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特開2024-38866MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038866
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20240313BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20240313BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01P15/08 102D
G01P15/125 Z
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143195
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】紙西 大祐
(72)【発明者】
【氏名】乾 喜行
【テーマコード(参考)】
4M112
【Fターム(参考)】
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA45
4M112DA03
4M112DA04
4M112DA09
4M112EA06
4M112EA13
(57)【要約】
【課題】MEMSセンサにおいて、第1基板に設けられた電極が第2基板に設けられたストッパ部に貼り付くことを抑制する。
【解決手段】MEMSセンサは、表面10aに空洞12を有する第1基板10と、空洞12を覆うように第1基板10に接合される第2基板20とを備え、第1基板10に、空洞12内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極13が設けられ、第2基板20に、電極13の第2基板側への移動を規制するストッパ部23が設けられる。ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、第1基板10の表面10aより表面粗さが大きく形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に空洞の一部が露出する空洞を有する第1基板と、
前記空洞を覆うように前記第1基板に接合される第2基板と、
を備え、
前記第1基板に、前記空洞内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極が設けられ、
前記第2基板に、前記電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部が設けられ、
前記ストッパ部における前記電極に対向する対向面は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
MEMSセンサ。
【請求項2】
前記第1基板に、前記第2基板に接合される被シール部が設けられ、
前記第2基板に、前記被シール部に接合されるシール部が設けられ、
前記シール部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記被シール部と前記シール部とは、金属接合によって接合される、
請求項2に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記被シール部は、Al層によって形成され、
前記シール部は、Geを含む層によって形成される、
請求項2に記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
前記対向面は、前記ストッパ部上に形成された金属膜層によって形成される、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項6】
前記金属膜層は、Geを含む層である、
請求項5に記載のMEMSセンサ。
【請求項7】
前記ストッパ部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項8】
前記センサ素子は、静電容量型加速度センサ素子である、
請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項9】
第1基板の表面に空洞の一部が露出する空洞を形成するとともに前記第1基板に前記空洞内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極を形成し、
第2基板に前記電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部を形成し、
前記空洞を覆うように前記第1基板に前記第2基板を接合し、
前記ストッパ部における前記電極に対向する対向面は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
MEMSセンサの製造方法。
【請求項10】
前記第1基板に、前記第2基板に接合される被シール部を形成し、
前記第2基板に、前記被シール部に接合されるシール部を形成し、
前記シール部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
請求項9に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項11】
前記被シール部と前記シール部とは、金属接合によって接合される、
請求項10に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項12】
前記被シール部は、Al層によって形成され、
前記シール部は、Geを含む層によって形成され、
前記Geを含む層は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
請求項10に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項13】
前記対向面は、前記ストッパ部上に形成された金属膜層によって形成される、
請求項9に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項14】
前記金属膜層は、Geを含む層である、
請求項13に記載のMEMSセンサの製造方法。
【請求項15】
前記ストッパ部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
請求項9に記載のMEMSセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSセンサ及びMEMSセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術を用いて製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが知られている。特許文献1には、デバイス側基板とリッド側基板とをガラスフリットによって接合し、デバイス側基板に設けられたセンサ素子の電極を封止したMEMSセンサが開示されている。
【0003】
デバイス側基板とリッド側基板の接合に採用し得る接合技術として、デバイス側基板とリッド側基板とにそれぞれ形成した金属膜を接合させる金属接合も知られている。金属接合は、ガラスフリットによる接合に比してMEMSセンサのコンパクト化を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8319254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサ素子の電極を有するMEMS加速度センサなどのMEMSセンサでは、電極が設けられた第1基板に第2基板を金属接合によって接合するとともに、電極が第2基板側に過度に撓んで変位することを抑制するように第2基板に電極の移動を規制するストッパ部が設けられる場合がある。
