(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003889
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】テンター装置を用いたフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/20 20060101AFI20240109BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B29C55/20
B29C55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103221
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 かれん
(72)【発明者】
【氏名】奈良 充
(72)【発明者】
【氏名】市丸 雄大
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AR07
4F210AR12
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC05
4F210QD32
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL02
4F210QL13
4F210QL17
(57)【要約】
【課題】
本発明は、クリップカバーによってクリップ近傍の気流が整流されることにより、フィルムへのオイル飛散、および把持部分の熱量不足によるフィルムの過延伸を同時に軽減することができるフィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
フィルムの両端を把持する把持手段及び、フィルムに熱風を吹き付ける加熱手段を有するテンター装置を用いたフィルムの製造方法であって、前記把持手段が、クリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーを有するクリップチェーンを備えることを特徴とする、フィルムの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの両端を把持する把持手段、及びフィルムに熱風を吹き付ける加熱手段を有するテンター装置を用いたフィルムの製造方法であって、前記把持手段が、クリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーを有するクリップチェーンを備えることを特徴とする、フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記クリップカバーの少なくとも一部の形状が波板形状であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記クリップカバーが、フィルム面とのなす角が50°以上90°以下である複数の板状体を有することを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記クリップカバーの先端とフィルムとの距離が20mm以上40mm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムを横延伸するためのテンター装置においてフィルムへのオイル飛散、および把持部分の熱量不足によるフィルムの過延伸を同時に軽減することが出来るフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムは、耐熱性や生産性に優れているため、光学用途、離型フィルム、ドライフィルムレジスト用途、プリンターリボン用途等に広く使用されている。近年は、IT分野の成長に伴い、ディスプレイ用の反射防止フィルム、液晶用バックライト用拡散板、タッチパネルなどの基材や光ディスプレイ及び液晶位相差板、偏光板など光学用部材の工程紙や離型フィルムなど、光学用途での使用が増加している。このような用途でフィルムに要求される品質として、例えば、フィルム表面のオイルやオリゴマなどの付着異物低減、内部異物欠点の低減、及びフィルム表面キズの低減などが挙げられる。
【0003】
二軸延伸フィルムを製造する際には、一般にテンター装置を用いる。このテンター装置は、通常、フィルムの両端を把持する把持手段、フィルムに熱風を吹き付ける加熱手段、および把持手段にオイルを供給するオイル供給手段を有している。また、把持手段は、フィルムを把持するクリップチェーン、クリップカバー、クリップが走行するレール、およびクリップを駆動させる動力を有している。このようなテンター装置においては、オイル供給手段より供給されたオイルが把持手段から走行中のフィルムに飛散し、オイル欠点となるというトラブルや、把持手段による把持部分におけるフィルムの過延伸が問題となってきた。
【0004】
このような問題を解決するための方法として、特許文献1には、把持手段の一部若しくは全部に、熱風からクリップチェーンを保護するための把持経路カバー手段を取り付ける方法が開示されている。特許文献2には、オイル飛散を防止する把持経路カバー内の気圧をフィルムが通過する部分より低く設定することにより、延伸工程でのフィルム破断を防止するフィルムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-30185号公報
