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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038919
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20240313BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240313BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/04
G08G1/16 E
G08G1/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143290
(22)【出願日】2022-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】今西 明
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BB32
3D241CE01
3D241DC01Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自車両が交差点内で移動することができない状態になることを抑制しつつ、自車両のコストアップを抑制する。
【解決手段】交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する第1判定部122と、走行中の先行車両が走行する速度が閾値以下の低速度状態になった回数が所定区間内又は所定時間内において所定回数以上である第2状態であるか否かを判定する第2判定部123と、先行車両の速度の統計量が所定値以下である第3状態であるか否かを判定する第3判定部124と、先行車両と走行中の自車両100との車間距離を第1距離以上確保するように自車両100の走行を制御し、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた場合に、先行車両と自車両100との間の車間距離を、第1距離より大きい第2距離以上確保するように自車両100の走行を制御する走行制御部126と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する第1判定部と、
走行中の先行車両が走行する速度が閾値以下の低速度状態になった回数が所定区間内又は所定時間内において所定回数以上である第2状態であるか否かを判定する第2判定部と、
前記先行車両の速度の統計量が所定値以下である第3状態であるか否かを判定する第3判定部と、
前記第1状態、前記第2状態又は前記第3状態のいずれかが生じていない場合、前記先行車両と走行中の自車両との車間距離を第1距離以上確保するように当該自車両の走行を制御し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた場合に、前記先行車両と前記自車両との間の車間距離を、前記第1距離より大きい第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する走行制御部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が基準時間以上継続した場合に、前記先行車両と前記自車両との間の前記車間距離を、前記第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記交差点において前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が前記基準時間以上継続したと判定した後、当該交差点の次の交差点までの進路において前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が、前記基準時間より短い短縮判定期間以上継続したと判定した場合に、当該次の交差点を通過する間、前記車間距離を前記第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
複数の車道の位置と、車道上の複数の交差点の位置とを記憶する記憶部と、
前記自車両の位置を特定する位置特定部と、を備え、
前記第1判定部は、前記位置特定部が特定した前記自車両の位置が前記記憶部に記憶されている前記複数の交差点の位置のうちのいずれかの交差点の位置から所定距離以内であって、当該交差点が前記自車両の進路上にある場合に、前記第1状態であると判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
複数の交差点の位置のそれぞれと、交差点を渡り切るまでの距離とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記自車両が通過する前であると前記第1判定部が判定した前記交差点の位置に関連付けて前記記憶部に記憶されている前記交差点を渡り切るまでの距離を特定し、特定した当該距離に基づいて、前記第2距離を特定する距離特定部と、
を備え、
