(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038850
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】浮子付き探傷ケーブル
(51)【国際特許分類】
F16L 55/38 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
F16L55/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143172
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】594126159
【氏名又は名称】神鋼検査サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡文
(57)【要約】
【課題】被検査管の内壁との接触によるケーブル本体の損傷を抑制しつつ、被検査管の湾曲部の形状に沿って湾曲可能な浮子付き探傷ケーブルを提供する。
【解決手段】浮子付き探傷ケーブル4は、ケーブル送り装置40により送り出されるとともにポンプユニット7からの送水を用いて被検査管10内に送り込まれるものであり、ケーブル本体12と、ケーブル本体12を覆う保護スリーブ13と、保護スリーブ13の外周に所定間隔で配置された複数の浮子5とを備える。保護スリーブ13は、樹脂モノフィラメントからなる多数の線材18を含み、多数の線材18はケーブル本体12の外周に沿って螺旋状に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル送り装置により送り出されるとともにポンプからの送水を用いて被検査管内に送り込まれる浮子付き探傷ケーブルであって、
ケーブル本体と、
前記ケーブル本体を覆う保護スリーブと、
前記保護スリーブの外周に所定間隔で配置された複数の浮子と、を備え、
前記保護スリーブは、樹脂モノフィラメントからなる多数の線材を含み、
前記多数の線材は、前記ケーブル本体の外周に沿って螺旋状に配置されている、浮子付き探傷ケーブル。
【請求項2】
前記多数の線材は、編み組みされている、請求項1に記載の浮子付き探傷ケーブル。
【請求項3】
前記複数の浮子は、前記複数の浮子と前記保護スリーブとの間に充填され前記保護スリーブにおける前記多数の線材間の隙間にしみ込んだ接着剤により、前記保護スリーブに固定され、
前記保護スリーブは、接着剤により前記ケーブル本体に固定されている、請求項1または請求項2に記載の浮子付き探傷ケーブル。
【請求項4】
前記複数の浮子はそれぞれ、前記ケーブル本体及び前記保護スリーブを挿通可能な貫通孔と、前記貫通孔と前記保護スリーブとの間に外部から前記接着剤を注入可能に形成された注入路と、を有する、請求項3に記載の浮子付き探傷ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内挿型探傷検査に用いる浮子付き探傷ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
浮子付きケーブルをポンプからの送水を利用して被検査管内に挿入して、被検査管内の減肉等の材料キズを検査する内挿型の探傷装置が知られている。特許文献1には、
図6に示すように、浮子ケーブル407と、浮子ケーブル407を送り出すケーブル送り装置415と、を備えた探傷装置400が開示されている。浮子ケーブル407は、ケーブル本体408と、ケーブル本体408に所定間隔で固定された複数の浮子409と、を有する。ケーブル本体408は、図略の探傷検査装置及び探傷センサー間で信号を送受信するための芯線(信号線)と、この芯線を覆うように形成された樹脂製の被覆部と、により構成されている。探傷装置400では、ケーブル送り装置415に設けられた引込管414を通じて、大気中からケーブル送り装置415内に浮子ケーブル407が引き込まれる。この引込管414には、ケーブル送り装置415内を満たした水の外部への漏れを抑制するためのシール構造(ラビリンス構造)が設けられている。
【0003】
特許文献2には、
図7(a)(b)及び
