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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003880
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20240109BHJP
   F24S 23/79 20180101ALI20240109BHJP
   F24S 60/00 20180101ALI20240109BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F24S23/79
F24S60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103207
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 慶紀
(57)【要約】
【課題】固体蓄熱材料からの伝熱を抑制することができる蓄熱装置を提供する。
【解決手段】集光手段Eにより集光される太陽光を固体蓄熱材料2が貯留される蓄熱槽11に照射させ、該固体蓄熱材料2に熱を蓄積させる蓄熱装置1であって、蓄熱装置1は、複数の球状の固体蓄熱材料2を蓄熱槽11に供給する供給手段12,11bと、蓄熱槽11内に供給された固体蓄熱材料2を排出口13aから排出する排出手段20と、を備え、蓄熱槽11内において積層される固体蓄熱材料2が下方の固定層15と上方の流動層16とに分かれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光手段により集光される太陽光を固体蓄熱材料が貯留される蓄熱槽に照射させ、該固体蓄熱材料に熱を蓄積させる蓄熱装置であって、
前記蓄熱装置は、複数の球状の前記固体蓄熱材料を前記蓄熱槽に供給する供給手段と、
前記蓄熱槽内に供給された前記固体蓄熱材料を排出口から排出する排出手段と、を備え、
前記蓄熱槽内において積層される前記固体蓄熱材料が下方の固定層と上方の流動層とに分かれていることを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記排出口は、前記蓄熱槽の底面よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記蓄熱槽の底面は、前記排出口近傍に向けて下方に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記供給手段は、前記固体蓄熱材料が貯留される貯留槽と、該貯留槽と前記蓄熱槽との間を仕切る仕切壁と、を備え、
前記仕切壁の下部には、前記固体蓄熱材料が通過可能な開口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記排出手段は、スクリューフィーダであることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光した熱エネルギーを蓄熱する蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の生活は大量のエネルギーを必要としている。今までは化石燃料や原子力に頼ってエネルギーを作り出していたが、地球温暖化や原発事故などの影響により、安全でクリーンな再生可能エネルギーに注目が集まっている。その中でも太陽エネルギーは膨大なエネルギー量を誇っており、これからの技術開発に期待がかかっている。太陽エネルギーといえば太陽光発電のように光を直接電力に変換し利用する方法が一般的に知られているが、近年、光を集光し熱に変え、その熱を有効利用することへの関心が高まっている。この集光型太陽熱利用は日本のみならず世界中の国々で研究が盛んに行われている。
【0003】
この種の集光型の太陽光集光装置は、太陽光を効率よく集めて熱エネルギーに変えるものであり、例えば、トラフ型やタワー型太陽集光装置が知られている。このような太陽光集光装置を発電等に利用するに際しては、太陽光の照射がない夜間や悪天候等においても熱を利用できるように、集光した熱エネルギーを蓄熱する蓄熱装置の開発が望まれている。
【0004】
