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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003885
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】膝用サポータ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20240109BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20240109BHJP
   A61F 13/00 20240101ALI20240109BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20240109BHJP
   A63B 71/08 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A41D13/06 105
A61F5/02 N
A61F13/00 355S
A61F13/06 A
A63B71/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103213
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】522258617
【氏名又は名称】小田島 智幸
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】小田島 智幸
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA13
3B011AB18
3B011AC17
3B011AC21
3B211AA13
3B211AB18
3B211AC17
3B211AC21
4C098AA01
4C098BB11
4C098BC02
4C098BC15
4C098BD02
(57)【要約】
【課題】 装着して膝を曲げたとき、膝関節を引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくして、使い心地の向上を図る。
【解決手段】
膝Kに装着される伸縮性のサポータ本体1と、サポータ本体1に取付けられ膝関節Kaの裏側を押圧する押圧部材10とを備え、押圧部材10を、硬質の板状材料で形成するとともに、膝関節Kaの裏側の膝窩Kbを跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成し、押圧部材10の膝窩Kbに対応する部位を、互いに所定間隔離間した一対の分断面11で分断して、押圧部材10に、中間部12,脚軸方向一方側の一方部13及び他方側の他方部14を設け、一方部13及び他方部14を、夫々、ヒンジ部15を介して中間部12に接続した。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝の外周に沿って装着される伸縮性のサポータ本体と、該サポータ本体に取付けられ膝関節の裏側を押圧する押圧部材とを備えた膝用サポータにおいて、
上記押圧部材を、硬質の板状部材で形成するとともに、膝関節の裏側の膝窩を跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成し、該押圧部材の上記膝窩に対応する部位を、脚軸方向に直交する幅方向に沿う分断面で分断して、該押圧部材に、脚軸方向一方側の一方部及び脚軸方向他方側の他方部を設け、該一方部及び他方部を、厚さ方向外側に幅方向に沿う軸線を有したヒンジ部を介して接続したことを特徴とする膝用サポータ。
【請求項2】
上記押圧部材を、樹脂製で硬質の板状部材で形成し、上記ヒンジ部を、上記一方部及び他方部に一体に連結される樹脂ヒンジで構成したことを特徴とする請求項1記載の膝用サポータ。
【請求項3】
膝の外周に沿って装着される伸縮性のサポータ本体と、該サポータ本体に取付けられ膝関節の裏側を押圧する押圧部材とを備えた膝用サポータにおいて、
上記押圧部材を、硬質の板状材料で形成するとともに、膝関節の裏側の膝窩を跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成し、該押圧部材の上記膝窩に対応する部位を、脚軸方向に直交する幅方向に沿い互いに所定間隔離間した一対の分断面で分断して、該押圧部材に、中間部,脚軸方向一方側の一方部及び脚軸方向他方側の他方部を設け、該一方部及び他方部を、夫々、厚さ方向外側に幅方向に沿う軸線を有したヒンジ部を介して上記中間部に接続したことを特徴とする膝用サポータ。
【請求項4】