【特許文献2】特開2000-254966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、クリップチェーンが走行する把持経路の一部若しくは全部が熱風からクリップチェーンを保護する把持経路カバーおよび排気手段を有することで、オイルミストが把持経路カバーの外に出てくることが少なくなり、結果、よりオイル欠点の少ないフィルムを製造することが可能になった。しかしながら、クリップチェーンに熱風が当たらないことでフィルム把持部分の温度が上がらず、把持部分の内側が過延伸されてフィルムが破断するという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の方法では、フィルムへのオイル飛散を防止する把持経路カバー内の気圧をフィルム走行部分より低く設定することで、クリップ近傍のフィルム端部の温度が安定し、延伸時におけるフィルムの破断軽減が可能になった。しかしながら、カバー内の気圧の調整はカバー内のクリップチェーン冷却用の空気の給排気によって行うため、過延伸が生じないように都度調整することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決し、テンター装置においてフィルムへのオイル付着、および把持部分の熱量不足によるフィルムの過延伸を同時に軽減することができるフィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下である。
(1) フィルムの両端を把持する把持手段、及びフィルムに熱風を吹き付ける加熱手段を有するテンター装置を用いたフィルムの製造方法であって、前記把持手段が、クリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーを有するクリップチェーンを備えることを特徴とする、フィルムの製造方法。
(2) 前記クリップカバーの少なくとも一部の形状が波板形状であることを特徴とする、(1)に記載のフィルムの製造方法。
(3) 前記クリップカバーが、フィルム面とのなす角が50°以上90°以下 である複数の板状体を有することを特徴とする、(1)に記載のフィルムの製造方法。
(4) 前記クリップカバーの先端とフィルムとの距離が20mm以上40mm以下であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリップカバーによってクリップ近傍の気流が整流されることにより、走行中のフィルムへのオイル飛散、および把持部分の熱量不足によるフィルムの過延伸を同時に軽減することが可能な、フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のフィルムの製造方法で使用することができるテンター装置における把持手段の第一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明のフィルムの製造方法で使用することができるテンター装置における把持手段の第一例を示す概略平面図である。
【
図3】本発明のフィルムの製造方法で使用することができるテンター装置における把持手段の第二例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明のフィルムの製造方法で使用することができるテンター装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフィルムの製造方法について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明のフィルムの製造方法は、フィルムの両端を把持する把持手段、及びフィルムに熱風を吹き付ける加熱手段を有するテンター装置を用いたフィルムの製造方法であって、前記把持手段が、クリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーを有するクリップチェーンを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のフィルムの製造方法で用いるテンター装置は、フィルムの両端を把持する把持手段を備え、当該把持手段はクリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーを有するクリップチェーンを備える。なお、ここで「フィルムの両端」とは、フィルムの幅方向の両端部をいい、幅方向とは製造工程中でフィルムが走行する方向(流れ方向、又は長手方向ということがある。)にフィルム面内で直交する方向をいう。このような把持手段の構成は、幅方向両端部を把持できるものであれば特に限定されないが、例えば、クリップカバーの少なくとも一部の形状が波板形状であるものや、クリップカバーが、フィルム面とのなす角が50°以上90°以下である複数の板状体を有するものが好ましい例としてあげられる。
【0014】
クリップカバーの少なくとも一部の形状が波板形状である例について、
図1、2を用いて説明する。
図1、2に示す把持手段は、フィルム4を把持するクリップ1、それを覆うクリップカバー2から構成されており、クリップカバー2の一部が波板形状となっている(波板形状の部分は符号3で示す。)。
図2は
図1の把持手段の概略上面図である。
図1、2に示す態様において、クリップカバー2の波板形状部3は、フィルム4の厚み方向から幅方向側に90°-θ°傾いた方向に波板の流れ方向が平行となり、かつフィルム4の流れ方向が波板の幅方向と平行になるように設置されている。ここでフィルムの厚み方向とは、フィルム面に垂直な方向をいい、波板の流れ方向とは波板形状部の波(溝部)の向きと平行な方向をいう。また、
図1に示す角度θはフィルム4と波板形状部3のなす角である。このような態様とすることで、テンター上部から吹く熱風が波板の流れ方向に沿ってクリップ1のフィルム把持部分に流れるため、クリップ1の近傍の温度が上昇し、把持部近傍でのフィルムの過延伸が軽減される。
【0015】
次いで、クリップカバーが、フィルム面とのなす角が50°以上90°以下である複数の板状体を有する態様について、
図3を用いて説明する。
図3に示す把持手段は、クリップ1と、それを覆うクリップカバー2から構成されており、クリップカバー2の一部が複数の板状体となっている(複数の板状体の部分は符号5で示す。
図3の態様では板状体は2枚であるが、3枚以上とすることもできる。)。複数の板状体は、
図2に示すようにフィルム4の部分以外を覆うクリップカバー2の一部にもう1枚の板を設ける形で形成しても、フィルム4の部分とその上部以外を覆う部分とは別に複数の板からなる部材を設ける形で形成してもよい。
【0016】
