には、接着層20は、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から形成されているとよい。シランカップリング剤を含むシリコーン接着剤を用いると、樹脂ケース2を放熱器1に接着するときに、シランカップリング剤の加水分解が起こり、シラノール基が生成される。生成されたシラノール基は、ガラスフィラー2fの表面の水酸基に吸着して水素結合し、さらに脱水反応が進むことで共有結合を形成する。この結果、接着層20と樹脂ケース2との接着強度が向上し、さらには樹脂ケース2と放熱器1の接着強度も向上する。
【0028】
このように、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から形成された接着層20に対して引張試験を行ったところ、界面破壊が生じることなく、凝集破壊が生じた。この結果から、接着層20と樹脂ケース2との接着強度が向上されていることが分かった。
【0029】
なお、上述のようなシリコーン接着剤に含まれるシランカップリング剤としては、例として、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス (2-メトキシエトキシ ) シラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることができる。また、シリコーン樹脂側の官能基は例えばビニル基であり、ガラスフィラー2f側の官能基は例えばエトキシ基、メトキシ基である。
【0030】
このような粗面化接着面30が接着層20を介して放熱器1に接着される樹脂ケース2は、接着面2bと接着層20との接触面積の増大によって、放熱器1に強固に接着される。また、粗面化接着面30の凹部2cに接着層20が入り込むことによるアンカー効果によって、より樹脂ケース2と放熱器1との接着強度が向上される。さらに、樹脂ケース2に含まれるガラスフィラー2fの成分と接着層20の成分とが共有結合されることで、さらに樹脂ケース2と放熱器1との接着強度が向上される。
【0031】
図2に戻り、絶縁回路基板3は、絶縁性セラミックス基板と、絶縁性セラミックス基板の両面に形成された金属層とを有する。絶縁性セラミックス基板の表側(図2における上面)に形成された金属層は、半導体チップ4と電気的に接続され、導電回路の一部を形成する。絶縁性セラミックス基板の裏側(図2における下面)に形成された金属層は、半導体チップ4等から伝わる熱を放熱器1に伝達する伝熱路の一部を形成する。
【0032】
絶縁性セラミックス基板は、例えば、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコン系セラミックス(SiNi)によって形成することができる。また、金属層は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)によって形成することができる。
【0033】
半導体チップ4は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体素子が形成されたチップである。半導体チップ4は、絶縁回路基板3上に実装されている。本実施形態においては、1つの絶縁回路基板3に対して、1つの半導体チップ4が実装されている。なお、1つの絶縁回路基板3に対して複数の半導体チップ4が実装されていてもよい。半導体チップ4は、シリコン(Si)半導体を用いて形成することができる。また、半導体チップ4は、炭化ケイ素(SiC)半導体、窒化ガリウム(GaN)半導体等のワイドギャップ半導体を用いて形成することも可能である。
【0034】
外部端子5は、樹脂ケース2に対して保持されている。外部端子5は、複数設けられており、各々がリードワイヤ7を介して半導体チップ4に接続されている。これらの外部端子5を介して外部から半導体チップ4が制御される。
【0035】
リードフレーム6は、パワーデバイスDとバスバーBとを接続する板状の導電部材である。本実施形態においては、2つのリードフレーム6が1つのパワーデバイスDに対して接続されている。なお、1つのパワーデバイスDに対して接続されるリードフレーム6の数は、変更することができる。これらのリードフレーム6は、制御信号が流れるリードワイヤ7と比較して、大きな電流が流れる導電部材である。
【0036】
なお、図2においては、リードフレーム6は、半導体チップ4とバスバーBとに接続されている。しかしながら、リードフレーム6は、絶縁回路基板3とバスバーBとを接続してもよい。
【0037】
リードワイヤ7は、半導体チップ4と外部端子5とを接続する導電部材である。つまり、半導体チップ4と外部端子5とは、いわゆるワイヤボンディングによって電気的に接続されている。
【0038】
封止材8は、樹脂ケース2の開口部2aの内部に充填されている。封止材8は、絶縁回路基板3及び半導体チップ4等を覆い、絶縁回路基板3及び半導体チップ4等が空気等に触れることを抑止する。この封止材8は、例えば、シリコーンゲルによって形成することができる。
【0039】
また、本実施形態の電力変換装置Aには、ロウ材である半田21が各所に設けられている。具体的には、図2に示すように、リードフレーム6とバスバーBとの接合箇所に半田21が設けられている。つまり、リードフレーム6とバスバーBとは、半田21を用いて接合されている。また、リードフレーム6と半導体チップ4との接合箇所に半田21が設けられている。つまり、リードフレーム6と半導体チップ4とは、半田21を用いて接合されている。
