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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038889
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】土地利用価値算出システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240313BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143227
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】菅原 佑允
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC13
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】土地利用の価値を、簡易かつ的確に算出できる土地利用価値算出システムを提供すること。
【解決手段】土地利用価値算出システム500は、土地のデータを受け付ける土地データ受付部20と、オープンデータを編集するオープンデータ編集部DEと、土地データ受付部20で受け付けた土地のデータとオープンデータ編集部DEで編集されたオープンデータとに基づいて少なくとも駐車場としての土地利用価値を算出する価値算出部VCとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土地のデータを受け付ける土地データ受付部と、
オープンデータを編集するオープンデータ編集部と、
前記土地データ受付部で受け付けた土地のデータと前記オープンデータ編集部で編集されたオープンデータとに基づいて少なくとも駐車場としての土地利用価値を算出する価値算出部と
を備える土地利用価値算出システム。
【請求項2】
前記土地データ受付部は、土地の所在地及び面積に加え、地形に関するデータを受け付け、
前記価値算出部は、入力された地形に応じた価値算出をする、請求項1に記載の土地利用価値算出システム。
【請求項3】
前記土地データ受付部は、土地の所在地及び面積に加え、駐車利用可能な時間帯の情報を受け付け、
前記価値算出部は、入力された駐車利用可能な時間帯の情報を含めた価値算出をする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の土地利用価値算出システム。
【請求項4】
前記価値算出部は、駐車場としての利用態様ごとの価値を算出する、請求項1に記載の土地利用価値算出システム。
【請求項5】
前記オープンデータ編集部は、価値算出の対象となる土地の地域性に応じたデータ編集を行う、請求項1に記載の土地利用価値算出システム。
【請求項6】
前記オープンデータ編集部は、地域性に応じたオープンデータとして、災害、治安、交通量及び商業設備に関する情報を含み、土地の駐車場としての利用態様に応じて、採用するオープンデータの重み付けを変更する、請求項5に記載の土地利用価値算出システム。
【請求項7】
前記土地データ受付部は、希望する土地の利用態様を受け付け、
前記価値算出部は、前記土地データ受付部で受け付けた利用態様ごとの価値を算出する、請求項1に記載の土地利用価値算出システム。
【請求項8】
前記オープンデータ編集部は、オープンデータの変遷履歴及び価値算出の対象となる土地の周辺における利用の実情データに基づく学習を行う、請求項1に記載の土地利用価値算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば土地を駐車場等として利用するに際しての価値を算出する土地利用価値算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路の重要度の判定のために、所定の評価基準に応じて道路の評価情報を生成するもの(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1では、土地利用の態様の1つである道路としての評価については記載されていても、例えば駐車場としての土地利用における経済的な価値を予測することについては開示がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-181063号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、土地利用の価値を、簡易かつ的確に算出できる土地利用価値算出システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための土地利用価値算出システムは、土地のデータを受け付ける土地データ受付部と、オープンデータを編集するオープンデータ編集部と、土地データ受付部で受け付けた土地のデータとオープンデータ編集部で編集されたオープンデータとに基づいて少なくとも駐車場としての土地利用価値を算出する価値算出部とを備える。
