(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038817
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】アクティブ除振システム、及びそのレベリング方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
F16F15/02 M
F16F15/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143119
(22)【出願日】2022-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 靖也
(72)【発明者】
【氏名】太田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸悟
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BC02
3J048CB09
3J048DA01
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現する。
【解決手段】コントローラ100は、アクティブ除振システムSの起動に先だって、前1変位z1がそれぞれ所定の許容範囲R1に収まるよう、複数の定盤変位センサ5の検出信号に基づいて複数のレベリング機構4を順番に作動させるレベリング制御を実行し、コントローラ100は、レベリング制御に際し、複数のレベリング機構3のうち、第1変位z1と許容範囲R1とのずれD1が最大となる支持位置Pに対応したレベリング機構4を決定する第1工程と、ずれD1が低減されるように、第1工程によって決定されたレベリング機構4を作動させる第2工程と、を繰り返し実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面に設置された1つ又は複数のアクティブ除振装置と、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置によって被支持体を下方から支持するアクティブ除振システムであって、
前記1つ又は複数のアクティブ除振装置は、それぞれ、
前記被支持体が載置される定盤と、
互いに異なる複数の支持位置に配置され、各支持位置において前記定盤を下方から弾性的に支持する複数の弾性体と、
前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、それぞれに対応する弾性体を下方から支持すると共に、該弾性体を介して前記定盤を上下方向に変位させる複数のレベリング機構と、
前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、前記各支持位置における、前記所定面に対する前記定盤の変位を示す第1変位を検出する複数の定盤変位センサと、を備え、
前記コントローラは、前記アクティブ除振システムの起動に先だって、前記第1変位がそれぞれ所定の許容範囲に収まるよう、前記複数の定盤変位センサの検出信号に基づいて前記複数のレベリング機構を順番に作動させるレベリング制御を実行し、
前記コントローラは、前記レベリング制御に際し、
前記複数のレベリング機構のうち、前記第1変位と前記許容範囲とのずれが最大となる支持位置に対応したレベリング機構を決定する第1工程と、
前記ずれが低減されるように、前記第1工程によって決定された前記レベリング機構を作動させる第2工程と、を繰り返し実行する
ことを特徴とするアクティブ除振システム。
【請求項2】
請求項1に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記コントローラは、前記第1工程及び前記第2工程によって構成された第2モードで前記レベリング制御を実行する前に、所定の第1モードで前記レベリング制御を実行するように構成され、
前記コントローラは、前記第1モードでの前記レベリング制御に際し、
前記複数のレベリング機構を全て作動させることで、全ての支持位置における前記第1変位を前記許容範囲外に調整した後、該許容範囲からのずれが低減されるように、前記複数のレベリング機構の全てを同時に作動させる第3工程を実行する
ことを特徴とするアクティブ除振システム。
【請求項3】
請求項1に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記コントローラは、前記第1工程及び前記第2工程によって構成された第2モードで前記レベリング制御を実行した後に、所定の第3モードで前記レベリング制御を実行するように構成され、
前記コントローラは、前記第3モードでの前記レベリング制御に際し、
前記第1工程と、
前記第2工程と、
前記第2工程を完了した後、前記第1工程に戻る前に、前記複数のレベリング機構の全てを非作動状態とした上で所定時間待機する第4工程と、を繰り返し実行する
ことを特徴とするアクティブ除振システム。
【請求項4】
請求項3に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記コントローラは、前記複数のレベリング機構のうち、前記第1変位が前記許容範囲内に収まったレベリング機構の割合が所定割合以上となったときに、前記第2モードから前記第3モードに移行する
ことを特徴とするアクティブ除振システム。
【請求項5】
請求項1又は3に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記第1工程によって決定された前記レベリング機構を特定レベリング機構とし、該特定レベリング機構に対し、前記所定面上で隣接する2つのレベリング機構をそれぞれ隣接レベリング機構とすると、
前記コントローラは、
前記2つの隣接レベリング機構の間で前記第1変位の差分を算出し、
前記コントローラは、前記第2工程に際し、
前記差分が所定未満の場合には、前記特定レベリング機構のみを作動させる一方、前記差分が前記所定以上の場合には、前記2つの隣接レベリング機構のうち、前記第1変位の値が前記特定レベリング機構における前記第1変位の値に近接した一方の隣接レベリング機構を、前記特定レベリング機構と共に作動させる
ことを特徴とするアクティブ除振システム。
【請求項6】
請求項1に記載のアクティブ除振システムにおいて、
前記1つ又は複数のアクティブ除振装置は、それぞれ、
前記複数のレベリング機構の各々に設けられ、それぞれ前記弾性体を支持する複数のばね座と、
前記複数の弾性体の各々に対応するように配置されかつ、前記各支持位置における、前記所定面に対する前記ばね座の変位を示す第2変位を検出するばね変位センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記アクティブ除振装置毎に、前記複数の弾性体の間で前記第2変位の大小関係を判定するとともに、該第2変位の差分が所定以上の場合には、該差分を低下させるように前記各レベリング機構を作動させるたわみ差解消処理を実行し、
前記コントローラは、前記レベリング制御よりも優先して前記たわみ差解消処理を実行する
ことを特徴とするアクティブ除振システム。
【請求項7】
所定面に設置された1つ又は複数のアクティブ除振装置と、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置によって被支持体を下方から支持するアクティブ除振システムのレベリング方法であって、
前記1つ又は複数のアクティブ除振装置は、それぞれ、
前記被支持体が載置される定盤と、
互いに異なる複数の支持位置に配置され、各支持位置において前記定盤を下方から弾性的に支持する複数の弾性体と、
前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、それぞれに対応する弾性体を下方から支持すると共に、該弾性体を介して前記定盤を上下方向に変位させる複数のレベリング機構と、
前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、前記各支持位置における、前記所定面に対する前記定盤の変位を示す第1変位を検出する複数の定盤変位センサと、を備え、
前記コントローラは、前記アクティブ除振システムの起動に先だって、前記第1変位がそれぞれ所定の許容範囲に収まるよう、前記複数の定盤変位センサの検出信号に基づいて前記複数のレベリング機構を順番に作動させるレベリング制御を実行し、
前記レベリング制御に際し、
前記複数のレベリング機構のうち、前記第1変位と前記許容範囲とのずれが最大となる支持位置に対応したレベリング機構を決定する第1工程と、
前記ずれが低減されるように、前記第1工程によって決定された前記レベリング機構を作動させる第2工程と、を前記コントローラが繰り返し実行する
ことを特徴とするアクティブ除振システムのレベリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクティブ除振システム、及びそのレベリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、レベリング機構としての高さ調整機構を備えたアクティブ防振装置が開示されている。具体的に、このアクティブ防振装置は、ケースの4隅に配置される高さ調整機構と、この高さ調整機構を介して配置される4つのコイルばねと、これらのコイルばねによって4隅を支持された定盤と、各高さ調整機構を作動させるコントローラと、を備えている。
【0003】
前記特許文献1によれば、コントローラが各高さ調整機構を制御することで、各コイルばねの下端を上下に変位させる。このコントローラは、各コイルばねの下端を変位させることで、定盤の高さ位置を調整する。
【0004】
また、特許文献2には、レベリング機構としての防振兼レベリング装置が開示されている。具体的に、この装置は、テーブルの下部の所定位置に、テーブルを支持するように複数配置されて使用されるものである。
【0005】
前記特許文献2によれば、一箇所に配置された調整装置から各装置に作動流体を送り込むことができるため、オペレータは、一箇所から複数の防振兼レベリング装置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-127391号公報
