(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038901
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】飛行装置
(51)【国際特許分類】
B64D 1/22 20060101AFI20240313BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240313BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240313BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B64D1/22
B64C39/02
B64D27/24
B64D45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143257
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】320011199
【氏名又は名称】株式会社石川エナジーリサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】石川 満
(72)【発明者】
【氏名】小野 恭稔
(57)【要約】
【課題】輸送体の重量が過大な状態で飛行することを抑制できる飛行装置を提供する。
【解決手段】飛行装置10は、機体ベース部16と、ロータ11と、モータ12と、演算制御部15と、重量検知部17と、を具備する。ロータ11は、回転することで、機体ベース部16を浮遊させるための推力を発生させる。モータ12は、ロータ11を回転駆動する。重量検知部17は、輸送体18の重量値を検知する。演算制御部15は、重量検知部17で検知した重量値が、閾値重量値を超過したら、離陸しない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送体を輸送する飛行装置であり、
機体ベース部と、ロータと、モータと、演算制御部と、重量検知部と、を具備し、
前記ロータは、回転することで、前記機体ベース部を浮遊させるための推力を発生させ、
前記モータは、前記ロータを回転駆動し、
前記重量検知部は、前記輸送体の重量値を検知し、
前記演算制御部は、前記重量検知部で検知した前記重量値が、閾値重量値を超過したら、離陸しないことを特徴とする飛行装置。
【請求項2】
前記重量検知部は、前記演算制御部の機能の一部であり、
前記モータの回転数を制御するために用いられる指示信号から、前記重量値を算出することを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【請求項3】
前記指示信号は、DUTY値または前記DUTY値に由来する値であることを特徴とする請求項2に記載の飛行装置。
【請求項4】
前記重量検知部は、前記機体ベース部と前記輸送体との間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【請求項5】
前記重量検知部は、前記飛行装置が載置される載置型計測装置であることを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無人で空中を飛行することが可能な飛行装置が知られている。このような飛行装置は、垂直軸回りに回転駆動するロータの推力で、空中を飛行することが可能とされている。
【0003】
飛行装置の適用分野としては、例えば、輸送分野、測量分野、撮影分野、農業分野等が考えられる。このような分野に飛行装置を適用させる場合は、各種機器や薬剤を飛行装置に備え付ける。
【0004】
飛行装置を安定的に飛行させることを考えた場合、飛行装置が輸送する輸送体の重量を計測する必要がある。特許文献1には、飛行装置が備える輸送体の一例であるタンクの重量を推定する発明が記載されている。
【0005】
特許文献1では、重量測定装置としてのロードセルを有している。ロードセルを使用することで、空のタンクの重量との重量差を測定することができ、農薬散布中の付属タンクの残量を検出することができる。よって、農薬の残量を、流量計を用いずに、検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された飛行装置では、飛行装置を安定的に飛行させる観点から改良の余地があった。
【0008】
