(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038812
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】模様付製品成形用押出しダイス
(51)【国際特許分類】
B21C 25/08 20060101AFI20240313BHJP
B21C 23/14 20060101ALI20240313BHJP
B21C 25/02 20060101ALI20240313BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20240313BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240313BHJP
【FI】
B21C25/08
B21C23/14
B21C25/02 Z
B29C48/30
B29C48/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143110
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000250432
【氏名又は名称】理研軽金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】林 沛征
(72)【発明者】
【氏名】清水 文貴
(72)【発明者】
【氏名】古川 真一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光広
【テーマコード(参考)】
4E029
4F207
【Fターム(参考)】
4E029EA02
4E029MB09
4F207AJ08
4F207KL62
(57)【要約】
【課題】製品用部材の表面に凹凸模様を成形する際に製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止して、生産性の向上が図れることができる模様付製品成形用押出しダイスを提供する。
【解決手段】熱可塑性部材を導入する上型ダイ10と、この上型ダイ10を支持する下型ダイ20と、製品用部材50の移動とともに回転して製品用部材50の表面に凹凸模様を成形する模様成形具30とを具備し、上型ダイ10は、上記熱可塑性部材を製品用部材50の形状に成形するベアリング部13を有し、ベアリング部13における製品用部材50の裏面側成形面に、製品用部材50が模様成形具30に巻き込まれるのを掛止により阻止する突起54を成形する突起成形部14を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材供給側から連続して押し出される熱可塑性部材で形成される製品用部材の表面に模様を成形する模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記熱可塑性部材を導入する上型ダイと、この上型ダイを支持する下型ダイと、上記製品用部材の移動とともに回転して上記製品用部材の表面に上記模様を成形する模様成形具とを具備し、
上記上型ダイは、上記熱可塑性部材を上記製品用部材の形状に成形するベアリング部を有し、上記ベアリング部における上記製品用部材の裏面側成形面に、上記製品用部材が上記模様成形具に巻き込まれるのを掛止により阻止する突起を成形する突起成形部が設けられている、
ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項2】
請求項1に記載の模様付製品用押出しダイスであって、
上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面から先端に向かって膨隆する凹状に形成されている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項3】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面の中央部に設けられている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項4】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面の中央部と、上記裏面側成形面における両端部に設けられている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項5】
請求項1に記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面における両端部又は両端部近傍位置に設けられている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の模様付製品成形用押出しダイスであって、