【0040】
また、半導体チップ4と絶縁回路基板3との間に半田21が設けられている。つまり、半導体チップ4と絶縁回路基板3とは、半田21を用いて接合されている。また、絶縁回路基板3と放熱器1との間に半田21が設けられている。つまり、絶縁回路基板3と放熱器1とは、半田21を用いて接合されている。
【0041】
また、図2においては省略されているが、リードワイヤ7と外部端子5も半田を用いて接合されている。また、リードワイヤ7と半導体チップ4も半田を用いて接合されている。
【0042】
続いて、図5及び図6を参照して、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法について説明する。図5及び図6は、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法を説明するための工程図である。
【0043】
まず、図5(a)に示すように、樹脂ケース2の接着面2bを粗面化する粗面化工程を行う。粗面化工程は、樹脂ケース2の接着面2bの一部あるいは全域に対してレーザXを照射することで粗面化接着面30を形成する工程である。なお、本実施形態においては、接着面2bの全域に対してレーザXを照射することで、接着面2bの全域を粗面化接着面30とする。
【0044】
レーザXが接着面2bに照射されると、レーザXが照射された樹脂ケース2の一部が溶融して凹部2cが形成される(図3参照)。このような凹部2cを多数形成することで、接着面2bを粗面化する。なお、樹脂ケース2に含まれるガラスフィラー2fは、レーザXの照射により溶融しない。このため、レーザ加工により凹部2cを形成した場合には、凹部2cの形成前に樹脂ケース2に埋没したガラスフィラー2fが、凹部2cの形成後に凹部2cの内壁面に露出する。このため、レーザ加工によって粗面化接着面30が、樹脂ケース2がガラスフィラー2fを含まない場合よりもさらに粗面化される。
【0045】
続いて、図5(b)に示すように、放熱器1に対して樹脂ケース2を接着層20により接着する樹脂ケース接着工程(ケース部材接着工程)を行う。樹脂ケース接着工程では、樹脂ケース2の接着面2b及び放熱器1の上面の少なくともいずれかに対して、シランカップリング剤が含まれるシリコーン接着剤を塗布し、放熱器1と樹脂ケース2とを接着後にシリコーン接着剤を硬化させる。シリコーン接着剤が硬化することで接着層20が形成される。
【0046】
シリコーン接着剤は、樹脂ケース2の接着面2b(粗面化接着面30)と接触した場合に、凹部2cに対して入り込む。つまり、粗面化接着面30の凹部2cは、シリコーン接着剤によって埋設される。この結果、粗面化接着面30の凹部2cを埋設する接着層20が形成される。また、上述のように、シリコーン接着剤(接着層20)に含まれるシランカップリング剤がガラスフィラー2fの成分と共有結合する。このため、接着層20と樹脂ケース2とは強固に固着される。
【0047】
続いて、図6(a)に示すように、放熱器1に絶縁回路基板3及び半導体チップ4を配置する配置工程を行う。配置工程では、樹脂ケース2に設けられた開口部2aの内側、すなわち樹脂ケース2に囲まれた領域に絶縁回路基板3及び半導体チップ4を配置する。図6(a)に示すように、絶縁回路基板3は、半田シート22を介して放熱器1上に配置される。また、半導体チップ4は、半田シート22を介して絶縁回路基板3上に配置される。
【0048】
また、配置工程では、リードフレーム6も配置される。リードフレーム6は、一端が半田シート22を介して半導体チップ4上に配置される。また、リードフレーム6は、他端が半田片23を介してバスバーBと接続される。なお、配置工程では、リードワイヤ7を設置してもよい。また、リードワイヤ7は、後述するリフロー工程後に行ってもよい。
【0049】
続いて、図6(b)に示すように、絶縁回路基板3及び半導体チップを半田21により接合するリフロー工程を行う。リフロー工程では、上述の半田シート22及び半田片23を高温環境で溶融させ、その後に硬化させることで半田21を形成する。このリフロー工程によって、絶縁回路基板3が放熱器1に対して接合される。また、半導体チップ4が絶縁回路基板3に接合される。また、リードフレーム6が半導体チップ4及びバスバーBに接合される。その後、樹脂ケース2の開口部2aに封止材8を設ける。
【0050】
以上のような本実施形態の電力変換装置Aは、絶縁回路基板3と、放熱器1と、樹脂ケース2とを備える。絶縁回路基板3は、半導体チップ4が実装されている。放熱器1は、 絶縁回路基板3を支持する。樹脂ケース2は、樹脂製であり、放熱器1に接着層20を介して接着される。また、樹脂ケース2は、接着層20と接触する接着面2bを有する。接着面2bは、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面(外壁面2dや内壁面2e)よりも粗面化された粗面化接着面30である。
【0051】
本実施形態の電力変換装置Aによれば、樹脂ケース2の接着面2bが粗面化される。このため、接着面2bが粗面化されていない場合と比較して、樹脂ケース2と放熱器1との接着強度が向上する。したがって、本実施形態の電力変換装置Aによれば、放熱器1に対して樹脂ケース2が剥離することを抑止することができる。
【0052】
