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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038918
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】膜分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20240313BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240313BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20240313BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240313BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B01D65/02
C02F1/44 A
B01D65/02 520
B01D65/06
B01D61/58
B01D61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143289
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】591083299
【氏名又は名称】東レ・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】内山 俊之
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA55Z
4D006JA63Z
4D006JA67Z
4D006KA42
4D006KA46
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA72
4D006KB04
4D006KC02
4D006KC03
4D006KC14
4D006KC16
4D006KC20
4D006KD22
4D006KE06P
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE09P
4D006KE13P
4D006KE19P
4D006KE21P
4D006KE24Q
4D006PA01
4D006PC44
(57)【要約】
【課題】系内の清浄度と膜分離手段の分離性能を維持可能な膜分離装置の運転方法を提供する。
【解決手段】原水を供給して透過水と濃縮水とに分離する膜分離モジュール内における透過水と濃縮水の流れる向きを変更可能に構成される膜分離装置の運転方法であって、膜分離モジュールの透過水出口から透過水を採り出す採水工程と、膜分離モジュールの濃縮水出口から原水を排出することにより膜分離モジュールを洗浄する洗浄工程と、を実施することを特徴とする膜分離装置の運転方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を供給して透過水と濃縮水とに分離する膜分離モジュール内における前記透過水と前記濃縮水の流れる向きを変更可能に構成される膜分離装置の運転方法であって、
前記膜分離モジュールの透過水出口から前記透過水を採り出す採水工程と、
前記膜分離モジュールの濃縮水出口から前記原水を排出することにより前記膜分離モジュールを洗浄する洗浄工程と、を実施することを特徴とする膜分離装置の運転方法。
【請求項2】
前記採水工程の後に、前記原水の供給を休止する休止工程を実施し、前記原水の供給を再開して採水工程を実施するタイミングで前記透過水の流れる向きを変更する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項3】
さらに、前記膜分離モジュールの透過水出口からエアーを注入し、前記膜分離モジュールの濃縮水出口におけるエアーの混入有無を検知するエアー注入工程を実施する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項4】
さらに、前記膜分離モジュールの透過水出口から洗浄薬液を注入する薬液洗浄工程を実施する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項5】
前記洗浄工程において、前記膜分離モジュールの透過水出口を閉止した状態で前記膜分離モジュールに供給される前記原水の圧力を所定値以下に制御する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項6】
