(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038799
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20240313BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20240313BHJP
B64F 1/36 20240101ALI20240313BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20240313BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64D45/00 A
B64F1/36
G01W1/10 E
G09B29/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143083
(22)【出願日】2022-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池松 隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】池端 優人
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 浩行
(72)【発明者】
【氏名】本間 史也
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HA02
2C032HC09
2C032HC30
2C032HC38
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB13
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF32
5H181FF33
5H181FF35
5H181FF38
(57)【要約】
【課題】データ容量を抑え直感的に被雷予測を把握可能な被雷予測地図の作成を行う被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラムを提供する。
【解決手段】被雷予測地図作成装置15は、地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得部51と、被雷予測情報を用いて予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成部52と、テキストデータを航空機に送信する送信部53と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得部と、
前記被雷予測情報を用いて前記予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成部と、
前記テキストデータを航空機に送信する送信部と、
を備える被雷予測地図作成装置。
【請求項2】
前記被雷予測情報において前記航空機が着陸を予定している空港周辺の領域を特定する領域特定部を備え、
前記データ作成部は、前記領域特定部が特定した領域の前記被雷予測情報を用いて、前記被雷予測地図の前記テキストデータを作成する請求項1に記載の被雷予測地図作成装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記航空機が着陸時に通過する高度に応じた前記被雷予測情報を取得し、
前記データ作成部は、前記情報取得部が取得した前記被雷予測情報に基づき前記高度ごとに前記被雷予測地図の前記テキストデータを作成する請求項1または請求項2に記載の被雷予測地図作成装置。
【請求項4】
前記データ作成部は、前記被雷予測情報に基づき前記被雷予測地図の前記高度を数字で表し前記テキストデータに含める請求項3に記載の被雷予測地図作成装置。
【請求項5】
前記データ作成部は、前記航空機側からの前記被雷予測地図の取得のリクエストに応じて前記被雷予測地図の前記テキストデータを作成する請求項1に記載の被雷予測地図作成装置。
【請求項6】
前記データ作成部は、前記テキストデータが出力される場合に前記被雷予測地図の北の方角が上に表示されるように前記被雷予測地図を作成する請求項1に記載の被雷予測地図作成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の被雷予測地図作成装置と、
航空機に設けられた出力装置と、
を備え、
前記出力装置は、
前記被雷予測地図作成装置から送信されたテキストデータを受信する通信部と、
受信した前記テキストデータを地図データとして出力する出力部と、
を備える被雷予測地図共有システム。
【請求項8】
地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得工程と、
前記被雷予測情報を用いて前記予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成工程と、
前記テキストデータを航空機に送信する送信工程と、
をコンピュータが実行する被雷予測地図作成方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項8に記載の被雷予測地図作成方法を実行させるための被雷予測地図作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の運航において、落雷による被害が多く発生している。航空機が被雷してもその設計上飛行を継続できない事態に陥ることは無いが、機体の損傷やスケジュールの遅延は避けられない。例えば、昨今複合材が多く用いられた機体が増加しており、被雷による機体への影響が増大している。被雷により機体が損傷し、構造部材や装備品の交換が必要となる。また、被雷した場合、次の運航の安全性を確保するためには機体点検が必須となる。点検や修理の対応に起因する後続機のスケジュール遅延が発生することとなる。