【0007】
上記土地利用価値算出システムでは、土地利用における経済的な価値として、少なくとも駐車場としての土地利用について、その価値を、オープンデータを利用して、簡易かつ的確に算出することができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、土地データ受付部は、土地の所在地及び面積に加え、地形に関するデータを受け付け、価値算出部は、入力された地形に応じた価値算出をする。この場合、例えば国土交通省における調査で決まる土地の評価額等のような単純な換算ではなく、対象の土地の利用態様に固有の事項に基づく価値算出が可能となる。
【0009】
本発明の別の側面では、土地データ受付部は、土地の所在地及び面積に加え、駐車利用可能な時間帯の情報を受け付け、価値算出部は、入力された駐車利用可能な時間帯の情報を含めた価値算出をする。この場合、駐車利用の時間貸しの態様に応じた土地利用の価値算出が可能となる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、価値算出部は、駐車場としての利用態様ごとの価値を算出する。この場合、時間貸し向けとするか月極利用向けとするかといった様々な駐車利用の態様に応じた土地利用の価値算出が可能となる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、オープンデータ編集部は、価値算出の対象となる土地の地域性に応じたデータ編集を行う。この場合、土地の地域性に応じた土地利用の価値算出が可能となる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、オープンデータ編集部は、地域性に応じたオープンデータとして、災害、治安、交通量及び商業設備に関する情報を含み、土地の駐車場としての利用態様に応じて、採用するオープンデータの重み付けを変更する。この場合、利用態様ごとに重視すべき事項を勘案した土地利用の価値算出が可能となる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、土地データ受付部は、希望する土地の利用態様を受け付け、価値算出部は、土地データ受付部で受け付けた利用態様ごとの価値を算出する。この場合、希望する土地の利用態様に応じた価値算出が可能となる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、オープンデータ編集部は、オープンデータの変遷履歴及び価値算出の対象となる土地の周辺における利用の実情データに基づく学習を行う。この場合、対象とする土地の周辺における環境に基づく価値算出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の土地利用価値算出システムについて概要を示す概念図である。
図2】土地利用価値算出システムを実装した一構成例を説明するための概念図である。
図3】(A)は、受け付けた土地のデータに関する一例を示すデータ表であり、(B)及び(C)は、オープンデータに関する一例を示すデータ表であり、(D)は、価値算出の結果に関する一例を示すデータ表である。
図4】(A)及び(B)は、駐車場としての利用態様ごとの価値算出の結果について一例を示すデータ表である。
図5】土地利用価値算出に利用する学習済みモデルの作成について説明するための概念図である。
図6】土地利用価値算出システムの概要をまとめたブロック図である。
図7】一変形例の土地利用価値算出システムにおける価値算出に関する一例を示すデータ表である。
