(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003894
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】カテーテル用バルーン体及びバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240109BHJP
【FI】
A61M25/10 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103233
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA28
4C267BB28
4C267CC09
(57)【要約】
【課題】狭窄部に対して拡張強化部材を延伸方向に移動させることにより、狭窄部に対して切れ目を適切に形成させることが可能なカテーテル用バルーン体、及びバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル1Aは、延伸方向の一方側の端部である第1先端部3Dと他方側の端部である第1基端部3Pとの間に亘って延びるバルーン3と、バルーン3の少なくとも一部分に配置され、延伸方向に沿って延びる少なくとも1つの拡張強化部材4Aと、拡張強化部材4Aを延伸方向に沿って移動させる移動部材5とを備える。バルーンカテーテル1Aは、バルーン3が拡張して拡張強化部材4Aが狭窄部に喰い込んだ状態で、移動部材5により拡張強化部材4Aを延伸方向に移動させることができる。バルーンカテーテル1Aは、拡張強化部材4Aによる切れ目を狭窄部に形成させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸方向の一方側の端部である第1先端部と他方側の端部である第1基端部との間に亘って延びるバルーンと、
前記バルーンの少なくとも一部分に配置され、前記延伸方向に沿って延びる少なくとも1つの拡張強化部材と、
前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動させる移動部材と
を備えたことを特徴とするカテーテル用バルーン体。
【請求項2】
前記バルーンは、
前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記バルーンの表面のうち、前記バルーンの周方向において前記支持部が配置されない部分よりも内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項3】
前記バルーンは、
前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記バルーンの表面のうち、前記バルーンの周方向において前記支持部が配置されない部分よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項4】
前記バルーンは、
前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、
前記支持部は、
前記延伸方向に配列された複数の部分支持部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項5】
前記バルーンは、
前記延伸方向に延びる筒状を有する膨張部と、
前記膨張部の前記延伸方向の一方側の端部から前記第1先端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1先端部の径よりも大きい先端連結部と、
前記膨張部の前記延伸方向の他方側の端部から前記第1基端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1基端部の径よりも大きい基端連結部と、
前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部と
を備え、
前記支持部は、
前記先端連結部、前記膨張部、及び前記基端連結部に亘って設けられることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項6】
前記拡張強化部材及び前記支持部の一方は、前記延伸方向に沿って延びる溝を有し、
前記拡張強化部材及び前記支持部の他方は、前記溝に嵌合する嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項2から5の何れかに記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項7】
前記バルーンは、
前記延伸方向に延びる筒状を有する膨張部と、
前記膨張部の前記延伸方向の一方側の端部から前記第1先端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1先端部の径よりも大きい先端連結部と、
前記膨張部の前記延伸方向の他方側の端部から前記第1基端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1基端部の径よりも大きい基端連結部と、
を備え、
前記拡張強化部材の前記延伸方向の長さは、前記膨張部の前記延伸方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項8】
前記拡張強化部材の前記延伸方向の長さは、前記膨張部の前記延伸方向の長さの半分以下であることを特徴とする請求項7に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項9】
前記拡張強化部材の少なくとも一部は、前記バルーンの表面よりも外側に突出することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項10】
前記拡張強化部材は、
前記延伸方向に配列された複数の部分拡張強化部材と、
前記複数の部分拡張強化部材を連結する少なくとも1つの連結部と、
を有し、
前記少なくとも1つの連結部は、それぞれ、
前記複数の部分拡張強化部材のうち前記延伸方向に隣接する2つの部分拡張強化部材を、前記2つの部分拡張強化部材が前記延伸方向に延びる状態と、前記2つの部分拡張強化部材の一方が前記延伸方向に対して傾斜した状態とに切り替え可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項11】
前記移動部材による移動後の前記拡張強化部材を、移動前の前記拡張強化部材の位置に向けて付勢する付勢部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項12】
前記バルーンは、
前記延伸方向に延びる筒状を有する膨張部と、