前記洗浄工程において、前記膜分離モジュールに供給される前記原水に泡を混在させる、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項7】
前記採水工程において、前記透過水と前記濃縮水を、前記膜分離モジュールの膜面を隔てて同じ向きに流す、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項8】
前記採水工程において、一の膜分離モジュール内における前記透過水または前記濃縮水の流れる向きを変更できない事象が生じたときは、前記一の膜分離モジュール内における前記透過水と前記濃縮水の流れる向きの変更を停止する、請求項7に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項9】
前記洗浄工程において、前記膜分離モジュールの原水入口圧力と濃縮水出口圧力を測定し、前記原水入口圧力と前記濃縮水出口圧力の差を指標として洗浄効果を判定する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項10】
前記採水工程において、前記膜分離モジュール原水入口圧力と濃縮水出口圧力を測定し、前記原水入口圧力と前記濃縮水出口圧力の差を指標として汚れ付着度合を推定する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項11】
前記汚れ付着度合の推定結果に基づいて、前記洗浄工程の実施条件を決定する、請求項10に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項12】
前記膜分離装置が複数の膜分離モジュールからなり、各々の前記膜分離モジュールについて前記汚れ付着度合を推定し、前記洗浄工程の実施条件を決定する、請求項11に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項13】
前記膜分離装置が直列に接続された複数の膜分離モジュールからなり、前記採水工程において、各々の前記膜分離モジュールの膜透過流量、差圧または排除率を測定し、前記透過水と前記濃縮水の流れる向きを変更する前後における前記膜透過流量、前記差圧または前記排除率の差分の経時的な変動を検知することにより、前記膜分離モジュールごとに分離性能の劣化を判定する、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。
【請求項14】
前記膜分離モジュールが逆浸透膜からなる、請求項1に記載の膜分離装置の運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系内のクリーン化が図られ、高度に安定した運転性能を実現する膜分離装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析治療のために必要な透析液を集中して調製する『セントラル透析液供給システム(CDDS)』は、現在 国内で主流のシステムとなっている。大量の透析液の調製には、大量の希釈用の精製水が必要であり、これを主に水道水などを原水として、逆浸透法による膜分離技術を用いた精製水製造装置によって精製水を得ている。ダイアライザーなどの血液浄化器の内部で、中空糸膜を介して患者の血液と接する透析液を希釈作製する精製水に対する清浄化の要求は高まる一方となっている。
【0003】
高い清浄度の精製水を得るためには、これらの膜分離モジュールに対して、熱水による消毒や低濃度の薬液による洗浄を定期的に確実に実施することが重要となるが、いったん汚染が進行すると消毒や洗浄を経ても系内を十分に清浄化できなくなる恐れがある。
【0004】
系内の汚染を防止するためには、流路に水の滞留や淀みが生じにくいような構造を採用する方法が考えられる。例えば特許文献1には、RO膜モジュールの集水管の一端側と貯水タンクが透過水ラインで接続され、貯水タンクとRO膜モジュールの集水管の他端側が透過水返送ラインで接続され、透過水ライン、集水管及び透過水返送ラインにより循環洗浄ラインが形成された精製水製造装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、RO膜の閉塞等による逆浸透システムの動作不調を検知して対策を判定する診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-106188号公報
【特許文献2】特開2019-202305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、RO膜等を用いた膜分離装置は、系内を清浄に保ちつつ安定した運転を行うことが求められている。そこで本発明の課題は、系内の清浄度と膜分離手段の分離性能を維持可能な膜分離装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る膜分離装置の運転方法は、
