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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038778
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】電池電極用黒鉛分散体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240313BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143049
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松島 良介
(72)【発明者】
【氏名】早川 敬之
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 聡
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛史
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA09
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA14
5H050DA18
5H050EA09
5H050EA27
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池などの電池電極などの製造に好適となる電池電極用黒鉛分散体を提供する。
【解決手段】 本発明の電池電極用黒鉛分散体は、少なくとも、平均粒子径5~50μmの黒鉛粒子と、分散剤と、水とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、平均粒子径5~50μmの黒鉛粒子と、分散剤と、水とを含むことを特徴とする電池電極用黒鉛分散体。
【請求項2】
前記黒鉛粒子が鱗状黒鉛粒子、薄片状黒鉛粒子、球状黒鉛粒子、膨張化黒鉛粒子、薄片化した膨張化黒鉛粒子、薄片化した鱗状黒鉛粒子から選ばれる少なくとも種であることを特徴とする請求項1に記載の電池電極用黒鉛分散体。
【請求項3】
前記分散剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース又はその塩、セルロースナノファイバーから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池電極用黒鉛分散体。
【請求項4】
L*a*b*(CIE LAB)表色系での、色度(a*、b*)がそれぞれa*≦0.7、かつ、b*≦0.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池電極用黒鉛分散体。
【請求項5】
平割面に塗布した塗膜の光沢度が20~40であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池電極用黒鉛分散体。
【請求項6】
請求項1又は2の電池電極用黒鉛分散体に、更に、黒鉛粒子以外の導電性炭素粒子を含むことを特徴とする電池電極用炭素粒子分散体。
【請求項7】
請求項6の電池電極用炭素粒子分散体に、更に、正極用活物質を含むことを特徴とする正極用スラリー。
【請求項8】
請求項6の電池電極用炭素粒子分散体に、更に、負極用活物質を含むことを特徴とする負極用スラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池などの電池電極などの製造に好適となる電池電極用黒鉛分散体などに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの携帯機器の小型軽量化及び高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池、さらに、その二次電池の高容量化が求められている。このような背景の下で高エネルギー密度、高電圧という特徴から非水系電解液を用いるリチウムイオン電池を含む非水系二次電池が多くの機器に使われるようになっている。
【0003】