複数の板状体5とフィルム4との角度θ’は50°以上90°以下である。複数の板状体5は各板が互いに平行になるように設けることが好ましいが、異なる角度で取り付けてもよい。なお、複数の板状体がそれぞれフィルムとの角度が異なるように取り付けられている場合は、複数の板状体のうち少なくとも一つについて、フィルム4との角度θ’が50°以上90°以下であれば「フィルム面とのなす角が50°以上90°以下である複数の板状体を有する」とみなすことができる。
【0017】
フィルム面と複数の板状体とのなす角が50°未満であると、複数の板状体の上部から過剰に熱風を取り入れるためテンター内部の熱量が不足する。その結果、十分な熱量を持った把持部分近傍でのみ過延伸が生じ、フィルムが破断することがある。一方、フィルム面と複数の板状体とのなす角が90°を超えると、複数の板状体に沿って流れる熱風がクリップカバーの内側に流れにくくなる。その結果、フィルム把持部分の温度が上がらず、把持部分よりも内側で過延伸が生じ、フィルムが破断することがある。上記観点から、本発明のフィルムの製造方法においては、フィルム面とのなす角が60°以上80°以下である複数の板状体を有することがより好ましい。
【0018】
本発明のフィルムの製造方法で用いるテンター装置は、フィルムに熱風を吹き付ける加熱手段を有する。このような手段を有することで、フィルムを延伸に適した温度に調整したり、延伸後のフィルムを高温で熱固定することが出来る。
【0019】
以下、本発明のフィルムの製造方法で用いるテンター装置について、図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明のフィルムの製造方法で使用することができるテンター装置の概略平面図である。
図4においてフィルム4は、テンター装置6の入り口で複数のクリップ1(個々のクリップは図示せず、クリップチェーン全体を図示する。)によって幅方向両端部を把持され、テンター装置6の予熱ゾーン7に送られる。フィルム4は、予熱ゾーン7で所定の温度の熱風を吹き付けられて加熱された後、延伸ゾーン8で、延伸に適した温度の熱風により加熱された上で延伸される。その後、フィルム4は、熱固定ゾーン9で熱固定に適した温度の熱風を吹き付けられて熱固定される。熱固定がなされたフィルム4は、さらに冷却ゾーン(図示しない)で所定の温度に冷却されてテンター装置6の外に排出され、クリップ1による把持から解放される。
【0020】
クリップ1はクリップチェーンに複数連結されて存在し、テンター装置6の入り口から出口までの区間においてクリップカバー2に覆われている。一つのクリップ1に着目すると、クリップ1はテンター装置6の入り口でフィルムを把持し、テンター装置6内の把持経路の複数の屈曲部を通って出口でフィルム4を開放し、テンター装置6の外側のリターン経路を通って入口に戻る。この動きは、クリップチェーンの駆動により繰り返される。
【0021】
また、リターン経路(クリップ1がフィルム4を離した後、入り口に戻るまでの区間)においても、クリップ1に外の空気が当たらないようにカバー手段を有することが望ましい。リターン経路のカバー手段は、フィルム4を把持するためのスペースが不要なため、密閉系でかつ断熱し、冷却用冷風の供給手段と排気手段とを有していることが望ましい。
【0022】
テンター装置6内の把持経路もクリップ1からオイルが飛散しないようにクリップカバー2を有する。クリップカバー2は、例えば
図1~3に示すように、フィルム4把持部分近傍の気流を整流する構造であることが望ましい。フィルムを把持しているために密閉系にはできないが、クリップカバーの先端とフィルムとの距離(d(
図1,2)、d’(
図3))が20mm以上40mm以下であることが好ましい。クリップカバーの先端とフィルムとの距離d、d’が20mm以下であると、フィルムがクリップカバーと接触し、フィルムに擦り傷が発生する可能性がある。クリップカバーの先端とフィルムとの距離d、d’が40mm以上であると、クリップチェーンからオイルが飛散し、フィルムにオイル由来の欠点が発生する可能性がある。
【0023】
クリップカバーを有していないクリップを備えるテンター装置でフィルムを製造した場合、クリップチェーンのベアリングに供給されたオイルがベアリングの遠心力などにより吹き飛ばされてフィルムに付着し、オイル由来の欠点を生じることがある。また、従来のオイル飛散防止カバーを有するテンター装置でフィルムを製造した場合、ベアリングに供給されたオイルの付着は軽減できるものの、フィルム把持部分の内側が過延伸されて白化し、フィルムが破断することがある。本発明のフィルムの製造方法では、ベアリングに供給されたオイル付着と、フィルム把持部分の内側の白化によるフィルム破断の両方を軽減することができる。
【0024】
本発明のフィルムの製造方法におけるフィルムを構成する樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、芳香族ナイロン、アラミド等のポリアミド系樹脂、その他ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステルエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂などを単独で又は組み合わせて用いることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アラミド、ポリイミド系樹脂を用いることが好ましい。なお、各種樹脂は本発明の効果やフィルムとしての性能を損なわない範囲で、分子鎖中に共重合成分を含んでいてもよく、また、帯電防止剤、耐候剤、無機又は有機の粒子、ワックス等の潤滑剤、顔料等の添加剤を含んでもよい。
【0025】
以下、本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを例に挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の態様に限定されない。
【0026】
