(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038773
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240313BHJP
B61D 47/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B61B13/00 S
B61B13/00 A
B61D47/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143041
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000103426
【氏名又は名称】オークラ輸送機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】冨士井 純一
(72)【発明者】
【氏名】南保 智秋
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BB43
(57)【要約】
【課題】無人搬送車のカメラによる被牽引物のマーカーの認識を安定させることで、無人搬送車と被牽引物の連結の信頼性が向上した無人搬送車を提供する。
【解決手段】連結可能な被連結部17および位置認識用のマーカー19を有する被牽引物12を牽引する無人搬送車10である。無人搬送車10の無人搬送車本体21は、走行面11上を走行する。連結ユニット22は、無人搬送車本体21から外側に突出され、被牽引物12の被連結部17に着脱可能に連結される。カメラ23は、視野の中心軸56を水平方向とするとともに、視野の中心軸56上にマーカー19が位置する高さに配設され、マーカー19を認識する。マーカー処理部は、カメラ23が認識したマーカー19から、無人搬送車本体21と被牽引物12との相対的な位置関係を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結可能な被連結部および位置認識用のマーカーを有する被牽引物を牽引する無人搬送車であって、
走行面上を走行する無人搬送車本体と、
前記無人搬送車本体から外側に突出され、前記被牽引物の前記被連結部に着脱可能に連結される連結ユニットと、
視野の中心軸を水平方向とするとともに、前記視野の中心軸上に前記マーカーが位置する高さに配設され、前記マーカーを認識するカメラと、
前記カメラが認識した前記マーカーから、前記無人搬送車本体と前記被牽引物との相対的な位置関係を推定するマーカー処理部と
を備えることを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記カメラは、前記連結ユニットが前記被牽引物の前記被連結部に連結される際の連結前、連結途中、連結完了後に亘って前記マーカーを認識し続ける
ことを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記連結ユニットは、
前記カメラの前記視野の中心軸と同じ高さに配置され、前記無人搬送車の走行により前記連結ユニットを前記被牽引物に接近させる際に前記被牽引物と当接して前記連結ユニットに対して前記被連結部を位置決めする当接部と、
前記連結ユニットに対して位置決めされた前記被連結部に対して動作することで前記被連結部と連結する連結部とを有し、
前記カメラの視野は、前記当接部が被連結部に当接する前から前記連結部が前記被連結部に連結するまでの間、前記マーカーを認識し続ける
ことを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記連結ユニットは、前記無人搬送車本体に対して昇降する昇降部と、この昇降部に設けられ、前記昇降部の下降位置で前記無人搬送車本体の走行により前記被牽引物の前記被連結部の下方に進入し、前記昇降部の上昇により前記被牽引物の前記被連結部に下方から連結される連結部と、前記無人搬送車本体の走行時に前記被牽引物の前記被連結部と当接可能とする当接部とを有し、
前記当接部は、前記昇降部の下降位置で、前記カメラの前記視野の中心軸と前記マーカーとの結ぶ直線上の高さと同じ高さに配置される
ことを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記カメラは、前記無人搬送車本体の側面から窪んだ凹面に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項6】
前記カメラは、水平方向の視野角よりも垂直方向の視野角が大きい
ことを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被牽引物を牽引する無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載されているように、被牽引物と連結することにより被牽引物を牽引する無人搬送車が知られている。
