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  • 特開-水素製造システム及び水素製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038846
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】水素製造システム及び水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20240313BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240313BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20240313BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C25B1/04
H02J15/00 G
H02J3/28
H02J3/38 120
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143167
(22)【出願日】2022-09-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月2日 PR TIMES画面コピー 1 令和4年3月20日 新エネルギー新報 No.254,P18 1
(71)【出願人】
【識別番号】518379658
【氏名又は名称】日本水力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】市橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】川本 正男
(72)【発明者】
【氏名】大澤 寛
【テーマコード(参考)】
4K021
5G066
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BB03
4K021BC07
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA08
4K021DC01
4K021DC03
5G066HB02
5G066JB10
(57)【要約】
【課題】よりエネルギー効率の良い水素製造システム及び水素製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る水素製造システムSは、河川の水流によって第一の交流の電力を発生する小水力発電装置1と、小水力発電装置1に電気的に接続され、電力に基づき水を分解して水素及び酸素を発生させる水分解装置2と、小水力発電装置1が発生させた第一の交流電力C1を第一の直流電力D1に変換する交流直流変換部31、第一の直流電力D1を第二の直流電力D2に変換する直流電圧変換部32を備えた電力変換装置3を備え、水分解装置2は、電力変換装置3の直流電圧変換部32に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の水流によって第一の交流の電力を発生する小水力発電装置と、
前記小水力発電装置に電気的に接続され、電力に基づき水を分解して水素及び酸素を発生させる水分解装置と、
前記小水力発電装置が発生させた第一の交流電力を第一の直流電力に変換する交流直流変換部、前記第一の直流電力を第二の直流電力に変換する直流電圧変換部、を備えた電力変換装置と、を備え、
前記水分解装置は、前記電力変換装置の前記直流電圧変換部に接続されている水素製造システム。
【請求項2】
前記電力変換装置は、前記第一の直流電力を第二の交流電力に変換する直流交流変換部を有する請求項1記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記水分解装置に接続された水素タンクを備える請求項1記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記小水力発電装置が発生する前記第一の交流電力の電圧は、100V以上450V以下の範囲であり、
前記第一の直流電力の電圧は100V以上800V以下の範囲にあり、
前記第二の直流電力の電圧は1.5V以上70V以下の範囲にある請求項1記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記河川の水から不溶ゴミを除去する不溶ゴミ除去装置と、
前記河川の水中に溶存する不要溶存物を除去する不要溶存物除去装置と、を備えた不要物除去システムを備え、
前記水分解装置に前記不要物除去システムによって処理された前記河川の水を供給する請求項1記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記電力変換装置は、パワー半導体を使用した請求項1記載の水素製造システム。
【請求項7】
河川の水流によって第一の交流電力を発生させるステップ、
前記第一の交流電力を第一の直流電力に変換するステップ、
前記第一の直流電力を第二の直流電力に変換するステップ、
前記第二の直流電力によって水分解装置を駆動して水素を発生させるステップ、を備える水素製造方法であって、
前記河川の水流によって第一の交流電力を発生させるステップ、前記第一の交流電力を第一の直流電力に変換するステップ、及び、前記第一の直流電力を第二の直流電力に変換するステップの少なくともいずれかは、パワー半導体を用いて行われる水素製造方法。