【特許文献2】特開2005-054808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的なアクティブ除振装置においては、その定盤に搭載される被支持体の振動を抑制するための制御(以下、「除振制御」ともいう)を行うのに先立って、前記定盤の高さ調整(レベリング)を行うことが考えられる。
【0008】
この場合、より適切な除振制御を実現するためには、可能な限り精密かつバランスよくレベリングすることが求められる。そうした要求を満足するレベリング機構としては、前記特許文献1に開示されている高さ調整機構が考えられる。
【0009】
ここで、前記特許文献1に開示されている機構を用いる場合において、さらに可能な限り短時間でレベリングを完了するために、各レベリング機構を同時に動作させることも検討される。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に開示されているように、各コイルばねの下端を上下に変位させることで定盤の高さを調整するように構成した場合、そのコイルばねに作用する荷重の大きさに応じて、定盤の高さを最適化するようなコイルばねの下端位置は変わり得る。
【0011】
例えば、コイルばねに大きな荷重が作用している場合には、コイルばねのたわみも大きくなるため、より小さな荷重が作用している場合に比べて、そのコイルばねの下端位置を、より上方に持ち上げる必要がある。
【0012】
一方、複数のレベリング機構を同時に動作させた場合、一のレベリング機構を動作させたことで被支持体から定盤への荷重分布が変化してしまい、他のレベリング機構に付随したコイルばねに作用する荷重が、一のレベリング機構の動作に連動して変化する可能性がある。
【0013】
この場合、前記他のレベリング機構に付随したコイルばねでは、荷重の変化に伴って最適な下端位置が刻々と変化してしまい、そのレベリング機構(他のレベリング機構)におけるレベリングの収束性、ひいては複数のレベリング機構全体の収束性に支障を来す可能性がある。
【0014】
すなわち、一のレベリング機構と、他のレベリング機構とがそれぞれのレベリング動作に影響を及ぼし合ってしまい、双方のレベリング動作が収束しないような事態が懸念される。
【0015】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の第1の態様は、所定面に設置された1つ又は複数のアクティブ除振装置と、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置によって搭載物を下方から支持するアクティブ除振システムに係る。このアクティブ除振システムにおいて、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置は、それぞれ、前記被支持体が載置される定盤と、互いに異なる複数の支持位置に配置され、各支持位置において前記定盤を下方から弾性的に支持する複数の弾性体と、前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、それぞれに対応する弾性体を下方から支持すると共に、該弾性体を介して前記定盤を上下方向に変位させる複数のレベリング機構と、前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、前記各支持位置における、前記所定面に対する前記定盤の変位を示す第1変位を検出する複数の定盤変位センサと、を備える。
【0017】
そして、本開示の第1の態様によれば、前記コントローラは、前記アクティブ除振システムの起動に先だって、前記第1変位がそれぞれ所定の許容範囲に収まるよう、前記複数の定盤変位センサの検出信号に基づいて前記複数のレベリング機構を順番に作動させるレベリング制御を実行し、前記コントローラは、前記レベリング制御に際し、前記複数のレベリング機構のうち、前記第1変位と前記許容範囲とのずれが最大となる支持位置に対応したレベリング機構を決定する第1工程と、前記ずれが低減されるように、前記第1工程によって決定された前記レベリング機構を作動させる第2工程と、を繰り返し実行する。
【0018】
前記第1の態様によると、各レベリング機構を順番に動作させることで、一のレベリング機構の動作が他のレベリング機構の動作に及ぼす影響を可能な限り抑制することができる。これにより、レベリング制御の収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現することができる。また、レベリング制御におけるハンチングを抑制することで、結果的に、より迅速にレベリング制御を完了することもできる。
【0019】
また、本開示の第2の態様によると、前記コントローラは、前記第1工程及び前記第2工程によって構成された第2モードで前記レベリング制御を実行する前に、所定の第1モードで前記レベリング制御を実行するように構成され、前記コントローラは、前記第1モードでの前記レベリング制御に際し、前記複数のレベリング機構を全て作動させることで、全ての支持位置における前記第1変位を前記許容範囲外に調整した後、該許容範囲からのずれが低減されるように、前記複数のレベリング機構の全てを同時に作動させる第3工程を実行する、としてもよい。
【0020】
前記第2の態様によると、レベリング制御の開始直後など、比較的粗い制御でも堪えうる状況下では第1モードでのレベリング制御を実行し、その後、所定以上の精度が求められる状況下では、第2モードでのレベリング制御を実行する。
【0021】
このように、レベリング制御の進行状況に応じて制御モードを使い分けることで、可能な限り迅速なレベリングと、可能な限り精密なレベリングと、を両立することができる。これにより、レベリング制御の性能が著しく向上する。
【0022】
また、本開示の第3の態様によれば、前記コントローラは、前記第1工程及び前記第2工程によって構成された第2モードで前記レベリング制御を実行した後に、所定の第3モードで前記レベリング制御を実行するように構成され、前記コントローラは、前記第3モードでの前記レベリング制御に際し、前記第1工程と、前記第2工程と、前記第2工程を完了した後、前記第1工程に戻る前に、前記複数のレベリング機構の全てを非作動状態とした上で所定時間待機する第4工程と、を繰り返し実行する、としてもよい。
【0023】
前記第3の態様によると、レベリング制御の中盤では第2モードでのレベリング制御を実行し、レベリング制御の終盤では第3モードでのレベリング制御を実行する。第3モードを行うことで、各レベリング機構の動作に伴う慣性力の影響を、可能な限り抑制することができる。第3モードは、第2モードよりもさらに精密なレベリングを提供する。
【0024】
このように、レベリング制御の進行状況に応じて制御モードを使い分けることで、第2モードによる相対的に迅速なレベリングと、第3モードによる相対的に精密なレベリングと、を両立することができる。これにより、レベリング制御の性能が著しく向上する。
【0025】
また、本開示の第4の態様によれば、前記コントローラは、前記複数のレベリング機構のうち、前記第1変位が前記許容範囲内に収まったレベリング機構の割合が所定割合以上となったときに、前記第2モードから前記第3モードに移行する、としてもよい。
【0026】
前記第4の態様によると、レベリング制御の進行状況に応じて、第2モードから第3モードへとスムースに移行させることができる。
【0027】
また、本開示の第5の態様によれば、前記第1工程によって決定された前記レベリング機構を特定レベリング機構とし、該特定レベリング機構に対し、前記所定面上で隣接する2つのレベリング機構をそれぞれ隣接レベリング機構とすると、前記コントローラは、前記2つの隣接レベリング機構の間で前記第1変位の差分を算出し、前記コントローラは、前記第2工程に際し、前記差分が所定未満の場合には、前記特定レベリング機構のみを作動させる一方、前記差分が前記所定以上の場合には、前記2つの隣接レベリング機構のうち、前記第1変位の値が前記特定レベリング機構における前記第1変位の値に近接した一方の隣接レベリング機構を、前記特定レベリング機構と共に作動させる、としてもよい。
【0028】
前記第5の態様によると、特定レベリング機構に加えて隣接レベリング機構を同時に動作させるように構成することで、特定レベリング機構に係る弾性体のストローク(変位代)を抑制することができる。各アクティブ除振装置において、弾性体間のたわみ差を抑制することができる。
【0029】
なお、前述のように複数のレベリング機構を同時に作動させてしまうと、ハンチングの発生が懸念される。しかしながら、本開示の場合、特定レベリング機構については1つずつ順番に作動させることになるため、ハンチングの発生は、無作為に選択されたレベリング機構を同時に作動させるような構成と比較して抑制される。
【0030】
また、隣接レベリング機構については特定レベリング機構と同時に作動させることになるものの、各除振装置において非隣接位置(例えば対角位置)に位置するレベリング機構については、同時に作動させないように構成されている。このことも、ハンチングの発生を抑制する上で有効に作用する。
【0031】
また、本開示の第6の態様によれば、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置は、それぞれ、前記複数のレベリング機構の各々に設けられ、それぞれ前記弾性体を支持する複数のばね座と、前記複数の弾性体の各々に対応するように配置されかつ、前記各支持位置における、前記所定面に対する前記ばね座の変位を示す第2変位を検出するばね変位センサをさらに備え、前記コントローラは、前記アクティブ除振装置毎に、前記複数の弾性体の間で前記第2変位の大小関係を判定するとともに、該第2変位の差分が所定以上の場合には、該差分を低下させるように前記各レベリング機構を作動させるたわみ差解消処理を実行し、前記コントローラは、前記レベリング制御よりも優先して前記たわみ差解消処理を実行する、としてもよい。
【0032】