原水を供給して透過水と濃縮水とに分離する膜分離モジュール内における前記透過水と前記濃縮水の流れる向きを変更可能に構成される膜分離装置の運転方法であって、
前記膜分離モジュールの透過水出口から前記透過水を採り出す採水工程と、
前記膜分離モジュールの濃縮水出口から前記原水を排出することにより前記膜分離モジュールを洗浄する洗浄工程と、を実施することを特徴とする方法からなる。
【0009】
本発明の膜分離装置の運転方法によれば、膜分離モジュールの透過水出口から透過水を採り出す採水工程と、膜分離モジュールの濃縮水出口から原水を排出する洗浄工程とを、透過水と濃縮水の流れる向きを変更しながら実施することにより、系内の清浄度と膜分離手段の分離性能を維持することが可能となる。具体的には、前記採水工程の後に、前記原水の供給を休止する休止工程を実施し、前記原水の供給を再開して採水工程を実施するタイミングで前記透過水の流れる向きを変更するようにすれば、スケール等の汚れが蓄積しにくい透過水出口の位置も変更されるので、膜分離モジュールへの汚れの蓄積を分散して系内清浄度を長期間にわたり維持することができる。
【0010】
本発明の膜分離装置の運転方法において、さらに、前記膜分離モジュールの透過水出口からエアーを注入し、前記膜分離モジュールの濃縮水出口におけるエアーの混入有無を検知するエアー注入工程を実施してもよい。通常であればエアーが分離膜を通過しない圧力条件下で透過水出口からエアーを注入した場合に、濃縮水出口から排出される洗浄廃水にエアーが混入した場合には、分離膜が破損していることが想定される。このようなエアーの混入を検知した場合には、膜分離モジュールの異常を知らせる警報を発出したり、膜分離装置を停止させるように運転制御をすることができる。
【0011】
本発明の膜分離装置の運転方法において、さらに、前記膜分離モジュールの透過水出口から洗浄薬液を注入する薬液洗浄工程を実施してもよい。洗浄薬液は、RO膜表面に付着する汚れの性質に応じて適当なものを選択することが好ましく、例えば逆浸透膜(RO膜)に対しては過酸化水素水、クエン酸や酢酸等が採用可能である。定期的あるいは不定期に透過水ラインを薬液洗浄することにより、原水を用いた濃縮水ラインの洗浄では十分に清浄化できない透過水ラインを清浄化することが可能となる。
【0012】
本発明の膜分離装置の運転方法の洗浄工程において、前記膜分離モジュールに供給される前記原水に泡を混在させてもよい。混在させる泡の種類は、直径1~100μmのいわゆるマイクロバブルや、直径1μm未満のいわゆるウルトラファインバブルなどであることが好ましい。これらの微細気泡はファインバブルと呼ばれ、膜分離モジュールの原水入口端面に滞留あるいは堆積するスラッジ等の汚れ成分の剥離を物理的に弾ける力により促進することができる。
【0013】
本発明の膜分離装置の運転方法の洗浄工程において、前記膜分離モジュールの透過水出口を閉止した状態で前記膜分離モジュールに供給される前記原水の圧力を所定値以下に制御することも可能である。膜分離モジュールの透過水出口を閉止した状態で洗浄工程を行う場合に、原水圧力を制限することにより、過大な圧力がかかることによる分離膜の破損を防止することができる。
【0014】
本発明の膜分離装置の運転方法の採水工程において、前記透過水と前記濃縮水を、前記膜分離モジュールの膜面を隔てて同じ向きに流すことが好ましい。いわゆる外圧式の膜分離装置で両端開放型の集水管を用いた場合には、このような並流運転の方が、対向流の場合よりも集水管上流側の原水圧力を高めることができるので、集水管内の淀みを効果的に防止することができる。
【0015】
本発明の膜分離装置の運転方法の前記採水工程において、一の膜分離モジュール内における前記透過水または前記濃縮水の流れる向きを変更できない事象が生じたときは、前記一の膜分離モジュール内における前記透過水と前記濃縮水の流れる向きの変更を停止することが好ましい。一般的に濃縮水ラインには原水由来の異物が混入しやすいので、濃縮水ラインに設けられる弁類は比較的故障が生じやすいため、流路切り替えができなくなったときは弁類の流路変更動作を無効とし、同じ膜分離モジュールの透過水ラインに設けられる弁類についても流路変更動作を無効とすれば、透過水と濃縮水が膜分離モジュールの膜面を隔てて同じ向きに流れる、いわゆる並流運転を継続することができる。
【0016】
本発明の膜分離装置の運転方法の洗浄工程において、前記膜分離モジュールの原水入口圧力と濃縮水出口圧力を測定し、前記原水入口圧力と前記濃縮水出口圧力の差を指標として洗浄効果を判定することが可能である。例えば異物堆積や目詰まりは、当該差圧の上昇の度合いから推定可能であるので、所定の判定条件を設けることにより、堆積した異物や目詰まり物質が除去されたことを判定できる。
