(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038854
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】太陽光パネル設置方法および充電システム
(51)【国際特許分類】
H02S 30/00 20140101AFI20240313BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240313BHJP
E04G 21/28 20060101ALI20240313BHJP
H02S 20/26 20140101ALI20240313BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240313BHJP
【FI】
H02S30/00
E04D13/18 ETD
E04G21/28 B
H02S20/26
H02S20/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143178
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】舟久保 匡毅
(72)【発明者】
【氏名】泉 敬介
(72)【発明者】
【氏名】加地 博光
(72)【発明者】
【氏名】於保 健一
(72)【発明者】
【氏名】廣井 英幸
(72)【発明者】
【氏名】大田和 健
【テーマコード(参考)】
2E108
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108LL00
2E108MM00
2E108NN07
5F151BA03
5F151BA15
5F151JA13
5F151JA28
5F251BA03
5F251BA15
5F251JA13
5F251JA28
(57)【要約】
【課題】漏水対策を行なえる太陽光パネルの設置方法等を提供すること。
【解決手段】太陽光パネル設置方法は、防水シート21に、折り曲げ可能なシート状太陽光パネル22を貼り付け、屋根の漏水部分を覆うように、前記シート状太陽光パネル22を上側に向けて前記防水シート21を前記屋根に設置する。前記防水シート21に、複数の前記シート状太陽光パネル22を貼りつける。前記防水シート21は、係止孔29を縁に有し、地上に配置した固定部と、前記係止孔29とを、紐で繋ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートに、折り曲げ可能なシート状太陽光パネルを貼り付け、
屋根の漏水部分を覆うように、前記シート状太陽光パネルを上側に向けて前記防水シートを前記屋根に設置する
太陽光パネル設置方法。
【請求項2】
前記防水シートに、複数の前記シート状太陽光パネルを貼りつける
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項3】
前記防水シートは、係止孔を縁に有し、
地上に配置した固定部と、前記係止孔とを、紐で繋ぐ
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項4】
前記漏水部分を覆うように前記防水シートのサイズを選定し、
選定したサイズに応じた数の前記シート状太陽光パネルを、選定したサイズの前記防水シートに貼りつける
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項5】
前記屋根の頂部を跨ぐように、前記防水シートを設置する
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項6】
前記シート状太陽光パネルと、蓄電池を備えるPCS(Power Conditioning System)とを、ケーブルにより接続する
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項7】
撤去した前記防水シートを収納し、災害時に即時利用する
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項8】
軸棒と、前記軸棒に取り付けられた前記防水シートとを、前記軸棒を芯にした棒状に形成し、
棒状に形成した前記防水シートを前記屋根に載せ、
前記防水シートの端部に取り付けられた引出線を引っ張ることにより、前記防水シートを前記屋根の上に広げる
請求項1に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項9】
前記軸棒の両端に取り付けられた第1ロープと、前記軸棒の両端に取り付けられた第2ロープとを、前記屋根を挟んで引っ張ることにより前記防水シートの位置を調整する
請求項8に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項10】
前記第1ロープおよび前記第2ロープの端部をそれぞれ地面に対して固定する
