(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038906
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】情報分析装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240313BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240313BHJP
G01M 17/08 20060101ALI20240313BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240313BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G05B23/02 301X
G01M17/08
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143272
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿邊 優一
(72)【発明者】
【氏名】弓削 晶郎
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA15
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB02
3C223EB03
3C223EB04
3C223FF04
3C223FF13
3C223FF14
3C223FF15
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF34
3C223FF45
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
5L049CC15
5L049CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】稼働環境が変更されることがある個々の装置にイベントが発生する確率を分析する情報分析装置を提供する。
【解決手段】情報分析装置は、インターフェース、稼働時間算出部、因子特徴抽出部、関数作成部及び表示制御部を有する。インターフェースは、稼働環境が異なる配置場所の変更が可能な装置について各配置場所における装置の稼働状況を示す稼働データを取得する。稼働時間算出部は、取得した稼働データに基づいて分析対象とする装置が配置された配置場所毎の稼働時間を合算した稼働時間を算出する。因子特徴抽出部は、複数の配置場所間の特性差による特徴量を正規化した因子特徴量を算出する。関数作成部は、稼働時間算出部が算出した稼働時間と因子特徴抽出部が因子特徴量を用いて分析対象とする装置にイベントが発生する確率を示す関数を作成する。表示制御部は、関数作成部が作成した関数に関する情報を分析結果として表示装置に表示させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼働環境が異なる配置場所の変更が可能な装置について各配置場所における装置の稼働状況を示す稼働データを取得するインターフェースと、
前記インターフェースにより取得する稼働データに基づいて分析対象とする装置が配置された配置場所ごとの稼働時間を合算した稼働時間を算出する稼働時間算出部と、
複数の配置場所間の特性差による特徴量を正規化した因子特徴量を算出する因子特徴抽出部と、
前記稼働時間算出部が算出した稼働時間と前記因子特徴抽出部が因子特徴量とを用いて前記分析対象とする装置にイベントが発生する確率を示す関数を作成する関数作成部と、
前記関数作成部が作成した関数に関する情報を分析結果として表示装置に表示させる表示制御部と、
を有する情報分析装置。
【請求項2】
前記分析対象となる装置は、稼働環境が異なる複数の編成の鉄道車両に搭載された装置であり、
前記稼働時間算出部は、前記稼働データから算出する前記分析対象とする装置が搭載された車両ごとの稼働時間を合算した累積の稼働時間を算出し、
前記因子特徴抽出部は、前記分析対象とする装置が搭載された各車両の特性差による特徴量を正規化した因子特徴量を算出する、
請求項1に記載の情報分析装置。
【請求項3】
前記因子特徴抽出部は、前記分析対象とする装置が搭載された各車両における平均乗車率を加重平均することにより正規化した因子特徴量を算出する、
請求項2に記載の情報分析装置。
【請求項4】
さらに、前記分析対象とする装置に対する起点日からの経過時間を絶対時間として算出する絶対時間算出部とを有し、
前記関数作成部は、前記絶対時間算出部が算出する絶対時間とイベントが発生する確率との関係をモデル化した関数を作成する、
請求項1に記載の情報分析装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記稼働時間を用いて作成した関数を示す情報と前記絶対時間を用いて作成した関数を示す情報とを表示装置に表示する、
請求項4に記載の情報分析装置。
【請求項6】
稼働環境が異なる配置場所の変更が可能な装置について各配置場所における装置の稼働状況を示す稼働データを取得するインターフェースと、
前記インターフェースにより取得する稼働データに基づいて分析対象とする装置が配置された各配置場所での稼働状態を示す値を累積した累積値を算出する累積値算出部と、
複数の配置場所間の特性差による特徴量を正規化した因子特徴量を算出する因子特徴抽出部と、
前記累積値算出部が算出した累積値と前記因子特徴抽出部が因子特徴量とを用いて前記分析対象とする装置にイベントが発生する確率を示す関数を作成する関数作成部と、
前記関数作成部が作成した関数に関する情報を分析結果として表示装置に表示させる表示制御部と、
を有する情報分析装置。
【請求項7】
前記分析対象となる装置は、稼働環境が異なる複数の編成の鉄道車両に搭載される装置であり、
前記累積値算出部は、前記インターフェースにより取得する稼働データに基づいて前記分析対象とする装置の稼働状態を示す値の累積値を算出する、
請求項6に記載の情報分析装置。
【請求項8】
前記累積値算出部は、前記インターフェースにより取得する稼働データに基づいて前記分析対象とする装置における状態変化を示す信号が変化した回数の累積値を算出する、
請求項7に記載の情報分析装置。
【請求項9】
前記累積値算出部は、前記インターフェースにより取得する稼働データに基づいて前記分析対象とする装置が使用したアナログ量を積算した累積値を算出する、
請求項7に記載の情報分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道などの車両に搭載される制御装置、駆動装置、空調装置、集電装置などの装置(機器)は、継続的な保守点検および検査によって状態が把握される。近年では、装置の稼働時間、車両や装置に搭載されたセンサ情報や装置の制御情報などのデータを収集することにより車両に搭載された種々の機器の状態を遠隔で監視する監視システムが実現されている。従来の監視システムでは、収集したデータに基づいて各装置において故障が発生する確率などを診断するものがある。
【0003】
鉄道車両に搭載される装置は、運用上の都合等によりそれまでに搭載していた編成とは別の編成に搭載されることがある。装置は、搭載される編成が変わると、動作環境も変化する。このため、装置の故障確率を分析するには、実際に搭載された編成における動作環境を考慮する必要がある。しかしながら、従来の監視システムでは、個々の装置をどのような動作環境の編成に搭載したかを管理するのが容易ではなく、個々の装置について実際の動作環境を特定しながら継続的に故障が発生する確率などを分析することが困難である。
【0004】
また、鉄道車両に搭載された装置の劣化は、装置の稼働状況に関わらずに、非稼働の状態を含む絶対的な時間の経過とともに進行することもある。このため、装置によっては、例えば、倉庫などで予備品として保管されている経過時間についても考慮して故障が発生する確率を分析する必要がある。しかしながら、従来のシステムでは、個々の装置の絶対的な経過時間が管理されていないため、装置ごとに絶対的な経過時間に基づく故障の発生確率を分析することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたもので、稼働環境が変更されることがある個々の装置にイベントが発生する確率を分析できる情報分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、情報分析装置は、インターフェースと稼働時間算出部と因子特徴抽出部と関数作成部と表示制御部とを有する。インターフェースは、稼働環境が異なる配置場所の変更が可能な装置について各配置場所における装置の稼働状況を示す稼働データを取得する。稼働時間算出部は、インターフェースにより取得する稼働データに基づいて分析対象とする装置が配置された配置場所ごとの稼働時間を合算した稼働時間を算出する。因子特徴抽出部は、複数の配置場所間の特性差による特徴量を正規化した因子特徴量を算出する。関数作成部は、稼働時間算出部が算出した稼働時間と因子特徴抽出部が因子特徴量とを用いて分析対象とする装置にイベントが発生する確率を示す関数を作成する。