(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038879
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20240313BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240313BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240313BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240313BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240313BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04313
H01M8/04537
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143214
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐輝
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB66
5H127DB86
5H127DC55
5H127DC87
5H127FF10
(57)【要約】
【課題】排水弁が開閉する回数を抑制しつつタンク内の水位が低い状態で掃気を実行することができる技術を提供する。
【解決手段】タンク内の水位が所定の上限水位以上となる場合に排水弁が開弁されてタンク内の水が排出される燃料電池システムであって、制御部は、上限水位が第1上限水位に設定されている状態で、出力検出手段により検出される出力値が所定の基準値以下となる場合に、上限水位を第1上限水位から第1上限水位未満の第2上限水位に設定変更し、タンク内の水位が第2上限水位以下となる場合に、掃気手段による掃気を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の出力値を検出する出力検出手段と、
前記燃料電池で発生する水を貯留するタンクと、
前記タンク内の水を排出するための排水通路と、
前記排水通路を開閉する排水弁と、
前記燃料電池に供給するガスの流量を増量することにより前記燃料電池に対する掃気を実行する掃気手段と、
制御部と、を備え、
前記タンク内の水位が所定の上限水位以上となる場合に前記排水弁が開弁されて前記タンク内の水が排出される燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記上限水位が第1上限水位に設定されている状態で、前記出力検出手段により検出される出力値が所定の基準値以下となる場合に、前記上限水位を前記第1上限水位から前記第1上限水位未満の第2上限水位に設定変更し、前記タンク内の水位が前記第2上限水位以下となる場合に、前記掃気手段による掃気を実行する、燃料電池システム。
【請求項2】
燃料電池と、
前記燃料電池の出力値を検出する出力検出手段と、
前記燃料電池で発生する水を貯留するタンクと、
前記タンク内の水を排出するための排水通路と、
前記排水通路を開閉する排水弁と、
前記燃料電池に供給するガスの流量を増量することにより前記燃料電池に対する掃気を実行する掃気手段と、
制御部と、を備え、
前記タンク内の水位が所定の上限水位以上となる場合に前記排水弁が開弁されて前記タンク内の水が排出される燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記上限水位が第1上限水位に設定されている状態で、前記出力検出手段により検出される出力値が所定の基準値以下となる第1タイミングを推定し、推定した前記第1タイミングよりも所定時間前の第2タイミングで前記上限水位を前記第1上限水位から前記第1上限水位未満の第2上限水位に設定変更し、前記タンク内の水位が前記第2上限水位以下となる場合に、前記掃気手段による掃気を実行する、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に燃料電池システムが開示されている。特許文献1の燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池の出力電流を検出する電流センサと、燃料電池で発生する水を貯留するタンクと、タンク内の水位を検出する水位センサと、タンク内の水を排出するための排水通路と、排水通路を開閉する排水弁とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の燃料電池システムでは、水位センサにより検出される水位が所定の上限水位以上となる場合に、排気排水弁が開弁されてタンク内の水が排出される。この構成では、排水弁が開弁するきっかけとなる上限水位が低い水位に設定されていると、排水弁が開閉する回数が多くなり、その結果、排水弁が劣化するスピードが速くなる。
