(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038864
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】剛性フィルムを有する固定治具
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240313BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M4/139
B30B15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143190
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 丈雅
(72)【発明者】
【氏名】古川 恭治
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】森實 仁晃
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌典
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA03
5H050GA30
5H050HA04
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の製造工程において、不良品の発生や電池性能の低下を抑制することができる固定治具を提供する。
【解決手段】
一態様の固定治具は、第1フレームと該第1フレームに架け渡された第1可撓性シートとを含む第1治具と、第2フレームと該第2フレームに架け渡された第2可撓性シートとを含む第2治具と、第1可撓性シートに接合された第1剛性シートと、第2可撓性シートに接合された第2剛性シートと、加圧対象物を支持する搬送治具と、を備える。第1治具及び第2治具は、その間に加圧対象物を配置する収容空間を形成し、第1剛性シート及び第2剛性シートは、第1可撓性シートと第2可撓性シートとの間で収容空間を介して対面し、第1治具及び第2治具の少なくとも一方には、収容空間に連通する排気孔が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用の電極活物質層を製造するために活物質材料を含む加圧対象物を固定する固定治具であって、
第1フレームと該第1フレームに架け渡された第1可撓性シートとを含む第1治具と、
第2フレームと該第2フレームに架け渡された第2可撓性シートとを含む第2治具と、
前記第1可撓性シートに接合された第1剛性シートと、
前記第2可撓性シートに接合された第2剛性シートと、
前記加圧対象物を支持する搬送治具と、
を備え、
前記第1治具及び前記第2治具は、その間に前記加圧対象物を配置する収容空間を形成し、
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、前記第1可撓性シートと前記第2可撓性シートとの間で前記収容空間を介して対面し、
前記第1治具及び前記第2治具の少なくとも一方には、前記収容空間に連通する排気孔が形成された、固定治具。
【請求項2】
前記第1可撓性シート及び前記第2可撓性シートは、樹脂シートであり、
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、金属シートである、請求項1に記載の固定治具。
【請求項3】
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、ステンレスによって構成されている、請求項2に記載の固定治具。
【請求項4】
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートの面積は、前記第1可撓性シート及び前記第2可撓性シートの面積よりも小さい、請求項1~3の何れか一項に記載の固定治具。
【請求項5】
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートの厚みは、50μm以上400μm以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の固定治具。
【請求項6】
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、前記第1可撓性シート及び前記第2可撓性シートに両面テープによってそれぞれ貼付されている、請求項1~3の何れか一項に記載の固定治具。
【請求項7】
前記第2フレーム上に配置された矩形枠状の押さえ部材と、
前記押さえ部材の外縁に沿って配置され、前記収容空間を封止する矩形枠状のシール部材と、
を更に備える、請求項1~3の何れか一項に記載の固定治具。
【請求項8】
前記第1可撓性シートを介して前記第1剛性シートに対向して配置され、前記第1可撓性シートとの間に第1予備減圧室を形成する第1予備減圧部材と、
前記第2可撓性シートを介して前記第2剛性シートに対向して配置され、前記第2可撓性シートとの間に第2予備減圧室を形成する第2予備減圧部材と、
を更に備える、請求項1~3の何れか一項に記載の固定治具。
【請求項9】
前記第1予備減圧室に配置される複数のスペーサを更に備え、
前記第1剛性シートに垂直な方向から見て、前記複数のスペーサは、前記第1剛性シートに重ならない位置に配置されている、請求項8に記載の固定治具。
【請求項10】
前記第1剛性シートは、略矩形状を呈し、