図8】(A)は、土地利用における価値算出について、他の観点から見た場合について説明するための概念的な斜視図であり、(B)は、価値算出に関する一例を示すデータ表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1等を参照して、一実施形態の土地利用価値算出システムについて一例を説明する。図1は、土地利用価値算出システム500について概要を示す概念図である。また、図2の概念図は、土地利用価値算出システム500を実装した一構成例について示している。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の土地利用価値算出システム500は、例えば土地を所有する地主LL等のユーザーから所有地情報等の土地に関する情報を受け付ける一方、各自治体MN等から各種データを収集するとともにこれらを編集して、編集したデータに基づいて、地主LL等の土地の利用について、価値を算出する価値算出プラットフォームPFとして機能する。土地の利用方法については、一戸建てや集合住宅等の家屋や、店舗等の施設を建築する場合のほか、駐車場や駐輪場等として使用する等、種々の態様が想定されるが、ここでは、特に、土地利用価値算出システム500は、種々の利用態様のうち、少なくとも駐車場として利用する場合の価値算出を行うものとする。
【0018】
なお、以下では、所有地情報等の土地に関する情報(土地の情報)を、デジタル化したデータを、土地のデータあるいは、単に土地データとする。土地データには、例えば場所を示すデータとしての住所のほか、面積や形状、坪単価(評価額)等が含まれるものとする。一方、各自治体MNから収集する各種データとして、デジタル化されて一般に利用可能となっているデータとして、いわゆるオープンデータを利用する。オープンデータについては、入手可能な種々のものが含まれるものとするが、ここでは特に、土地利用の価値算出に利用され得るデータのうち、典型的なものとして、例えば、価値算出の対象となる土地を含む地域における犯罪率や、事故率、災害情報等が含まれるものとする。土地利用価値算出システム500は、駐車場として利用する場合の価値算出を行うために少なくとも必要となる各種データについて、土地データを受け付け、また、オープンデータを取得するものとなっている。
【0019】
ここで、一般に、土地オーナー(図1の地主LL)が自己の所有する土地の利活用すなわち運用を決定するに際して、例えば駐車場として利用したいと考えているといった場合には、駐車場事業者に相談すること等が想定される。しかしながら、駐車場事業者は、自己の利益を図るべく、自身の保有する運用データを秘匿すると考えられ、相対的に、土地オーナーすなわち地主LLが情報弱者になりやすい。つまり、地主LLは、土地利活用の観点で駐車場とすべきか、別の収益物件とするかの判断材料が乏しい状況になってしまう可能性が高い。さらに、時間貸し向け、月極利用向けなど、様々な利用者目線での価値の多様化を反映できなく、地主LLが、適切でない駐車場の運用態様を選択してしまう可能性がある。これに対して、本実施形態では、土地利用価値算出システム500が価値算出プラットフォームPFとして機能することで、地主LLは、オープンデータを利用して、簡易かつ的確に自己の土地利用価値を算出することができる。これにより、例えば、駐車場として運用すべきか否か、あるいは、駐車場として運用する場合に、どのような利用態様とすべきか、といった判断が、的確に行えるようになる。なお、価値算出プラットフォームPFの運営主体としては、オープンデータを保有する自治体MNそのものや、駐車場業界の協同組合等のほか、情報提供を専門に行う業者等が想定される。
【0020】
以下、図2を参照して、上記のような価値算出プラットフォームPFを構築する土地利用価値算出システム500を実装した一構成例について説明する。図示の一例では、土地利用価値算出システム500は、各種データを管理するデータ管理サーバーSV等で構成される。具体的には、データ管理サーバーSVが、各自治体MN(MNα,MNβ,MNγ,…)のそれぞれ管轄下にある各地区α,β,γ,…のオープンデータODα,ODβ,ODγ,…を取得するとともにこれらを編集する一方、各情報入力端末TIとの通信を介して、各地主LLa,LLb,LLc,…が所有する土地A,B,C,…の情報を取得して、オープンデータODα,ODβ,ODγ,…に基づいて、土地A,B,C,…の利用価値を算出する。データ管理サーバーSVは、算出結果を、対応する情報入力端末TIに伝送することで、価値算出プラットフォームPFとして機能する。なお、図示の一例では、土地Aは、地区αに含まれており、土地Aに関する価値算出については、オープンデータODαに基づいてなされるものとする。同様に、土地Bは、地区βに含まれオープンデータODβに基づいて価値算出され、土地Cは、地区γに含まれオープンデータODγに基づいて価値算出されるものとする。この場合、データ管理サーバーSVは、例えば土地Aに関する価値算出に際しては、少なくとも対応する地区αのオープンデータODαを利用して、価値算出を行う、といった具合になっている。