【0003】
このような無人搬送車では、例えば下記の特許文献2に記載されているように、無人搬送車に設置されたカメラにより被牽引物が有するマーカーを認識し、認識したマーカーから取得した無人搬送車と被牽引物との相対的な位置関係情報を使用することで、無人搬送車と被牽引物を連結することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6629436号公報
【特許文献2】特開2020-17170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の無人搬送車では、連結を実行する際に、無人搬送車のカメラがマーカーを安定して認識することが要請されている。
【0006】
本発明は、無人搬送車のカメラによる被牽引物のマーカーの認識を安定させることで、無人搬送車と被牽引物の連結の信頼性が向上した無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無人搬送車は、連結可能な被連結部および位置認識用のマーカーを有する被牽引物を牽引する無人搬送車であって、走行面上を走行する無人搬送車本体と、前記無人搬送車本体から外側に突出され、前記被牽引物の前記被連結部に着脱可能に連結される連結ユニットと、視野の中心軸を水平方向とするとともに、前記視野の中心軸上に前記マーカーが位置する高さに配設され、前記マーカーを認識するカメラと、前記カメラが認識した前記マーカーから、前記無人搬送車本体と前記被牽引物との相対的な位置関係を推定するマーカー処理部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無人搬送車によれば、無人搬送車のカメラによる被牽引物のマーカーの認識を安定させることで、無人搬送車と被牽引物の連結の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す無人搬送車と被牽引物の連結前を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図2】同上無人搬送車と被牽引物の連結途中を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】同上無人搬送車と被牽引物の連結完了後を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図4】同上無人搬送車の連結ユニットおよびカメラの斜視図である。
【
図5】同上無人搬送車で牽引する被牽引物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1ないし
図3に無人搬送車10を示す。無人搬送車10は、床面などの走行面11上を自動走行(自律走行)する車両であり、被牽引物12が配置された搬送元に移動し、搬送対象の被牽引物12を自動的に連結し、被牽引物12を牽引して搬送先に搬送する。なお、
図1ないし
図3には被牽引物12の連結箇所の一部のみを示し、被牽引物12の全体構成については
図5に示す。
【0012】
まず、被牽引物12について説明する。
図5に示すように、被牽引物12は、走行面11上を走行可能とする例えばカートラックや台車などである。被牽引物12は、長尺状の荷台部14と、この荷台部14の下面側で長手方向の両端および中央の各位置に配設された複数の枠部15と、これら枠部15の下面側に配設された複数の車輪16とを備えている。枠部15は、荷台部14の長手方向に交差する被牽引物12の幅方向に長い四角形筒状に形成されている。
【0013】
被牽引物12の少なくとも一方の端部に位置する枠部15の幅方向の中央域は、無人搬送車10が連結可能とする被連結部17として利用される。この被連結部17には、枠部15の下面の幅方向(左右方向)の中央に四角形状の連結孔である孔部18が設けられている。また、少なくとも一方の端部の枠部15で荷台部14の長手方向に対応した外側の端面15aには、被連結部17の幅方向(左右方向)の中心から一側に所定の距離ずれた位置(オフセット位置)にマーカー19が配設されている。マーカー19は、無人搬送車10が被牽引物12に連結する際に、無人搬送車10が備えるカメラによって無人搬送車10と被牽引物12との相対的な距離・姿勢などの位置関係の認識を可能としたパターンデザインが描かれており、例えばいわゆるARマーカーを使用することができる。マーカー19は、例えばシールであり、枠部15の端面15aに貼り付けることで、容易に認識機能を付加することができる。なお、マーカー19は、被牽引物12の固有ID情報のような識別情報などの読取可能な情報を含むものであってもよく、また、マーカー19とは別に、被牽引物12の識別情報などの読取可能な情報を表示する識別表示があってもよい。