前記走行制御部は、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた場合に、前記先行車両と前記自車両との間の前記車間距離を、前記距離特定部が特定した前記第2距離以上確保する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両が交差点内で移動することができない状態になることを抑制する技術が知られている。特許文献1には、交差点又は交差点の直前において自車両に先行する先行車両のブレーキランプの点灯を検知した場合に、この車両がこの交差点内に存在する間、自車両を交差点の停止線にて停止させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-147021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、先行車両のブレーキランプの状態を検知するために高精度なカメラ等が必要になり、コストアップにつながるという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、自車両が交差点内で移動することができない状態になることを抑制しつつ、自車両のコストアップを抑制することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の車両制御装置は、交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する第1判定部と、走行中の先行車両が走行する速度が閾値以下の低速度状態になった回数が所定区間内又は所定時間内において所定回数以上である第2状態であるか否かを判定する第2判定部と、前記先行車両の速度の統計量が所定値以下である第3状態であるか否かを判定する第3判定部と、前記第1状態、前記第2状態又は前記第3状態のいずれかが生じていない場合、前記先行車両と走行中の自車両との車間距離を第1距離以上確保するように当該自車両の走行を制御し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた場合に、前記先行車両と前記自車両との間の車間距離を、前記第1距離より大きい第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する走行制御部と、を備える。
【0007】
前記走行制御部は、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が基準時間以上継続した場合に、前記先行車両と前記自車両との間の前記車間距離を、前記第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御してもよい。
【0008】
前記走行制御部は、前記交差点において前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が前記基準時間以上継続したと判定した後、当該交差点の次の交差点までの進路において前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が、前記基準時間より短い短縮判定期間以上継続したと判定した場合に、当該次の交差点を通過する間、前記車間距離を前記第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御してもよい。
【0009】
前記車両制御装置は、複数の車道の位置と、車道上の複数の交差点の位置とを記憶する記憶部と、前記自車両の位置を特定する位置特定部と、を備え、前記第1判定部は、前記位置特定部が特定した前記自車両の位置が前記記憶部に記憶されている前記複数の交差点の位置のうちのいずれかの交差点の位置から所定距離以内であって、当該交差点が前記自車両の進路上にある場合に、前記第1状態であると判定してもよい。
【0010】
前記車両制御装置は、複数の交差点の位置のそれぞれと、交差点を渡り切るまでの距離とを関連付けて記憶する記憶部と、前記自車両が通過する前であると前記第1判定部が判定した前記交差点の位置に関連付けて前記記憶部に記憶されている前記交差点を渡り切るまでの距離を特定し、特定した当該距離に基づいて、前記第2距離を特定する距離特定部と、を備え、前記走行制御部は、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた場合に、前記先行車両と前記自車両との間の前記車間距離を、前記距離特定部が特定した前記第2距離以上確保してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自車両が交差点内で移動することができない状態になることを抑制しつつ、自車両のコストアップを抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の車両制御装置1が搭載された自車両100の概要を示す。
図2】自車両の構成を示す。
図3】先行車両が第2状態であるか否かを第2判定部が判定する方法の一例を示す。
図4】車両制御装置による先行車両との車間距離の確保の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[自車両の概要]
図1は、本実施形態の車両制御装置1が搭載された自車両100の概要を示す。自車両100は、例えば、トラック等の商用車である。自車両100は、自動運転により走行する。車両制御装置1は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。図1の例では、自車両100が先行車両200の後方において交差点の直前を走行する様子を示す。
【0014】
車両制御装置1は、自車両100が交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する。車両制御装置1は、自車両100が交差点を通過する前の第1状態であると判定した場合に、先行車両200が以下の第2状態及び第3状態であるか否かを判定することにより、渋滞が生じているか否かを判定する。まず、車両制御装置1は、走行中の先行車両200が走行する速度が閾値以下である低速度状態になった回数が所定区間内において所定回数以上である第2状態か否かを判定する。閾値は、例えば、先行車両200が停止又は徐行する速度である。一例としては、閾値は、時速十数キロメートルである。
【0015】