【0005】
また、燃料電池システムでは、例えば、燃料電池の出力値が低下した場合に、燃料電池の出力値を回復させるために、燃料電池に供給するガスの流量を増量することにより燃料電池に対する掃気を実行することがある。しかしながら、タンク内の水位が高いときに掃気が実行されると、燃料電池から排出されるガスがタンク内を通過するときに、掃気のために流量が増量したガスの影響により、タンク内の水がガスに巻き上げられてタンク外に飛び出すことがある。
【0006】
本明細書は、排水弁が開閉する回数を抑制しつつタンク内の水位が低い状態で掃気を実行することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の第1の態様では、燃料電池システムが、燃料電池と、前記燃料電池の出力値を検出する出力検出手段と、前記燃料電池で発生する水を貯留するタンクと、前記タンク内の水を排出するための排水通路と、前記排水通路を開閉する排水弁と、前記燃料電池に供給するガスの流量を増量することにより前記燃料電池に対する掃気を実行する掃気手段と、制御部と、を備えていてもよい。燃料電池システムでは、前記タンク内の水位が所定の上限水位以上となる場合に前記排水弁が開弁されて前記タンク内の水が排水されてもよい。前記制御部は、前記上限水位が第1上限水位に設定されている状態で、前記出力検出手段により検出される出力値が所定の基準値以下となる場合に、前記上限水位を前記第1上限水位から前記第1上限水位未満の第2上限水位に設定変更し、前記タンク内の水位が前記第2上限水位以下となる場合に、前記掃気手段による掃気を実行してもよい。
【0008】
この構成によれば、通常では、排水弁の開弁のきっかけとなる上限水位が、相対的に高い第1上限水位に設定されているので、排水弁が開閉する回数を抑制することができる。そのため、排水弁が劣化するスピードを抑制することができる。また、上記の構成では、燃料電池の出力値が基準値以下となる場合に、排水弁の開弁のきっかけとなる上限水位を相対的に低い第2上限水位に設定変更する。これにより、タンク内の水位を相対的に低い状態にすることができる。そして、タンク内の水位が第2上限水位以下となる場合に、燃料電池の出力値を回復させるための掃気を実行する。そのため、タンク内の水位が低い状態で掃気を実行することができる。したがって、掃気によりガスの流量が増量したとしても、燃料電池から排出されるガスがタンク内を通過するときに、タンク内の水位が低くなっているので、タンク内の水がガスに巻き上げられることを抑制することができる。
【0009】
本技術の第2の態様では、燃料電池システムが、燃料電池と、前記燃料電池の出力値を検出する出力検出手段と、前記燃料電池で発生する水を貯留するタンクと、前記タンク内の水を排出するための排水通路と、前記排水通路を開閉する排水弁と、前記燃料電池に供給するガスの流量を増量することにより前記燃料電池に対する掃気を実行する掃気手段と、制御部と、を備えていてもよい。燃料電池システムでは、前記タンク内の水位が所定の上限水位以上となる場合に前記排水弁が開弁されて前記タンク内の水が排水されてもよい。前記制御部は、前記上限水位が第1上限水位に設定されている状態で、前記出力検出手段により検出される出力値が所定の基準値以下となる第1タイミングを推定し、推定した前記第1タイミングよりも所定時間前の第2タイミングで前記上限水位を前記第1上限水位から前記第1上限水位未満の第2上限水位に設定変更し、前記タンク内の水位が前記第2上限水位以下となる場合に、前記掃気手段による掃気を実行してもよい。
【0010】
この構成によれば、上記と同様に、排水弁が開閉する回数を抑制しつつタンク内の水位が低い状態で掃気を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例の燃料電池システムの運転時のタイミングチャート。
【
図3】変形例の燃料電池システムの運転時のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例の燃料電池システム2について図面を参照して説明する。
図1は、実施例の燃料電池システム2の模式図である。
図1に示すように、燃料電池システム2は、水素タンク12と、燃料電池10と、気液分離タンク14と、制御部50とを備えている。燃料電池システム2は、例えば、燃料電池車等の車両に搭載される。
【0013】
水素タンク12は、燃料電池10に供給するための水素ガス(燃料ガス)を貯留している。水素タンク12には水素供給通路30が接続されている。水素供給通路30は、その上流端が水素タンク12に接続され、下流端が燃料電池10に接続されている。水素供給通路30は、水素タンク12から燃料電池10に水素ガスを供給する。
【0014】