【0014】
次に、無人搬送車10について説明する。
図1ないし
図3に示すように、無人搬送車10は、無人搬送車本体21、この無人搬送車本体21の前進方向に対して反対の後部側にそれぞれ配設された被牽引物12を連結する連結ユニット22およびマーカー19を認識するカメラ23、無人搬送車本体21内にそれぞれ搭載された無人搬送車10を制御する制御装置および電力を供給するバッテリなどを備えている。
【0015】
無人搬送車本体21は、走行部としての幅方向である左右方向の両側に配置される一対の走行輪25と、複数の回転自在なキャスター26とにより走行移動可能とされる。各走行輪25は個別に回転駆動可能な走行輪モータであり、各走行輪モータの回転駆動の制御により、前進、後退、カーブ、スピンなどの各種走行が可能となっている。さらに、無人搬送車本体21には、走行部上に旋回可能に配設された牽引装置を備え、この牽引装置の後部側に連結ユニット22およびカメラ23が配設された構成が含まれる。また、走行部上の牽引装置が360°回転する無人搬送車本体21の場合、被牽引物12を連結する際に、無人搬送車本体21が後退以外に前進する場合もある。
【0016】
また、
図1ないし
図4に示すように、連結ユニット22は、無人搬送車本体21に対して昇降する昇降部28と、この昇降部28に設けられ、昇降部28の下降位置で無人搬送車本体21の後退(被牽引物12に接近する移動)により被牽引物12の枠部15の下方に進入し、昇降部28の上昇により被牽引物12の枠部15(被連結部17)に下方から連結される連結部29と、連結に際しての無人搬送車本体21の後退時に被牽引物12の枠部15の端面15aと当接可能とする当接部30とを有している。
【0017】
昇降部28は、無人搬送車本体21の後部側に配設された上下に長い昇降アーム32を有している。昇降アーム32は、無人搬送車本体21に配設された例えばカムを使用した昇降機構によって垂直方向に沿って昇降可能に支持されている。昇降アーム32は、昇降機構の動作により、連結部29が被牽引物12の枠部15に下方から連結される上昇位置と、連結部29が被牽引物12の枠部15を解放する下降位置とに昇降される。
【0018】
連結部29は、昇降アーム32の下端部に取り付けられ、無人搬送車本体21の後面から後方へ向けて水平に突出される連結アーム34を有している。連結アーム34は、上面部35およびこの上面部35の左右両側から折曲された側面部36を有する断面略コの字形に形成されている。
【0019】
連結アーム34上には、前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38とが前後方向に所定の間隔を空けて配設されている。前側のガイドローラ37は、連結アーム34の左右両側および昇降アーム32の左右両側にそれぞれ取り付けられた前側の支持部材39の間に架設された支持軸40に回転可能に取り付けられている。支持軸40の軸方向は連結部29の左右方向に沿って水平に配置され、この支持軸40を中心として前側のガイドローラ37が回転可能としている。また、後側のガイドローラ38は、連結アーム34の左右両側に取り付けられた後側の支持部材41の間に架設された支持軸42に回転可能に取り付けられている。支持軸42の軸方向は連結部29の左右方向に沿って水平に配置され、この支持軸42を中心として後側のガイドローラ38が回転可能としている。
【0020】
前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38は、それぞれ4つのローラで構成され、2つずつのローラが左右方向に間隔を空けて配置されている。2つずつのローラ間の間隔は前側のガイドローラ37が後側のガイドローラ38よりも広く、前側のガイドローラ37が後側のガイドローラ38よりも左右方向の外側に広がった位置に配置されている。
【0021】
前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38は、連結アーム34の上面から同じ高さ位置に配置されている。前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38は、昇降部28が下降位置に下降した状態で、被牽引物12の枠部15の下面よりも低い位置に配置される。
【0022】