請求項9に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項11】
前記軸棒を芯にして棒状に形成した前記防水シートを、前記屋根を備える建物の横に配置し、
前記第1ロープの端部を前記屋根の反対側に投げ込み、
前記第1ロープの端部を引っ張って、前記軸棒を芯にして棒状に形成した前記防水シートを前記屋根の上に引き上げる
請求項9に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項12】
飛翔体を用いて、前記軸棒を芯にして棒状に形成した前記防水シートを前記屋根に載せ、
前記第1ロープの端部と前記第2ロープの端部とを、前記屋根を挟んで互いに反対側に配置する
請求項9に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項13】
前記シート状太陽光パネルは、前記防水シートの片面に、複数が直列接続された状態で貼り付けられている
請求項1から請求項12のいずれか一つに記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項14】
直列接続された状態の前記シート状太陽光パネルが、前記防水シートの片面に複数組配置されている
請求項13に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項15】
前記軸棒と前記防水シートとは、前記引出線により巻かれており、
前記引出線は、引き解け結びの状態に形成されている
請求項8に記載の太陽光パネル設置方法。
【請求項16】
屋根の漏水部分を覆うように設置される防水シートと、
該防水シートに貼り付けられる折り曲げ可能なシート状太陽光パネルと
を備える充電システム。
【請求項17】
前記防水シートに、複数の前記シート状太陽光パネルが張り付けられる
請求項16に記載の充電システム。
【請求項18】
前記防水シートが取り付けられた軸棒と、
端部が前記防水シートに固定されており、前記軸棒と前記防水シートとを棒状に纏めて引き解け結びの状態に形成されている引出線と、
前記軸棒の両端に取り付けられた第1ロープと、
前記軸棒の両端に取り付けられた第2ロープと
を備える請求項16に記載の充電システム。
【請求項19】
前記シート状太陽光パネルは、前記防水シートの片面に、複数が直列接続された状態で貼り付けられている
請求項18に記載の充電システム。
【請求項20】
前記防水シートの片面に、直列接続された前記シート状太陽光パネルが複数組貼り付けられている
請求項19に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネル設置方法および充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の太陽光パネルと、テントまたはトラックの幌などに用いられるシート状体とを、スポンジ状のゴム材等の弾性体層を介して貼り付ける太陽光パネルの設置方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1のシート状体は、たとえば倉庫の屋根に取り付けて使用される。シート状体と、太陽光パネルとの間に配置された弾性体層の作用により、シート状体の展張および曲げ変形に伴う引っ張り応力による太陽光パネルの破断を防止できる。
【0005】
しかしながら引用文献1に開示された設置方法では、災害等により破損した屋根の漏水対策は行なえない。
【0006】
一つの側面では、漏水対策を行なえる太陽光パネルの設置方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
太陽光パネル設置方法は、防水シートに、折り曲げ可能なシート状太陽光パネルを貼り付け、屋根の漏水部分を覆うように、前記シート状太陽光パネルを上側に向けて前記防水シートを前記屋根に設置する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、漏水対策を行なえる太陽光パネルの設置方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】充電システムの構成を説明する説明図である。
【
図4】充電システムの設置手順の概要を説明する説明図である。
【
図5】充電システムの設置方法を説明する説明図である。
【
図6】充電システムの設置方法を説明する説明図である。
【
図7】充電システムの設置方法を説明する説明図である。
【
図8】充電システムの設置状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
台風、竜巻および地震等の自然災害により、建物41(
図4参照)の破損および大規模停電等の甚大な被害が生じる場合がある。たとえば大規模停電が生じた場合、スマートフォンの充電だけでも行いたいというニーズは高い。スマートフォンは、安否確認のための連絡手段、および、情報収集手段を含む様々な用途に使用されるためである。