【0006】
このように第2基板に電極の移動を規制するストッパ部が設けられる場合、第1基板に設けられた電極が第2基板側に過度に撓んで第2基板のストッパ部に接触するときに、電極がストッパ部に貼り付いてセンサ素子の信頼性を低下させるおそれがある。
【0007】
本開示は、電極を有する第1基板に第2基板を接合するとともに第2基板に電極の移動を規制するストッパ部が設けられるMEMSセンサにおいて、第1基板に設けられた電極が第2基板のストッパ部に貼り付くことを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、表面に空洞の一部が露出する空洞を有する第1基板と、前記空洞を覆うように前記第1基板に接合される第2基板と、を備え、前記第1基板に、前記空洞内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極が設けられ、前記第2基板に、前記電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部が設けられ、前記ストッパ部における前記電極に対向する対向面は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、MEMSセンサを提供する。
【0009】
本開示によれば、表面に空洞を有する第1基板にセンサ素子の電極が移動可能に設けられ、第1基板に接合する第2基板にストッパ部が設けられ、ストッパ部における電極に対向する対向面は、第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される。これにより、ストッパ部の電極に対向する対向面が、第1基板の表面と同一表面粗さである場合に比して、電極がストッパ部に接触するときの接触面積を小さくすることができる。従って、電極を有する第1基板に第2基板を接合するとともに第2基板に電極の移動を規制するストッパ部が設けられるMEMSセンサにおいて、電極がストッパ部に貼り付くことを抑制することができる。第1基板と第2基板とを金属接合する場合など、ストッパ部に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極とストッパ部との貼り付きを抑制することができる。
【0010】
また、本開示は、第1基板の表面に空洞の一部が露出する空洞を形成するとともに前記第1基板に前記空洞内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極を形成し、第2基板に前記電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部を形成し、前記空洞を覆うように前記第1基板に前記第2基板を接合し、前記ストッパ部における前記電極に対向する対向面は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、MEMSセンサの製造方法を提供する。
【0011】
本開示によれば、第1基板の表面に空洞が形成されるとともに第1基板に空洞内に移動可能にセンサ素子の電極が形成され、第2基板に電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部が形成され、空洞を覆うように第1基板に第2基板が接合され、ストッパ部における電極に対向する対向面は、第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される。これにより、ストッパ部の電極に対向する対向面が、第1基板の表面と同一表面粗さである場合に比して、電極がストッパ部に接触するときの接触面積を小さくすることができる。従って、電極を有する第1基板に第2基板を接合するとともに第2基板に電極の移動を規制するストッパ部が設けられるMEMSセンサにおいて、電極がストッパ部に貼り付くことを抑制することができる。第1基板と第2基板とを金属接合する場合など、ストッパ部に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極とストッパ部との貼り付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係るMEMSセンサの平面図である。
図2図2は、第1基板アセンブリの平面図である。
図3図3は、図2に示す第1基板アセンブリの要部拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図5図5は、図1のV-V線に沿うMEMSセンサの断面図である。
図6図6は、接合前の第1基板アセンブリ及び第2基板アセンブリを示す図である。
図7図7は、Ge層の形成を説明する図である。
図8図8は、基板角度と表面粗さの関係を示すグラフである。
図9図9は、成膜速度と表面粗さの関係を示すグラフである。
図10図10は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
図11図11は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
図12図12は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
図13図13は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。
図14図14は、本開示の第2実施形態に係るMEMSセンサを示す図である。
図15図15は、圧力と表面粗さの関係を示すグラフである。
図16図16は、第2実施形態に係るMEMSセンサの変形例を示す図である。
図17図17は、従来のMEMSセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本開示の第1実施形態に係るMEMSセンサの平面図である。図1に示すように、本開示の第1実施形態に係るMEMSセンサ1は、センサ素子2として静電容量型加速度センサ素子を有する静電容量型加速度センサである。MEMSセンサ1は、センサ素子2を有するデバイス側基板としての第1基板10を有する第1基板アセンブリ11と、第1基板10に接合されるリッド側基板としての第2基板20を有する第2基板アセンブリ21とを備えている。MEMSセンサ1は、半導体微細加工技術を用いて第1基板10及び第2基板20を加工して製造される。
【0015】
以下では、第1基板10及び第2基板20の表面に沿う所定方向をX方向とするとともにX方向と直交する方向をY方向とし、X方向及びY方向と直交する第1基板10及び第2基板20の厚さ方向をZ方向とする。図1では、第2基板20が第1基板10のZ方向上側に接合されたMEMSセンサ1が示されている。図1では、第1基板10に形成される配線を省略して示している。
【0016】
センサ素子2は、X方向に作用する加速度を検出するセンサ素子2である。センサ素子は、これに限定されるものでなく、Y方向に作用する加速度を検出するセンサ素子、あるいはZ方向に作用する加速度を検出するセンサ素子であってもよい。
【0017】