【請求項8】
前記水分解装置が分解する水は、前記河川の水流である請求項7記載の水素製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造システム及び水素製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーとは、石油や石炭等を燃焼させることによって得られる化石エネルギーとは異なり、太陽光、風、水流等自然界におけるエネルギー源から得られるエネルギーをいう。再生可能エネルギーは、枯渇せず、二酸化炭素等の温室効果ガスを排出しないという利点を有しており、環境問題が深刻化する現代社会においてその重要性は益々高いものとなっていくと考えられている。
【0003】
再生可能エネルギーのうち、水力発電によって得られる電気エネルギーは、急峻な山々とこの間に流れる河川に恵まれた日本において特に重要なエネルギーである。
【0004】
ところで、再生可能エネルギーは他のエネルギーと同様、発電機を用いて発生する電気エネルギーの形態をとるものが一般的であるが、電気エネルギーは電池等によって貯蔵が可能であるものの、その電池の容量や維持コストの観点から貯蔵において改善の余地がある。
【0005】
この改善に関する技術として、例えば下記特許文献1には、風力発電を用いて水素を発生させようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4872393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は風力発電の構造に特化したものである。再生可能エネルギー源として風や太陽光を用いる場合、その風や太陽光の供給量は、無風の場合や曇天の場合などがあり安定していない。また、水素を発生させる供給源としての水についても別の場所から持ち込む必要があるといった課題がある。
【0008】
また、再生可能エネルギーの電気を用いて水素製造を行う場合、一般に再生可能エネルギーは交流であり、水素製造を行うために必要な電力は直流である。このため、再生可能エネルギーで発電した電気を用いて、水の電気分解により水素を製造しようとする場合、電気を交流から直流に変換する必要がある。このため、インバーター、コンバータ、及び変圧器を組み合わせ、交流から直流へ変換、直流による整流、直流から交流への変換を複数回繰り返し、水を電気分解して水素を製造するのに最適な直流の定電圧大電流を得る必要がある。そしてこの大電流を得る際には、電気の変換を行う度に損失が発生し、再生可能エネルギーで得られた電力の半分程度しか実際の水素の製造に用いることができないといった課題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、よりエネルギー効率の良い水素製造システム及び水素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に対し、本発明者らは、再生可能エネルギーによる発電と水素製造を一体化して再生可能エネルギーで発電した電力を余すところなく水素製造に使用できるように鋭意研究を行い、最適な電源装置を見出し、効率の良い水素製造装置および水素製造方法を発明した。
【0011】
具体的には再生可能エネルギーとして太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電等が挙げられるが、高度な水素製造装置を組み合わせる場合、設備使用率の高い水力発電が最適である。太陽光発電と水素製造を組み合わせた場合は、太陽の出ている昼間の天気の良い日に限ることから設備利用率が10%程度となり、電極に高価な白金などを使用する水素製造電解装置が多くの時間作動していないこととなる。このため、蓄電池などを備え夜間の作動などを確保する方法もあるが、設備が過大となり、現実的方法とは言えない。同様に風力と組み合わせた場合も一定の風のある時のみの発電となることから20%程度の設備利用率となる。バイオマス発電も可能ではあるが、再生可能エネルギーとして認められているものの、発電時に燃焼を伴うことから、一定の二酸化炭素が発生する。本発明はこれらすべての再生可能エネルギーの発電と水素製造装置の組み合わせに適合できるが、最適なものは水力発電である。水力発電では水が有る限り一定の発電が可能であり、電気の変動なども風力などに比べ極めて少ないものとなっている。水素製造には変動の少ない電気が最適であり、水素製造量は電流の量に比例する。このようなことから、水素製造に最適な発電としては中小水力発電が上げられ、10万kW以下が最適となる。一般には2000kW以下のものが小水力発電とよばれ、これらは水素製造専用に利用する場合最適な規模となる。また電力変換装置部には昨今進歩の著しく大電流を直接変換できるパワー半導体を使用することで従来のインバーター、コンバータを組み合わせたものに対しより効率の高いシステムとなっている。
【0012】
すなわち上記課題を解決する本発明の一観点に係る水素製造システムは、河川の水流によって第一の交流の電力を発生する小水力発電装置と、小水力発電装置に電気的に接続され、電力に基づき水を分解して水素及び酸素を発生させる水分解装置と、小水力発電装置が発生させた第一の交流電力を第一の直流電力に変換する交流直流変換部、第一の直流電力を第二の直流電力に変換する直流電圧変換部、を備えた電力変換装置と、を備え、水分解装置は、電力変換装置の前記直流電圧変換部に接続されている。