前記第6の態様によると、第1変位に加えて、第2変位に基づいた制御を行うことで、各弾性体におけるたわみ差を抑制することができる。たわみ差の抑制は、被支持体の荷重分布に対応したバランスのよいレベリングを実現したり、各弾性体の耐久性を確保したりする上で有用である。
【0033】
本開示の第7の態様は、所定面に設置された1つ又は複数のアクティブ除振装置と、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置によって被支持体を下方から支持するアクティブ除振システムのレベリング方法に係る。このレベリング方法において、前記1つ又は複数のアクティブ除振装置は、それぞれ、前記被支持体が載置される定盤と、互いに異なる複数の支持位置に配置され、各支持位置において前記定盤を下方から弾性的に支持する複数の弾性体と、前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、それぞれに対応する弾性体を下方から支持すると共に、該弾性体を介して前記定盤を上下方向に変位させる複数のレベリング機構と、前記複数の弾性体の各々に対応するように配置され、前記各支持位置における、前記所定面に対する前記定盤の変位を示す第1変位を検出する複数の定盤変位センサと、を備え、前記コントローラは、前記アクティブ除振システムの起動に先だって、前記第1変位がそれぞれ所定の許容範囲に収まるよう、前記複数の定盤変位センサの検出信号に基づいて前記複数のレベリング機構を順番に作動させるレベリング制御を実行する。
【0034】
そして、前記第7の態様によれば、前記レベリング方法は、前記レベリング制御に際し、前記複数のレベリング機構のうち、前記第1変位と前記許容範囲とのずれが最大となる支持位置に対応したレベリング機構を決定する第1工程と、前記ずれが低減されるように、前記第1工程によって決定された前記レベリング機構を作動させる第2工程と、を前記コントローラが繰り返し実行する。
【0035】
前記第7の態様によると、各レベリング機構を順番に動作させることで、一のレベリング機構の動作が他のレベリング機構の動作に及ぼす影響を可能な限り抑制することができる。これにより、レベリング制御の収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現することができる。また、レベリング制御におけるハンチングを抑制することで、結果的に、より迅速にレベリング制御を完了することもできる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本開示によれば、収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、アクティブ除振システムの概略構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、各アクティブ除振装置1の内部構造を例示する図である。
【
図3】
図3は、各レベリング機構の構成を例示する縦断面図である。
【
図4】
図4は、コントローラと各除振装置との電気的な接続を例示する図である。
【
図5】
図5は、レベリング制御の概略を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1モードに関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2モードに関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2モード及び第3モードに共通したレベリング処理を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は、第3モードに関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3モードに特有の処理を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、たわみ差解消処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0039】
(アクティブ除振システムの全体構成)
図1は、本実施形態に係るアクティブ除振システムS(以下、単に「除振システム」ともいう)の概略構成を例示する図である。また、
図2は、各アクティブ除振装置1の内部構造を例示する図である。
【0040】
除振システムSは、所定面に設置された1つ又は複数のアクティブ除振装置1(以下、単に「除振装置」ともいう)と、1つ又は複数の除振装置1をそれぞれ制御するコントローラ100と、を備えている。除振システムSは、これら1つ又は複数の除振装置1によって、被支持体としての搭載物300を下方(後述のZ方向に沿った一方向)から支持している。
【0041】
1つ又は複数の除振装置1は、図例では4つ設けられている。4つの除振装置1は、それぞれ、所定面としての設置面Fに設置されている。本実施形態における設置面Fは、略水平方向に沿って延びている。以下、設置面Fに沿って延びかつ互いに直交する水平2方向をそれぞれX方向及びY方向と呼称し、この設置面Fに対して直交する鉛直方向をZ方向と呼称する。Z方向は、高さ方向、上下方向という場合もある。
【0042】
4つの除振装置1は、いずれもアクティブタイプの除振装置であり、各装置のアクチュエータを適宜作動させることで、設置面Fから搭載物300への振動の伝達を遮断することができる。各除振装置1は、後述の除振フィードバック制御及び除振フィードフォワード制御からなる、いわゆるアクティブ除振制御を実行することができる。
【0043】
また、4つの除振装置1は、設置面Fに対して搭載物300を弾性的に支持することで、パッシブタイプの除振装置としても機能するようになっている。
【0044】
本実施形態における搭載物300は、半導体製造装置、電子顕微鏡等、振動の影響を避けることが好都合な精密機器301と、精密機器301が載置されるテーブル302と、を有している。テーブル302は、4つの脚部を有している。テーブル302の各脚部は、除振装置1によって下方から支持されている。
【0045】
なお、搭載物300の構成は、この例に限定されない。例えば、テーブル302の代わりにプレート状の部材を用いてもよい。あるいは、テーブル302、プレート状の部材を介さずに、直方状の機器を、4つの除振装置1によって直に支持してもよい。
【0046】
4つの除振装置1は、搭載物300を支持するための“マウント”としても機能する。そこで、4つの除振装置1を区別する際には、各除振装置1を、「第1マウント1A」、「第2マウント1B」、「第3マウント1C」及び「第4マウント1D」という場合がある。
【0047】
4つの除振装置1は、搭載物300をバランスよく支持するために、互いに同タイプ(同寸法、同性能)とされている。4つの除振装置1は、それぞれ、XY方向に比してZ方向の寸法が短い矩形薄箱状に構成されている。各除振装置1は、薄箱の底壁を形成するロアプレート11と、薄箱の側壁を形成するサイドプレート12と、薄箱の天井を形成するアッパープレート13と、を有している。ロアプレート11は、設置面Fによって下方から支持されている。
【0048】
このうち、アッパープレート13は、平坦な薄板状に形成されており、搭載物300が載置される定盤として機能する。アッパープレート13は、基本的には、4つの角部を有する略正方形状を有している。
【0049】
また、各除振装置1は、4つの弾性体3と、4つのレベリング機構4と、4つの定盤変位センサ5と、4つのばね変位センサ6と、6つのアクチュエータ2と、第1の振動検出手段としての3つ(
図2では1つのみ示す)の基礎側振動センサ7(FFセンサ)と、第2の振動検出手段としての6つの搭載物側振動センサ8(FBセンサ)と、各除振装置1に1つの固有コントローラ9と、を備えている。このうち、固有コントローラ9は、各除振装置1に固有の制御手段である。これらの部材は、ロアプレート11、サイドプレート12及びアッパープレート13によって区画される内部空間に収容されている。
【0050】
以下、各除振装置1の構成について詳細に説明する。なお、以下の説明は、特段の記載を除き、4つの除振装置1の間で共通である。
【0051】
(各アクティブ除振装置の詳細)
4つの弾性体3は、互いに異なる複数(本実施形態では弾性体3と同数)の支持位置Pに配置される。4つの弾性体3は、それぞれ、各支持位置Pにおいて、アッパープレート13を下方から弾性的に支持する。
【0052】
本実施形態における複数の支持位置Pとは、ロアプレート11とアッパープレート13との間のスペースの4隅に相当する。一の弾性体3は、一の支持位置Pに配置されている。
【0053】
詳しくは、4つの弾性体3は、ロアプレート11とアッパープレート13との間(より詳細には、ロアプレート11の上面とアッパープレート13の下面との間)に介在しており、それぞれ、Z方向に伸縮する。各弾性体3は、ロアプレート11に対してアッパープレート13及び搭載物300を弾性的に支持する。
【0054】
本実施形態に係る各弾性体3は、
図3に例示するようにコイルばねによって構成されている。コイルばねによって構成された各弾性体3は、その伸縮方向とZ方向とが略平行になるように配置されている。
【0055】
詳しくは、各弾性体3は、本実施形態では不等ピッチスプリングによって構成されている。この場合、各弾性体3は、搭載物300の重量による荷重の増大に略比例して、そのばね定数が高くなるプログレッシブ特性を有する。このため、精密機器301が別の機器に変更されて搭載物300の重量が変化したとしても、ばね系統の固有振動数は概ね一定に保たれる。これにより、機器の変更によらず、アクティブ除振制御によって高い除振効果を得ることができる。なお、各弾性体3は、等ピッチスプリングによって構成してもよい。
【0056】
図3は、各レベリング機構3の構成を例示する縦断面図である。4つのレベリング機構4は、4つの弾性体3の各々に対応するように配置されている。ここで、一のレベリング機構4は、一の弾性体3及び一の支持位置Pに対応している。4つのレベリング機構4は、それぞれに対応する弾性体3を下方から支持すると共に、その弾性体3を介してアッパープレート13をZ方向に変位させる。
【0057】