【0017】
本発明の膜分離装置の運転方法の採水工程において、前記膜分離モジュールの原水入口圧力と濃縮水出口圧力を測定し、前記原水入口圧力と前記濃縮水出口圧力の差を指標として汚れ付着度合を推定することが可能である。洗浄効果の判定の場合と同様に、異物堆積や目詰まりは当該差圧の上昇の度合いから推定可能であるので、採水工程において、異物や目詰まり物質等の汚れが膜面や膜分離モジュール端面に付着したことを推定できる。さらに、汚れ付着度合の推定結果に基づいて、前記洗浄工程の実施条件を決定するように運転制御プログラムを設定すれば、特にモジュール洗浄が必要な状況となった時に効果的に洗浄工程を実施することができる。前記膜分離装置が複数の膜分離モジュールからなる場合には、各々の前記膜分離モジュールについて前記汚れ付着度合を推定し、前記洗浄工程の実施条件を決定することにより、モジュール単位で洗浄の必要性を判断できるので、より効果的な洗浄工程の実施が可能となる。また単体・複数の膜分離モジュールからなる場合、透過水と濃縮水とに分離する膜分離モジュール内における透過水と濃縮水の流れる向きを変更することで、各センサーにおける差分を絶対値にて計測し、比較計算により不具合箇所の特定診断の精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の膜分離装置の運転方法において、前記膜分離装置が直列に接続された複数の膜分離モジュールからなり、前記採水工程において、各々の前記膜分離モジュールの膜透過流量、差圧または排除率を測定し、前記透過水と前記濃縮水の流れる向きを変更する前後における前記膜透過流量、前記差圧または前記排除率の差分を計算することにより、前記膜分離モジュールごとに分離性能の劣化を検知することが可能である。すなわち各々の膜分離モジュールごとに、膜の目詰まりによる劣化(B)や膜の破れによる劣化(C)分離性能の劣化を検知することができる。
【0019】
本発明の膜分離装置の運転方法は、前記膜分離モジュールが逆浸透膜からなる場合に好適である。透析液を希釈作製する精製水を製造する膜分離装置においては特に系内のクリーン化が求められるので、本発明の適用によりそのような要求を満たすことが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、膜分離装置の系内を清浄に保ちつつ安定した運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施態様に係る膜分離装置の運転方法の採水工程を示す概略フロー図である。
図2図1の膜分離装置において透過水と濃縮水を逆向きに流す場合を示す概略フロー図である。
図3図1の膜分離装置の運転方法の洗浄工程を示す概略フロー図である。
図4図3の洗浄工程において原水を逆向きに流す場合を示す概略フロー図である。
図5】本発明の他の実施態様に係る膜分離装置の運転方法のエアー注入工程を示す概略フロー図である。
図6】本発明のさらに他の実施態様に係る膜分離装置の運転方法の薬品洗浄工程を示す概略フロー図である。
図7】本発明の膜分離装置が複数の膜分離モジュールからなる場合の採水工程の一例を示す概略フロー図である。
図8図7の膜分離装置において透過水と濃縮水を逆向きに流す場合を示す概略フロー図である。
図9】本発明の膜分離装置が複数の膜分離モジュールからなる場合の採水工程の他の例を示す概略フロー図である。
図10図9の膜分離装置において透過水と濃縮水を逆向きに流す場合を示す概略フロー図である。
図11図7または図9の膜分離装置において膜分離モジュールに劣化が生じた場合の挙動を説明するための概略フロー図であり、(A)は膜面への異物堆積による劣化、(B)は膜の目詰まりによる劣化、(C)は膜の破れによる劣化が生じた場合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施態様に係る膜分離装置1の運転方法の採水工程を示す概略フロー図であり、図2は透過水と濃縮水を逆向きに流す場合を示す場合を示している。破線は弁の閉止により水が流れていない流路を示し、水が流れている流路は実線で示す。また三方弁3、13、33、43の閉止箇所を黒色で示す。図1において、ROポンプ2により膜分離装置に供給される原水は、三方弁33を経て膜分離モジュール4に流入し、RO透過水とRO濃縮水に分離される。RO濃縮水は三方弁3、43を経て一部は系外に排出され、一部は逆止弁7を経てROポンプ2の吸入側に戻される。RO透過水は膜分離モジュール4の集水管4aから流出し、三方弁13を経て透過水タンク6(図示略)に貯留される。