【0011】
建物41の屋根42(
図4参照)が破損した場合には、速やかに補修工事を行なうことが望ましい。しかしながら被害規模が大きい場合には、補修工事が間に合わない。正式な補修工事が間に合わない場合であっても、次の降雨までには応急的な漏水対策を行なうことが望ましい。破損部43(
図4参照)から屋根裏および建物41の内部に雨水が入った場合には、被害が拡大するためである。破損部43は、建物41の漏水部分、すなわち漏水の原因となり得る部分の例示である。
【0012】
応急的な漏水対策には、ブルーシートを用いて屋根42の破損部43を養生する処理が行なわれる場合が多い。しかしながら、屋根42の上での作業には落下事故等の危険が伴う。高所作業車を使用すれば比較的安全に作業を行なえる。しかし、大規模停電が生じている場合には、高所作業車は電力復旧作業に優先的に使用されるため、個々の建物41の漏水対策に使用することは難しい。
【0013】
以下の説明では、応急的な漏水対策と、スマートフォンの充電程度の電力供給手段の設置との双方を同時に実現できる充電システム10について説明する。
【0014】
図1は、発電装置20の構成を説明する説明図である。発電装置20は、防水シート21と、シート状太陽光パネル22と、軸棒25と、2本の第1ロープ231と2本の第2ロープ232と、ケーブル24とを備える。
【0015】
防水シート21は、長方形のシートである。防水シート21には、たとえばブルーシートまたはテント生地等の、防水性を有するシートが使用される。本実施の形態においては、防水シート21の片面に6枚のシート状太陽光パネル22が貼付されている場合を例にして説明する。シート状太陽光パネル22は、折り曲げ可能な柔軟なシートである。シート状太陽光パネル22の数および配置は、いずれも例示である。
【0016】
防水シート21の一方の短辺に、軸棒25が固定されている。軸棒25は、両端が細くなった段付き丸棒である。軸棒25の両端に、防水シート21を挟んで2本の第1ロープ231と、同じく防水シート21を挟んで2本の第2ロープ232とがそれぞれ固定されている。以後の説明においては、第1ロープ231と第2ロープ232とを区別する必要がない場合には、ロープ23と記載する場合がある。
【0017】
シート状太陽光パネル22には、複数のケーブル素線を含むケーブル24が接続されている。ケーブル素線は、シート状太陽光パネル22により発電された電力を伝達する金属線と、図示しない金属線相互を絶縁する絶縁層と、全体を被覆する保護層とを備える。ケーブル24は、防水シート21の、軸棒25が固定されていない側の短辺側の中央部に固定されている。シート状太陽光パネル22とケーブル24との配線状態については、後述する。
【0018】
防水シート21の、軸棒25が固定されていない側の角部に、係止孔29が設けられている。係止孔29は、たとえばハトメ穴である。係止孔29は、防水シート21の縁に固定されたループでもよい。
【0019】
図2は、発電装置20の構成を説明する説明図である。発電装置20は、屋根42の上に配置する前の発電装置20を示す。防水シート21は、シート状太陽光パネル22を内側にして軸棒25に巻き付けられている。ケーブル24は防水シート21の端部に固定されており、防水シート21の外側を1周巻いた状態で、引き解け結びの状態にされている。ここで引き解け結びは先端を引っ張るだけで結び目が解ける結び方であり、スリップノットとも呼ばれている。
【0020】
ケーブル24の端部は、ケーブル固定部241により第1ロープ231の途中に固定されている。以上の構成により、防水シート21は軸棒25を芯にした棒状に形成されて、ケーブル24により纏められている。ケーブル24は、引出線の例示である。
【0021】
図3は、充電システム10の構成を説明する説明図である。充電システム10は、前述の発電装置20に加えて、PCS(Power Conditioning System)15を備える。PCS15は、蓄電池16およびコネクタ17を備える。コネクタ17は、たとえばUSB(Universal Serial Bus)の給電用コネクタである。
【0022】
図3に示すように、6枚のシート状太陽光パネル22は、3個ずつ直列接続されて、PCS15に接続されている。ケーブル24は、2組合計4本のケーブル素線を含む。PCS15は、シート状太陽光パネル22により発電された電力を蓄電池16に充電するとともに、コネクタ17に給電する。
【0023】
直列接続されたシート状太陽光パネル22の組ごとに、一組のケーブル素線が接続されている。したがって、日光の当たり具合の相違等による発電量の差異が生じた場合であっても、それぞれの組で発電された電力が効率良くPCS15に入力される。
【0024】