図8に示すように、先端に探傷センサー513が取り付けられたケーブル本体510と、ケーブル本体510を収納する樹脂チューブ511と、樹脂チューブ511の外周に所定間隔で固定された複数の浮子512と、を備えた浮子ケーブル500が開示されている。この浮子ケーブル500は、図略のケーブル送り装置により、図略のポンプからの送水を利用して、比較的小さい曲率で曲げられた螺旋状の被検査管514内に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-178465号公報
【特許文献2】実開昭56-166567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の探傷装置400では、浮子ケーブル407が被検査管の湾曲部を通過するときや、浮子ケーブル407を被検査管からケーブル送り装置415側に引き戻すときに、被検査管の内壁との擦れ等によってケーブル本体408の被覆部が損傷することがある。また、ケーブル送り装置415の引込管414では、ケーブル送り装置415内に充填された水による水圧と大気圧との圧力差により、浮子ケーブル407を送り出す際に浮子409に動圧が作用する。この動圧により、ケーブル本体408には軸方向の張力が生じるため、この張力により、ケーブル本体408の被覆部が破断して損傷することがある。特に、被検査管への浮子ケーブル407の送り出し距離が長くなり、ポンプからの送水圧力を高くしたときには、ケーブル本体408に軸方向の大きな張力が生じる。
【0006】
これに対して、特許文献2の浮子ケーブル500では、ケーブル本体510が樹脂チューブ511に収納されているため、被検査管514に挿通されているときでも被検査管514の内壁に対するケーブル本体510の擦れが生じ難く、また、浮子512が樹脂チューブ511に固定されているため、引込管414内で前記圧力差が生じる場合であってもケーブル本体510には軸方向の張力が作用し難い。しかしながら、この浮子ケーブル500では、ケーブル本体510が樹脂チューブ511に収納されているため、ケーブルとしての柔軟性が高くない。すなわち、被検査管514が比較的大きな曲率で曲げられた湾曲部を有する場合に、浮子ケーブル500が当該湾曲部の形状に沿って変形し難くなる。このため、浮子ケーブル500を被検査管に挿入できないことがある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ケーブル本体の損傷を抑制しつつ被検査管に沿って湾曲可能な浮子付き探傷ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における浮子付き探傷ケーブルは、ケーブル送り装置により送り出されるとともにポンプからの送水を用いて被検査管内に送り込まれるものであり、ケーブル本体と、前記ケーブル本体を覆う保護スリーブと、前記保護スリーブの外周に所定間隔で配置された複数の浮子と、を備える。前記保護スリーブは、樹脂モノフィラメントからなる多数の線材を含み、前記多数の線材は、前記ケーブル本体の外周に沿って螺旋状に配置されている。
【0009】
このように構成された浮子付き探傷ケーブルでは、保護スリーブの各線材が、高強度且つ高い柔軟を有する樹脂モノフィラメントにより構成されている。このため、浮子付き探傷ケーブルが被検査管の内壁と擦れたとしても、保護スリーブがケーブル本体を保護しているため、ケーブル本体の損傷を抑制できる。さらに、ケーブル送り装置内の水圧と大気圧との圧力差により、浮子に動圧が作用して、浮子付き探傷ケーブルに軸方向の張力が作用したとしても、保護スリーブが前記張力に耐え得る強度を有しているため、ケーブル本体が損傷することを抑制できる。
【0010】
さらに、保護スリーブを形成する多数の線材が、ケーブル本体の外周に沿って螺旋状に配置されているため、浮子付き探傷ケーブルが被検査管内の湾曲部を通過する際に、各線材を直接曲げるのではなく、螺旋状の状態で姿勢を変えさせるため、湾曲部の形状に沿って保護スリーブを変形させることができる。これにより、ケーブル本体を保護スリーブで覆ったとしても、浮子付き探傷ケーブルの柔軟性が低下することを抑制できる。このため、被検査管の湾曲部を通過するときにも、浮子付き探傷ケーブルを湾曲部に沿ってスムーズに移動させることができる。しかも、各線材を構成する樹脂モノフィラメントにより、保護スリーブの厚みを過度に大きくすることなく浮子付き探傷ケーブルの引張強度を大きくできるため、浮子付き探傷ケーブルのケーブル径が過度に大きくなることを抑制できる。