センサ素子2は、第2基板20が第1基板10に接合されることにより、第2基板20によって覆われて密閉されている。第1基板10には、互いにX方向に離間して複数、具体的には5つのパッド部3が設けられている。パッド部3は、外部の電子部品などに接続されている。パッド部3は、センサ素子2に電気信号を入力したりセンサ素子2の電気信号を出力したりするようになっている。
【0018】
図2は、第1基板アセンブリの平面図である。図3は、図2に示す第1基板アセンブリの要部拡大図であり、図2のA1部を拡大して示している。図4は、図3のIV-IV線に沿うMEMSセンサの断面図である。図5は、図1のV-V線に沿うMEMSセンサの断面図である。
【0019】
図4及び図5に示すように、第1基板アセンブリ11は、表面である第1主面10aと、第1主面10aの反対側の裏面である第2主面10bとを有する第1基板10を備えている。第1基板10は、平面視で、X方向に延びる2辺とY方向に延びる2辺とを有して矩形状に形成されている。第1基板10として、不純物をドーピングして導電性を付与した、例えば1Ω・m~5Ω・mの抵抗率を有する導電性単結晶シリコン基板が用いられる。第1基板10の第1主面10aは、表面粗さSa(算術平均粗さ)が1nm以下に形成されている。
【0020】
第1基板10は、図2に示すように、中央側にセンサ素子2に対応して第1主面10aに一部が露出する空洞12を有している。空洞12は、図5に示すように、第1主面10aから第1基板10の厚さ方向に略直方体状に窪んで形成され、底壁部12aと底壁部12aから第1基板10の厚さ方向に延在する側壁部12bとを有している。
【0021】
第1基板10は、図3及び図4に示すように、センサ素子2の電極13を形成する梁部14と、梁部14を支持する支持部15とを有している。梁部14は、第1基板10の空洞12内に配置され、空洞12内に浮いた状態で支持部15に支持されている。梁部14は、第1基板10の一部によって形成されている。支持部15は、図2に示すように、センサ素子2の周囲を囲むように平面視で略四角形状に環状に形成されている。支持部15の内周面は、空洞12の側壁部12bを構成する。
【0022】
梁部14によって形成される電極13は、支持部15に支持された状態で空洞12内に移動可能に配置される。電極13は、固定電極30と、固定電極30に対してX方向に相対的に移動可能である可動電極40とを備えている。固定電極30及び可動電極40は、第1基板10の厚さ方向に同一厚さで形成されている。図3に示すように、梁部14は、支持部15に接続される支持用梁部14aと、固定電極用梁部14bと、可動電極用梁部14cとを備えている。
【0023】
固定電極用梁部14b及び可動電極用梁部14cはそれぞれ、支持用梁部14aに分離部16を介して接続されている。分離部16は、固定電極用梁部14b及び可動電極用梁部14cと支持用梁部14aとをそれぞれ電気的に分離するとともに機械的に連結する。分離部16は、酸化シリコンを有し、絶縁膜である酸化シリコンによって形成されている。
【0024】
固定電極30は、図2及び図3に示すように、支持用梁部14aに分離部16を介して接続される接続部31と、接続部31に接続されるベース部32と、ベース部32に接続されると共にY方向に延在するように櫛歯状に形成される複数の電極部33とを有している。接続部31は、平面視で格子状に設けられ、ベース部32は、平面視で梯子状に設けられている。複数の電極部33は、ベース部32からY方向に直線状に延在するとともにX方向に等間隔に離間して櫛歯状に配置されている。
【0025】
可動電極40は、支持用梁部14aに分離部16を介して接続される接続部41と、接続部41に接続されてY方向に延在するバネ部44と、バネ部44を介して接続部41に接続されるベース部42と、ベース部42に接続されると共にY方向に延在するように櫛歯状に形成される複数の電極部43とを有している。
【0026】
接続部41は、X方向一方側に配置される第1接続部45とX方向他方側に配置される第2接続部46とを備えている。第1接続部45及び第2接続部46はそれぞれ、センサ素子2のX方向内側にX方向に直線状に延在する第1横直線部分41a(図3参照)と、センサ素子2のX方向外側にX方向に直線状に延在する第2横直線部分41b(図2参照)と、センサ素子2のY方向一方側にY方向に直線状に延在する複数の縦直線部分41c(図2参照)とを有している。
【0027】
第1接続部45及び第2接続部46はそれぞれ、第1横直線部分41aが分離部16を介して支持用梁部14aに接続されている。第1接続部45及び第2接続部46はそれぞれ、複数の縦直線部分41cがそれぞれ分離部16を介して固定電極30のベース部32に接続されるとともに、第2横直線部分41bがバネ部44に接続されている。分離部16は、隣接する2つの領域を電気的に分離するとともに機械的に連結する。分離部16は、酸化シリコンを有し、絶縁膜である酸化シリコンによって形成されている。
【0028】
バネ部44は、図2に示すように、第1接続部45に接続される第1バネ部47と第2接続部46に接続される第2バネ部48とを備えている。第1バネ部47及び第2バネ部48は、センサ素子2のX方向両側に配置されてY方向に延び、X方向に作用する加速度に応じてX方向に移動可能に構成されている。
【0029】
ベース部42は、平面視でY方向に直線状に延在する複数の第1縦直線部分42a及び第2縦直線部分42bと、平面視でX方向に直線状に延在する複数の横直線部分42cとを有し、格子状に設けられている。第1縦直線部分42aと第2縦直線部分42bとは、X方向に交互に配置され、X方向一方側の第1縦直線部分42aのY方向一方側に第1バネ部47が接続され、X方向他方側の第2縦直線部分42bのY方向一方側に第2バネ部48が接続されている。
【0030】
第1縦直線部分42a及び第2縦直線部分42bは、横直線部分42cに設けられた分離部16によって電気的に分離される。複数の第1縦直線部分42aは、横直線部分42c上に設けられた複数のコンタクト及び配線を介して電気的に接続される。複数の第2縦直線部分42bは、横直線部分42c上に設けられた複数のコンタクト及び配線を介して電気的に接続される。
【0031】
複数の電極部43は、ベース部42からY方向他方側に直線状に延在するとともにX方向に等間隔に離間して櫛歯状に配置されている。複数の電極部43は、第1縦直線部分42aからY方向に直線状に延在する複数の第1電極部43aと、第2縦直線部分42bからY方向に直線状に延在する複数の第2電極部43bとを有している。
【0032】
第1電極部43aと第2電極部43bとは、一対として固定電極30の電極部33間に配置され、第1電極部43a及び第2電極部43bはそれぞれ、対向する固定電極30の電極部33と接触しないように配置されている。一対の第1電極部43a及び第2電極部43bは、X方向に直線状に延在する複数の横直線部分43cによって接続されると共に分離部16によって電気的に分離されている。
【0033】
可動電極40は、第1電極部43aを備えた第1可動電極40aと、第2電極部43bを備えた第2可動電極40bとを有している。第1可動電極40aは、第1電極部43a、ベース部42の第1縦直線部分42a、第1バネ部47及び第1接続部45を備え、第2可動電極40bは、第2電極部43b、ベース部42の第2縦直線部分42b、第2バネ部48及び第2接続部46を備えている。
【0034】
センサ素子2にX方向の加速度が作用すると、加速度に応じて固定電極30の電極部33に対して可動電極40の電極部43が相対的に移動して電極部33と電極部43との間の間隔が変化して固定電極30と可動電極40との間の静電容量、具体的には固定電極30及び第1可動電極40a間並びに固定電極30及び第2可動電極40b間の静電容量が変化する。MEMSセンサ1は、固定電極30と可動電極40との間の静電容量の変化を電気信号として取り出すことで加速度を検出できるようになっている。