図2及び
図3に示すように、各レベリング機構4は、ねじ軸41と、ばね座42と、被動ギヤ43と、中間ギヤ44と、電動モータ45と、を有している。
【0058】
詳しくは、ねじ軸41は、ロアプレート11から上方に向かって延びており、Z軸まわりに回転自在に配置されている。ばね座42は、ねじ軸41に螺合されていると共に、弾性体3の下端部(より一般には、伸縮方向における弾性体3の一端部)を保持している。被動ギヤ43は、ばね座42の下方に配置されており、ねじ軸41に対して回転一体に固定されている。中間ギヤ44は、被動ギヤ43と歯合している。電動モータ45は、ピニオンが固定された回転軸(不図示)を有している。電動モータ45のピニオンは、中間ギヤ44と動力伝達可能に連結されている。
【0059】
電動モータ45は、コントローラ100と電気的に接続されており、コントローラ100からの制御信号を受けて作動する。電動モータ45は、その作動時に回転軸を回転させる。電動モータ45が回転軸を回転させると、その回転が中間ギヤ44を介して被動ギヤ43を回転させる。被動ギヤ43の回転に伴って、ねじ軸41も一体的に回転する。ねじ軸41が回転することで、ばね座42が上下動する。
【0060】
例えば、4つのばね座42のうちの1つを上方向に変位させると、そのばね座42によって保持されている弾性体3を、上方向に持ち上げたり、上下方向に圧縮させたりすることができる。搭載物300の荷重に抗して弾性体3を持ち上げることで、その弾性体3に対応した支持位置Pにおいて、アッパープレート13を上方向に変位させることができる。
【0061】
同様に、4つのばね座42のうちの1つを下方向に変位させると、そのばね座42によって保持されている弾性体3を、下方向に降ろしたり、上下方向に伸張させたりすることができる。下方向に弾性体3を降ろすことで、その弾性体3に対応した支持位置Pにおいて、アッパープレート13を下方向に変位させることができる。
【0062】
なお、図示は省略したが、各レベリング機構4は、上下方向におけるばね座42のスライドを案内するスライダをさらに有している。
【0063】
4つの定盤変位センサ5は、4つの弾性体3の各々に対応するように配置されている。ここで、一の定盤変位センサ5は、一の弾性体3、一の支持位置P、及び一のレベリング機構4に対応している。4つの定盤変位センサ5は、それぞれ、各支持位置Pにおける、設置面Fに対するアッパープレート13の変位(具体的には、Z方向の変位)を検出する。4つの定盤変位センサ5は、それぞれコントローラ100と電気的に接続されており、その検出結果に対応した電気信号をコントローラ100に入力する。
【0064】
詳しくは、各定盤変位センサ5は、磁石ホール素子センサによって構成されている。ホール素子センサを構成する磁石は、アッパープレート13に配置されている。各定盤変位センサ5は、アッパープレート13と一体的に磁石が上下動したときに、その上下動に伴って生じた磁力の変化を検出する。磁力の変化に対応した電気信号は、設置面Fに対するアッパープレート13の変位(以下、単に「アッパープレート13の変位」と呼称したり、「第1変位」と呼称したりする)を示している。第1変位については、
図3の符号z1に例示する。
【0065】
なお、ここでいう「第1変位」とは、検出対象が上方に位置しているか、あるいは、下方に位置しているかを区別できるよう、符号を有する値として定義されている。後述の「第2変位」についても同様である。
【0066】
搭載物300の重量が変化すると、アッパープレート13の変位と、上下方向における設置面Fに対するばね座42の変位(以下、単に「ばね座42の変位」と呼称したり、第2変位と呼称したりする)との対応関係も変化する。搭載物300の重量が変化したときに、アッパープレート13の変位が一定に保たれていたとしても、それを実現するばね座42の変位も一定に保たれるとは限らない。第2変位については、
図3の符号z2に例示する。
【0067】
例えば、搭載物300が重いときには、それが軽いときに比べて弾性体3がより圧縮されることになるため、ばね座42の高さ位置を相対的に上側に設定し、弾性体3を上方に持ち上げる必要がある。
【0068】
そのため、各レベリング機構4をより適切に動作させるためには、アッパープレート13の変位に基づいた制御に加え、ばね座42の変位に基づいた制御を行うことが考えられる。
【0069】
4つのばね変位センサ6は、4つの弾性体3の各々に対応するように配置されている。ここで、一のばね変位センサ6は、一の弾性体3、一の支持位置P、一のレベリング機構4、及び一の定盤変位センサ5に対応している。4つのばね変位センサ6は、それぞれ、各支持位置Pにおける、設置面Fに対するばね座42の変位(具体的には、Z方向の変位)を検出する。4つのばね変位センサ6は、それぞれコントローラ100と電気的に接続されており、その検出結果に対応した電気信号をコントローラ100に入力する。各ばね変位センサ6は、例えばポテンショメータによって構成してもよい。
【0070】
各除振装置1では、一の弾性体3と、一のレベリング機構4と、一の定盤変位センサ5と、一のばね変位センサ6と、一の支持位置Pと、が対応付いている。
【0071】
言い換えると、各除振装置1は、一の弾性体3と、一のレベリング機構4と、一の定盤変位センサ5と、一のばね変位センサ6と、を4つの支持位置Pの各々にて関連付けた4つの変位モジュールM1,M2,M3,M4を備えているとみなすことができる。
【0072】
以下、
図2の紙面左下の隅部から時計周り方向に向かって、これらを第1変位モジュールM1、第2変位モジュールM2、第3変位モジュールM3及び第4変位モジュールM4ともいう。
【0073】
例えば、第1変位モジュールM1は、対応する支持位置P(
図2の紙面左下の隅部)においてアッパープレート13を下方から支持するとともに、当該支持位置Pにおいてアッパープレート13の高さ調整を行うものである。
【0074】
一方、6つのアクチュエータ2は、それぞれ、アッパープレート13を介して搭載物300に制御力を付加する。各アクチュエータ2は、例えばリニアモータによって構成することができる。
【0075】
詳しくは、6つのアクチュエータ2は、対応する除振装置1の中心O(アッパープレート13の対角線が交わる交点)に対し、周方向に沿って取り囲むように配置されている。6つのアクチェータ2は、制御力の作用線が互いに平行に延びる2つのアクチュエータ2からなる3つのアクチュエータ対(
図2の符号C1,C2,C3を参照)を構成している。
【0076】
詳細な図示は省略するが、各アクチュエータ2の制御力の作用線は、ロアプレート11、サイドプレート12及びアッパープレート13の三者に対して傾斜するようにレイアウトされている。
【0077】
3つのFFセンサ7は、その検出方向が設置面Fに対して傾斜した状態で、ロアプレート11上に配置されている。各アクチュエータ2の作用方向の傾斜角度は、各FFセンサ7の検出方向の傾斜角度に等しい。
【0078】
FFセンサ7は、加速度センサである。FFセンサ7は、設置面Fの振動状態としての振動加速度を検出する。3つのFFセンサ7は、各々がその検出方向における設置面Fの振動加速度を検出することによって、結果的に、設置面Fにおける鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)、並びに、各並進軸回りの回転3方向(θx,θy、θz方向)において、振動加速度を検出する。
【0079】
6つのFBセンサ8は、それぞれ、各アクチュエータ2の作用方向と同様に、その検出方向が設定面Fに対して傾斜した状態で配置されている。アクチュエータ2の作用方向の傾斜角度は、FBセンサ8の検出方向の傾斜角度に等しい。各FBセンサ8は、対応するアクチュエータ2と一体的に設けてもよい。
【0080】
各FBセンサ8は、加速度センサである。FBセンサ8は、搭載物300の振動状態としての振動加速度を検出する。6つのFBセンサ8は、各々がその検出方向における搭載物300の振動加速度を検出することによって、結果的に、搭載物300における鉛直方向及び水平方向を含む並進3方向(X,Y,Z方向)、並びに、各並進軸回りの回転3方向(θx,θy、θz方向)において、振動加速度を検出する。
【0081】
固有コントローラ9は、例えばアッパープレート13の下面中央に配置されている。固有コントローラ9には、3つのFFセンサ7及び6つのFBセンサ8が入力される。固有コントローラ9は、これらの検出信号に基づいて各アクチュエータ2を制御する。
【0082】
具体的に、固有コントローラ9は、各FBセンサ8から入力された信号、すなわち、各FBセンサ8の検出した搭載物300の振動加速度に基づいて、各アクチュエータ2に制御信号を出力し、搭載物300の振動を減殺するための制御力を搭載物300に対して付加するように、各アクチュエータ2をフィードバック制御する。固有コントローラ9は、いわゆる除振フィードバック制御を実行する。
【0083】
例えば、固有コントローラ9は、振動加速度の積分値にフィルタ処理を施し、フィードバックゲインを乗算し、それを足し合せた後に反転して、各アクチュエータ2への制御入力とする。
【0084】
固有コントローラ9は、各FFセンサ7から入力された信号、すなわち、各FFセンサ7の検出した設置面Fの振動加速度に基づいて、各アクチュエータ2に制御信号を出力し、設置面Fから搭載物300に伝達される振動を減殺するための制御力を搭載物300に対して付加するように、各アクチュエータ2をフィードフォワード制御する。固有コントローラ9は、いわゆる除振フィードフォワード制御を実行する。
【0085】
例えば、固有コントローラ9は、設置面Fからの振動に対してフィルタ処理を施し、フィードフォワードゲインを乗算して、アクチュエータ2への制御入力に足し合わせる。
【0086】
固有コントローラ9が行う処理のうち、少なくとも除振フィードバック制御及び除振フィードフォワード制御に関する処理は、除振装置1の間で独立したものとなっている。固有コントローラ9は、少なくともこれらの制御に関する電気信号を、除振装置1間で送受しないようになっている。
【0087】
(コントローラ)
図4は、コントローラ100と各除振装置1との電気的な接続を例示する図である。
