(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038896
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】壁紙裏打ち紙
(51)【国際特許分類】
D21H 27/20 20060101AFI20240313BHJP
D21H 17/60 20060101ALI20240313BHJP
D21H 17/68 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
D21H27/20 Z
D21H17/60
D21H17/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143242
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AF16
4L055AG08
4L055AG12
4L055AG27
4L055AG40
4L055AG47
4L055AG51
4L055AG63
4L055AG71
4L055AG84
4L055AG87
4L055AG89
4L055AH01
4L055AH09
4L055AH10
4L055AH13
4L055AH16
4L055AH17
4L055EA32
4L055FA12
4L055FA13
4L055FA20
4L055FA30
4L055GA23
(57)【要約】
【課題】製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生が無く、使用後のピールアップ性が良く、隠ぺい性に優れる及び湿潤強度を有する壁紙裏打ち紙を提供することである。
【解決手段】課題は、木材パルプ、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックスを少なくとも含む基紙と、前記基紙に対して付与された表面サイズ剤とを含有し、前記填料が焼成カオリンを少なくとも含み、前記ポリエチレンワックスが酸化ポリエチレンワックスを少なくとも含む壁紙裏打ち紙によって、解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプ、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックスを少なくとも含む基紙と、前記基紙に対して付与された表面サイズ剤とを含有し、前記填料が焼成カオリンを少なくとも含み、前記ポリエチレンワックスが酸化ポリエチレンワックスを少なくとも含む壁紙裏打ち紙。
【請求項2】
前記焼成カオリンが、填料全体に対して66質量%以上94質量%以下である請求項1に記載の壁紙裏打ち紙。
【請求項3】
前記表面サイズ剤が、澱粉類及びスチレンアクリル系樹脂を少なくとも含む請求項1又は2に記載の壁紙裏打ち紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を材料とする壁紙裏打ち材の基材となる壁紙裏打ち紙に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂又はオレフィン樹脂などの樹脂を材料とする壁紙は、基材になる壁紙裏打ち紙の表面に樹脂を含む液体を塗工及び乾燥して、又は壁紙用裏打ち紙の表面に対して塩化ビニル樹脂又はオレフィン樹脂などから成る合成樹脂層を積層して、形成される。その後、壁紙は、必要に応じてエンボス加工乃至印刷などによって意匠性が付与される。壁紙の壁への施工は、澱粉、酢酸ビニルエマルジョン及びメチルセルロースなどの水溶性の糊を壁紙裏打ち紙の裏面及び/又は壁面に塗工してから、ベニヤ板、石膏ボード及びコンクリートなどの壁に壁紙を貼り付けて行う。
【0003】
糊を壁紙裏打ち紙の裏面に塗工する及び/又は糊を壁面に塗工してから壁紙裏打ち紙を貼り付けると、糊に含まれる水分が壁紙裏打ち紙に吸収される。水分によって、壁紙裏打ち紙が軟化及び/又は伸長などして、結果、壁紙裏打ち紙の湿潤強度が低下する場合がある。湿潤強度の低下は、壁紙の破損及び壁紙貼りの作業性の低下をもたらす。
【0004】
また、壁紙裏打ち紙には、隠ぺい性が必要である。壁紙裏打ち紙の隠ぺい性が不十分であると、壁面に壁紙を施工した場合の壁紙の表面には、壁面の色又は模様が反映される。この現象は、壁紙の風合いを損ねる。よって、壁紙裏打ち紙には、実用的に十分な隠ぺい性が必要である。
【0005】
また、従来から例えば、国内の内装材としての壁紙は、日本工業規格JIS A6922:2010「壁紙施工用及び建具用でん粉系接着剤」に準じて澱粉系接着剤を使用して石膏ボードなどの壁面に貼る施工方法が一般的である。内装のリフォームなどを実施する際には、既存の壁紙を剥離する必要がある。壁紙裏打ち紙は、剥離作業を容易にするために剥がす際に層間で剥離して、その片割れが壁面に薄層で残る、いわゆるピールアップ性を有する。壁紙裏打ち紙のピールアップ性が良くない場合は、壁面を均一化する作業が要求され、作業性が悪化する。
【0006】
また、壁紙裏打ち紙には、壁紙用裏打ち紙の表面に対して樹脂を含む液体を塗工及び乾燥する又は塩化ビニル樹脂又はオレフィン樹脂などから成る合成樹脂層を積層するため、形成した樹脂の表面に凹凸が発生しないように高い平滑性が必要である。しかしながら、壁紙裏打ち紙は、高い平滑性を付与しようとすると製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類などに壁紙裏打ち紙の成分が付着して、結果としてロール汚れを発生する場合がある。
【0007】