車両制御装置1は、先行車両200が走行する速度の統計量が所定値以下である第3状態か否かを判定する。統計量は、例えば、先行車両200の速度の平均値であるが、先行車両200の速度の最頻値等であってもよい。所定値は、例えば、自車両100が走行中の車線の法定最高速度の2分の1以下の値である。
【0016】
車両制御装置1は、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じているか否かを判定する。車両制御装置1は、第1状態、第2状態又は第3状態のいずれかがが生じていないと判定した場合、先行車両200と走行中の自車両100との車間距離を第1距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。第1距離は、例えば、自車両100が先行車両200との間に確保する車間距離として、自車両100の空走距離及び制動距離等に基づいて定まる値である。第1距離は、運転者により予め設定された値であってもよい。
【0017】
車両制御装置1は、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じていると判定した場合、先行車両200と自車両100との間の車間距離を第2距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。第2距離は、第1距離よりも大きい値である。このようにして、車両制御装置1は、は、交差点付近において渋滞が生じた場合に、渋滞が生じていないときに比べて先行車両200と自車両100との車間距離をより大きく確保するので、交差点内で自車両100が移動することができなくなることを抑制することができる。車両制御装置1は、渋滞が生じているか否かを判定する際に先行車両200のブレーキランプの状態を識別する必要がないので、先行車両200ブレーキランプを識別するための高精度なカメラ等を搭載する必要がない。このため、車両制御装置1は、渋滞が生じているか否かを判定する際に先行車両200のブレーキランプ等を確認する方法を採用する場合と比較すると、コストを抑制することができる。
【0018】
[自車両100の構成]
図2は、自車両100の構成を示す。自車両100は、車両制御装置1、GPS(Global Positioning System)受信機2、レーダ3、燃料噴射機構4及び制動装置5を備える。車両制御装置1は、記憶部11及び制御部12を備える。制御部12は、位置特定部121、第1判定部122、第2判定部123、第3判定部124、距離特定部125及び走行制御部126を備える。
【0019】
GPS受信機2は、複数のGPS衛星からの信号を受信する。GPS受信機2は、受信した信号を位置特定部121に入力する。レーダ3は、レーダ波を自車両100の前方に送信し、先行車両200において反射された反射波を受信する。レーダ3は、反射波の周波数を第2判定部に入力する。レーダ3は、レーダ波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定し、測定した時間を走行制御部126に入力する。
【0020】
燃料噴射機構4は、エンジン(不図示)のシリンダ内への燃料噴射量を調整する。例えば、燃料噴射機構4は、シリンダ内への燃料噴射量を増減させて自車両100を加減速させることにより、走行制御部126が指示した速度で自車両100を走行させる。制動装置5は、自車両100に搭載された各種のブレーキである。制動装置5は、例えば、フットブレーキ又はエンジンブレーキ等である。制動装置5は、走行制御部126が走行中の自車両100の減速又は停止を指示した場合に、自車両100を減速又は停止させる。
【0021】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部11には、制御部12が実行するためのプログラムが記憶されている。記憶部11には、複数の車道の位置と、車道上の複数の交差点の位置とを示す路線データが記憶されている。路線データは、車道上の複数の信号の位置をさらに示すものであってもよい。路線データは、自車両100が交差点を通過する前であるか否かを第1判定部が判定するため等に利用される。
【0022】
記憶部11には、交差点の位置のそれぞれと、交差点の停止線から交差点を渡り切るまでの距離とを関連付けた交差点データが記憶されている。交差点データは、先行車両200と自車両100との車間距離を特定するために利用される。
【0023】
制御部12は、例えば、ECUに搭載されたプロセッサである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、位置特定部121、第1判定部122、第2判定部123、第3判定部124、距離特定部125及び走行制御部126として機能する。
【0024】
位置特定部121は、自車両100の位置を特定する。本明細書の例では、位置特定部121は、複数のGPS衛星からGPS受信機2が受信した信号を解析することにより、自車両100の位置を特定する。位置特定部121は、特定した自車両100の位置を第1判定部122へ出力する。
【0025】
[第1状態の判定]
第1判定部122は、自車両100が交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する。まず、第1判定部122は、記憶部11に記憶されている路線データに含まれる複数の交差点の位置を読み出す。第1判定部122は、読み出した複数の交差点のうちのいずれかの交差点の位置から、位置特定部121が特定した自車両100の位置までの距離が所定距離以内であるか否かを判定する。所定距離は、例えば、自車両100が走行する速度に基づいて定められる。
【0026】