上記模様成形具は、上記上型ダイにおける上記ベアリング部の下方側に回転自在に、かつ、上記製品用部材側に向かって押圧調整可能に配設されている、ことを特徴とする模様付製品成形用押出しダイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性材料としての、例えばアルミニウム合金で形成される製品用部材の表面に所定の模様を成形して模様付製品を製造する模様付製品成形用押出しダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にアルミニウム合金等は、加工性に優れており、断面形状の自由度も高く期待できる等、様々な形状を得ることができることから押出し加工に適しており、現在では広く採用されている。
例えば、アルミニウム合金の押出加工により表面にラック形状や波形状等の凹凸模様、表面の長手方向及び長手方向と直交する幅方向に連続して形成される等の凹凸模様を成形することも行われている。表面に凹凸模様を成形した製品として、例えば、ビルのジョイントカバー、スロープや滑り止め機能を有する床材等がある。
【0003】
従来、凹凸模様付製品を押出し成形する技術として、素材供給側から連続して押し出される熱可塑性部材で形成される製品用部材の表面に模様を成形する模様付製品成形用押出しダイスが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1,2に記載の模様付製品成形用押出しダイスによれば、略粘土状の柔らかさで連続して押し出される熱可塑性部材であるアルミニウム合金からなるメタルをベアリング部で製品用部材に成形し、メタルの押出しに伴って回転する、表面に凹凸模様成形部を有する模様成形具によって製品用部材の表面に凹凸模様が成形される。すなわち、製品用部材の表面に凹凸模様が成形される際に、模様成形具の表面に設けられた凹凸模様成形部の凸部が製品用部材の表面に食い込んで模様が成形される。なお、特許文献2に記載の模様付製品成形用押出しダイスにおいては、平板状の表面部の幅方向の一端部に表面部と直交する折曲げ部を有する製品用部材の表面に、上記と同様に凹凸模様が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-146697号公報
【特許文献2】特開2022-22816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製品部材の表面に深い凹凸模様や模様成形具の表面に設けられる凹凸模様成形部の凸部が製品用部材の幅方向に連続する場合には、製品用部材と模様成形具との接触面積が増え、模様成形具による曲げ荷重が増えるため、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれる懸念がある。製品用部材が模様成形具側に巻き込まれると、製品用部材の表面側は潰れたように、裏面側は引っ張られるように変形するため、不良品となってしまう。その結果、不良品は廃棄処分することになり、材料の無駄や作業時間の無駄が生じ、また、生産性の低下を招く懸念がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、製品用部材の表面に凹凸模様を成形する際に製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止して、生産性の向上が図れるようにした模様付製品成形用押出しダイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、この発明は、素材供給側から連続して押し出される熱可塑性部材で形成される製品用部材の表面に模様を成形する模様付製品成形用押出しダイスであって、 上記熱可塑性部材を導入する上型ダイと、この上型ダイを支持する下型ダイと、上記製品用部材の移動とともに回転して上記製品用部材の表面に上記模様を成形する模様成形具とを具備し、 上記上型ダイは、上記熱可塑性部材を上記製品用部材の形状に成形するベアリング部を有し、上記ベアリング部における上記製品用部材の裏面側成形面に、上記製品用部材が上記模様成形具に巻き込まれるのを掛止により阻止する突起を成形する突起成形部が設けられている、ことを特徴とする(請求項1)。この場合、上記突起成形部は、上記ベアリング部の裏面側成形面から先端に向かって膨隆する凹状に形成されるのが好ましい(請求項2)。
【0009】
このように構成することにより、熱可塑性部材を押し出して熱可塑性部材がベアリング部を通過することによって熱可塑性部材が製品用部材の形状に成形されると共に、製品用部材の裏面側に巻き込み阻止用の突起が成形される。この熱可塑性部材の表面に模様成形具による押圧力が作用して製品用部材の表面に凹凸模様が成形される。この際、製品用部材に模様成形具による曲げ荷重による曲げる力が作用するが、ベアリング部において製品用部材の裏面側に成形される突起が突起成形部に掛止され、曲げる力に対して反対の力が作用するため、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止することができる。また、製品用部材の裏面側に長手方向に沿う突起が成形されるため、突起に補強機能を持たせることができる。
【0010】
この発明において、上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面の中央部に設けられるのが好ましい(請求項3)。
【0011】