表示制御部は、関数作成部が作成した関数に関する情報を分析結果として表示装置に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る情報分析装置を含む情報分析システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る情報分析装置およびユーザインターフェース装置におけるハードウエア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る情報分析装置を含む情報分析システムが備える機能の構成例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る情報分析システムが稼働データを収集するある編成の各車両における乗車率と装置の稼働状況との例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおける稼働データ記憶部に記憶する稼働データの例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおけるアセットデータ記憶部に記憶する編成に搭載される装置に関するアセットデータの例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおけるアセットデータ記憶部に記憶する予備品としての装置に関するアセットデータの例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおけるアセットデータ記憶部に記憶する廃棄品としての装置に関するアセットデータの例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおける製造データ記憶部に記憶する製造データの例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る情報分析システムが分析対象とする装置に関する出荷日を示す出荷データの例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおける分析対象とする装置に関する納品日を示す納品データの例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおける保守データ記憶部に記憶する保守データの例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る情報分析システムにおけるユーザインターフェース装置の表示装置が表示する分析条件の入力画面の表示例を示す図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る情報分析装置による分析処理における時間情報の取り扱いを説明するための図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係る情報分析装置における表示制御部が表示装置に表示する分析結果の表示例を示す図である。
【
図16】
図16は、第1の実施形態に係る情報分析装置による分析処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図17】
図17は、第1の実施形態に係る情報分析システムが分析対象とする装置に載せ替えや倉庫への保管がある場合の稼働時間の例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、第1の実施形態に係る情報分析システムが別の編成に載せ替えられることを想定した各装置の稼働状況を示すデータセットを示す図である。
【
図19】
図19、
図18に示すデータセットに対して正規化したデータを含むデータセットの例を示す図である。
【
図20】
図20は、第1の実施形態に係る情報分析装置における絶対時間算出部が算出した絶対時間を横軸として分析対象とする装置の稼働状態を示す図である。
【
図21】
図21は、第1の実施形態に係る情報分析装置が稼働時間による分析結果と絶対時間による分析結果とを一覧表示した分析結果の表示画面の例を示す図である。
【
図22】
図22は、第2の実施形態に係る情報分析装置が備える機能の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図23】
図23は、第2の実施形態に係る情報分析装置におけるモード変更回数算出部が接点開閉信号から累積接点開閉回数を算出する処理を説明するための図である。
【
図24】
図24は、第2の実施形態に係る情報分析装置におけるモード変更回数算出部が算出する累積接点開閉回数を含むデータセットの例を示す図である。
【
図25】
図25は、第2の実施形態に係る情報分析装置における表示制御部がユーザインターフェース装置の表示装置に表示する生存曲線の表示例を示す図である。
【
図26】
図26は、第2の実施形態に係る情報分析装置による累積値を用いた分析処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して第1および第2の実施形態について説明する。
一般に装置や部品には、正常な動作が可能な時間(寿命)がある。種々の装置や部品で構成されるシステムは、制御や保守を行うために、稼働に係るデータ(稼働データ)が計測される。このようなシステムを構成する個々の装置は、稼働データに基づいて故障などのイベントが発生する確率や寿命などが分析される。
【0010】
ただし、装置は、配置される配置場所によって稼働環境が変化することがあるため、配置場所によって稼働データの傾向や特徴が異なることがある。運用中に装置の配置場所が変更されることがある場合、装置の配置場所に応じた稼働環境の変化を考慮して装置にイベントが発生する確率を分析する必要がある。
【0011】
例えば、鉄道において、各鉄道車両には電動機や空調などの様々な装置が搭載され、各鉄道車両に関する稼働データは、制御あるいは監視を行うシステムによって収集される。鉄道において、各鉄道車両に搭載される装置は、運用上の都合等によって、それまでに搭載していた編成とは別の編成の車両に搭載されることがある。鉄道車両に搭載される装置は、搭載されている編成によって稼働環境が変化する。このため、別の鉄道車両に載せ替えられた装置は、載せ替えられる前とは稼働状況が変化する。
【0012】
第1および第2実施形態に係る情報分析システム(状態診断システム)は、鉄道車両に搭載される装置のように、任意のタイミングで利用環境が変化することがある装置に故障などのイベントが発生する確率を分析するためのシステムである。以下、第1および第2の実施形態では、一例として、鉄道車両に搭載される装置の状態(寿命、故障率)を診断する情報分析システムを想定して説明するものとする。
【0013】
ただし、第1および第2実施形態に係る情報分析システムは、鉄道車両に搭載される装置の状態を診断する情報分析システムに限定されるものではなく、継続的に稼働データおよび利用環境を示す情報を含む各種のデータを収集できるものであれば、任意のタイミングで利用環境が変化する可能性がある個々の装置に関する状態を診断するシステムに適用できる。
【0014】
また、第1および第2実施形態に係る情報分析システムは、任意のタイミングで稼働環境が変化することがある装置において、故障などのイベントが発生する確率を分析するものである。第1および第2実施形態に係る情報分析システムが装置に発生する確率を分析するイベントは、故障に限定されるものではなく、時間経過に伴って発生確率が変動するものであれば良く、特定の事象に限定されるものではない。例えば、第1および第2実施形態に係る情報分析システムが装置に発生する確率を分析するイベントは、所定値以下への効率低下、所定値以上の摩耗、所定値以上の汚れなどであっても良い。
【0015】
以下に説明する第1および第2の実施形態においては、主として、着目するイベントが装置に発生する故障であることを想定して説明するものとする。
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る情報分析装置10を含む情報分析システム1のハードウエア構成例を示す図である。
図1に示すように、情報分析システム1は、情報分析装置10、ユーザインターフェース(UI)装置20、運用データサーバ31、製造データサーバ32、保守データサーバ33、および、データ収集装置40などにより構成される。
【0017】
情報分析装置10は、通信インターフェースを備えるサーバコンピュータなどにより構成される。情報分析装置10は、各サーバ31、32、33およびUI装置20に通信接続される。情報分析装置10は、各データサーバ31、32、33が管理するデータに基づいて情報を分析する。情報分析装置10は、サーバが蓄積した情報の分析結果をUI装置20に提供する。また、情報分析装置10は、UI装置20によって指定された条件に基づいて情報の分析を実行する。
【0018】
ユーザインターフェース(UI)装置20は、情報分析装置10による分析結果を閲覧するオペレータ(管理者、保守員など)が操作する端末装置である。UI装置20は、パーソナルコンピュータであっても良いし、タブレットPあるいはスマートフォンなどの携帯端末装置であっても良い。UI装置20は、情報分析装置10と通信する機能、情報分析装置10による分析結果を表示する機能、および、オペレータが操作指示を入力する機能などを備えるものであれば良い。
【0019】
運用データサーバ31は、運用データを管理するサーバ装置である。運用データサーバ31が管理する運用データは、車両および車両に搭載された装置の稼働状況を示す稼働データおよび装置に関する情報を示すアセットデータを含む。運用データサーバ31は、情報分析装置10およびデータ収集装置40と通信するための通信インターフェースを備える。運用データサーバ31は、車両内にある装置およびセンサなどからのデータを収集するデータ収集装置から稼働データを取得する。運用データサーバ31は、稼働データを記憶するともにアセットデータを記憶する。運用データサーバ31は、情報分析装置10に対して稼働データおよびアセットデータを供給する。
【0020】
製造データサーバ32は、車両の搭載可能な装置に関するデータを管理するサーバ装置である。製造データサーバ32が管理する製造データは、例えば、装置を製造した製造メーカから提供される情報である。製造データサーバ32は、情報分析装置10と通信するための通信インターフェースを備える。製造データサーバ32は、情報分析装置10に対して製造データを供給する。
【0021】
保守データサーバ33、車両又は装置の保守履歴などの保守に関する保守データを管理するサーバ装置である。保守データサーバ33が管理する保守データは、例えば、装置に対して実施された保守の内容を示す情報である。保守データサーバ33は、情報分析装置10と通信するための通信インターフェースを備え、情報分析装置10に対して保守データを供給する。
【0022】
データ収集装置40は、鉄道車両(車両)に搭載される装置およびセンサなどから取得するデータ(以下、車両稼働データ)を収集する。データ収集装置40は、車両内に設置された装置およびセンサなどから情報を取得するための車両内インターフェースを有するコンピュータである。例えば、データ収集装置40は、車両に搭載された各装置を構成する各機器や部品に関する制御データおよびセンサデータを車両データとして収集する。データ収集装置40は、運用データサーバ31と通信する通信インターフェースを有し、車両内において収集した車両稼働データを運用データサーバ31へ送信する。
【0023】
次に、実施形態に係る情報分析装置10およびUI装置20における制御系の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る情報分析装置10およびUI装置20における制御系の構成例を示すブロック図である。
図2に示す構成例において、情報分析装置10は、プロセッサ11、RAM12、ROM13、記憶部14、インターフェース(I/F)15、16などを有する。
【0024】