第1判定部122は、記憶部11に記憶されている複数の車道の位置と、車道上の複数の交差点の位置とを示す路線データを参照して、自車両100が走行中の進路を特定する。第1判定部122は、自車両100の位置までの距離が所定距離以内であると判定した交差点が特定した自車両の進路上にあるか否かを判定する。第1判定部122は、この交差点が自車両100の進路上にあると判定した場合に、自車両100がこの交差点を通過する前の第1状態であると判定する。
【0027】
第1判定部122は、読み出した複数の交差点の位置から自車両100の位置までの距離がいずれも所定距離より大きいと判定した場合に、自車両100が第1状態ではないと判定する。第1判定部122は、自車両100の位置から所定距離以内であると判定した交差点が自車両100の進路上にないと判定した場合に、自車両100が第1状態ではないと判定する。第1判定部122は、判定結果を示す情報を距離特定部125及び走行制御部126へ出力する。
【0028】
[第2状態の判定]
第2判定部123は、走行中の先行車両200が走行する速度が閾値以下の低速度状態になった回数が所定区間内又は所定時間内において所定回数以上である第2状態であるか否かを判定する。閾値は、一例としては、先行車両200が徐行又は停止する速度である。例えば、所定区間及び所定回数は、渋滞が生じているか否かの判定に要求される精度等に応じて車両制御装置1の製造者がそれぞれ定める。本明細書の例では、先行車両200が走行する速度は、レーダ波が先行車両200において反射された反射波の周波数に基づいて、第2判定部123により特定される。
【0029】
図3(a)及び図3(b)は、先行車両200が第2状態であるか否かを第2判定部123が判定する方法の一例を示す。図3(a)は、渋滞が生じていないときの先行車両200の速度の変化を示す。図3(b)は、渋滞が生じているときの先行車両200の速度の変化を示す。図3の縦軸は、先行車両200の速度を示す。図3の横軸は、先行車両の走行位置を示す。
【0030】
図3(a)に示すように、渋滞が生じていないときは、先行車両200は、閾値を超える速度で走行するため、速度が閾値以下の低速度状態にならない。一方、図3(b)に示すように、渋滞が生じている場合には、先行車両200は、閾値未満の速度で走行する低速度状態と、閾値以上の速度で走行する状態との間を遷移する。
【0031】
第2判定部123は、先行車両200が所定区間内において低速度状態になった回数を計数する。第2判定部123は、先行車両200が所定区間内において低速度状態になった回数が所定回数以上である場合に、先行車両200が第2状態であると判定する。一方、第2判定部123は、先行車両200が所定区間内において低速度状態になった回数が所定回数未満である場合に、先行車両200が第2状態ではないと判定する。
【0032】
先行車両200は、渋滞が発生していない状態においても停止信号が点灯されている場合等に停止する。このため、第2判定部123は、記憶部11に記憶されている路線データが示す複数の信号の位置を参照して、信号付近において先行車両200が低速度状態になった回数を計数しないようにしてもよい。
【0033】
また、第2判定部123は、先行車両200が所定区間内において低速度状態になった回数を計数する例に限定されず、先行車両200が所定時間内において低速度状態になった回数を計数してもよい。例えば、所定時間は、渋滞が生じているか否かの判定に要求される精度等に応じて車両制御装置1の製造者が定める。第2判定部123は、先行車両200が所定時間内において低速度状態になった回数が所定回数以上である場合に、先行車両200が第2状態であると判定してもよい。第2判定部123は、先行車両200が所定区間内又は所定時間内において低速度状態になった累積時間が時間閾値以上である場合に、先行車両200が第2状態であると判定してもよい。時間閾値は、例えば、渋滞が生じているか否かの判定に要求される精度等に応じて車両制御装置1の製造者が定める。第2判定部123は、判定結果を示す情報を走行制御部126へ出力する。
【0034】
[第3状態の判定]
第3判定部124は、先行車両200の速度の統計量が所定値以下である第3状態であるか否かを判定する。統計量は、例えば、先行車両200の速度の平均値である。統計量は、先行車両200の速度の最頻値等であってもよい。
【0035】
所定値は、例えば、自車両100が走行中の車線の法定最高速度の2分の1以下の任意の値である。第3判定部124は、判定結果を示す情報を走行制御部126へ出力する。
【0036】
[第2距離の特定]
距離特定部125は、自車両100と先行車両200との車間距離としての第2距離を特定する。まず、距離特定部125は、交差点の位置と、交差点の停止線から交差点を渡り切るまでの距離とを関連付けた交差点データを記憶部11から読み出す。距離特定部125は、読み出した交差点データを参照して、自車両100が通過する前であると第1判定部122が判定した交差点の位置に関連付けられている交差点の停止位置から交差点を渡り切るまでの距離を特定する。
【0037】
距離特定部125は、特定した距離に基づいて、自車両100と先行車両200との車間距離としての第2距離を特定する。例えば、距離特定部125は、特定した交差点の停止位置から交差点を渡り切るまでの距離と、自車両100が制動装置5を作動させるまでに自車両100が走行する空走距離と、自車両100が制動装置5を作動させてから停止するまでに自車両100が走行する制動距離との合計値を第2距離として特定する。距離特定部125は、特定した第2距離を示す情報を走行制御部126へ出力する。
【0038】
[車間距離の確保]