従来、リチウムイオン電池を含む非水系二次電池に高表面積炭素材料、特に黒鉛を用いることが研究されており、特に黒鉛に層間化合物を形成させ、その層間化合物を二次電池電極材料として用いることは既知であり、数多くの技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、「正電極、負電極、セパレーター及び非水電解液を有する二次電池であって、正電極の活物質として、非炭素質材料が用いられ、負電極の活物質としてBET法比表面積A(m/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を用いる二次電池」が記載されている。この特許文献1には、更に、Liイオン等を取り込ませる場合、炭素質材料はある程度の不規則構造を有している方が優れた特性を有することが記載されており、また、炭素材料の表面積が小さいと、電極表面での円滑な電気化学的反応が進行しにくく好ましくなく、比表面積が大きすぎると、サイクル寿命特性、自己放電特性、更には電流効率特性等の面で特性の低下がみられ、好ましくないことなどが記載されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の炭素質材料を用いる二次電池は、リサイクル特性、自己放電特性が未だ満足いくものではなく、電極自体の抵抗値等に悪影響が及ぼすことがあるなどの課題があるのが現状であった。
一方、非特許文献1の「膨張黒鉛とその応用」には、層間化合物を形成させ、層状構造の黒鉛を「膨張」させたものは、膨張黒鉛と呼称され、いろいろな産業分野に利用されていることが開示されている。
【0005】
ところで、黒鉛を電極用組成物として使用したものとしては、例えば、特許文献2には、薄片状黒鉛と、結着剤と、溶剤を含む(活物質を含まない)導電ペーストの組成物が開示されている。ここでの結着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、アクリルエマルジョン、スチレン・ブタジエンゴムが挙げられている。そして、この導電ペーストの組成物には、前記の薄片化黒鉛の外にカーボンナノチューブ等の導電剤を加えることができることが記載され、更に電極用の活物質を加えることで電極用組成物とすることができることが記載されている。
【0006】
しかしながら、この特許文献2の薄片化黒鉛は、反応性官能基を有さない方が好ましいことが記載されており、この場合、水をはじめ各種溶媒への分散を行う際に分散剤の使用が困難になり、低粘度化は不可能となってしまうものである。現に、ここでの組成物は「ペースト」であり、極めて高粘度の組成物であると推測される。
通常、高粘度の「ペースト」であると、後からカーボンナノチューブ等の導電剤や活物質を加えた場合、元々高い粘度が更に高くなるのは問題にならないが、均一に分散させる、即ち、電極形成のため塗工する際に導電剤及び活物質を均一に分布させることができなくなり、サイクル特性、自己放電特性、電極自体の抵抗値等に悪影響が生じるなどの課題があるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4-24831号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【非特許文献1】豊田昌宏(単著)、「膨張黒鉛とその応用」、炭素233巻、157頁~165頁、2008年:炭素学会発行
【特許文献2】国際公開2021/107094号(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題等について解消しようとするものであり、Li等のイオンの出し入れや電極の抵抗値低下に悪影響を及ぼすことなく、薄片化した黒鉛等を均一に分散させ、かつ、低粘度とした分散体により、電極形成のため塗工する際に導電剤及び活物質を均一に分布させることができ、しかも、サイクル特性、自己放電特性を高度に維持した上で、電極自体の抵抗値等に悪影響が及ぼすことがなく、高効率のリチウムイオン電池などの電池電極などの製造に好適となる電池電極用黒鉛分散体などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来の課題について鋭意検討した結果、少なくとも、平均粒子径が所定範囲となる黒鉛粒子と、分散剤と、水とを含むことなどにより、上記目的の電池電極用黒鉛分散体などを得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明の電池電極用黒鉛分散体は、少なくとも、平均粒子径5~50μmの黒鉛粒子と、分散剤と、水とを含むことを特徴とする。
前記黒鉛粒子は鱗状黒鉛粒子、薄片状黒鉛粒子、球状黒鉛粒子、膨張化黒鉛粒子、薄片化した膨張化黒鉛粒子、薄片化した鱗状黒鉛粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース又はその塩、セルロースナノファイバーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
電池電極用黒鉛分散体は、L*a*b*(CIE LAB)表色系での、色度(a*、b*)がそれぞれa*≦0.7、かつ、b*≦0.5であることが好ましい。
電池電極用黒鉛分散体は、平割面に塗布した塗膜の光沢度が20~40であることが好ましい。
前記電池電極用黒鉛分散体には、更に、黒鉛粒子以外の導電性炭素粒子を含むことが好ましい。
本発明の正極用スラリーは、電池電極用炭素粒子分散体に、更に、正極用活物質を含むことを特徴とする。