このように構成することにより、製品用部材の裏面側の中央部に成形される突起が、ベアリング部の裏面側成形面の中央部に設けられた突起成形部に掛止されて、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止することができる。
【0012】
また、この発明において、上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面の中央部と、上記裏面側成形面における両端部に設けられているのが好ましい(請求項4)。
【0013】
このように構成することにより、製品用部材の裏面側の中央部と、裏面側の両端部に成形される突起が、ベアリング部の裏面側成形面の中央部と、裏面側成形面における両端部に設けられた突起成形部に掛止されて、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止することができる。
【0014】
また、この発明において、上記突起成形部は、上記ベアリング部の上記裏面側成形面における両端部又は両端部近傍位置に設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0015】
このように構成することにより、製品用部材の裏面側の両端部又は両端部近傍位置に成形される突起が、ベアリング部の裏面側成形面の両端部又は両端部近傍位置に設けられた突起成形部に掛止されて、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止することができる。
【0016】
加えて、この発明において、上記模様成形具は、上記上型ダイにおける上記ベアリング部の下方側に回転自在に、かつ、上記製品用部材側に向かって押圧調整可能に配設されているのが好ましい(請求項6)。
【0017】
このように構成することにより、模様成形具をベアリング部の下方に近づけて配設することができるので、製品用部材における模様成形具による曲げ荷重の作用点とベアリング部における突起成形部との距離を短くすることができ、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを更に確実に阻止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、上記のように構成されているので、製品用部材の表面に凹凸模様を成形する際に、ベアリング部において製品用部材の裏面側に成形される突起が突起成形部に掛止されることで、製品用部材が模様成形具側に巻き込まれるのを阻止することができる。その結果、材料の無駄や作業時間の無駄を省くことができ、生産性の向上が図れる。また、製品用部材の裏面側に長手方向に沿って成形される突起に補強機能を持たせることができるため、製品用部材の強度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスの使用状態を示す断面図である。
【
図3】上記模様付製品成形用押出しダイスの使用状態を示す断面斜視図である。
【
図4】この発明における模様成形具による模様成形時の巻き込み阻止の状態を示す概略側面図(a)及びこの発明における突起成形部による巻き込み阻止の状態を示す概略平面図(b)である。
【
図5】この発明における上型ダイの平面図(a)及びベアリング部を示す拡大平面図(b)である。
【
図5A】この発明における別の上型ダイの平面図(a)及びベアリング部を示す拡大平面図(b)である。
【
図6】この発明における突起成形部の別の実施形態を示し、(a)は中央部に、(b)は中央部と両端部に、(c)は両端部に、(d)は両端部近傍位置に設けた状態を示す拡大平面図である。
【
図6A】この発明における突起成形部の
図6に示す別の実施形態による巻き込み阻止の状態を示す概略平面図である。
【
図6B】この発明における突起成形部の更に別の実施形態の要部を示す拡大平面図である。
【
図7】この発明における模様成形具の位置調整機構を表し、(a)は模様成形具が製品用部材に最大限食い込んだ状態であり、(b)は模様成形具が製品用部材に僅かに食い込んだ状態の一部を断面で示す平面図である。
【
図9】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスによって成形された模様付製品の一例を示す斜視図である。
【
図10】この発明に係る模様付製品成形用押出しダイスによって成形された模様付製品の別の例を示す斜視図(a)及びその模様付製品の一部拡大平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
この発明に係る模様付製品成形用押出しダイス1(以下、単に押出しダイス1という)は、熱可塑性部材であるアルミニウム合金等のメタルMを図示しないラムやステムなどによって押出しダイス1に連続して供給することにより、押出しダイス1におけるベアリング部13などで所期の形状の製品用部材50を成形するように構成されている。
【0022】
製品用部材50は、
図9に示すように、板状の長尺材であって、表面51には、連続した凹凸形状の模様53が施されており、裏面52には巻き込み阻止用の突起54が長手方向に沿って突設されている。