走行制御部126は、自車両100の走行を制御する。走行制御部126は、レーダ3がレーダ波を送信してから先行車両200において反射された反射波を受信するまでの時間に基づいて、先行車両200と自車両100との車間距離を特定する。走行制御部126は、先行車両200と自車両100との車間距離として上記の自車両100が走行中の車線の法定最高速度の2分の1以下の値第1距離又は第2距離を確保するように自車両100の走行を制御する。例えば、走行制御部126は、シリンダ内への燃料噴射量を燃料噴射機構4により増減させて自車両100を加減速させ、又は、制動装置5により自車両100を減速させることにより、先行車両200と自車両100との車間距離を確保する。
【0039】
走行制御部126は、第1状態、第2状態又は第3状態のいずれかが生じていない場合、先行車両200と走行中の自車両100との車間距離を第1距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。第1距離は、上記のとおり、自車両100が先行車両200との間に確保する車間距離として、自車両100の制動距離及び空走距離に基づいて定まる値である。
【0040】
走行制御部126は、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた場合に、先行車両200と自車両100との間の車間距離を、第2距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。第2距離は、第1距離より大きい。第2距離は、例えば、距離特定部125が特定した値であるが、複数の交差点において共通の値であってもよい。
【0041】
ただし、渋滞が発生していないにもかかわらず、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じることもある。このとき、走行制御部126は、先行車両200と自車両100との車間距離を第2距離以上確保してしまうと、交差点において自車両100が信号待ちになりやすいという問題が生じる。
【0042】
そこで、走行制御部126は、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた場合であっても、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた状態が基準時間以上継続していない場合には、先行車両200と走行中の自車両100との車間距離を第1距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。基準時間は、例えば、渋滞が発生しているか否かの判定に要求される精度に応じて車両制御装置1の製造者により定められる。走行制御部126は、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた状態が基準時間以上継続した場合に、先行車両200と走行中の自車両100との車間距離を第2距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。
【0043】
前の交差点付近において渋滞が発生していた場合、次の交差点付近においても渋滞が発生している可能性は比較的高い。そこで、走行制御部126は、前の交差点付近において渋滞が発生していた場合、次の交差点までの進路において基準時間より短い短縮判定時間を用いて渋滞が発生しているか否かを判定する。例えば、走行制御部126は、交差点において第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた状態が基準時間以上継続したと判定した後、この交差点の次の交差点までの進路において第1状態、第2状態及び第3状態が同時に生じた状態が短縮判定期間以上継続したと判定した場合に、次の交差点を通過する間、先行車両200と自車両100との車間距離を第2距離以上確保するように自車両100の走行を制御する。このようにして、複数の交差点にわたって渋滞が続いている場合に、複数の交差点のうち2番目以降の交差点内において自車両100が移動できなくなるリスクが低減する。
【0044】
[車両制御装置1による車間距離の確保の処理手順]
図4は、車両制御装置1による先行車両200と自車両100との車間距離の確保の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、自車両100の自動運転中に開始される。まず、第1判定部122は、自車両100が交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する(S101)。
【0045】
第2判定部123は、自車両100が交差点を通過する前の第1状態であると第1判定部122が判定した場合に(S101のYES)、走行中の先行車両200が走行する速度が閾値以下の低速度状態になった回数が所定区間内において所定回数以上である第2状態であるか否かを判定する(S102)。第3判定部124は、先行車両200が低速度状態になった回数が所定回数以上である第2状態であると第2判定部123が判定した場合に(S102のYES)、先行車両200の速度の統計量が所定値以下である第3状態であるか否かを判定する(S103)。走行制御部126は、先行車両200の速度の統計量が所定値以下である第3状態であると第3判定部124が判定した場合に(S103のYES)、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に基準時間以上継続しているか否かを判定する(S104)。
【0046】
走行制御部126は、第1状態、第2状態及び第3状態が同時に基準時間以上継続していると判定した場合に(S104のYES)、先行車両200と自車両100との車間距離を第2距離以上確保するように自車両100の走行を制御する(S105)。走行制御部126は、自車両100の走行を終了したか否かを判定する(S106)。走行制御部126は、自車両100の走行を終了したと判定した場合に(S106のYES)、処理を終了する。