前記第1剛性シートに垂直な方向から見て、前記複数のスペーサは、前記第1剛性シートの対角線の延長線上に配置されている、請求項9に記載の固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造工程において、一対のロールの間に加圧対象物を通して当該加圧対象物をプレスするロールプレス技術が利用されている。加圧対象物が積層体や粉体である場合には、そのまま加圧対象物を一対のロールの間に通すと、積層体に位置ずれが生じたり、粉体が飛び散ったりして加圧対象物に十分に圧力を付与することが難しい。そこで、固定治具を用いて加圧対象物を固定してからロールプレスが行われることがある。
【0003】
この種の固定治具として、例えば下記特許文献1及び2に記載された固定治具が知られている。特許文献1及び2に記載の固定治具は、半導体チップ用又は電池用の積層体等の加圧対象物を固定保持するものであり、第1減圧部材と、当該第1減圧部材に対向する第2減圧部材と、第1減圧部材と第2減圧部材との間に形成される収容空間を封止するシール部材と、収容空間から空気を排気する排気路とを有している。第1減圧部材及び第2減圧部材は、枠状部材と該枠状部材に張り渡された可撓性を有する樹脂シートとを含んでいる。この固定治具では、第1減圧部材及び第2減圧部材の枠状部材に形成された排気路から排気して収容空間を減圧し、第1減圧部材及び第2減圧部材の樹脂シートで加圧対象物を挟み込むことで収容空間に配置された加圧対象物を固定する。そして、この固定治具を一対のロールの間に通すことで、収容空間に固定された加圧対象物を加圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5182451号公報
【特許文献2】特許6269496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロールプレス装置等の加圧装置を用いた加圧処理は、リチウムイオン二次電池の製造にも利用される。例えばリチウムイオン二次電池の製造では、要求される機能に応じた粉状の活物質材料を加圧装置を用いてプレスして高密度化することで、正極層又は負極層として機能する電極活物質層を製造する。そして、製造された電極活物質層を積層して複数のセル構造を有するリチウムイオン二次電池を製造する。
【0006】
上記特許文献1及び2に記載された固定治具をリチウムイオン二次電池の製造に適用した場合には、樹脂シートを介して加圧対象物に圧力が付与されたときに加圧対象物に含まれる粉状の活物質材料が樹脂シートに突き刺さる恐れがある。活物質材料が樹脂シートに突き刺さると、電極活物質層の表面に凹凸が形成されたり、電極活物質層に崩れが発生したりして、電極活物質層の厚みに不均一性が発生することがある。電極活物質層の厚みに不均一性が発生すると、不良品の発生や電池性能の低下に繋がる。
【0007】
そこで本開示は、不良品の発生や電池性能の低下を抑制することができる固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、リチウムイオン二次電池用の電極活物質層を製造するために活物質材料を含む加圧対象物を固定する固定治具が提供される。この固定治具は、第1フレームと該第1フレームに架け渡された第1可撓性シートとを含む第1治具と、第2フレームと該第2フレームに架け渡された第2可撓性シートとを含む第2治具と、第1可撓性シートに接合された第1剛性シートと、第2可撓性シートに接合された第2剛性シートと、加圧対象物を支持する搬送治具と、を備える。第1治具及び第2治具は、その間に加圧対象物を配置する収容空間を形成し、第1剛性シート及び第2剛性シートは、第1可撓性シートと第2可撓性シートとの間で収容空間を介して対面し、第1治具及び第2治具の少なくとも一方には、収容空間に連通する排気孔が形成されている。
【0009】
この固定治具は、第1可撓性シートと第2可撓性シートとの間に第1剛性シート及び第2剛性シートが配置され、加圧対象物は、第1剛性シートと第2剛性シートとの間の収容空間に配置される。すなわち、加圧対象物は、第1剛性シート及び第2剛性シートに挟持され、第1可撓性シート及び第2可撓性シートは加圧対象物に直接接触しないので、第1可撓性シート及び第2可撓性シートに活物質材料が突き刺さることが防止される。したがって、電極活物質層の厚みの不均一性が抑制され、その結果、不良品の発生や電池性能の低下を抑制することができる。
【0010】
一実施形態では、第1可撓性シート及び第2可撓性シートは、樹脂シートであり、第1剛性シート及び第2剛性シートは、金属シートであってもよい。なお、第1剛性シート及び第2剛性シートは、ステンレスによって構成されていてもよい。第1剛性シート及び第2剛性シートを金属シートとすることにより、第1可撓性シート及び第2可撓性シートに活物質材料が突き刺さることをより確実に防止することができる。また、第1可撓性シート及び第2可撓性シートを樹脂シートとすることにより、固定治具を介して加圧対象物を加圧するときに、加圧装置のロール等に損傷が生じることを抑制することができる。
【0011】
一実施形態では、第1剛性シート及び第2剛性シートの面積は、第1可撓性シート及び第2可撓性シートの面積よりも小さくてもよい。第1剛性シート及び第2剛性シートは、第1可撓性シート又は第2可撓性シートに比べて変形しにくいので、第1剛性シート及び第2剛性シートの面積が第1可撓性シート及び第2可撓性シートの面積と同程度であると、収容空間の減圧時に第1治具及び第2治具の密着が不十分となり、加圧対象物の固定に支障が生じる。第1剛性シート及び第2剛性シートの面積を第1可撓性シート及び第2可撓性シートの面積よりも小さくすることにより、第1可撓性シートと第2可撓性シートとの間で収容空間を密閉して加圧対象物を確実に固定することができる。さらに、第1可撓性シート及び第2可撓性シートを可撓性の高い材料によって構成することにより、加圧装置の加圧ロールと固定治具の投入高さとの誤差を吸収でき、固定治具の浮き上がりや第1剛性シート及び第2剛性シートの塑性変形を抑制することができる。