前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38は、昇降部28の上昇により、被牽引物12の枠部15の前後に上昇移動することで、枠部15を前後から挟み込んで連結する。つまり、連結部29は、ガイドローラ37,38で構成されるガイド部により被牽引物12であるカートラックや台車の枠部分をガイドすることで連結を導く。ガイドローラ37,38の周面は、例えばゴムなどの柔軟性を有する材料で形成されている。なお、前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38の間の最短距離は、枠部15の前後方向の幅と略同じまたは少し広くすることができ、また、ガイドローラ37,38は、枠部15または被牽引物12であるカートラックや台車の枠部分を挟持することで被牽引物12と連結しても良く、前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38の間の最短距離は周面の柔軟性の範囲内で枠部15の前後方向の幅よりも少し狭い関係としてもよい。
【0023】
さらに、連結アーム34上には、前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38の間の位置に、連結突部43が上方に向けて突出されている。連結突部43は、前後方向の幅が左右方向の幅よりも小さく、上面側が左右方向に略三角となる形状に形成されている。なお、連結突部43の形状は、孔部18の形状に応じて変更することができる。
【0024】
連結突部43の上端部は、ガイドローラ37,38の上面よりも低く、ガイドローラ37,38の中心よりも高い位置に配置されている。連結突部43は、昇降部28が下降位置に下降した状態で、被牽引物12の枠部15の下面よりも低い位置に配置される。連結突部43は、前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38が被牽引物12の枠部15の前後に上昇移動して枠部15を前後からガイドして位置決めした際に、枠部15の下面の孔部18に下方から挿入される。
【0025】
また、当接部30は、当接ローラ45を備えている。当接ローラ45は、連結アーム34の左右両側および昇降アーム32の左右両側にそれぞれ取り付けられた前側の支持部材39の上端間に架設された支持軸46に回転可能に取り付けられている。支持軸46の軸方向は連結部29の左右方向に沿って水平に配置され、この支持軸46を中心として当接ローラ45が回転可能としている。
【0026】
当接ローラ45は、4つのローラで構成され、2つずつのローラが左右方向に間隔を空けて配置されている。当接ローラ45は、ガイドローラ37,38よりも小径で、ガイドローラ37,38よりも左右方向の内側に寄った位置に配置されている。
【0027】
当接ローラ45は、ガイドローラ37,38よりも連結アーム34の上面からの高さが高い位置で、当接ローラ45の後面側が前側のガイドローラ37の後面側よりも前方でかつ前側のガイドローラ37の中心よりも後方となる位置に配置されている。当接ローラ45は、昇降部28が下降位置に下降した状態で、被牽引物12の枠部15の端面15aと同じ高さ位置であって、枠部15の端面15aに当接可能とする高さ位置に配置される。
【0028】
当接ローラ45の周面は、例えばゴムやウレタンなどの柔軟性を有する材料であって、枠部15の端面15aと当接した際に緩衝作用を有する材料で形成されている。そのため、当接部30は、枠部15の端面15aと当接した際の衝撃を緩衝する緩衝部でもある。
【0029】
なお、
図4に示すように、昇降部28の昇降アーム32は、無人搬送車本体21が備えるカバー48で覆われている。昇降アーム32は、高さが一定のカバー48に対して、カバー48内で昇降可能に配置されている。カバー48には、無人搬送車本体21の側面から窪んだ凹面50であって、無人搬送車本体21の最も後方となる後面49の位置よりも前方に窪んだ凹面50が設けられ、この凹面50に連結部29が後方に突出するとともに昇降可能とする開口部51が設けられている。
【0030】
また、カメラ23は、カメラ筐体53、このカメラ筐体53に配設された撮影部54および赤外線照射部55を備えている。撮影部54は、例えばRGB-IRセンサのような撮像素子、この撮像素子に被写体を集光するレンズなどを備えている。赤外線照射部55は、暗所でも撮影部54での撮影を可能とするために赤外線を照射する。
【0031】
カメラ23は、無人搬送車本体21の最も後方となる後面49の位置よりも前方に窪んだ凹面50に配設されている。カメラ23は、凹面50の連結ユニット22が突出する開口部51の左右方向(水平方向)の一側に配設されている。カメラ23は、カメラ筐体53が縦長となる状態で無人搬送車本体21に配設され、撮影部54が下側に配置され、赤外線照射部55が上側に配置されている。カメラ23は、連結ユニット22が無人搬送車本体21に対して昇降するのに対して、無人搬送車本体21の一定の高さ位置に配設されている。
【0032】