壁紙に用いた時のピールアップ性、表面の毛羽立ち抑制、寸法安定性、隠ぺい性及び発泡性に優れる壁紙裏打ち紙が存在する。例えば、ワイヤーパートのオントップ型フォーマとヤンキードライヤーとを備えた抄紙機を用い、原料パルプ及び填料を主原料とし、原料パルプ中に機械パルプを5~65質量%含有、前記原料パルプのフリーネスが400cc以上、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤及びサイズ剤を含有、前記ヤンキードライヤーへの接触面である乾燥面のJIS-P8119に準じた平滑度が30~60秒、並びにJAPANTAPPI No.18-2に規定されるインターナルボンドテスタ法により測定したZ軸方向の層間強度が縦方向及び横方向のいずれにおいても40~90mJであることを特徴とする壁紙用裏打ち紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の状況から、本発明の目的は、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生が無く、使用後のピールアップ性が良く、隠ぺい性に優れる、及び湿潤強度を有する壁紙裏打ち紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の目的は、以下によって達成される。
【0011】
[1]木材パルプ、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックスを少なくとも含む基紙と、前記基紙に対して付与された表面サイズ剤とを含有し、前記填料が焼成カオリンを少なくとも含み、前記ポリエチレンワックスが酸化ポリエチレンワックスを少なくとも含む壁紙裏打ち紙。
【0012】
[2]上記焼成カオリンが、填料全体に対して66質量%以上94質量%以下である上記[1]に記載の壁紙裏打ち紙。
【0013】
[3]上記表面サイズ剤が、澱粉類及びスチレンアクリル系樹脂を少なくとも含む上記[1]又は[2]に記載の壁紙裏打ち紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生が無く、使用後のピールアップ性が良く、隠ぺい性に優れる、及び湿潤強度を有する壁紙裏打ち紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
壁紙裏打ち紙を構成する基紙は、木材パルプ、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックスを少なくとも含有する。
【0016】
基紙は、木材パルプと、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックス、並びに必要に応じてサイズ剤、歩留り向上剤、定着剤、バインダー、濾水性向上剤、カチオン性樹脂及び多価陽イオン塩などのカチオン化剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤及び耐水化剤などの製紙分野で従来公知の添加剤から成る群から選ばれる一種又は二種以上を配合した紙料を抄造して得ることができる。
【0017】
抄造は、紙料を酸性、中性又はアルカリ性に調整して、従来公知の抄紙機を用いて行われる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機及びヤンキー抄紙機などを挙げることができる。
【0018】
基紙は、カレンダー処理を施すことができる。カレンダー処理は、後記するサイズプレスの前及び/又は後のいずれでもよい。カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性及び厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置としては、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー及びマルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
【0019】
上記木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプの例としては、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、BCTMP(Bleached ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などの機械パルプ、DIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプ、及び製紙工場で発生する損紙(Spoilage)から離解して成るパルプを挙げることができる。木材としては、例えば、針葉樹及び広葉樹を挙げることができる。木材パルプは、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0020】
上記填料は、製紙分野で従来公知のものである。填料の例としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、活性白土、珪藻土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムなどの白色無機顔料、並びにスチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン系プラスチックピグメント、マイクロカプセル、尿素樹脂粒子及びメラミン樹脂粒子などの白色有機顔料を挙げることができる。填料は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0021】
上記填料は、カオリンの一種である焼成カオリンを少なくとも含む。焼成カオリンは、従来公知の種々製造方法によって得ることができる。本発明の焼成カオリンは製造方法を限定しない。焼成カオリンは、カオリナイトを約650℃~700℃の温度で焼成して得られる部分焼成カオリンと、カオリナイトを1000℃~1050℃で焼成して得られる完全焼成カオリンとに大別でき、いずれであってもよい。壁紙裏打ち紙は、焼成カオリンを含まないと、隠ぺい性、ピールアップ性及び湿潤強度が悪化する。
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、填料の含有量が壁紙裏打ち紙中の木材パルプ1000質量部に対して300質量部以上500質量部以下である。