上記一対の分断面の所定間隔をEとしたとき、10mm≦E≦30mmにしたことを特徴とする請求項3記載の膝用サポータ。
【請求項5】
上記押圧部材を、樹脂製で硬質の板状部材で形成し、上記中間部及び一方部のヒンジ部を、該中間部及び一方部に一体に連結される樹脂ヒンジで構成し、上記中間部及び他方部のヒンジ部を、該中間部及び他方部に一体に連結される樹脂ヒンジで構成したことを特徴とする請求項4記載の膝用サポータ。
【請求項6】
上記押圧部材の厚さをt、脚軸方向の長さをL、幅方向の長さをWとしたとき、5mm≦t≦50mm、100mm≦L≦130mm、50mm≦W≦110mmにしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の膝用サポータ。
【請求項7】
上記サポータ本体に、上記押圧部材を着脱可能に収納するとともに収納された押圧部材を弾性力により保持する伸縮性の収納袋を形成し、該収納袋に、上記押圧部材を出し入れするための開口を形成し、上記押圧部材として、厚さの異なる2種以上のものを用意し、該厚さの異なる押圧部材を交換可能にしたことを特徴とする請求項6記載の膝用サポータ。
【請求項8】
上記収納袋を、膝関節の裏側に対応する伸縮性の内側シート及び該内側シートに周囲が縫合される伸縮性の外側シートで構成し、上記開口を、上記外側シートの脚軸方向の途中に、幅方向に沿って切込み形成したことを特徴とする請求項7記載の膝用サポータ。
【請求項9】
上記押圧部材の内側面に付帯させる板状のスポンジを備えたことを特徴とする請求項7記載の膝用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、変形性膝関節症の患者等が膝の痛みを軽減したり膝を動き易くする等の目的で膝に装着する膝用サポータに係り、特に、膝関節の裏側を押圧する押圧部材を備えた膝用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の膝用サポータとしては、例えば、図12(a)に示すように、実用新案登録第3077852号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。この膝用サポータSaは、膝Kが挿通される筒状あるいは膝Kに巻回されて止着される帯状に形成され膝Kの外周に沿って装着される伸縮性のサポータ本体100と、このサポータ本体100に取付けられ膝関節Kaの裏側を押圧する押圧部材101とを備えて構成されている。押圧部材101は、膝関節Kaの裏側の窪みである膝窩Kbに入り込む比較的硬質の球体で構成されている。これにより、この膝用サポータSaを装着して膝Kを曲げたときに、膝関節Kaに、押圧部材101によって大腿骨側と脛骨側にこれらが互いに離間する方向の力、即ち、膝関節Kaを引き離す方向の力が作用するようにし、膝関節Kaを伸ばすことができるようにしている。
【0003】
また、従来においては、図12(b)に示すように、膝用サポータSbとして、膝関節Kaの裏側の膝窩Kbに入り込む断面矩形状をしたパッドの押圧部材102を用いたもの(実用新案登録第3156790号公報(特許文献2)に掲載)、図12(c)に示すように、膝用サポータScとして、膝関節Kaの裏側の膝窩Kbに入り込む円盤状の高弾性のパッドの押圧部材103を用いたもの(特開2001-17462号公報(特許文献3)に掲載)も知られている。更に、従来においては、膝用サポータSdとして、図12(d)に示すように、膝関節Kaの裏側の膝窩Kb全体を覆うような大きさの弾性体からなるパッドの押圧部材104を用いたもの(特表平8-508187号公報(特許文献4)掲載)も知られている。これらの押圧部材102,103,104によっても、膝用サポータ100を装着して膝Kを曲げたときに、膝関節Kaを引き離す方向の力が作用するようにし、膝関節Kaを伸ばすことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3077852号公報
【特許文献2】実用新案登録第3156790号公報
【特許文献3】特開2001-17462号公報
【特許文献4】特表平8-508187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12(a)に示す従来の膝用サポータSaにおいては、膝用サポータSaを装着して膝Kを曲げたとき、押圧部材101は球状なので、押圧部材101が膝窩Kbに入り込んで大腿筋や下腿筋に食い込むことから、筋肉に痛みを感じやすく、使い心地が悪いという問題がある。また、図12(b)に示す従来の膝用サポータSbにおいても、押圧部材102は断面矩形状なので角張っており、押圧部材102が膝窩Kbに入り込んで大腿筋や下腿筋に食い込むので、筋肉に痛みを感じやすく、使い心地が悪いという問題がある。