【0011】
したがって、浮子付き探傷ケーブルは、被検査管が比較的大きな曲率の湾曲部を有していたとしても、ケーブル本体に生じた張力によるケーブル本体の破損を抑制しながら湾曲部の形状に沿って変形させて被検査管内に挿入することができる。
【0012】
前記多数の線材は、編み組みされていてもよい。この態様では、多数の線材が編み組みされているため、複数の線材同士が互いに拘束し合う。これにより、ケーブル本体が曲げられるときにも、複数の線材を解け難くできるため、浮子付き探傷ケーブルが被検査管内の湾曲部を通過する際に、一部の線材が湾曲部通過時の変形により解けてしまうことを抑制できる。したがって、ケーブルとしての柔軟性を確保しつつケーブル本体の保護性を向上することができる。
【0013】
前記複数の浮子は、前記複数の浮子と前記保護スリーブとの間に充填され前記保護スリーブにおける前記多数の線材間の隙間にしみ込んだ接着剤により、前記保護スリーブに固定され、前記保護スリーブは、接着剤により前記ケーブル本体に固定されていてもよい。
【0014】
この態様では、接着剤が保護スリーブの線材間の隙間にしみ込むように充填されているため、浮子を保護スリーブにより確実に固定できる。このため、ポンプからの送水により浮子に外力が作用した場合でも、浮子が保護スリーブから脱落し難くなるため、浮子付き探傷ケーブルを被検査管内に確実に送り込むことができる。しかも、接着剤によって保護スリーブがケーブル本体にも固定されているため、浮子がケーブル本体に対して相対的に変位することがない。したがって、浮子が不規則な外力を受けた場合においても、保護スリーブがたるむことがなく、浮子間の間隔を維持できる。これにより、被検査管の湾曲部等を通過させる場合においても、通過抵抗が増えることを抑制できるため、保護スリーブの損傷を防止できる。
【0015】
前記複数の浮子はそれぞれ、前記ケーブル本体及び前記保護スリーブを挿通可能な貫通孔と、前記貫通孔と前記保護スリーブとの間に外部から前記接着剤を注入可能に形成された注入路と、を有していてもよい。
【0016】
この態様では、浮子に貫通孔を設けることにより、浮子における接着剤の塗布面積を広くして、浮子をより確実に保護スリーブに接着できる。さらに、ケーブル本体及び保護スリーブが挿通された貫通孔に、注入路を通じて接着剤が充填できるため、比較的シンプルな構成で浮子を保護スリーブに接着できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示における浮子付き探傷ケーブルによれば、被検査管が比較的大きな曲率の湾曲部を有していたとしても、ケーブル本体に生じた張力によるケーブル本体の破損を抑制しながら湾曲部の形状に沿って変形させて被検査管内に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る内挿型探傷検査装置を示す概略的な構成図である。
【
図2】
図1の内挿型探傷検査装置の浮子付き探傷ケーブルの一部を示す概略的な斜視図である。
【
図3】
図2の浮子付き探傷ケーブルの一部を示す概略的な斜視図である。
【
図4】
図2の浮子付き探傷ケーブルの一部を示す概略的な断面図である。
【
図5】
図2の浮子付き探傷ケーブルの変形例を説明するための斜視図である。
【
図6】特許文献1の浮子ケーブルを示す概略的な構成図である。
【
図7】(a)(b)特許文献2の浮子ケーブルを示す長手方向及び径方向の断面図である。
【
図8】
図7の浮子ケーブル及び被検査管を示す概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る探傷装置100は、