【0023】
原水ラインには、ROポンプ2の下流で微細気泡を発生させる微細気泡発生器12と、発生した微細気泡を注入する三方弁53が設けられ、透過水タンク6には殺菌灯8と液面計9が設けられ、後述する洗浄工程等で原水に泡を混在させることができるように構成されている。
【0024】
膜分離モジュール4の原水入口部および濃縮水出口部には圧力計16が設けられ、透過水出口部には三方弁3の下流側に流量計17が設けられている。圧力計16や流量計17の設置箇所には併せて電導度計26(図示略)を設置してもよい。
【0025】
図2において、ROポンプ2により膜分離装置に供給される原水は、三方弁3を経て膜分離モジュール4に流入し、RO透過水とRO濃縮水に分離される。RO濃縮水は三方弁33、43を経て一部は系外に排出され、一部は逆止弁7を経てROポンプ2の吸入側に戻される。RO透過水は膜分離モジュール4の集水管4aから流出し、三方弁13を経て透過水タンク6(図示略)に貯留される。その他については図1と同様である。
【0026】
図3図1の膜分離装置1の運転方法の洗浄工程を示す概略フロー図であり、図4は原水を逆向きに流す場合を示す場合を示している。破線は弁の閉止により水が流れていない流路を示し、水が流れている流路は実線で示す。また三方弁3、13、33、43の閉止箇所を黒色で示す。
【0027】
原水ラインには、ROポンプ2の下流でマイクロバブル等の微細気泡を発生させる微細気泡発生器12と、発生した微細気泡を注入する三方弁53が設けられ、原水に泡を混在させることができる。このような泡を混入させた原水を用いると膜分離モジュール4の洗浄効果を高めることができる。なお「FINE BUBBLE / ファインバブル」、「ウルトラファインバブル」は、一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)の商標または登録商標である。
【0028】
ROポンプ2により、泡22が混在した原水は三方弁3を経て膜分離モジュール4に送られてRO膜の端面4bに付着したスラッジ(鉄分、砂、藻、活性炭粒子など)からなる異物18を押し流す。透過水ラインを三方弁13により閉止した状態で、濃縮水出口から三方弁33、43を経て原水がブローされ、系外に排出される。
【0029】
図4において、ROポンプ2により膜分離モジュール4に送られる原水は、三方弁33を経て膜分離モジュール4に流入してRO膜の端面4bに付着したスラッジ(鉄分、砂、藻、活性炭粒子など)からなる異物18を押し流す。透過水ラインを三方弁13により閉止した状態で、濃縮水出口から三方弁3、43を経て原水がブローされ、系外に排出される。その他については図3と同様である。
【0030】
図5は、本発明の他の実施態様に係る膜分離装置の運転方法のエアー注入工程を示す概略フロー図である。エアー注入工程は、採水工程や洗浄工程の前後において定期的あるいは不定期に実施することができる。
【0031】
図5において、原水ラインは閉止した状態で、濃縮水の両端出口を開放し、エアー注入ポンプ24を用いて集水管4aにエアーを注入し、エアーリークテストを実施する。RO膜に膜破れ21が生じると、ROポンプ2の運転圧力(インバータ周波数)の低下やRO透過水の電導度が上昇することで膜分離モジュールの不具合が推定可能であるが、RO膜破れ21の有無を確実に診断するためにはエアーリークテストが確実な方法であるといえる。エアーリークにより濃縮水出口側にエアーが混入しているか否かは光学機器により検知可能であるが、圧力計16によりエアーリークを検知することも可能である。
【0032】
図6は、本発明の他の実施態様に係る膜分離装置の運転方法の薬品洗浄工程を示す概略フロー図である。薬品洗浄工程は、採水工程や洗浄工程の前後において定期的あるいは不定期に実施することができる。
【0033】
図6において、原水ラインは閉止した状態で、濃縮水の両端出口を開放し、薬液注入ポンプ25を用いて洗浄用の過酸化水素水(pH3~4)などを集水管4aに注入し、0.2~0.25MPaの圧力を保持しながら2時間程度静置し、膜分離モジュールを薬液に浸漬することにより、膜面に付着したファウリング物質やスケール等を除去することができる。
【0034】