【0006】
一方、図12(c)に示す従来の膝用サポータScにおいては、膝窩Kb内に押圧部材103が入り込むものの、押圧部材103は高弾性なので、その分、痛みは和らぐが、縮小してしまうので、膝関節Kaを引き離す方向の力が低減し、効果を十分に発揮できないという問題がある。また、図12(d)に示す従来の膝用サポータSdにおいても、押圧部材104は、膝窩Kb全体を覆うような大きさの弾性体からなるパッドなので、筋肉には痛みを生じにくいが、弾性体なので全体が縮小してしまうことから、膝関節Kaを引き離す方向の力が低減し、効果を十分に発揮できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、装着して膝を曲げたとき、膝関節を引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくして、使い心地の向上を図った膝用サポータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の膝用サポータは、膝の外周に沿って装着される伸縮性のサポータ本体と、該サポータ本体に取付けられ膝関節の裏側を押圧する押圧部材とを備えた膝用サポータにおいて、
上記押圧部材を、硬質の板状部材で形成するとともに、膝関節の裏側の膝窩を跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成し、該押圧部材の上記膝窩に対応する部位を、脚軸方向に直交する幅方向に沿う分断面で分断して、該押圧部材に、脚軸方向一方側の一方部及び脚軸方向他方側の他方部を設け、該一方部及び他方部を、厚さ方向外側に幅方向に沿う軸線を有したヒンジ部を介して接続した構成にしている。
【0009】
ここで、硬質とは、膝を曲げて大腿と下腿とで挟む程度の力では容易に潰れない硬さという意味であり、多少弾性変形しても差支えない。硬質の板状部材の材質としては、例えば、樹脂,木材,紙,皮革,軽金属,セラミックス等を挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレン,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン発泡体,硬質ウレタン発泡体,フェノール発泡体,ABS樹脂,硬質ゴムなどが挙げられる。硬質ポリウレタン発泡体は軽くて取扱い易く、安価で且つ耐久性に富むことから好ましい。
【0010】
これにより、膝用サポータを装着して膝を曲げると、ヒンジ部を介して一方部及び他方部が外側に折れて互いに近接していく。膝を曲げる過程では、一方部及び他方部はヒンジ部を中心に折れていくので、膝を曲げやすくなる。膝を曲げる過程、あるいは、膝を曲げ切った状態では、一方部及び他方部の分断面側端部が重なった重畳部分が形成され、この重畳部分により、膝関節を大腿骨側と脛骨側に離間させる方向の力が作用し、即ち、膝関節を引き離す方向の力が作用するようになり、膝関節を伸ばすことができるようになる。
【0011】
この場合、押圧部材は硬質の板状部材で形成されているので、ほとんど縮小しないことから、一方部及び他方部の分断面側端部が重なった重畳部分の高さが、押圧部材の厚さの略2倍の寸法に保持され、そのため、従来の弾性部材で形成されて縮んでしまう押圧部材に比較して、膝関節を引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく確実に付与することができる。
【0012】
また、この場合、サポータ本体は伸縮性なので、その復元力により、押圧部材を折れ曲がった状態から板状の平面状態に戻す方向に付勢することから、一方部及び他方部が大腿筋や下腿筋に良く追従する。そして、大腿筋や下腿筋には一方部及び他方部の内面側が当接するので、従来の球状や断面矩形状に形成された押圧部材に比較して、大腿筋や下腿筋に食い込みにくくなり、そのため、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくなり、それだけ、使い心地を向上させることができる。尚、サポータ本体の一方部及び他方部の追従性を良くするためには、ヒンジ部を、押圧部材を折れ曲がった状態から板状の平面状態に戻す方向に付勢するスプリング機能を付与した構成とすることが望ましい。
【0013】
この構成においては、上記押圧部材を、樹脂製で硬質の板状部材で形成し、上記ヒンジ部を、上記一方部及び他方部に一体に連結される樹脂ヒンジで構成したことが有効である。膝用サポータを装着して膝を曲げる際、ヒンジ部による膝の曲げやすさを確保しつつ、樹脂ヒンジに弾性力があると、一方部及び他方部に板状に戻ろうとする復元力が作用することから、それだけ、追従性が良くなるとともに膝関節を引き離す方向の力が増し、膝関節を伸ばす効果を向上させることができる。また、樹脂ヒンジにより、押圧部材を一体化できるので、製造を容易にすることができる。