具体的には、特許文献1に記載された発明により、輸送体であるタンクの重量を計測することは可能ではある。しかしながら、輸送体の重量が過大である場合、輸送体の重量に起因して飛行装置が不安定になる課題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸送体の重量が過大な状態で飛行することを抑制できる飛行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、輸送体を輸送する飛行装置であり、機体ベース部と、ロータと、モータと、演算制御部と、重量検知部と、を具備し、前記ロータは、回転することで、前記機体ベース部を浮遊させるための推力を発生させ、前記モータは、前記ロータを回転駆動し、前記重量検知部は、前記輸送体の重量値を検知し、前記演算制御部は、前記重量検知部で検知した前記重量値が、閾値重量値を超過したら、離陸しないことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の飛行装置では、前記重量検知部は、前記演算制御部の機能の一部であり、前記モータの回転数を制御するために用いられる指示信号から、前記重量値を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の飛行装置では、前記指示信号は、DUTY値または前記DUTY値に由来する値であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の飛行装置では、前記重量検知部は、前記機体ベース部と前記輸送体との間に配設されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の飛行装置では、前記重量検知部は、前記飛行装置が載置される載置型計測装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、輸送体を輸送する飛行装置であり、機体ベース部と、ロータと、モータと、演算制御部と、重量検知部と、を具備し、前記ロータは、回転することで、前記機体ベース部を浮遊させるための推力を発生させ、前記モータは、前記ロータを回転駆動し、前記重量検知部は、前記輸送体の重量値を検知し、前記演算制御部は、前記重量検知部で検知した前記重量値が、閾値重量値を超過したら、離陸しないことを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、輸送体の重量値が閾値重量値を超過した場合に、飛行装置の離陸を許可しないことにより、所謂過積載の状態で飛行装置が飛行することを防止できる。よって、過積載により、飛行装置の飛行状態が阻害されることを抑制できる。
【0016】
また、本発明の飛行装置では、前記重量検知部は、前記演算制御部の機能の一部であり、前記モータの回転数を制御するために用いられる指示信号から、前記重量値を算出することを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、指示信号に基づいて重量値を算出することにより、専用の重量センサを省いて飛行装置を構成できる。
【0017】
また、本発明の飛行装置では、前記指示信号は、DUTY値または前記DUTY値に由来する値であることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、DUTY値に基づいて、輸送体の重量値を検知することにより、簡易に且つ正確に検知を行うことができる。
【0018】
また、本発明の飛行装置では、前記重量検知部は、前記機体ベース部と前記輸送体との間に配設されることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、重量検知部により輸送体の重量を直接的に検知できる。
【0019】
また、本発明の飛行装置では、前記重量検知部は、前記飛行装置が載置される載置型計測装置であることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、載置型計測装置により輸送体の重量を直接的に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す上面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る飛行装置の接続構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る飛行装置において、輸送体の推定重量値を算出する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照して本実施形態に係る飛行装置10を説明する。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では、上下前後左右の各方向を用いるが、左右とは
図1Aにおいて前方から飛行装置10を見た場合の左右である。
【0022】
図1Aは飛行装置10を示す上面図であり、
図1Bは飛行装置10を示す側面図である。
【0023】
図1Aを参照して、飛行装置10は、機体ベース部16と、機体ベース部16に搭載されたここでは図示しない動力部と、機体ベース部16の周辺部から周囲に向かって伸びるアーム271等と、アーム271等の外側端部に配置されたモータ121等と、モータ121等により回転されるロータ111等とを主要に具備している。以下の説明では、モータ121等をモータ12と総称し、ロータ111等をロータ11と総称する。