【0023】
押出しダイス1は、コンテナ40から押圧されたメタルMを導入する上型ダイ10と、上型ダイ10を支持する下型ダイ20と、製品用部材50の移動とともに回転して製品用部材50の表面に模様53を成形する模様成形具30とを備え、上型ダイ10と下型ダイ20とは、上型ダイ10の一側部に形成された凹部11と下型ダイ20の一側部に形成された凸部21とが嵌合された状態で、例えば、下型ダイ20の裏面から差し込んだ連結ボルト(図示せず)により連結されている。
【0024】
図1に示すようにコンテナ40は、上型ダイ10の上面に載置されていて、メタルMを収容すると共に、そのメタルMの温度を400~500℃に保つことができるように構成されている。
【0025】
上型ダイ10は、
図1,3に示すように、コンテナ40を載置するために中央部分が僅かに窪んで形成されており、その窪んだ部分の中央部にメタル導入凹部12が形成されている。メタル導入凹部12の底部には、メタルMを製品用部材50の形状に成形するベアリング部13が形成されている。
【0026】
ベアリング部13における製品用部材50の裏面側成形面13aには、模様成形具30によって製品用部材50の表面に凹凸模様が成形される際に、製品用部材50が模様成形具30に巻き込まれるのを掛止により阻止する突起54を成形する突起成形部14が設けられている。
この場合、突起成形部14は、
図4及び
図5に示すように、ベアリング部13における裏面側成形面13aの中央部に設けられ、裏面側成形面13aから先端に向かって両側が傾斜状に膨隆する略台形の凹状に形成されている。換言すると、突起成形部14は、裏面側成形面13aに設けられる開口部14aの両側から先端に向かって拡開する傾斜部14bを有する略台形状に形成されている。
【0027】
また、ベアリング部13の下方には、
図2に示すように、このベアリング部13に連続した上側ガイド部15が形成されている。上側ガイド部15を構成する一方の側部には、後述する模様成形具30を配置する空間16が設けられている。上側ガイド部15における空間16と対向する側には逃げ部15aが形成されている。
【0028】
また、ベアリング部13の下方側の側面のうち模様成形具30が設けられた部分の上方に位置する側面には、下流側に向けて突出した突出部17が設けられている。この突出部17は、模様成形具30の上部側の外周一部に沿ってかつ外周一部を覆うように形成されている。この突出部17のうちのメタルMに対向した面は、メタルMと所定の隙間が空くように形成されていて、この部分が上側ガイド部15として機能するように構成されている。また、この突出部17が形成されていない側面の下部は、メタルMが進行するに連れてメタルMとの隙間が大きくなるように傾斜して形成され、その傾斜面が上側ガイド部15として機能するように構成されている。
【0029】
模様成形具30を配置する空間16は、横断面が略長方形状に形成されており、空間16の長さ方向に沿った両側には、模様成形具30の取付部材31を設置する取付部材設置用穴18がそれぞれ形成されている。なお、
図7では一方の取付部材設置用穴18を示している。この取付部材設置用穴18は、空間16の長手方向に沿って設けられ、所定幅の矩形状で、かつ所定深さに形成されている。そして、取付部材設置用穴18には、取付部材31が挿入される。
【0030】
また、上型ダイ10の外周面のうちの各取付部材設置用穴18の延長線上の位置には、取付部材設置用穴18に連通した貫通孔19が形成されている。この貫通孔19は、取付部材設置用穴18側の内径が、上型ダイ10の外周側の内径よりも小さく形成されていて、その内径が小さい部分に雌ねじが形成されている。この雌ねじに、後述する模様成形具30の位置調整機構を構成する位置調整用ボルト32が螺合されるようになっている。この雌ねじは、取付部材31の側面の上側と下側との2箇所を押圧するように二つ形成されている。
【0031】
下型ダイ20には、メタルMをガイドする下側ガイド部22が形成されている。この下側ガイド部22は、上側ガイド部15の下端側の開口面積よりも大きな開口面積に形成され、下型ダイ20の軸線方向に沿って形成されている。
【0032】
模様成形具30は、メタルMの表面に長手方向に連続する凹凸形状の模様53を成形するもので、外周面に頂部と谷部とを適宜間隔をおいて設けたローラーにて形成されている。これにより、製品用部材50の表面に成形される模様53は、模様成形具30の頂部と谷部とに対応した凹部53aと凸部53bとを有し、メタルMの表面を模様成形具30と逃げ部15aとの間で挟み込むことにより成形される。
【0033】
次に、模様成形具30及び模様成形具30の取付構造について説明する。模様成形具30は、前述のように逃げ部15aに対向した位置に配設されている。また、
図8に示すように、取付部材31には、軸受33が嵌着されていて、その軸受33に模様成形具30を支持するための軸部34が嵌着している。この取付部材31は、
図8に示すように、取付部材設置用穴18に挿入され、かつメタルM側にスライド自在に嵌め込まれている。なお、
図2に示すように、模様成形具30と軸部34とはキー35で連結されている。