このように放熱器1に対して樹脂ケース2の剥離を抑止できるため、剥離した箇所から樹脂ケース2の開口部2aの内側に外気や水が侵入することを長期に亘って防止できる。このため、絶縁回路基板3や半導体チップ4が外気や水に接触することを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいては、粗面化接着面30が、複数の凹部2cを有する。このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、粗面化接着面30と接着層20との接着面積が凹部2cを設けない場合と比較して増大し、粗面化接着面30と接着層20との接着強度を向上させることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいて、樹脂ケース2は、複数のガラスフィラー2fが含有されている。樹脂ケース2がガラスフィラー2fを含有することで、樹脂ケース2の強度及び耐熱性を、ガラスフィラー2fを含有しない場合よりも向上させることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいて、粗面化接着面30は、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面よりもガラスフィラー2fの露出割合が高い。このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、ガラスフィラー2fを用いて粗面化接着面30を粗面化することができる。例えば、上述のような凹部2cを設けない場合であっても、接着面2bのガラスフィラー2fの露出割合を、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面よりも高めることで、接着面2bを粗面化接着面30とすることができる。
【0056】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいて接着層20は、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から形成されている。このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、共有結合が形成され、接着層20と樹脂ケース2との接着強度が向上し、さらには樹脂ケース2と放熱器1の接着強度も向上する。
【0057】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいては、粗面化接着面30は、接着面2bをレーザ加工により粗面化することで形成されている。レーザ加工により、凹部2cを形成することで接着面2bを粗面化接着面30とすることができる。また、レーザ加工により、樹脂ケース2を溶融させてガラスフィラー2fを露出させることで接着面2bを粗面化接着面30とすることができる。
【0058】
また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法は、樹脂ケース接着工程と、配置工程と、リフロー工程とを有する。樹脂ケース接着工程は、放熱器1に対して樹脂製の樹脂ケース2を接着層20により接着する。配置工程は、放熱器1に絶縁回路基板3及び半導体チップ4を配置する。リフロー工程は、絶縁回路基板3及び半導体チップ4を半田21により接合する。また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法は、樹脂ケース接着工程よりも前に行う粗面化工程を有する。粗面化工程では、樹脂ケース2の接着層20と接触する接着面2bを、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面よりも粗面化された粗面化接着面30とする。
【0059】
このような本実施形態の電力変換装置Aの製造方法によれば、樹脂ケース2の接着面2bが粗面化される。このため、接着面2bが粗面化されていない場合と比較して、樹脂ケース2と放熱器1との接着強度が向上する。したがって、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法によれば、放熱器1に対して樹脂ケース2が剥離することを抑止することができる。
【0060】
また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法においては、粗面化工程にて、粗面化接着面30に複数の凹部2cを形成する。このような本実施形態の電力変換装置Aの製造方法によれば、粗面化接着面30と接着層20との接着面積が凹部2cを設けない場合と比較して増大し、粗面化接着面30と接着層20との接着強度を向上させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法においては、樹脂ケース2に対してガラスフィラー2fが含有されている。樹脂ケース2がガラスフィラー2fを含有することで、樹脂ケース2の強度及び耐熱性を、ガラスフィラー2fを含有しない場合よりも向上させることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法においては、粗面化工程にて、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面よりも粗面化接着面30におけるガラスフィラー2fの露出割合を高くする。このような本実施形態の電力変換装置Aの製造方法によれば、ガラスフィラー2fを用いて粗面化接着面30を粗面化することができる。例えば、上述のような凹部2cを設けない場合であっても、接着面2bのガラスフィラー2fの露出割合を、接着面2bと異なる樹脂ケース2の表面よりも高めることで、接着面2bを粗面化接着面30とすることができる。