また、いくつかの実施態様において、焼成カオリンは、焼成カオリンを含め壁紙裏打ち紙中の填料全体に対して66質量%以上94質量%以下である。この理由は、隠ぺい性、ピールアップ性及び湿潤強度が良化するからである。
【0022】
上記湿潤紙力剤は、製紙分野で従来公知のものである。湿潤紙力剤の例としては、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、メラミンホルムアルデヒド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂及びポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂などを含むポリアミドとエピハロヒドリンとが反応して得られる分子内にエポキシ基を有するポリアミドエポキシ系樹脂などを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、湿潤紙力剤の含有量が壁紙裏打ち紙中の木材パルプ1000質量部に対して7質量部以上27質量部以下である。この理由は、ピールアップ性及び湿潤強度が良化するからである。
【0023】
いくつかの実施態様において、上記湿潤紙力剤は、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂を少なくとも含む。ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂は、ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとを反応して得られる樹脂である。少なくとも一つの実施態様において、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂は、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂を含め壁紙裏打ち紙中の湿潤紙力剤全体に対して50質量%以上である。これらの理由は、湿潤強度が良化するからである。
【0024】
ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂のエピハロヒドリンは、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリンなどを挙げることができる。工業的に入手し易さの観点から、エピクロルヒドリンが好ましい。
ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂のポリアミドポリアミンは、例えば、ジカルボン酸類とポリアルキレンポリアミン類との重縮合物を挙げることができる。ジカルボン酸類は、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル及びジカルボン酸無水物から選ばれる一種又は二種以上である。ジカルボン酸は、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、並びにジカルボン酸類のナトリウム又はカリウムなどの塩などを挙げることができる。ジカルボン酸エステルはこれらのエステルであり、ジカルボン酸無水物はこれらの無水物である。ジカルボン酸類としては、異なる二種以上のジカルボン酸類を併用して用いることができる。前記ポリアルキレンポリアミン類は、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどを挙げることができる。ポリアルキレンポリアミン類としては、異なる二種以上のポリアルキレンポリアミン類を併用して用いることができる。
【0025】
上記重縮合反応においては、例えば、アミノカルボン酸類又はジアミン類を併用することができる。アミノカルボン酸類は、例えば、グリシン、アラニン及びアミノカプロン酸などのアミノカルボン酸、及びそのエステル、並びにカプロラクタムなどのラクタム類を挙げることができる。ジアミン類は、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン及び1,4-ブタンジアミンなどを挙げることができる。重縮合反応は、例えば、常圧下又は減圧下にて約50℃以上250℃以下の温度で反応し、生成する水又はアルコールを系外に除去する方法などを挙げることができる。
【0026】
次に、得られたポリアミドポリアミンは、エピハロヒドリンとの反応に供される。ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応は、例えば、樹脂分濃度約10質量%以上70質量%以下の水溶液中で行われる。ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応は、通常、10℃以上80℃以下で行われる。
ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂は、例えば、星光PMC社、田岡化学工業社及び荒川化学工業社などから市販される。
【0027】
上記乾燥紙力剤は、製紙分野で従来公知のものである。乾燥紙力剤の例としては、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂及び両性ポリアクリルアミド樹脂のポリアクリルアミド系樹脂、カチオン化澱粉、ジアルデヒド澱粉、並びに植物ガムなどを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、乾燥紙力剤の含有量が壁紙裏打ち紙中の木材パルプ1000質量部に対して8質量部以上18質量部以下である。この理由は、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生を防止及び湿潤強度が良化するからである。
【0028】
いくつかの実施態様において、上記乾燥紙力剤は、ポリアクリルアミド系樹脂を少なくとも含む。ポリアクリルアミド系樹脂は、主単量体としてアクリルアミド(CH2=CHCONH2)が重合して得られる樹脂である。少なくとも一つの実施態様において、ポリアクリルアミド系樹脂は、ポリアクリルアミド系樹脂を含め壁紙裏打ち紙中の乾燥紙力剤全体に対して50質量%以上である。これらの理由は、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生の防止及び湿潤強度が良化するからである。