【0024】
飛行装置10は、機体ベース部16に収納されたバッテリから得られる電力を用いて、モータ121等がロータ111等を所定の回転速度で回転させ、空中を浮遊および移動することを可能としている。飛行装置10は、例えば、後述する輸送体18を、ある箇所から他の箇所まで輸送する輸送手段としての機器である。
【0025】
機体ベース部16は、飛行装置10の中央に配置され、ここでは図示しない各種機器が収納されている。機体ベース部16の外皮は、所定形状に成形された合成樹脂板や鋼板で覆われている。
【0026】
機体ベース部16から外側に向かって、アーム271、アーム272、アーム273およびアーム274が伸びている。
【0027】
アーム271の外側端部には、モータ121およびロータ111が配置されている。アーム272の外側端部には、モータ122およびロータ112が配置されている。アーム273の外側端部には、モータ123およびロータ113が配置されている。アーム274の外側端部には、モータ124およびロータ114が配置されている。ここで、ロータ11は、垂直軸回りに回転することで、機体ベース部16を浮遊させるための推力を発生させる。また、モータ12は、ロータ11を回転駆動する。
【0028】
図1Bを参照して、機体ベース部16の下部には、着陸時に地面に接する脚部32が配設されている。脚部32は、スキッドとも称される部材であり、飛行装置10が着陸する状態に於いては、脚部32の下端が地面に接する。
【0029】
機体ベース部16の下方側には、輸送体18が設置される。輸送体18は、飛行装置10により輸送される物体であり、例えば、荷物、薬剤、肥料等である。ここでは、機体ベース部16の下方に輸送体18が固定されているが、機体ベース部16の上方側に輸送体18が固定されても良い。
【0030】
重量検知部17は、輸送体18の重量を検知するセンサである。重量検知部17は、例えばロードセルである。ここで、後述するように、DUTY値から輸送体18の重量値を算出する場合は、重量検知部17を省いて飛行装置10を構成できる。
【0031】
図2は、飛行装置10の接続構成を示すブロック図である。
【0032】
飛行装置10は、主に、モータ121等と、飛行センサ13と、電力変換部14と、演算制御部15と、モータ12と、重量検知部17と、を具備し、輸送体18を輸送する。更に、飛行装置10は、通信部25、バッテリ21等を有している。また、操縦装置28は、飛行装置10を操縦する操縦者が、操縦装置28を用いて地上で操作可能とされる。また、通信部26、表示装置22および表示部23から成る操縦装置28は、操縦者の近傍に設置されている。
【0033】
飛行センサ13は、機体ベース部16に作用する物理量を計測し、この物理量の大きさを示す信号を演算制御部15に伝送する。飛行センサ13に含まれるセンサとしては、例えば、加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ、気圧センサおよびGNSSアンテナである。加速度センサは、物理量としての傾きや動きの変化を検知する。角速度センサは、物理量としての傾きや向きの変化を検知する。地磁気センサは、磁力により、物理量としての方角を検知する。気圧センサは、物理量としての高度を検知する。GNSSアンテナは、位置を特定する。
【0034】
演算制御部15は、CPU(Central Processing Unit)から成る演算装置、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)から成る記憶装置を有しており、飛行装置10全体の動作を制御する。また、演算制御部15は、後述するように、飛行センサ13から入力される信号に基づいて、モータ121等に供給される電力量を調整する。更に、演算制御部15は、後述するように、指示信号の大きさに基づいて、輸送体18の重量値を算出する。また、演算制御部15は、ここでは図示しない、フライトコントローラおよびコンパニオンコントローラを有している。更に、演算制御部15は、DUTY値に基づいて輸送体18の重量値を算出する場合は、重量検知部17を兼ねる。
【0035】
更に、演算制御部15は、飛行センサ13から入力される信号に基づいて、飛行装置10の位置姿勢および移動速度等を所定にするための指示信号を生成する。この指示信号として、例えば、PWM制御におけるDUTY値または前記DUTY値に由来する値を採用することができる。本実施形態では、4つのモータ121、モータ122、モータ123およびモータ124を有していることから、夫々のモータ121についてDUTY値を算出する。
【0036】