アメリカやスペインにおいては、既に太陽熱を利用した水蒸気タービン発電が実用化されており、この水蒸気タービン発電においての蓄熱装置は、沸騰水を加熱した水蒸気や溶融塩に太陽熱が蓄熱できるようになっている。しかしながら、水の臨界温度は374℃であり、それ以上の高温に適さないこと、溶融塩は500℃以上で熱分解することから、これらの蓄熱材料は高温度域での稼働には適さなかった。
【0005】
高温度域での稼働を可能とした蓄熱装置として、特許文献1に示されるようなビームダウン式太陽集光装置に適用される蓄熱装置がある。特許文献1の蓄熱装置は、二重筒状に構成される蓄熱槽の内底と外底を上下方向に相対移動させることにより、蓄熱槽内で蓄熱材料を機械的に攪拌できるように構成され、内底と外底の相対移動の速度を制御して太陽光の集中照射領域に新たな蓄熱材料が出現する時間をコントロールすることで、蓄熱材料を太陽光の集中照射領域に長い時間配置させ十分に加熱できるようにしたものであり、蓄熱材料としてアルミナ等の固体蓄熱材料を用いることにより1000℃以上の高温度域での稼働を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6798692号(第6頁~第8頁、第4図~第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の蓄熱装置は、高温度域で稼働されるため、蓄熱槽内で加熱された固体蓄熱材料から熱が伝わり蓄熱槽の壁面が高温になりやすく、蓄熱装置の変形や故障を招いてしまう虞があることから、蓄熱装置に用いる素材として耐熱性の高い素材を選定しなければならないという問題があった。また、特許文献1の蓄熱装置は、蓄熱槽内にある一定量の固体蓄熱材料しか加熱できない所謂バッチ式の蓄熱装置であるため、固体蓄熱材料から熱エネルギーを取り出して発電等に利用するに当たり、大量の固体蓄熱材料を扱うには効率が悪いという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、固体蓄熱材料からの伝熱を抑制することができる蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の蓄熱装置は、
集光手段により集光される太陽光を固体蓄熱材料が貯留される蓄熱槽に照射させ、該固体蓄熱材料に熱を蓄積させる蓄熱装置であって、
前記蓄熱装置は、複数の球状の前記固体蓄熱材料を前記蓄熱槽に供給する供給手段と、
前記蓄熱槽内に供給された前記固体蓄熱材料を排出口から排出する排出手段と、を備え、
前記蓄熱槽内において積層される前記固体蓄熱材料が下方の固定層と上方の流動層とに分かれていることを特徴としている。
この特徴によれば、蓄熱槽内に積層される固体蓄熱材料が、下方において移動が規制される固体蓄熱材料により形成される固定層と、該固定層の上方を転がりながら流動する固体蓄熱材料により形成される流動層とに分かれており、固定層が断熱性を発揮するため、太陽光で加熱された流動層から蓄熱槽の底面への伝熱を抑制することができる。したがって、固体蓄熱材料からの伝熱による蓄熱装置の変形や故障を防ぐことができ、蓄熱装置に用いる素材の選定を容易とすることができる。
【0010】
前記排出口は、前記蓄熱槽の底面よりも上方に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、蓄熱槽の底面から排出口に向かって立ち上がる壁面により蓄熱槽内において下方に積層される固体蓄熱材料を堰き止めて移動を規制することができるため、固定層を容易に形成することができる。
【0011】
前記蓄熱槽の底面は、前記排出口近傍に向けて下方に傾斜していることを特徴としている。
この特徴によれば、流動層の固体蓄熱材料が排出口に向かって移動しやすいとともに、蓄熱槽内において固定層を形成する固体蓄熱材料の量を少なくすることができる。
【0012】
前記供給手段は、前記固体蓄熱材料が貯留される貯留槽と、該貯留槽と前記蓄熱槽との間を仕切る仕切壁と、を備え、
前記仕切壁の下部には、前記固体蓄熱材料が通過可能な開口が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、流動層における固体蓄熱材料の流動に伴って、貯留槽に貯留された固体蓄熱材料が仕切壁の下部に設けられた開口から蓄熱槽内に逐次供給されるため、流動層における固体蓄熱材料の流量を安定させることができる。
【0013】