図1に示すように、先端に探傷センサー3が取り付けられた浮子付き探傷ケーブル4(以下、単に「ケーブル4」とも称する)をケーブル送り装置40により被検査管10内に挿入して、被検査管10の管内に生じる減肉や割れ等の材料キズを内部から検査するための検査装置である。被検査管10は、たとえば、ボイラの伝熱管のような、湾曲部10aを有する管である。湾曲部10aは、たとえば、被検査管10の流路方向を90度または180度曲げるために、比較的大きな曲率で曲げられたエルボーパイプやU字型パイプである。探傷装置100は、このような被検査管10の入口10b及び出口10cに接続される。
【0020】
探傷装置100は、貯水槽8と、貯水槽8からの水を送り出すように構成されたポンプユニット7と、ポンプユニット7から送り出された水の流れる方向を切り替える切替ユニット6と、接続管53を介して切替ユニット6に接続される一方でケーブル4を送り出し可能に構成されたケーブル送り装置40と、ケーブル4を被検査管10の入口10bに案内する導入管51と、被検査管10の出口10cと切替ユニット6とを接続する導出管52と、を備えている。また、探傷装置100は、被検査管10から切替ユニット6に戻された水を貯水槽8に戻す水戻し路54と、切替ユニット6からケーブル送り装置40に送られた水の一部を貯水槽8に戻す水戻し路60と、を備える。
【0021】
貯水槽8は、ケーブル4を被検査管10内に押し流す水流を形成するための水を貯留する。ポンプユニット7は、貯水槽8から供給された水を、所定の水圧で切替ユニット6に送り出すように構成されている。
【0022】
切替ユニット6は、ポンプユニット7からの水をケーブル送り装置40から被検査管10に向けて流れるように水を循環させる第1状態と、ポンプユニット7からの水を被検査管10からケーブル送り装置40に向けて流れるように水を循環させる第2状態との間で、水の流入先を切替可能に構成されている。
【0023】
ケーブル送り装置40は、ポンプユニット7からの送水を用いてケーブル4を被検査管10内に送り込むためのものである。ケーブル送り装置40は、装置本体41と、装置本体41から一方向に延びる引込管43と、装置本体41から一方向に延びる送出管44と、を備える。ケーブル送り装置40内には、引込管43、装置本体41及び送出管44に亘って形成され、ケーブル4を挿通可能な挿通路45が設けられている。
【0024】
装置本体41には、プーリ42が回転可能に設けられている。プーリ42は、例えば、操作者が図略のハンドルを回転操作することにより回転するように構成されている。プーリ42が回転すると、ケーブル4が大気中から引込管43内の挿通路45に引き込まれるとともに、送出管44内の挿通路45から導入管51に送り出される。
【0025】
送出管44には、送出管44内の挿通路45と接続管53とを接続する水導入路55が設けられている。引込管43は、ケーブル送り装置40内に水が流入した際に、この水が引込管43から外部に漏れることを抑制するようなシール構造(ラビリンス構造)を有している。引込管43には、引込管43内の挿通路45と水戻し路60とを接続する排水路56が設けられている。排水路56には、貯水部58及びポンプ59が設けられている。
【0026】
ケーブル4は、被検査管10よりも長い形状を有している。ケーブル4の一端には、探傷センサー3(たとえば、超音波センサー)が取り付けられており、他端は超音波探傷器2に接続されている。ケーブル4は、前記一端側がケーブル送り装置40内に引き込まれた状態で、ケーブル収容部9内に収容されている。
【0027】
探傷センサー3は、超音波探傷器2からの信号に基づいて被検査管10の内壁に向けて超音波を発振するとともに、被検査管10の内壁からはね返ってきた超音波を示す信号を超音波探傷器2に向けて出力するように構成されている。超音波探傷器2は、ケーブル4を通じて探傷センサー3との間で信号を送受信するとともに、探傷センサー3からの信号を解析・記録するように構成されている。
【0028】
ケーブル4は、
図2及び
図3に示すように、ケーブル本体12と、このケーブル本体12の外周を覆うように形成された保護スリーブ13と、保護スリーブ13の外周に所定の間隔で配置された複数の浮子5と、を備える。
【0029】
ケーブル本体12は、超音波探傷器2と探傷センサー3とを接続する信号線15と、信号線15の外周の全域を覆う被覆部16と、を有する。信号線15は、たとえば、銅線等からなる電線と、この電線を覆うように形成されたフッ素樹脂等からなる絶縁部材とにより構成される。被覆部16は、たとえば、ポリエチレンやポリ塩化ビニル等からなる被覆部材により構成される。