なお、直列接続されたシート状太陽光パネル22は、2組に限定しない。1組のシート状太陽光パネル22のみが防水シート21の表面に配置されていてもよい。3組以上の任意の組数のシート状太陽光パネル22が防水シート21の表面に配置されていてもよい。
【0025】
シート状太陽光パネル22の発電容量が十分に大きい場合、PCS15はDC-ACインバータを搭載し、AC100Vまたは200Vのコンセントを備えてもよい。
【0026】
図4は、発電システム10の設置手順の概要を説明する説明図である。充電システム10の設置担当者は、建物41の外観から屋根42の寸法を判断する。設置担当者は、破損部43の寸法および位置を判断する。設置担当者は、使用する防水シート21のサイズを決定する。
【0027】
たとえば担当者は防水シート21の幅Wおよび長さLを決定する。ここで幅Wは、十分に余裕をもって破損部43を覆うように決定される。幅Wは、建物41のうち破損部43が存在する面全体を覆う様に決定されてもよい。
【0028】
図4において、長さL1は屋根42の頂部から下端部までの長さである。長さL2は、屋根42の縁から防水シート21の縁までの長さである。長さL3は、屋根42の頂部から破損部43の無い側に垂らす部分の長さである。防水シート21の長さLは、L1とL2とL3との和である。
図4に示すように、屋根42の頂部を跨ぐように防水シート21を設置することにより、雨天時の漏水を防止できる。
【0029】
長さL2は、たとえば屋根42の下端部の高さから、防水シート21の下端部の高さHを減じた長さである。高さHは、たとえば子供が不用意に防水シート21を引っ張らない程度の高さに定められる。防水シート21がたとえばドアの正面に配置される場合には、ドアの開閉を妨げないように高さHが定められてもよい。
【0030】
複数のサイズの防水シート21が用意されており、設置担当者が適切なサイズの防水シート21を選定して使用できることが望ましい。所定のサイズに防水シート21を切断または継ぎ合わせを行なう手間を省くことにより、充電システム10の設置に要する時間を短縮できる。
【0031】
設置担当者は、たとえば建物41を目視し、必要に応じて実測を行ない、防水シート21のサイズを決定する。設置担当者は、たとえばドローンに搭載されたカメラ等のセンサを使用して、遠隔地で防水シート21のサイズを定めてもよい。
【0032】
設置担当者は、発電量を決定する。発電量は、たとえば設置する充電システム10から給電を受けるスマートフォン等の電子機器の消費電力に基づいて定められる。発電量は、防水シート21に配置出来るシート状太陽光パネル22の上限数量に基づいて定められてもよい。
【0033】
設置担当者は、使用するシート状太陽光パネル22を決定する。たとえば、防水シート21のサイズに対して必要な発電量が多い場合、設置担当者は発電効率が高いシート状太陽光パネル22を選定する。設置担当者は、防水シート21のサイズを大きくして、配置できるシート状太陽光パネル22の数を増加させてもよい。
【0034】
設置担当者は、天気予報等に基づいて日照量を予測して、使用するシート状太陽光パネル22の数を定めてもよい。たとえば曇天が予想される場合には、シート状太陽光パネル22の発電効率が低くなるため、配置するシート状太陽光パネル22の数を多くすることが望ましい。
【0035】
設置担当者は、シート状太陽光パネル22とケーブル24とを接続する配線のレイアウト等、発電装置20の組み立てに必要な設計を行なう。その後、設置担当者は発電装置20を組み立てる。
【0036】
具体的には、設置担当者は所定のサイズの防水シート21に、シート状太陽光パネル22を貼付した後、シート状太陽光パネル22の端子同士を配線材で接続し、ケーブル24を接続する。その後、設置担当者は防水シート21に軸棒25とロープ23とを取り付けて、
図2を使用して説明したように棒状に形成する。なお、組み立て作業は、設置担当者の指示に基づいて組立担当者が行なってもよい。
【0037】
設置担当者は、後述する手順により破損部43を覆うように発電装置20を配置して、PCS15を接続する。以上により、応急的な漏水対策と、スマートフォンの充電程度の電力供給手段の設置との双方が同時に実現される。
【0038】
図5は、充電システム10の設置方法を説明する説明図である。
図5では3人の設置担当者が協力して設置作業を行なう場合を例示する。設置担当者は、棒状に纏めた状態の発電装置20を、屋根42の頂部と平行になるように建物41の横に配置する。設置担当者は、2本の第1ロープ231の先端を、屋根42の頂部を超えて建物41の反対側に送る。
【0039】
たとえば、設置担当者は第1ロープ231の先端に取り付けたガイドボールを、伸縮可能な操作棒を使用して頂部の反対側に投げ込む。設置担当者は、ペットボトルロケットまたは小型ドローン等の飛翔体を用いて、第1ロープ231の先端を建物41の反対側に投げ込んでもよい。これらの作業は、屋根工事において作業用の親綱を設置する作業の前段階で実施されるパイロットラインの設置作業と同様であるため、詳細については説明を省略する。
