(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038937
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】刺繍具
(51)【国際特許分類】
D05C 1/02 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
D05C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143315
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】522358021
【氏名又は名称】森 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 恵三
(74)【代理人】
【識別番号】100182604
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 二美
(72)【発明者】
【氏名】森 亜紀
(57)【要約】
【課題】 簡単に生産できるようにすること。
【解決手段】 この刺繍具100は、全体がカード形であって中央に矩形の穴2が設けられた矩形の枠体1と、枠体1に対して一定の張力を持って前記穴2を塞ぐように固定される布3と、枠体1と布3との間に介在する固定部4とから構成される。布3には、所定の絵図が記載されている。枠体1は、可撓性のある厚紙または樹脂により構成される。枠体1の各辺の幅は、指でつまんだ際に指が枠体1の内側に入らない寸法が好ましい。枠体1の左右の対向する枠部分には上下方向に帯状に固定部4の接着層となる構成する両面テープ5が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に穴が設けられ且つ可撓性のカード形をした枠体と、
枠体の穴を塞ぐように当該枠体に対して固定される刺繍を施すための布と、
布と枠体とに介在する接着層を設け且つ枠体の表及び裏で布を固定すると共に布を枠体の端縁で折り返して固定する固定部と、
を有することを特徴とする刺繍具。
【請求項2】
前記枠体の外周の端縁は、穴を挟んで対向すると共に前記布を折り返すための直線の辺を有することを特徴とする請求項1に記載の刺繍具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に生産でき且つ使いやすい刺繍具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に記載されているような刺繍枠が知られている。この刺繍枠は、中央部に貫通孔が設けられた板状の枠体と、枠体に張設された状態における貫通孔の任意の押圧点の押圧方向変位量が、0.8~1.6Nの範囲内の所定の押圧力にて0. 1~0.5mm内の値を示す弾性を有する布と、当該枠体の一面上に設けられて前記布を貼付可能な貼付層とを備えた構成である。
【0003】
この刺繍布は、前記所定の弾性を備えるために専用の機械を用いて張力を付与した状態で枠体の間に布を挟み、一定の張力を付与した状態で枠体に設けた熱硬化性樹脂により布を固定する。これにより、枠体に対して刺繍に適した張りの布を有する刺繍枠ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の刺繍枠では、一定の張力を与えるために加熱するためのアイロンや張りを維持する専用機が必要であるため、生産に手間がかかるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の刺繍具は、中央に穴が設けられ且つ可撓性のカード形をした枠体と、枠体の穴を塞ぐように当該枠体に対して固定される刺繍を施すための布と、布と枠体とに介在する接着層を設け且つ枠体の表及び裏で布を固定すると共に布を枠体の端縁で折り返して固定する固定部とを有することを特徴とする。
【0007】
また、前記枠体の外周の端縁は、穴を挟んで対向すると共に前記布を折り返すための直線の辺を有する者としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る刺繍具を示す説明図である。
【
図4】本発明の刺繍具の変形例を示す説明図である。
【