前記排出手段は、スクリューフィーダであることを特徴としている。
この特徴によれば、スクリューフィーダの回転数により流動層における固体蓄熱材料の流量を制御することで、排出口から排出される固体蓄熱材料の加熱温度を均一にすることができる。また、蓄熱装置において均一に加熱された固体蓄熱材料を連続的または断続的に排出することができるため、大量の固体蓄熱材料に蓄熱された熱エネルギーを効率的に取り出して発電等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例における蓄熱装置が適用されたビームダウン式太陽集光装置を示す概略図である。
図2】実施例における蓄熱装置を示す断面図である。
図3】実施例におけるレシーバ受光部を示す上面図である。
図4】実施例におけるレシーバ受光部に収容される固体蓄熱材料の固定層と流動層における温度分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る蓄熱装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係る蓄熱装置につき、図1から図4を参照して説明する。
【0017】
本実施例において蓄熱装置は、例えば太陽光を利用したビームダウン式太陽集光装置に適用され、集光した熱エネルギーを連続的または断続的に流動する固体蓄熱材料に蓄熱する流動型蓄熱装置として説明する。
【0018】
図1に示されるように、ビームダウン式太陽集光装置Aは、地上に立設されるタワー8と、同じく地上に配置される複数のヘリオスタットB,B,・・・と、を備えている。タワー8は、その上部に半球状の反射鏡80,80が取り付けられ、且つ中央部に載置面81を備え、この載置面81には蓄熱装置1及び熱交換器30が設置されている。また、蓄熱装置1の上方には円筒状の集光手段Eが配置されている。
【0019】
ヘリオスタットBは、太陽追尾装置であり、太陽の動きに追従し、太陽光を凹面鏡または平面鏡で反射させて一定の方向に送る装置である。複数のヘリオスタットB,B,・・・で反射された太陽光は、タワー8の反射鏡80,80と蓄熱装置1との間の所定位置(第一焦点C)で集光され、第一焦点Cにて集光された太陽光は、タワー8の上部に設置された反射鏡80,80で更に反射され、蓄熱装置1の上部に設置された集光手段E内(第二焦点D)で集光され、集光された太陽光を直下の蓄熱装置1に照射させるようになっている。
【0020】
なお、本実施例において、蓄熱装置1には、熱交換器30が接続されており、蓄熱装置1から連続的または断続的に排出される高温の固体蓄熱材料2と熱交換器30内を流れる低温の作動流体との間で熱交換が行われることにより、固体蓄熱材料2から熱エネルギーを取り出して発電等に利用できるようになっている。また、熱交換器30において熱エネルギーが取り出された固体蓄熱材料2は、図示しない移送手段により蓄熱装置1の後述する貯留槽12に戻される。
【0021】
本実施例において、固体蓄熱材料2は、同一形状に形成され、詳しくは粒径5mmの球状に形成されている(図4参照)。なお、固体蓄熱材料2の粒径は、使用環境等に応じて変更されてもよい。また、固体蓄熱材料2は、融点が2000℃以上のアルミナを素材としており、1500~1800℃程度の高温度域における使用にも耐えることができる。なお、固体蓄熱材料2はアルミナに限られずセラミックスや他の金属であってよく、例えば蓄熱装置1における加熱温度の上限が700~800℃程度に制御される場合には、固体蓄熱材料2としてステンレス鋼を素材として用いてもよい。
【0022】
図1及び図2に示されるように、蓄熱装置1は、複数の球状の固体蓄熱材料2が収容され加熱された固体蓄熱材料2を排出口13aから排出するレシーバ受光部10と、レシーバ受光部10の下方に接続され加熱された固体蓄熱材料2を軸方向に搬送した後、下方へ排出する排出手段としてのスクリューフィーダ20と、から主に構成されている。なお、スクリューフィーダ20は、台形ネジ型あるいはスパイラ型スクリューであることが好ましい。これにより、高温によるスクリューの変形が起こらず、固体蓄熱材料2の排出量を安定させることができる。
【0023】
図2及び図3に示されるように、レシーバ受光部10は、上面視略正十二角形に形成される内側の蓄熱槽11と、同じく上面視略正十二角形に形成される外側の貯留槽12により二重筒状に構成されている。本実施例において、レシーバ受光部10は、ステンレス鋼により形成されている。