水素供給通路30には電磁弁22とエゼクタ16が設けられている。電磁弁22は、水素供給通路30を開閉する。電磁弁22が開弁すると水素供給通路30を通じて燃料電池10に水素ガスが供給される。電磁弁22の開度は調節可能である。電磁弁22の開度が大きくなると、燃料電池10に供給される水素ガスの流量が増加する。電磁弁22の開度が小さくなると、燃料電池10に供給される水素ガスの流量が減少する。
【0015】
エゼクタ16は、電磁弁22よりも下流側(燃料電池10側)の水素供給通路30に設けられている。エゼクタ16には後述する循環通路36の下流端が接続されている。エゼクタ16は、水素供給通路30を流れる水素ガスの圧力により循環通路36を流れるガスを吸引して水素供給通路30の下流側へ排出する器具である。
【0016】
燃料電池10について説明する。燃料電池10には水素供給通路30の他に、空気供給通路32が接続されている。空気供給通路32は、その上流端が空気供給源(不図示)に接続され、下流端が燃料電池10に接続されている。空気供給通路32を通じて空気供給源から燃料電池10に空気が供給される。空気供給通路32には、燃料電池10に向けて空気を圧送するポンプ18が設けられている。なお、空気供給通路32の上流端は外気に開放されていてもよい。
【0017】
燃料電池10は、水素供給通路30により供給される水素と、空気供給通路32により供給される空気に含まれる酸素とを用いて発電する。燃料電池10は、例えば、容器の内部に積み重ねられた複数の電池セル(不図示)を備えており、各電池セルが、水素と酸素の化学反応により発電する。電池セルは、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC(Solid Oxide Fuel Cell))や固体高分子形燃料電池(PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell))であるが、これらに限定されない。燃料電池10では、発電の際に水素と酸素の化学反応により水が発生する。また、燃料電池10では、発電の際に未反応の水素ガスがオフガスとして排出される。燃料電池10には、燃料電池10の出力電流値を検出する電流センサ24が電気的に接続されている。電流センサ24により検出される燃料電池10の電流値の情報は、制御部50に送信される。
【0018】
燃料電池10には、水素排出通路34の上流端が接続されている。水素排出通路34の下流端は気液分離タンク14に接続されている。水素排出通路34は、燃料電池10で発生する水を気液分離タンク14に排出する。また、水素排出通路34は、燃料電池10から排出されるオフガス(水素ガス)を気液分離タンク14に排出する。
【0019】
燃料電池10には、更に、空気排出通路38の上流端が接続されている。空気排出通路38の下流端は空気の排出先(不図示)に接続されている。空気排出通路38は、燃料電池10から排出される空気を排出先に排出する。
【0020】
気液分離タンク14について説明する。気液分離タンク14は、水素排出通路34を通じて排出される水を貯留する。気液分離タンク14には水位センサ52が設けられている。また、気液分離タンク14には、水素排出通路34の他に、排気排水通路40と循環通路36が接続されている。気液分離タンク14の上部に水素排出通路34と循環通路36が接続されており、気液分離タンク14の底部に排気排水通路40が接続されている。
【0021】
水位センサ52は、気液分離タンク14に貯留されている水の水位を検出する。水位センサ52としては、例えば、フロート式、超音波式、静電容量式のセンサを用いることができる。フロート式のセンサは、例えば、気液分離タンク14内の水に浮かぶフロートを備えており、そのフロートの高さ位置に基づいて水位を検出する。超音波式のセンサは、例えば、気液分離タンク14内の水の水面に向けて超音波を発信すると共に、水面で反射した超音波を受信する構成である。超音波式のセンサは、超音波の発信から受信までの時間に基づいて水位を検出する。静電容量式のセンサは、例えば、水の誘電率と空気の誘電率との差を利用して気液分離タンク14内の水の水位を検出する。
【0022】
排気排水通路40は、気液分離タンク14に貯留されている水を外部に排出するための通路である。排気排水通路40の下流端は水の排出先(不図示)に接続されている。排気排水通路40を通じて気液分離タンク14から排出先に水が排出される。排気排水通路40には、排気排水通路40を開閉する排気排水弁20が設けられている。排気排水弁20が開弁すると排気排水通路40を通じて水が排出される。また、気液分離タンク14内のオフガスも水と共に排出される。
【0023】
循環通路36は、その上流端が気液分離タンク14に接続されており、下流端がエゼクタ16を介して水素供給通路30に接続されている。水素供給通路30を流れる水素ガスの圧力により、循環通路36を流れるオフガス(水素ガス)がエゼクタ16を介して水素供給通路30に吸引される。これにより、気液分離タンク14から循環通路36を通じて水素供給通路30にオフガス(水素ガス)が供給される。このオフガス(水素ガス)は、水素供給通路30を通じて燃料電池10に供給される。したがって、燃料電池10から排出されたオフガス(水素ガス)が循環して再び燃料電池10に供給される。