【0013】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、第一の直流電力を第二の交流電力に変換する直流交流変換部を備えていることが好ましい。
【0014】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、水分解装置に接続された水素タンクを備えることが好ましい。
【0015】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、小水力発電装置が発生する第一の交流電力の電圧は、100V以上450V以下の範囲であり、第一の直流電力の電圧は100V以上800V以下の範囲にあり、第二の直流電力の電圧は1.5V以上70V以下の範囲にあることが好ましい。
【0016】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、第一の交流電力から電圧100Vの交流電力を発生させる交流整流部を備え、交流整流部の出力は、直流電圧変換部に接続されていることが好ましい。
【0017】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、第一の交流電力から振幅100Vの交流電力を発生させる交流整流部を備え、交流整流部の出力は直流電圧変換部に接続されていることが好ましい。
【0018】
また、本観点においては、電力変換装置は、パワー半導体を使用したものであることが好ましい。
【0019】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、河川の水から不溶ゴミを除去する不溶ゴミ除去装置と、河川の水中に溶存する不要溶存物を除去する不要溶存物除去装置と、を備えた不要物除去システムを備え、水分解装置に不要物除去システムによって処理された河川の水を供給することが好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一観点に係る水素製造方法は、河川の水流によって第一の交流電力を発生させるステップ、第一の交流電力を第一の直流電力に変換するステップ、第一の直流電力を第二の直流電力に変換するステップ、第二の直流電力によって水分解装置を駆動して水素を発生させるステップ、を備え、河川の水流によって第一の交流電力を発生させるステップ、第一の交流電力を第一の直流電力に変換するステップ、及び、第一の直流電力を第二の直流電力に変換するステップの少なくともいずれかは、パワー半導体を用いて行われるものである。
【0021】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、水分解装置が分解する水は、河川の水流であることが好ましい。
【0022】
以上、本発明によって、よりエネルギー効率の良い水素製造システム及び水素製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る水素製造システムの概略を示す図である。
図2】実施形態に係る電力変換装置の機能ブロック図である。
図3】実施形態の他の例に係る水素製造システムの概略を示す図である。
図4】実施形態に係る水分解装置における電気分解のイメージを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態に記載の具体的な例示にのみ限定されるものではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る水素製造システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示す図である。本図で示すように、本システムSは、河川の水流によって第一の交流電力C1を発生する小水力発電装置1と、小水力発電装置1に電気的に接続され、電力に基づき水を分解して水素及び酸素を発生させる水分解装置2と、電力変換装置3と、を有する。
【0026】
また、電力変換装置3では、更に、小水力発電装置1が発生させた第一の交流電力C1を第一の直流電力D1に変換する交流直流変換部31、第一の直流電力D1を第二の直流電力D2に変換する直流電圧変換部32、第一の直流電力D1を第二の交流電力C2に変換する直流交流変換部33、を備えた電力変換装置3と、を備えたものである。図2は、本システムSの電力変換装置3の機能ブロック図を示している。なお、水分解装置2は、電力変換装置3の直流電圧変換部32に接続されており、小水力発電装置1は、電力変換装置3の交流直流変換部31に接続されている。
【0027】
まず本システムSは、上記の通り、河川の水流によって第一の交流電力C1の電力を発生する小水力発電装置1を備える。ここで「電力」とは、単位時間に電流が行う仕事量を意味する。
【0028】
また本システムSにおける小水力発電装置1は、電力を発生させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、羽根等が付され河川の水流によって回転する軸(水車)と、この軸に接続され軸の回転とともに回転し電力を発生させる発電機と、を備えた同期発電機であることが好ましい。なお、水車の種類としては限定されるわけではないが、例えばフランシス水車、ベルトン水車、プロペラ水車、クロスフロー水車等を例示することができるがこれに限定されない。他の水車の例について例えば図3に示す。また、本システムSの小水力発電装置1では、発生する電力は交流電力となっており、これが第一の交流電力C1となる。