【0030】
保護スリーブ13は、被覆部16の外周の全域を覆うように形成されており、それぞれが螺旋状に配置された多数の線材18を有する。保護スリーブ13は、一方向に螺旋状に配置された多数の線材18と、前記一方向とは逆の方向に螺旋状に配置された多数の線材18とを有し、これら互いに逆向きに螺旋状に延びる線材18同士が互いに組み合わされようにして編み組みされて形成されている。このように構成されたケーブル本体12は、被検査管10内の湾曲部10aの形状に沿って変形できるような柔軟性を有する。
【0031】
保護スリーブ13の多数の線材18は、柔軟性、引張強度及び耐擦れ性に優れた樹脂モノフィラメントにより構成されている。この樹脂モノフィラメントの素材としては、高強度、高擦れ耐性及び高柔軟性を有するのが好ましく、たとえば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが採用される。このような保護スリーブ13を備えたケーブル本体12は、保護スリーブ13を備えていない場合と比べて、ケーブルとしてより高い引張強度と耐擦れ性を有している。
【0032】
また、保護スリーブ13は、ケーブル本体12が曲がるときに、各線材18がケーブル本体12の形状に合わせて直接曲がるのではなく螺旋状の状態で姿勢を変えながら変形する。したがって、保護スリーブ13は、ケーブル本体12の変形に合わせて変形することが可能である。また、多数の線材18が編み組みされているため、各線材18同士が互いに拘束し合うことにより、保護スリーブ13が曲がるときに、各線材18が解け難い。したがって、保護スリーブ13が曲がり変形したときでも、ケーブル本体12が露出することはない。
【0033】
浮子5は、ポンプユニット7からケーブル送り装置40に送られた水の流れを受けて、ケーブル4が被検査管10内を進む推進力を得るためのものであり、保護スリーブ13の外周に所定間隔で固定されている。浮子5は、ケーブル4が被検査管10内を移動する際に、被検査管10の内壁との擦れに十分耐え得る強度(擦れ耐性)を有する。
図4に示すように、浮子5には、ケーブル本体12及び保護スリーブ13を挿通させる貫通孔21と、貫通孔21と保護スリーブ13との間に外部から接着剤23を注入するのに用いられる注入路22と、が形成されている。
【0034】
貫通孔21は、ケーブル本体12及び保護スリーブ13の断面形状よりも大きい断面形状を有し、ケーブル本体12及び保護スリーブ13の軸方向に延設される。注入路22は、貫通孔21と浮子5の外周の間を貫通するように形成されている。接着剤23は、注入路22を通して貫通孔21に注入される。浮子5は、接着剤23により保護スリーブ13に接着している。また接着剤23は、保護スリーブ13における線材18間の隙間にしみ込んでいるため、接着剤23は、浮子5をケーブル本体12にも接着している(
図4における保護スリーブ13上の点描部分)。このようにして、浮子5は、浮子5と保護スリーブ13との間に充填された接着剤23により保護スリーブ13の外周に固定されている。
【0035】
(運転動作の説明)
探傷検査時には、
図1に示すように、ケーブル4は、プーリ42の回転により、ケーブル送り装置40から導入管51内に送り出される。このとき、切替ユニット6における水の流れ方向が、ポンプユニット7からの水をケーブル送り装置40側に流すように切り替えられている。したがって、ポンプユニット7から切替ユニット6に送り出された水は、ケーブル送り装置40、導入管51、被検査管10、導出管52を流れた後、再び切替ユニット6に戻る。切替ユニット6に戻された水は、水戻し路54を通して貯水槽8に戻される。ケーブル送り装置40は、切替ユニット6から接続管53を通して送られてきた水とともにケーブル4を送り出し、ケーブル4は導入管51を通して被検査管10内に送り込まれる。
【0036】