図5】本発明の刺繍具の別の変形例を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る刺繍具を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る刺繍具を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態3に係る刺繍具を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態4に係る額縁付き刺繍具を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る刺繍具を示し、(a)は平面図、(b)は裏面図である。この刺繍具100は、全体がカード形であって中央に矩形の穴2が設けられた矩形の枠体1と、枠体1に対して一定の張力を持って前記穴2を塞ぐように固定される布3と、枠体1と布3との間に介在する固定部4とから構成される。
【0010】
前記布3には、所定の絵図が記載されている。この絵図は、刺繍のガイドとなる模様、図形、文字その他の印刷である。
【0011】
前記枠体1は、可撓性のある厚紙または樹脂により構成される。当該枠体1の大きさは、扱いやすさを考慮すると、上下方向の長さが8cm、左右方向の長さが10cm程度にするのが好ましい。当該枠体1は、中央の穴2が矩形であり、枠体1の外形も矩形である。枠体1の厚さは、素材によるが、強度と変形しやすさを考慮すると1mm以上4mm以下が好ましく、2mm以上3mm以下がより好ましい。この厚さであればカード形として操作しやすいものとなる。
【0012】
枠体1の各辺となる枠部分1aの幅は、指でつまんだ際に指が枠体1の内側に入らない寸法が好ましい。また、枠体1の当該幅が大きすぎても扱いにくく素材が無駄になる。このため、当該幅は8mm以上20mm以下が好ましい。
【0013】
枠体1の左右の対向する枠部分1aには上下方向(図中)に帯状に固定部4の接着層を構成する両面テープ5が設けられる。この両面テープ5は、上下方向に多少はみ出した状態になり当該はみだし部分5aは裏面に折り返されて枠体1の裏面に展着される。両面テープ5の幅は、枠体1の幅より若干狭い。また、枠体1の上下に対向する枠部分1aの中央付近には左右方向に両面テープ5が設けられる。上下方向へのはみだし部分5aは裏面に折り返されて枠体1の裏面に展着される。
【0014】
両面テープ5は、布3の着脱性を確保するためアクリル系の接着剤を用いたものが好ましい。布3は、枠体1から刺繍完了後に取り外すこともあることから、布3に対して残留し難いものを選択する。枠体1の左右に対向する枠部分1aの両面テープ5と、上下に対向する枠部分1aの両面テープ5との接着強度を変えるようにしても良い。上下に対向する枠部分1は布3の折り返しがあるため面方向の保持力が大きくなり、一方で左右に対向する枠部分1aは布の折り返しがないことから面方向の保持力が小さくなるため、左右に対向する枠部分1aの両面テープ5の接着強度を大きく設定するのが好ましい。
【0015】
前記布3は、綿、化繊などの一般的なものを使用できる。また、布3の表面には、インクジェットプリンターにより印刷を施す。この印刷は、表面が印刷に適した状態の布3に所望の絵図を印刷する。また、ハンコを押すことで絵図を表現しても良い。なお、このほかの印刷方法であっても良い。
【0016】
枠体1に取り付けた際の布3の張力が大きすぎると、刺繍針を通した際に布3に穴が空く可能性があるため適切な範囲とするのが良い。特許文献1にかかる発明では高い張力を持って布3を固定するため、係る不具合が生じるのを防止するために布3の素材などが限定的になるが、本発明によれば自然な張力で固定されるので刺繍作業の際に布3に大きな穴が生じたりしない。布3は、弾性が高いものは刺繍し難いことから、一般的なものが良い。
【0017】
布3の大きさは、枠体1の上下方向の寸法より若干長いものとする。横方向では枠体1の横方向の寸法より短く又は略同じとする。布3を枠体1に貼り付けた状態で枠体1の上下の部分で当該布3のはみだし部分3aが後ろ面に折り曲がって巻き付いた状態となる。また、枠体1に対して布3が均一に貼り付けられ、一定の張力が得られる。この張力は強すぎないものであるため、刺繍針を通して針穴が大きくならない。
【0018】
また、刺繍具100の表面に布3の絵図が現れるようにする。この絵図は、刺繍をガイドするための図形であるため、任意の絵図を用いる。絵図は、枠体1の穴2の内側に位置するようにする。