【0029】
後述の記載からも明らかになるが、小水力発電装置1が発生させる第一の交流電力C1の電圧は、限定されるわけではないが、100V以上450V以下の範囲であることが好ましく、またこの周波数範囲としても限定されるわけではないが、10Hz以上100Hz以下であることが好ましく、より好ましくは一般的な周波数である50Hz又は60Hzであることが好ましい。この範囲内とすることで、後述の水分解装置2、更には電力変換装置3による電力変換が効率的になる。
【0030】
また、本システムSでは、上記の通り、小水力発電装置1に電気的に接続され、電力に基づき水を分解して水素及び酸素を発生させる水分解装置2を備える。より具体的に説明すると、本システムSでは、上記電力変換装置3によって生じる第二の直流電力D2によって水を分解する。つまり、本システムSでは、河川の水流によって電力を発生させ、更にこの電力によって水を分解して水素を発生させ、エネルギー源として保存蓄積させることができるようになる。
【0031】
本システムSにおいては、電力によって水を水素及び酸素に分解させることができる限りにおいて限定されず、水を電気分解を用いて分解する方式であることが簡便であり好ましい。水の電気分解を用いる場合は、水を電解槽(電解セル)に入れ、陽極と陰極を浸し、この陽極と陰極(一対の電極)間に電流を流すことで水を電気分解し陰極側では水素を、陽極側では酸素を発生させることが可能となる。この電気分解セルのイメージについて図4に示しておく。
【0032】
ところで、本システムSにおいては、水分解装置2に接続された水素タンク4を備えていることが好ましい。水素タンク4を備えることで、水素を蓄積し、必要に応じて運搬、エネルギーとして使用することができるようになる。また、同様に、水分解装置2には、酸素を蓄積する酸素タンク5を設けてもよい。酸素も他の元素と反応させることでエネルギーとして使用することが可能となり、特に、燃料電池では水素と酸素を触媒を介して反応させて水及びエネルギーを得ることとなるため、酸素自体もエネルギー源として有用である。
【0033】
また、本システムSでは、上記の通り、電力変換装置3を備えている。本システムSでは、河川の水流によって第一の交流電力C1を発生させるが、この第一の交流電力C1をそのまま水分解装置2の電源として用いることは困難である。そのため、本システムSでは、電力変換装置3を用いて水分解装置2に用いる直流の電力に整えるとともに、一般の電源としても使用可能な交流に改めて整えることで外部に供給させることが可能となる。
【0034】
ここで、電力変換装置3の各ブロックについて説明する。まず、本システムSにおける電力変換装置3は、上記の通り、小水力発電装置1が発生させた第一の交流電力C1を第一の直流電力D1に変換する交流直流変換部31を備えている。
【0035】
小水力発電装置1では、第一の交流電力C1を得ることができるが、上記の通り、水分解装置2は直流の電力によって駆動するものであり、その前提として直流電力に変換する必要がある。そのため、電力変換装置3では交流直流変換部31が必要となる。
【0036】
一方で、電力変換装置3では、水分解装置2だけでなく、外部への電力供給を可能とする構成を備えていることが好ましい。そのため、この直流電力を水分解装置2が駆動するための最適な条件の直流電力に特化させてしまうと、外部に提供する電力に再び変換する際に変換の損失が大きく発生してしまう。そのため、第一の直流電力D1は、水分解装置2だけでなく外部への電力供給を考慮してその中間の条件の電力への変換を行うことが好ましい。もちろん、外部への電力供給を考慮しない場合は、後述の直流交流変換部33については削除が可能である。
【0037】
また、上記を考慮し、交流直流変換部31が発生させる第一の直流電力D1の電圧は、限定されるわけではないが、100V以上800V以下の範囲にあることが好ましい。
【0038】
また、電力変換装置3は、第一の直流電力D1を第二の直流電力D2に変換する直流電圧変換部32を備えている。上記の通り、第一の直流電力D1は、水分解装置2によって水を分解するためのエネルギーとして用いることができるとともに、外部に供給する電力にも用いることができる。そのため、第一の直流電力D1を水分解装置2に対して好適な値に変換することが好ましく、このために必須な構成要素となる。なお、上記の交流直流変換部31とこの直流電圧変換部32は一つのステップにて行う回路、具体的な一つの装置として構成されていてもよい。これによって、より効率的な変換処理を行うことができるようになる。
【0039】
ここで、限定されるわけではないが、第二の直流電力D2の電圧は、1.5V以上70V以下の範囲にあることが好ましい。この範囲内にすることで、水分解装置2による分解が好適に行われることになる。ただし、水分解装置2において電解セルを複数設け、これら複数の電解セルを直列に接続する場合は高めの電圧に調整することは否定されない。
【0040】