被検査管10内に送り込まれたケーブル4は、被検査管10内を移動する。このとき、ケーブル4の一部が比較的大きな曲率で曲げられた湾曲部10aを通過する場合には、ケーブル4の一部におけるケーブル本体12及び保護スリーブ13が、湾曲部10aの形状に沿って変形しながら湾曲部10aを通過する。このとき、保護スリーブ13を構成する線材18が編み組みされていることによって線材18同士が互いに拘束し合っているとは言え、各線材18は、螺旋状の状態を維持しつつ捩れながら変形する。つまり、保護スリーブ13は、ケーブル本体12を覆った状態を維持しながら湾曲部10aの形状に沿って変形する。このため、ケーブル4は、ケーブル本体12が保護スリーブ13に保護された状態で、被検査管10の内壁と擦れることなく被検査管10内を移動する。
【0037】
その後、ケーブル4が被検査管10内の所定の距離まで送り込まれて、探傷検査が完了すると、切替ユニット6における水の流れ方向が、ポンプユニット7からの水を導出管52側に流すように切り替えられる。これにより、被検査管10内には、ケーブル4を被検査管10内から導入管51側に押し出すような水の流れが形成されるため、ケーブル4が被検査管10内から引き抜かれる。
【0038】
以上説明したように、浮子付き探傷ケーブル4では、保護スリーブ13の各線材18が、高強度且つ高い柔軟を有する樹脂モノフィラメントにより構成されている。このため、ケーブル4が被検査管10内を移動する際に、保護スリーブ13が被検査管10の内壁と擦れたとしても、ケーブル本体12は損傷し難い。
【0039】
また、引込管43がシール構造を有するケーブル送り装置40では、ポンプユニット7からの送水と大気圧との圧力差により浮子5に動圧が作用し、この動圧により、引込管43内のケーブル4に軸方向の張力が作用することがある。さらに、被検査管10内に送り込まれたケーブル4の送り込み距離が比較的大きくなった際には、ポンプユニット7からの送水圧力を比較的大きくする必要があり、この場合には、前記圧力差が比較的大きくなるため、引込管43内のケーブル4に比較的大きな前記張力が作用することがある。
【0040】
しかしながら、本実施形態の探傷ケーブル4は、保護スリーブ13の各線材18が、高強度且つ高い柔軟を有する樹脂モノフィラメントにより構成されているため、ケーブル4に比較的大きな前記張力が作用したとしても、ケーブル本体12が損傷することを抑制できる。
【0041】
さらに、保護スリーブ13を形成する多数の線材18が、ケーブル本体12の外周に沿って螺旋状に配置されているため、ケーブル4が被検査管10内の湾曲部10aを通過する際に、各線材18を直接曲げるのではなく、螺旋状の状態で姿勢を変えさせるため、湾曲部10aの形状に沿って保護スリーブ13を変形させることができる。これにより、ケーブル本体12を保護スリーブ13で覆ったとしても、ケーブル4の柔軟性が低下することを抑制できる。このため、被検査管10の湾曲部10aを通過するときにも、浮子付き探傷ケーブル4を湾曲部10aに沿ってスムーズに移動させることができる。
【0042】
しかも、各線材18が高強度且つ高い柔軟性を有する樹脂モノフィラメントにより構成されているため、保護スリーブ13の厚みを過度に大きくすることなくケーブル4の強度を大きくできるため、ケーブル4のケーブル径が過度に大きくなることを抑制できる。
【0043】
したがって、浮子付き探傷ケーブル4によれば、被検査管10が比較的大きな曲率の湾曲部10aを有していたとしても、ケーブル本体12の損傷を抑制しつつ湾曲部10aの形状に沿って変形させて被検査管10内に挿入することができる。
【0044】
また、多数の線材18が編み組みされているため、複数の線材18同士が互いに拘束し合う。これにより、ケーブル本体12が曲げられるときにも、複数の線材18を解け難くできため、浮子付き探傷ケーブル4が被検査管10内の湾曲部10aを通過する際に、一部の線材18が湾曲部10a通過時の変形により解けてしまうことを抑制できる。したがって、ケーブルとしての柔軟性を確保しつつケーブル本体12の保護性を向上することができる。
【0045】
また、接着剤23が保護スリーブ13の多数の線材18の隙間にしみ込むように充填されているため、浮子5を保護スリーブ13により確実に固定できる。このため、ポンプユニット7からの送水により浮子5に外力が作用した場合でも、浮子5が保護スリーブ13から脱落し難くなるため、浮子付き探傷ケーブル4を被検査管10内に確実に送り込むことができる。
【0046】