図7は本発明に係る膜分離装置11が複数の膜分離モジュールからなる場合の採水工程の一例を示す概略フロー図であり、図8は透過水と濃縮水を逆向きに流す場合を示す場合を示している。破線は弁の閉止により水が流れていない流路を示し、水が流れている流路は実線で示す。また三方弁3、13、23、33、43の閉止箇所を黒色で示す。図7において、ROポンプ2により膜分離装置に供給される原水は、三方弁3を経て第一膜分離モジュール4に流入し、第一RO透過水と第一RO濃縮水に分離される。第一RO濃縮水は第二膜分離モジュール5に流入し、第二RO透過水と第二RO濃縮水に分離される。第一RO透過水は第一膜分離モジュール4の集水管4aから流出し、第二RO透過水は第二膜分離モジュール5の集水管5aから流出して、三方弁13、23を経て透過水タンク6に貯留される。第二RO濃縮水は三方弁33、43を経て一部は系外に排出され、一部は逆止弁7を経てROポンプ2の吸入側に戻される。図8においては、図7に示した第一膜分離モジュール4と第二膜分離モジュール5の順序と、三方弁3と三方弁33の順序が入れ替わり、ROポンプ2により膜分離装置に供給される原水は、三方弁33を経て第二膜分離モジュール5に流入し、第二RO透過水と第二RO濃縮水に分離される。第二RO濃縮水は第一膜分離モジュール4に流入し、第一RO透過水と第一RO濃縮水に分離される。第二RO透過水は第二膜分離モジュール5の集水管5aから流出し、第一RO透過水は第一膜分離モジュール4の集水管4aから流出して、三方弁13、23を経て透過水タンク6に貯留される。第一RO濃縮水は三方弁3、43を経て一部は系外に排出され、一部は逆止弁7を経てROポンプ2の吸入側に戻される。
【0035】
透過水タンク6には殺菌灯8と液面計9が設けられ、精製水ポンプ10により図示されない透析液製造装置に送られる。
【0036】
第一膜分離モジュール4および第二膜分離モジュール5の入口部および出口部などには圧力計16および流量計17が設けられている。圧力計16や流量計17の設置箇所には併せて電導度計26(図示略)を設置してもよい。
【0037】
図9は、本発明に係る膜分離装置31が複数の膜分離モジュールからなる場合の採水工程の他の例を示す概略フロー図であり、図10は透過水と濃縮水を逆向きに流す場合を示す場合を示している。図9において、ROポンプ2により膜分離装置に供給される原水は、三方弁3を経て第一膜分離モジュール14に流入し、第一RO透過水と第一RO濃縮水に分離される。第一RO濃縮水は第二膜分離モジュール15に流入し、第二RO透過水と第二RO濃縮水に分離されるが、集水管14aから流出した第一RO透過水が第二膜分離モジュール15の集水管15aに流入して、集水管15a内で第二RO透過水と合流し、集水管15aから流出した透過水が透過水タンク6に貯留される点が図7のフローと異なる。第二RO濃縮水は、図7のフローと同様に、三方弁33、43を経て一部は系外に排出され、一部は逆止弁7を経てROポンプ2の吸入側に戻される。図10においては、図9に示した第一膜分離モジュール14と第二膜分離モジュール15の順序と、三方弁3と三方弁33の順序が入れ替わり、ROポンプ2により膜分離装置に供給される原水は、三方弁33を経て第二膜分離モジュール15に流入し、第二RO透過水と第二RO濃縮水に分離される。第二RO濃縮水は第一膜分離モジュール14に流入し、第一RO透過水と第一RO濃縮水に分離されるが、集水管15aから流出した第二RO透過水が第一膜分離モジュール14の集水管14aに流入して、集水管14a内で第一RO透過水と合流し、集水管14aから流出した透過水が透過水タンク6に貯留される点が図8のフローと異なる。第一RO濃縮水は、図8のフローと同様に、三方弁3、43を経て一部は系外に排出され、一部は逆止弁7を経てROポンプ2の吸入側に戻される。
【0038】
膜分離装置11、31の運転方法としては、連続運転も可能であるが、透過水タンク6の容量が透過水の消費量に比して大きい場合には採水の開始および停止を繰り返す間欠運転をしてもよい。この場合、透過水と濃縮水の流れ方向を図7または図9に示した向きで採水開始して透過水タンク6が透過水で満たされた場合に採水を停止し、透過水タンク6の液面が所定レベルまで低下した際には透過水と濃縮水の流れ方向を図8または図10に示した向きに変更して採水開始することができる。このように透過水と濃縮水の流れ方向を随時入れ替えながら運転すれば、膜分離モジュールにかかる負荷の偏りが緩和され、膜の寿命を延ばすことが可能である。
【0039】
透過水と濃縮水の流れる向きの切り替えに使用される各三方弁の内一つが故障するなどして透過水または濃縮水の流れる向きを変更できなくなった場合は、動作が継続するよう、故障個所を判定し、正常に作動している残りの三方弁の自動制御を行うことができる。具体的には、濃縮水ラインには原水由来の異物が混入しやすいので、濃縮水ラインに設けられる三方弁は比較的故障が生じやすい。そこで、三方弁の流路切り替えができなくなったときは、当該三方弁の流路変更動作を無効とし、同じ膜分離モジュールの透過水ラインに設けられる三方弁についても流路変更動作を無効とすれば、透過水と濃縮水が膜分離モジュールの膜面を隔てて同じ向きに流れる、いわゆる並流運転を継続することができる。例えば図7の濃縮水の切替を行う三方弁3が故障した場合は、現状流路を確保するため濃縮水の切替を行う三方弁33および透過水三方弁13の流路変更動作を無効とすることで、透過水と濃縮水が膜分離モジュールの膜面を隔てて同じ向きに流れる並流運転を継続できる。