カメラ23は、無人搬送車本体21の後面で、連結ユニット22の左右方向の中心から一側に所定の距離ずれた位置に配設されている。連結ユニット22の左右方向の中心から一側にずれた所定の距離は、被牽引物12のマーカー19が枠部15(被連結部17)の孔部18の左右方向の中心から一側にずれた所定の距離と同じである。そのため、連結ユニット22の左右方向の中心と枠部15(被連結部17)の孔部18の左右方向の中心とが一致する状態では、カメラ23とマーカー19の左右方向の位置が一致される。つまり、カメラ23の視野の中心軸56がマーカー19の左右方向の中心に一致される。
【0033】
カメラ23は、撮影部54の撮像素子の中心に垂直な視野の中心軸56を有し、この視野の中心軸56を中心とする所定の視野角内を撮影可能とする。カメラ23の視野の中心軸56は、水平方向および垂直方向ともに、連結ユニット22の突出方向と平行であり、また、無人搬送車本体21の後方へ向けた水平方向であって走行面11と平行な方向である。走行面11からの視野の中心軸56の高さは、走行面11からの被牽引物12のマーカー19の中心の高さと一致しており、視野の中心軸56の延長上にマーカー19の中心が位置していることになる。
【0034】
換言すれば、カメラ23の視野の中心軸56がマーカー19に垂直となる無人搬送車本体21の位置で、連結ユニット22の連結部29の左右方向の中心と被牽引物12の被連結部17および孔部18の左右方向の中心とが一致する位置関係となる。
【0035】
なお、ここでいう一致とは、厳密な一致を要するわけではなく、カメラ23の視野の中央付近で認識に支障が無い範囲内にマーカー19が含まれる位置であることを含みうる。
【0036】
カメラ23の画角は例えば16:9となる長方形で、画角の長手方向が上下方向となるように配設されており、垂直方向の視野角(
図1ないし
図3に垂直方向の視野角の範囲をyで示す)が水平方向の視野角(
図1ないし
図3に水平方向の視野角の範囲をxで示す)よりも大きい関係にある。
【0037】
また、無人搬送車10の制御装置は、カメラ23による被牽引物12のマーカー19の認識に基づいて、無人搬送車10と被牽引物12との相対的な位置関係を推定するマーカー処理部と、走行輪25の駆動を制御して被牽引物12の搬送元と搬送先との間を含む走行面11上で無人搬送車10を自動走行させる走行制御部と、連結部29の動作を制御して無人搬送車10による被牽引物12との連結を制御する連結制御部との機能を備えている。
【0038】
次に、無人搬送車10の動作について説明する。
【0039】
図1は、無人搬送車10が、被牽引物12を連結する前の状態、または被牽引物12から連結を解放した後の状態を示す。
【0040】
この状態では、連結ユニット22の昇降部28が下降位置に下降し、連結部29のガイドローラ37,38および連結突部43が被牽引物12の枠部15よりも低い位置にある。また、カメラ23の視野の中心軸56の高さは被牽引物12のマーカー19の高さと一致する位置にある。
【0041】
そして、
図1に示すように、無人搬送車10は、被牽引物12の搬送元の場所において、被牽引物12の被連結部17側の枠部15の端面15aに対向する位置に移動し、無人搬送車10の後面側を被牽引物12に対向させる。これにより、カメラ23の視野内に被牽引物12のマーカー19が入り、カメラ23がマーカー19を認識することにより、無人搬送車10と被牽引物12との相対的な位置関係を推定する。
【0042】
無人搬送車10は、被牽引物12に接近するように後退しながら、被牽引物12との位置関係に基づいて、カメラ23の視野の中心軸56がマーカー19に一致するとともにマーカー19に対して垂直となるように後退する位置や向きを修正する。
【0043】
無人搬送車10の後退により、
図2に示すように、連結ユニット22の連結部29が被牽引物12の枠部15の下方に進入する。この無人搬送車10の後退中も、カメラ23がマーカー19を認識し続ける。
【0044】
カメラ23によるマーカー19の認識に基づいて、無人搬送車10と被牽引物12の距離が所定の距離に達したら、無人搬送車10の後退を停止する。このときの無人搬送車10の後退を停止する位置は、連結部29の前後のガイドローラ37,38間が被牽引物12の枠部15の下方に位置であって、連結部29が上昇することで被牽引物12の枠部15に連結可能とする位置である。
【0045】
無人搬送車10が停止する際に、後退し過ぎた場合、
図2に示すように、当接部30の当接ローラ45が被牽引物12の枠部15の端面15aに当接することがある。この当接により、連結部29が被牽引物12の枠部15に対して連結可能な位置から外れることのないように位置決めする。当接部30の当接ローラ45は、緩衝作用を有するため、当接ローラ45との衝突の反動で被牽引物12が無人搬送車10から離れる方向に大きく移動して連結位置からずれるのを防止できる。なお、無人搬送車10が被牽引物12に接近する後退動作において、恒常的に当接ローラ45に被牽引物が当接するまで接近させるようにしてもよい。