【0040】
二人の設置担当者が、第1ロープ231の先端を引いて、発電装置20を屋根42の上に引き上げる。一人の設置担当者が、持上工具53を使用して、棒状に纏めた状態の発電装置20を持ち上げる。持上工具53は、たとえばU字型の金具の底に棒状の取手が固定された、いわゆるさすまたであり、設置担当者はバランスを取りながら発電装置20の中央部を持ち上げる。なお設置担当者は、第2ロープ232の端部は、発電装置20と共に持ち上げずに、地上に残す。
【0041】
設置担当者がもう一人居る場合には、2本の持上工具53を使用して発電装置20を持ち上げてもよい。バランスをとる必要がないため、発電装置20を容易に持ち上げることができる。持上工具53は、発電装置20と同程度の長さを有するU字樋の底に取手が固定された形状であってもよい。一人の設置担当者であっても、発電装置20を容易に持ち上げることができる。
【0042】
図6は、充電システム10の設置方法を説明する説明図である。建物41の両側の設置担当者が協力して、第1ロープ231の引っ張りと、発電装置20の押し上げとを行ない、発電装置20を建物41の頂部よりも少し下の位置まで持ち上げる。この段階で、設置担当者は持上工具53を下ろし、発電装置20を屋根42に直接載せる。
【0043】
設置担当者は、建物41を挟んだ両側から第1ロープ231および第2ロープ232を適宜引っ張る操作を行なって、破損部43を覆えるように発電装置20の位置を調整するとともに、屋根42の頂部と発電装置20とを略平行な状態にする。ケーブル固定部241が固定されている側の第1ロープ231を持つ設置担当者は、ケーブル固定部241を外す。ケーブル固定部241は発電装置20が屋根42の途中に配置された状態で、作業担当者の手が届くようになる程度の位置に配置されていることが望ましい。
【0044】
図7は、充電システム10の設置方法を説明する説明図である。設置担当者がケーブル24を引っ張ることにより、引き解け結びが解ける。設置担当者は、そのままケーブル24を引っ張り、防水シート21を建物41の上に広げる。
【0045】
なおケーブル24と共に、図示を省略する補強ロープが防水シート21に固定されていてもよい。ユーザは、ケーブル24の代わりに補強ロープを引っ張って防水シート21を建物41の上に拡げる。補強ロープを用いることにより、ケーブル24の断線を防止できる。
【0046】
ケーブル24を引いて防水シート21を広げることにより、軸棒25が回転して、ロープ23が巻き上がる。軸棒25の両端は細径であるため、ロープ23の巻き上がり量は、ケーブル24の引き下げ量よりも少ない。設置担当者は、ロープ23に加わる張力と、ケーブル24を引っ張る力とを適宜調節することにより、防水シート21を広げる速度を調整できる。設置担当者は、防水シート21が破損部43を覆い、防水シート21の下端部が所望の高さになるように軸棒25の位置を調整する。
【0047】
図8は、充電システム10の設置状態を説明する説明図である。軸棒25に巻き付けられていた防水シート21が、シート状太陽光パネル22を上側に向けて設置されている。防水シート21は、屋根42の頂部を跨いでいる。建物41の脇に設置されたPCS15に、ケーブル24が接続されている。
【0048】
ロープ23の端部、および、係止孔29に取り付けられた補助ロープ26が、いずれもピンと張った状態で地上に配置されたおもり31に固定されている。
図8においては、水を入れたポリタンクをおもり31に使用している。おもり31には、建設工事現場で使用されるウェイトパケット、または、自家用車等の、任意の重量物が使用されてもよい。
【0049】
おもり31を使用する代わりに、ロープ23または補助ロープ26の端部が植栽または塀等に結び付けられてもよい。ロープ23および補助ロープ26は、任意の手段を用いて地面に対して固定される。おもり31、植栽または塀等は、いずれも固定部の例示である。補助ロープ26は、係止孔29と固定部とを繋ぐ紐の例示である。
【0050】
以上により、充電システム10の設置が完了する。建物41の住人等は、シート状太陽光パネル22により発電された電力を、コネクタ17を介してスマートフォン等の小型電子機器に充電できる。PCS15は蓄電池16を搭載しているため、夜間であっても使用できる。スマートフォンは、たとえば懐中電灯等の照明器具代わりにも活用できる。
【0051】
貼付されたシート状太陽光パネル22が折り曲げ可能な柔軟性を有するため、防水シート21を屋根42に沿って設置できる。防水シート21が屋根42の頂部を跨いでいるため、雨水が防水シート21の下を通って破損部43に到達することを防止できる。
【0052】
充電システム10は、正式な補修工事の準備が整った段階で撤去される。屋根42自体への発電装置20の固定は行なっていないため、速やかに撤去できる充電システム10を提供できる。
【0053】