【0035】
MEMSセンサ1では、固定電極30に、パッド部3と電気的に接続する配線が固定電極用のコンタクト5を介して接続され、第1可動電極40aに、パッド部3と電気的に接続する配線が第1可動電極用のコンタクト6を介して接続され、第2可動電極40bに、パッド部3と電気的に接続する配線が第2可動電極用のコンタクトを介して接続されている。第1基板10には、パッド部3と電気的に接続する配線が基板用のコンタクト7を介して接続されている。
【0036】
第2基板アセンブリ21は、図4及び図5に示すように、表面である第1主面20aと、第1主面20aの反対側の裏面である第2主面20bとを有する第2基板20を備えている。第2基板20は、平面視で、X方向に延びる2辺とY方向に延びる2辺とを有して矩形状に形成されている。第2基板20として、不純物をドーピングして導電性を付与した、例えば1Ω・m~5Ω・mの抵抗率を有する導電性単結晶シリコン基板が用いられる。第2基板20の第1主面20aは、第1基板10の第1主面10aと同様に、表面粗さSa(算術平均粗さ)が1nm以下に形成されている。
【0037】
第2基板20は、空洞12を覆うように第1基板10に接合される。第1基板10に、第2基板20に接合される被シール部17が形成され、第2基板20に、被シール部17に接合されるシール部27が形成されている。
【0038】
被シール部17は、図2に示すように、空洞12の周囲に配置され、平面視で略四角枠状に環状に形成される。被シール部17は、図5に示すように、第1基板10の第1主面10a上にスパッタ法によって形成された金属膜層であるAl層19によって形成されている。シール部27は、図1に示すように、被シール部17に対応して平面視で略四角枠状に環状に形成され、図5に示すように、第2基板20の第1主面20a上に蒸着法によって形成された薄膜の金属膜層であるGe層29によって形成されている。Al層19は、例えば400nm形成され、Ge層29は、例えば400nm形成される。
【0039】
第2基板20に形成されたシール部27は、第1基板10に形成された被シール部17に接合される。これにより、第1基板10に設けられた空洞12は、第2基板20によって覆われて密閉される。第2基板20のシール部27と第1基板10の被シール部17とは、金属接合によって接合される。第1基板10と第2基板20とが重ね合わせられるとともに所定の加圧が加えられた状態で、例えば430度などの所定温度に加熱されることにより、Al層19とGe層29とが金属接合、具体的には共晶接合して接合される。シール部27を形成するGe層29は、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面10aより表面粗さが大きく形成される。
【0040】
第2基板20は、図5に示すように、第1主面20aから第2基板20の厚さ方向に略直方状に窪む空洞22を有している。空洞22は、底壁部22aと底壁部22aから第2基板20の厚さ方向に延在する側壁部22bとを有している。
【0041】
第2基板20には、センサ素子2の電極13の第2基板側への移動を規制するストッパ部23が設けられている。ストッパ部23は、空洞22の底壁部22aから第2基板20の厚さ方向に第2基板20の第1主面20aまで延在するように形成されている。ストッパ部23は、第2基板20の第1主面20aより底壁部22a側に設けるようにしてもよい。
【0042】
ストッパ部23は、図1に示すように、平面視で略四角状に環状に形成される環状部24と、Y方向に離間してX方向に直線状に平行に延びる2つの直線部25とを備え、2つの直線部25はそれぞれ、X方向両端部がそれぞれ環状部24に接続されるように形成されている。ストッパ部23は、電極13に対向するように形成され、2つの直線部25が、Y方向に延在するバネ部44、固定電極30の複数の電極部33及び可動電極40の複数の電極部43の上方に離間して配置されている。
【0043】
ストッパ部23上には、図5に示すように、薄膜の金属膜層であるGe層26が形成されている。MEMSセンサ1では、ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、ストッパ部23上に形成されたGe層26における電極13に対向する対向面26aである。第1基板10に設けられた電極13が第2基板側に過度に撓んで第2基板20のストッパ部23に接触するとき、電極13は、ストッパ部23上に形成されたGe層26に接触する。
【0044】
このように、第2基板20に電極13の移動を規制するストッパ部23が電極13の上方に配置されることにより、第1基板10に設けられた電極13が第2基板側に過度に撓んで移動することを抑制することができ、電極13が折れることを抑制することができる。
【0045】
MEMSセンサ1では、センサ素子2の電極13を有する第1基板10に第2基板20を接合するとともに第2基板20に電極13の移動を規制するストッパ部23が設けられている。第1基板10の被シール部17は、Al層19によって形成され、第2基板20のシール部27は、Ge層29によって形成され、第2基板20のストッパ部23上にはGe層26が形成されている。
【0046】
図6は、接合前の第1基板アセンブリ及び第2基板アセンブリを示す図である。図6に示すように、第2基板20のシール部27を形成するGe層29は、第1基板10の被シール部17に対向する対向面27aの表面粗さSaが大きく形成され、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aより表面粗さSaが大きく形成される。ストッパ部23上に形成されるGe層26についても、電極13に対向する対向面26aの表面粗さSaが大きく形成され、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aより表面粗さSaが大きく形成される。
【0047】
図7は、Ge層の形成を説明する図である。図7に示すように、本実施形態では、蒸着装置50を用い、第2基板20のシール部27を形成するGe層29と第2基板20のストッパ部23上に形成されるGe層26とは、蒸着法によって形成される。蒸着装置50は、第2基板20を保持する基板ホルダ51と、第2基板20の保持角度を調整する角度調整機構52とを備え、角度調整機構52を作動して第2基板20の保持角度を調整できるようになっている。
【0048】
蒸着装置50では、電子ビーム等を用いて蒸発源53から蒸発して第2基板20に入射する蒸発分子の飛行経路の中心ライン54に対し、通常は第2基板(二点鎖線参照)が直交する方向に配置されるが、本実施形態では第2基板20が中心ライン54に直交する方向に対し所定角度θ1傾斜するように配置される。このようにして、第2基板20のシール部27を形成するGe層29とストッパ部23上に形成されるGe層26とは同時に形成され、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aより表面粗さが大きく形成される。
【0049】
図8は、基板角度と表面粗さの関係を示すグラフである。図8では、基板角度θ1を横軸にとり、Ge層29,26の表面粗さSa(算術平均粗さ)を縦軸にとって表し、Ge層29,26の成膜速度及び膜厚が一定である場合について示している。基板角度θ1と表面粗さSaとの測定結果を黒丸として表している。