【0003】
これに対し、将来の雷についての予測情報を取得することが考えられる。例えば特許文献1には、気象観測データ及び/又は気象予測データに基づき将来の雷の脅威について予測する情報処理装置が開示されている。また特許文献2には、航空業務支援装置が提供する雷に関する情報を用いて管制官が航空機に指示を伝える、またはネットワークを介して航空機に送信することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-20156号公報
【特許文献2】特開2019-166286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、空港または航空機に設置された情報処理装置での演算を想定しており、地上から航空機へデータを送信することについての検討がなされていない。また、特許文献2の発明では、地上の航空管制から航空機へ指示を伝える、またはネットワークを介して航空機にデータを送信しているが、そのデータは画像で表現されており複雑でデータ量が大きいものとなっている。航空機側にはコックピットwifiなどのネットワーク環境は整備されていないことが多く、またコックピットwifiなどが搭載されていたとしても現在の環境では複雑な画像データの場合は表示までに時間を要し、即時性に問題がある。特許文献2で開示される画像データや、3次元で表示される雷の予測情報が検討されているが、離着陸時はパイロットの作業が特に煩雑であり、複雑なデータを読み込み解読する時間はない。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、データ容量を抑えることができ、また、直感的に被雷予測を把握可能な被雷予測地図の作成を行うことができる被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラムは以下の手段を採用する。
【0008】
本開示の被雷予測地図作成装置は、地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得部と、前記被雷予測情報を用いて前記予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成部と、前記テキストデータを航空機に送信する送信部と、を備える。
【0009】
本開示の被雷予測地図共有システムは、上述の被雷予測地図作成装置と、航空機に設けられた出力装置と、を備える。前記出力装置は、前記被雷予測地図作成装置から送信されたテキストデータを受信する通信部と、受信した前記テキストデータを地図データとして出力する出力部と、を備える。
【0010】
本開示の被雷予測地図作成方法においては、地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得工程と、前記被雷予測情報を用いて前記予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成工程と、前記テキストデータを航空機に送信する送信工程と、をコンピュータが実行する。
【0011】
本開示の被雷予測地図作成プログラムは、コンピュータに、前述の被雷予測地図作成方法を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、テキストデータでの送信となるためデータ容量を抑えることができる。また、テキストデータが概要を示す簡略化した表示であるため、直感的に被雷予測を認識および把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの概要図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの機能の一例を示す図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの制御フローを示す図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態における被雷予測情報を示す図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態におけるテキストデータで表される被雷予測地図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下、本開示の幾つかの実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの概要図である。
被雷予測地図共有システム1は、地上にあるオペレーションセンター10と、航空機20のコックピットとに設けられるシステムである。
図1では便宜上、被雷予測地図共有システム1を破線で表す。被雷予測地図共有システム1は、オペレーションセンター10の被雷予測地図作成装置15と、航空機20の出力装置25とにより実現される。
【0015】
オペレーションセンター10の被雷予測地図作成装置15は、航空機20の出力装置25に対して被雷予測地図をテキストデータとして送信する。航空機20の出力装置25は、オペレーションセンター10の被雷予測地図作成装置15に被雷予測地図の送信のリクエストを行い、被雷予測地図作成装置15から受信した被雷予測地図を出力する。被雷予測地図とは、予想被雷確率および位置を地図状に表したテキストデータである。被雷予測地図の詳細については、後述する。
【0016】
航空機20の出力装置25がオペレーションセンター10の被雷予測地図作成装置15と行う通信は、例えば、ほとんどの航空機20に搭載されているACARS(Aircraft Communication Addressing and Reporting System、無線または衛星を介して短いメッセージを伝送するためのデータリンクシステム)を用いて行うものとする。航空機20とオペレーションセンター10との間の通信は、テキストデータの伝送を行えるものであればよく、その種類は問わない。