【0034】
次に、
図7を参照して位置調整機構の構造について説明する。位置調整機構は、取付部材31の長さ方向の一方側の端部と当接する位置調整用ボルト32と、取付部材設置用穴18に挿脱自在に設けられる調整用スペーサ36とで構成されている。
【0035】
この位置調整用ボルト32は、上型ダイ10の外周側から取付部材31の側面に向けて形成されたそれぞれの雌ねじに螺合させることで、各位置調整用ボルト32の先端部を取付部材31の長さ方向における一方側の端部に当接させるように構成されている。
【0036】
例えば、
図7(a)に示すように、位置調整用ボルト32を雌ねじにねじ込むと、取付部材31が取付部材設置用穴18内を矢印Y方向にスライドし、これにより、模様成形具30の頂部がメタルMの所定の表面に食い込む量の調整、すなわち、模様成形具30と表面との距離を調整することができる。なお、
図7(a)では、位置調整用ボルト32を最大限ねじ込んだ状態を示しており、このとき、取付部材31の他方側の側面部が取付部材設置用穴18の端部に当接している。また、取付部材31の一方側の側面部と取付部材設置用穴18の一方側の側面部との間は、所定寸法の隙間Lとなっている。
【0037】
図7(b)には、模様成形具30の頂部がメタルMの表面に食い込む量を少なくする場合の調整方法を示してある。この場合、位置調整用ボルト32を逆方向に回すと、取付部材31が取付部材設置用穴18内をスライド自在となる。そこで、まず、上記所定寸法の隙間Lがなくなるまで位置調整用ボルト32を逆方向に回す。
【0038】
次いで、模様成形具30を手で掴んで位置調整用ボルト32側に引き寄せる。その後、模様成形具30の頂部のメタルMへの設定された食い込み量となるように、他方側の側面の寸法の隙間L1に調整用スペーサ36を挿入しておいて、位置調整用ボルト32を取付部材31の側面に当接するまでねじ込む。このとき、取付部材31と取付部材設置用穴18の側面との間の隙間L1と、取付部材31と取付部材設置用穴18の他方側の側面の隙間L2とを合わせた寸法は、上記
図7(a)における隙間L(=L1+L2)と同じである。
【0039】
なお、位置調整用ボルト32は、いずれか一方の位置調整用ボルト32を操作するだけでもよく、あるいは、位置調整用ボルト32を一つのみ設けていてもよい。
【0040】
図8に示すように、調整用スペーサ36は、所定厚さ寸法に仕上げられたプレートで形成されており、調整用スペーサ36は、模様成形具30の頂部のメタルMに対する食い込み量を調整できるように、厚さの異なる複数種類のプレートが予め準備されている。この調整用スペーサ36は、取付部材31の厚さと略同じ寸法の長さに形成されている。
【0041】
また、調整用スペーサ36の上端部には、
図8に示すように、幅方向における両端部に把持部37が形成されている。この把持部37は、調整用スペーサ36を取付部材設置用穴18内に挿入させる際に、所定の挟み具(治具)で挟んで作業するために形成されている。
【0042】
次に、以上のように構成される押出しダイス1による製品用部材50の成形方法を説明する。作業に先立って、メタルMの表面に凹凸形状の模様53を成形するための模様成形具30を下型ダイ20にセットしておく。このとき、模様成形具30の頂部が製品用部材50の表面に食い込む量、つまり凹部53a及び凸部53bの高さ寸法を所望の寸法とするために、位置調整用ボルト32により模様成形具30の位置を設定しておく。
【0043】
コンテナ40から上型ダイ10にメタルMが導入され、更に、メタル導入凹部12を経由して下流側に押し出されると、ベアリング部13との間をメタルMが通過することにより、メタルMの外形形状が製品用部材50の外形形状に成形されると共に、突起成形部14によってメタルMの裏面に先端部が膨隆する略台形状の突起54が成形される。そのメタルMは上型ダイ10の上側ガイド部15に沿って下型ダイ20側に押出される。上型ダイ10に設けられた模様成形具30を覆うように突出部17が形成されているため、特に、メタルMを押出し始めた時点における先端部分が、模様成形具30と逃げ部15aとの間に挟まれる以前に、模様成形具30と接触することを抑制できる。すなわち、メタルMの意図した位置に模様成形具30の押圧力を作用させることができる。
【0044】
そして、上側ガイド部15に押出されたメタルMは、上側ガイド部15にガイドされながら下方に押し出される途中で、メタルMの押出しに伴って回転する模様成形具30により、表面に凹凸形状の模様53が連続して成形される。すなわち、模様成形具30は、メタルMを押出しダイス1に押圧する荷重を利用して回転するように構成されてる。
【0045】
前述したように模様成形具30の頂部が、上型ダイ10から押出されるメタルMの表面に食い込むとき、その押圧力がメタルMに伝わるため、表面が模様成形具30と対向する反対側に押される。この際、
図4に示すように、メタルMに模様成形具30による曲げ荷重により曲げる力P1が作用するが、ベアリング部13においてメタルMの裏面側の中央部に成形される略台形状の突起54が突起成形部14の傾斜部14bに掛止され、曲げ荷重すなわち曲げる力P1に対して反対の力P2が作用するため、メタルMすなわち模様53が成形された製品用部材50が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる。このようにして成形された製品50Aは、