【0050】
図8に示す測定結果から、基板角度θ1と表面粗さSaとの関係を表した線形関数の近似式を既知の最小二乗法によって算出し、基板角度θ1と表面粗さSaとの関係式L1を算出した。基板角度θ1と表面粗さSaとの関係式L1は、基板角度θ1が大きくなるほど表面粗さSaが大きくなっている。
【0051】
図6では、第1基板10の被シール部17を形成するAl層19上に形成されるAl酸化膜8を示している。図6に示すように、Al層19上には、自然酸化膜であるAl酸化膜8が形成され、第1基板アセンブリ11ではAl酸化膜8は、例えば5nm程度の厚さで形成される。そのため、Ge層29,26の表面粗さSaは、GeがAl酸化膜8を通過するように所定表面粗さSa1、例えば15nmに設定される。図8に示す基板角度θ1と表面粗さSaとの関係式L1から、Ge層29,26を形成するときに基板角度θ1は、例えば50度に設定される。
【0052】
図9は、成膜速度と表面粗さとの関係を示すグラフである。図9では、蒸着による成膜速度G[Å(オングストローム)/sec]を横軸にとり、Ge層29,26の表面粗さSa(算術平均粗さ)を縦軸にとって表し、Ge層29,26の基板角度及び膜厚が一定である場合について示している。成膜速度Gと表面粗さSaとの測定結果を黒丸として表している。
【0053】
図9に示す測定結果から、成膜速度Gと表面粗さSaとの関係を表した線形関数の近似式を既知の最小二乗法によって算出し、成膜速度Gと表面粗さSaとの関係式L2を算出した。成膜速度Gと表面粗さSaとの関係式L2は、成膜速度Gが小さくなるほど表面粗さSaが大きくなっている。したがって、基板角度θ1を、例えば50度より小さくして、成膜速度Gを小さく設定することで、Ge層29の表面粗さSaを、GeがAl酸化膜8を通過するように所定表面粗さSa1、例えば15nmに設定するようにしてもよい。
【0054】
このように、第2基板20のシール部27を形成するGe層29は、表面粗さSaが大きく形成され、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aより表面粗さSaが大きく形成される。Ge層29は、Al酸化膜8をGeが通過するように表面粗さSaが大きく形成される。これにより、被シール部17上にAl酸化膜8が形成される場合においても、Al酸化膜8を貫通してAlとGeとを接触させて金属接合させることができ、第1基板10と第2基板20の接合強度を大きくすることができる。
【0055】
また、第2基板20のストッパ部23上に形成されるGe層26は、第1基板の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aより表面粗さSaが大きく形成される。これにより、Ge層26が、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aと同一表面粗さである場合に比して、電極13がストッパ部23に接触するときの接触面積を小さくすることができ、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。
【0056】
図17は、従来のMEMSセンサの断面図である。図17では、図5に示すMEMSセンサ1の断面と同じ断面で示している。図17に示すMEMSセンサ101は、第2基板20のシール部127が第2基板20上に形成されたAl層129によって形成され、第1基板10の被シール部117が第1基板10上に形成されたAl層119によって形成され、シール部127と被シール部117との間に配置されたガラスフリット102によって第1基板10と第2基板20とが接合されて封止されている。
【0057】
図17に示すMEMSセンサ101はまた、ガラスフリット102による第1基板10と第2基板20との接合前に、第1基板10及び第2基板20にそれぞれ非粘着性を有する樹脂コーティングなどの撥水コート層103が形成され、電極13及びストッパ部23上に撥水コート層103が形成される。MEMSセンサ101では、撥水コート層103によってストッパ部23への電極13の貼り付きが抑制されて第1基板10と第2基板20とがガラスフリット102によって接合されている。
【0058】
MEMSセンサ1では、第1基板10と第2基板20とを金属接合によって接合することで、ガラスフリットによる接合に比してコンパクト化を図ることができる。また、第2基板20のストッパ部23上に形成されるGe層26は表面粗さSaが大きく形成されることで、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。第1基板10と第2基板20とを金属接合する場合など、ストッパ部23に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0059】
次に、MEMSセンサ1の製造方法について説明する。
図10から図12は、第1基板アセンブリの製造方法を説明する図である。図10及び図11は、図3のIV-IV線に沿う第1基板アセンブリの断面を示し、図12は、図1のV-V線に沿う第1基板アセンブリの断面を示している。MEMSセンサ1の製造では、シリコン基板である第1基板10及び第2基板20が準備される。
【0060】
第1基板10には、図10に示すように、分離部16に対応する部分が除去されてトレンチ18が形成される。トレンチ形成後に、トレンチ18及び第1基板10の第1主面10a全体が熱酸化され、酸化シリコン膜によって分離部16が形成されるとともに第1基板10の第1主面10a上に酸化シリコン膜が形成される。分離部16が形成されると、第1基板10の第1主面10a上の酸化シリコン膜が除去される。
【0061】
次に、スパッタ法によって、第1基板10の被シール部17に対応する部分にAl層19が形成される。第1基板10にはまた、パッド部3、コンタクト及び配線が形成される。その後に、フォトリソグラフィ及び異方性エッチングによって第1基板10がパターニングされ、電極13を残すようにトレンチが形成される。次いで、等方性エッチングによって前記トレンチが深く形成されるとともに、第1基板10の第1主面10aに平行な方向にエッチングされ、図11及び図12に示すように、第1主面10aに一部が露出する空洞12が形成されるとともに空洞12内に電極13を形成する梁部14が浮いた状態で配置され、第1基板アセンブリ11が製造される。
【0062】
図13は、第2基板アセンブリの製造方法を説明する図である。第2基板20には、図13に示すように、蒸着法によって第2基板20のシール部27及びストッパ部23に対応する部分にGe層29,26が形成される。Ge層29は、第1基板10の第1主面10a及び第2基板20の第1主面20aより表面粗さSaが大きく形成される。前述したように、基板ホルダ51に保持された第2基板20の基板角度θ1を変えて、表面粗さSaが大きいGe層29,26が形成される。Ge層29,26は同時に形成されることが好ましいが、同時に形成しなくてもよい。
【0063】
そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによってシール部27及びストッパ部23がパターニングされ、第2基板20に空洞22が形成されるとともにシール部27及びストッパ部23が形成され、第2基板アセンブリ21が製造される。
【0064】
このようにして、第1基板10に空洞12内に移動可能に配置される電極13が形成されるとともに被シール部17が形成され、第2基板20に電極13に対向するようにストッパ部23が形成されるとともにシール部27が形成され、ストッパ部23の電極13に対向する対向面は、第1基板10の第1主面10aより表面粗さが大きく形成される。