【0040】
図11は、図7または図9の膜分離装置11、31において、いずれかの膜分離モジュールに劣化が生じた場合の挙動を説明するための概略フロー図であり、(A)は膜面への異物堆積による劣化、(B)は膜の目詰まりによる劣化、(C)は膜の破れによる劣化が生じた場合をそれぞれ示す。
【0041】
膜分離モジュールの劣化(A)~(C)を検知するために、個々の膜分離モジュールの入口側、出口側および集水管出口側に圧力計16、電導度計26(図示略)および流量計17などを設置して、劣化状況を監視することができる。
【0042】
例えば図11(A)に示すように原水入口側に異物18が堆積した場合には、圧力や流量の変動が生じるので、変動幅が所定値を超えた場合には膜面への異物堆積による劣化(A)の推定フラグが立つように劣化状況監視プログラムを設定しておく。運転を継続し、採水の開始および停止を所定回数繰り返した後に、圧力や流量の変動幅が所定値を下回った場合には、膜面への異物堆積による劣化(A)がいったん生じて回復したものと判定する。採水の開始および停止を所定回数繰り返した後も、圧力や流量の変動幅が所定値を超えたままである場合には、採水停止中のタイミングで原水ラインに原水を勢いよく流して短時間のフラッシング洗浄を実施し、圧力や流量の変動幅が所定値を下回った場合には、劣化要因が膜面への異物堆積による劣化(A)であり、既に回復したものと判定する。
【0043】
また、例えば図11(B)に示すように、スケール19やその他のファウリング20による膜の目詰まりが生じた場合には、圧力や流量の変動が生じるので、変動幅が所定値を超えた場合には膜の目詰まりによる劣化(B)の推定フラグが立つように劣化状況監視プログラムを設定しておく。膜の目詰まりによる劣化(B)の場合には、運転を継続しても膜面への異物堆積による劣化(A)のように自然に回復することが期待できないので、採水の開始および停止を所定回数繰り返した後や、上述の短時間のフラッシング洗浄を実施した後に、圧力や流量の変動幅が所定値を下回った場合には、膜の目詰まりによる劣化(B)の推定フラグをキャンセルする。所定時間を超えて膜の目詰まりによる劣化(B)の推定フラグが立ったままである場合には、劣化要因が膜の目詰まりによる劣化(B)であると判定し、モニター画面にその旨を表示させる。また、通信手段を用いて膜分離装置のメンテナンス会社に警報を発信することも可能である。
【0044】
さらに、例えば図11(C)に示すように、膜の破れ21が生じた場合には、ROポンプ2の運転圧力(インバータ周波数)が低下し、RO透過水の電導度が上昇するので、電導度が所定値を超えた場合には膜の破れによる劣化(C)の推定フラグが立つように劣化状況監視プログラムを設定しておく。透過水の電導度が上昇する要因としては、膜の破れ以外にモジュール集水管4a、5a、14a、15aの接続部のOリング劣化による内漏れの発生、原水水質や圧力の急激な変動なども考えられるが、電導度の上昇が一定時間以上継続した場合には、採水停止中のタイミングで、エアー注入ポンプ24にて透過水ラインから膜分離モジュールにエアーを送り込み、集水管から水を追い出した状態でエアー注入ポンプ24を停止させたときに圧力が保持できなければ、劣化要因が膜の破れによる劣化(C)であると判定し、モニター画面にその旨を表示させる。また、通信手段を用いて膜分離装置のメンテナンス会社に警報を発信することも可能である。
【0045】
また、上述のように膜の劣化状況を監視しつつ、劣化要因が膜面への異物堆積による劣化(A)や膜の目詰まりによる劣化(B)であると判定されたときには、劣化要因の除去操作として洗浄工程を実施することもできる。例えば膜分離装置の原水ラインを過酸化水素水、クエン酸、酢酸または乳酸等の薬液でスケール除去を行う薬液洗浄工程や、ファインバブル等の泡を混入させた水で原水ラインを洗浄するバブル洗浄などを行い、劣化した膜の性能回復を図ることができる。洗浄工程を実施した後に再び採水工程を実施する際には、上述の劣化状況監視プログラムに従い、劣化要因が除去されて性能回復したかどうかを確認することも可能である。
【0046】