【0017】
オペレーションセンター10の被雷予測地図作成装置15は、被雷予測地図の作成が必要となった場合、気象予測システム40から被雷予測情報を受信する。被雷予測情報とは、地図上に予想被雷確率の高さを示した情報である。被雷予測情報の詳細については、後述する。
【0018】
気象予測システム40は、気象レーダ30から気象データを取得し、気象データに基づき被雷予測情報を作成する。気象予測システム40は、オペレーションセンター10に備えられたシステムに設けられていてもよいし、外部サービスの気象予測システム40を用いるとしてもよく、被雷予測情報にオペレーションセンター10で被雷予測地図の作成に必要な情報が含まれていればよい。
【0019】
図2は、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムのハードウェア構成の一例を示した図である。
図2に示すように、被雷予測地図共有システム1の被雷予測地図作成装置15は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)1100、二次記憶装置(ROM、Secondary storage:メモリ)1200、主記憶装置(RAM、Main Memory)1300、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)1400と、ネットワーク等に接続するための通信部1500とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス1800を介して接続されている。
【0020】
CPU1100は、例えば、バス1800を介して接続された二次記憶装置1200に格納されたOS(Operating System)により被雷予測地図作成装置15全体の制御を行うとともに、二次記憶装置1200に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。CPU1100は、1つ又は複数設けられており、互いに協働して処理を実現してもよい。
【0021】
主記憶装置1300は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU1100の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0022】
二次記憶装置1200は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置1200は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。二次記憶装置1200の一例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)フラッシュメモリなどが挙げられる。二次記憶装置1200は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の情報処理装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、二次記憶装置1200には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。二次記憶装置1200は、複数設けられていてもよく、各二次記憶装置1200に上述したようなプログラムやデータが分割されて格納されていてもよい。
【0023】
また、被雷予測地図作成装置15は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。また、表示部を含み、ランプ、音、特にアラーム音を出力するスピーカーなどの通知部を備えていてもよい。
【0024】
被雷予測地図共有システム1は、複数のコンピュータシステムから構成されていてもよい。
【0025】
図3は、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの機能の一例を示した図である。
図3に示すように、被雷予測地図共有システム1は、被雷予測地図作成装置15及び出力装置25とを備えている。被雷予測地図作成装置15は情報取得部51と、データ作成部52と、送信部53と、領域特定部54と、を備えている。出力装置25は、通信部56と、出力部57と、を備えている。
【0026】
被雷予測地図共有システム1が備える機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置1200(
図2参照)などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)1100(
図2参照)が主記憶装置1300(
図2参照)に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置1200に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0027】
図3に示される情報取得部51は、気象予測システム40から被雷予測情報を取得する。データ作成部52は、情報取得部51が取得した被雷予測情報を用いて予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図を作成し、テキストデータに変換する。送信部53は、被雷予測地図であるテキストデータを出力装置25に送信する。領域特定部54は、被雷予測情報から航空機20が着陸を予定している空港周辺の領域を特定する。また通信部56は、被雷予測地図作成装置15から送信されたテキストデータを受信する。出力部57は、被雷予測地図作成装置15のデータ作成部52で作成されたテキストデータを地図データとして出力する。出力部57は、コックピットに備えられるプリンタからの出力、コックピットに備えられるディスプレイへの出力、タブレットなどの携帯端末への出力など、いずれの出力方法を選択してもよい。