【0014】
また、上記の目的を達成するための本発明の別の膝用サポータは、膝の外周に沿って装着される伸縮性のサポータ本体と、該サポータ本体に取付けられ膝関節の裏側を押圧する押圧部材とを備えた膝用サポータにおいて、
上記押圧部材を、硬質の板状材料で形成するとともに、膝関節の裏側の膝窩を跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成し、該押圧部材の上記膝窩に対応する部位を、脚軸方向に直交する幅方向に沿い互いに所定間隔離間した一対の分断面で分断して、該押圧部材に、中間部,脚軸方向一方側の一方部及び脚軸方向他方側の他方部を設け、該一方部及び他方部を、夫々、厚さ方向外側に幅方向に沿う軸線を有したヒンジ部を介して上記中間部に接続した構成としている。
ここで、一対の分断面の所定間隔は、中間部の脚軸方向の長さになる。
【0015】
これにより、膝用サポータを装着して膝を曲げると、ヒンジ部を介して一方部及び他方部が外側に折れて互いに近接していく。膝を曲げる過程では、一方部及び他方部はヒンジ部を中心に折れていくので、膝を曲げやすくなる。膝を曲げる過程、あるいは、膝を曲げ切った状態では、膝関節側には、中間部に一方部の分断面側端部及び他方部の分断面側端部が重なった重畳部分が形成され、この重畳部分により、膝関節を大腿骨側と脛骨側に離間させる方向の力が作用し、即ち、膝関節を引き離す方向の力が作用するようになり、膝関節を伸ばすことができるようになる。
【0016】
この場合、押圧部材は硬質の板状部材で形成されているので、ほとんど縮小しないことから、中間部に一方部及び他方部の分断面側端部が重なった重畳部分の高さが、中間部の脚軸方向の長さに一方部及び他方部の厚さを略足し合わせた寸法に保持され、そのため、従来の弾性部材で形成されて縮んでしまう押圧部材に比較して、膝関節を引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく確実に付与することができる。また、中間部を設けたので、中間部の脚軸方向の長さ分、重畳部分の高さを大きくすることができ、それだけ、膝関節を引き離す方向の力が増し、膝関節を伸ばす効果を向上させることができる。
【0017】
更に、上記と同様に、大腿筋や下腿筋には一方部及び他方部の内面側が当接するので、従来の球状や断面矩形状に形成された押圧部材に比較して、大腿筋や下腿筋に食い込みにくくなり、そのため、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくなり、それだけ、使い心地を向上させることができる。
【0018】
この場合、上記一対の分断面の所定間隔をEとしたとき、10mm≦E≦30mmにしたことが有効である。一対の分断面の所定間隔は、中間部の脚軸方向の長さになり、この中間部の脚軸方向の長さ分、重畳部分の高さを大きくすることができるが、10mm≦E≦30mmにするので、確実に重畳部分の高さを大きくすることができ、膝関節を引き離す方向の力を確実に増して、膝関節を伸ばす効果を向上させることができる。
【0019】
また、この構成においては、上記押圧部材を、樹脂製で硬質の板状部材で形成し、上記中間部及び一方部のヒンジ部を、該中間部及び一方部に一体に連結される樹脂ヒンジで構成し、上記中間部及び他方部のヒンジ部を、該中間部及び他方部に一体に連結される樹脂ヒンジで構成したことが有効である。膝用サポータを装着して膝を曲げる際、ヒンジ部による膝の曲げやすさを確保しつつ、樹脂ヒンジに弾性力があると、一方部及び他方部に板状に戻ろうとする復元力が作用することから、それだけ、膝関節を引き離す方向の力が増し、膝関節を伸ばす効果を向上させることができる。また、樹脂ヒンジにより、押圧部材を一体化できるので、製造を容易にすることができる。
【0020】
更に、必要に応じ、上記押圧部材の厚さをt、脚軸方向の長さをL、幅方向の長さをWとしたとき、5mm≦t≦50mm、100mm≦L≦130mm、50mm≦W≦110mmにした構成としている。この範囲で、本発明の作用,効果を確実に発揮させることができる。
【0021】
そしてまた、必要に応じ、上記サポータ本体に、上記押圧部材を着脱可能に収納するとともに収納された押圧部材を弾性力により保持する伸縮性の収納袋を形成し、該収納袋に、上記押圧部材を出し入れするための開口を形成し、上記押圧部材として、厚さの異なる2種以上のものを用意し、該厚さの異なる押圧部材を交換可能にした構成としている。