また、上述の洗浄工程を実施する代わりに、劣化要因が膜の破れによる劣化(C)であると判定されたときには、劣化要因の除去操作として膜分離モジュールへの原水の供給を中止することもできる。膜の破れが生じた場合には、もはや洗浄しても性能回復が期待できないので、当該膜分離モジュール周りの流入弁および流出弁を遮断して利用を中止し、あらかじめ待機させていた予備の膜分離モジュールの利用を開始することが可能である。あるいは、原水負荷に対し膜分離モジュール本数に余裕を持たせた設計をしている場合には、一部の膜分離モジュールの利用を中止し、残りの膜分離モジュールだけで原水負荷を賄うようにして採水を継続してもよい。
【0047】
なお、図9および図10に示すように複数の膜分離モジュールの透過水ラインが直列に連結されている場合には、膜の目詰まりによる劣化(B)や膜の破れによる劣化(C)が生じても、圧力や流量の変動幅からは、いずれのモジュールで劣化が生じているかが判定できない。そこで採水工程において、各々の膜分離モジュールの膜透過流量、差圧または排除率を測定し、前記透過水と前記濃縮水の流れる向きを変更する前後における前記膜透過流量、前記差圧または前記排除率の差分を計算することにより、膜分離モジュールごとに分離性能の劣化を検知することが可能である。
【0048】
例えば図9において、第二膜分離モジュール15の膜透過流量[透過水出口流量(流量計17Aの値)-透過水入口流量(流量計17Cの値)]が経時的に低下したときは、その流量低下が第一膜分離モジュール14の影響によるものか第二膜分離モジュール15の影響によるものかが判定できない場合がある。そこで、図9に示す状態から図10に示すように透過水と濃縮水の流れる向きを変更したときに、第二膜分離モジュール15の膜透過流量の差分[図10のフローにおける透過水出口流量(流量計17Cの値)-(図9のフローにおける透過水出口流量(流量計17Aの値)-透過水入口流量(流量計17Cの値))]が経時的に低下しなかったときは、第二膜分離モジュール15の分離性能について、膜の目詰まりによる劣化(B)は未だ生じていないと判定することができる。流量計17A、17C、圧力計16B、16Dと同じ場所にそれぞれ電導度計26A、26C、26B、26D(図示略)を設置すれば、膜分離モジュールの膜透過流量の差分と同様に、膜分離モジュール排除率[1-処理水濃度/被処理水濃度]の差分[図9のフローにおける透過水出口電導度(電導度計26Aの値)/(濃縮水入口電導度(電導度計26Bの値)-図10のフローにおける透過水出口電導度(電導度計26Cの値)/原水電導度(電導度計26Dの値)]の経時的な低下傾向を検知することにより、膜の破れによる劣化(C)がいずれの膜分離モジュールに生じているかを判定することができる。具体的には、膜分離モジュールごとの膜透過流量の差分や排除率の差分の経時的な低下幅があらかじめ定めた所定値を超えたときに、当該膜分離モジュールの分離性能低下の警報を、予想される劣化要因とともに運転状況表示板等に表示し、分離性能が劣化している疑いのあるモジュールの洗浄や交換を的確に実施することができる。
【0049】
また差圧についても、第二膜分離モジュール15の差圧の差分[図10のフローにおける(原水入口圧力(圧力計16Dの値)-濃縮水出口圧力(圧力計16Bの値))-図9のフローにおける(濃縮水入口圧力(圧力計16Bの値)-濃縮水出口圧力(圧力計16Dの値))]の差分の経時的な上昇傾向を検知することにより、膜面への異物堆積による劣化(A)が膜分離モジュール14、15のいずれに生じているかを判定することができる。さらに図9のフローにおける差圧の上昇傾向と図10のフローにおける差圧の上昇傾向を別々に監視することにより、第二膜分離モジュール15の上下いずれの端面において膜面への異物堆積による劣化(A)が生じているかを判定することも可能である。具体的には、図9のフローにおける差圧の上昇傾向が検知される場合には、図9の紙面上側にある上流側端面にスラッジ等の異物が堆積していることが予想されるので、分離性能の回復を図るための洗浄等のメンテナンス操作を効率良く実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、高膜分離装置の系内を清浄に保ちつつ安定した運転を行うために広く利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、11、31 膜分離装置
2 ROポンプ
3、13、23、33、43、53 三方弁
4、14、5、15 膜分離モジュール
4a、5a、14a、15a 集水管
4b 膜端面
6 透過水タンク
7 逆止弁
8 殺菌灯
9 液面計
10 精製水ポンプ
12 微細気泡発生器
16、16B、16D 圧力計
17、17A、17C 流量計
26、26A、26B、26C、26D 電導度計
18 異物
19 スケール
20 ファウリング
21 破れ
22 泡
24 エアー注入ポンプ
25 薬液注入ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11