【0019】
図2は、刺繍具100の製作方法の説明図である。同図(a)に示すように、枠体1を準備する。続いて、同図(b)に示すように、この枠体1の枠部分1aの上記したような位置に両面テープ5を貼り付ける。枠体1の上下の端部からのはみだし部分3aは枠体1の裏側に折り曲げて貼り付ける(同図(c)参照)。これにより布3を折り曲げた際に当該折り曲げ部分を固定でき、枠体1の角ないし端縁で折り曲げたことで張力を一定に保ち、引っ張りに耐えるようになる。裏面の状態を同図(d)に示す。
【0020】
次に、所望の絵図を有する布3を準備し(同図(e)参照)、枠体1の表面から両面テープ5を用いて貼り付ける。このとき、枠体1の上下方向から余った布3がはみ出る。同図(f)は、枠体1の裏面図であり、図示のように上下の端縁から布3がはみ出る。左右方向の布3の寸法は枠体1の左右方向の寸法と同じであるから、はみ出ない。
【0021】
このはみだし部分3aを折り返して裏面の両面テープ5により当該はみだし部分3aを固定する。これにより枠体1の端縁で布3をしっかりと動かないように固定すると共に、枠体1を湾曲させたときにこの折り曲げたはみだし部分3aに対して枠体1の端縁が当接した状態になるので布3に張力を均一にかけることができる。両面テープ5のみであると両面テープ5の接着面とのむら等が布3に現れるので波うちの原因になる可能性があるが、当該構成であれば布3に均一に力が加わることから、ピンと張った状態を維持できる。
【0022】
折り返した状態での裏面は、
図1(b)に示した通りである。このとき、布3の端縁が枠体1の穴2の内側にはみ出ないようにする。このため、布3の上下方向の長さは、枠体1の上下方向の長さに枠体1の上下部分の枠幅の2倍以下の寸法を加えたものとする。
【0023】
ユーザは、この刺繍具100を手に持ち、表面を自分のほうに向けて刺繍を行う。この刺繍具100は枠体1と布3とからなり、薄型の構造であり且つ軽量である。刺繍の作業中に疲れにくく、軽く小さいことから扱いやすい。布3には適度な張力が加わっていることから刺繍の作業をしやすい。また、枠体1を湾曲させることで布3の特定の部分を盛り上げることができるので、作業のしやすさが向上する。湾曲させる動作も枠体1の端縁を挟むように軽くもって力を加えるだけで済む。
【0024】
図3は、使用方法の例を示す説明図である。枠体1の周囲の枠部分1aの幅は変形しやすい寸法になっている。10mm以上20mm以下が好ましい。同図に示すように、刺繍の際は後ろから指で押したり布3にテンションをかける場合があるところ、枠部分1aを引っ張ることで(図中矢印にて引っ張り方向の例を示す)布3の特定部分(図中斜線で示す領域)を選択的に張ることができる。例えば、対向する枠部分1aの中央付近を左右に引っ張ると、布3の中央付近にテンションがかかる。ずらして引っ張るとその地点を結ぶライン上でテンションがかかる。枠体1は、可撓性の材質のため比較的自在に変形するので、従来の円形の木製刺繍枠ではできないテンションのかけ方ができるようになる。
【0025】
裏面に折り返した部分等から剥がすことで刺繍した布3が枠体1から分離する。刺繍した布3は、ブローチやマグネット等の表面に貼り付けることができる。両面テープ5は何度も剥がせるものを用いているので布3に対して接着剤が付着して残り難い。なお、布3には絵図が施されない場合もある。この場合はユーザが任意に布3に下絵を描いて刺繍を行う。
【0026】
(変形例)
図4は、本発明の刺繍具の変形例を示す説明図である。
図4(a)に示すように、枠体1に小穴21を設けても良い。この小穴21には指が入るようにする。小穴21を設ける辺の枠部分1aの幅は若干大きくする。又は、
図4(b)に示すように、突起部を設けて小穴21を設ける。この小穴2には指を入れて枠を引っ張ったり、或いはフック等にひっかけることができる。
【0027】
図5は、本発明の刺繍具の別の変形例を示す説明図である。この刺繍具は、上記実施の形態1に係る刺繍具100と略同じ構成であるが、両面テープ5の配置が異なるものとなる。枠体1の表面に対して両面テープ5がすべて均一に配置される。また、枠体1の裏面に対しても両面テープ5が均一に配置される。この状態で上記布3を貼り付け、上下方向及び左右方向のはみ出し部分3aを枠体1の裏面に折り返し、固定する。
【0028】