電力変換部14は、ESC141ないしESC144を有する。ここで、ESCとは、Electric Speed Controllerの略語であり、モータ12の回転数をコントロールする電子機器である。ESC141は、モータ121と演算制御部15との間に配置され、モータ121の回転数を制御する。ESC142は、モータ122と演算制御部15との間に配置され、モータ122の回転数を制御する。ESC143は、モータ123と演算制御部15との間に配置され、モータ123の回転数を制御する。ESC144は、モータ124と演算制御部15との間に配置され、モータ124の回転数を制御する。ESC141ないしESC144は、演算制御部15から入力されるDUTY値が大きければ、モータ121ないしモータ124を高速に回転させる。
【0037】
重量検知部17は、前述した輸送体18の重量を検知し、重量の大きさを示す信号を演算制御部15に伝送する。重量検知部17は、飛行装置10に備えられても良いし、飛行装置10の外部に備えられても良い。
【0038】
重量検知部17が飛行装置10に備えられる場合は、飛行装置10の機体ベース部16と輸送体18との間に重量検知部17を配置し、これにより、重量検知部17に作用する輸送体18の重量を検知する。
【0039】
一方、重量検知部17を飛行装置10の外部に備える場合は、重量検知部17として、飛行装置10自体を載置することができる載置型計測装置を採用できる。当該載置型計測装置を採用する場合は、載置型計測装置の上面に、輸送体18が搭載された飛行装置10を載置することで合計重量を計測し、合計重量から飛行装置10自体の重量である装置重量を減算する。このようにすることで、輸送体18の重量値を算出できる。載置型計測装置で算出した、輸送体18の重量値を示す信号は、通信部25を介して、演算制御部15に入力される。
【0040】
ここで、飛行装置10の基本的な飛行動作を説明する。飛行装置10は、離陸動作、上昇動作、ホバリング動作、移動動作、下降動作、および着陸動作の、各動作を実行することができる。飛行装置10の各動作は、操作者の操作に基づいて操縦装置28から伝送されるコマンドに基づいて、演算制御部15が実行する。
【0041】
上記各動作に於いて、演算制御部15は、飛行センサ13に含まれる加速度センサおよび角速度センサから入力される情報に基づいて、電力変換部14に対して指示信号を出力し、飛行装置10の姿勢が所定のものとなるように、モータ121ないしモータ124の回転速度を調整している。
【0042】
離陸動作では、演算制御部15は、重量検知部17等を動作させることにより、重量検知部17の重量を検知する。そして、重量検知部17の重量が、後述する閾値重量値を超過しなければ、飛行装置10を離陸させるために、モータ12を所定速度で回転させる。離陸動作の詳細は、
図3を参照して後述する。
【0043】
上昇動作では、演算制御部15は、飛行装置10が所定高度まで上昇するように、モータ12を比較的高速に回転させる。演算制御部15は、基本的には、ESC141ないしESC144に略同一のDUTY値を出力し、モータ121ないしモータ124の回転速度を略同一とする。また、演算制御部15は、飛行センサ13に含まれる気圧センサから入力される情報に基づいて、飛行装置10が所定高度まで上昇したら、飛行装置10の高度を略一定に保つホバリング動作を実行する。
【0044】
ホバリング動作では、演算制御部15は、飛行センサ13に含まれる気圧センサから入力される情報に基づいて、飛行装置10の高度が略一定となるように、モータ121ないしモータ122の回転速度を調整している。ここで、基本的には、演算制御部15は、ESC141ないしESC144に略同一のDUTY値を出力し、モータ121ないしモータ124の回転速度を略同一とする。
【0045】
移動動作では、演算制御部15は、飛行装置10が前後左右の各方向に向かって所定速度で移動できるようにモータ121ないしモータ124の回転速度を調整する。例えば、モータ121およびモータ122の回転速度を、モータ123およびモータ124の回転速度よりも速くする。即ち、演算制御部15は、ESC141およびESC142に出力するDUTY値を、ESC143およびESC144に出力するDUTY値よりも大きくする。このようにすることで、
図1Aを参照して、ロータ111およびロータ112は、ロータ113およびロータ114よりも高速に回転し、飛行装置10の機体ベース部16は傾斜姿勢となり、飛行装置10は所定の方向に向かって移動する。その後、飛行センサ13に含まれるGNSSアンテナ等の出力に基づいて、飛行装置10が所定位置に到達したことを認知したら、演算制御部15は、ブレーキ動作を実行する。例えば、演算制御部15は、モータ121およびモータ122の回転速度を、モータ123およびモータ124の回転速度よりも遅くする。即ち、演算制御部15は、ESC143およびESC144に出力するDUTY値を、ESC141およびESC142に出力するDUTY値よりも大きくする。このようにすることで、