【0029】
ポリアクリルアミド系樹脂は、主単量体としてアクリルアミド(CH2=CHCONH2)が重合して得られる樹脂であって、アクリルアミドが単独重合した樹脂又はアクリルアミドと共重合できる他の単量体とが共重合した樹脂である。ここで、主単量体としてアクリルアミドが重合して得られるポリアクリルアミド系樹脂は、単量体としてアクリルアミドを分子中50mol%以上含有する樹脂である。
【0030】
アクリルアミドと共重合できる他の単量体は、例えば、N-メチルアクリルアミドなどのアルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのジアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド及びジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド及びN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドなどのヒドロキシアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミドなどのアルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミドなどのジアルキルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド及びN-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミドなどのヒドロキシアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミドを挙げることができる。
さらにアクリルアミドと共重合できる他の単量体は、例えば、α,β-不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸エステル、シアン化ビニル系単量体などのビニル系単量体及びオレフィン系単量体を挙げることができる。
前記シアン化ビニル系単量体は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-ヒドロキシエチルアクリロニトリル、クロロアクリロニトリルなどを挙げることができる。前記α、β-不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸などを挙げることができる。前記不飽和カルボン酸無水物は、例えば、無水マレイン酸及びイタコン酸無水物などを挙げることができる。前記不飽和カルボン酸エステルは、例えば、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルなどを挙げることができる。前記ビニル系単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル及び酢酸ビニルなどを挙げることができる。前記オレフィン系単量体は、例えば、エチレン及びプロピレンなどを挙げることができる。
アクリルアミドと共重合できる他の単量体は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0031】
ポリアクリルアミド系樹脂は、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合、分散重合及び乳化重合などの従来公知の重合方法によって製造できる。
ポリアクリルアミド樹脂は、例えば、星光PMC社及びハリマ化成社などから市販される。
【0032】
いくつかの実施態様において、基紙は、サイズ剤を含有する。前記サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。サイズ剤の例としては、ロジン、石油樹脂サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸及び無水ステアリン酸などを挙げることができる。少なくとも1つの実施態様において、サイズ剤は、アルキルケテンダイマーである。この理由は、アルキルケテンダイマーが化学構造にラクトン環を有してセルロースと化学反応するために、サイズ性だけでなく紙の強度にも効果があるからである。
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、サイズ剤の含有量が壁紙裏打ち紙中の木材パルプ1000質量部に対して1質量部以上5質量部以下である。
【0033】
いくつかの実施態様において、基紙は、歩留り向上剤を含有する。前記歩留り向上剤は、製紙分野で従来公知のものである。歩留り向上剤の例としては、硫酸アルミニウムなどの無機塩類、ポリエチレンイミン、ポリアミド及びポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。少なくとも1つの実施態様において、歩留り向上剤は、硫酸アルミニウムである。この理由は、硫酸アルミニウムがアルミニウムイオンに起因する高い凝結能を有するために、歩留り向上だけでなく紙の強度にも効果があるからである。
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、歩留り向上剤の含有量が壁紙裏打ち紙中の木材パルプ1000質量部に対して1質量部以上9質量部以下である。
【0034】
上記ポリエチレンワックスは、製紙分野で潤滑剤として従来公知であって、重合体中にエチレン単量体を含んで成るワックスをいう。ポリエチレンワックスの種類は、例えば、低密度ポリエチレンワックス(重合タイプ及び分解タイプ)、中密度ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、前記各種密度ポリエチレンワックスの酸化物(酸化ポリエチレンワックス)、前記各種密度ポリエチレンワックスの酸変性物(酸変性ポリエチレンワックス)などの変性物(変性ポリエチレンワックス)、並びに乳化剤を用いたこれらのエマルションを挙げることができる。前記エマルションとしては、乳化剤の種類によってアニオン性ポリエチレンワックス、カチオン性ポリエチレンワックス及びノニオン性ポリエチレンワックスが存在する。