プロセッサ11は、プログラムを実行することによりデータ処理および各部の制御などを実行する。RAM12は、データを一時的に記憶するメモリである。ROM13は、不揮発性のメモリであり、プロセッサ11が実行するプログラムおよび制御データなどを記憶する。記憶部14は、書き換え可能な不揮発性のメモリである。記憶部14は、各種のデータを保存するデータ記憶部として機能する。また、記憶部14は、プロセッサ11が実行するプログラムなどを記憶しても良い。
【0025】
インターフェース15は、各データサーバ31、32、33と通信するための通信インターフェースを含む。インターフェース15は、各データサーバ31、32、33が備える通信インターフェースに対応する通信インターフェースを備えるものであれば良い。
【0026】
インターフェース16は、UI装置20と通信するための通信インターフェースである。インターフェース16は、UI装置20が備える通信インターフェースに対応する通信インターフェースを備えるものであれば良い。
【0027】
また、
図2に示す構成例において、UI装置20は、プロセッサ21、RAM22、ROM23、NVM24、インターフェース(I/F)25、表示装置26、および、操作装置27などを有する。
【0028】
プロセッサ21は、プログラムを実行することによりデータ処理および各部の制御などを実行する。RAM22は、データを一時的に記憶するメモリである。ROM23は、不揮発性のメモリであり、プロセッサ21が実行するプログラムおよび制御データなどを記憶する。NVM24は、書き換え可能な不揮発性のメモリである。NVM24は、プロセッサ11が実行するプログラムや制御データなどを記憶しても良い。インターフェース25は、情報分析装置10と通信するためのインターフェースである。
【0029】
表示装置26は、画像を表示するディスプレイである。表示装置26は、例えば、後述する情報分析装置10が生成する装置の故障率又は寿命を示すハザード関数を含む表示データを表示する。操作装置27は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作デバイスである。操作装置27は、表示装置26に表示した入力画面にオペレータが情報を入力するためのデバイスを含む。なお、表示装置26および操作装置27は、UI装置20が備えるインターフェースに接続する外部装置であっても良い。
【0030】
次に、実施形態に係る情報分析装置10が備える機能について説明する。
情報分析装置10は、対象とする車両に搭載される装置について、時間経過とイベントの発生確率との関係をモデル化する機能を備える。本実施形態において、時間経過とともにイベントが生じる確率を分析する手法は、生存時間分析とも称する。情報分析装置10は、プロセッサ11がプログラムを実行することにより生存時間分析機能を実現する。
【0031】
なお、鉄道車両に搭載される装置を対象とした場合のイベントとしては、故障、一定値以下への効率低下、一定値以上の摩耗などが想定される。本実施形態においては、主として、イベントが装置に発生する故障であることを想定して説明するものとする。ただし、生存時間分析として分析するイベントは、時間経過に伴って発生確率が変動するものであれば良く、特定の事象に限定されるものではない。
【0032】
図3は、実施形態に係る情報分析装置10が備える機能の構成例を説明するためのブロック図である。
図3に示す構成例において、情報分析装置10は、プロセッサ11がプログラムを実行することにより実現する機能として、稼働時間算出部101、絶対時間算出部102、因子特徴抽出部103、イベント生成部104、関数作成部105および表示制御部106を有する。
【0033】
また、
図3に示す構成例において、運用データサーバ31は、個々の装置に関するアセットデータを記憶するアセットデータ記憶部31aと各車両のデータ収集装置40から取得する車両稼働データ(稼働データ9を記憶する稼働データ記憶部31bとを有する。製造データサーバ32は、個々の装置に関する製造データを記憶する製造データ記憶部32aを有する。保守データサーバ33は、個々の装置に関する保守データを記憶する保守データ記憶部33aを有する。
【0034】
情報分析装置10の稼働時間算出部101は、個々の装置が稼働した時間(稼働時間)を算出する。稼働時間算出部101は、稼働時間の算出対象とする装置に関するアセットデータと稼働データとを運用データサーバ31から取得する。稼働時間算出部101は、運用データサーバ31から取得するアセットデータと稼働データとに基づいて装置の稼働時間を算出する。
【0035】
図4は、編成Aにおける各車両の乗車率と各車両に搭載される装置の稼働状況との例を模式的に示す図である。
図4に示す例では、編成Aにおける各号車に電源がオンされる期間と各号車に搭載された空調装置のコンプレッサの消費電力と各号車内の乗車率とを示す。鉄道車両に搭載される空調装置は、車両の運行中において車内に設置したセンサが検知する気温などに応じて動作が制御される。このため、車両に設置する空調装置のコンプレッサは、外気温などに加えて車両の乗車率などに応じて消費電力(稼働データ)が変化する。
【0036】
各車両のデータ収集装置40は、車両の電源がオンである間、
図4に示すような監視対象とする各装置の動作状態を示す時系列のデータを収集する。データ収集装置40は、収集した時系列のデータを所定のタイミングで継続的に運用データサーバ31へ供給する。運用データサーバ31は、各車両のデータ収集装置40から取得する
図4に示すような時系列のデータを稼働データとして稼働データ記憶部31bに格納する。
【0037】
図5は、運用データサーバ31が稼働データ記憶部31bに記憶する稼働データの例を示す図である。
図5に示す例では、対象とする装置の稼働状態を示すデータを編成ごとの稼働データテーブルにまとめて管理する例を示す。運用データサーバ31は、データ収集装置40が収集したデータを編成別の稼働データテーブルの形式で稼働データ記憶部31bに格納する。運用データサーバ31は、編成ごとの稼働データテーブルにおいてデータ収集装置40が収集した稼働状況を示す数値情報を時刻情報(Timestamp)に対応づけて記録する。
【0038】
図6、
図7および
図8は、アセットデータの例を示す図である。
図6は、各編成の車両に搭載された装置に関する情報を格納するテーブル(編成搭載品アセットテーブル)の例を示す。
図7は、車両に搭載されていない予備となる装置を収納する倉庫に保管されている装置に関する情報を格納するテーブル(予備品アセットテーブル)の例を示す。
図8は、廃棄された装置に関する情報を格納するテーブル(廃棄品アセットテーブル)の例を示す。
【0039】
図6に示す例において、編成搭載品アセットテーブルには、車両に搭載されている各装置について、編成、号車(車両)、製造番号、および、搭載開始日などのデータがアセットデータとして格納される。編成は、装置が装置されている編成を示す情報である。号車は、装置が搭載されている車両を示す情報である。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。搭載開始日は、当該装置を当該車両に搭載された日を示す情報である。
【0040】
図7に示す例において、予備品アセットテーブルには、倉庫に保管(格納)されている各装置について、場所、製造番号、および、格納日などのデータがアセットデータとして格納される。場所は、装置が保管されている倉庫を示す情報である。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。格納日は、当該装置を倉庫に格納した日を示す情報である。
【0041】
図8に示す例において、廃棄品アセットテーブルには、廃棄された装置について、製造番号、および、廃棄日などのデータがアセットデータとして格納される。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。廃棄日は、当該装置が廃棄された日を示す情報である。
【0042】
絶対時間算出部102は、個々の装置が製造されてから経過した時間(絶対時間)を算出する。絶対時間算出部102は、絶対時間の算出対象とする装置に関する製造データを製造データサーバ32から取得する。絶対時間算出部102は、製造データサーバ32から取得する製造データに基づいて装置の絶対時間を算出する。絶対時間算出部102は、対象とする装置の製造データを取得できた場合、当該装置の製造日を起点日とし、現在までの経過時間を絶対時間として算出する。
【0043】
図9は、製造データサーバ32が製造データ記憶部32aに記憶する製造データの例を示す図である。
図9に示す例において、製造データ記憶部32aには、各装置について、製造番号、および、製造日などのデータが製造データとして格納される。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。製造日は、当該装置が製造された日を示す情報である。
【0044】
なお、絶対時間算出部102は、製造データが存在しない装置については、メーカにおける組み立て試験日を含む試験データ、当該装置をメーカが出荷した日を示す出荷データあるいは事業者へ当該装置を納入した日を示す納品データ等を参照して、最も古い日付を起点日として絶対時間を算出するようにしても良い。さらに、絶対時間算出部102は、製造データ、試験データ、出荷日データおよび納品日データの日付も取得できない装置については、当該装置に関する稼働データにおける最初のレコードのタイムスタンプを起点日として絶対時間を算出するようにしても良い。
【0045】
図10は、装置に対する絶対時間を算出するための起点日とすることが可能な製造日以外の一例である出荷日を含む出荷データの例を示す図である。
図10に示す例において、出荷データは、各装置についての製造番号および出荷日などのデータを含む。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。出荷日は、当該装置がメーカから出荷された日を示す情報である。出荷データは、例えば、運用データサーバ31に設けた記憶部に記憶するようにしても良いし、製造データサーバ32に設けた記憶部に記憶するようにしても良い。
【0046】
図11は、装置に対する絶対時間を算出するための起点日とすることが可能な製造日以外の一例である納品日を含む納品データの例を示す図である。
図11に示す例において、納品データは、各装置についての製造番号および納品日などのデータを含む。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。納品日は、当該装置が事業者に納入された日を示す情報である。納品データは、例えば、運用データサーバ31に設けた記憶部に記憶するようにしても良いし、製造データサーバ32に設けた記憶部に記憶するようにしても良い。