本発明の負極用スラリーは、電池電極用炭素粒子分散体に、更に、負極用活物質を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Li等のイオンの出し入れや電極の抵抗値低下に悪影響を及ぼすことなく、薄片化した黒鉛等の黒鉛粒子を均一に分散させ、かつ、低粘度とした分散体により、電極形成のため塗工する際に導電剤及び活物質を均一に分布させることができ、しかも、サイクル特性、自己放電特性を高度に維持した上で、電極自体の抵抗値等に悪影響が及ぼすことがなく、高効率のリチウムイオン電池などの電池電極などの製造に好適となる電池電極用黒鉛分散体、これを用いた導電性と安定性に優れた正極用スラリー、負極用スラリーを提供することができる。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0013】
〈電池電極用黒鉛分散体〉
本発明の電池電極用黒鉛分散体は、少なくとも、平均粒子径5~50μmの黒鉛粒子と、分散剤と、水とを含むことを特徴とするものである。
【0014】
〈黒鉛粒子〉
本発明に用いる黒鉛粒子の形態・特徴としては、例えば、鱗状黒鉛粒子、薄片状黒鉛粒子、球状黒鉛粒子、膨張化黒鉛粒子、薄片化した膨張化黒鉛粒子、薄片化した鱗状黒鉛粒子から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。これらの形態・特徴は、重複することもあり、例えば、薄片化した鱗状黒鉛等である。
用いることができる鱗状黒鉛としては、市販品では、例えば、SP-270、J-SP-α、JB-5(何れも日本黒鉛社)、FT-7J(富士黒鉛社製)、NOCSP等が挙げられる。
用いることができる薄片状黒鉛としては、市販品では、例えば、CMX-40、UP-5N、UP-50N(何れも日本黒鉛社製)等が挙げられる。球状黒鉛としては、市販品では、例えば、CGB-6、CGB-20、CGC-50(何れも日本黒鉛社製)等が挙げられる。
用いることができる膨張化黒鉛としては、市販品では、例えば、FS-5(東日本カーボン(株)製)等が挙げられる。
本発明においては、黒鉛分散体を添加した電極スラリーのシート抵抗を低下できる点から、特に、鱗状黒鉛、薄片化した膨張化黒鉛の使用が好ましい。
【0015】
用いる上記黒鉛粒子の平均粒子径は、最初から5~50μmであれば問題ないが、これより大きくても、例えば、分散工程において粉砕されることにより分散後の平均粒子径5~50μmとなることで電池電極用分散体として好ましい性状となる。
本発明(後述する実施例等)において、「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法などによって測定される体積基準の平均粒子径(50%体積径、メジアン径)を意味し、測定装置としては、例えば、PAR-1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
【0016】
これらの黒鉛粒子の含有量は、用途に応じて、好適な含有量を設定することができ、特に限定されるものではない。
例えば、導電用スラリー、二次電池用電極スラリー、二次電池用電極などに用いる場合は、本発明の効果を発揮せしめる点、高い安定性と導電性能を両立する点、分散体製造時の粘度の点から、その含有量は、黒鉛分散体全量に対して、1~20質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、1~15質量%、より好ましくは、4~15質量%、特に4~12質量%とすることが望ましい。
この黒鉛粒子の含有量を1質量%以上とすることにより、電極スラリー配合時の溶媒の持ち込み量が減ることにより、配合の設計自由度が増し、また、充分な導電性を確保できるようになり、一方、20質量%以下とすることにより、分散体の安定性と良好な導電性を確保することができるものとなる。
【0017】
本発明に用いる分散剤としては、分散媒が水又は水溶性溶媒である場合には、例えば、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース又はその塩(Li,Na,Kなどのアルカリ金属塩)、セルロースナノファイバー等の少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
これらの分散剤の含有量は、用途に応じて、好適な含有量を設定することができ、特に限定されるものではない。例えば、導電用スラリー、二次電池用電極スラリー、二次電池用電極などに用いる場合は、本発明の効果を発揮せしめる点、他の性能を低下させることなく、黒鉛粒子の分散性を高度に維持する点から、その含有量は、分散体全量に対して、0.4~2.5質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.6~2.5質量%、より好ましくは、0.6~2.0質量%、特に0.6~1.8質量%とすることが望ましい。