【0012】
一実施形態では、第1剛性シート及び第2剛性シートの厚みは、50μm以上400μm以下であってもよい。第1剛性シート及び第2剛性シートの厚みを50μm以上にすることにより、十分な強度を確保することができる。第1剛性シート及び第2剛性シートの厚みが過大であると、第1剛性シート及び第2剛性シートの剛性によって第1可撓性シート、第2可撓性シート、第1剛性性シート又は第2剛性性シートが十分に変形せず、第1治具及び第2治具を加圧対象物に密着させることができない場合がある。第1治具及び第2治具が加圧対象物に十分に密着していないと、粉状の活物質材料が所定の設置位置外に噴き出すことがある。これに対し、第1剛性シート及び第2剛性シートの厚みを400μm以下にすることにより、加圧対象物を確実に固定することができる。
【0013】
一実施形態では、第1剛性シート及び第2剛性シートは、第1可撓性シート及び第2可撓性シートに両面テープによってそれぞれ貼付されていてもよい。この場合には、第1剛性シート及び第2剛性シートを第1可撓性シート及び第2可撓性シートにそれぞれ接合することができる。
【0014】
一実施形態の固定治具は、第2フレーム上に配置された矩形枠状の押さえ部材と、押さえ部材の外縁に沿って配置され、収容空間を封止する矩形枠状のシール部材と、を更に備えていてもよい。シール部材によって収容空間が封止されることにより、収容空間を確実に減圧することができる。
【0015】
一実施形態の固定治具は、第1可撓性シートを介して第1剛性シートに対向して配置され、第1可撓性シートとの間に第1予備減圧室を形成する第1予備減圧部材と、第2可撓性シートを介して第2剛性シートに対向して配置され、第2可撓性シートとの間に第2予備減圧室を形成する第2予備減圧部材と、を更に備えてもよい。第1予備減圧室及び第2予備減圧室を減圧せずに収容空間を減圧すると、第1剛性シート及び第1可撓性シートは、第2剛性シート及び第2可撓性シートに対して加圧対象物を挟んだ状態で密着することになる。このとき、排気孔と加圧対象物との間の領域(外縁部)が密閉した状態となるため、収容空間の減圧が阻害される。その場合、加圧対象物の固定が不十分となり、加工後の加圧対象物にクラックの発生や、活物質材料の噴き出し、ボイド等の欠陥が生じる恐れがある。この実施形態では、第1予備減圧部材と第1可撓性シートとの間、及び、第2予備減圧部材と第2可撓性シートとの間に予備減圧室が形成される。これらの予備減圧室を減圧してから収容空間を減圧することにより、収容空間が十分に減圧された後に外縁部が密閉されるため、加圧対象物を確実に固定することができる。したがって、加圧対象物に欠陥が生じることを抑制することができる。
【0016】
一実施形態では、第1予備減圧室に配置される複数のスペーサを更に備え、第1剛性シートに垂直な方向から見て、複数のスペーサは、第1剛性シートに重ならない位置に配置されていてもよい。第1予備減圧室の第1剛性シートに重ならない位置に複数のスペーサを配置することにより、第1可撓性シートの外縁部に過剰な撓みが生じることを抑制することができる。
【0017】
一実施形態では、第1剛性シートは、略矩形状を呈し、第1剛性シートに垂直な方向から見て、複数のスペーサは、第1剛性シートの対角線の延長線上に配置されていてもよい。複数のスペーサを第1剛性シートの対角線の延長線上に配置することにより、収容空間を減圧したときに第1剛性シートが過剰に撓むことが抑制される。その結果、第1剛性シートが塑性変形しにくくなる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、不良品の発生や電池性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る固定治具の概略的な断面図である。
【
図4】下治具の排気孔の周辺を拡大して示す断面斜視図である。
【
図7】固定治具を用いて加圧対象物を加圧する方法を示す図である。
【
図8】固定治具を用いて加圧対象物を加圧する方法を示す図である。
【
図9】固定治具を用いて加圧対象物を加圧する方法を示す図である。
【
図10】固定治具を用いて加圧対象物を加圧する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素又は同一の機能を有する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。本明細書において、「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0021】
図1は、一実施形態に係る固定治具を概略的に示す断面図である。
図1に示す固定治具1は、ロールプレス装置等の加圧装置により加圧される加圧対象物100を固定する。加圧対象物100は、例えばリチウムイオン二次電池用の電極活物質層を製造するための活物質材料を含む。電極活物質層とは、例えば正極層及び負極層といったリチウムイオン二次電池を構成する部品(電極)である。加圧対象物100は、電極活物質層の機能に応じた化合物からなる粉状の活物質を含む。例えば、加圧装置を用いて加圧対象物100をプレスし高密度化することで、リチウムイオン二次電池用の電極活物質層が製造される。
【0022】
図1に示すように、固定治具1は、上治具(第1治具)10、下治具(第2治具)20、第1剛性シート31及び第2剛性シート32を備えている。上治具10及び下治具20は、互いに対面して配置され、その間に加圧対象物100を固定保持する。以下の説明では、上治具10と下治具20とが対面する方向をZ方向といい、Z方向に垂直であり互いに直交する二方向をX方向及びY方向という。例えば、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0023】