【0047】
因子特徴抽出部103は、対象とする装置においてイベントが発生する確率の分析(生存時間分析)に影響のある因子を特徴量(因子特徴量)として算出する。因子特徴抽出部103は、稼働データに基づいて因子特徴量を算出する。因子特徴抽出部103が算出する因子特徴量は、例えば、関数作成部105が実行する生存時間分析において共変量として用いられる。
【0048】
イベント生成部104は、各装置における分析対象とするイベントに関する情報を抽出する。イベント生成部104は、保守データサーバ33が保存する保守データに基づいて各装置に関するイベントの情報を抽出する。情報分析装置10は、UI装置20において指定される分析条件を取得する。イベント生成部104は、UI装置20で指定される分析条件に含まれるイベントの種別に応じて分析対象とするイベントを特定する。
【0049】
図12は、保守データサーバ33が保守データ記憶部33aに記憶する保守データの例を示す図である。
保守データ記憶部33aには、鉄道事業者、装置メーカ、あるいは、関連保守会社等によって実施された保守に関するデータ(保守データ)が記憶される。
図12に示す例において、保守データ記憶部33aには、保守作業ごとに、保守作業管理ID、編成、号車(車両)、対象装置、製造番号、内容(保守内容)、および、発生日などの情報が記憶される。
【0050】
保守作業管理IDは、保守作業(保守履歴)を関するための識別情報である。編成は、当該装置が搭載された編成を示す情報である。号車(車両)は、当該装置が搭載された車両を示す情報である。対象装置は、当該装置の種別(例えば、コンプレッサ、ブレーキなど)を示す情報である。製造番号は、当該装置の製造時に付与される固有な識別番号である。内容は、当該装置において保守が必要となった発生したイベントの内容(種別)を示す情報である。発生日は、当該装置において保守が必要となるイベントが発生した日を示す情報である。
【0051】
情報分析装置10に対して指定する分析条件は、分析者がUI装置20において入力する。分析者は、UI装置20の操作装置27を用いて分析条件を入力する。例えば、UI装置20は、分析条件を入力するための入力画面(GUI画面)を表示装置26に表示し、入力画面に表示した分析条件の各項目を操作装置27で分析者に入力させる。
【0052】
図13は、UI装置20が表示装置26に表示する分析条件の入力画面の表示例である。
図13に示す表示例では、分析条件として、対象装置、製造番号、イベント、時間軸、因子特徴量(共変量)などの入力を受け付ける。対象装置の入力欄では、分析対象とする装置の種別が入力(選択)される。製造番号の入力欄では、分析対象とする装置の製造番号(個体識別情報)が入力(選択)される。イベントの入力欄では、分析対象とするイベントの種別が入力(選択)される。
【0053】
時間軸の選択欄では、分析で用いる時間軸が選択される。
図13に示す表示例では、時間軸として、稼働時間、絶対時間、又は、その他が選択でき、さらに、稼働時間と絶対時間とが同時に選択できるようになっている。因子の入力欄では、分析で考慮すべき時間以外の因子が入力(選択)される。
さらに、
図13に示す表示例では、分析実行ボタンが表示される。UI装置20は、分析実行ボタンが指示されると、入力画面に入力された分析条件での分析を情報分析装置10に要求する。
【0054】
また、稼働時間算出部101および絶対時間算出部102は、分析条件に応じて生存時間分析に用いる時間特徴(時間情報)を計算する。分析条件として時間軸に稼働時間が指定された場合、稼働時間算出部101が生存時間分析に用いる時間特徴を計算する。分析条件として時間軸に絶対時間が指定された場合、絶対時間算出部102が生存時間分析に用いる時間特徴を計算する。分析条件として時間軸に稼働時間と絶対時間とが指定された場合、稼働時間算出部101および絶対時間算出部102が生存時間分析に用いる時間特徴を計算する。
【0055】
図14は、第1の実施形態に係る情報分析装置10による分析処理における時間情報の取り扱いを説明するための図である。
稼働時間算出部101および絶対時間算出部102は、対象の装置ごとに、観測開始時点から観測終了(分析実施)時点までの時間情報を算出する。観測開始から観測終了までの期間を設定すると、期間内に着目しているイベントが発生した装置と期間内に着目しているイベントが発生しなかった装置とが区別される。
図14では、実線で示す製造番号100の装置と製造番号200の装置とが期間内にイベントが発生したことを示し、点線で示す製造番号200の装置と製造番号400の装置と製造番号500の装置とが期間内にイベントが発生しなかったことを示す。
【0056】
なお、観測開始から観測終了までの期間内に着目しているイベントが発生しなかったことを打ち切りと称する。打ち切りには、「生存時間分析を行うまでイベントが発生しておらず、かつ引き続き観測が可能な状態であるもの(
図14に示す製造番号200と400の装置)」と「着目しているイベントとは無関係の事象により観測の継続ができなくなったもの(
図14に示す製造番号500の装置)」とが含まれる。後者の例としては、着目しているイベントとは無関係の故障による廃棄や運用都合によって装置が廃棄されたケースがあげられる。
【0057】
関数作成部105は、分析条件において指定された時間軸(時間情報)を用いた生存時間手法によって生存時間モデルとしてのイベントが発生する確率を示す関数(生存曲線)を作成する。関数作成部105は、イベントが発生する確率を示す関数を作成するための手法(生存時間分析手法)として様々な手法が適用可能である。生存時間分析手法の一例として、関数作成部105は、Cox比例ハザード回帰分析を適用することが可能である。
【0058】
ここでは、関数作成部105が作成する生存時間モデルを示す関数の一例として、Cox比例ハザード回帰分析について説明をする。
ある時間において、その次の瞬間にイベントが発生する確率をハザードと呼ぶ。Cox比例ハザード回帰分析では、ハザードを時間と時間以外の変数とを用いてモデル化する分析手法である。ハザードを表す関数は、ハザード関数と呼ばれる。Cox比例ハザード回帰分析では、ハザード関数を式1のような形とする。
【0059】
h(t;x)=h0(t)exp(β1x1+…βpxp)・・・(式1)
式1において、tは稼働時間であり、x(x1、…、xp)は共変量であり、β(β1x、…、βp)は共変量のパラメータであるものとする。
【0060】
関数作成部105は、式1において、時間以外の共変量xの係数であるβを最尤法によって求める。
式1に含まれるh0(t)は、時間の経過とともにイベントが発生する確率を表しており、ベースラインハザード関数と呼ばれる。つまり、式1に示すハザード関数(h(t;x))は、ベースラインハザード関数(h0(t))が各共変量の影響によって何倍に高まるかをexp(β1x1+…βpxp)で表している。
【0061】
表示制御部106は、関数作成部105によって作成された関数に関する情報をUI装置20の表示装置26に表示する。
図15は、情報分析装置10の表示制御部106がUI装置20の表示装置26に表示する分析結果の表示例を示す図である。
図15に示す表示例において、表示制御部106は、表示装置26の表示画面に、関数作成部105が作成したハザード関数に基づく生存率(故障などのイベントが発生しない確率)を示す生存曲線、および、関数作成部105がハザード関数を作成した条件(乗車率、乗車率の係数など)を示す情報などを表示する。
【0062】
次に、第1の実施形態に係る情報分析装置10が装置にイベントが発生する確率を分析する処理を含む分析処理について説明する。
以下、情報分析装置10による分析処理の例として、鉄道車両に搭載される空調装置のコンプレッサ(装置)における軸受け故障(イベント)が発生する確率を示すハザード関数を作成する処理を含む分析処理について説明するものとする。
【0063】
(第1の分析処理)
まず、第1の実施形態に係る情報分析装置10による第1の分析処理について説明する。
第1の分析処理において、情報分析装置10は、分析対象とする装置を別の編成の車両に載せ替ることを想定せずに算出する稼働時間を用いてハザード関数を作成する処理を実行するものとする。
【0064】
図16は、第1の実施形態に係る情報分析装置10による分析処理の流れを説明するためのフローチャートである。
(ST11:分析条件の入力処理)
まず、情報分析装置10のプロセッサ11は、分析者が操作するUI装置20に入力される分析条件を取得する(ST11)。情報分析装置10は、インターフェース16を介して接続されるUI装置20から分析条件を受信する。UI装置20のプロセッサ21は、表示装置26に
図13に示すような分析条件の入力画面を表示する。プロセッサ21は、入力画面を表示した状態において操作装置27を用いて分析者が入力(選択)する分析条件を受け付ける。プロセッサ21は、分析者による分析の実行指示に応じて入力された分析条件を情報分析装置10へ出力する。
【0065】
例えば、
図13に示す分析条件の入力画面が表示装置28に表示された場合、分析者は、分析条件として、対象装置、製造番号、着目するイベント、時間軸、および、因子(共変量)を操作装置27によって入力する。ここでは、着目するイベントとしては、コンプレッサの軸受け故障が入力されるものとする。また、車両の搭載する空調装置のコンプレッサは、当該車両の乗車率が高いほど負荷が高まるため、乗車率が高いほど故障の発生率が高まると考えられる。このため、分析者は、因子(共変量)として乗車率を指定するものとする。
【0066】
(ST12:イベント生成処理)
情報分析装置10のプロセッサ11は、UI装置20から分析条件を取得すると、イベント生成部104として機能し、個々の装置ごとに分析条件で指定されたイベントの発生状況を確認する(ST12)。イベントとして軸受け故障が指定された場合、イベント生成部104として動作するプロセッサ11は、個々の装置について軸受け故障の発生の有無を確認する。
【0067】
図5に示すような稼働データでは個々の装置を識別することができないため、プロセッサ11は、
図6に示すような編成搭載品アセットテーブルを参照することにより分析対象とする期間中に対象編成に搭載されていた装置(コンプレッサ)の製造番号を特定する。また、プロセッサ11は、
図8に示すような廃棄品アセットテーブルを参照することにより期間中に廃棄されたコンプレッサを特定する。
【0068】
さらに、プロセッサ11は、製造番号で特定する各装置が搭載された編成を特定すると、