本実施の形態によると、漏水対策を行なえる太陽光パネルの設置方法等を提供できる。屋根42の上での作業を行なわずに、破損部43を発電装置20で覆うことが可能であるため、災害現場での応急対策を速やかに行なえる。被災後速やかにスマートフォン等の小型電子機器の充電手段を確保できるため、被災者および関係者の不安感および不便さを低減する充電システム10を提供できる。
【0054】
本実施の形態では、総二階の切妻屋根の建物41を例にして説明した。設置担当者は、建物41の形状、破損部43の寸法および破損部43の位置等に基づいて、防水シート21のサイズを適宜決定し、発電装置20を設置できる。屋根42の応急修理に使用するブルーシート等のサイズの決定は、従来から行なわれているため、詳細については説明を省略する。
【0055】
なお、ケーブル24とは別に、防水シート21を纏めるロープ等により引出線が構成されていてもよい。そのようにする場合には、ケーブル24は巻いた状態で防水シート21の端部に設けられたポケット状の袋等に収納されていてもよい。防水シート21にはケーブル24の代わりにコネクタが設けられており、屋根42の上で防水シート21を広げた後に、コネクタにケーブル24が接続されてもよい。ケーブル24に張力が掛かりにくいため、断線を防止した発電装置20を提供できる。
【0056】
複数の仕様の発電装置20が用意されており、設置担当者が適切な仕様の発電装置20を選択して使用できてもよい。たとえば、工場で発電装置20を量産することにより、安定した品質の発電装置20を提供できる。量産して、保管しておいた発電装置20を、必要時に被災地に配達することにより、充電システム10の設置に要する時間を短縮できる。
【0057】
使用済の発電装置20が、軸棒25に巻き付け直して即時利用できる状態で保管されていてもよい。そのようにする場合には、防水シート21のサイズおよび貼付済のシート状太陽光パネル22の発電容量等を記載したタグを取り付けておくことが望ましい。たとえば、個々の発電装置20に識別番号を付与し、データベース等により仕様を管理しておくことがさらに望ましい。
【0058】
使用済の発電装置20を適切な場所で即時利用できるため、充電システム10の設置に要する時間を短縮できる。発電装置20を再利用することにより、災害時の応急対策のコストを低減できる。
【0059】
保管されている発電装置20を使用する場合、たとえばドローン等の小型飛翔体を使用して保管場所から建物41までの輸送が行なわれてもよい。たとえば、屋根42の上でドローンをホバリングさせた状態で、まず第1ロープ231および第2ロープ232を投下する。地上の設置担当者が建物41の両側で第1ロープ231および第2ロープ232を保持した状態で、発電装置20をゆっくりと建物41の上に置く。
【0060】
以上により、地上の作業担当者は
図6を使用して説明した状態から、充電システム10の設置作業を開始できる。発電装置20を建物41の上に持ち上げる作業が不要であるため、比較的非力な作業担当者であっても、安全に充電システム10を設置できる。
【0061】
図8において、屋根42の頂部よりも奥の部分には、シート状太陽光パネル22が配置されていなくてもよい。すなわち、
図1において軸棒25に近い部分の防水シート21には、シート状太陽光パネル22が配置されていなくてもよい。破損部43が屋根42の南斜面側である場合、発電効率の悪い北斜面側へのシート状太陽光パネル22の配置を避けられる。
【0062】
防水シート21を軸棒25に巻き付ける代わりに、蛇腹状に折りたたんで、引き解け結びにより棒状に纏めてあってもよい。ケーブル24の引き解け結びを解いた際に、速やかに防水シート21が広がる発電装置20を提供できる。
【0063】
防水シート21は、3個以上の係止孔29を備えてもよい。防水シート21の角部以外に設けられた係止孔29に、追加的な補助ロープ26を接続するか否かについては、建物41の周囲の状況に合わせて、設置担当者が適宜判断できる。
【0064】
屋根42の上での作業を安全に行なえる条件が整っている場合には、たとえば防水シート21の縁と屋根42とを両面テープ等を用いて固定する作業、および、防水シート21の縁を土嚢袋等で抑える作業等が追加されてもよい。これらの作業を追加することにより、漏水対策を強化できる。
【0065】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0066】
特許請求の範囲に記載した独立請求項および従属請求項は、引用形式に関わらずあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0067】
10 充電システム
15 PCS
16 蓄電池
17 コネクタ
20 発電装置
21 防水シート
22 シート状太陽光パネル
23 ロープ
231 第1ロープ
232 第2ロープ
24 ケーブル
241 ケーブル固定部
25 軸棒
26 補助ロープ
29 係止孔
31 おもり(固定部)
41 建物
42 屋根
43 破損部
53 持上工具