これにより、厚さの異なる押圧部材を交換可能なので、関節側に形成される一方部の分断面側端部及び他方部の分断面側端部が重なった重畳部分の高さ寸法を調整することができる。そのため、使用者の膝の状態、例えば、変形性膝関節症の程度に合わせて、膝関節を引き離す方向の力を調整することができ、汎用性を大幅に向上させることができる。
【0022】
この場合、上記収納袋を、膝関節の裏側に対応する伸縮性の内側シート及び該内側シートに周囲が縫合される伸縮性の外側シートで構成し、上記開口を、上記外側シートの脚軸方向の途中に、幅方向に沿って切込み形成したことが有効である。開口から押圧部材を収納袋内に収納すると、開口を境界にした一方側の収納袋によって一方部側を包持し、開口を境界にした他方側の収納袋によって他方部側を包持することができるので、押圧部材が開口から抜け落ちにくくなり、押圧部材の保持が確実になる。即ち、収納袋の一端縁に開口を設けてこの開口から押圧部材を収納した場合には、押圧部材が、抜け落ちることがあるが、これに比較して、押圧部材の保持が確実になる。
【0023】
また、必要に応じ、上記押圧部材の内側面に付帯させる板状のスポンジを備えた構成としている。これにより、硬質の押圧部材と、膝の裏側との間にスポンジが介在することになるので、膝の裏側に対して押圧部材の当たりが柔らかくなり、より一層、使い心地を向上させることができる。また、スポンジの厚さを適宜変えれば、重畳部分の高さ寸法の調整にも寄与でき、使用者の膝の状態、例えば、変形性膝関節症の程度に合わせて、膝関節を引き離す方向の力を調整することができ、より一層汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、装着して膝を曲げたとき、膝関節を引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくして、使い心地の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る膝用サポータを示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る膝用サポータを示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る膝用サポータを示す要部縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る膝用サポータの押圧部材を折り畳む途中の状態で示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る膝用サポータの押圧部材を示し、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は折り畳む初期の状態を示す側面図、(d)は折り畳む途中の状態を示す側面図、(e)は折り畳む最終の状態を示す側面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る膝用サポータの使用状態を示し、膝に装着して膝を伸ばした状態を示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る膝用サポータの使用状態を示し、(a)は膝に装着して膝を折り曲げた途中の状態を示す断面図、(b)は膝に装着して膝を折り曲げた最終の状態を示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る膝用サポータの別の押圧部材を示し、(a)は折り畳む前の状態を示す斜視図、(b)は折り畳む途中の状態で示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る膝用サポータの別の押圧部材を示し、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は折り畳む初期の状態を示す側面図、(d)は折り畳む途中の状態を示す側面図、(e)は折り畳む最終の状態を示す側面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る膝用サポータのまた別の押圧部材を示す側面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る膝用サポータにおいて、別のサポータ本体を用いた例を示す背面図である。
図12】従来の膝用サポータの一例(4種類)を示す図(a)(b)(c)(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る膝用サポータについて説明する。尚、上記と同様のものには同一の符号を付して説明する。