図1Aを参照して、ロータ111およびロータ112は、ロータ113およびロータ114よりも低速に回転し、飛行装置10の平面的な移動を停止することができる。その後、演算制御部15は、ホバリング動作を実行する。
【0046】
下降動作では、演算制御部15は、飛行装置10が所定高度まで下降するように、モータ12を比較的低速に回転させる。演算制御部15は、基本的には、ESC141ないしESC144に略同一のDUTY値を出力し、モータ121ないしモータ124の回転速度を略同一とする。また、演算制御部15は、飛行センサ13に含まれる気圧センサから入力される情報に基づいて、飛行装置10が所定高度まで降下したら、飛行装置10の高度を略一定に保つホバリング動作を実行する。
【0047】
着陸動作では、演算制御部15は、飛行装置10が地面等の着地面まで下降するように、モータ12を比較的低速に回転させる。演算制御部15は、基本的には、ESC141ないしESC144に略同一のDUTY値を出力し、モータ121ないしモータ124の回転速度を略同一とする。また、演算制御部15は、飛行装置10が着地面に接したら、全てのモータ12を停止する。
【0048】
図3は、飛行装置10において、飛行装置10の運転、主に飛行装置10の離陸動作を示すフローチャートである。本実施形態では、以下に詳述するように、演算制御部15は、重量検知部17で検知した輸送体18の重量値が閾値重量値を超過したら、離陸しないように構成されている。
【0049】
ステップS10では、演算制御部15は、飛行装置10が離陸する前に、輸送体18の重量値を検知する。輸送体18の重量値を検知する方法としては、飛行装置10に備えられた重量検知部17を用いる方法と、後述するように演算制御部15から発せられる指示信号を用いる方法がある。重量検知部17を用いる方法では、重量検知部17が輸送体18の重量値を検知し、重量値を示す信号が演算制御部15に伝送される。指示信号を用いる方法は、後述する。
【0050】
ステップS11では、演算制御部15は、重量値が閾値重量値を超過していないか否かを判断する。具体的には、飛行装置10の飛行性能に応じて、閾値重量値は予め設定されている。閾値重量値とは、飛行装置10が安全に飛行により輸送することができる輸送体18の重量である。演算制御部15は、例えば、ステップS10において重量検知部17により検知された輸送体18の重量値と、閾値重量値とを比較する。
【0051】
ステップS11でYESの場合、即ち、重量値が閾値重量値を超過しない場合、演算制御部15は、ステップS12に移行する。
【0052】
ステップS11でNOの場合、即ち、重量値が閾値重量値を超過する場合、演算制御部15は、ステップS16に移行する。
【0053】
ステップS12では、演算制御部15は、離陸を許可する。即ち、演算制御部15は、指示信号であるDUTY値を、ESC141ないしESC144に入力し続け、ESC141ないしESC144は所定の周波数の交流電力を生成し、当該交流電力はモータ121ないしモータ124に入力される。
【0054】
ステップS13では、演算制御部15は、離陸を実行する。即ち、演算制御部15の指示に基づき、モータ121ないしモータ124は、所定の回転速度で、ロータ111ないしロータ114を回転させる。ロータ111ないしロータ114により生成される上向きの推力が一定以上になれば、飛行装置10は離陸する。
【0055】
ステップS14では、演算制御部15は、飛行装置10を飛行させる。具体的には、飛行装置10は、演算制御部15の指示に基づき、上昇動作、ホバリング動作、水平移動動作または下降動作等を実行する。
【0056】
ステップS15では、演算制御部15は、着陸を実行する。即ち、演算制御部15の演算結果、または、ユーザが操縦装置28を介して入力される指示信号に基づき、飛行装置10は、所定箇所、例えば離陸を行った箇所に下降して着陸する。
【0057】
ステップS16では、演算制御部15は、離陸を許可しない。即ち、飛行装置10に搭載された輸送体18の重量が、閾値重量を超過しており、そのまま安定的に飛行することはできないため、飛行を行わない。この場合、演算制御部15は、通信部25および通信部26を介して、輸送体18の重量が閾値重量を超過する旨を示す信号を、操縦装置28に伝送する。また、輸送体18の重量が閾値重量を超過する旨を、表示部23が表示する。このようにすることで、操作者は、輸送体18が閾値重量値を下回るように、輸送体18を軽量化し、これにより、飛行装置10は輸送体18を輸送できるようになる。
【0058】
次に、前出したステップS10に於いて、指示信号の一例であるDUTY値から、輸送体18の重量値を算出する方法を以下に説明する。
【0059】