【0046】
続いて、
図3に示すように、無人搬送車10は、連結ユニット22の昇降部28とともに連結部29を上昇位置に上昇させる。連結部29の上昇により、前側のガイドローラ37と後側のガイドローラ38が被牽引物12の枠部15の前後に上昇移動し、枠部15を前後からガイドして連結する。このとき、前後のガイドローラ37,38が枠部15の前後の下端側から接触して回転しながら枠部15を前後から挟み込むため、前後のガイドローラ37,38間と枠部15の前後位置とが前後方向に多少ずれていたとしても安定して連結することができる。
【0047】
図2に示したように、当接部30の当接ローラ45が被牽引物12の枠部15の端面15aに当接する状態で連結部29が上昇した場合には、当接ローラ45が枠部15の端面15aに対して回動しながら上昇し、さらに、前側のガイドローラ37の周面が枠部15の端面15a側の下端部に当接する。このとき、当接ローラ45の後面側が前側のガイドローラ37の後面側よりも前方でかつ前側のガイドローラ37の中心よりも後方となる位置に配置されているため、上昇する前側のガイドローラ37の周面が枠部15の端面15a側の下端部に当接することで、前側のガイドローラ37が回転しながら枠部15を後側のガイドローラ38側に押すようにして被牽引物12を移動させ、上昇する前後のガイドローラ37,38で枠部15をガイドして連結することができる。
【0048】
連結部29の上昇時に、前後のガイドローラ37,38が枠部15の前後に上昇移動することにより、連結突部43と枠部15の孔部18との前後方向の位置が位置決めされる。また、無人搬送車10の連結のための後退時に、カメラ23によるマーカー19の認識に基づいて、無人搬送車10の連結ユニット22と被牽引物12の被連結部17との左右方向の位置が位置決めされているため、連結突部43と枠部15の孔部18との左右方向の位置が位置決めされている。そのため、連結部29の上昇に伴って、連結突部43が枠部15の孔部18に下方から挿入され、枠部15に連結される。このとき、連結突部43の上端側が左右方向に略三角形状に形成されているため、その頂部が枠部15の孔部18に挿入されれば、連結突部43と枠部15の孔部18とが左右方向に多少ずれていたとしても、連結突部43が枠部15の孔部18に挿入される。連結突部43が枠部15の孔部18に挿入されることにより、無人搬送車10と被牽引物12との左右方向の位置が位置決め保持される。
【0049】
そして、被牽引物12を連結した無人搬送車10が前進し、被牽引物12を牽引して搬送先に移動する。
【0050】
また、無人搬送車10により被牽引物12を搬送先に搬送した後、無人搬送車10は被牽引物12との連結を解放する。
【0051】
無人搬送車10は、連結ユニット22の昇降部28とともに連結部29を下降位置に下降させる。連結部29の下降により、前後のガイドローラ37,38が枠部15に対して回転しながらスムーズに下降して枠部15から外れて連結を解放する。また、連結突部43が枠部15の孔部18から下方に外れて連結を解放する。
【0052】
連結の開放後、無人搬送車10が前進(被牽引物12から離反する移動)し、連結ユニット22の連結部29が被牽引物12の枠部15の下方から外れる。
【0053】
このように、本実施形態の無人搬送車10では、被連結部17の一側にずれた位置にマーカー19を有する被連結物12を対象とし、カメラ23が、無人搬送車本体21の後面で、連結ユニット22の左右方向の中心から一側にずれた位置に配設され、さらに、カメラ23の視野の中心軸56が無人搬送車本体21の後方へ向けた水平方向とするとともに、視野の中心軸56上に被牽引物12のマーカー19の中心が位置するため、カメラ23の視野中央付近で被牽引物12のマーカー19のずれ認識が容易となり、被牽引物12を確実に連結できる。
【0054】
すなわち、カメラ23は、連結ユニット22が被牽引物12の被連結部17に連結される際の連結前、連結途中、連結完了後に亘ってマーカー19を認識し続けることができるため、無人搬送車10と被牽引物12との位置関係を推定し続け、必要に応じて位置ずれを修正し、無人搬送車10で被牽引物12を確実に連結できる。
【0055】
しかも、連結時に上昇する連結部29が被牽引物12の枠部15正常に連結できず、被牽引物12の枠部15を浮き上がらせてしまった場合でも、走行面11から一定の高さ位置に配設されているカメラ23でマーカー19が上方に移動したことを認識することによって連結不良を検知でき、連結のやり直しなどの対応が可能となる。
【0056】