【0035】
ポリエチレンワックスは、従来公知の製法で得ることができ、例えば、下記の5つの方法がある。
(1)エチレンのラジカル触媒により高温高圧下で重合する方法、
(2)チーグラー触媒により低圧で重合する方法。
(3)一般成形用ポリエチレンを熱分解により低分子化する方法。
(4)一般成形用ポリエチレンを製造する際に副生する低分子量ポリエチレンを
分離精製して利用する方法。
(5)一般成形用ポリエチレンを酸化する方法。
また、ポリエチレンワックスは、例えば、三井化学社、ベーカーペトロライト社、近代化学工業社、東邦化学工業社、明成化学工業社、Shamrock社、ビックケミー・ジャパン社、Keimadditec社、サンノプコ社及びBYK社などから市販される。
【0036】
上記ポリエチレンワックスは、酸化ポリエチレンワックスを少なくとも含む。酸化ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックスを酸化処理して極性基を導入したワックスである。また、酸化ポリエチレンワックスには、乳化剤を用いたアニオン性ポリエチレンワックス、カチオン性ポリエチレンワックス及びノニオン性ポリエチレンワックスが存在する。前記酸化処理は、例えば、空気酸化及びオゾン酸化などを挙げることができる。前記極性基は、例えば、カルボキシ基、水酸基、ホルミル基及びアルコキシ基などを挙げることができる。壁紙裏打ち紙は、酸化ポリエチレンワックスを含まないと、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生を防止及びピールアップ性が悪化する。
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、ポリエチレンワックスの含有量が壁紙裏打ち紙中の木材パルプ1000質量部に対して0.5質量部以上3質量部以下である。また、少なくとも一つの実施態様において、酸化ポリエチレンワックスは、酸化ポリエチレンワックスを含め壁紙裏打ち紙中のポリエチレンワックス全体に対して70質量%以上である。これらの理由は、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生を防止及びピールアップ性が良化するからである。
【0037】
壁紙裏打ち紙は、上記基紙に対して表面サイズ剤を付与して成る。基紙に対して表面サイズ剤を付与することによって壁紙裏打ち紙は表面サイズ剤を含有する。表面サイズ剤の例としては、ポリビニルアルコール及びその変性物、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類及びその変性物、アクリルアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリロニトリル酢酸ビニルアクリル酸エステル系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、オレフィンマレイン酸系樹脂、並びに澱粉類などを挙げることができる。澱粉類には、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉及びそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉など各種変性澱粉が含まれる。
いくつかの実施態様において、表面サイズ剤の含有量は、基紙の片面あたり乾燥固形分として1.05g/m2以上6g/m2以下である。また、いくつかの実施態様において、前記表面サイズ剤は澱粉類及びスチレンアクリル系樹脂を少なくとも含む。また、少なくとも一つの実施態様において、表面サイズ剤として澱粉類の含有量が乾燥固形分として基紙の片面あたり1g/m2以上5g/m2以下かつ表面サイズ剤としてスチレンアクリル系樹脂の含有量が乾燥固形分として基紙の片面あたり0.05g/m2以上1g/m2以下である。これらの理由は、湿潤強度が良化するからである。
【0038】
澱粉類は、製紙分野で従来公知のものである。澱粉類は、グルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類、及びグルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類においてグルコースが有する水酸基を種々置換基によって変性した多糖類である。澱粉類の例としては、澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉、ジアルデヒド澱粉、燐酸エステル化澱粉及び尿素燐酸エステル化澱粉などのエステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、並びにヒドロキシブチル化澱粉などを挙げることができる。
【0039】
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体(アクリロイル骨格又はメタクリロイル骨格を有する単量体)とを少なくとも共重合した樹脂である。ここで、スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体及びアクリル系単量体の合計が分子中50mol%以上含有する樹脂である。
【0040】
スチレン系単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン及び4-エチルスチレンなどのアルキル置換スチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン及び4-クロロスチレンなどのハロゲン置換スチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができる。スチレン系単量体は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0041】