図2は、上治具10の下面図である。
図1及び
図2に示すように、上治具10は、第1フレーム11と当該第1フレーム11に架け渡された第1可撓性シート12とを含む。第1フレーム11は、例えばアルミニウム等の金属によって構成され、矩形枠状を呈している。一実施形態では、第1可撓性シート12は、可撓性を有する略矩形状の樹脂シートである。例えば、第1可撓性シート12は、ポリイミドフィルムによって構成される。第1可撓性シート12は、上治具10と下治具20を重ねた際、下治具20に設置された略矩形枠状のシール部材24と接触して、上治具10と下治具20との間の空間を気密に封止する。
【0024】
下治具20は、上治具10に対面するように配置される。
図1に示すように、上治具10と下治具20との間には、空間Sが形成される。空間Sは、中央部S1及び外縁部S2を含む。中央部S1は、上治具10と下治具20との間の空間Sの一部であり、加圧対象物100を収容する空間を構成する。すなわち、上治具10及び下治具20は、その間に加圧対象物100の収容空間を形成する。外縁部S2は、Z方向から見たときに中央部S1を囲むように配置され、中央部S1の空気を排気するための流路として機能する。
【0025】
図3は、下治具20の上面図である。
図3に示すように、下治具20は、第2フレーム21と当該第2フレーム21に架け渡された第2可撓性シート22とを含む。第2フレーム21は、例えばアルミニウム等の金属によって構成され、矩形枠状を呈している。一実施形態では、第2可撓性シート22は、可撓性を有する略矩形状の樹脂シートである。例えば、第2可撓性シート22は、ポリイミドフィルムによって構成される。
【0026】
第2フレーム21の上面には、矩形枠状の押さえ部材23が設けられている。押さえ部材23は、例えばステンレス等の金属によって構成される。例えば、押さえ部材23は、第2フレーム21と押さえ部材23との間に第2可撓性シート22の外縁部を挟み込んだ状態で第2フレーム21にボルト等により固定される。なお、第2可撓性シート22は、第2フレーム21に接着されていてもよい。
【0027】
第2フレーム21の上面には、押さえ部材23の外縁に沿って延在する矩形枠状のシール部材24が設けられている。シール部材24は、例えばシリコンゴム等の耐熱性を有する弾性体によって構成される。例えば、シール部材24は、L型パッキンであり、第2フレーム21に形成された溝に両面テープ及びシリコンシーラントを用いて接着されていてもよい。シール部材24は、上治具10の第1可撓性シート12と共に上治具10と下治具20との間の空間Sを気密に封止する。
【0028】
第2フレーム21には、1以上の排気孔25が形成されている。
図3に示すように、第2フレーム21には複数の排気孔25が形成されていてもよい。
図4は、排気孔25の周辺を拡大して示す断面斜視図である。
図4に示すように、排気孔25は、第2フレーム21を厚さ方向に貫通する貫通孔である。一実施形態では、排気孔25は、Z方向から見て押さえ部材23に重なる位置に形成されている。押さえ部材23には、排気孔25に近接した位置において当該押さえ部材23の一部を切り欠く切り欠き部28が形成されていてもよい。切り欠き部28は、第2フレーム21に形成された排気孔25と空間Sとを連通する流路を提供する。
【0029】
下治具20には、ダクト部26が取り付けられている。ダクト部26は、排気孔25の端部に対面する入口26aと複数の出口26bとを有している。入口26aと複数の出口26bとの間には、空間Sからの排気を入口26aから複数の出口26bに導く排気路27が形成されている。すなわち、排気路27は、排気孔25を介して空間Sに連通する。一実施形態では、入口26a及び複数の出口26bには、空間Sに外気が逆流することを防止する逆止弁が設けられていてもよい。これらの逆止弁には、開口を閉じる方向に当該逆止弁を付勢するバネが接続されていてもよい。複数の出口26bには、真空ポンプ等の排気装置に接続されている。排気装置が稼動すると、空間Sの空気が、排気孔25及び排気路27を通って固定治具1の外部に排気される。その結果、空間Sが減圧される。
【0030】
第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、上治具10の第1可撓性シート12と下治具20の第2可撓性シート22との間に配置される。第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22よりも高い剛性を有している。例えば、第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、略矩形状の金属シートである。一実施形態では、第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、ステンレスによって構成されていてもよい。
【0031】
一実施形態では、第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、50μm以上400μm以下の厚みを有する。第1剛性シート31及び第2剛性シート32の厚みを50μmとすることにより、十分な剛性を確保することができる。また、第1剛性シート31及び第2剛性シート32の厚みを400μm以下とすることにより、第1剛性シート31及び第2剛性シート32が弾性変形しやすくなり、上治具10と下治具20との間で加圧対象物100を確実に固定することができる。
【0032】