【0028】
次に、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの動作について、図を用いて説明する。
図4には、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図共有システムの制御フローが示されている。
【0029】
ステップS101において、航空機20の出力装置25の通信部56は、オペレーションセンター10の被雷予測地図作成装置15に対し被雷予測地図の送信をリクエストする。
【0030】
ステップS102において、情報取得部51は、気象予測システム40から被雷予測情報を取得する。
【0031】
図5には、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測情報が示されている。
図5に示されるように、気象予測システム40から取得する被雷予測情報は、地図上に予想被雷確率の高さが示されたものであり、例えば縦軸が緯度、横軸が経度の地図において、網掛けの濃淡で被雷確率を表示したものである。このうち、網掛け部分が被雷確率のある地域(被雷が予想される地域)を表し、薄い網掛け部分は被雷確率が低い地域、濃い網掛け部分は被雷確率が高い地域を表す。実際の被雷予測情報は、網掛けではなくカラー表示されていてもよい。
【0032】
ステップS103において、データ作成部52は、情報取得部51が取得した被雷予測情報に基づき所定の範囲の被雷予測地図を作成する。航空機20の出力装置25は、例えば、被雷予測地図の送信をリクエストする際に、着陸予定の空港の位置についても同時に送信する。着陸予定の空港の位置を受信した被雷予測地図作成装置15は、領域特定部54によって着陸予定の空港の位置を中心とし、縦と横の距離が等しい正方形状の範囲を航空機20が着陸を予定している空港周辺の領域であるとして特定する。データ作成部52は、特定された領域の被雷予測情報を取得し、所定の範囲の被雷予測地図を作成する。
図5において、×(クロス)で表される位置が着陸予定の空港の位置であり、点線が所定の範囲の被雷予測情報を表す。本実施形態では、例えば着陸予定空港を中心とした上下左右に40nm(nortical miles、海里)の範囲であるの正方形状の範囲を所定の範囲とする。所定の範囲については正方形でなくてもよく、また範囲の大きさは変更可能であるとしてもよい。
【0033】
着陸前に航空機20は雷が発生し得る低高度を飛行せざるを得ないところ、領域特定部54により着陸を予定している空港周辺の領域を特定することにより、被雷確率の情報が必要な領域に限定して被雷予測を行うことができる。
【0034】
被雷予測情報は、航空機20の現在位置および飛行速度(着陸に伴う予想減速速度を含む)と、着陸予定の空港の位置とに基づき、被雷確率が予測される高度範囲ごとに一または複数取得される。この場合、情報取得部51は、地図上の予想被雷確率とともに、予想時間帯および高度についても取得し、被雷予測情報としてデータ作成部52に渡される。
【0035】
ステップS104において、データ作成部52は、作成した被雷予測地図をテキストデータに変換し、テキストにて被雷予測地図を実現する。
図6には、本開示の幾つかの実施形態における被雷予測地図が示されている。
図6の1行目には被雷が予想される時間帯、2行目には高度の範囲が数字で示されている。3行目以降において、被雷予測地図がテキストを用いた疑似的な地図情報として示されている。
【0036】
データ作成部52は、
図5における点線で囲まれた所定の範囲の被雷予測情報において、濃い網掛けまたは薄い網掛けで示された被雷確率のある地域(位置)を、例えばスラッシュ(/)に変換する。また、到着予定の空港の位置を、例えば「AP」に変換する。また所定の範囲を示す枠の表示に加えて、範囲の距離を示す表示、および東西南北をE、W、S、Nで示す。本実施形態では、被雷確率のある地域(位置)を全て同じテキストに変換しているが、被雷確率の高さに応じて異なるテキストに変換することとしてもよい。
【0037】
データ作成部52は、テキストデータが出力される場合に被雷予測地図の北の方角が上に表示されるように被雷予測地図を作成する。よって、テキストデータにおいて、上下左右はそれぞれ被雷予測地図の方角、北(N)、南(S)、西(W)、東(E)を表し、各テキストが表示される。被雷予測地図の方角は、前述の配置で固定される。被雷予測地図の方角の配置は、例えば進行方向を上にするなど、変更可能であるとしてもよい。
【0038】
またデータ作成部52は、被雷予測地図が拡大および縮小が可能となるように、対応する縮尺の被雷予測地図をさらに作成するとしてもよい。
【0039】
ステップS105において、送信部53は、データ作成部52が作成した被雷予測地図のテキストデータを出力装置25に送信する。被雷予測地図作成装置15はインターネット設備を用い、出力装置25は前述のACARS環境を用いて通信を行う。
【0040】
ステップS106において、送信部53からテキストデータを受信した通信部56は、テキストデータを出力部57に渡す。出力部57は、テキストデータを地図データとして出力する。テキストデータは疑似的に地図を表しているため、そのまま出力することにより地図データとして利用可能である。またテキストデータが暗号化などにより変換されている場合は、通信部56または出力部57により元のデータに復元されるとしてもよい。
【0041】
本実施形態では、ステップS101において航空機20からのリクエストを契機として被雷予測地図を作成し送信しているが、被雷予測地図作成装置15が定期的に被雷予測地図を作成し送信するとしてもよい。
【0042】
以上説明してきたように、本実施形態に係る被雷予測地図作成装置15によれば、被雷予測地図の送信をテキストデータで行うことにより、データ容量を抑えて通信コストを抑えることができる。従来から航空機20との通信用に備えられているテキストデータ送受信システムを利用可能であり、通信機器の追加にかかるコストの増加を最小限に抑えることが可能となる。また、パイロットが被雷予測地域を避けるために必要な情報に限定して被雷予測地図を作成し、データの送信を行うことができる。