この分散剤の含有量を0.4質量%以上とすることにより、充分な分散性を確保できるようになり、一方、2.5質量%以下とすることにより、分散体の安定性と良好な分散性を確保することができるものとなる。
【0019】
本発明の電池電極用黒鉛分散体における分散媒(分散体の残部)は、水(例えば、精製水、蒸留水、純水、超純水、水道水、イオン交換水等)であり、水の他、水溶性溶媒を用いることができる。
用いることができる水溶性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン-2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、1,2,3-ヘキサントリオール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール等のグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
その他にも、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類等の水溶性溶媒を混合することもできる。
これらの水溶性溶媒の含有量は、分散体の固形分調整により変動するが、分散液全量に対して、0.1~7質量%が好ましく、黒鉛粒子の濡れ性、スラリーの混合性を向上させる点から、10質量%未満であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが更に好ましい。
【0021】
本発明の電池電極用黒鉛分散体において、更に、上記黒鉛粒子の他、本発明の効果を更に発揮せしめる点、導電性炭素粒子を含有することができる。
用いることができる導電性粒子としては、分散されている黒鉛粒子と同じくらいの比重である、炭素質のものが好ましく、スラリーとして保管しておいても比重差による分離が起こりにくいものが望ましい。この黒鉛粒子と導電性炭素粒子との比重差として、-0.4~2.0の範囲となるものが特に望ましい。
用いることができる導電性炭素粒子としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック粒子、単層のカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ等のカーボンナノファイバーなどの少なくとも1種が挙げられる。
カーボンナノファイバーの平均外径は、導電性、安定性の点から、1nm以上90nm以下であることが好ましく、3nm以上30nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。このカーボンナノファイバーの平均外径とは、透過型電子顕微鏡の10万倍以上の倍率の画像を用いて測定した十分なn数の外形の算術平均値をいう。
【0022】
これらの導電性炭素粒子の含有量は、用途に応じて、また、本発明の効果を更に最大限に発揮せしめる点から、好適な含有量を設定することができ、例えば、導電用スラリー、二次電池用電極スラリー、二次電池用電極などに用いる場合は、その含有量は、分散体全量に対して、0.5~10質量%とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.5~7質量%、特に0.5~5質量%とすることが望ましい。
【0023】
本発明の電池電極用黒鉛分散体の製造は、例えば、少なくとも、上記特性の黒鉛粒子、分散剤、水の他、水溶性溶媒等を投入し、撹拌・混合後、分散工程を経て得ることができる。
上記分散体の分散処理は、例えば、超音波分散機や、ディスパー、ホモミキサー、自転公転ミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、(高圧)ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、コロイドミル類、ビーズミル、コーンミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル、薄膜旋回型高速ミキサー等のメディアレス分散機、その他ロールミル等の分散装置を用いて分散処理することができるが、これらに限定されるものではない。
好ましい分散装置としては、安定性や分散効率の点から、薄膜旋回型高速ミキサーやビーズミルなどが好ましい。
【0024】
上記電池電極用黒鉛分散体の製造において、分散工程(例えば、ビーズミル)の分散が進むにつれて、黒鉛粒子の粉砕が進み、全体に平均粒子径の低下が見られ、分散時間を十分にとった段階(例えば、1時間以上)では、見た目には分散体の黒味が多くなってくるように見え、L*a*b*(CIE LAB)表色系での、色度(a*、b*)において、実際にa*及びb*を測定し、検討してみると、a*≦0.7、かつ、b*≦0.5となる分散体が本発明の効果を更に発揮せしめる点から、好ましく、この色度(a*、b*)を有することにより、L*も低下し、L*≦52.0となる分散体がより好ましいことが後述する実施例等により確認できた。