【0024】
詳しくは、蓄熱槽11は、12枚の上面視略二等辺三角形の板材により形成される底面11aと、12枚の矩形の板材により形成される内周壁11bと、から主に構成されている。なお、内周壁11bを形成する12枚の板材の下部には、それぞれ固体蓄熱材料2が通過可能な開口11cが設けられている。すなわち、開口11cは、内周壁11bの周方向に12個等配されている。なお、本実施例において、底面11aを構成する上面視略二等辺三角形の板材における斜辺の寸法Lは225mmであり、上面視略二等辺三角形の鋭角部分の角度は26°である。
【0025】
また、蓄熱槽11は、蓄熱装置1の上方に設置された集光手段E内で集光された太陽光の照射領域に配置されている。蓄熱槽11の上端開口は、ガラス蓋14により閉塞されている。ガラス蓋14は、光の透過率が高い石英ガラスで形成されているため、集光手段Eから照射される光を蓄熱槽11内に十分に透過させることができる。また、ガラス蓋14は、外気の侵入を防いでおり、蓄熱槽11内で加熱される固体蓄熱材料2と外気との対流熱伝達を防止するとともに塵埃の混入を抑制している。
【0026】
蓄熱槽11の底部中央には、底面11aを上下に貫通する直管形状の排出管13が設けられており、排出管13の上端開口が排出口13aとなっている。なお、排出管13の内径は、固体蓄熱材料2をスムーズに流動させる観点から、固体蓄熱材料2の粒子の直径の約6倍以上であることが好ましい。この排出管13の下端開口は、スクリューフィーダ20の入口に接続されている。
【0027】
すなわち、蓄熱槽11の底部中央において、排出口13aは、蓄熱槽11の底面11aよりも上方に配置されている。
【0028】
また、蓄熱槽11の底面11aは、排出口13aに向けて下方に傾斜しており、貯留槽12の底面12aと連なる外径端が排出口13aよりも上方に配置されている。なお、蓄熱槽11の底面11aの傾斜角度は、蓄熱槽11に収容される固体蓄熱材料2の量を少なくしつつ、流量を安定させる観点から、固体蓄熱材料2の粒子の安息角と同じ角度θ(図4参照)に形成されることが好ましい。
【0029】
また、蓄熱槽11の底部中央において、蓄熱槽11の底面11aから立ち上がる排出管13の周壁13bにより蓄熱槽11に収容される固体蓄熱材料2の一部が堰き止められて固定層15が形成される(図2及び図4参照)。
【0030】
本実施例において、固定層15は、蓄熱槽11の底面11a全体に亘って3個の固体蓄熱材料2が積層されて形成されている(図4参照)。また、蓄熱槽11の底面11aが傾斜していることにより、底面が水平に形成される場合と比較して、蓄熱槽11内において固定層15を形成する固体蓄熱材料2の量を少なくすることができる。さらに、蓄熱槽11の底面11aが(角度θ)傾斜していることにより、流動層16を形成する各固体蓄熱材料2は自重の内径方向に向かう分力を受け、内径方向の排出口13aに流動しやすくなっている。
【0031】
なお、固定層15は、2個以上の固体蓄熱材料2が積層されて形成されることが好ましく、特に3個の固体蓄熱材料2が積層されて形成されることが好ましい。これにより、固定層15を形成する球状の固体蓄熱材料2間に形成される隙間S(図4参照)に存在する空気により、固定層15内に空気層が形成されやすい。
【0032】
さらに、固定層15の上方には、固定層15を形成する固体蓄熱材料2上を転がりながら流動しやすくなっている固体蓄熱材料2により流動層16が形成される(図2及び図4参照)。
【0033】
本実施例において、流動層16は、固定層15上に全体に亘って3個の固体蓄熱材料2が積層されて形成されている(図4参照)。なお、流動層16は、固定層15上に2~3個の固体蓄熱材料2が積層されて形成されることが好ましく、特に3個の固体蓄熱材料2が積層されて形成されることが好ましい。これにより、適度に加熱された固体蓄熱材料2の適度な流量を確保でき、排出口13aから排出される固体蓄熱材料2の加熱温度を均一に調整しやすい。これは、例えば、固定層15上に積層される固体蓄熱材料2が1個であると、固定層15の過度な温度上昇が生じやすくなり温度調整の効率が悪く、また4個以上であると流動層16の下方の固体蓄熱材料2が十分に加温されずに排出されるからである。
【0034】