【0063】
また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法においては、樹脂ケース接着工程にて、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から接着層20を形成する。このような本実施形態の電力変換装置Aの製造方法によれば、共有結合が形成され、接着層20と樹脂ケース2との接着強度が向上し、さらには樹脂ケース2と放熱器1の接着強度も向上する。
【0064】
また、本実施形態の電力変換装置Aの製造方法においては、粗面化工程にて、接着面2bをレーザ加工により粗面化することで粗面化接着面30を形成する。レーザ加工により、凹部2cを形成することで接着面2bを粗面化接着面30とすることができる。また、レーザ加工により、樹脂ケース2を溶融させてガラスフィラー2fを露出させることで接着面2bを粗面化接着面30とすることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図7を参照して説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0066】
図7は、本実施形態の電力変換装置が備える樹脂ケース2Aを放熱器1側から見た下面図である。なお、ここでの説明においては、便宜上、樹脂ケース2Aに対して放熱器1側を下側として説明するが、電力変換装置の設置姿勢はこれに限定されるものではない。
【0067】
図7に示すように、樹脂ケース2Aは、下方から見た外形形状が略長方形である枠状に形成されている。この樹脂ケース2Aの下面には、樹脂ケース2Aの長辺方向に沿った長尺な長辺接着面2g(直線状接着面)が設けられている。また、樹脂ケース2Aの下面には、樹脂ケース2Aの短辺方向に沿った短辺接着面2hが設けられている。
【0068】
長辺接着面2g及び短辺接着面2hは、図7に示すように、各々が2つ設けられている。長辺接着面2gは、直線状に延伸する接着面2bであり、短辺接着面2hよりも長い。つまり、短辺接着面2hは、長辺接着面2gよりも短い接着面2bである。これらの長辺接着面2g及び短辺接着面2hは、各々が接着層20を介して放熱器1と接着されている。
【0069】
各々の長辺接着面2gは、延伸方向における両端部が粗面化接着面30である。これらの粗面化接着面30の間の領域は、粗面化されていない接着面2b(平坦面31)である。つまり、本実施形態においては、長辺接着面2gの延伸方向における中央部に平坦面31が設けられている。
【0070】
平坦面31は、粗面化接着面30と比較して平坦な面である。なお、平坦面31における平坦とは、粗面化接着面30と比較して平坦であることを意味し、全く凹凸を有していないことを意味するものではない。本実施形態において、平坦面31の表面粗さは、樹脂ケース2の接着面2bと異なる表面(例えば、図2に示す樹脂ケース2の外壁面2dや内壁面2e)と同一である。
【0071】
このような本実施形態の電力変換装置Aを製造する場合には、粗面化工程にて、長辺接着面2gの両端部を粗面化し、中央部は粗面化しない。これによって、長辺接着面2gは、両端部が粗面化接着面30となり、中央部が平坦面31となる。
【0072】
例えば、図7に示すような外形形状が略長方形の樹脂ケース2Aは、樹脂ケース2Aと放熱器1との線膨張係数の違いに起因して、リフロー工程において長辺方向における両端部が放熱器1から剥離しやすい。これは、上述の線膨張係数の違いにより、放熱器1が樹脂ケース2Aの両端部から離間するように反るためである。これに対して、本実施形態の電力変換装置では、長辺接着面2gの両端部が粗面化接着面30であることから、長辺接着面2gの両端部が放熱器1に対して剥離することを抑止できる。
【0073】
一方で、樹脂ケース2Aの長辺方向における中央部は、上述のように放熱器1が反った場合であっても、放熱器1から離間し難い。このため、長辺接着面2gの中央部が平坦面31であっても、長辺接着面2gの中央部が放熱器1に対して剥離することを抑止できる。このような平坦面31を設けることで、粗面化が必要となる接着面2bの領域が減少し、粗面化工程を簡素化することが可能となる。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態においては、樹脂ケースがガラスフィラー2fを含有する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ガラスフィラー2fを含まない樹脂ケースを用いることも可能である。このような場合には、ブラスト処理等によって接着面2bの一部あるいは全部を粗面化してもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、樹脂ケースが接着されるベース部材が放熱器1である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。放熱器1と異なるベース部材に対して樹脂ケースが接着される構成を採用することも可能である。
【0077】
また、上記実施形態においては、本発明の半導体装置を電力変換装置に適用した例、すなわち電力変換装置が半導体装置を含む例について説明した。しかしながら、本発明は、電力変換装置に限定されるものではなく、ケース部材とベース部材とが接着層を介して接着された半導体装置に適用可能である。