アクリル系単量体は、例えば、メタクリル酸及びその塩、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル、並びにアクリル酸エステルを挙げることができる。
メタクリル酸エステルは、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸n-ヘプチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-デシル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸n-テトラデシル、メタクリル酸n-ヘキサデシル、メタクリル酸n-オクタデシル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸イソヘプチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ビフェニル、メタクリル酸ジフェニルエチル、メタクリル酸t-ブチルフェニル、メタクリル酸ターフェニルなどのメタクリル酸アリールエステル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸β-カルボキシエチル、及びメタクリルアミドを挙げることができる。
アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-デシル、アクリル酸n-ドデシル、アクリル酸n-テトラデシル、アクリル酸n-ヘキサデシル、アクリル酸n-オクタデシル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸イソヘプチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル及びアクリル酸t-ブチルシクロヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ビフェニル、アクリル酸ジフェニルエチル、アクリル酸t-ブチルフェニル、アクリル酸ターフェニルなどのアクリル酸アリールエステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸β-カルボキシエチル、及びアクリルアミドなどを挙げることができる。
アクリル系単量体は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0042】
基紙に対して表面サイズ剤を付与するためのサイズプレスは、従来公知の方式である。サイズプレスは、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス及びブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスではシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー及びフィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスではゲートロールコーターを挙げることができる。その他に、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス及びカレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0043】
いくつかの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、木材パルプ、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックスを少なくとも含む基紙と、前記基紙に対して付与された表面サイズ剤とを含有し及び前記表面サイズ剤が澱粉類及びスチレンアクリル系樹脂を少なくとも含み、前記填料が焼成カオリンを少なくとも含み及び前記焼成カオリンが填料全体に対して66質量%以上94質量%以下であり、並びに前記ポリエチレンワックスが酸化ポリエチレンワックスを少なくとも含む。
少なくとも一つの実施態様において、壁紙裏打ち紙は、木材パルプ、填料、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及びポリエチレンワックスを少なくとも含む基紙と、前記基紙に対して付与された表面サイズ剤とを含有し、前記表面サイズ剤が澱粉類及びスチレンアクリル系樹脂を少なくとも含み、前記填料が焼成カオリンを少なくとも含み及び前記焼成カオリンが填料全体に対して66質量%以上94質量%以下であり、前記湿潤紙力剤がポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂を少なくとも含み、前記乾燥紙力剤がポリアクリルアミド樹脂を少なくとも含み、並びに前記ポリエチレンワックスが酸化ポリエチレンワックスを少なくとも含む。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。付与量は乾燥固形分量を示す。
【0045】
各実施例及び各比較例について、以下の手順により壁紙裏打ち紙を作製した。
【0046】
<基紙>
紙料は、水を媒体に下記の内容により調成した。
LBKP(濾水度450mlcsf) 650質量部
NBKP(濾水度530mlcsf) 350質量部
填料 種類及び配合量は表1に記載
アルキルケテンダイマー 2質量部
硫酸アルミニウム 5質量部
湿潤紙力剤 種類及び配合量は表1に記載
乾燥紙力剤 種類及び配合量は表1に記載
ワックス 種類及び配合量は表1に記載
【0047】
表1に記載の各材料は下記の通りである。
填料A:軽質炭酸カルシウム
填料B:カオリン
填料C:焼成カオリン
湿潤紙力剤A:ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂
湿潤紙力剤B:尿素ホルムアルデヒド樹脂
乾燥紙力剤A:ポリアクリルアミド樹脂
乾燥紙力剤B:カチオン化澱粉