【0024】
燃料電池システム2の制御部50は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を備えており、所定のプログラムに従って燃料電池システム2に関する様々な制御や処理を実行する。制御部50は、例えば、車両のECU(Engine Control Unit)である。
【0025】
次に、燃料電池システム2の運転について説明する。上記の燃料電池システム2では、水素供給通路30を通じて燃料電池10に水素ガスが供給され、空気供給通路32を通じて燃料電池10に空気が供給される。これにより、燃料電池10で発電が行われる。燃料電池10の発電時の出力電流値は、電流センサ24により検出される。
【0026】
燃料電池10では発電時に水が発生する。燃料電池10で発生した水は、水素排出通路34により気液分離タンク14に排出され、気液分離タンク14に貯留される。気液分離タンク14内の水の水位は、水位センサ52により検出される。燃料電池システム2では、燃料電池10で発生した水の一部が燃料電池10の電池セルに付着することがある。
【0027】
制御部50は、水位センサ52の検出水位に基づいて、気液分離タンク14内の水位が所定の上限水位以上となる場合に、排気排水通路40に設けられている排気排水弁20を開弁する。排気排水弁20が開弁すると、気液分離タンク14内の水が排気排水通路40を通じて外部に排出される。所定の上限水位は、例えば、燃料電池10の発電状態に応じて設定される。また、制御部50は、排気排水弁20を開弁した後に、気液分離タンク14内の水位が所定の下限水位以下となる場合に、排気排水弁20を閉弁する。
【0028】
図2に示すように、燃料電池システム2では、通常時には、排気排水弁20の開弁のきっかけとなる上限水位が、第1上限水位H1に設定されている。しかしながら、燃料電池10の発電量が低下したときに上限水位の値が設定変更される。具体的には、制御部50が、電流センサ24により検出される燃料電池10の出力電流値が所定の第1基準値T1以下となる場合に、上限水位を第1上限水位H1から第2上限水位H2に設定変更する。第2上限水位H2は、第1上限水位H1未満の値である。上限水位が第2上限水位H2に変更されたときに、気液分離タンク14内の水位が変更後の上限水位(第2上限水位H2)以上となる場合は、制御部50が排気排水弁20を開弁する。
【0029】
また、制御部50は、気液分離タンク14内の水位が変更後の上限水位(第2上限水位H2)以下となる場合に、水素供給通路30に設けられている電磁弁22の開度を大きくする。上述のように、上限水位が第2上限水位H2に変更されたときに、気液分離タンク14内の水位が変更後の上限水位(第2上限水位H2)以上となる場合は、制御部50が排気排水弁20を開弁する。これにより気液分離タンク14内の水位が低下するので、気液分離タンク14内の水位が低下することにより第2上限水位H2以下となる場合に、制御部50が電磁弁22の開度を大きくする。一方、上限水位が第2上限水位H2に変更されたときに、気液分離タンク14内の水位が既に変更後の上限水位(第2上限水位H2)を上回っている場合は、制御部50が排気排水弁20を開弁せずに、電磁弁22の開度を大きくする。
【0030】
電磁弁22の開度が大きくなると、水素供給通路30を通じて燃料電池10に供給される水素ガスの流量が増量する。これにより、燃料電池10に対する掃気が実行される。掃気が実行されると、燃料電池10の電池セルに付着している水が、流量が増量した水素ガスの圧力により下流側へ押し流される。掃気により燃料電池10の電池セルに付着している水が取り除かれると、燃料電池10の発電量が増加する。よって、燃料電池10の出力電流値が上昇する。掃気時の電磁弁22の開度は、燃料電池10に対する要求電流値に応じて設定される。
【0031】
その後、制御部50は、電流センサ24により検出される燃料電池10の出力電流値が所定の第2基準値T2以上となる場合に、上限水位を第2上限水位H2から第1上限水位H1に設定変更する。また、この場合に、制御部50は、電磁弁22の開度を小さくすることにより、燃料電池10に対する掃気を終了する。所定の第2基準値T2は、第1基準値T1以上の値である。
【0032】
(効果)
以上、実施例の燃料電池システム2について説明した。以上の説明から明らかなように、燃料電池システム2では、制御部50が、上限水位が第1上限水位H1に設定されている状態で、電流センサ24により検出される出力電流値が第1基準値T1以下となる場合に、上限水位を第1上限水位H1から第2上限水位H2に設定変更し、気液分離タンク14内の水位が第2上限水位H2以下となる場合に、燃料電池10に対する掃気を実行する。