【0043】
〈付記〉
以上説明した実施形態に記載の被雷予測地図作成装置、被雷予測地図共有システム、被雷予測地図作成方法、及び被雷予測地図作成プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0044】
本開示の第1態様に係る被雷予測地図作成装置(15)は、地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得部(51)と、前記被雷予測情報を用いて前記予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成部(52)と、前記テキストデータを航空機(20)に送信する送信部(53)と、を備える。
【0045】
被雷予測地図の送信をテキストデータで行うことにより、通信コストを抑えることができる。従来から航空機との通信用に備えられているテキストデータ送受信システムを利用可能であり、通信機器の追加にかかるコストの増加を最小限に抑えることができる。
【0046】
本開示の第2態様に係る被雷予測地図作成装置は、前記第1態様において、前記被雷予測情報において前記航空機が着陸を予定している空港周辺の領域を特定する領域特定部(54)を備え、前記データ作成部は、前記領域特定部が特定した領域の前記被雷予測情報を用いて、前記被雷予測地図の前記テキストデータを作成するとしてもよい。
【0047】
航空機が着陸を予定している空港周辺の領域を特定し、被雷予測地図のテキストデータが作成されることから、扱うデータ量を必要最小限とすることができる。航空機側は、被雷が発生し得る着陸時の被雷予測情報を受け取ることになるため、被雷を避けることができる。
【0048】
本開示の第3態様に係る被雷予測地図作成装置は、前記第1態様または前記第2態様において、前記情報取得部は、前記航空機が着陸時に通過する高度に応じた前記被雷予測情報を取得し、前記データ作成部は、前記情報取得部が取得した前記被雷予測情報に基づき前記高度ごとに前記被雷予測地図の前記テキストデータを作成するとしてもよい。
【0049】
高度毎に被雷予測地図のテキストデータが作成されることから、高度に応じた被雷予測を把握することができる。パイロットが確認するテキストデータは概要を示す簡略化した表示であり直感的に被雷予測を認識および把握しながら、疑似的に3次元での被雷予測を取得することができる。
【0050】
本開示の第4態様に係る被雷予測地図作成装置は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記データ作成部は、前記被雷予測情報に基づき前記被雷予測地図の前記高度を数字で表し前記テキストデータに含めるとしてもよい。
【0051】
被雷予測地図を参照したパイロットが高度に応じた被雷予測を高度と共に迅速に認識することができる。
【0052】
本開示の第5態様に係る被雷予測地図作成装置は、前記第1態様から前記第4態様のいずれかにおいて、前記データ作成部は、前記航空機側からの前記被雷予測地図の取得のリクエストに応じて前記被雷予測地図の前記テキストデータを作成するとしてもよい。
【0053】
航空機側で被雷予測地図が必要な場合のみ通信を行うため、通信コストを抑えることができる。
【0054】
本開示の第6態様に係る被雷予測地図作成装置は、前記第1態様から前記第5態様のいずれかにおいて、前記データ作成部は、前記テキストデータが出力される場合に前記被雷予測地図の北の方角が上に表示されるように前記被雷予測地図を作成するとしてもよい。
【0055】
被雷予測地図のテキストデータの表示が統一され、パイロットが被雷予測地図を容易に認識できる。
【0056】
本開示の第7態様に係る被雷予測地図共有システム(1)は、前述の被雷予測地図作成装置と、航空機に設けられた出力装置(25)と、を備え、前記出力装置は、前記被雷予測地図作成装置から送信されたテキストデータを受信する通信部(56)と、受信した前記テキストデータを地図データとして出力する出力部(57)と、を備える。
【0057】
被雷予測地図共有システムが被雷予測地図作成装置と、航空機に備えられた出力装置と、を備えることから、被雷予測地図を航空機に送信することができる。航空機のパイロットは被雷予測地図により被雷地域を直感的に認識し、被雷地域を避けた飛行を行うことができる。また着陸時は航空機操縦が繁忙であるところ、パイロットが簡略化した被雷予測地図により迅速に被雷地域を認識可能である。
【0058】
本開示の第8態様に係る被雷予測地図作成方法(15)は、地図上に予想被雷確率の高さが示された被雷予測情報を取得する情報取得工程と、前記被雷予測情報を用いて前記予想被雷確率の高さと位置とを関連付けた被雷予測地図のテキストデータを作成するデータ作成工程と、前記テキストデータを航空機に送信する送信工程と、をコンピュータが実行する。
【0059】
本開示の第9態様に係る被雷予測地図作成プログラム(15)は、コンピュータに、前記第8態様の被雷予測地図作成方法を実行させる。
【符号の説明】
【0060】
1 被雷予測地図共有システム
10 オペレーションセンター
15 被雷予測地図作成装置
20 航空機
25 出力装置
30 気象レーダ
40 気象予測システム
51 情報取得部
52 データ作成部
53 送信部
54 領域特定部
56 通信部
57 出力部
1100 CPU
1200 二次記憶装置
1300 主記憶装置
1400 ハードディスクドライブ
1500 通信部
1800 バス
【手続補正書】
【提出日】2022-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【特許文献1】特開2021-124468号公報
【特許文献2】特開2021-43789号公報