【0021】
また、上記態様において、情報入力端末TIについては、種々の態様が想定され、価値算出プラットフォームPFを提供する側がPC等を準備する場合のほか、地主LLが自身のPCあるいはスマートフォン(スマホ)等を情報入力端末TIとして使用する、といった態様が想定される。
【0022】
なお、図示の一例では、各自治体MNα,MNβ,MNγ,…は、それぞれオープンデータ管理サーバーMSα,MSβ,MSγ,…においてオープンデータODα,ODβ,ODγ,…を管理し、格納している。データ管理サーバーSVは、オープンデータ管理サーバーMSα,MSβ,MSγ,…を介して、オープンデータODα,ODβ,ODγ,…を取得する。また、データ管理サーバーSVやオープンデータ管理サーバーMSα,MSβ,MSγ,…は、物理的な1つのサーバーで構成することも可能であるが、例えばクラウド上に構成すること等も可能である。
【0023】
上記のようなデータ管理サーバーSVにおける各種情報処理を可能とすべく、データ管理サーバーSVの実体的機能を示すものとしての情報処理部100は、オープンデータ取得部10と、土地データ受付部20と、データ処理部50と、データベース70とを備える。これらのうち、データ処理部50は、オープンデータ編集部DEと、価値算出部VCとを有する、あるいは、これらのものとして機能する。
【0024】
オープンデータ取得部10は、各オープンデータ管理サーバーMSα等との通信を介して、各オープンデータODα等を取得する窓口(通信部)として機能する。ここで、情報取得のタイミングについては種々の態様とすることができ、例えば取得が必要なデータについて、各オープンデータ管理サーバーMSα等において更新がなされるごとに、必要に応じて、オープンデータ取得部10側から問合せをして、各オープンデータ管理サーバーMSα等と通信を行い、オープンデータ取得部10において更新データを取得する態様が考えられる。つまり、この場合、オープンデータ取得部10は、各オープンデータODα等についてのデータ更新受付部URとして機能する。
【0025】
土地データ受付部20は、情報入力端末TIを介してデータ管理サーバーSVに伝送される土地のデータを受け付けるインターフェース部である。
【0026】
データ処理部50のうち、オープンデータ編集部DEは、オープンデータ取得部10において取得した各オープンデータODα等について、編集を行う。すなわち、各オープンデータODα等から、土地利用の価値算定に必要なデータの抽出やデータの加工を行う。
【0027】
データ処理部50のうち、価値算出部VCは、土地データ受付部20で受け付けた土地のデータと、オープンデータ編集部DEで編集されたオープンデータODα等とに基づいて土地利用価値を算出する。
【0028】
ここでの一例では、価値算出部VCにおいて、少なくとも駐車場としての土地利用価値について算出が行われるようにすべく、まず、オープンデータ編集部DEにおいて、例えば土地のデータ(土地データ)については、必要に応じて各種処理をして、所在地や面積といった駐車場としての利用態様に関する固有のデータを抽出する一方、オープンデータについては、例えば土地データに含まれる所在地に対応する地域(ロケーション)に関して駐車場利用に影響し得る情報が抽出される。つまり、駐車場として利用するという観点に固有の情報を取り出すべくデータの抽出やデータの加工が行われる。この上で、価値算出部VCにおいて、オープンデータ編集部DEで編集された各種データに基づいて、駐車場に特化した価値算出がなされる。
【0029】
データベース70は、上述した情報処理部100の外部から受け付けた各種データを格納するとともに、情報処理部100の内部処理により生成された各種データを格納する。
【0030】
以下、図3等を参照して、上記一連の処理に際して取り扱われる各種データについて、すなわちデータベース70に格納される各種データについて、一例を説明する。より具体的には、図3(A)は、土地データ受付部20で受け付けた土地のデータ(土地データ)に関する一例を示すデータ表であり、図3(B)及び図3(C)は、オープンデータ取得部10で取得したオープンデータに関する一例を示すデータ表である。一方、図3(D)は、データ処理部50における処理結果としての価値算出に関する一例を示すデータ表である。
【0031】