図1乃至図7に示すように、本発明の実施の形態に係る膝用サポータSは、膝Kの外周に沿って装着される伸縮性のサポータ本体1と、サポータ本体1に取付けられ膝関節Kaの裏側を押圧する押圧部材10とを備えて構成されている。
【0027】
サポータ本体1は、膝Kが挿通される筒状に形成されている。膝Kの膝蓋骨(皿の骨)に対応する部位には、略円形の穴2が形成されており、この部位が圧迫されないようにしてある。サポータ本体1の材質や編成は、伸縮性があればどのように構成されても良く、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維等を単独若しくは混用した生地を用いて構成することができる。
【0028】
押圧部材10は、硬質の板状材料で形成されるとともに、膝関節Kaの裏側の膝窩Kbを跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成されている。ここで、硬質とは、膝Kを曲げて大腿と下腿とで挟む程度の力では容易に潰れない硬さという意味であり、多少弾性変形しても差支えない。硬質の板状部材の材質としては、例えば、樹脂,木材,紙,皮革,軽金属,セラミックス等を挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレン,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン発泡体,硬質ウレタン発泡体,フェノール発泡体,ABS樹脂,硬質ゴムなどが挙げられる。硬質ポリウレタン発泡体は軽くて取扱い易く、安価で且つ耐久性に富むことから好ましい。実施の形態では、硬質ポリウレタン発泡体を用いている。
【0029】
押圧部材10において、図5に示すように、その厚さをt、脚軸方向の長さをL、幅方向の長さをWとしたとき、5mm≦t≦50mm、100mm≦L≦130mm、50mm≦W≦110mmにしている。実施の形態では、例えば、5mm≦t≦20mm、115mm≦L≦125mm、85mm≦W≦95mmにしている。
【0030】
実施の形態では、押圧部材10として、図示しないが、厚さの異なる2種以上のものが用意され、この厚さの異なる押圧部材10を選択して用いることができるようにしている。即ち、押圧部材10を、厚さの異なるものと交換可能にしている。
【0031】
また、押圧部材10において、膝窩Kbに対応する部位は、脚軸方向に直交する幅方向に沿い互いに所定間隔離間した一対の分断面11で分断されており、押圧部材10に、中間部12,脚軸方向一方側の一方部13及び脚軸方向他方側の他方部14が設けられている。一方部13及び他方部14は、互いに対称形で同じ大きさに形成されている。一方部13及び他方部14の脚軸方向端面は、弧状に面取り形成されている。
【0032】
また、一方部13及び他方部14は、夫々、厚さ方向外側に幅方向に沿う軸線を有したヒンジ部15を介して中間部12に接続されている。中間部12及び一方部13のヒンジ部15は、中間部12及び一方部13に一体に連結される樹脂ヒンジで構成され、中間部12及び他方部14のヒンジ部15は、中間部12及び他方部14に一体に連結される樹脂ヒンジで構成されている。実施の形態では、押圧部材10を構成する板状部材の内側から、切込みを入れて分断面11を形成し、外側に樹脂ヒンジを形成している。樹脂ヒンジにより、押圧部材10を一体化できるので、製造を容易にすることができる。また、ヒンジ部15は、硬質ポリウレタン発泡体で形成されているので、押圧部材10を折れ曲がった状態から板状の平面状態に戻す方向に付勢するスプリング機能が付与される。
【0033】
図5に示すように、押圧部材10において、一対の分断面11の所定間隔をEとしたとき、10mm≦E≦30mmにしている。即ち、分断面11の所定間隔Eは、中間部12の脚軸方向の長さになっている。
【0034】
また、サポータ本体1には、押圧部材10を着脱可能に収納するとともに収納された押圧部材10を弾性力により保持する伸縮性の収納袋20が形成されている。収納袋20には、押圧部材10を出し入れするための開口21が形成されている。収納袋20の空間は押圧部材10形状に対応させた形状をしており、厚さの異なる2種以上の押圧部材10を収納可能にしている。
【0035】
詳しくは、収納袋20は、同材質のもので形成され、膝関節Kaの裏側に対応する伸縮性の内側シート22及び内側シート22に周囲が縫合される伸縮性の外側シート23で構成されている。開口21は、外側シート23の脚軸方向の途中、実施の形態では、外側シート23の中央に、幅方向に沿って切込み形成されている。
【0036】