【0047】
走行制御部126は、S101の判定において自車両100が交差点を通過する前ではないと第1判定部122が判定した場合に(S101のNO)、先行車両200と自車両100との車間距離を第1距離以上確保するように自車両100の走行を制御し(S107)、S106の判定に移る。走行制御部126は、S102の判定において先行車両200が低速度状態になった回数が所定区間内において所定回数未満であると第2判定部123が判定した場合に(S102のNO)、S107の処理に移る。走行制御部126は、S103の判定において先行車両200の速度の統計量が所定値より大きいと第3判定部124が判定した場合に(S103のNO)、S107の処理に移る。
【0048】
走行制御部126は、S104の判定において第1状態、第2状態及び第3状態が同時に基準時間以上継続していないと判定した場合に(S104のNO)、S107の処理に移る。走行制御部126は、S106の判定において自車両100の走行を終了していないと判定した場合に(S106のNO)、S101の判定に戻る。
【0049】
[本開示の車両制御装置1による効果]
走行制御部126は、交差点付近において渋滞が生じた場合に、渋滞が生じていないときに比べて先行車両200と自車両100との車間距離をより大きく確保するので、交差点内で自車両100が移動することができなくなることを抑制することができる。走行制御部126は、渋滞が生じているか否かを判定する際に先行車両200のブレーキランプ等を確認する必要がない。このため、自車両100は、先行車両200のブレーキランプを識別するための高精度なカメラ等を搭載する必要がない。このため、走行制御部126は、渋滞が生じているか否かを判定する際に先行車両200のブレーキランプ等を確認する方法を採用する場合と比較すると、コストアップを抑制することができる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0051】
1 車両制御装置
2 受信機
3 レーダ
4 燃料噴射機構
5 制動装置
11 記憶部
12 制御部
100 自車両
121 位置特定部
122 第1判定部
123 第2判定部
124 第3判定部
125 距離特定部
126 走行制御部
200 先行車両
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を通過する前の第1状態であるか否かを判定する第1判定部と、
走行中の先行車両が走行する速度が閾値以下の低速度状態になった回数所定区間内又は所定時間内の判定範囲において計数し、前記判定範囲において計数した回数が所定回数以上である第2状態であるか否かを判定する第2判定部と、
前記先行車両の速度を前記判定範囲において測定し、測定した速度の統計量が所定値以下である第3状態であるか否かを判定する第3判定部と、
前記第1状態、前記第2状態又は前記第3状態のいずれかが生じていない場合、前記先行車両と走行中の自車両との車間距離を第1距離以上確保するように当該自車両の走行を制御し、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた場合に、前記先行車両と前記自車両との間の車間距離を、前記第1距離より大きい第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する走行制御部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が基準時間以上継続した場合に、前記先行車両と前記自車両との間の前記車間距離を、前記第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記交差点において前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が前記基準時間以上継続したと判定した後、当該交差点の次の交差点までの進路において前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた状態が、前記基準時間より短い短縮判定期間以上継続したと判定した場合に、当該次の交差点を通過する間、前記車間距離を前記第2距離以上確保するように前記自車両の走行を制御する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
複数の車道の位置と、車道上の複数の交差点の位置とを記憶する記憶部と、
前記自車両の位置を特定する位置特定部と、を備え、
前記第1判定部は、前記位置特定部が特定した前記自車両の位置が前記記憶部に記憶されている前記複数の交差点の位置のうちのいずれかの交差点の位置から所定距離以内であって、当該交差点が前記自車両の進路上にある場合に、前記第1状態であると判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
複数の交差点の位置のそれぞれと、交差点を渡り切るまでの距離とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記自車両が通過する前であると前記第1判定部が判定した前記交差点の位置に関連付けて前記記憶部に記憶されている前記交差点を渡り切るまでの距離を特定し、特定した当該距離に基づいて、前記第2距離を特定する距離特定部と、
を備え、
前記走行制御部は、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態が同時に生じた場合に、前記先行車両と前記自車両との間の前記車間距離を、前記距離特定部が特定した前記第2距離以上確保する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。