図12に示すような保守データを用いて、個々の装置について分析条件で指定されたイベントである軸受け故障が発生していたか否かを判定する。
【0069】
例えば、プロセッサ11は、
図6に示す編成搭載品アセットテーブルによって製造番号100のコンプレッサが編成Aの1号車に搭載されていることを特定する。プロセッサ11は、
図12に示す保守データによって製造番号100のコンプレッサにおいて2008/10/01に軸受け故障が発生したことを特定する。
【0070】
(ST13:時間情報の算出処理)
情報分析装置10のプロセッサ11は、分析条件により着目するイベントが設定されると、分析条件の時間軸として指定される稼働時間を算出するための稼働時間算出部101として機能し、分析対象とする装置の稼働時間を算出する(ST13)。
【0071】
分析対象とする装置がコンプレッサである場合、稼働時間算出部101としてのプロセッサ11は、稼働データ記憶部31bに記憶した稼働データテーブルにおいて、各車両のコンプレッサの電力値が0ではないレコード数を数え、電力値が0ではないレコード数にサンプリング間隔の時間を乗ずることで累積時間としての稼働時間を計算する。ここで、稼働データテーブルで示される各車両のコンプレッサは、編成搭載品アセットテーブルにより製造番号が特定される装置である。
【0072】
稼働時間算出部101としてのプロセッサ11は、「軸受け故障(イベント)が生じておらず観測が継続可能」と判定される装置については観測開始時点(観測開始日)から観測終了時点(分析実施日)までの累積時間を稼働時間として算出する。
【0073】
稼働時間算出部101としてのプロセッサ11は、「軸受け故障が生じていないものの、無関係の理由による廃棄によって観測の継続が不可になった」と判定される装置については観測開始日から廃棄日までの累積時間を稼働時間として算出する。
また、稼働時間算出部101としてのプロセッサ11は、「軸受け故障が発生した」と判定される装置については観測開始日から軸受け故障の発生日までの累積時間を稼働時間として算出する。
【0074】
(ST14:因子(共変量)抽出処理)
情報分析装置10のプロセッサ11は、分析条件に含まれる時間軸としての稼働時間を算出すると、因子特徴抽出部103として機能し、分析対象とする装置におけるイベントの発生に影響を及ぼす因子特徴量(共変量)を算出する(ST14)。因子特徴抽出部103としてのプロセッサ11は、稼働データ記憶部31bに記憶されている稼働データに基づいて共変量としての因子を算出する。
【0075】
ここでは、コンプレッサにおける軸受け故障に影響を与える可能性がある乗車率を分析(Cox比例ハザード回帰分析)に利用できる形に変換した特徴量を因子(共変量)として算出する。鉄道車両における乗車率は時間とともに変化するものであるが、Cox比例ハザード回帰分析においては、共変量を分析中に変動しない形で取り扱う。このため、因子特徴抽出部103としてのプロセッサ11は、稼働データから装置が搭載されていた車両における乗車率の平均値を因子(共変量)として算出する。
【0076】
(ST15:関数作成処理)
情報分析装置10のプロセッサ11は、因子を算出すると、関数作成部105として機能し、分析対象とする装置においてイベントが発生する確率を示す関数としてのハザード関数を作成する(ST15)。第1の分析処理において、関数作成部105としてのプロセッサ11は、上述した式1に基づくハザード関数として以下の式2を定義する。
h(t;R)=h0(t)exp(βR)・・・式2
式2において、tは稼働時間であり、Rは共変量(因子)としての乗車率であり、βは乗車率(共変量)のパラメータであるものとする。
【0077】
関数作成部105としてのプロセッサ11は、稼働データ、アセットデータおよび保守データなどを用いて得られるデータを用いて、式2におけるパラメータβを最尤法によって求める。ここでは、βが0.04などの実数として求まるものとする。βが0.04であれば、ハザード関数は、h(t;R)=h0(t)exp(0.04*乗車率)となる。式2において、h0(t)は乗車率を0とした場合のベースハザード関数である。このため、上述したハザード関数によれば、乗車率が50である場合、イベントとしての軸受け故障が発生する確率(故障率)は、ベースハザード関数に対して約2.7(exp(0.04×50)=exp(1)≒2.7)倍に高まることを意味する。
【0078】
(ST16:結果表示処理)
情報分析装置10のプロセッサ11は、ハザード関数を作成すると、表示制御部106として機能し、作成したハザード関数に関する情報をUI装置20の表示装置26に表示する(ST16)。表示制御部106としてのプロセッサ11は、関数作成部105によって求めた共変量のパラメータ(β)に関する情報、および、ハザード関数を用いて算出される生存曲線などの情報をUI装置20の表示装置26に表示する。
【0079】
例えば、
図15に示す表示例では、プロセッサ11は、共変量のパラメータ(β)を乗車率係数0.04として表示し、ハザード関数が示す確率で発生するイベント(軸受け故障)による生存率を示す生存曲線をUI装置20の表示装置26に表示する。
分析者は、UI装置20の表示装置26に表示された結果を参照することにより、装置の寿命などのイベントが発生する確率を予測し、予測に基づいた運用計画の検討を行うことが可能となる。
【0080】
(第2の分析処理)
次に、第1の実施形態に係る情報分析装置10による第2の分析処理について説明する。
第2の分析処理において、情報分析装置10は、分析対象となる装置が別の編成の車両に載せ替ることを考慮して稼働時間を用いたハザード関数を作成する処理を実行する。上述した第1の分析処理では、装置を別の車両に載せ替ることを想定しないため、稼働時間および乗車率などが編成および車両ごとの稼働データから容易に算出できる。すなわち、ある装置が常に同じ編成かつ同じ号車で稼働している場合は上述した第1の分析処理によって生存時間分析としての分析処理が可能である。
【0081】
しかしながら、実際の鉄道車両に搭載される装置は、トラブルなどが発生した場合にすみやかに復旧させるため、倉庫にストックされていた同型の予備品である装置に載せ替えられたり、取り外された装置が別の編成の号車に据え付けられたりすることが運用上あり得る。このような場合、分析対象となる装置の稼働時間や乗車率は、編成および車両ごとの稼働データから単純に算出することができない。
【0082】
すなわち、第2の分析処理では、分析対象となる装置が別の編成の車両に載せ替られることがあることを想定し、稼働環境が異なる別の車両に載せ替えられた装置であっても、稼働時間および乗車率などを稼働状況に合致したデータとしてハザード関数を作成する処理を実行するものである。
【0083】
図17は、別の車両への載せ替えや倉庫への保管などを実施した場合における各装置の稼働時間の例を説明するための図である。
図17では、装置100の稼働時間と倉庫での保管期間とを矢印100で示し、装置300の稼働時間と倉庫での保管期間とを矢印300で示し、装置800の稼働時間と倉庫での保管期間とを点の矢印800で示す。編成Aと編成Bとは、同じ仕様の編成であっても運行時間などの違いから、乗車率が異なるものとする。
図17に示す例において、編成Aの1号車は、平均乗車率が20%であり、編成Bの1号車は平均乗車率が80%であるものとする。
【0084】
図17に示す例において、装置100は、編成Aの1号車に搭載された後、倉庫で保管され、さらに、編成Bの1号車に載せ替えられた様子を示す。装置100は、編成Aの1号車で524時間稼働した後、倉庫で一時的に保管された後に、編成Bの1号車に載せ替えられている。装置100は、編成Aの1号車に搭載されていた間に故障(イベント)が発生することなく、524時間の稼働している。装置100は、一時的に倉庫に保管された後に編成Bの1号車に載せ替えられ、編成Bの1号車において200時間稼働した時点で故障(イベント)が発生している。
【0085】
また、
図17に示す例において、装置300は、編成Bの1号車に搭載され、編成Bの1号車で400時間稼働した後に倉庫に保管されている。また、装置800は、倉庫に保管されていた後に、編成Aの1号車に搭載され、編成Aの1号車で390時間稼働している。
【0086】
図18は、別の編成に載せ替えられることを想定した
図17に示す各装置の稼働状況を示すデータセットを示す図である。
情報分析装置10は、
図17に示す各装置について編成搭載品アセットテーブルおよび各編成の稼働データを参照することにより、
図18に示すような各装置の稼働状況を示すデータセットを作成する。
情報分析装置10のプロセッサ11は、編成搭載品アセットテーブルを参照することにより分析対象とする各装置が搭載されていた編成のリストを抽出する。
【0087】
情報分析装置10のプロセッサ11は、各装置が搭載されていた編成のリストを作成すると、リストにある各編成の稼働データを参照することにより、各編成における各装置の累積の稼働時間を算出する。例えば、各編成における各装置の稼働時間は、
図5に示すような装置が搭載された車両の稼働データテーブルにおいて装置(コンプレッサ)の電力値が0ではないレコード数にサンプリング間隔の時間を乗ずることで累積時間としての稼働時間を計算する。
【0088】
これにより、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図18に示すような分析対象とする各装置についての編成ごとの稼働時間を算出できる。情報分析装置10のプロセッサ11は、各装置の編成ごとの稼働時間を算出すると、分析対象とする個々の装置について
図18に示すような編成ごとの稼働時間を合算することにより、載せ替えがある場合を含む個々の装置における累積の稼働時間が算出できる。
【0089】
また、情報分析装置10のプロセッサ11は、各装置が搭載されていた編成のリストを作成すると、リストにある各編成の稼働データを参照することにより、各装置が搭載されていた各編成の車両における平均乗車率を算出する。例えば、各編成における各装置の稼働時間は、
図5に示すような装置が搭載された車両の稼働データテーブルにおいて装置(コンプレッサ)の電力値が0ではないレコードにおける乗車率から各装置が搭載されていた間の平均乗車率を計算する。これにより、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図18に示すような分析対象とする各装置についての編成ごとの平均乗車率を特定できる。
【0090】
第2の分析処理では、稼働状況(設置環境)が異なる別の編成の車両に装置が載せ替えられることを考慮する必要がある。例えば、