【0065】
第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21の製造後、第1基板10の被シール部17に第2基板20のシール部27が重ね合わせられて接合され、第1基板10に空洞12を覆うように第2基板20が接合される。第1基板アセンブリ11と第2基板アセンブリ21との接合は、例えば430度などの所定温度に加熱されることによる金属接合、具体的には共晶接合によって行われる。
【0066】
このように、本実施形態に係るMEMSセンサ1の製造方法では、第1基板10の表面10aに空洞12が形成されるとともに第1基板10に空洞12内に移動可能にセンサ素子2の電極13が形成され、第2基板20に電極13の第2基板側への移動を規制するストッパ部23が形成され、空洞12を覆うように第1基板10に第2基板20が接合され、ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、第1基板10の表面10aより表面粗さが大きく形成される。
【0067】
これにより、ストッパ部23の電極13に対向する対向面が、第1基板10の表面10aと同一表面粗さである場合に比して、電極13がストッパ部23に接触するときの接触面積を小さくすることができる。従って、電極13を有する第1基板10に第2基板20を接合するとともに第2基板20に電極13の移動を規制するストッパ部23が設けられるMEMSセンサ1において、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。第1基板10と第2基板20とを金属接合する場合など、ストッパ部23に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0068】
MEMSセンサ1では、梁部14は、支持用梁部14aを備え、固定電極用梁部14b及び可動電極用梁部14cと支持用梁部14aとがそれぞれ分離部16を介して接続されているが、支持用梁部14aを備えることなく、分離部16を支持部15に設けるようにしてもよい。
【0069】
図14は、本開示の第2実施形態に係るMEMSセンサを示す図であり、図14では、接合前の第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21を示している。第2実施形態に係るMEMSセンサ61は、第1実施形態に係るMEMSセンサ1に対し、第2基板20の第1主面20aをエッチングすることによりシール部27及びストッパ部23上に形成されるGe層29,26の表面粗さを大きくしたものであり、同様の構成については説明を省略する。
【0070】
第2実施形態に係るMEMSセンサ61についても、第1実施形態に係るMEMSセンサ1と同様に、空洞12内に配置された電極13を有する第1基板10の被シール部17に、ストッパ部23が設けられた第2基板20のシール部27を接合することで、第1基板10に空洞12を覆うように第2基板20が接合される。また、第1基板10の被シール部17は、Al層19によって形成され、第2基板20のシール部27は、Ge層29によって形成され、第2基板20のストッパ部23上にはGe層26が形成される。
【0071】
Ge層29,26は、表面粗さSaが大きく形成され、第1基板10の第1主面10aより表面粗さSaが大きく形成される。本実施形態では、図14に示すように、第2基板20のシール部27に対応する第2基板20の第1主面20a及びストッパ部23における第2基板20の第1主面20aは、エッチングが行われ、表面粗さSaが第1基板10の第1主面10aより大きく形成され、エッチングを行わない場合に比して大きく形成される。
【0072】
第2基板20の第1主面20aへのエッチングは、SF6ガスをベースとしてO2ガスを添加したSF6/O2混合ガスを用いてエッチングする第1エッチングステップS1と、O2を添加することなくSF6ガスを用いてエッチングする第2エッチングステップS2とによって行われる。第1エッチングステップS1は、表面を粗くする粗化ステップとして機能し、第2エッチングステップS2は、表面を平坦化する平坦化ステップとして機能する。
【0073】
図15は、圧力と表面粗さの関係を示すグラフである。図15では、エッチング時におけるチャンバの圧力(mTorr)を横軸にとり、第2基板20の表面粗さSa(算術平均粗さ)を縦軸にとって表している。第1エッチングステップS1について、SF6/O2混合ガスについてSF6流量及びO2流量をそれぞれ60sccm及び60sccmとし、圧力を変化させて表面粗さSaを測定した。第1エッチングステップS1における圧力と表面粗さとの測定結果を黒丸として表している。
【0074】
図15に示す測定結果から、圧力と表面粗さSaとの関係を表した二次関数の近似式を既知の最小二乗法によって算出し、圧力と表面粗さSaとの関係式L3を算出した。圧力と表面粗さSaとの関係式L3は、所定圧力まで圧力が大きくなるほど表面粗さが小さくなっている。図15では、第1エッチングステップS1における圧力と表面粗さSaとの関係式L3を実線で示し、第1エッチングステップS1後の第2エッチングステップS2における圧力と表面粗さとの関係式を模式的に破線L4で示している。
【0075】
本実施形態では、第1エッチングステップS1によって、例えば表面粗さSaを100nmに設定し、第1エッチングステップS1後の第2エッチングステップS2によって、例えば表面粗さSaを15nmに設定した。図15に実線L3で示すように、第1エッチングステップS1において圧力を40~45mTorrに設定して所定時間エッチングし、その後に、第2エッチングステップS2によって所定時間エッチングし、図15の破線L4で示すように、表面粗さSaを低下させて、所定表面粗さSa0にした。第2エッチングステップS2では、SF6ガスについてSF6流量60sccmとし、圧力を第1エッチングステップS1と同様の40~45mTorrに設定した。
【0076】
表面粗さSa0は、これに限定されるものではないが、好ましくは15nm~50nmに設定される。表面粗さSa0が15nmより小さくなるとGeがAl酸化膜8を貫通できないおそれがあり、表面粗さSa0が50nmより大きくなると、衝撃印加時に電極13がストッパ部23に接触したときにストッパ部23上のGe層26の表面が破壊されてパーティクルなどが発生するおそれがある。Ge層26の表面が破壊されてパーティクルなどが発生すると、パーティクルが電極13に付着して電極13の移動を妨げるなどセンサの信頼性を低下させるおそれがある。
【0077】
第2基板20のシール部27に対応する第2基板20の第1主面20a及び第2基板20のストッパ部23における第2基板20の第1主面20aについてエッチングが行われた後に、図14に示すように、第2基板20のシール部27及びストッパ部23に対応する部分にGe層29,26が、蒸着法によって形成される。
【0078】
本実施形態では、蒸着装置50において、第2基板20の基板角度θ1がゼロに設定され、蒸発源53から蒸発して第2基板20に入射する蒸発分子の飛行経路の中心ライン54に対し、第2基板20が直交する方向に配置された状態で、Ge層29,26が蒸着法によって形成される。
【0079】