【0088】
コントローラ100は、前記固有コントローラ9とは異なり、4つの除振装置1で共有化されている。コントローラ100は、CPU、メモリ、入出力バスを備えている。コントローラ100は、少なくとも除振装置1と同数のケーブル類200を介して、各除振装置1と電気的に接続されている。図例では、簡潔化のため1本のケーブルとして例示したが、各ケーブル類200は、入力用の電気ケーブルと、出力用の電気ケーブルとの2経路で構成してもよい。
一本又は複数本の電気ケーブルによって構成してもよい。
【0089】
ケーブル類200を介して電気的に接続することで、コントローラ100と各除振装置1との間で電気信号を送受することが可能になる。この場合の通信プロトコルとしては、例えばCAN(Controller Area Network)を用いることができる。有線で通信する代わりに、無線通信を実装してもよい。その場合、いわゆる無線LANを用いることができる。
【0090】
各除振装置1は、前述のように4つの変位モジュールM1~M4を有している。アクティブ除振システムS全体では、計16個の変位モジュールが存在することになる。コントロ-ラ100は、これらの変位モジュールに異なるID(図例では、計16通りのID)を付与する。
【0091】
コントロ-ラ100は、除振装置1毎に異なるIDを付与することで、後述のレベリング制御に際し、異なる除振装置1間で変位モジュールの動作を協調させることができる。
【0092】
このように構成することで、例えば、第1マウント1Aの第1変位モジュールM1を動作させた影響を、第3マウント1Cの第2変位モジュールM2の動作に影響させることができる。
【0093】
これにより、各アッパープレート13の上面を、異なる除振装置1間で同じ高さに設定することができるようになる。こうした設定は、アクティブ除振制御に先だって、事前に行われるべきものである。
【0094】
以下、計16個の変位モジュールM1~M4に付されるIDを、「チャンネル」ともいう。各チャンネルには、一の弾性体3と、一のレベリング機構4と、一の定盤変位センサ5と、一のばね変位センサ6と、一の支持位置Pと、が紐付いている。
【0095】
コントロ-ラ100は、様々な制御信号を出力する際にチャンネルを指定することで、そのチャンネルに紐付いた支持位置Pにおいてレベリング機構4を作動させることができる。コントロ-ラ100は、様々な検出信号が入力される際に入力元のチャンネルを取得することで、その検出信号が得られた支持位置Pを把握することができる。
【0096】
図4に示す例では、第1マウント1Aの第1変位モジュールM1にチャンネル「chA1」が付与されており、第1マウント1Aの第2変位モジュールM2にチャンネル「chA2」が付与されており、第1マウント1Aの第3変位モジュールM3にチャンネル「chA3」が付与されており、第1マウント1Aの第4変位モジュールM4にチャンネル「chA4」が付与されている。
【0097】
同様に、第2マウント1Bの第1変位モジュールM1にチャンネル「chB1」が付与されており、第2マウント1Bの第2変位モジュールM2にチャンネル「chB2」が付与されており、第2マウント1Bの第3変位モジュールM3にチャンネル「chB3」が付与されており、第2マウント1Bの第4変位モジュールM4にチャンネル「chB4」が付与されている。
【0098】
同様に、第3マウント1Cの第1変位モジュールM1にチャンネル「chC1」が付与されており、第3マウント1Cの第2変位モジュールM2にチャンネル「chC2」が付与されており、第3マウント1Cの第3変位モジュールM3にチャンネル「chC3」が付与されており、第3マウント1Cの第4変位モジュールM4にチャンネル「chC4」が付与されている。
【0099】
同様に、第4マウント1Dの第1変位モジュールM1にチャンネル「chD1」が付与されており、第4マウント1Dの第2変位モジュールM2にチャンネル「chD2」が付与されており、第4マウント1Dの第3変位モジュールM3にチャンネル「chD3」が付与されており、第4マウント1Dの第4変位モジュールM4にチャンネル「chD4」が付与されている。
【0100】
コントロ-ラ100は、前記ケーブル類200を介したコントロ-ラ100と各除振装置1との信号送受に基づいて、これらのチャンネルを初期設定することができる(チャンネル付与処理)。このチャンネル付与処理を行う場合、ケーブル類200の本数は、除振装置1の台数以上に設定してもよい。
【0101】
チャンネル付与処理に際し、コントロ-ラ100は、複数のケーブル類200のうちの一を選択し、そのケーブル類200を介して電気信号を出力する。その電気信号に対応した信号がコントロ-ラ100に戻ってきた場合、コントロ-ラ100は、そのケーブル類200には除振装置1が接続されていると判定する。コントロ-ラ100は、ケーブル類200の選択順に対応するようにチャンネルを設定する。
【0102】
本実施形態の場合、コントロ-ラ100は、1番目に選択されたケーブル類200に接続されていた除振装置1を第1マウント1Aと判断し、マウント識別ID「chA」を設定する。そして、第1マウント1Aと判断された除振装置1が具備する4つの変位モジュールM1~M4に対し、チャンネル「chA1」、「chA2」、「chA3」及び「chA4」を付与する。
【0103】
続いて、コントロ-ラ100は、2番目に選択されたケーブル類200に接続されていた除振装置1を第2マウント1Bと判断し、マウント識別ID「chB」を設定する。そして、第2マウント1Bと判断された除振装置1が具備する4つの変位モジュールM1~M4に対し、チャンネル「chB1」、「chB2」、「chB3」及び「chB4」を付与する。
【0104】
第3マウント1C及び第4マウント1Dについても同様である。
【0105】
その後、コントロ-ラ100は、5番目に選択されたケーブル類200を介して電気信号を出力する。本実施形態のように4つの除振装置1を用いた場合、コントロ-ラ100に信号は戻らない。この場合、コントローラ100は、5番目の除振装置1は存在しないと判定し、チャンネル総数を4×4=16と判断する。チャンネル総数の算出は、後述のレベリング処理において有用である。
【0106】
なお、コントロ-ラ100は、各除振装置1が具備する変位モジュールM1~M4の数(本実施形態では4つ)と、変位モジュールM1~M4間の相対的な位置関係と、を事前に記憶している。変位モジュールM1~M4間の相対的な位置関係には、各除振装置1において、所定の変位モジュールに対し、どの変位モジュールが隣接しているかを示す情報(例えば、第1変位モジュールM1には、第2変位モジュールM2と第4変位モジュールM4とが隣接していること)が含まれる。
【0107】
そして、コントローラ100は、アクティブ除振システムSの起動に際し、所定のレベリング制御を実行する。このレベリング制御とは、設置面Fに対するアッパープレート13の変位がそれぞれ所定の許容範囲に収まるよう、複数の定盤変位センサ5の検出信号に基づいて複数のレベリング機構4を順番に作動させるものである。
【0108】
なお、ここでいう「アクティブ除振システムSの起動」とは、前述の除振フィードバック制御及び除振フィードフォワード制御を開始可能な状態に整えることをいう。
【0109】
また、ここでいう「許容範囲」とは、所定の閾値(第1閾値)をT1とすると、R1=T1±ΔT1のように、その第1閾値に基づいた数値範囲を指す。設置面Fに対するアッパープレート13の変位(第1変位)を例えばz1とすると、T1-ΔT1≦z1≦T1+ΔT1が満足されたときに、コントローラ100は、第1変位z1が許容範囲R1に収まったと判定する。第1閾値T1については、第1変位z1と同様に、
図3に例示する。
【0110】
許容範囲の大きさは、事前にコントローラ100に記憶されている。許容範囲の大きさは、4つの除振装置1で共通である。
【0111】
このレベリング制御は、除振フィードバック制御及び除振フィードフォワード制御からなるアクティブ除振制御の開始前に行われるものである。以下、アクティブ除振制御における性能要求と、その要求を満足するためのレベリング制御の構成について、詳細に説明する。
【0112】
(レベリング制御に係る問題)
前述のようなアクティブ除振制御をより適切に行うためには、前述の如く構成されたレベリング機構4を用いることで、可能な限り精密かつバランスよくレベリングすることが考えられる。
【0113】
例えば、アッパープレート13に搭載物300が載置された状態で、アッパープレート13の上面を水平面に一致させたり、4つの除振装置1それぞれのアッパープレート13を同じ高さに設定したりすることが求められる場合がある。こうした設定は、アクティブ除振制御に先だって、事前に行われるべきものである。
【0114】
アッパープレート13の位置等の事前調整は、前述のレベリング制御によって行うことができる。レベリング制御を行うことで、各弾性体3の高さ位置(Z方向で見た位置)、特に各弾性体3の下端が上下に変位する。この変位によって、アッパープレート13の初期高さを調整することができる。レベリング制御による高さ調整は、支持位置P毎に、対応するレベリング機構4(4つの変位モジュールM1~M4のうちの1つ)を作動させることで実現されるようになっている。
【0115】
この場合、作動させた弾性体3に作用する荷重の大きさに応じて、アッパープレート13の高さを最適化するような弾性体3の下端位置は変わり得る。
【0116】
前述のように、弾性体3に大きな荷重が作用している場合には、その弾性体3はより大きく伸縮することになるため、相対的に小さな荷重が作用している場合に比べて、その弾性体3の下端位置を、より上方に持ち上げる必要がある。
【0117】
一方、複数のレベリング機構4を同時に動作させた場合、一のレベリング機構4を動作させたことで搭載物300からアッパープレート13への荷重分布が変化してしまい、他のレベリング機構4に付随した弾性体3に作用する荷重が、一のレベリング機構4の動作に連動して変化する可能性がある。
【0118】
この場合、他のレベリング機構4に付随した弾性体3では、荷重の変化に伴って最適な下端位置が刻々と変化してしまい、そのレベリング機構4(他のレベリング機構)におけるレベリングの収束性、ひいては4つのレベリング機構4全体の収束性に支障を来す可能性がある。