また、接着剤23が線材18間の隙間にしみ込むことによって、保護スリーブ13が接着剤23によってケーブル本体12に接着されているため、ケーブル本体12に対する保護スリーブ13の相対変位を防止することができる。すなわち、一部の浮子5が不規則な外力(被検査管10との擦れ等により、水流とは反対向きに作用する外力)を受けた場合であっても、当該浮子5がケーブル本体12に接着されたところでは保護スリーブ13が変位することがないため、保護スリーブ13が部分的にたるんでしまうことがなく、したがって、浮子5間の間隔が変わることがない。浮子5の間隔が不均一になると、浮子付きケーブル4が柔軟に曲がりにくくなることがあるため、浮子付き探傷ケーブル4が被検査管10の湾曲部10a等を移動する時に、通過抵抗が増えてしまう。また、保護スリーブ13がたるんだ部分で保護スリーブ13が損傷してしまうこともある。しかし、浮子5が固定されているところでは保護スリーブ13がケーブル本体12に接着されており、浮子5が外力を受けたとしても浮子5の間隔が維持されるため、そのような問題は生じにくい。また、浮子5以外のところでは、保護スリーブ13は、ケーブル本体12に接着されていないため、浮子付きケーブル4としての柔軟性を確保しながら、保護スリーブ13の変位及びたるみを防止することができる。
【0047】
また、浮子付きケーブル4の製作時において、ケーブル本体12に保護スリーブ13を被せた後、保護スリーブ13のたるみが少し残ったままで浮子5を保護スリーブ13に接着する場合があり得るが、この場合に、保護スリーブ13がケーブル本体12に接着されていなければ、検査時の水流によって浮子付きケーブル4が伸ばされる方向の力を受ける場合に、保護スリーブ13が伸ばされる結果、浮子5同士の間隔が変わってしまうことがある。しかし、浮子5が固定されているところでは保護スリーブ13がケーブル本体12に接着されているため、保護スリーブ13に部分的なたるみがあったとしても、浮子5同士の間隔が維持された状態に保つことができる。
【0048】
また、浮子5に貫通孔21を設けることにより、浮子5における接着剤23の塗布面積を広くして、浮子5をより確実に保護スリーブ13に接着できる。さらに、ケーブル本体12及び保護スリーブ13が挿通された貫通孔21に、注入路22を通じて接着剤23が充填できるため、比較的シンプルな構成で浮子を保護スリーブ13に接着できる。
【0049】
(実施形態の変形例)
なお、ケーブル送り装置40は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。たとえば、上記実施形態のケーブル4は、
図3に示すように、保護スリーブ13の多数の線材18が編み組みされているが、これに限らない。たとえば、保護スリーブ13は、
図5に示すように、各線材18が撚り合されずに、ケーブル本体12の外周に沿って一方向に螺旋状に並んでいてもよい。
【0050】
また、
図4に示すように、浮子5には1つの注入路22が形成されているが、これに限らず、浮子5には複数の注入路22が形成されていてもよいし、注入路22が形成されておらず、接着剤23が直接貫通孔21内に充填されてもよい。
【0051】
また、浮子5は、接着剤23により保護スリーブ13及びケーブル本体12に固定されているが、これに限らない。たとえば、浮子5は、2つの部材により構成され、この2つの部材同士を嵌め合わせることにより保護スリーブ13に固定されるように構成されてもよい。
【0052】
また、浮子5は、接着剤23が線材18間の隙間にしみ込むことにより、保護スリーブ13だけでなくケーブル本体12にも接着されているが、これに限らない。たとえば、接着剤23が線材18間にしみ込んでおらず、浮子5は、浮子5の貫通孔21と保護スリーブ13との間に充填された接着剤23により、保護スリーブ13だけに固定されていてもよい。
【0053】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
4 浮子付き探傷ケーブル(ケーブル)
5 浮子
7 ポンプユニット
10 被検査管
10a 湾曲部
12 ケーブル本体
13 保護スリーブ
18 多数の線材
21 貫通孔
22 注入路
23 接着剤
40 ケーブル送り装置