この場合、蒸発源53からの蒸発分子の飛行経路の中心ライン54に対して第2基板20が直交する方向から所定角度傾斜して配置される場合に比して、Ge層29,26自体の表面粗さSaは小さく形成されるが、第2基板20の第1主面20aは表面粗さSaが大きく形成されているので、Ge層29,26の表面についても表面粗さSaが大きく形成され、第1基板10の第1主面10aより表面粗さSaが大きく形成される。本実施形態では、Ge層29の表面粗さSaは、GeがAl酸化膜8を通過するように所定表面粗さSa、例えば15nm~50nmに設定される。
【0080】
そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによってシール部27及びストッパ部23がパターニングされ、第2基板20に空洞22が形成されるとともにシール部27及びストッパ部23が形成され、第2基板アセンブリ21が製造される。シール部27及びストッパ部23に対応する部分に形成されるGe層29,26は、第1基板10の第1主面10aより表面粗さSaが大きく形成される。
【0081】
第1基板アセンブリ11及び第2基板アセンブリ21の製造後、第1基板10の被シール部17に第2基板20のシール部27が重ね合わせられて接合され、第1基板10に空洞12を覆うように第2基板20が接合される。第1基板アセンブリ11と第2基板アセンブリ21との接合は、例えば430度などの所定温度に加熱されることによる金属接合、具体的には共晶接合によって行われる。
【0082】
本実施形態においても、第1基板10の表面10aに空洞12が形成されるとともに第1基板10に空洞12内に移動可能にセンサ素子2の電極13が形成され、第2基板20に電極13の第2基板側への移動を規制するストッパ部23が形成され、空洞12を覆うように第1基板10に第2基板20が接合され、ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、第1基板10の表面10aより表面粗さが大きく形成される。
【0083】
これにより、ストッパ部23の電極13に対向する対向面が、第1基板10の表面10aと同一表面粗さである場合に比して、電極13がストッパ部23に接触するときの接触面積を小さくすることができる。従って、電極13を有する第1基板10に第2基板20を接合するとともに第2基板20に電極13の移動を規制するストッパ部23が設けられるMEMSセンサ61において、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。第1基板10と第2基板20とを金属接合する場合など、ストッパ部23に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0084】
図16は、第2実施形態に係るMEMSセンサの変形例を示す図である。図16に示すように、MEMSセンサ61において、第2基板20のシール部27に対応する第2基板20の第1主面20a及び第2基板20のストッパ部23における第2基板20の第1主面20aについてエッチングが行われた後に、ストッパ部23上にGe層が形成されることなく、第2基板20のシール部27にGe層29が蒸着法によって形成されるようにしてもよい。ストッパ部23上にGe層を形成した後に除去して、ストッパ部23上にGe層が形成されないようにしてもよい。
【0085】
この場合においても、フォトリソグラフィ及びエッチングによってシール部27及びストッパ部23がパターニングされ、第2基板20に空洞22が形成されるとともにシール部27及びストッパ部23が形成され、第2基板アセンブリ21が製造される。シール部27を形成するGe層29は、第1基板10の第1主面10aより表面粗さSaが大きく形成され、ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、第1基板10の第1主面10aより表面粗さSaが大きく形成される。
【0086】
MEMSセンサ1,61では、シール部27は、Geを含む層であるGe層29によって形成されているが、AlGe積層などのGeを含む層によって形成してもよい。ストッパ部23上に形成されるGeを含む層であるGe層26についても、AlGe層などのGeを含む層によって形成してもよい。第1基板10の被シール部17がAl層19によって形成され、第2基板20のシール部27がGe層29によって形成されているが、第1基板10の被シール部をCu層によって形成し、第2基板20のシール部27をSn層によって形成し、Cu層とSn層とを共晶させるなど、他の金属接合によって第1基板10と第2基板20とを接合することも可能である。
【0087】
MEMSセンサ1、61では、第2基板20のシール部27の表面粗さSaが、第1基板10の第1主面10aの表面粗さSaより大きく形成されているが、第2基板20のシール部27の表面粗さSaを大きくすることなく、第1基板10の被シール部17の表面粗さを、第1基板10の第1主面10aの表面粗さより大きく形成するようにしてもよい。
【0088】
MEMSセンサ1,61では、Al層19、Ge層29、26がそれぞれスパッタ法、蒸着法によって形成されているが、他の方法によって形成するようにしてもよい。MEMSセンサ1,61は、静電容量型加速度センサであるが、電極が移動可能に配置される他のセンサにも適用可能である。
【0089】
このように、本実施形態に係るMEMSセンサ1,61では、表面10aに空洞12を有する第1基板10にセンサ素子2の電極13が移動可能に設けられ、第1基板10に接合する第2基板20にストッパ部23が設けられ、ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、第1基板10の表面10aより表面粗さSaが大きく形成される。
【0090】
これにより、ストッパ部23の電極13に対向する対向面が、第1基板10の表面10aと同一表面粗さである場合に比して、電極13がストッパ部23に接触するときの接触面積を小さくすることができる。従って、電極13を有する第1基板10に第2基板20を接合するとともに第2基板20に電極13の移動を規制するストッパ部23が設けられるMEMSセンサ1,61において、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。第1基板10と第2基板20とを金属接合する場合など、ストッパ部23に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0091】
また、第1基板10に、第2基板20に接合される被シール部17が設けられ、第2基板20に、被シール部17に接合されるシール部27が設けられ、被シール部17は、第1基板10の表面10aより表面粗さSaが大きく形成される。これにより、被シール部17上に酸化膜又はコンタミネーションが付着した場合においても、シール部27と被シール部17とを接触させることができ、第1基板10と第2基板20の接合強度を大きくすることができる。
【0092】
また、被シール部17とシール部27とは、金属接合によって接合される。これにより、第1基板10と第2基板20とを金属接合によって接合することができ、第1基板10と第2基板20とを金属接合によって接合するMEMSセンサ1,61において、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0093】
また、被シール部17は、Al層19によって形成され、シール部27は、Geを含む層29によって形成される。これにより、Geを含む層29は、第1基板10の表面10aより表面粗さSaが大きく形成され、被シール部17上にAl酸化膜8が形成される場合においても、Al酸化膜8を貫通してAlとGeとを接触させて金属接合させることができ、第1基板10と第2基板20の接合強度を大きくすることができる。