枠体1の各辺の端縁で布3を折り返すことで布3を端縁で均一に固定でき、よって枠体1を上下方向及び左右方向に湾曲させても布3に波が生じず均一に張力を与えて一部を盛り上げることができる。更に、両面テープ5を枠体1に表裏かつ周囲に均等に配置することで布3の遊びは枠体1の穴2の内側に限定されるので、布3支持の安定感が増す。その他の作用効果は実施の形態1に係る刺繍具100と同様である。
【0029】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る刺繍具を示す説明図である。この刺繍具200は、同図(a)に示すように、中央に矩形の穴2が設けられた矩形の枠体1と、枠体1に対して一定の張力を持って固定される布3と、枠体1と布3との間に介在する固定部41とから構成される。枠体1は、実施の形態1のものと同じである。布3も素材は同様であるが固定部41の形式が異なる。
【0030】
両面テープ5は、同図(b)に示すように、布3の四辺の端縁近傍に沿ってほぼ隙間なく配置される。同図(c)に示すように、上下方向の両面テープ5は枠体1の表面に対して貼りつくようになっており、左右方向の両面テープ5は枠体1の上下端縁からはみ出す。このまま、布3のはみ出した部分を折り返し、枠体1の裏面にて両面テープ5で固定する(同図(d)参照)。同図(e)に刺繍具100の表面を示す。係る固定形式によっても刺繍具100を構成できる。この実施の形態においても布3の上下は枠体1の端縁で折り返して固定されるので、均一に張力を与えることができ、湾曲させた際にしわが生じ難い。なお、前記両面テープ5および布3は、実施の形態1と同じものである。
【0031】
(実施の形態3)
更に、枠体1には折り曲げ線を設けても良い。
図7の例に示すように、枠体1の四角に折り曲げ線81を設けて、枠体1を折り曲げることで全体が例えば箱のような形状に変化する。このようにすれば、刺繍具100自体を立体的な飾りとして用いることができる。これは枠体1が厚紙やプラスチック製の薄いものからなるために実現でき、折り曲げ線81を設けることで変形させやすくなるためである。折り曲げ線81は、ミシン目のようなものでも、溝のようなものでもよい。
【0032】
同図の例では、枠体1の四角近傍に上下左右方向及び斜め方向に折り曲げ線81が設けられている。この折り曲げ線81で折り曲げることで、
図8に示すように、略箱状に変形する。この状態で立てかけて飾ることができる。また、図示しないが、写真立てのような恰好で立たせるような枠体1の形状および折り曲げ線81としても良い。
【0033】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る額縁付き刺繍具を示す説明図である。この刺繍具セット300は、飾り用の額縁301が付属したものである。本体となる刺繍具100は実施の形態1~3に記載したものと同じである。額縁301は、刺繍具100の枠体1の穴2の内側(刺繍を施しうる布の部分)が露出するための窓302を有する厚紙からなる。本体の上下で折り返し構造であり、裏面の中央付近で端縁どうしが一致する。横の側面の端縁であって折り返しの一方側の裏板は表板と接続する(接続縁部303)。これにより、横方向から刺繍具100を差し入れて固定できる(同図の矢印方向に刺繍具100を差し入れる)。
【0034】
図10は、額縁の平面図等を示す説明図である。同図(a)の正面図及び(b)の裏面図に示すように、対向する側の裏面には折り返しのためのフラップ304が設けられる。フラップ304は切込みにより形成され、指で押して折り返すことで脚となる。上側の裏板を開くと共にフラップ304を内側に押して反転するまで折り曲げると足になり(同図(c)を参照)、倒立させることができる。折り返したフラップ304はテープ等で固定すると良い。
図11に刺繍具を額縁301に入れて立てた状態を示す。
【0035】
額縁301により刺繍具100に刺繍した状態(若しくは刺繍なしの絵図のみでもよい)で飾ることができる。表板と裏板との間に小さい照明を設けることで灯篭のように光が透過する(図示省略)。販売の際は、表板と裏板との間に刺繍具100を差し入れてパッケージできるのでコンパクトである。その際、絵図が額縁301の開口から露出するので完成状態を想像しやすい。
【符号の説明】
【0036】
100 刺繍具
1 枠体
2 穴
3 布
4 固定部
5 両面テープ