【0119】
すなわち、一のレベリング機構4と、他のレベリング機構4とがそれぞれのレベリング動作に影響を及ぼし合ってしまい、双方のレベリング動作が収束しないような事態が懸念される。こうした影響は、各除振装置1において対角に位置するレベリング機構4の間(例えば、
図2の第1変位モジュールM1と第3変位モジュールM3の間、及び、第2変位モジュールM2と第4変位モジュール)で取り分け懸念される。
【0120】
そこで、本願発明者らは、レベリング制御の構成に工夫を凝らし、上述の如き懸念を払拭するに至った。具体的に、本実施形態に係るコントローラ100は、レベリング制御に際し、所定の第1工程と第2工程とを繰り返し実行する。
【0121】
第1工程において、コントロ-ラ100は、複数(図例では16個)のレベリング機構4のうち、第1変位z1と許容範囲R1とのずれが最大となる支持位置Pに対応したレベリング機構(以下、これを「特定レベリング機構」ともいう)4を決定する。
【0122】
なお、コントローラ100は、第1変位z1と許容範囲R1とのずれを示す指標として、例えば、前記第1閾値T1と第1変位z1との差分(D1=|T1-z1|)を用いることができる。ずれD1については、
図3に例示する。
【0123】
第1工程において、コントロ-ラ100は、除振装置1毎に一のレベリング機構4を決定する代わりに、アクティブ除振システムS全体から一のレベリング機構4を決定する。
【0124】
続く第2工程において、コントロ-ラ100は、ずれD1が低減されるように、第1工程によって決定されたレベリング機構4を変位させる。
【0125】
なお、コントローラ100が「第1工程と第2工程とを繰り返し実行する」とは、各レベリング機構4を同時に動作させるのではなく、各レベリング機構4を順番に動作させることを意味する。
【0126】
各レベリング機構4を順番に動作させることで、一のレベリング機構4の動作が他のレベリング機構4の動作に及ぼす影響を可能な限り抑制することができる。これにより、レベリング制御の収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現することができる。また、レベリング制御におけるハンチングを抑制することで、結果的に、より迅速にレベリング制御を完了することもできる。
【0127】
その他、本実施形態では、前記レベリング制御の性能をさらに高めるような制御をさらに行うことができる。上記第1及び第2工程によって構成された制御モードを「第2モード」と呼称すると、本実施形態に係るコントローラ100は、第2モードの前に実行される制御モードである「第1モード」と、第2モードの後に実行される制御モードである「第3モード」と、を行うように構成されている。
【0128】
これらの制御モードの名称は、各モードの順番に対応して設定されたものであり、その重要度に対応して設定されたものではない。例えば、第1モード及び第3モードは、省略してもよい。
【0129】
以下、各制御モードの詳細について、順番に説明する。
【0130】
(レベリング制御の詳細)
図5は、レベリング制御の概略を例示するフローチャートである。前述のように、コントローラ100は、第1モード、第2モード及び第3モードの順番で、レベリング制御に係る処理を実行する。
【0131】
まず、ステップS1において、コントローラ100は、ケーブル類200と各除振装置1との接続等、セットアップを実行する。このセットアップに際し、前述のチャンネル付与処理が実行される。チャンネル付与処理を行うことで、アクティブ除振システムSを構成する全16個の変位モジュールM1~M4に、互いに異なる16通りのIDが付与される。
【0132】
続くステップS2において、コントローラ100は、レベリング制御の第1モードを実行する。第1モードでのレベリング制御に際し、コントローラ100は、
図6のステップS11に示す第3工程を実行する。
【0133】
-第1モードの詳細-
図6は、第1モードに関連した処理を例示するフローチャートである。
【0134】
まず、
図6のステップS11に先立って、コントローラ100は、全てのレベリング機構4を作動させることで、全ての支持位置Pにおける第1変位z1を、許容範囲R1外に調整する(初期調整)。
【0135】
その後、コントローラ100は、許容範囲R1からのずれが低減される方向に、全てのレベリング機構4を同時に作動させる。具体的に、ステップS11においてまず、コントローラ100は、計16個のレベリング機構4を全て作動させることで、各支持位置Pにおいて、第1変位z1が許容範囲R1外となるまで各弾性体3の下端を上昇させた状態から下降させるか、あるいは、第1変位z1が許容範囲R1外となるまで各弾性体3の下端を下降させた状態から上昇させるかする。この例では、後者の構成が採用されているが、ステップS11に先立つ処理の内容に応じて、前者の構成を採用することもできる。
【0136】
さらに、ステップS11において、コントローラ100は、ばね変位センサ6の検出信号に基づいて、16個の全てのチャンネルにおいて、第2変位z2が所定の第2閾値T2以上であるか否かを判定する(z2≧T2?)。この判定がNOの場合、コントローラ100は制御プロセスをステップS12に進め、全レベリング機構4の作動を継続させる。
【0137】
一方、ステップS11の判定がYESの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS13に進める。このステップS13において、コントローラ100は、1つ以上のチャンネルにおいて、第1変位z1が許容範囲R1を通り過ぎたか否かを判定する。
【0138】
ステップS13の判定は、前述のように各弾性体3の下端を上昇させた場合には、第1変位z1の大きさが許容範囲R1を超えたとき(z1>T1+ΔT1)にYESとなる。一方、各弾性体3の下端を下降させるように構成した場合には、第1変位z1の大きさが許容範囲R1を下まわったとき(z1<T1-ΔT1)にYESとなる。
【0139】
ステップS13の判定がYESの場合、コントローラ100は制御プロセスをステップS14へ進め、第1モードが完了したことを示すフラグを0から1に変更する。その後、制御プロセスは、ステップS15に進む。
【0140】
ステップS13の判定がNOの場合、コントローラ100は、ステップS14をスキップし、第1モードが完了したことを示すフラグを0に保持したまま、制御プロセスをステップS15に進める。
【0141】
ステップS15において、コントローラ100は、前記フラグが1か否かを判定する。この判定がYESの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS17へ進める。この場合、コントローラ100は第2閾値T2を初期値にリセットし、
図6に示す制御プロセスを完了する。
【0142】
一方、ステップS15の判定がNOの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS16へ進める。このステップS16において、コントローラ100は、第2閾値T2を変更し、制御プロセスをステップS11に戻す。つまり、コントローラ100は、ステップS13の判定がYESになるまで、第2閾値T2を変更しながら全レベリング機構4の作動を継続する。
【0143】
図6に例示するループから脱出できない場合(第2閾値T2を繰り返し変更してもなお、ステップS13の判定がYESにならない場合)、
図6に例示する制御プロセスを強制的に終了してもよい。
【0144】
図6に係る制御プロセスが完了すると、コントローラ100は、
図5のステップS2からステップS3に制御プロセスを進める。このステップS3において、コントローラ100は、第2モードでレベリング制御を実行する。
【0145】
-第2モードの詳細-
図7は、第2モードに関連した処理を例示するフローチャートである。
図8は、第2モード及び第3モードに共通したレベリング処理を例示するフローチャートである。
【0146】
まず、
図7のステップS21において、コントローラ100は、4つの除振装置1(マウント)の各々において、4つの弾性体3の間で第2変位z2の大小関係を判定する。この判定は、ばね変位センサ6の検出信号に基づいて、4つの変位モジュールM1~M4のうちから、第2変位z2が最大となるものと、第2変位z2が最小となるものとを選択することで行うことができる。
【0147】
同じくステップS21において、コントローラ100は、4つの除振装置1の各々において、第2変位z2の最大値と最小値との差分を算出する。これにより、除振装置1と同数の差分が得られる。
【0148】
その後、同じくステップS21において、コントローラ100は、算出された4つの差分が、それぞれ、事前に設定された所定範囲内にあるか否かを判定する。この判定は、4つの除振装置1の各々にて行われる。ここで、ある除振装置1においてYESと判定された場合、その除振装置1では、各弾性体3がバランスよくたわんでいる(同程度にたわんでいる)と判断される。この場合、コントローラ100は、たわみ差の解消は不要と判断し、制御プロセスをステップS22に進める。
【0149】
一方、ステップS21の判定がNOの場合、コントローラ100は、前記差分が所定以上であると判定する。この場合、コントローラ100は、当該差分を低下させるように各レベリング機構4を作動させるたわみ差解消処理を実行する。
【0150】
詳しくは、ある除振装置1においてステップS21がNOと判定された場合、その除振装置1では、各弾性体3がバランスよくたわんでいない(弾性体3毎に、たわみ量が大きく相違する)と判断される。そこで、コントローラ100は、弾性体3のたわみを解消すべく制御プロセスをステップS23に進める。
【0151】
ステップS23において、コントローラ100は、弾性体3のたわみ解消が必要であると判断された除振装置1に対し、たわみ差解消処理を実行する。
【0152】
ステップS23の詳細は、
図11に例示する通りである。まず、ステップS231において、コントローラ100は、第2変位z2の最大値と最小値とに対応するチャンネルを読み込む。