このように、蓄熱槽11内に積層される固体蓄熱材料2は、下方の固定層15と上方の流動層16とに分かれている。また、固定層15及び流動層16は、蓄熱槽11の底面11aの傾斜に従って傾斜した表面形状を有しており、流動層16を形成する固体蓄熱材料2は、その球状からなる特徴から、流動層16の表面形状を維持できる限界を超えると、固定層15上を転がりながら流動する。
【0035】
図2及び図3に示されるように、貯留槽12は、上述した内周壁11bと、12枚の上面視等脚台形の板材により形成される底面12aと、12枚の矩形の板材により形成される外周壁12bと、から構成されている。すなわち、内周壁11bは、蓄熱槽11と貯留槽12との間を仕切る仕切壁である。
【0036】
なお、本実施例においては、貯留槽12と内周壁11bにより、固体蓄熱材料2を蓄熱槽11に供給する供給手段が構成されている。詳しくは、蓄熱槽11において流動層16を形成する固体蓄熱材料2が流動し、蓄熱槽11内に積層された固体蓄熱材料2の嵩が減少することに伴い、貯留槽12に貯留されていた固体蓄熱材料2が内周壁11bの開口11cを通して蓄熱槽11内へ供給される。なお、貯留槽12から蓄熱槽11に安定して固体蓄熱材料2を供給するためには、貯留槽12内に開口11cの上端よりも高い位置まで固体蓄熱材料2が貯留された状態が維持されることが好ましい(図2及び図4参照)
【0037】
次いで、本実施例における蓄熱装置1による固体蓄熱材料2の加熱方式について説明する。図2に示される集光手段Eは、集光強度を約4倍程度高めるCPC(Compound Parabolic Concentrator)を備え、第二焦点D(図1参照)にて集光された太陽光の強度を高め、蓄熱装置1のガラス蓋14を通して蓄熱槽11内に積層された固体蓄熱材料2により形成される被照射面16aへ照射するようになっている。なお、本実施例における被照射面16aは、蓄熱槽11内において流動層16を形成する固体蓄熱材料2により構成されており、詳しくは主に流動層16の表面側から1個目及び2個目の位置に積層され太陽光の照射を受けて直接加熱される固体蓄熱材料2により構成される(図4参照)。
【0038】
図2及び図4に示されるように、排出管13の下端に接続されるスクリューフィーダ20を稼働させると、排出管13内の固体蓄熱材料2が排出され、蓄熱槽11内において排出口13a上に位置していた固体蓄熱材料2が排出管13内に沈降する。これに伴い、流動層16において排出口13a近傍に位置していた固体蓄熱材料2が排出口13a上に滑落する。これにより、蓄熱槽11内に積層される固体蓄熱材料2が流動層16の表面形状を維持できなくなり、固定層15上を排出口13aに向けて転がりながら流動する。
【0039】
なお、流動層16における固体蓄熱材料2の流動に伴い貯留槽12から内周壁11bの開口11cを通して蓄熱槽11内に順次供給される。このとき、蓄熱槽11内から排出される固体蓄熱材料2の量と貯留槽12から蓄熱槽11内に供給される固体蓄熱材料2の量が略同一となるように、内周壁11bの開口11cの大きさや数が設定されているため、流動層16における固体蓄熱材料2の流量は安定している。
【0040】
また、流動層16における固体蓄熱材料2の流量は、主にスクリューフィーダ20の回転数により制御されており、流動層16を流動する固体蓄熱材料2の加熱時間が均一になるように調整されることにより、排出口13aから排出される固体蓄熱材料2を均一に加熱することができる。
【0041】
なお、本実施例の蓄熱装置1において、流動層16を流動する固体蓄熱材料2が目標温度、例えば加熱し得る最高温度に加熱されるまでに必要な加熱時間、すなわち固体蓄熱材料2が貯留槽12から蓄熱槽11内に供給された後、流動層16を流動して排出口13aから排出されるまでの時間は、流動層16における固体蓄熱材料2の平均流量5~16g/sの場合において13~15分間程度である。また、流動層16を流動する固体蓄熱材料2が最高温度に加熱されるまでに必要な加熱時間は、スクリューフィーダ20の回転数により制御される流動層16における固体蓄熱材料2の平均流量に応じて変化することは言うまでもない。なお、スクリューフィーダ20が断続的に稼働される場合、スクリューの回転数だけでなく、1回あたりのスクリューの回転量(回転角度)によっても流動層16における平均流量を調整することができる。
【0042】