上記a*≦0.7、かつ、b*≦0.5となる分散体を調整するためには、電池電極用黒鉛分散体を調製する際に、分散時間を制御することにより、行うことができる。
上記L*a*b*(CIE LAB)表色系は、色相評価を行うための色調を表す方法の一つであり、国際照明委員会(CIE)が策定した、目で見える色を色空間として表現するものである。この(a*値,b*値)は色相と彩度を示すものであり、明度(L*値)は、黒色度の傾向を示す一指標である。
【0025】
本発明の電池電極用黒鉛分散体は、薄片化、粒子径を低下させることで、黒鉛粒子数が増え、光沢が得られるから、平割面に塗布した塗膜の光沢度が20~40であることが好ましい。
本発明(後述する実施例等を含む)において、「光沢度」とは、入射角60度、受光角60度における光沢度をいい、デジタル変角光沢計UGV-5(スガ試験機製)等により、測定することができる。
【0026】
上記塗膜の光沢度が20~40の範囲であることが好ましい理由は下記理由等に基づくものである。すなわち、得られた電池電極用黒鉛分散体を、例えば、アルミ箔上に50μmのスリットを持つコーターで塗布後乾燥させたところ、分散時間が長い分散液ほど塗工した塗膜の光沢度が上昇することが分かった(例えば、光沢度20~35)。これは、塗膜中の黒鉛の平均粒子径が小さくなることにより塗膜表面の粗さが低下したためであると推測された。平均粒子径が小さくなった黒鉛粒子は、c軸面(エッジ部)を多く露出させているものと考えられ、このc軸面(エッジ部)を多く露出させた黒鉛粒子と、他の黒鉛粒子、また、好ましく含有せしめた導電性の粒子、あるいは電極と接触するように組成できれば、その塗膜での抵抗値の低下が大いに期待されるものとなる。
更に、分散された黒鉛粒子が膨張化黒鉛の粒子であれば、黒鉛の層間が広がっているため、電極(正極、負極)用スラリーに用いた場合には、活物質から遊離したイオンが出入り、保持が起こりやすく、電子の移動以外の意味からも「抵抗値」の低下が期待されるものである。
この光沢度範囲となる分散体を更に調整するためには、電池電極用黒鉛分散体を調製する際に、分散時間を制御することなどにより、行うことができる。
【0027】
また、本発明の電池電極用黒鉛分散体は、これを添加して調製する電極スラリーの流動性を得る点などから、E型回転粘度計〔TV-25(東機産業社製)ローター(1°34’×R24mm)〕、回転数10rpmにおける25℃の粘度値(mPa・s)が、5~700が好ましく、更に好ましくは、5~200が望ましい。
【0028】
このように構成される本発明では、Li等のイオンの出し入れや電極の抵抗値低下に悪影響を及ぼすことなく、薄片化した黒鉛等を均一に分散させ、かつ、低粘度とした分散体により、電極形成のため塗工する際に導電剤及び活物質を均一に分布させることができ、しかも、サイクル特性、自己放電特性を高度に維持した上で、電極自体の抵抗値等に悪影響が及ぼすことがなく、高効率のリチウムイオン電池などの電池電極などの製造に好適となる電池電極用黒鉛分散体が得られることとなる。
この電池電極用黒鉛分散体は、従来にない優れた性能を有するので、更に各種成分を加えて電極用スラリー、リチウムイオン電池などの二次電池用に好適な正極用スラリー、負極用スラリーなどに利用することができるものとなる。
また、更に導電性粒子を含む電池電極用黒鉛分散体では、電池電極用黒鉛分散体中の黒鉛粒子はc軸面(エッジ部)を多く露出させているものと推測されるので、導電性の粒子表面とc軸面(エッジ部)との接触が多くなり、この接触によって前記黒鉛分散体と導電性粒子との混合物による塗膜は、更に低い抵抗値が期待されるものである。また、カーボンナノチューブのような大きな導電性粒子の場合、その周囲に分散体に分散した黒鉛粒子のc軸面(エッジ部)が数多く接触することとなり、前記の抵抗値の低下の外、大きな導電性粒子と分散した黒鉛粒子のc軸面(エッジ部)との接触部周辺の隙間に、後述する活物質から遊離したイオンが出入り、保持が起こりやすくなることが期待されるものである。
【0029】
〈正極用スラリー〉
本発明の正極用スラリーは、上記構成の電池電極用黒鉛分散体に、正極用活物質を含むことを特徴とするものである。
用いることができる正極用活物質としては、リチウムイオン電池の正極に使用可能な通常の正極活物質(リチウムイオンを可逆的に出入りさせる活物質)であれば、特に限定されずに用いることができる。
例えば、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物、MnO、V---、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