ワックスA:低密度ポリエチレンワックス
ワックスB:酸化ポリエチレンワックス
ワックスC:パラフィンワックス
【0048】
<表面サイズ剤>
表面サイズを含有する表面サイズ液は、水を媒体に下記の内容により調製した。
酸化澱粉 配合量は表1に記載
スチレンアクリル系樹脂 配合量は表1に記載
ポリビニルアルコール 配合量は表1に記載
【0049】
ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂にはポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂である星光PMC社WS4020を、尿素ホルムアルデヒド樹脂には三井化学社ユーラミン(登録商標)P-1500を、カチオン化澱粉には日本食品化工社ネオタック(登録商標)#30Tを、ポリアクリルアミド樹脂にはアニオン性ポリアクリルアミド樹脂である荒川化学工業社POLYSTRON(登録商標)117を、低密度ポリエチレンワックスには三井化学社ハイワックス220Pを、酸化ポリエチレンワックスには東邦化学工業社メイカテックスPEC-270を、パラフィンワックスには日本精鑞社パラフィンワックス135を、酸化澱粉には日本食品化工社MS#3800を、スチレンアクリル系樹脂にはハリマ化成社ハーサイズKN500を、ポリビニルアルコールにはクラレ社クラレポバール(登録商標)5-98を、使用した。
【0050】
<壁紙裏打ち紙の作製>
上記紙料を長網抄紙機で抄造し、坪量90g/m2の原紙を得た。続いて、得られた原紙に対してサイズプレスを用いて両面に表面サイズ剤を含む表面サイズ液を塗工及び乾燥した。表面サイズ剤全体の付与量は、乾燥固形分で片面あたり4g/m2とした。サイズプレス後にカレンダー処理を施して、壁紙裏打ち紙とした。ただし、比較例2では、サイズプレスを行わなかった。
【0051】
<ロール汚れの発生程度>
壁紙裏打ち紙の製造において、抄造後の乾燥工程に存在する搬送ロール類で発生する汚れを観察した。結果を、下記の基準で評価した。本発明において、壁紙裏打ち紙は、A又はBの評価であればロール類の汚れが無いものとした。
A:ロール汚れが無く、良好である。
B:ロール汚れが殆ど無く、概ね良好である。
C:上記Bよりも劣り、ロール汚れが僅かに認められる。
D:上記Cよりも劣り、ロール汚れが認められる。
【0052】
<湿潤強度>
壁紙裏打ち紙をMD側15mm×CD側250mmに裁断した。裁断した壁紙裏打ち紙を110℃で10分間乾燥した。乾燥後の壁紙裏打ち紙を20℃の水に10分間浸漬し、浸漬後に壁紙裏打ち紙の表面に付着する水を拭取り、ISO3781:1983「Paper and board - Determination of tensile strength after immersion in water」に準拠して湿潤引張強度を測定した。測定の結果を下記の基準で評価した。本発明において、壁紙裏打ち紙は、A又はBの評価であれば湿潤強度を有するものとした。
A:0.4kN/m以上。
B:0.35kN/m以上0.4kN/m未満。
C:0.35kN/m未満。
【0053】
<隠ぺい性>
壁紙裏打ち紙に対して塩化ビニル樹脂ペーストを実験用ブレードコーターを用いて塗工及び乾燥し、壁紙サンプルを作製した。塗工及び乾燥は、最終的に塩化ビニル樹脂が100μmの厚さになるよう調整した。前記壁紙サンプルの壁紙裏打ち紙の面に対して澱粉糊を塗工し、石膏ボードに貼り付けて試験体を得た。澱粉糊が乾燥するまで(約3日間)試験体を室温下に静置した。静置後、石膏ボードが視認できる程度の観点から壁紙の隠ぺい性を観察した。結果を、下記の基準で評価した。本発明において、壁紙裏打ち紙は、A、B又はCの評価であれば隠ぺい性に優れるものとした。
A:隠ぺい性が極めて良好である。
B:隠ぺい性が良好である。
C:上記Bよりも劣るものの、隠ぺい性が概ね良好である。
D:上記Cよりも劣るものの、実用可能な隠ぺい性を有する。
E:上記Dよりも劣り、隠ぺい性が不十分である
【0054】
<ピールアップ性>
壁紙裏打ち紙に対して塩化ビニル樹脂ペーストを実験用ブレードコーターを用いて塗工及び乾燥し、壁紙サンプルを作製した。塗工及び乾燥は、最終的に塩化ビニル樹脂が100μmの厚さになるよう調整した。前記壁紙サンプルの壁紙裏打ち紙の面に対して澱粉糊を塗工し、石膏ボードに貼り付けて試験体を得た。貼り付けた後、試験体を室温下で1週間静置した。静置後、壁紙サンプルを石膏ボードから剥がし、壁紙用裏打ち紙の残り方の観点から石膏ボードの表面を観察した。結果を、下記の基準で評価した。本発明において、壁紙裏打ち紙は、A、B又はCの評価であればピールアップ性が良いものとした。
A:壁紙裏打ち紙の基紙が石膏ボードに残らず、極めて良好である。
B:壁紙裏打ち紙の基紙が石膏ボードに殆ど残らず、良好である。
C:上記Bよりも劣るものの、
壁紙裏打ち紙の基紙が石膏ボードにあまり残らず、概ね良好である。
D:壁紙裏打ち紙の基紙が石膏ボードに幾分残るものの、
石膏ボードの剥離面が概ね平で実用可能である。
E:壁紙裏打ち紙の基紙が石膏ボードに残り、
石膏ボードの剥離面に基紙の付着によって凹凸が認められる。
【0055】
評価結果を表2に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
表1および表2から、本発明の構成を満足する実施例1~13は、製造時において乾燥工程などに存在する搬送ロール類の汚れの発生が無く、使用後のピールアップ性が良く、隠ぺい性に優れ、及び湿潤強度を有する壁紙裏打ち紙と分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~6は、前記効果の少なくとも一つを満足できない壁紙裏打ち紙と分かる。
【0059】
主に、実施例1~5の間の対比から、基紙中の焼成カオリンが填料全体に対して66質量%以上94質量%以下であると、壁紙裏打ち紙は、隠ぺい性が良化すると分かる。
【0060】
主に、実施例3及び実施例6~8の間の対比から、表面サイズ剤が澱粉類及びスチレンアクリル系樹脂を少なくとも含むと、壁紙裏打ち紙は、湿潤強度が良化すると分かる。