まず、土地データについて、図3(A)に示す一例では、対象とする土地の位置を示す所在地(住所)のほか、面積、さらには、地形が入力されるものとする。つまり、土地データ受付部20は、土地の所在地及び面積に加え、地形に関するデータを、取り扱うべき土地データとして受け付ける。地形に関するデータを受け付けることで、例えば入力された地形に応じた駐車場の車室の配列や出入り口の位置等を定めるレイアウトの作成を、データ処理部50における処理の1つとして行うことが可能となる。なお、レイアウトについては、利用態様に応じて駐車可能台数や車室等の配置が異なるものが作成可能である。
【0032】
また、ここでの一例では、上記した各情報に加え、希望する土地の利用態様(希望利用態様)の情報を、土地データとして受け付けているものとする。つまり、土地データを入力する地主LL等は、例えば自己の所有地を駐車場として利用したいと考えているといった場合において、その所有地(土地)の利用態様ごとに価値算出をすることが可能になっている。利用態様について具体的には、例えば時間貸しとするか月極利用とするか、といったことが想定され、さらに、時間貸しについてであれば、駐車利用可能な時間帯の情報を設定する、といったことも可能である。さらに具体的には、対象の所有地(土地)である自宅の駐車場が、平日昼間の時間帯(例えば、朝9時から夕方18時まで等。)は空きとなっている場合に、その時間帯に限り他人に対して貸し出すようにしたい、といった希望に応じた利用態様とすることが考えられる。つまり、上記態様の場合、土地データ受付部20は、希望する土地の利用態様を受け付け、価値算出部VCは、土地データ受付部20で受け付けた利用態様ごとの価値を算出するものとなっている。
【0033】
次に、オープンデータについて、図3(B)に示す一例では、対象地域(例えば土地Aに対応する地区α)における犯罪発生に関する事例を示している。このようなデータから、例えばその地域における犯罪発生危険度が抽出される。また、図3(C)に示す一例では、地区αにおける災害情報に関する事例を示している。このようなデータから、例えばその地域における洪水等の災害発生危険度が抽出される。なお、これらのデータは、各自治体において必要に応じて適宜更新され、ここでは、既述のように、必要に応じて、更新されたデータが、情報処理部100に逐次取り込まれる。すなわち、オープンデータの変遷履歴が利用可能となっている。なお、以上の場合、オープンデータ編集部DE(図2参照)は、価値算出の対象となる土地の地域性に応じたオープンデータとして、災害、治安に関する情報を含むものとなっている。また、上記に加え、例えば交通量及び商業設備に関する情報を含むものとすることも考えられる。交通量や商業設備(飲食店やショッピングモール等)の状況から、時間貸しと月極め貸しとのうち、どちらのほうが高い収益性が見込めるかを判断できる可能性がある。
【0034】
なお、上述した土地データやオープンデータは、一例であり、これら以外のものが採用される場合もある。これらのデータについて、既述のように、データ処理部50を構成する各部において処理がなされることで、例えば、図3(D)に示す一例のように、処理結果としての価値算出に関するデータが得られる。図示の例では、利用態様として、24時間貸す場合と昼間時間帯(朝9時から夕方18時まで)限定で貸す場合、さらに、時間貸しとする場合と月極めで貸す場合を組み合わせた4態様における駐車可能台数や、その際の車室等のレイアウト、見込み売上やコスト、さらに、犯罪や災害の発生危険度等を価値算出の結果として示している。なお、図示の一例では、発生危険度を5段階で示した場合を例示しているが、示し方はこれに限らず種々の態様とすることが可能である。
【0035】
また、上記一例では、既述のように、土地データ受付部20(図2参照)において、土地の所在地及び面積に加え、地形に関するデータを受け付ける態様となっており、これに対して、価値算出部VCが、入力された地形に応じた価値算出をするものとなっている。より具体的には、対象になっている土地の地形や、利用態様が現場設備をほとんど有しない月極めであるか精算機等の設備を必要とする時間貸しであるかに応じて、駐車可能台数や車室等のレイアウトが、価値算出部VCにより算出される。
【0036】
また、図3(D)に例示したような態様のほか、例えば図4(A)や図4(B)に例示するように、各利用態様について、さらに詳細なデータ表示を行うものとしてもよい。すなわち、図4(A)のように、時間貸し(24時間)の場合において、料金体系をいくつか例示し、その際の見込み稼働率を見込み売上やコストとともに示すようにする。また、図4(B)のように、月極め貸し(24時間)の場合において、想定料金(1か月の利用料)をいくつか例示し、その際の見込み契約率を見込み売上やコストとともに示すようにする。以上のようにすることで、地主LLが希望する利用態様において、どれを選択すべきかの判断材料を提供できる。あるいは、これらの表示をした上で、ベストを決定して示す、といった態様とすることも可能である。