好ましい正極用活物質としては、リチウム-ニッケル複合酸化物であり、更に好ましくは、該リチウム-ニッケル複合酸化物が、式:LiNiM1M2(M1およびM2は、Al、B、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の元素のうち少なくとも1種以上の金属元素、0.8≦X≦1.0、0≦Y≦0.2、0≦Z≦0.2)で表されるリチウム-ニッケル複合酸化物が望ましい。
これらの正極用の活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の正極用スラリーにおいて、上記正極用活物質の含有量は、正極用スラリー全量に対して、電池容量を確保する点、スラリーの流動性を確保する点から、好ましくは、50~70質量%が好ましく、更に好ましくは、50~63質量%が望ましい。
また、上記構成の電池電極用黒鉛分散体の含有量は、正極用スラリー全量に対して、固形分量で、好ましくは、0.5~10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.5~7質量%が望ましい。
【0031】
本発明の正極用スラリーは、上記構成の電池電極用黒鉛分散体に、正極用活物質を含むと共に、必要に応じて、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ドライポリマー電解質、ゲルポリマー電解質、疑似固体電解質等の固体電解質を含有することができる。
【0032】
〈負極用スラリー〉
本発明の負極用スラリーは、上記構成の電池電極用黒鉛分散体に、負極用活物質を含むことを特徴とするものである。
用いることができる負極用活物質としては、導電性を有しないものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば金属酸化物系活物質粒子、シリコン系活物質粒子、特に金属酸化物系負極活物質粒子を用いることができる。
金属酸化物系負極活物質粒子としては、例えば、チタン酸化物を使用できる。チタン酸化物としては、リチウムを吸蔵放出可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スピネル型チタン酸リチウム、ラムスデライト型チタン酸リチウム、チタン含有金属複合酸化物、単斜晶系の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO(B))、並びにアナターゼ型二酸化チタンなどを用いることができる。
スピネル型チタン酸リチウムとしては、Li+xTi12(xは充放電反応により-1≦x≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。ラムスデライト型チタン酸リチウムとしては、Li+yTi(yは充放電反応により-1≦y≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。TiO(B)及びアナターゼ型二酸化チタンとしては、Li+zTiO(zは充放電反応により-1≦z≦0の範囲で変化する)などが挙げられる。
チタン含有金属複合酸化物としては、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO-P、TiO-V、TiO-P-SnO、TiO-P-MeO(MeはCu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。
このような金属複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存しているか、又は、アモルファス相が単独で存在しているミクロ構造であることが好ましい。ミクロ構造であることにより、サイクル性能を更に向上させることができる。
【0033】
本発明の負極用スラリーにおいて、上記負極用活物質の含有量は、負極用スラリー全量に対して、電池容量を確保する点、スラリーの流動性を確保する点から、好ましくは、30~60質量%が好ましく、更に好ましくは、35~55質量%が望ましい。
また、上記構成の電池電極用黒鉛分散体の含有量は、負極用スラリー全量に対して、固形分量で、好ましくは、0.5~10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.5~7質量%が望ましい。
本発明の負極用スラリーは、上記構成の電池電極用黒鉛分散体に、負極用活物質を含むと共に、必要に応じて、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ドライポリマー電解質、ゲルポリマー電解質、疑似固体電解質等の固体電解質を含有することができる。
【0034】
上記で得られた正極用スラリー及び負極用スラリーを用いることにより、二次電池用電極を得ることができる。
上記で得られた正極用スラリー及び負極用スラリーには、更に結着材(バインダー)を含むことが好ましい。