図18に示す製造番号が100の装置(装置100)については、編成Aでの稼働時間と編成Bでの稼働時間とを合算することにより累積の稼働時間が得られるが、編成Aでの平均乗車率と編成Bでの平均乗車率とを単純に合算したり何れかの平均乗車率を選択したりしても実際の稼働状況に合致した因子特徴量とすることができない。このため、第2の分析処理では、載せ替え前後の稼働状況によって影響を受ける共変量としての因子特徴量については実際に装置が搭載されていた各車両における稼働状況に応じて正規化する必要がある。
【0091】
例えば、
図17および
図18に示す装置100の因子特徴量については、編成間の差異を考慮して正規化する手法として、乗車率の加重平均を算出するものとする。装置の載せ替えを考慮した乗車率は、以下の式3によって算出される。
【0092】
Ra=(T1*R1+T2*R2)/(T1+T2)・・・式3
式3では、Ra、T1、R1、T2、R2は、以下のように定義するものとする。
【0093】
Ra:編成間の差異を考慮し正規化した乗車率(共変量)
T1:載せ替え前編成の稼働時間
R1:載せ替え前編成の乗車率
T2:載せ替え後編成の稼働時間
R2:載せ替え後編成の乗車率
上記の式3を用いると、
図18に示す装置100の正規化した乗車率(因子特徴量)は、Ra=(524*30+200*80)/(524+200)=43.8≒44と算出される。
【0094】
図19は、
図18に示すデータセットに対して上述した乗車率の加重平均により正規化した乗車率を算出したデータセットの例を示す図である。
図18に示すデータセットでは、上述したように、装置100について、編成間の差異を考慮して正規化する手法として乗車率の加重平均が算出される。これにより、
図19では、装置100の平均乗車率が上述の計算によって正規化された「44」となっている。
【0095】
次に、第1の実施形態に係る情報分析装置10による第2の分析処理の流れについて説明する。
第2の分析処理は、以下に説明するように、
図16に示す処理の流れで実行される。情報分析装置10は、第2の分析処理として、
図16に示すST13およびST14の処理において上述したような載せ替えを考慮した稼働時間の算出と因子特徴量(共変量)の抽出とを実行し、第1の分析処理と同様にST11、ST12、ST15およびST16の処理を実行する。
【0096】
(ST11:第2の分析処理における分析条件の取得処理)
第2の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図16に示すST11の分析条件の取得処理として、上述した第1の分析処理と同様に、UI装置20に入力される分析条件を取得する(ST11)。
【0097】
(ST12:第2の分析処理におけるイベント生成処理)
第2の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図16に示すST12のイベント生成処理として、上述した第1の分析処理と同様に、個々の装置ごとに分析条件で指定されたイベントの発生状況を確認する(ST12)。
【0098】
(ST13:第2の分析処理における時間情報の算出処理)
第2の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図16に示すST13の時間情報の算出処理として、装置の載せ替えを考慮して各装置の累積の稼働時間を算出する処理を実行する(ST13)。すなわち、プロセッサ11は、稼働時間算出部101として機能し、分析対象とする装置が搭載されていた編成のリストの抽出、分析対象の装置が搭載されていた編成ごとの稼働時間の算出、および、各編成での稼働時間の合算による累積の稼働時間の算出を実行する。
【0099】
情報分析装置10のプロセッサ11は、編成搭載品アセットテーブルを参照することにより分析対象とする各装置が搭載されていた編成のリストを抽出する。情報分析装置10のプロセッサ11は、作成したリストにある各編成の稼働データを参照することにより、各編成における各装置の累積の稼働時間を算出する。情報分析装置10のプロセッサ11は、各装置の編成ごとの稼働時間を算出した後、個々の装置について編成ごとの稼働時間を合算することにより個々の装置における累積の稼働時間を算出する。
【0100】
(ST14:第2の分析処理における因子抽出処理)
第2の分析処理において、プロセッサ11は、
図16に示すST14の因子抽出処理として、装置の載せ替えを考慮して各装置に対する因子特徴量(共変量)を算出する処理を実行する(ST14)。すなわち、プロセッサ11は、因子特徴抽出部103として機能し、分析対象とする装置が搭載されていた編成のリストの抽出、分析対象とする装置が搭載されていた編成ごとの因子特徴量(平均乗車率)の算出、および、編成毎の因子特徴量の正規化(平均乗車率の加重平均)による当該装置の共変量の算出を実行する。
【0101】
情報分析装置10のプロセッサ11は、編成搭載品アセットテーブルを参照して作成したリストにある各編成の稼働データを参照することにより各装置が搭載されていた各編成の車両における平均乗車率を算出する。情報分析装置10のプロセッサ11は、各装置の編成ごとの平均乗車率を算出した後、上述したように、個々の装置について上記式3を用いて乗車率の加重平均を因子特徴量(共変量)として算出する。
【0102】
(ST15:第2の分析処理における関数作成処理)
第2の分析処理において、プロセッサ11は、
図16に示すST15の関数作成処理として、第1の分析処理と同様に、式1に基づくハザード関数を作成する(ST15)。第2の分析処理では、式3が算出される因子特徴量(共変量)としてのRaが算出される。このため、プロセッサ11は、第1の分析処理と同様に最尤法によって求めたパラメータβにより、第2の分析処理によるハザード関数としてのh(t;R)=h0(t)exp(βRa)を算出する。
【0103】
(ST16:第2の分析処理における結果表示処理)
第2の分析処理において、プロセッサ11は、
図16に示すST15の結果表示処理として、第1の分析処理と同様に作成したハザード関数に関する情報をUI装置20の表示装置26に表示する(ST16)。
【0104】
以上のように、第2の分析処理によれば、第1の実施形態に係る情報分析装置10は、分析対象となる装置が別の編成の車両に載せ替られることがある場合であっても、累積の稼働時間を算出でき、稼働環境が異なる別の車両における稼働状況に合致した乗車率などの因子特徴量(共変量)を抽出でき、実際の稼働状況に応じたイベントの発生確率を高い精度で示すハザード関数を作成することができる。この結果として、分析者は、分析対象とする装置が別の車両などに載せ替えられていることなどを意識することなく、表示装置に表示された分析結果によって装置におけるイベントの発生確率や生存率などを確認することが可能となる。
【0105】
(第3の分析処理(絶対時間を考慮した分析処理))
次に、第1の実施形態に係る情報分析装置10による第3の分析処理について説明する。
上述した第1および第2の分析処理では、装置の稼働時間を時間軸としてイベントが発生する確率を分析するものであるが、第3の分析処理では、分析対象とする装置について、編成への搭載/非搭載、および、装置の稼働/不稼働によらない経過時間としての絶対時間を時間軸としてイベントが発生する確率を分析する。
【0106】
装置に故障などのイベントが発生する確率は、稼働時間に連動して高まるとは限らず、単純な時間経過(絶対時間)に連動して高まることもある。例えば、ゴムなどの部品は、単純な時間経過によって硬化などの劣化が進むため、ブッシングなどのゴムを用いた個所を含む装置は、稼働時間とは関係なく、絶対時間に連動して故障などのイベントが発生する確率が高まることが考えられる。
【0107】
第3の分析処理において、情報分析装置10は、稼働時間と関係なくイベントが発生する確率が高まる装置を分析対象とするため、時系列の稼働データから作成する稼働時間だけでなく不稼働の時間も含めた絶対時間を用いて分析を行う。すなわち、第3の分析処理において、情報分析装置10は、分析対象とする装置について、編成への搭載/非搭載、および、装置の稼働/不稼働によらない経過時間を絶対時間として算出する。
【0108】
鉄道事業者は、メーカから納入される装置のうち一部の装置を予備品として数年単位で倉庫に保管することがある。また、メーカは、装置を製造した後に出荷(事業者への納品)までに時間を要することもある、このため、第3の分析処理において、情報分析装置10は、製造データ記憶部32aに記憶する製造データを参照することにより分析対象とする装置の製造日からの絶対時間を算出する。
【0109】
次に、第1の実施形態に係る情報分析装置10による第3の分析処理の流れについて説明する。
情報分析装置10は、第3の分析処理を
図16に示す処理の流れで実行する。第3の分析処理において、
図16に示すST11およびST12の処理は、第1の分析処理と同様な処理が実行される。
【0110】
(ST11:第3の分析処理における分析条件の取得処理)
第3の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図16に示すST11の分析条件の取得処理として、上述した第1の分析処理と同様に、UI装置20に入力される分析条件を取得する(ST11)。
【0111】
(ST12:第3の分析処理におけるイベント生成処理)
第3の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図16に示すST12のイベント生成処理として、上述した第1の分析処理と同様に、個々の装置ごとに分析条件で指定されたイベントの発生状況を確認する(ST12)。
【0112】
(ST13:第3の分析処理における時間情報の算出処理)
第3の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、
図16に示すST13の時間情報の算出処理において、分析対象とする装置について稼働時間と絶対時間とを算出する(ST13)。ここで、分析対象とする装置の稼働時間は上述した第2の分析処理と同様な処理によって算出するようにして良い。分析対象とする装置の稼働時間は絶対時間算出部102として機能する情報分析装置10のプロセッサ11が絶対時間の起点日を特定し、起点日からの経過時間を絶対時間として算出する。
【0113】
例えば、鉄道事業者は、メーカから納入される装置のうち一部の装置を予備品として数年単位で倉庫に保管することがある。また、メーカは、装置を製造した後に出荷(事業者への納品)までに時間を要することもある、このため、第3の分析処理において、情報分析装置10のプロセッサ11は、製造データ記憶部32aに記憶する製造データを参照することにより分析対象とする装置の製造日を特定し、製造日を絶対時間の起点日として絶対時間を算出する。