【0094】
また、前記対向面は、ストッパ部23上に形成された金属膜層26によって形成される。これにより、ストッパ部23上に金属膜層26が形成される場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0095】
また、金属膜層26は、Geを含む層26である。これにより、ストッパ部23上にGeを含む層26が形成される場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。第2基板20に設けられるシール部27が第2基板20上に形成されるGeを含む層29によって形成される場合、Geを含む層29,26を同時に形成することができ、シール部のGeを含む層とストッパ部のGeを含む層とが別々に形成される場合に比して、製造工程を簡素化することができる。
【0096】
また、ストッパ部23は、第1基板10の表面10aより表面粗さSaが大きく形成される。これにより、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。ストッパ部23上に金属膜層26が形成される場合においても、金属膜層26の表面粗さSaを大きくすることができ、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0097】
また、センサ素子2は、静電容量型加速度センサ素子2である。これにより、静電容量型加速度センサ素子2を有するMEMSセンサ1,61において、ストッパ部23における電極13に対向する対向面を第1基板10の表面10aより表面粗さSaを大きく形成することで、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態に係るMEMSセンサ1,61の製造方法では、第1基板10の表面10aに空洞12が形成されるとともに第1基板10に空洞12内に移動可能にセンサ素子2の電極13が形成され、第2基板20に電極13の第2基板側への移動を規制するストッパ部23が形成され、空洞12を覆うように第1基板10に第2基板20が接合され、ストッパ部23における電極13に対向する対向面は、第1基板10の表面10aより表面粗さSaが大きく形成される。
【0099】
これにより、ストッパ部23の電極13に対向する対向面が、第1基板10の表面10aと同一表面粗さである場合に比して、電極13がストッパ部23に接触するときの接触面積を小さくすることができる。従って、電極13を有する第1基板10に第2基板20を接合するとともに第2基板20に電極13の移動を規制するストッパ部23が設けられるMEMSセンサ1,61において、電極13がストッパ部23に貼り付くことを抑制することができる。第1基板10と第2基板20とを金属接合する場合など、ストッパ部23に非粘着性を有する樹脂コーティングなどを用いることができない場合においても、電極13とストッパ部23との貼り付きを抑制することができる。
【0100】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【0101】
[付記1]
表面に空洞の一部が露出する空洞を有する第1基板と、
前記空洞を覆うように前記第1基板に接合される第2基板と、
を備え、
前記第1基板に、前記空洞内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極が設けられ、
前記第2基板に、前記電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部が設けられ、
前記ストッパ部における前記電極に対向する対向面は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
MEMSセンサ。
[付記2]
前記第1基板に、前記第2基板に接合される被シール部が設けられ、
前記第2基板に、前記被シール部に接合されるシール部が設けられ、
前記シール部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
付記1に記載のMEMSセンサ。
[付記3]
前記被シール部と前記シール部とは、金属接合によって接合される、
付記2に記載のMEMSセンサ。
[付記4]
前記被シール部は、Al層によって形成され、
前記シール部は、Geを含む層によって形成される、
付記2又は付記3に記載のMEMSセンサ。
[付記5]
前記対向面は、前記ストッパ部上に形成された金属膜層によって形成される、
付記1から付記4の何れかに記載のMEMSセンサ。
[付記6]
前記金属膜層は、Geを含む層である、
付記5に記載のMEMSセンサ。
[付記7]
前記ストッパ部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
付記1から付記6の何れかに記載のMEMSセンサ。
[付記8]
前記センサ素子は、静電容量型加速度センサ素子である、
付記1から付記7の何れかに記載のMEMSセンサ。
[付記9]
第1基板の表面に空洞の一部が露出する空洞を形成するとともに前記空洞内に移動可能に配置されるセンサ素子の電極を形成し、
第2基板に前記電極の第2基板側への移動を規制するストッパ部を形成し、
前記空洞を覆うように前記第1基板に前記第2基板を接合し、
前記ストッパ部における前記電極に対向する対向面は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
MEMSセンサの製造方法。
[付記10]
前記第1基板に、前記第2基板に接合される被シール部を形成し、
前記第2基板に、前記被シール部に接合されるシール部を形成し、
前記シール部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
付記9に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記11]
前記被シール部と前記シール部とは、金属接合によって接合される、
付記10に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記12]
前記被シール部は、Al層によって形成され、
前記シール部は、Geを含む層によって形成され、
前記Geを含む層は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
付記10又は付記11に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記13]
前記対向面は、前記ストッパ部上に形成された金属膜層によって形成される、
付記9から付記12の何れかに記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記14]
前記金属膜層は、Geを含む層である、
付記13に記載のMEMSセンサの製造方法。
[付記15]
前記ストッパ部は、前記第1基板の表面より表面粗さが大きく形成される、
付記9から付記14の何れかに記載のMEMSセンサの製造方法。
【符号の説明】
【0102】
1,61,101 MEMSセンサ
2 センサ素子
10 第1基板
12 空洞
13 電極
17,117 被シール部
20 第2基板
23 ストッパ部
27,127 シール部
図1
図2
図3
図4
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