カメラ23の視野の中心軸56が無人搬送車10の後方へ向けた水平方向とするとともに、走行面11からの視野の中心軸56の高さが走行面11からの被牽引物12のマーカー19の中心の高さと一致するため、無人搬送車10が連結のために後退移動しても、カメラ23の視野内でのマーカー19の移動が水平方向のみでその移動量も少なく、マーカー19を認識する補正処理が簡単になり、マーカー19の認識が容易となる。
【0057】
被牽引物12の被連結部17の一側にマーカー19が配設され、連結ユニット22の一側にカメラ23が配設されるため、被連結部17とマーカー19が近い位置に配置されることから、連結ユニット22と被連結部17が接近するにつれてカメラ23の視野中央付近でマーカー19が大きく認識されることになり、マーカー19を基準とした位置ずれが判明しやすく、連結ユニット22が被牽引物12の被連結部17の位置に確実に連結できる。
【0058】
したがって、本実施形態の無人搬送車10では、カメラ23による被牽引物12のマーカー19の認識が安定することで、被牽引物12の連結の信頼性が向上し、無人搬送車10と被牽引物12を確実に連結できる。
【0059】
また、連結ユニット22の当接部30は、昇降部28の下降位置で、カメラ23の視野の中心軸56とマーカー19との結ぶ直線上の高さと同じ高さに配置されるため、言い換えれば、カメラ23の視野の中心軸56が、被連結部17と当接可能とする当接部30と同じ高さにあって、マーカー19に一致する高さに配置されることになるため、これらが同一軸線上に位置し、マーカー19を基準として無人搬送車10が被連結部17へ接近移動させる動作の中で確実に被連結部17を当接部30に当接させることができる。
【0060】
また、カメラ23は、無人搬送車本体21の最も後方の後面49の位置よりも前方に窪んだ凹面50に設けられているため、無人搬送車本体21が被牽引物12に接近した際に、カメラ23とマーカー19が接近し過ぎることによって、マーカー19がカメラ23の視野や最短撮影距離から外れることで、マーカー19の認識性が低下してしまうのを防止できる。
【0061】
また、カメラ23は、水平方向の視野角よりも垂直方向の視野角が大きいため、例えば、被牽引物12の枠部15とこの枠部15よりも高い位置とにマーカー19をそれぞれ配置して位置関係の認識精度を高めたり、被牽引物12の枠部15に設けられるマーカー19とは別に被牽引物12を識別する識別表示などを枠部15よりも高い位置に設けて、1つのカメラ23で識別することが可能となる。
【0062】
なお、連結ユニット22の連結部29は、ガイドローラ37,38と連結突部43を備えることで披牽引物12の枠部15を確実に連結できるが、ガイドローラ37,38と連結突部43のいずれか一方でも披牽引物12の枠部15を連結可能であるため、いずれか一方のみ備えた構成でもよい。
【0063】
また、連結部ユニット22の連結動作を昇降としたが、例えば、別途設置した回動軸を設置して、この回動軸回りにガイドローラ37、38を揺動させることで連結部29を被連結部17に連結させたり、ガイドローラ37、38のいずれか一方または両方を接離移動させることでガイドーラ37とガイドローラ38で被連結部17をより強固に挟持してもよい。
【0064】
さらに、ガイドローラ37、38に替えて、中央側の垂直な面と、この垂直な面の上端から外側上に向けて斜め状となるように上側に位置ずれを吸収するためのテーパが形成されたガイド片を使用することもできる。
【0065】
加えて、連結ユニット22では、当接部30とガイドローラ37,38と連結突起43とが一体として昇降する構造で説明したが、例えば、当接部30の位置を固定としたり、ガイドローラ37,38と連結突起43とを当接部30と別に昇降する構造としてもよい。さらに、当接部30は、ローラではなく、ダンパとしてゴムやアブソーバなどの衝撃を吸収する部材を使用してもよい。
【0066】
また、マーカー19を2カ所以上に取り付けてもよく、カメラ23の台数もマーカー19の設置数に応じて増設することができ、マーカー19の位置に応じたカメラ23の位置の調整、およびカメラ23の位置に応じたマーカー19の位置の調整を適時行うことができる。カメラ23では測距センサによって距離を測定し、姿勢のみを撮像センサで取得するなど、センサを目的に応じて使い分けてもよい。
【0067】
なお、本件の無人搬送車とは、走行動作、連結動作等の全動作が自動で行われるものに限られず、オペレータによって一部の動作が行われうるものを含みことができ、また、搬送対象としてオペレータやドライバー等の乗客が搭乗してもよい。
【0068】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 無人搬送車
11 走行面
12 被牽引物
17 被連結部
19 マーカー
21 無人搬送車本体
22 連結ユニット
23 カメラ
28 昇降部
29 連結部
30 当接部
50 凹面
56 視野の中心軸