先ず、ステップS10において、演算制御部15の指示に基づいてモータ12を回転させる際、即ち、飛行装置10が着陸状態から離陸状態に遷移する際に、前述した物理量に基づいて、演算制御部15が、指示信号としてのDUTY値を算出する。演算制御部15は、ステップS10で入力された各種情報、および、動作状況等に基づいて、DUTY値を出力する。演算制御部15は、
図2に示したESC141ないしESC144の各々についてDUTY値を算出する。DUTY値は、輸送体18を含む飛行装置10の重量によっても変化する。即ち、輸送体18の重量が大きいと、輸送体18を含む飛行装置10全体の重量が大きくなり、演算制御部15が算出するDUTY値は大きくなる。一方、輸送体18の重量が小さいと、輸送体18を含む飛行装置10全体の重量が小さくなり、演算制御部15が算出するDUTY値は小さくなる。よって、飛行装置10が飛行する前に、DUTY値から、輸送体18を含む飛行装置10全体の重量値を算出できる。また、輸送体18自体の重量値は既知である。よって、DUTY値から求めた、輸送体18を含む飛行装置10全体の重量値から、輸送体18自体の重量値を減算することにより、輸送体18のみの重量値を算出できる。
【0060】
ここで、演算制御部15は、輸送体18の重量を正確に推定するために、ESC141ないしESC144の各々について算出されるDUTY値を平均することにより平均DUTY値を算出し、上記と同様に、平均DUTY値から、輸送体18を含む飛行装置10全体の重量値を算出しても良い。ESC141ないしESC144の各々について算出されるDUTY値は、飛行装置10の状態によって変化する。よって、これらの4つのDUTY値の平均値であるDUTY平均値(指示信号平均値)を算出することで、飛行装置10の状態による影響を排除できる。
【0061】
更に、演算制御部15は、DUTY値またはDUTY平均値と、モータ12の電圧値とを勘案することで、輸送体18の重量値を算出できる。具体的には、演算制御部15は、DUTY値またはDUTY平均値と、バッテリ21の電圧値であるバッテリ電圧値を読み取る。そして、DUTY値またはDUTY平均値、およびバッテリ電圧値を変数とする所定の関数に基づいて、輸送体18を含む飛行装置10の重量値を算出している。演算制御部15は、バッテリ電圧値が低い場合、モータ12を所定の回転速度で回転させるために、DUTY値またはDUTY平均値を大きくする。依って、DUTY値またはDUTY平均値のみを変数として輸送体18を含む飛行装置10の重量値を算出すると、推定残量を過大に算出してしまう恐れがある。そこで本実施形態では、バッテリ電圧値によりDUTY値またはDUTY平均値を補正することで、輸送体18を含む飛行装置10の重量値を正確に算出している。具体的には、バッテリ電圧値が低い場合は、DUTY値またはDUTY平均値をマイナス側に補正する。逆に、バッテリ電圧値が高い場合は、DUTY値またはDUTY平均値をプラス側に補正する。これにより、バッテリ電圧値に関わらず、輸送体18の重量値を正確に算出できる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0063】
例えば、前述した実施形態では、指示信号としてDUTY値を採用したが、指示信号として他の信号を用いることもできる。例えば、指示信号として、電力変換部14またはモータ12に供給される電力の、電流値または電圧値を採用できる。
【0064】
また、ステップS10における輸送体18の重量値の検知は、ステップS14において行うこともできる。即ち、飛行装置10が飛行している状況に於いても、演算制御部15は、DUTY値から輸送体18の重量値を算出する。そして、輸送体18の重量値が閾値重量値を超過した場合は、演算制御部15は、飛行装置10を着陸させる。このようにすることで、飛行装置10の飛行状況下において、輸送体18の重量値が閾値重量値を超過していることが判明した場合であっても、飛行装置10を安全に着陸させることができる。
【0065】
更に、前記した実施形態では、輸送体18のみの重量値にもとづき、輸送体18の重量値が閾値重量値を超過しているか否かを判断したが、飛行装置10と輸送体18の合算した重量を用いて、輸送体18の重量値が閾値重量値を超過しているか否かを判断できる。
【0066】
前述した本実施形態では、DUTY値に由来する値として平均値を例示したが、他の値を採用することもできる。例えば、DUTY値に由来する値として、中央値を採用することもできる。
【符号の説明】
【0067】
10 飛行装置
11 ロータ
111 ロータ
112 ロータ
113 ロータ
114 ロータ
12 モータ
121 モータ
122 モータ
123 モータ
124 モータ
13 飛行センサ
14 電力変換部
141 ESC
142 ESC
143 ESC
144 ESC
15 演算制御部
16 機体ベース部
17 重量検知部
18 輸送体
21 バッテリ
22 表示装置
23 表示部
25 通信部
26 通信部
271 アーム
272 アーム
273 アーム
274 アーム
28 操縦装置
32 脚部