図9に示すように、表面には長手方向に凹部53a及び凸部53bが連続する凹凸模様53が成形され、裏面の中央部には長手方向に沿って突起54が成形される。したがって、突起54に補強機能を持たせることができるので、製品50Aに強度を持たせることができる。
【0046】
なお、模様成形具30の頂部による食い込み量を変えたい場合、例えば、食い込む量を少なくする場合には、位置調整用ボルト32を逆方向に回して、取付部材31が取付部材設置用穴18内をスライド可能にする。次いで、模様成形具30の位置調整用ボルト32側に引き寄せた後、模様成形具30の頂部による所定の食い込み量となるように、取付部材設置用穴18内に所定の調整用スペーサ36を挿入し、位置調整用ボルト32を取付部材31の側面に当接するまでねじ込む。この状態で、前述のように、コンテナ40を操作して、アルミニウム合金を押出しダイス1に供給して、模様成形具30によりメタルM(製品用部材50)の表面に凹凸形状の模様53を成形する。
【0047】
上記実施形態では、板状の製品用部材50の表面に凹凸模様53を成形する場合について説明したが、平板状の表面部の幅方向の一端部に表面部と直交する折曲げ部を有する製品用部材の表面に、上記と同様に凹凸模様53を成形することができる。この場合は、
図5Aに示すように、ベアリング部13の幅方向の一端部に表面部と直交する折曲げ成形部13bを設ける。また、上記実施形態の押出しダイス1のベアリング部13に設けられる突起成形部14の形状は、ベアリング部13の裏面側成形面13aから先端に向かって膨隆する凹状に形成されるものであれば、上記の形状に限定されるものではなく、
図6(a)~(d)に示すような形状としてもよい。
【0048】
(a)ベアリング部13の裏面側成形面13aの中央部に、裏面側成形面13aから先端に向かって両側が水平方向に膨隆する略T字形の凹状の突起成形部14Aを形成する(
図6(a)参照)。換言すると、突起成形部14Aは、裏面側成形面13aに設けられる開口部14aの両側から水平方向に拡開する水平部14cを有する略T字形に形成されている。
【0049】
このように形成することにより、製品用部材50の表面に模様53が成形される際、ベアリング部13の裏面側成形面13aにおける中央部に成形される略T字形の突起54Aが、突起成形部14Aの水平部14cに掛止され、曲げ荷重により曲げる力P1に対して反対の力P2が作用するため、メタルM(製品用部材50)が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる(
図6A(a)参照)。
【0050】
(b)ベアリング部13の裏面側成形面13aの中央部に、裏面側成形面13aから先端に向かって両側が傾斜状に膨隆する略台形の凹状の突起成形部14と、裏面側成形面13aにおける両端部に設けられる、内方側面が裏面側成形面13aから先端に向かって傾斜状に膨隆する突起成形部14Bとを形成する(
図6(b)参照)。この場合、突起成形部14Bは、裏面側成形面13aの両端部に設けられる開口部14aの内方側から先端に向かって拡開する傾斜部14bを有する略台形状に形成されている。
【0051】
このように形成することにより、製品用部材50の表面に模様53が成形される際、ベアリング部13の裏面側成形面13aにおける中央部に成形される略台形状の突起54と、裏面側成形面13aにおける両端部に成形される略台形状の突起54Bが、突起成形部14の傾斜部14bと突起成形部14Bの傾斜部14bに掛止され、曲げ荷重により曲げる力P1に対して反対の力P2が作用するため、メタルM(製品用部材50)が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる(
図6A(b)参照)。
【0052】
(c)ベアリング部13の裏面側成形面13aにおける両端部に設けられる、内方側面が裏面側成形面13aから先端に向かって傾斜状に膨隆する一対の突起成形部14Cを形成する(
図6(c)参照)。換言すると、突起成形部14Cは、裏面側成形面13aの両端部に設けられる開口部14aの内方側から先端に向かって拡開する傾斜部14bを有する略台形状に形成されている。
【0053】
このように形成することにより、製品用部材50の表面に模様53が成形される際、ベアリング部13の裏面側成形面13aにおける両端部に成形される略台形状の突起54Cが、突起成形部14Cの傾斜部14bに掛止され、曲げ荷重により曲げる力P1に対して反対の力P2が作用するため、メタルM(製品用部材50)が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる(
図6A(c)参照)。
【0054】
(d)ベアリング部13の裏面側成形面13aにおける両端部近傍位置に設けられる、裏面側成形面13aから先端に向かって両側が傾斜状に膨隆する一対の突起成形部14Dを形成する(