また、流動層16を流動する固体蓄熱材料2のうち、固定層15との境界部分を流動する固体蓄熱材料2、すなわち本実施例において流動層16の表面側から3個目の位置に積層され被照射面16aを構成していない固体蓄熱材料2は、太陽光の照射をほとんど受けることがないが、流動層16を流動する固体蓄熱材料2は、その球状からなる特徴から、固定層15との境界部分を流動する固体蓄熱材料2と、被照射面16aを構成する固体蓄熱材料2とが流動層16における積層順を上下で入れ替えながら流動していくこと、流動層16の表面側から2層目の固体蓄熱材料2との熱伝導、固体蓄熱材料2同士の隙間の気体の熱対流、流動層16の表面側から1層目、2層目の固体蓄熱材料2からの熱輻射により、流動層16において排出口13a近傍に位置する全ての固体蓄熱材料2が最高温度まで均一に加熱されるようになっている(図4参照)。すなわち、流動層16を流動する固体蓄熱材料2の加熱温度は、太陽光の照射を受けて直接加熱される時間に大きく影響されるものであり、図4に示されるように、排出口13a側から最高温度帯(固体蓄熱材料2F)、高温度帯(固体蓄熱材料2G)、中温度帯(固体蓄熱材料2H)、低温度帯(固体蓄熱材料2)のような分布となっている。
【0043】
また、固定層15を形成する固体蓄熱材料2は、移動が規制され、流動層16の下方において太陽光の照射を受けて直接加熱されることがないため、流動層16と比べて低温の状態となっている。特に、固定層15において蓄熱槽11の底面11aに接する固体蓄熱材料2は、流動層16を流動する加熱された固体蓄熱材料2から熱の影響を受けにくく、全て低温度帯となっている。
【0044】
なお、図4に示されるように、固定層15において排出口13a近傍、かつ流動層16の近くに位置する固体蓄熱材料2は、流動層16において最高温度まで加熱される固体蓄熱材料2Fとの接触することにより、熱の影響を受けて温度が上昇しやすくなっている。本実施例の固定層15においては、特に図4の拡大部分に示されるように、排出管13の周壁13bに接触する固体蓄熱材料2のうち、固定層15の表面側から2個目に積層される固体蓄熱材料2Haが排出管13の上端よりも下方に位置するとともに、固定層15の表面側から1個目に積層される固体蓄熱材料2Gaの一部が排出管13の上端よりも上方に位置している。これにより、固定層15の表面側において温度が上昇した固体蓄熱材料2Gaは、頻度は低いものの流動層16を流動する固体蓄熱材料2Fとの衝突により排出管13の上端を乗り越えて排出口13a上へ移動することがある。これにより、固定層15において排出口13a近傍、かつ流動層16に近くに位置し、熱の影響を受けて温度が上昇しやすい固体蓄熱材料2Gaを逐次入れ替えることができるため、固定層15を形成する固体蓄熱材料2の過剰な温度上昇が抑えられている。
【0045】
以上説明したように、本実施例の蓄熱装置1において、蓄熱槽11内に積層される固体蓄熱材料2が固定層15と流動層16とに分かれており、固定層15が断熱性を発揮するため、太陽光で加熱された流動層16から蓄熱槽11の底面への伝熱を抑制することができる。これは、蓄熱槽11内に積層される球状の固体蓄熱材料2同士は、点接触となり熱伝導による伝熱量が小さいこと、固定層15において球状の固体蓄熱材料2間に形成される隙間Sに存在する空気により空気層が形成されること等により、太陽光により直接加熱され被照射面16aが形成される流動層16の下方で固定層15が断熱性を発揮するからである。このようにして、固体蓄熱材料2からの伝熱による蓄熱装置1の変形や故障を防ぐことができ、蓄熱装置1に用いる素材の選定を容易とすることができる。
【0046】
また、固定層15上を流動する流動層16を形成する固体蓄熱材料2は、スクリューフィーダ20の回転数により蓄熱槽11内における流量が制御されることにより、蓄熱槽11内において太陽光により直接照射される加熱時間を略均一にし、排出口13aから排出される固体蓄熱材料2の加熱温度を均一することができる。したがって、蓄熱装置1において均一に加熱された固体蓄熱材料2を熱交換器30に対して連続的または断続的に供給することができるため、大量の固体蓄熱材料2に蓄熱された熱エネルギーを効率的に取り出して発電等に利用することができる。
【0047】