更に、本膝用サポータSは、押圧部材10の内側面に付帯させる板状のスポンジ30が備えられている。スポンジ30の外形は押圧部材10と同じ形状及び同じ大きさに形成されており、図3に示すように、その厚さDは、例えば、5mm≦D≦10mmにしている。押圧部材10とともに収納袋20に収納される。スポンジ30においても、必要に応じ、厚さの異なる2種以上のものを用意することができる。
【0037】
従って、この実施の形態に係る膝用サポータSを使用するときは、図3に示すように、予め、押圧部材10として、所要の厚さのものを選択し、スポンジ30とともに収納袋20の開口21から内部に収納する。この場合、開口21から押圧部材10を収納袋20内に収納すると、開口21を境界にした一方側の収納袋20によって一方部13側を包持し、開口21を境界にした他方側の収納袋20によって他方部14側を包持することができるので、押圧部材10が開口21から抜け落ちにくくなり、押圧部材10の保持が確実になる。即ち、収納袋20の一端縁に開口21を設けてこの開口21から押圧部材10を収納した場合には、押圧部材10が、抜け落ちることがあるが、これに比較して、押圧部材10の保持が確実になる。
【0038】
そして、図6に示すように、この状態で膝用サポータSを膝Kに装着して使用する。使用の際、図7(a)に示すように、膝Kを曲げると、ヒンジ部15を介して一方部13及び他方部14が外側に折れて互いに近接していく。膝Kを曲げる過程では、一方部13及び他方部14はヒンジ部15を中心に折れていくので、膝Kを曲げやすくなる。また、この場合、サポータ本体1は伸縮性であり、また、ヒンジ部15はスプリング機能が付与されているので、その復元力により、押圧部材10を折れ曲がった状態から板状の平面状態に戻す方向に付勢することから、一方部13及び他方部14が大腿筋や下腿筋に良く追従する。
【0039】
図7(a)に示すように、膝Kを曲げる過程、あるいは、図7(b)に示すように、膝Kを曲げ切った状態では、膝関節Ka側には、中間部12に一方部13の分断面11側端部及び他方部14の分断面11側端部が重なった重畳部分Zが形成され、この重畳部分Zにより、膝関節Kaを大腿骨側と脛骨側に離間させる方向の力が作用し、即ち、膝関節Kaを引き離す方向の力が作用するようになり、膝関節Kaを伸ばすことができるようになる。この場合、押圧部材10は硬質の板状部材で形成されているので、ほとんど縮小しないことから、中間部12に一方部13及び他方部14の分断面11側端部が重なった重畳部分Zの高さHが、中間部12の脚軸方向の長さに一方部13及び他方部14の厚さを略足し合わせた寸法に保持され、そのため、従来の弾性部材で形成されて縮んでしまう押圧部材に比較して、膝関節Kaを引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく確実に付与することができる。
【0040】
また、中間部12を設けたので、中間部12の脚軸方向の長さ分、重畳部分Zの高さHを大きくすることができ、それだけ、膝関節Kaを引き離す方向の力が増し、膝関節Kaを伸ばす効果を向上させることができる。特に、一対の分断面11の所定間隔は、中間部12の脚軸方向の長さになり、この中間部12の脚軸方向の長さ分、重畳部分Zの高さHを大きくすることができるが、10mm≦E≦30mmにするので、確実に重畳部分Zの高さHを大きくすることができ、膝関節Kaを引き離す方向の力を確実に増して、膝関節Kaを伸ばす効果を向上させることができる。また、樹脂ヒンジに弾性力があると、一方部13及び他方部14に板状に戻ろうとする復元力が作用することから、それだけ、膝関節Kaを引き離す方向の力が増し、膝関節Kaを伸ばす効果を向上させることができる。
【0041】
更に、大腿筋や下腿筋には一方部13及び他方部14の内面側が当接するので、従来の球状や断面矩形状に形成された押圧部材に比較して、大腿筋や下腿筋に食い込みにくくなり、そのため、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくなり、それだけ、使い心地を向上させることができる。
【0042】
更にまた、本膝用サポータSにおいては、押圧部材10の内側面に付帯させる板状のスポンジ30を備えたので、硬質の押圧部材10と、膝Kの裏側との間にスポンジ30が介在することになり、そのため、膝Kの裏側に対して押圧部材10の当たりが柔らかくなり、より一層、使い心地を向上させることができる。また、サポータ本体1の表側には、穴2が形成されているので、膝Kの膝蓋骨(皿の骨)が圧迫されないようになり、屈曲動作を円滑に行うことができる。
【0043】