PETを100℃~170℃で8時間減圧乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給して240℃~310℃で溶融押出しを行い、5μm以上の捕集効率が95%以上の高精度フィルタでろ過する。続いて、得られた溶融PETを、280℃~300℃に保ったスリットダイよりシート状に押し出し、静電印可キャスト法を用いて表面温度20℃~30℃のキャスティングロール上で冷却固化して未延伸フィルムを得る。この未延伸フィルムを、60℃~150℃に加熱したロールとラジエーションヒーターで60℃~160℃まで加熱し、長手方向に3倍~5倍に延伸して一軸延伸フィルムとする。続いて、テンター装置へ得られた一軸延伸フィルムを搬送して、90℃~130℃で幅方向に3倍~5倍に延伸し、90℃~240℃で熱処理を行った後、弛緩処理を行い、搬送工程で冷却して二軸延伸フィルムを得る。その後、巻取り速度75m/分~250m/分、巻取り張力40N/m~790N/mの条件で二軸延伸フィルムを巻き取ってフィルムロールを得る。
【0027】
なお、テンター装置は、フィルムの両端を把持する把持手段及び、フィルムに熱風を吹き付ける加熱手段を有しており、把持手段が、クリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーを有するクリップチェーンを備えるものを使用する。
【0028】
クリップ近傍の気流を整流することのできるクリップカバーとしては、例えば、クリップカバーの少なくとも一部の形状が波板形状であるものや、フィルム面とのなす角が50°以上90°以下である複数の板状体を有するものを好適に用いることができる。
【実施例0029】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されない。なお、実施例中に示す各評価は、以下に示す方法、条件で行った。
【0030】
(評価方法)
(1)オイル飛散
得られたフィルムロールよりフィルムを1000m巻き出し、オイル欠点の有無を反射検査機(ヒューテック社製“MaxEye.AQuO”(登録商標)2)で検査し、以下の基準により評価した。
〇:フィルムの長さ1000mを検査した結果、フィルムのオイル欠点が確認できなかった。
△:フィルムの長さ1000mを検査した結果、フィルムのオイル欠点を1~4個発見した。
×:フィルムの長さ1000mを検査した結果、フィルムのオイル欠点を5個以上発見した。
【0031】
(2)フィルム端部の白化
得られたフィルムロールよりフィルムを100m巻き出し、フィルムの幅方向端部の過延伸による白化状態を目視により観察し、以下の基準により評価した。
〇:フィルムの幅方向端部に白化が確認できなかった。
△:フィルムの幅方向端部に幅3mm以上5mm以下の白化を発見した。
×:フィルムの幅方向端部に幅5mm以上の白化を発見した。
【0032】
(3)幅方向端部の白化を起点とするフィルム破断
白化部分を起点とするフィルム破断の状況を目視により確認し、以下の基準により評価した。
〇:白化自体が発生しなかった。あるいは白化部分を起点とするフィルム破断が、生産開始より48時間以上にわたって発生しなかった。
×:白化部分を起点とするフィルム破断が、生産開始より48時間に達する前に発生した。
【0033】
(4)クリップカバーとフィルムとの擦過による傷
得られたフィルムロールよりフィルムを100m巻き出し、クリップカバーにフィルムが接触することにより発生する擦り傷の発生状況を目視により確認し、以下の基準により評価した。
〇:クリップカバーへの接触によるフィルムの擦り傷が確認できなかった。
×:クリップカバーへの接触によるフィルムの擦り傷を発見した。
【0034】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)を160℃で8時間減圧乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給して275℃で溶融押出しを行い、5μm以上の捕集効率95%の高精度フィルタでろ過した。続いて、得られた溶融PETを、285℃に保ったスリットダイよりシート状に押し出し、静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングロール状で冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、103℃に加熱したロールとラジエーションヒーターで105℃まで加熱し、長手方向に4.3倍に延伸して一軸延伸フィルムとした。続いて、
図4に示すテンター装置へ得られた一軸延伸フィルムを搬送して、110℃で幅方向に4.4倍に延伸し、210℃で熱処理を行った後、弛緩処理を行い、搬送工程で冷却して二軸延伸フィルムを得た。その後、巻取り速度200m/分、巻取り張力150N/mの条件で二軸延伸フィルムを巻き取ってフィルムロールを得た。得られたフィルムロール、および白化を起点とするフィルム破断の評価結果を表1に示す。なお、テンター装置におけるクリップカバーは、
図1、2に示すように一部が波板形状であり、波板形状部分とフィルムとの角度θ、クリップカバーの先端とフィルムとの距離dが、それぞれ70°、20mmであるものを使用した。
【0035】
(実施例2~7、比較例1~2)
クリップカバー条件を表1のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムロールを得た。得られたフィルムロール、および白化を起点とするフィルム破断の評価結果を表1に示す。なお、実施例2、6、7のクリップカバーは
図1、2に示す態様のもの、実施例3~5のクリップカバーは
図3に示す態様のもの、比較例1のクリップカバーは
図3の態様において、複数の板状体で形成される部分を1枚の板状体としたものを使用した(いずれもフィルムとの角度θ、θ’やフィルムとの距離d、d’は表1のとおりに設定。)。また、比較例2はクリップカバーのついていないテンター装置でフィルムを製造した。
【0036】
本発明により、本発明はフィルムを横延伸するためのテンター装置においてフィルムへのオイル飛散、およびフィルム把持部分の熱量不足によるフィルムの過延伸を同時に軽減することが出来るフィルムの製造方法を提供することができる。本発明のフィルムの製造方法により得られたフィルムは、オイル欠点や過延伸による白化が少なく加工しやすいため、光学用途、離型用途、ドライフィルムレジスト用途、プリンターリボン用途等に好適に用いることができる。