【0153】
続くステップS232において、コントローラ100は、第2変位z2が最大値となったチャンネルにおいて、その第2変位z2を小さくする方向に、対応するレベリング機構4を作動させる。それに併せて、コントローラ100は、第2変位z2が最小値となったチャンネルにおいて、その第2変位z2を大きくする方向に、対応するレベリング機構4を作動させる。
【0154】
続くステップS233に例示するように、ステップS232の処理は、最大値と最小値との間の差分が所定範囲内に収まるまで行われるようになっている。
【0155】
図示は省略したが、ステップS231~ステップS233において、コントローラ100は、第2変位z2が最大値又は最小値となったチャンネルについて、第1変位z1が前記許容範囲R1内に収まっているか否かも判定する。コントローラ100は、第1変位z1が許容範囲R1内に収まっているチャンネルについてはレベリング機構4を作動させず、第1変位z1が許容範囲R1内に収まっていないチャンネルについてのみレベリング機構4を作動させる。
【0156】
第2変位z2が最大値又は最小値となったチャンネルの双方において、第1変位z1が許容範囲R1内に収まっていた場合、コントローラ100は、ステップS232をスキップしてリターンしてもよい。
【0157】
ステップS21の判定がYESの場合、コントローラ100は、レベリング処理を実行する(ステップS22)。この処理は、前述の第1及び第2工程を含むものである。ステップS22の詳細は、
図8に示す通りである。なお、ステップS22とステップS21及びステップS23との前後関係に示すように、本実施形態に係るコントローラ100は、レベリング制御(特に、第2モードでのレベリング制御)よりも優先してたわみ差解消処理を実行するようになっている。
【0158】
まず、
図8のステップS101において、コントローラ100は、各種センサの検出信号を読み込む。ここで読み込まれる検出信号には、各定盤変位センサ5の検出信号が含まれる。
【0159】
続くステップS102において、コントローラ100は、前述の第1工程を実行する。コントローラ100は、アクティブ除振システムSの全チャンネルのうち、第1変位z1と許容範囲R1とのずれD1が最大となる支持位置Pに対応したチャンネルを決定する。これにより、そのチャンネルに紐付いたレベリング機構4も決定される。なお、ここでのずれD1は、前述のように、第1閾値T1を用いて計算すればよい(D1=|T1-z1|)。
【0160】
以下、説明を明瞭にすべく、このステップS102で決定されるチャンネルを特定チャンネル(特定Ch)ともいう。例えば、第2マウント1Bの第3変位モジュールM3においてずれD1が最大となった場合、
図4の「chB3」が特定チャンネルになる。また、この特定チャンネルに紐付いたレベリング機構4を特定レベリング機構4ともいう。
【0161】
また、特定チャンネルに対し、設定面F上で隣接する(言い換えると、XY平面上で隣接する)2つのチャンネルを、それぞれ隣接チャンネル(隣接Ch)ともいう。例えば、前述のように「chB3」を特定チャンネルに設定した場合、コントローラ100は、2つの隣接チャンネルとして、
図4の「chB2」と「chB4」とを選択する。また、これらの隣接チャンネルに紐付いたレベリング機構4を、それぞれ隣接レベリング機構4ともいう。2つの隣接レベリング機構4は、双方とも設定面F上で特定レベリング機構4に隣接する。どの機構に対してどの機構が隣接しているかを示す情報は、事前に設定した上で、コントローラ100によって適宜読み込まれるようになっている。
【0162】
隣接チャンネルは、第1工程で決定された特定チャンネルと同じ除振装置1に属するチャンネルから選ばれるようになっている。特定レベリング機構4及び隣接レベリング機構4についても同様である。
【0163】
ステップS102から続くステップS103において、コントローラ100は、所定の指令周期が経過したか否かを判定する。この判定がYESの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS104へ進める。この判定がNOの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS108へ進める。ここでいう「指令周期」とは、コントローラ100からの駆動指令の出力間隔を示す。ここでいう「駆動指令」とは、コントローラ100から出力されて各電動モータ45に入力される電気信号であって、特に、各電動モータ45の駆動を開始させるための信号である。なお、ステップS103の判定は、省略してもよい。
【0164】
ステップS103から続くステップS104では、第2工程に関する処理が行われる。具体的に、コントローラ100は、特定レベリング機構4に対応した2つの隣接レベリング機構4,4を選択する。コントローラ100はまた、2つの隣接レベリング機構4,4の間で第1変位z1の差分を算出する。
【0165】
ここで、ステップS104における「差分」とは、各チャンネルに対応した支持位置Pにおける第1変位z1の差分を指す。2つの隣接チャンネルの第1変位をそれぞれz1’,z1”とし、ここでいうところの差分をDaとすると、コントローラ100は、例えば、Da=|z1’-z1”|に相当する演算を実行する。
【0166】
その後、ステップS105~ステップS106において、コントローラ100は、特定チャンネルに係るずれD1が低減されるように特定レベリング機構4を作動させる第2工程を実行する。
【0167】
この第2工程に際し、コントローラ100は、前述のように求めた差分Daが所定の第3閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104の判定がNOの場合(差分Daが所定未満の場合)、コントローラ100は、制御プロセスをステップS106に進める。ステップS106において、コントローラ100は、全16個のレベリング機構4のうち、特定レベリング機構4のみを作動させる。この場合、コントローラ100は、特定レベリング機構4の電動モータ45のみに駆動指令を入力する。
【0168】
一方、ステップS104の判定がYESの場合(差分Daが所定以上の場合)、コントローラ100は、制御プロセスをステップS105に進める。ステップS105において、コントローラ100は、全16個のレベリング機構4のうち、特定レベリング機構4と、2つの隣接レベリング機構4のうちの一方と、を同時に(共に)作動させる(電動モータ45:駆動)。ここで、一方の隣接レベリング機構4とは、第1変位z1の値が、特定レベリング機構4における第1変位z1の値に近接したものとすることができる。この場合、他方の隣接レベリング機構4については、その電動モータ45を駆動しない(電動モータ45:非駆動)。この場合、コントローラ100は、特定レベリング機構4の電動モータ45と、作動対象となった隣接レベリング機構4の電動モータ45と、に対して駆動指令を入力する。
【0169】
なお、前述のように複数のレベリング機構4を同時に作動させてしまうと、ハンチングの発生が懸念される。しかしながら、本実施形態の場合、特定レベリング機構4については、1つずつ順番に作動させることになるため、ハンチングの発生は、無作為に選択されたレベリング機構4を同時に作動させるような構成と比較して抑制される。
【0170】
また、隣接レベリング機構4については特定レベリング機構4と同時に作動させることになるものの、各除振装置1において非隣接位置(例えば対角位置)に位置するレベリング機構4については、同時に作動させないように構成されている。このことも、ハンチングの発生を抑制する上で有効に作用する。
【0171】
続くステップS107において、ステップS105又はステップS106において駆動指令が入力された電動モータ45が、所定の最低駆動時間にわたって駆動する。この最低駆動時間は、前述の指令周期よりも短時間となるように設定されている。その際、コントローラ100は、最低駆動時間が経過した電動モータ45に停止指令を入力することで、その電動モータ45の駆動を停止してもよい。ここでいう「停止指令」とは、コントローラ100から出力されて各電動モータ45に入力される電気信号であって、特に、各電動モータ45の駆動を停止させるための信号である。
【0172】
つまり、本実施形態に係るコントローラ100は、特定レベリング機構4又は隣接レベリング機構4を構成する各電動モータ45を、最低駆動時間刻みで例えば複数回にわたって駆動させる。第1変位z1が許容範囲R1に収まるまで駆動させ続ける(一度の機会で駆動させる)のではなく、小刻みに駆動させるようにしたことで、各チャンネルを偏りなく徐々に許容範囲R1に近づけていくことが可能になる。そのことで、弾性体3のストロークを抑制する上で有利になる。
【0173】
その後、コントローラ100は、制御プロセスをステップS107からステップS108に進める。ステップS108において、コントローラ100は、現在の制御モードが第2モードか否かを判定する。
【0174】
ステップS108の判定がYESの場合、コントローラ100は、
図8に例示するフローを完了する。この場合、コントローラ100は、制御プロセスを、
図7のステップS22からステップS24へ進める。
【0175】
ステップS24において、コントローラ100は、全16個のチャンネル(レベリング機構4)のうち、第1変位z1が許容範囲R1内に収まったチャンネル(レベリング機構4)の割合が所定割合以上となったか否かを判定する。所定割合は、事前に設定されるパラメータである。この所定割合は、60%以上90%以下とすることが好ましく、70%以上80%以下とすることがさらに好ましい。所定割合の値は、手動入力または自動処理に基づいて変更可能としてもよい。
【0176】
さらに詳細には、ステップS24において、コントローラ100は、全16個のチャンネルの各々において、各チャンネルにおける第1変位z1が許容範囲R1に収まったか否か(T1-ΔT1≦z1≦T1+ΔT1)を判定する。コントローラ100は、その判定結果に基づいて、前記所定割合に係る判定を実行する。
【0177】
なお、