また、本実施例の蓄熱装置1は、貯留槽12から蓄熱槽11内に固体蓄熱材料2を逐次供給することにより、流動層16において固体蓄熱材料2を連続的に加熱することができるため、例えば排出口13aから排出された全ての固体蓄熱材料2を図示しない他の蓄熱槽に蓄えた後、所望のタイミングで熱交換に利用する場合、日射量に応じて蓄熱総量を変えることができる。
【0048】
また、本実施例の蓄熱装置1において、排出口13aから排出された高温の固体蓄熱材料2は、熱交換器30内を流れる低温の作動流体との間で熱交換により熱エネルギーが取り出された後、図示しない移送手段により貯留槽12に戻されることで循環するため、高温の固体蓄熱材料2と熱交換器30内を流れる低温の作動流体との間で連続的に熱交換を行うことができ、熱交換量を増やすことができる。
【0049】
また、排出口13aは、蓄熱槽11の底部中央において底面11aよりも上方に配置されていることにより、蓄熱槽11の底面11aから排出口13aに向かって立ち上がる壁面、すなわち本実施例における排出管13の周壁13bにより蓄熱槽11内において下方に積層される固体蓄熱材料2を堰き止めて移動を規制することができるため、固定層15を容易に形成することができる。
【0050】
また、排出管13の周壁13bにより固体蓄熱材料2が堰き止められ、排出口13a近傍まで固定層15が形成されることにより、蓄熱槽11の広い範囲で固定層15による断熱性を発揮することができる。さらに、流動層16の流量を排出口13a近傍まで安定させ、最高温度まで均一に加熱された固体蓄熱材料2を排出口13aから排出することができるため、熱エネルギーのロスが少ない。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0052】
例えば、前記実施例では、固定層15と流動層16が同じ固体蓄熱材料2により形成される態様について説明したが、これに限らず、例えば固定層15を形成する固体蓄熱材料の粒径を、流動層16を形成する固体蓄熱材料の粒径よりも小さくすることにより、固定層15の表面の平滑度を高め、流動層における固体蓄熱材料の流動性を向上させるようにしてもよい。
【0053】
また、固定層15を形成する固体蓄熱材料は、流動層16を形成する固体蓄熱材料よりも温度が上昇しにくいため、例えば固定層15を形成する固体蓄熱材料の素材としてステンレス鋼を使用し、流動層16を形成する固体蓄熱材料2の素材として耐熱性の高いアルミナを使用してもよい。
【0054】
また、前記実施例では、レシーバ受光部10を構成する蓄熱槽11と貯留槽12とは、どちらも上面視略正十二角形に形成されるものとして説明したが、これに限らず、蓄熱槽と貯留槽は、他の正多角形や円形等に形成されてもよい。また、貯留槽から蓄熱槽に固体蓄熱材料を安定して供給することできれば、蓄熱槽と貯留槽とは異なる形状に形成されてもよい。
【0055】
また、前記実施例では、排出口13aは、蓄熱槽11の底部中央において底面11aよりも上方に配置されている態様について説明したが、これに限らず、排出口は、蓄熱槽の底面と同じ高さ、あるいは蓄熱槽の底面よりも下方に配置されていてもよい。この場合、蓄熱槽の底面に固定層を形成するための堰が、排出口よりも上流側の位置に別途設けられていればよい。
【0056】
また、前記実施例では、貯留槽12と内周壁11bにより、固体蓄熱材料2を蓄熱槽11に供給する供給手段が構成される態様について説明したが、これに限らず、供給手段は、蓄熱槽に固体蓄熱材料を安定して供給できるものであれば、既存の定量供給機等により構成されてよい。
【0057】
また、前記実施例では、スクリューフィーダ20により排出手段が構成される態様について説明したが、これに限らず、排出手段は、ロータリーフィーダや振動フィーダ等の他のフィーダが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 蓄熱装置
2 固体蓄熱材料
10 レシーバ受光部
11 蓄熱槽
11a 底面
11b 内周壁(仕切壁,供給手段)
11c 開口
12 貯留槽(供給手段)
12a 底面
12b 外周壁
13 排出管
13a 排出口
13b 周壁
13c 下端開口
14 ガラス蓋
15 固定層
16 流動層
16a 被照射面
20 スクリューフィーダ(排出手段)
30 熱交換器
A ビームダウン式太陽集光装置
B ヘリオスタット
E 集光手段
S 隙間
図1
図2
図3
図4