また、必要に応じ、厚さの異なる押圧部材10を交換する。これにより、関節側に形成される一方部13の分断面11側端部及び他方部14の分断面11側端部が重なった重畳部分Zの高さH寸法を調整することができる。そのため、使用者の膝Kの状態、例えば、変形性膝関節症の程度に合わせて、膝関節Kaを引き離す方向の力を調整することができ、汎用性を大幅に向上させることができる。また、スポンジ30の厚さを適宜変えれば、重畳部分Zの高さH寸法の調整にも寄与でき、使用者の膝Kの状態、例えば、変形性膝関節症の程度に合わせて、膝関節Kaを引き離す方向の力を調整することができ、より一層汎用性を向上させることができる。
【0044】
図8及び図9には、押圧部材10の別の例を示している。これは上記の押圧部材10と略同様に構成されるが、上記とは中間部12がない点で異なっている。即ち、押圧部材10は、上記と同様に、硬質の板状部材で形成され、膝関節Kaの裏側の膝窩Kbを跨いで大腿側及び下腿側に延在する大きさに形成されている。押圧部材10の膝窩Kbに対応する部位は、脚軸方向に直交する幅方向に沿う分断面11で分断されており、押圧部材10に、脚軸方向一方側の一方部13及び脚軸方向他方側の他方部14が設けられている。この一方部13及び他方部14は、厚さ方向外側に幅方向に沿う軸線を有したヒンジ部15を介して接続されている。ヒンジ部15は、一方部13及び他方部14に一体に連結される上記と同様の樹脂ヒンジで構成されている。
【0045】
従って、この膝用サポータSにおいても、図9に示すように、膝Kを曲げると、ヒンジ部15を介して一方部13及び他方部14が外側に折れて互いに近接していく。膝Kを曲げる過程では、一方部13及び他方部14はヒンジ部15を中心に折れていくので、膝Kを曲げやすくなる。膝Kを曲げる過程、あるいは、膝Kを曲げ切った状態では、一方部13及び他方部14の分断面11側端部が重なった重畳部分Zが形成され、この重畳部分Zにより、膝関節Kaを大腿骨側と脛骨側に離間させる方向の力が作用し、即ち、膝関節Kaを引き離す方向の力が作用するようになり、膝関節Kaを伸ばすことができるようになる。
【0046】
この場合、押圧部材10は硬質の板状部材で形成されているので、ほとんど縮小しないことから、一方部13及び他方部14の分断面11側端部が重なった重畳部分Zの高さHが、押圧部材10の厚さの略2倍の寸法に保持され、そのため、従来の弾性部材で形成されて縮んでしまう押圧部材に比較して、膝関節Kaを引き離す方向の力を可能な限り低減させることなく確実に付与することができる。
【0047】
また、この場合、大腿筋や下腿筋には一方部13及び他方部14の内面側が当接するので、従来の球状や断面矩形状に形成された押圧部材に比較して、大腿筋や下腿筋に食い込みにくくなり、そのため、大腿筋や下腿筋に痛みを感じさせにくくなり、それだけ、使い心地を向上させることができる。他の作用,効果は上記と同様である。
【0048】
尚、上記実施の形態において、ヒンジ部15を一体形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ヒンジ部15を別体で形成して対象部材間に架設するようにしても良く、また、ヒンジ部15の形態も樹脂ヒンジに限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。例えば、図10に示すように、中間部12を備えた押圧部材10において、ヒンジ部15をシート状の可撓性部材40で形成し、この可撓性部材40を中間部12及び一方部13間に貼着するとともに中間部12及び他方部14間に貼着する等、適宜変更して差支えない。また、押圧部材10の材質や大きさも上述したものに限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。
【0049】
尚また、上記実施の形態において、サポータ本体1は膝Kが挿通される筒状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、図11に示すように、膝Kに巻回されて工業用ファスナなどの止着手段(図示せず)によって止着される帯状に形成され膝Kの外周に沿って装着されるタイプのものであっても良く、適宜変更して差支えない。また、一方部13と他方部14との上下関係も図に示したものと逆であっても良いことは勿論である。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
S 膝用サポータ
K 膝
Ka 膝関節
Kb 膝窩
1 サポータ本体
2 穴
10 押圧部材
11 分断面
12 中間部
13 一方部
14 他方部
15 ヒンジ部
20 収納袋
21 開口
22 内側シート
23 外側シート
30 スポンジ
Z 重畳部分
40 可撓性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12