用いることができる結着材(バインダー)としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系樹脂などを挙げることができる。これらの結着材は2種以上を混合して用いてもよい。
これらの結着材の量は、集電箔に対する密着性、セル化された後の電池容量や充放電特性の点から、好ましくは、二次電池用の各電極スラリー全量に対して、0.2~3.0質量%、より好ましくは、0.5~2.5質量%含有することが望ましい。
【0035】
更に、上記各電極用スラリーには、各種溶媒を添加してもよい。溶媒としては、例えば、水(精製水、イオン交換水、蒸留水、超純水など)、芳香族系溶媒、アルコール類、多価アルコール類、エーテル系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、アミド系溶媒、複素環系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、各単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
これらの溶媒の量は、各電極用スラリーを塗工する際に、適切な粘性に仕上げる必要性の点から、好ましくは、二次電池用の各電極スラリー全量に対して、0.5~80質量%、より好ましくは、1~70質量%添加することが望ましい。
更に、上記各電極用スラリーには、上記電池電極用黒鉛分散体、各活物質、結着材の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、レベリング剤、固体電解質材などを適宜配合することができる。
【0036】
このように構成される二次電池用の各電極用スラリーは、上記電池電極用黒鉛分散体と、二次電池用の正極用又は負極用の各活物質と、結着材(バインダー)、溶媒などを、例えば、二軸型の混練機などを用いることにより調製することができる。
得られた二次電池用の各電極スラリーをリチウムイオン二次電池の導電性部材である集電体上に塗布して乾燥することにより所定のリチウムイオン二次電池用正極、負極が得られることとなり、本発明では、長期間の繰り返し充放電に耐えうる電池性能を実現する二次電池用の各電極スラリー、二次電池用電極が得られることとなる。
【0037】
上記電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
集電体上に電極ペーストを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
本発明の正極用又は負極用スラリーは、上記特性の電池電極用黒鉛分散体をもちいているので、電極形成のため塗工する際に導電剤及び活物質を均一に分布させることができ、サイクル特性、自己放電特性、電極自体の抵抗値等に悪影響が生じることがなく、導電性と安定性に優れたものである。
【0038】
〈二次電池、リチウムイオン二次電池〉
二次電池は、上記二次電池用電極を用いることにより得ることができ、好ましくは、正極と、負極と、電解質とを具備してなるリチウムイオン二次電池の正極、負極に上記二次電池用電極を用いたものが好ましい。以下において、リチウムイオン二次電池に用いた場合について説明する。
正極としては、上記集電体上に正極活物質を含む上述の正極用スラリーを塗工乾燥して電極を作製したものを使用することができる。
負極としては、集電体上に負極活物質を含む負極用スラリーを塗工乾燥して電極を作製したものを使用することができる。
【0039】
電解質としては、イオンが移動可能な従来公知の様々なものを使用することができる。例えば、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4(ただし、Phはフェニル基である)等リチウム塩を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。電解質は非水系の溶媒に溶解して、電解液として使用することが好ましい。
【0040】
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0041】
本発明において、リチウムイオン二次電池には、セパレーターを含むことが好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
このように構成される二次電池となるリチウムイオン二次電池等は、長期間の繰り返し充放電に耐えうる電池性能を実現する二次電池が得られることとなる。
【実施例0042】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
〔電池電極用黒鉛分散体A~Hの調製〕
下記表1に示す配合組成〔黒鉛粒子、導電性炭素粒子、分散剤、分散媒となる水の各量〕を、分散装置(φ1.0mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルにより、周速を10m/sに設定し、分散処理を施した)により分散して各電池電極用黒鉛分散体A~Hを得た。