【0114】
なお、製造データが存在しない装置については、メーカにおける組み立て試験データ、出荷日データ、あるいは、事業者への納入日データ等を参照し、最も古い日付を絶対時間の起点日として採用するようにしても良い。また、製造日、出荷日、納入日などのいずれの日付も取得できない場合、稼働データの始端レコードのタイムスタンプを絶対時間の起点日として採用するようにしても良い。
【0115】
(ST14:第3の分析処理における因子抽出処理)
第3の分析処理において、プロセッサ11は、
図16に示すST14の因子抽出処理として、装置の絶対時間を考慮して各装置に対する因子特徴量(共変量)を算出する処理を実行する(ST14)。情報分析装置10のプロセッサ11は、因子特徴抽出部103として機能し、絶対時間、稼働時間、あるいは、絶対時間と稼働時間との両方を用いて、因子特徴量を計算する。すなわち、プロセッサ11は、算出すべき共変量とする因子特徴量に応じて稼働時間を考慮すべきか否かを判断して因子特徴量を計算する際に用いる時間を切り替える。
【0116】
着目するイベントとしての故障に絶対時間による影響と稼働時間による影響とが混在すると考えられる場合、プロセッサ11は、絶対時間と稼働時間との両方を用いて因子特徴量を算出する。例えば、装置稼働率を因子特徴量(共変量)とする場合、装置稼働率は、絶対時間と稼働時間との両方の影響を受ける。この場合、プロセッサ11は、分析対象とする装置の絶対時間と稼働時間との両方を用いて装置稼働率=稼働時間/絶対時間によって分析対象とする装置の稼働率(装置稼働率)を算出する。
【0117】
また、着目するイベントとしての故障に対する因子特徴量が稼働時間による影響と考えられる場合、プロセッサ11は、第2の分析処理で説明したように稼働時間を用いて因子特徴量を算出する。例えば、平均乗車率を因子特徴量(共変量)とする場合、平均乗車率は、分析対象とする装置の稼働時間に影響を受ける。この場合、プロセッサ11は、分析対象とする装置の稼働時間を用いて平均乗車率=Σ稼働中の乗車率/稼働時間によって分析対象とする装置の平均乗車率を算出する。
【0118】
また、着目するイベントとしての故障に対する因子特徴量が絶対時間による影響と考えられる場合、プロセッサ11は、絶対時間を用いて因子特徴量を算出する。例えば、平均外気温を因子特徴量(共変量)とする場合、平均外気温は、分析対象とする装置の稼働状況によらず絶対時間に影響を受ける。この場合、プロセッサ11は、分析対象とする装置の絶対時間を用いて平均外気温=Σ外気温/絶対時間によって分析対象とする装置の平均乗車率を算出する。
【0119】
(ST15:第3の分析処理における関数作成処理)
第3の分析処理において、プロセッサ11は、
図16に示すST15の関数作成理として、因子特徴抽出処理によって算出した因子特徴量を用いて時間軸を絶対時間としたハザード関数を算出する(ST15)。例えば、プロセッサ11は、上述した式1をアレンジした以下の式4を用いてハザード関数を求める。
【0120】
h(ta;x)=h0(ta)exp(β1P+β2R+β3O)・・・式4
式4では、ta、P、R、O、β(β1、β2、β3)を以下のように定義する。
ta:絶対時間
P:装置稼働率(第1の共変量)
R:装置稼働時の平均乗車率(第2の共変量)
O:平均外気温(第3の共変量)
β1:第1の共変量のパラメータ
β2:第2の共変量のパラメータ
β3:第3の共変量のパラメータ
上記式4は、時間軸を絶対時間とし、第1の共変量としての装置稼働率、第2の共変量としての装置稼働時の平均乗車率および第3の共変量としての平均外気温を用いて作成されるハザード関数を示す。
【0121】
(ST16:第3の分析処理における結果表示処理)
第3の分析処理において、プロセッサ11は、
図16に示すST15の結果表示処理として、ST15で作成したハザード関数に関する情報をUI装置20の表示装置26に表示する(ST16)。例えば、第3の分析処理において、プロセッサ11は、
図15に示すような表示例において、生存曲線の横軸を絶対時間とした生存率を表示装置26に表示する。
【0122】
以上のように、第3の分析処理によれば、第1の実施形態に係る情報分析装置10は、分析対象となる装置が稼働状況によらない経過時間としての絶対時間によって劣化する要素を含む場合に、絶対時間による因子特徴量を抽出し、絶対時間による因子特徴量を含むハザード関数を作成する。これにより、第3の分析処理によれば、絶対時間の影響を受ける要素を含む装置については、稼働時間の影響だけでなく絶対時間の影響を考慮してイベントの発生確率を推定できるハザード関数を作成でき、より高精度な分析を行うことができる。この結果、分析者は、分析対象とする装置について稼働状況だけでなく絶対時間の影響を考慮した分析結果を表示装置で確認することができる。
【0123】
なお、第1の実施形態に係る情報分析装置10は、稼働時間を考慮した分析結果と絶対時間を考慮した分析結果とを比較可能なように表示するようにしても良い。第1の実施形態では、第2の分析処理として稼働時間を考慮した分析について説明し、第3の分析処理として絶対時間を考慮した分析について説明した。情報分析装置10は、稼働時間を考慮した第2の分析処理と絶対時間を考慮した第3の分析処理とを実行し、それらの分析処理の結果をUI装置20の表示装置26に表示することが可能である。
【0124】
分析者は、装置に故障などのイベントが発生するメカニズムが明らかである場合には時間軸として稼働時間又は絶対時間のどちらで分析するか指定できるが、そうでない場合には稼働時間に基づく分析と絶対時間に基づく分析とのどちらを用いて分析すべきか判断することが困難となることがある。このような場合、情報分析装置10は、稼働時間に基づく分析と絶対時間に基づく分析との両方の分析を行って、両方の分析結果を比較可能なようにUI装置20の表示装置26に表示するようにしても良い。
【0125】
この場合、UI装置20は、
図13に示すような分析条件の入力画面において、分析対象の時間軸として、稼働時間および絶対時間の両方を同時に指定できるようにすれば良い。時間軸として稼働時間と絶対時間の両方が指定された場合、情報分析装置10は、第2の分析処理で説明したような時間軸を稼働時間とした分析処理と第3の分析処理で説明した時間軸を絶対時間とした分析処理とを実行する。情報分析装置10は、時間軸を稼働時間とした分析結果と時間軸を絶対時間として分析結果とを一覧できるよう分析結果の表示画面を表示装置26に表示させる。
【0126】
例えば、
図20は、絶対時間(経過時間)を横軸として分析対象とする装置の稼働状態を示す図であり、
図21は、
図20に示す稼働状況の装置について、稼働時間による分析結果と時間軸を絶対時間として分析結果とを一覧で表示した分析結果の表示画面の例を示す図である。
図21に示す分析結果の表示画面によれば、分析者は、分析対象とする装置について、稼働状況による生存率と絶対時間による生存率とを一目で確認することができ、稼働時間と絶対時間とを考慮した生存率を確認しつつ保守計画などを検討をすることができる。
【0127】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、時間に応じた故障などのイベントの発生確率を示すハザード関数を作成することにより分析対象とする装置の生存率などを分析することについて説明したが、装置に発生する故障などのイベントは、時間以外の変量によっても発生確率を推定することが可能である。例えば、装置よっては、接点部における開閉回数(スイッチのオンオフの回数)などの変量に応じて故障などのイベントが発生する確率が予測できる場合がある。第2の実施形態では、時間以外の変量を軸としてハザード関数を作成する形態について説明する。
【0128】
図22は、第2の実施形態に係る情報分析装置10´が備える機能の構成例を説明するためのブロック図である。
第2の実施形態に係る情報分析装置10´および情報分析システム1´のハードウエアは、第1の実施形態で説明した
図2に示すような構成で実現される。第2の実施形態に係る情報分析装置10´およびUI装置20は、第1の実施形態で説明した
図2に示す情報分析装置10およびUI装置20と同様なハードウエア構成を備えるものとする。
【0129】
図22に示す構成例において、情報分析装置10´は、プロセッサ11がプログラムを実行することにより実現する機能として、モード変更回数算出部107、アナログ量積算値算出部108、因子特徴抽出部103、イベント生成部104、関数作成部105および表示制御部106を有する。
図22に示す構成例において、情報分析装置10´は、
図3に示す構成例の稼働時間算出部101および絶対時間算出部102がモード変更回数算出部107およびアナログ量積算値算出部108に置き換わっている点が異なる。
【0130】
第2の実施形態に係る情報分析装置10が備える因子特徴抽出部103、イベント生成部104、関数作成部105および表示制御部106は、第1の実施形態で説明した因子特徴抽出部103、イベント生成部104、関数作成部105および表示制御部106と同様な機能を実現するものであるため、詳細な説明を省略する。また、第2の実施形態に係る情報分析システム1´おけるUI装置20、各サーバ31、32、33およびデータ収集装置40が備える構成についても、第1の実施形態で説明したUI装置20、各サーバ31、32、33およびデータ収集装置40が備える構成と同様なもので実現できるものあるため、詳細な説明を省略する。
【0131】
モード変更回数算出部107は、累積値算出部の一例である。モード変更回数算出部107は、運用データサーバ31が備える稼働データ記憶部31bに記憶された稼働データから接点開閉回数を算出する。例えば、運用データサーバ31が備える稼働データ記憶部31bには、稼働データを示す時系列の各レコードに「0」又は「1」の何れかの値となる接点開閉信号の値を記録するものとする。
【0132】
モード変更回数算出部107は、分析対象とする装置が搭載された車両の稼働データにおいて時系列に並べた接点開閉信号が「0」から「1」(「0」→「1」→「0」)に変化した回数を集計する。モード変更回数算出部107は、接点開閉信号が「0」から「1」に変化した回数の累計値を累積接点開閉回数として保持する。つまり、モード変更回数算出部107は、分析対象とする装置における状態変化を示す信号が変化した回数の累積値を算出する累積算出部である。
【0133】
図23は、接点開閉信号から累積接点開閉回数を算出する処理を説明するための図である。