【0033】
この構成によれば、通常では、排気排水弁20の開弁のきっかけとなる上限水位が、相対的に高い第1上限水位H1に設定されているので、排気排水弁20が開閉する回数を抑制することができる。そのため、排気排水弁20が劣化するスピードを抑制することができる。また、上記の構成では、燃料電池10の出力電流値が第1基準値T1以下となる場合に、排気排水弁20の開弁のきっかけとなる上限水位を相対的に低い第2上限水位H2に設定変更する。これにより、気液分離タンク14内の水位を相対的に低い状態にすることができる。そして、気液分離タンク14内の水位が第2上限水位H2以下となる場合に、燃料電池10の出力電流値を回復させるための掃気を実行する。そのため、気液分離タンク14内の水位が低い状態で掃気を実行することができる。したがって、掃気により水素ガスの流量が増量したとしても、燃料電池10から排出される水素ガスが気液分離タンク14内を通過するときに、気液分離タンク14内の水位が低くなっているので、気液分離タンク14内の水が水素ガスに巻き上げられることを抑制することができる。
【0034】
第1上限水位H1は、例えば、通常時に気液分離タンク14内の水が下流側へ流出しないように設定される。第2上限水位H2は、例えば、掃気時に気液分離タンク14内の水が下流側へ流出しないように設定される。
【0035】
(対応関係)
電流センサ24が「出力検出手段」の一例であり、気液分離タンク14が「タンク」の一例であり、排気排水通路40が「排水通路」の一例であり、排気排水弁20が「排水弁」の一例であり、電磁弁22が「掃気手段」の一例である。
【0036】
(変形例)
(1)変形例では、制御部50が、上限水位が第1上限水位H1に設定されている状態で、電流センサ24により検出される出力電流値が第1基準値T1以下となるタイミング(第1タイミングt1)を推定してもよい(
図3参照)。具体的には、制御部50は、電流センサ24により検出される出力電流値について、所定の演算を実行することにより、燃料電池10の出力電流値が第1基準値T1以下となる第1タイミングt1を推定する。また、制御部50は、推定した第1タイミングt1よりも所定時間前(例えば、2秒前)の第2タイミングt2で上限水位を第1上限水位H1から第2上限水位H2に変更してもよい。制御部50は、気液分離タンク14内の水位が設定変更後の第2上限水位H2以下となる場合に、電磁弁22の開度を大きくする。これにより、燃料電池10に対する掃気が実行される。この構成でも、排気排水弁20が開閉する回数を抑制しつつ、気液分離タンク14内の水位が低い状態で掃気を実行することができる。
【0037】
(2)上記の実施例では、掃気手段の一例として電磁弁22について説明したが、この構成に限定されない。変形例では、燃料電池システム2は、掃気手段の一例として、水素供給通路30に設けられているポンプ(不図示)を備えていてもよい。制御部50は、このポンプの吐出量を増量することにより、燃料電池10に供給する水素ガスの流量を増量してもよい。これにより、燃料電池10に対する掃気が実行される。
【0038】
(3)上記の実施例では、気液分離タンク14内の水の水位が水位センサ52により検出される構成であったが、この構成に限定されない。変形例では、制御部50が、電流センサ24により検出される燃料電池10の出力電流値に基づいて、気液分離タンク14内の水の水位を算出してもよい。例えば、燃料電池10の出力電流値がIアンペアである場合、燃料電池10では単位時間当たり、I/2F×N(mol/s)=18/1000×I/2F×N(L/s)の水が発生すると考えられる。Fは、ファラデー定数であり、Nは、燃料電池10の電池セルの数である。制御部50は、この値を時間積分することにより、気液分離タンク14内の水の水位を算出してもよい。制御部50は、燃料電池10の出力電流値に基づいて算出した水位に応じて排気排水弁20を開閉してもよい。
【0039】
(4)上記の実施例では、「出力検出手段」の一例として電流センサ24について説明したが、この構成に限定されない。変形例では、「出力検出手段」として電圧センサ(不図示)を用いてもよい。制御部50が、電圧センサにより検出される燃料電池10の出力電圧値が所定の基準値以下となる場合に、上限水位を第1上限水位H1から第2上限水位H2に設定変更してもよい。また、電圧センサにより検出される燃料電池10の出力電圧値に基づいて、気液分離タンク14内の水の水位を算出してもよい。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
2:燃料電池システム、10:燃料電池、12:水素タンク、14:気液分離タンク、16:エゼクタ、18:ポンプ、20:排気排水弁、22:電磁弁、24:電流センサ、30:水素供給通路、32:空気供給通路、34:水素排出通路、36:循環通路、38:空気排出通路、40:排気排水通路、50:制御部