第1剛性シート31の面積は、第1可撓性シート12の面積よりも小さくてもよい。同様に、第2剛性シート32の面積は、第2可撓性シート22の面積よりも小さくてもよい。例えば、第1剛性シート31及び第2剛性シート32の面積は、加圧対象物100がプレスされた電極活物質層の面積よりも僅かに大きい。なお、第1可撓性シート12、第2可撓性シート22、第1剛性シート31及び第2剛性シート32の面積とは、第1可撓性シート12、第2可撓性シート22、第1剛性シート31及び第2剛性シート32の主面の面積を表している。
【0033】
図2に示すように、第1剛性シート31は、上治具10の第1可撓性シート12の下面の中央部に接合されている。したがって、Z方向から見たときに、第1剛性シート31は、中央部S1に重なっている。
図3に示すように、第2剛性シート32は、下治具20の第2可撓性シート22の上面の中央部に接合されている。したがって、第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、中央部S1を介して互いに対面する。第1剛性シート31と第2剛性シート32との間に形成された中央部S1には、加圧対象物100が配置される。なお、中央部S1には、複数の加圧対象物100が配置されてもよい。
【0034】
なお、第1剛性シート31及び第2剛性シート32は、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に両面テープ33を用いて貼付されていてもよい。
図2及び
図3に示す実施形態では、両面テープ33は、第1剛性シート31と第1可撓性シート12との間、及び、第2剛性シート32と第2可撓性シート22との間に配置されている。
図2及び
図3に示すように、両面テープ33は、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22の外縁部に沿って延在すると共に、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22のX方向の中心線に沿って延在する。一実施形態では、加圧対象物100がX方向に2つ並んで配置されてもよい。この場合には、両面テープ33は、Z方向から見て加圧対象物100に重ならない位置に8の字状に配置される。
【0035】
一実施形態では、
図1に示すように、固定治具1は、上予備減圧部材(第1予備減圧部材)41及び下予備減圧部材(第2予備減圧部材)42を更に備えてもよい。上予備減圧部材41は、例えば硬質プラスチック又は金属といった高い剛性を有する材料によって構成され、上治具10に対向するように上治具10の上方に配置されている。すなわち、上予備減圧部材41は、第1可撓性シート12を介して第1剛性シート31に対向している。
【0036】
上治具10の第1可撓性シート12と上予備減圧部材41との間には、第1予備減圧室43が形成される。上予備減圧部材41は、上治具10に着脱可能に構成されている。上予備減圧部材41には第1可撓性シート12の対向位置に略矩形枠状のシール部材46が配置されており、第1フレーム11と上予備減圧部材41とが当接したときに、第1可撓性シート12とシール部材46が接触して、第1予備減圧室43が気密に封止される。
【0037】
上予備減圧部材41には、第1予備減圧室43に連通する1以上の貫通孔41aが形成されている。
図1に示す実施形態では、上予備減圧部材41に複数の貫通孔41aが形成されている。これら複数の貫通孔41aは、真空ポンプ等の排気装置に接続されている。排気装置が稼動すると、第1予備減圧室43の空気が貫通孔41aを通って固定治具1の外部に排気される。その結果、第1予備減圧室43が減圧される。
【0038】
同様に、下予備減圧部材42は、例えば硬質プラスチック又は金属といった高い剛性を有する材料によって構成され、下治具20に対向するように下治具20の下方に配置されている。すなわち、下予備減圧部材42は、第2可撓性シート22を介して第2剛性シート32に対向している。
【0039】
下治具20の第2可撓性シート22と下予備減圧部材42との間には、第2予備減圧室44が形成される。下予備減圧部材42は、下治具20に着脱可能に構成されている。下予備減圧部材42には第2可撓性シート22の対向位置に略矩形枠状のシール部材47が配置されており、下治具20と下予備減圧部材42とが当接したときに、第2可撓性シート22とシール部材47が接触することで、第2予備減圧室44が気密に封止される。下予備減圧部材42には、第2予備減圧室44に連通する1以上の貫通孔42aが形成されている。
図1に示す実施形態では、下予備減圧部材42に複数の貫通孔42aが形成されている。これら複数の貫通孔42aは、真空ポンプ等の排気装置に接続されている。排気装置が稼動すると、第2予備減圧室44の空気が貫通孔42aを通って固定治具1の外部に排気される。その結果、第2予備減圧室44が減圧される。
【0040】
一実施形態では、第1予備減圧室43には、スペーサ45が設けられている。
図1に示すように、固定治具1は、複数のスペーサ45を備えていてもよい。複数のスペーサ45は、Z方向から見て、第1剛性シート31に重ならない位置に配置されている。すなわち、複数のスペーサ45は、第1可撓性シート12の外縁部の上に配置される。この実施形態では、第1可撓性シート12と上予備減圧部材41との間に複数のスペーサ45が介在している。
【0041】
図5は、上治具10の上面図である。上予備減圧部材41に配置された複数のスペーサ45は、第1剛性シート31の対角線の延長線上に配置されていてもよい。
図5に示す実施形態では、固定治具1は、互いに離間する直方体形状の4つのスペーサ45を備えている。これら4つのスペーサ45のうち2つのスペーサ45は、第1剛性シート31の2本の対角線のうち一方の対角線の延長線上に配置され、他の2つのスペーサ45は、第1剛性シート31の2本の対角線のうち他方の対角線の延長線上に配置されている。
【0042】