得られた電池電極用黒鉛分散体A~Hについて、下記測定法で、L*a*b*表色系、粘度、光沢度を測定した。
【0044】
(L*a*b*表色系の測定法)
カラーメーターSC-P(スガ試験機社製)を用いて、a*値、b*値、L*値を測定した。
(黒鉛粒子の平均粒子径の測定法)
粒度分布測定装置 MT3300II(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、分散体中の黒鉛粒子の平均粒子径を測定した。
【0045】
(粘度値の測定法)
E型回転粘度計〔TV-25(東機産業社製)ローター(1°34’×R24mm)〕を用いて回転数10rpmにて、25℃の粘度値を測定した。
(光沢度の測定法)
デジタル変角光沢計UGV-5(スガ試験機社製)を用いて、光沢度を測定した。
これらの評価結果を下記表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1中の*1~*9は、下記のとおりである。
*1:J-SP-α(平均粒子径:6μm、日本黒鉛社製)
*2:CMX-40(平均粒子径:40μm、日本黒鉛社製)
*3:FS5(平均粒子径:7μm、東日本カーボン社製)
*4:PTG7(平均粒子径:7μm、東日本カーボン社製)
*5:FT9200(平均外径:19nm、CNANO社製)
*6:NC7000(平均外径:9.5nm、Nanocyl社製)
*7:PVP K30(BASF社製)
*8:CMCダイセル1330(ダイセルミライズ社製)
*9:BiNFi-s(スギノマシン社製)
【0048】
(実施例1~7及び比較例1~2)
上記で有られた電池電極用黒鉛分散体A~Hを用いて、下記表2に示す配合組成〔炭素粒子、各分散体A~H、分散剤など〕を、分散装置(φ1.0mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルにより、周速を10m/sに設定し、分散処理を施した)により分散した。得られた分散体を更にプラネタリーミキサーに移し、SBRのバインダー材を添加し、公転回転数を10rpmに設定して、この組成物を120分間混練し、電極用スラリーを得た。
得られた電極用スラリーについて、下記測定法で、導電性の評価となるシート抵抗体を測定した。
完成した電極用スラリーを、PETフィルム(ルミラー#100-T60、東レ社)の片面に隙間が50μmのアプリケーターで塗布した後、温度80℃で乾燥し、得られた膜の抵抗値を測定した。抵抗値はシート抵抗として、探針間隔10mmの4探針プローブとミリオームハイテスタ3227(日置電機)からなる装置を用いて測定した。
シート抵抗が、1.0kΩ/□以下で、導電性に優れていることが確認できる。
【0049】
また、得られた電極用スラリーについて、下記測定法により、上記導電性の評価以外の各電極スラリーの各性状(せん断速度0.1S-1、1000s-1の各粘度値、固形分、マイクロトラックD50(μm)、pH、1rpm、10rpmの各粘度値)について測定した。
(せん断速度0.1S-1、1000s-1の各粘度値粘度0.14S-1、1000s-1の各測定法)
レオメーター(MCR-102(アントンパール社製)、コーンプレートCP50-2)を用いて、せん断速度を0.1s-1~1000s-1を60秒間で往復させた際の復路における0.1s-1、1000s-1の各粘度値(25℃)を測定した。
【0050】
(固形分の測定方法)
ハロゲン水分計(HC-103、メトラー・トレド社製)を用いて180℃、10minで測定した。
(マイクロトラックD50の測定方法)
粒子径分布測定装置(MT3000、マイクロトラック・ベル社製)にて測定した。
(pHの測定方法)
ガラス電極pH計にて、25℃におけるpHを測定した。
(1rpm、10rpmの各粘度値の測定法)
E型回転粘度計(TV-25(東機産業社製)ローター(1°34’×R24mm))を用いて回転数1rpm、10rpmにて各粘度値(25℃)を測定した。
【0051】
【表2】
【0052】
上記表1、表2の各評価結果等から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1~7の分散体を用いた電極用スラリーは、所定の性状を損なうことなく、安定性と導電性とが高度に両立し、共に優れるものとなった。これに対し、比較例1~2の電極用スラリーは、上記特性を満足することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
電池電極用黒鉛分散体は、安定性と導電性能に優れ、燃料電池、各種電極、電磁波シールド材、導電性樹脂、電界放出ディスプレイ用部材などの材料として有用であり、特にリチウムイオン二次電池などの電極の製造に好適な電極(正極用、負極用)スラリー、電極の製造に用いることができ、長期間の繰り返し充放電に耐えうる優れた電池性能を実現することができる。