モード変更回数算出部107は、
図23に示すように時系列に並べた接点開閉信号が得られると、接点開閉信号が「0」から「1」に変化した場合に累積接点開閉回数をインクリメント(+1)する。これにより、モード変更回数算出部107は、接点開閉信号が「0」から「1」に変化することに累積接点開閉回数がカウントアップする。
【0134】
情報分析装置10´の関数作成部105は、モード変更回数算出部107あるいはアナログ量積算値算出部108によって算出される累積値を軸としてハザード関数を作成する。例えば、関数作成部105は、モード変更回数算出部107が算出する累積値としての累積接点開閉回数を時間情報の代わりとすることにより、共変量を乗車率とした第1の実施形態で説明したようなハザード関数を作成する。
【0135】
図24は、モード変更回数算出部107が算出する累積値としての累積接点開閉回数を含むデータセットの例を示す図である。
図24に示す例では、製造番号で特定される各装置について累積接点開閉回数がセットされている。
図24に示すデータセットは、第1の実施形態で説明した
図19に示すデータセットの稼働時間を累積接点開閉回数に置き換えたものとなっている。
【0136】
情報分析装置10´の関数作成部105は、
図24に示すデータセットにおける累積接点開閉回数を時間情報の代わりとすることにより、共変量を乗車率とした第1の実施形態で説明したようなハザード関数が作成できる。関数作成部105は、累積接点開閉回数をcとし、共変量としての平均乗車率をRとし、共変量の係数をβとすると、以下の式6に示すハザード関数を作成する。
【0137】
h(c;x)=h0(c)exp(βR)・・・式6
関数作成部105は、式6におけるパラメータβを
図24に示すようなデータセットから算出することにより分析対象とする装置においてイベントが発生する確率を示すハザード関数を作成する。
【0138】
表示制御部106は、関数作成部105が作成するハザード関数に基づいて生存率を示す生存曲線を含む分析結果をUI装置20の表示装置26に表示する。
図25は、生存曲線の表示例を示す図である。
図25に示す表示例では、横軸が累積接点開閉回数であり、縦軸が生存率である。
装置を製造するメーカによる保障などでは、当該装置の開閉回数の限度値などが規定されていることがある。このような場合、メーカが保障する情報とを比較しやすい形で分析結果を表示できる。
【0139】
次に、第2の実施形態に係る情報分析装置10´による分析処理の流れについて説明する。
図26は、第2の実施形態に係る情報分析装置10´による累積値を用いた分析処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図26に示す処理において、ST23の処理以外の各処理は、第1の実施形態で説明した
図16に示す各処理と同様に実施できる。このため、以下の
図26の説明としては、各処理についての詳細な説明を省略するものとする。
【0140】
(ST11:分析条件の取得処理)
第2の実施形態に係る情報分析装置10´のプロセッサ11は、第1の実施形態で説明した
図16に示すST11の分析条件の取得処理と同様に、UI装置20に入力される分析条件を取得する(ST11)。
【0141】
(ST12:イベント生成処理)
情報分析装置10´のプロセッサ11は、分析条件を取得すると、第1の実施形態で説明した
図16に示すST12のイベント生成処理と同様に、個々の装置ごとに分析条件で指定されたイベントの発生状況を確認する(ST12)。
【0142】
(ST23:累積値の算出処理)
情報分析装置10´のプロセッサ11は、
図16に示すST13の時間情報の算出処理の代わりに累積値の算出処理を実行する(ST23)。第2の実施形態に係る情報分析装置10´のプロセッサ11は、分析対象とする装置が搭載されていた編成のリストを抽出し、分析対象の装置が搭載されていた編成ごとに累積値を算出し、各編成での累積値を合算することにより個々の装置の累積値を算出する。
【0143】
例えば、上述したように、モード変更回数算出部107が累積値としての累積接点開閉回数を算出するものとする。この場合、情報分析装置10´のプロセッサ11は、編成搭載品アセットテーブルを参照することにより分析対象とする各装置が搭載されていた編成のリストを抽出する。情報分析装置10´のプロセッサ11は、作成したリストにある各編成の稼働データを参照することにより、各編成における各装置の累積接点開閉回数を算出する。情報分析装置10´のプロセッサ11は、各装置の編成ごとの累積接点開閉回数を算出した後、個々の装置について編成ごとの累積接点開閉回数を合算することにより個々の装置における累積接点開閉回数を算出する。
【0144】
(ST14:因子抽出処理)
情報分析装置10´のプロセッサ11は、第1の実施形態で説明した
図16に示すST14の因子抽出処理と同様に、各装置に対する因子特徴量(共変量)を算出する処理を実行する(ST14)。例えば、分析対象とする装置についての因子特徴量(共変量)としての平均乗車率を算出する。
【0145】
(ST15:関数作成処理)
情報分析装置10´のプロセッサ11は、第1の実施形態で説明した
図16に示すST15の関数作成処理と同様に、式1に基づくハザード関数を作成する(ST15)。第2の実施形態に係る情報分析装置10´のプロセッサ11は、累積値および因子特徴量(共変量)を用いてハザード関数を作成する。例えば、プロセッサ11は、
図24に示すような累積値cと共変量Rとを含むデータセットから最尤法によって求めたパラメータβによってハザード関数としてのh(c;R)=h0(c)exp(βR)を算出する。
【0146】
(ST16:結果表示処理)
第2の実施形態に情報分析装置10のプロセッサ11は、
図26に示すST15の結果表示処理として、作成したハザード関数に関する情報をUI装置20の表示装置26に表示する(ST16)。例えば、プロセッサ11は、
図15に示す表示画面の生存曲線を
図25に示す生存曲線とした表示画面をUI装置20の表示装置26に表示することにより、累積値に応じた生存率を示す分析結果を表示する。
【0147】
以上のように、第2の実施形態に係る情報分析装置は、装置に発生するイベントに影響を与える時間以外の変量として累積値を算出でき、時間以外の変量に応じたイベントの発生確率を示すハザード関数を作成することができ、時間以外の変量によってイベントが発生する確率を示す情報を表示することができる。この結果として、分析者は、時間以外の変量に応じて装置にイベントが発生する確率などを容易に確認することが可能となる。
【0148】
上述した分析処理の例では、累積値を累積接点開閉回数とした場合について説明したが、第2の実施形態に係る情報分析装置が作成するハザード関数に用いる累積値は、一方的に増えるのみで減ることがない性質を持ち、なおかつ時間によって単調増加する累積値でなければ良い。例えば、装置の動作回数や装置の動作モード変更回数であれば良く、パンタグラフの昇降回数、積算電力量、温度サイクル(低、高)数、扉の開閉回数、ブレーキの動作回数、コンプレッサの動作回数、電力変換装置の動作モードの変更回数、コンデンサやバッテリの充放電回数、機器の通電回数の累積値などが考えられる。これらの累積値は、時間によって単調に増加するわけではないが、徐々に累積値が増える性質がある。
【0149】
図22では、累積値を算出する累積値算出部の例としてアナログ量積算値算出部108を示している。アナログ量積算値算出部108は、稼働データから得られる装置が使用するアナログ量の積算値を累積値として算出する。例えば、アナログ量積算値算出部108は、
図5に示すような稼働データにおける装置(コンプレッサ)の電力量を積算することにより積算電力量を累積値として算出する。
【0150】
モード変更回数算出部107およびアナログ量積算値算出部108のような累積値算出部はプロセッサ11によって実現される機能であり、第2の実施形態に係る情報分析装置10´は、温度サイクル数やコンデンサの充放電数などの累積値を算出する機能もプロセッサ11によって実現可能である。
【0151】
また、情報分析装置10´が上述したような種々の累積値を用いてハザード関数を作成する機能を有する場合、UI装置20では、分析条件で軸(特徴軸)とする変量を累積回数や累積電力量などの累積値から分析者が操作装置27を用いて指定できるようにすれば良い。これにより、第2の実施形態に係る情報分析装置10´では、種々の累積値を用いてイベントが発生する確率を示す関数が作成可能となる。
【0152】
なお、第1の実施形態と第2の実施形態とは組み合わせて実施することが可能である。例えば、
図3に示す構成と
図22に示す構成とを有する情報分析装置は、分析条件で特徴軸とする変量を、稼働時間、絶対時間、種々の累積値などから分析者が指定できるようにしても良い。これにより、第1および第2の実施形態に係る情報分析装置では、稼働時間、絶対時間、種々の累積値などの分析条件に含むハザード関数を作成したり、各種の分析条件でのハザード関数を比較可能な形式で表示したりすることが可能となる。
【0153】
なお、上記した各処理はいくつかのソフトウェアによって実行することが可能である。このため、上記処理の手順を実行するいくつかのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこれらプログラムを遠隔操作装置にインストールして実行することで、上記処理を容易に実現することができる。例えば、遠隔操作装置は、プログラムをネットワーク経由でダウンロードし、ダウンロードしたプログラムを記憶することで、プログラムをインストールするようにしても良い。また、遠隔操作装置は、上記プログラムを各種の情報記憶媒体から読み取り、読み取ったプログラムを記憶することで、プログラムをインストールするようにしても良い。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
1…情報分析システム、10、10´…情報処理装置、11…プロセッサ、14…記憶部、15…インターフェース、16…インターフェース、20…ユーザインターフェース(UI)装置、21…プロセッサ、25…インターフェース、26…表示装置、27…操作装置、31…運用データサーバ、31a…アセットデータ記憶部、31b…稼働データサーバ、32…製造データサーバ、32a…製造データ記憶部、33…保守データサーバ、33a…保守データ記憶部、40…データ収集装置、101…稼働時間算出部、102…絶対時間算出部、103…因子特徴抽出部、104…イベント生成部、105…関数作成部、106…表示制御部、107…モード変更回数算出部、108…アナログ量積算値算出部。