【0037】
さらに、オープンデータ編集部DE(図2参照)において、土地の駐車場としての利用態様に応じて、採用するオープンデータの重み付けが変更されるものとしてもよい。例えば近くに飲食店があって短時間の利用が多いと考えられるような場合には、時間貸しのほうが月極め貸しよりも高い売り上げが見込める。さらに、短時間の駐車利用の場合には、月極め貸しの場合のように長時間の駐車利用が想定される場合に比べて、犯罪被害に遭遇する可能性が低い、といったことが予想される。したがって、犯罪の影響を考えるに際して、時間貸しの場合と月極め貸しの場合とで、その重みを変更するものとしてもよい。具体的には、例えば、安全を高めるための設備に係るコスト(見込みコスト)を計算に際して、時間貸しの場合と月極め貸しの場合とで差をつけるようにデータ加工をした上で、価値算出を行って、当該差を反映した結果が出るようにする等が考えられる。
【0038】
上記のようなデータ処理部50におけるデータ処理を可能とするための準備として、すなわち、図3(A)~図3(C)に例示したような各種データに基づいて、図3(D)のような算出結果を提示するための手法として、例えば関数あるいはテーブルデータのようなものを用意して、必要な土地データ及びオープンデータの各値を入力する(インプットする)と、算出結果としての各値を出力する(アウトプット)ものにできる。
【0039】
特にここでは、かかるデータの算出を行う一例として、図5に示すように、学習済みモデルの作成を行って上記のような処理を行うために利用する場合について説明する。図示の一例は、教師付学習として、変遷履歴を含むオープンデータとともに、土地利用における実際の実情データを利用する。すなわち、各自治体においてこれまでに提供された地域ごとの犯罪率や災害等のデータと、当該地域に対応する価値算出すべき土地の近隣において実際に存在する駐車場について、どの程度の価格で運用がなされているかを示すデータや、駐車場についての不動産ファンドに関するデータ等を実情データとし、これに基づいて、図3(D)に例示した各種算出結果を得られるようにするための機械学習を行う。つまり、不動産ファンド等の情報をもつ土地データとこの土地データに対応する該当地域のオープンデータ(履歴含む)をインプットデータとした場合に、アウトプットデータが不動産ファンドに示される価値等に合致するようにデータ構造等を作成する。この際、学習手法としては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた深層学習に基づくデータ解析等の各種手法が適用可能である。
【0040】
データ処理部50では、上述のようにして得た学習済みモデルに基づき、オープンデータ編集部DEにおいて、データ加工等のデータ編集がなされ、価値算出部VCにおいて、土地利用の価値算出がなされる。この際、オープンデータ編集部DEにおいて、オープンデータの変遷履歴及び価値算出の対象となる土地の周辺における利用の実情データに基づく学習が行われる態様としてもよい。すなわち、オープンデータの変遷履歴から判明する地域ごとの治安や災害状況の変化や、実情データの変化つまり駐車場等についての価値に関する変化に応じて、学習を再度行い、オープンデータ編集部DEにおける編集内容を変化させるものとしてもよい。
【0041】
以下、図6として示すブロック図を参照して、土地利用価値算出システム500の概要をまとめる。まず、土地利用価値算出システム500のうち、土地データ受付部20において、土地のデータが受け付けられる。一方で、土地利用価値算出システム500のオープンデータ編集部DEは、各自治体MNα,…に保有されているオープンデータODα,…について、編集を行う。この上で、価値算出部VCは、土地データ受付部20で受け付けた土地のデータと、オープンデータ編集部DEで編集されたオープンデータとに基づき対象となっている土地について、利用価値の算出を行う。なお、この際、オープンデータ編集部DEにおけるデータ編集や、価値算出部VCについては、予め作成された学習済みモデルを利用することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態の土地利用価値算出システム500は、土地のデータを受け付ける土地データ受付部20と、オープンデータを編集するオープンデータ編集部DEと、土地データ受付部20で受け付けた土地のデータとオープンデータ編集部DEで編集されたオープンデータとに基づいて少なくとも駐車場としての土地利用価値を算出する価値算出部VCとを備える。上記土地利用価値算出システム500では、土地利用における経済的な価値として、少なくとも駐車場としての土地利用について、その価値を、オープンデータを利用して、簡易かつ的確に算出することができる。