より具体的には、4つのスペーサ45は、X方向及びY方向から見て、第1剛性シート31に重ならない位置に配置されている。複数のスペーサ45を第1剛性シート31の対角線の延長線上に配置することにより、第1予備減圧室43を減圧したときに、第1剛性シート31が上予備減圧部材41に向けて過剰に撓むことが抑制される。その結果、第1剛性シート31が塑性変形しにくくなると共に、空間Sに安定した流路を形成することが可能になる。
【0043】
なお、
図1に示す例では、第1予備減圧室43のみに複数のスペーサ45が設けられているが、第2予備減圧室44にもスペーサ45が設けられていてもよい。例えば、複数のスペーサ45は、第2可撓性シート22と下予備減圧部材42との間に介在しており、Z方向から見て、第2剛性シート32の対角線の延長線上に配置されていてもよい。
【0044】
一実施形態では、固定治具1は、加圧対象物100を支持する搬送治具50を更に備えていてもよい。
図6は、搬送治具50を含む固定治具1の概略的な斜視図である。なお、
図6では、説明の便宜上、第1剛性シート31及び第2剛性シート32を省略して図示している。
【0045】
図6に示すように、搬送治具50は、第3フレーム51と当該第3フレーム51に架け渡された支持シート52とを含む。第3フレーム51は、例えば矩形枠状を呈している。支持シート52は、可撓性を有する略矩形状の樹脂シートである。支持シート52の上面には、加圧対象物100が支持される。
【0046】
支持シート52の長さは、第3フレーム51のX方向の長さに略一致しており、支持シート52の幅は、第3フレーム51のY方向の幅よりも短くてもよい。
図6に示す実施形態では、支持シート52のX方向の両端部は第3フレーム51に接続され、支持シート52のY方向の両端部は第3フレーム51に非接続である。この支持シート52に電極活物質が載置されることで支持シート52上に加圧対象物100が形成される。搬送治具50は、加圧対象物100が支持シート52に載置された状態で上治具10と下治具20との間に配置される。その結果、第1剛性シート31と第2剛性シート32との間に形成された空間Sの中央部S1に加圧対象物100が配置される。
【0047】
次に、
図7~
図10を参照して、固定治具1を用いて加圧対象物100を加圧する方法について説明する。
【0048】
この方法では、まず
図7(a)に示すように、上治具10の上に上予備減圧部材41が配置され、上治具10と上予備減圧部材41との間に第1予備減圧室43が形成される。また、下治具20の下に下予備減圧部材42が配置され、下治具20と下予備減圧部材42との間に第2予備減圧室44が形成される。
【0049】
次に、第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44の予備減圧が行われる。すなわち、上予備減圧部材41の貫通孔41a及び下予備減圧部材42の貫通孔42aに接続された排気装置が作動され、第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44の空気が固定治具1の外部に排気される。これにより、第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44が減圧される。このとき、上治具10と下治具20との間の空間Sの圧力は大気圧に設定される。
【0050】
図7(b)に示すように、第1予備減圧室43が減圧されると、空間Sと第1予備減圧室43との圧力差によって、上治具10の第1可撓性シート12が上予備減圧部材41側に引き込まれ、上予備減圧部材41に向けて撓む。ここで、第1予備減圧室43には、スペーサ45が設けられているので、当該スペーサ45の形状に沿って第1可撓性シート12が撓む。
【0051】
同様に、第2予備減圧室44が減圧されると、空間Sと第2予備減圧室44との圧力差によって、下治具20の第2可撓性シート22が下予備減圧部材42側に引き込まれ、下予備減圧部材42に向けて撓む。第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に撓みが生じることにより、空間Sの容積が増加する。
【0052】
次に、搬送治具50の支持シート52上に加圧対象物100が形成される。そして、
図8(a)に示すように、搬送治具50が、下治具20上に載置される。このとき、下治具20のシール部材24の一部は、支持シート52に控えめに接触する。
【0053】
次に、
図8(b)に示すように、上治具10を下治具20上に載置する。このとき、上治具10の第1可撓性シート12は下治具20のシール部材24に密着する。その結果、上治具10及び下治具20との間の空間Sが封止される。空間Sの中央部S1には、搬送治具50上に支持された加圧対象物100が配置される。
【0054】
次に、下治具20の排気孔25に接続された排気装置が作動され、空間Sの空気が排気孔25から排気される。このとき、空間Sの排気の初期では、第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44の圧力は空間Sの圧力よりも低いので、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22は上予備減圧部材41及び下予備減圧部材42に向けて撓んだ状態で維持される。また、空間Sには閉じようとする力が働くもののスペーサ45が中間支持となり、圧力による縮みを考慮したスペーサ45の厚み分だけ空間Sは維持される。なお、スペーサ45を介し上予備減圧部材41と下予備減圧部材42は密接しているが、スペーサ45が配置されていない箇所において、空間Sから排気孔25への空気の流路が確保されているので空間Sの減圧は維持される。したがって、空間Sの減圧が不十分な状態で第1可撓性シート12が加圧対象物100に密着して、加圧対象物100に圧力が付与されることが防止される。したがって、加圧対象物100にボイド等の欠陥が生じることが抑制される。