図6(d)参照)。換言すると、突起成形部14Dは、裏面側成形面13aの両端部近傍位置に設けられる開口部14aの両側から先端に向かって拡開する傾斜部14bを有する略台形状に形成されている。
【0055】
このように形成することにより、製品用部材50の表面に模様53が成形される際、ベアリング部13の裏面側成形面13aにおける両端部近傍位置に成形される略台形状の突起54Dが、突起成形部14Dの傾斜部14bに掛止され、曲げ荷重により曲げる力P1に対して反対の力P2が作用するため、メタルM(製品用部材50)が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる(
図6A(d)参照)。
【0056】
なお、上記実施形態(b),(d)では、突起成形部14,14Dが略台形状に形成される場合について説明したが、突起成形部14,14Dを突起成形部14Aと同様な略T字形に形成してもよい。また、実施形態(b),(c)では、突起成形部14B,14Cが裏面側成形面13aの両端部に設けられる開口部14aの内方側から先端に向かって拡開する傾斜部14bを有する略台形状に形成される場合について説明したが、突起成形部14B,14Cを、裏面側成形面13aの両端部に設けられる開口部14aの内方側から水平方向に拡開する水平部を有する略L字形に形成してもよい。
【0057】
また、突起成形部の形状は、上記以外のものでもよく、例えば、
図6B(a)に示すように、裏面側成形面13aから先端に向かって屈曲状に膨隆する略J字状、いわゆる鉤状の突起成形部14Eや、
図6B(b)に示すように、裏面側成形面13aから先端に向かって側面が微細な凹凸状に膨隆する突起成形部14Fであってもよい。なお、
図6B(a),(b)では、突起成形部14E,14Fの一部を拡大して示したが、上述したように、突起成形部14E,14Fは裏面側成形面13aの中央、両端又は両端部の任意の位置に設けられる。
【0058】
上記のように形成される突起成形部14Eによって成形される略J字状(鉤状)の突起54Eと突起成形部14Fによって成形される両側に微細凹凸部54fを有する突起54Fは、製品用部材50の表面に模様が成形される際、突起成形部14E,14Fに掛止されることで、メタルM(製品用部材50)が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる。
【0059】
上記実施形態では、製品用部材50の表面に長手方向に沿う凹部53aと凸部53bが連続する凹凸模様53を成形する場合について説明したが、模様成形具30を代えることによって、例えば、
図10に示すように、製品用部材50の表面の長手方向及び長手方向と直交する幅方向に、長手方向に対して傾斜して連続する凹凸状の菱形模様55を成形する場合にも適用できる。この場合、各菱形模様55が凹部であり、隣り合う菱形模様55同士の間隔56の間が凸部となっている。また、菱形模様55の菱形形状は、菱形の2本の対角線のうち長い方の対角線が表面部の長手方向に沿って連続して配置されている。
【0060】
なお、製品用部材50に成形される模様は、上記凹部53aと凸部53bが連続する凹凸模様53や菱形模様55に限定されるものではなく、その他の形状の模様、例えば、丸形模様、三角形状の模様、四角形状の模様、多角形状の模様等を成形するようにしてもよい。
【0061】
上記のように構成される実施形態の模様付製品成形用押出しダイスによれば、製品用部材50の表面に凹凸模様を成形する際に、ベアリング部13において製品用部材50の裏面側に成形される突起54,54A,54B,54C,54D,54E,54Fが突起成形部14,14A,14B,14C,14D,14E,14Fに掛止されることで、製品用部材50が模様成形具30側に巻き込まれるのを阻止することができる。その結果、材料の無駄や作業時間の無駄を省くことができ、生産性の向上が図れる。また、製品用部材50の裏面側に長手方向に沿って成形される突起54に補強機能を持たせることができるため、製品用部材50の強度の向上が図れる。
【0062】
なお、上記実施形態では、製品の材料がアルミニウム合金である場合について説明したが、製品の材料は、アルミニウム合金に限らず、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などの汎用のプラスチックや、PA(ポリアミド)などのエンジニアリング・プラスチックなどの合成樹脂を使用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 押出しダイス(模様付製品成形用押出しダイス)
10 上型ダイ
12 メタル導入凹部
13 ベアリング部
13a 裏面側成形面
14,14A,14B,14C,14D,14E,14F 突起成形部
14a 開口部
14b 傾斜部
14c 水平部
15 上側ガイド部
16 空間
18 取付部材設置用穴
19 貫通孔
20 下型ダイ
22 下側ガイド部
30 模様成形具
31 取付部材
32 位置調整用ボルト
33 軸受
34 軸部
36 調整用スペーサ
50 製品用部材
53 凹凸模様
54,54A,54B,54C,54D,54E,54F 突起
55 菱形模様
M メタル