図7のフローは例示に過ぎない。ステップS24に係る処理をステップS21よりも早いタイミングに移動させてもよいし、ステップS21とステップS22との間のタイミングに移動させてもよい。その場合、第1変位z1が許容範囲R1に収まったか否か(T1-ΔT1≦z1≦T1+ΔT1)の判定を、前記ステップS102の判定に流用することができる。後述の
図9に係るフローにおいても同様である。
【0178】
本実施形態では、前記所定割合は、75%に設定されている。この場合、ステップS24の判定は、第1変位z1が許容範囲R1内に収まったチャンネル(レベリング機構4)が12個以上となったときにYESとなり、11個未満のときにNOとなる。
【0179】
ステップS24の判定がNOの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS21に戻す。レベリング処理(特に、第2工程)を通じて弾性体3のたわみが変化すると想定されるため、ステップS21の判定、及び、ステップS23の処理まで制御プロセスを戻す。
【0180】
一方、ステップS24の判定がYESの場合、コントローラ100は、
図7に係る制御プロセスを終了する。この場合、コントローラ100は、制御プロセスを、
図5のステップS3からステップS4へ進める。このステップS4において、コントローラ100は、第3モードでレベリング制御を実行する。
【0181】
-第3モードの詳細-
図9は、第3モードに関連した処理を例示するフローチャートである。
図10は、第3モードに特有の処理を例示するフローチャートである。
【0182】
図7と
図9との比較から見て取れるように、第3モードに係る処理は、ステップS34の判定を除き、第2モードに係る処理を同じである。
図9のステップS31は、
図7のステップS21と共通であり、
図9のステップS32は、
図7のステップS22と共通であり、
図9のステップS33は、
図7のステップS23と共通である。なお、ステップS32とステップS31及びステップS33との前後関係に示すように、本実施形態に係るコントローラ100は、レベリング制御(特に、第3モードでのレベリング制御)よりも優先してたわみ差解消処理を実行するようになっている。
【0183】
例えば、
図9のステップS32において、コントローラ100は、
図8に例示する制御プロセスを実行する。特定チャンネル及び隣接チャンネルに関する処理は、前述の通りである。
【0184】
第2モードとの主たる相違点として、第3モードでのレベリング制御に際し、コントローラ100は、
図8のステップS107において、NOと判定する。コントローラ100は、制御プロセスをステップS108に進め、第3モードに固有の処理(第3モード固有処理)を実行する。
【0185】
第3モード固有処理の詳細は、
図10に示す通りである。コントローラ100はまず、ステップS109において、全ての電動モータ45を駆動停止する(より一般には、全てのレベリング機構4を非作動状態にする)。
【0186】
続くステップS110において、コントローラ100は、全ての電動モータ45を駆動停止させてから所定時間が経過したか否かを判定する。この判定がNOの場合、制御プロセスはステップS109に戻る。コントローラ110は、所定時間が経過するまでステップ109を継続する。
【0187】
つまり、コントローラ100は、第3モードでのレベリング制御に際し、前述の第1工程及び第2工程を行うのに加えて、
図8のステップS105~S1076等を通じて第2工程を完了した後に、全レベリング機構4を停止させた状態で所定時間待機する工程(第4工程)を実行するように構成されている。ここでの所定時間は、事前に設定されるパラメータである。この所定時間は、4秒以下とすることが好ましく、2秒以下とすることがさらに好ましい。所定時間の値は、手動入力または自動処理に基づいて変更可能としてもよい。
【0188】
一方、ステップS110の判定がYESの場合、コントローラ100は、
図10に係る制御プロセスを終了する。この場合、コントローラ100は、制御プロセスを、
図9のステップS32からステップS34へ進める。
【0189】
ステップS34において、コントローラ100は、全てのチャンネル(レベリング機構4)において、第1変位z1が許容範囲R1内に収まったか否かを判定する。
【0190】
ステップS34の判定がNOの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS31に戻す。レベリング処理(特に、第2工程)を通じて弾性体3のたわみが変化すると想定されるため、ステップS31の判定、及び、ステップS33の処理まで制御プロセスを戻す。
【0191】
一方、ステップS34の判定がYESの場合、コントローラ100は、
図9に係る制御プロセスを終了する。この場合、コントローラ100は、制御プロセスを、
図5のステップS4からステップS5へ進める。このステップS5において、コントローラ100は、除振装置1を起動する。この起動によって、各除振装置1は、アクティブ除振制御を実行可能な状態となる。
【0192】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態によると、
図8を用いて説明したように、各レベリング機構4を順番に動作させることで、一のレベリング機構4の動作が他のレベリング機構4の動作に及ぼす影響を可能な限り抑制することができる。これにより、レベリング制御の収束性を損なうことなく、可能な限り精密かつバランスのよいレベリングを実現することができる。また、レベリング制御におけるハンチングを抑制することで、結果的に、より迅速にレベリング制御を完了することもできる。
【0193】
また、
図5~
図8を用いて説明したように、レベリング制御の開始直後など、比較的粗い制御でも堪えうる状況下では第1モードでのレベリング制御を実行し、その後、所定以上の精度が求められる状況下では、第2モードでのレベリング制御を実行する。
【0194】
このように、レベリング制御の進行状況に応じて制御モードを使い分けることで、可能な限り迅速なレベリングと、可能な限り精密なレベリングと、を両立することができる。これにより、レベリング制御の性能が著しく向上する。
【0195】
また、本実施形態に係るアクティブ除振システム1は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)のうち、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0196】
また、
図5、及び、
図7~
図10を用いて説明したように、レベリング制御の中盤では第2モードでのレベリング制御を実行し、レベリング制御の終盤では第3モードでのレベリング制御を実行する。第3モードを行うことで、各レベリング機構4の動作に伴う慣性力の影響を、可能な限り抑制することができる。第3モードは、第2モードよりもさらに精密なレベリングを提供する。
【0197】
例えば、各レベリング機構4を前述のように電動モータ45によって構成するととともに、いずれかの電動モータ45に停止指令が入力された状況を考える。この場合、停止指令が入力されたモータは、その入力後のわずかな期間(本実施形態の場合、数百ms程度)、慣性力で回転を持続することになる。
【0198】
そうすると、いずれかの支持位置Pにおいて、所定の電動モータ45に停止指令が入力されたタイミングで第1変位z1が許容範囲R1内に収まっていたとしても、慣性力に起因した回転の影響を受けて、その第1変位z1が許容範囲R1外に逸脱してしまう可能性がある。この可能性は、停止指令の入力対象となった支持位置Pに加え、それに隣接する他の支持位置Pにおいても想定されるものである。それとは反対に、いずれかの支持位置Pにおいて第1変位z1が許容範囲R1外に逸脱していたとしても、慣性力に起因した回転の影響を受けて、その第1変位z1が意図せずして許容範囲R1内に収まってしまう可能性もある。これらの可能性は、搭載物300の荷重分布が均等でない場合には、それが均等である場合と比べて、より顕著になると考えられる。この問題に対し、本実施形態のように第3モードでのレベリング制御を実行することで、前述の如き慣性力の影響を可能な限り抑制することができる。
【0199】
このように、レベリング制御の進行状況に応じて制御モードを使い分けることで、第2モードによる相対的に迅速なレベリングと、第3モードによる相対的に精密なレベリングと、を両立することができる。これにより、レベリング制御の性能が著しく向上する。
【0200】
また、
図7のステップS24に例示したように、所定条件を満足したレベリング機構4の割合に基づいて第2モードから第3モードに移行させることで、レベリング制御の進行状況に応じて、第2モードから第3モードへとスムースに移行させることができる。
【0201】
また、
図8のステップS104~ステップS106を用いて説明したように、特定レベリング機構4に加えて隣接レベリング機構4を同時に動作させるように構成することで、特定レベリング機構4に係る弾性体3のストローク(変位代)を抑制することができる。各アクティブ除振装置1において、弾性体間のたわみ差を抑制することができる。
【0202】
また対角位置ではなく、隣接するレベリング機構4を同時に動作させるように構成したことで、一のレベリング機構4が他のレベリング機構4の動作に及ぼす影響を、最小限に抑えることが出来る。このことは、略正方形状のアッパープレート13を具備する除振装置1において、取り分け有効となる。
【0203】
また、
図7のステップS21及びステップS23等に例示したように、第2変位z2に基づいた制御を行うことで、各弾性体3におけるたわみ差を抑制することができる。たわみ差の抑制は、搭載物300の荷重分布に対応したバランスのよいレベリングを実現したり、各弾性体3の耐久性を確保したりする上で有用である。
【符号の説明】
【0204】
S アクティブ除振システム
F 設定面(所定面)
P 支持位置
1 アクティブ除振装置
3 弾性体
4 レベリング機構
42 ばね座
5 定盤変位センサ
6 ばね変位センサ
13 アッパープレート(定盤)
100 コントローラ
300 搭載物(被支持体)
z1 第1変位
z2 第2変位
T1 第1閾値
D1 ずれ