【0055】
そして、空間Sの減圧が継続され、空間Sの圧力が所定の圧力まで減圧されると、第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44の圧力が徐々に大気圧に戻される。第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44の圧力が大気圧に戻る過程において、空間Sの圧力が第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44内の圧力を下回ったとき、
図9(a)に示すように、圧力差に応じた弱い力で第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22が加圧対象物100を包み込むように変形し、第1剛性シート31及び第2剛性シート32を介して加圧対象物100に密着する。最終的に、第1予備減圧室43及び第2予備減圧室44の圧力は大気圧に戻される。その結果、加圧対象物100が第1剛性シート31と第2剛性シート32との間で圧縮され、固定される。
【0056】
次に、
図9(b)に示すように、上予備減圧部材41及び下予備減圧部材42が上治具10及び下治具20から取り外される。次に、固定治具1が加圧装置に搬送され、上治具10及び下治具20を介して加圧対象物100が加圧処理される。例えば、
図10(a)に示すように、固定治具1は、加圧対象物100を中央部S1に収容した状態でロールプレス装置の一対のロールRの間を通り、一対のロールRから加圧力を受ける。一対のロールRによって加圧されることにより、中央部S1内で加圧対象物100はプレスされ、密度が高められる。その結果、リチウムイオン二次電池用の電極活物質層101が形成される(
図10(b)参照)。
【0057】
一対のロールRの間で加圧対象物100を加圧するときに、固定治具1の内部で加圧対象物100が固定されているので、加圧対象物100の内部に気泡が混入するなどして、加圧対象物100に欠陥が生じることが抑制される。また、加圧対象物100が固定されていることにより、加圧時に加圧対象物100の活物質材料が崩れることが抑制され、加圧対象物100に適切に圧力が付与される。
【0058】
また、加圧対象物100に粉状の活物質材料が含まれる場合には、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22を介して加圧対象物100に圧力が付与されたときに活物質材料が第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に突き刺さることがある。活物質材料が第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に突き刺さると、電極活物質層101の表面に凹凸が形成されたり、電極活物質層101に崩れが発生したりして、電極活物質層101の厚みに不均一性が発生することがある。このように、電極活物質層101の厚みに不均一性が発生すると、不良品の発生や電池性能の低下に繋がる。これに対して、固定治具1では、加圧対象物100が第1剛性シート31及び第2剛性シート32に挟持されているので、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22が加圧対象物100に直接接触しない。したがって、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に活物質材料が突き刺さりにくくなる。一方、第1剛性シート31及び第2剛性シート32の外面が第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に覆われているので、ロールプレス装置の一対のロールRが剛性の高い第1剛性シート31及び第2剛性シート32に接触しない。したがって、一対のロールRに損傷が生じにくくなる。
【0059】
加圧対象物100を加圧して電極活物質層101が形成されると、
図10(b)に示すように、電極活物質層101から上治具10及び下治具20が取り外される。このとき、加圧対象物100に含まれる活物質材料が、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に突き刺さることが抑制されているので、上治具10及び下治具20を電極活物質層101から容易に取り外すことができる。上記のように製造された電極活物質層101を積層することで、複数のセル構造を有するリチウムイオン二次電池が組み立てられる。
【0060】
以上説明したように、上記実施形態に係る固定治具1では、第1可撓性シート12と第2可撓性シート22との間に第1剛性シート31及び第2剛性シート32が配置され、加圧対象物100は、第1剛性シート31と第2剛性シート32との間に配置される。したがって、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22は加圧対象物100に直接接触しないので、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22に加圧対象物100に含まれる活物質材料が突き刺さることが防止される。したがって、したがって、不良品の発生が抑制され、リチウムイオン二次電池の生産性を向上させることができる。
【0061】