また、電力変換装置3は、第一の直流電力D1を第二の交流電力C2に変換する直流交流変換部33を備えている。第二の交流電力C2は、外部電力として使用することができるものであり、これにより、水分解を行うだけでなく、通常の電力として使用することができるようになる。なお、直流交流変換部33による電力としては、限定されるわけではなく、電圧50V以上300V以下であることが好ましいが、交流の周波数は一般の家庭で使用することが想定される50Hz又は60Hzであることが好ましい。ただし、上記の通り、外部に電力を供給しない態様においては、直流交流変換部33については省略が可能である。なお、上記交流直流返還部31により生ずる直流電力を外部電力として用いることも可能である。
【0041】
また、本システムSの電力変換装置3においては、各電力変換の制御にマイクロコンピュータ等の制御が必要になること、すなわち別に電力が必要になる。そのため、これら制御用の電力を蓄積するための電池34を設けておき、駆動当初においてはその電池による電力を活用し、小電力発電装置1からの出力を変換し、十分に本システムSを駆動させた後、この消費した電力を補うべく電池34の充電を行うことが好ましい。これにより遠隔の地において十分独立したエネルギー供給が可能となる。
【0042】
また、本システムSの電力変換装置3においては、その制御に用いられるスイッチング素子等においては、いわゆるパワー半導体を用いることが重要である。「パワー半導体」とは、高電圧、大電流を扱うことが可能な半導体であり、パワー半導体を用いることで上記の電圧及び電流に対しても十分適用が可能となる。
【0043】
また、本システムSにおいては、限定されるわけではないが、河川の水から不溶ゴミを除去する不溶ゴミ除去装置61と、河川の水中に溶存する不要溶存物を除去する不要溶存物除去装置62と、を備えた不要物除去システム6を備え、水分解装置2に不要物除去システム6によって処理された河川の水を供給することが好ましい。一般に河川の水は、落ち葉や藻、魚その他のゴミが混在しており、標高の高い山の上流域であればこれらの混入は比較的少ないものの、落ち葉等のゴミについては不可避で存在する。そのため、不溶ゴミを除去する不溶ゴミ除去装置61を設けることで、小水力発電装置1内に混入してその水車等に絡まり動作が停止してしまうといったおそれを除去することができる。
【0044】
また、不要物除去システム6では、河川の水中に溶存する不要溶存物を除去する不要溶存物除去装置62を備える。上記の不溶ゴミ除去装置61によると水に溶けていない落ち葉や藻などを除去することができるため、小水力発電装置1の駆動には影響を与えない。一方で、水分解装置2にこの河川の水を分解しようとする場合、この河川の水に溶け込んだミネラル分が電気分解の際に析出する等で電極を破損してしまう、また場合によっては水を分解したときに酸素と水素ではなく他のガス、例えば塩素が混入している場合は塩素ガスが発生してしまう場合がある。そのため、不溶ゴミだけでなく、不要な溶存物も除去することで、河川の水を電気分解して水素を蓄積させることが可能となる。
【0045】
この不要溶存物除去装置62の構造としては、上記の機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではないが、蒸留器やイオン交換膜等を用いた装置であることが好ましい。蒸留器を用いることで水を蒸発回収することで不純物を除去して蒸留した水を得ることができ、更にこれに対してイオン交換膜などを用いることで、水電解装置2による電気分解の際に水素発生を阻害するイオン等を効率的に除去することができる。
【0046】
なお、不要物除去システム6は、まず前段に不溶ゴミ除去装置61を設け、この不溶ゴミ除去装置61から取水して小水力発電装置1に水を分配する一方、他方の水流に対しては不要溶存物除去装置62を介して溶存している不要なイオンを除去し、この不要なイオンが除去された水を水分解装置2に供給する配管などを設けておくことが好ましい。
【0047】
(水素製造方法)
また、上記の記載から明らかであるが、本システムSによると水素を製造すること、具体的には水素製造方法(以下「本方法」という。)を提供することが可能である。下記に詳述する。
【0048】
すなわち本方法は、(S1)河川の水流によって第一の交流電力を発生させるステップ、(S2)第一の交流電力を第一の直流電力に変換するステップ、(S3)第一の直流電力を第二の直流電力に変換するステップ、(S4)第二の直流電力によって水分解装置を駆動して水素を発生させるステップ、を備える。
【0049】
また、本システムSにおいては、限定されるわけではないが、(S4)第二の直流電力によって水分解装置を駆動して水素を発生させるステップにおいて、水分解装置が分解する水は、河川の水流であることが好ましい。
【0050】
以上、本システムSによって、よりエネルギー効率の良い水素製造システム及び水素製造方法を提供することができる。具体的には、本システムSは、川の流れが比較的早い小規模の河川に小水力発電装置1を設置し水素を効率的に発生させることができる。しかも、不要物除去システム6を加えることで、河川からは小水力発電装置1から電力を得ることができるとともに、その河川の水を電気分解して水素源としても用いることができる。すなわち、遠隔の地において、電力を得るとともにその電力と水を用いて完全に独立してエネルギーの獲得を行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は水素製造システム及び水素製造方法として産業上の利用可能性がある。

図1
図2
図3
図4