【0078】
なお、上記実施形態については、例えば以下の付記のようにも記載できる。
【0079】
(付記1)
半導体素子が実装された基板と、
上記基板を支持するベース部材と、
上記ベース部材に接着層を介して接着される樹脂製のケース部材と
を備え、
上記ケース部材は、上記接着層と接触する接着面を有し、
上記接着面の少なくとも一部は、上記接着面と異なる上記ケース部材の表面よりも粗面化された粗面化接着面である
ことを特徴とする半導体装置。
【0080】
(付記2)
上記粗面化接着面は、複数の窪みを有することを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0081】
(付記3)
上記ケース部材は、複数のガラスフィラーが含有されていることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
【0082】
(付記4)
上記粗面化接着面は、上記接着面と異なる上記ケース部材の表面よりも上記ガラスフィラーの露出割合が高いことを特徴とする付記3記載の半導体装置。
【0083】
(付記5)
上記接着層は、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から形成されていることを特徴とする付記3または4記載の半導体装置。
【0084】
(付記6)
上記粗面化接着面は、上記接着面をレーザ加工により粗面化することで形成されていることを特徴とする付記3~5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0085】
(付記7)
上記ケース部材は、上記接着面として直線状に延伸する直線状接着面を有し、
上記直線状接着面の延伸方向における両端部が少なくとも上記粗面化接着面である
ことを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0086】
(付記8)
上記直線状接着面の延伸方向における中央部に上記粗面化接着面よりも平坦な平坦面が設けられていることを特徴とする付記7記載の半導体装置。
【0087】
(付記9)
付記1~8のいずれか一つに記載の半導体装置を含むことを特徴とする電力変換装置。
【0088】
(付記10)
ベース部材に対して樹脂製のケース部材を接着層により接着するケース部材接着工程と、
上記ベース部材に基板及び半導体素子を配置する配置工程と、
上記基板及び上記半導体素子をロウ材により接合するリフロー工程と
を有する半導体装置の製造方法であって、
上記ケース部材接着工程よりも前に行う粗面化工程を有し、
上記粗面化工程にて、上記ケース部材の上記接着層と接触する接着面の少なくとも一部を、上記接着面と異なる上記ケース部材の表面よりも粗面化された粗面化接着面とする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0089】
(付記11)
上記粗面化工程にて、上記粗面化接着面に複数の窪みを形成することを特徴とする付記10記載の半導体装置の製造方法。
【0090】
(付記12)
上記ケース部材に対してガラスフィラーが含有されていることを特徴とする付記10または11記載の半導体装置の製造方法。
【0091】
(付記13)
上記粗面化工程にて、上記接着面と異なる上記ケース部材の表面よりも上記粗面化接着面における上記ガラスフィラーの露出割合を高くすることを特徴とする付記12記載の半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記14)
上記ケース部材接着工程にて、シランカップリング剤が含まれたシリコーン接着剤から上記接着層を形成することを特徴とする付記12または13記載の半導体装置の製造方法。
【0093】
(付記15)
上記粗面化工程にて、上記接着面をレーザ加工により粗面化することで上記粗面化接着面を形成することを特徴とする付記12~14のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【0094】
(付記16)
上記ケース部材は、上記接着面として直線状に延伸する直線状接着面を有し、
上記粗面化工程にて、上記直線状接着面の延伸方向における両端部を少なくとも上記粗面化接着面とする
ことを特徴とする付記10~15のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【0095】
(付記17)
上記粗面化工程にて、上記直線状接着面の延伸方向における中央部に上記粗面化接着面よりも平坦な平坦面を設けることを特徴とする付記16記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0096】
1……放熱器(ベース部材)、2……樹脂ケース(ケース部材)、2A……樹脂ケース(ケース部材)、2b……接着面、2c……凹部(窪み)、2d……外壁面、2e……内壁面、2f……ガラスフィラー、2g……長辺接着面、2h……短辺接着面、3……絶縁回路基板(基板)、4……半導体チップ(半導体素子)、5……外部端子、6……リードフレーム、7……リードワイヤ、8……封止材、20……接着層、21……半田(ロウ材)、22……半田シート、23……半田片、30……粗面化接着面、31……平坦面、A……電力変換装置、X……レーザ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7