【0043】
以下、図7等を参照して、一変形例の土地利用価値算出システムについて説明する。なお、データ処理の内容を除いて、上記した例と同様の構成であるので、各部の図示や説明については、省略する。
【0044】
図7は、一変形例の土地利用価値算出システムにおける価値算出に関する一例を示すデータ表であり、図3(D)に対応する図である。図3(D)に示す一例では、車両の駐車、より具体的には普通自動車の駐車に土地を利用する場合について価値算出を行う場合について示したが、これに限らず、図7に示すように、普通自動車の駐車に加え、自転車の駐輪に同じ土地を利用する場合について、併せて価値算出を行うようにしてもよい。
【0045】
このような種々の価値算出を利用して、土地利用を種々の観点から見ることも考えられる。例えば、図8(A)として示す概念的な斜視図では、土地利用における価値算出について、他の観点から見た場合の一例として、駅への通学・通勤に関してのシミュレーションの様子を示している。具体的には、図8(A)では、価値算出の対象となる土地Aが駅STの近くにあり、破線の矢印AA1,AA2で示すように、駅STからある程度離れたエリア(図示の例では、エリアAR1,AR2とする)から、駅STに向かう路線バスBU1,BU2が存在する場合が示されている。この場合において、実線の矢印BB1,BB2,CC1,CC2で示すように、土地Aを駐車場として利用した場合や駐輪場として利用し、自転車BC1,BC2や普通自動車VE1,VE2での通学通勤を可能にすることを考える。このような態様において、シミュレーションの結果として、図8(B)に、エリアAR1,AR2に住む通勤通学客の費用としての駐車代等と、バスBU1,BU2の定期代との比較結果が示されている。かかる情報を、土地利活用の判断材料として提供するものとしてもよい。
【0046】
〔その他〕
この発明は、上記の上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0047】
例えば、上記では、駐車場のみについて価値算出を行う場合や、駐車場に併せて駐輪場についても価値算出を行う場合を例示したが、これに限らず、さらに、種々の土地利用態様について、価値算出を行うものとしてもよい。
【0048】
また、上記では、データ編集や価値算出に際して、事前に機械学習による学習済みモデルを作成し、これを利用する態様としているが、上記以外にも、学習に関しては種々の態様とすることができ、さらに、事後的に学習を行って学習済みモデルを更新するものとしてもよい。例えば、土地Aについて土地利用価値算出システム500に基づく判定結果を利用して駐車場運営を行った地主LLaが、駐車場運営の実績を、学習材料として提供し、これに基づき新たな学習済みモデルを作成する、すなわちフィードバックを行うような態様としてもよい。
【0049】
また、取り扱うオープンデータについても、種々の態様とすることが考えられ、例えば取り扱うデータとしては、地域の安全性のように土地に関係するデータに限らず、一見すると関係しないと思われるようなデータを、学習材料として取り込むものとしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…オープンデータ取得部、20…土地データ受付部、50…データ処理部、70…データベース、100…情報処理部、500…土地利用価値算出システム、A,B,C…土地、AA1,AA2,BB1,BB2,CC1,CC2…矢印、AR1,AR2…エリア、BC1,BC2…自転車、BU1,BU2…路線バス、DE…オープンデータ編集部、LL,LLa,LLb,LLc…地主、MN,MNα,MNβ,MNγ…自治体、MSα,MSβ,MSγ…オープンデータ管理サーバー、ODα,ODβ,ODγ…オープンデータ、PF…価値算出プラットフォーム、ST…駅、SV…データ管理サーバー、TI…情報入力端末、UR…データ更新受付部、VC…価値算出部、VE1,VE2…普通自動車、α,β,γ…地区
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8