以上、種々の実施形態に係る固定治具について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、固定治具1の下治具20に排気孔25が形成される例について説明したが、上治具10の第1フレーム11に排気孔が形成され、当該排気孔を通じて空間Sの空気が排気されてもよい。なお、排気孔は、上治具10の第1フレーム11及び下治具20の第2フレーム21の双方に形成されていてもよい。
【0063】
また、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22の材料は、可撓性を有していればポリイミドフィルムに限定されるものではない。例えば、第1可撓性シート12及び第2可撓性シート22の構成材料としては、ゴムを母材とし繊維を含む繊維強化ゴムシートやテフロン(登録商標)を用いてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、一対のロールRを含むロールプレス装置によって加圧対象物100を加圧する例について説明したが、加圧対象物100を加圧する加圧装置は、ロールプレス装置に限定されない。例えば、加圧対象物100は、一軸のプレス装置によって加圧されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、電極活物質を含有する加圧対象物100を圧延して、リチウムイオン二次電池の電極活物質層を製造する例について説明したが、固定治具1によって固定される加圧対象物100は、必ずしもリチウムイオン二次電池用の電極活物質に限定されるものではない。なお、上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【0066】
以下に列挙する条項を参照して、本発明を説明する。なお、本発明は、具体的な列挙がなくても、以下の条項を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
【0067】
1. リチウムイオン二次電池用の電極活物質層を製造するために活物質材料を含む加圧対象物を固定する固定治具であって、
第1フレームと該第1フレームに架け渡された第1可撓性シートとを含む第1治具と、
第2フレームと該第2フレームに架け渡された第2可撓性シートとを含む第2治具と、
前記第1可撓性シートに接合された第1剛性シートと、
前記第2可撓性シートに接合された第2剛性シートと、
前記加圧対象物を支持する搬送治具と、
を備え、
前記第1治具及び前記第2治具は、その間に前記加圧対象物を配置する収容空間を形成し、
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、前記第1可撓性シートと前記第2可撓性シートとの間で前記収容空間を介して対面し、
前記第1治具及び前記第2治具の少なくとも一方には、前記収容空間に連通する排気孔が形成された、固定治具。
【0068】
2. 前記第1可撓性シート及び前記第2可撓性シートは、樹脂シートであり、
前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、金属シートである、条項1に記載の固定治具。
【0069】
3. 前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、ステンレスによって構成されている、条項2に記載の固定治具。
【0070】
4. 前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートの面積は、前記第1可撓性シート及び前記第2可撓性シートの面積よりも小さい、条項1~3の何れか一項に記載の固定治具。
【0071】
5. 前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートの厚みは、50μm以上400μm以下である、条項1~4の何れか一項に記載の固定治具。
【0072】
6. 前記第1剛性シート及び前記第2剛性シートは、前記第1可撓性シート及び前記第2可撓性シートに両面テープによってそれぞれ貼付されている、条項1~5の何れか一項に記載の固定治具。
【0073】
7. 前記第2フレーム上に配置された矩形枠状の押さえ部材と、
前記押さえ部材の外縁に沿って配置され、前記収容空間を封止する矩形枠状のシール部材と、
を更に備える、条項1~6の何れか一項に記載の固定治具。
【0074】
8. 前記第1可撓性シートを介して前記第1剛性シートに対向して配置され、前記第1可撓性シートとの間に第1予備減圧室を形成する第1予備減圧部材と、
前記第2可撓性シートを介して前記第2剛性シートに対向して配置され、前記第2可撓性シートとの間に第2予備減圧室を形成する第2予備減圧部材と、
を更に備える、条項1~7の何れか一項に記載の固定治具。
【0075】
9. 前記第1予備減圧室に配置される複数のスペーサを更に備え、
前記第1剛性シートに垂直な方向から見て、前記複数のスペーサは、前記第1剛性シートに重ならない位置に配置されている、条項8に記載の固定治具。
【0076】
10. 前記第1剛性シートは、略矩形状を呈し、
前記第1剛性シートに垂直な方向から見て、前記複数のスペーサは、前記第1剛性シートの対角線の延長線上に配置されている、条項9に記載の固定治具。
【符号の説明】
【0077】
1…固定治具、10…上治具(第1治具)、11…第1フレーム、12…第1可撓性シート、23…押さえ部材、24,46,47…シール部材、20…下治具(第2治具)、21…第2フレーム、22…第2可撓性シート、25…排気孔、28…切り欠き部、31…第1剛性シート、32…第2剛性シート、33…両面テープ、41…上予備減圧部材(第1予備減圧部材)、42…下予備減圧部材(第2予備減圧部材)、43…第1予備減圧室、44…第2予備減圧室、45…スペーサ、50…搬送治具、100…加圧対象物、101…電極活物質層、S1…中央部(収容空間)、S2…外縁部。