前記膨張部の前記延伸方向の一方側の端部から前記第1先端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1先端部の径よりも大きい先端連結部と、
前記膨張部の前記延伸方向の他方側の端部から前記第1基端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1基端部の径よりも大きい基端連結部と、
を備え、
前記延伸方向のうち前記第1基端部から前記第1先端部に向かう方向に前記拡張強化部材が最も移動した状態で、前記拡張強化部材の両端部のうち前記第1先端部に近接する第2先端部は、前記膨張部のうち前記先端連結部と連結する部分よりも前記第1先端部側に位置することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項13】
前記第1基端部から前記第1先端部に向かう方向に前記拡張強化部材が最も移動した状態で、前記拡張強化部材の前記第2先端部は、前記第1先端部に対し、前記第1基端部側と反対側に位置することを特徴とする請求項12に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項14】
前記拡張強化部材が金属製であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用バルーン体。
【請求項15】
請求項1に記載の前記カテーテル用バルーン体と、
第3先端部と第3基端部との間に亘って延び、前記第3先端部の近傍に前記カテーテル用バルーン体が連結するシャフトと
を有するバルーンカテーテル。
【請求項16】
前記移動部材は、
紐状を有し、一端部が前記拡張強化部材に連結し、
前記シャフトは、
前記移動部材の一部が挿通する挿通孔を有する
ことを特徴とする請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル用バルーン体及びバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シャフト部の先端部に配置されたバルーンを含むバルーンカテーテルを開示する。バルーンは、有効拡張部に凸部を有する。凸部は、バルーンの拡張時においてシャフト部の軸心から離間する方向に突出する。例えば、生体管腔内に形成された狭窄部でバルーンが拡張した場合、凸部は狭窄部に喰い込み、狭窄部に切れ目を形成させながら狭窄部を押し広げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
延伸方向に延びる拡張強化部材が設けられたバルーンを用いて狭窄部に切れ目を適切に形成させる為に、拡張強化部材は、狭窄部に喰い込んだ状態で延伸方向に沿って移動できることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、狭窄部に対して拡張強化部材を延伸方向に移動させることにより、狭窄部に対して切れ目を適切に形成させることが可能なカテーテル用バルーン体、及びバルーンカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るカテーテル用バルーン体は、延伸方向の一方側の端部である第1先端部と他方側の端部である第1基端部との間に亘って延びるバルーンと、前記バルーンの少なくとも一部分に配置され、前記延伸方向に沿って延びる少なくとも1つの拡張強化部材と、前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動させる移動部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第1態様によれば、カテーテル用バルーン体は、バルーンが拡張して拡張強化部材が狭窄部に喰い込んだ状態で、移動部材により拡張強化部材を延伸方向に移動させることができる。従って、カテーテル用バルーン体は、拡張強化部材による切れ目を狭窄部に適切に形成させることができる。
【0008】
第1態様において、前記バルーンは、前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、前記支持部は、前記バルーンの表面のうち、前記バルーンの周方向において前記支持部が配置されない部分よりも内側に配置されてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、収縮時におけるバルーンの径を小さくすることができるので、生体管腔内におけるバルーンの通過性を良好にできる。
【0009】
第1態様において、前記バルーンは、前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、前記支持部は、前記バルーンの表面のうち、前記バルーンの周方向において前記支持部が配置されない部分よりも外側に配置されてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンに対する拡張強化部材の向きを、支持部により安定化できる。従って、カテーテル用バルーン体は、バルーンの拡張時において拡張強化部材を狭窄部に適切に喰い込ませることができると同時に、拡張強化部材の移動時において狭窄部に切れ目を適切に形成させることができる。
【0010】
第1態様において、前記バルーンは、前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部を有し、前記支持部は、前記延伸方向に配列された複数の部分支持部を有してもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンを容易に曲折させることができる。
【0011】
第1態様において、前記バルーンは、前記延伸方向に延びる筒状を有する膨張部と、前記膨張部の前記延伸方向の一方側の端部から前記第1先端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1先端部の径よりも大きい先端連結部と、前記膨張部の前記延伸方向の他方側の端部から前記第1基端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1基端部の径よりも大きい基端連結部と、前記拡張強化部材を前記延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部とを備え、前記支持部は、前記先端連結部、前記膨張部、及び前記基端連結部に亘って設けられてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンの先端連結部と基端連結部との間に亘って拡張強化部材を移動させることができる。
【0012】
第1態様において、前記拡張強化部材及び前記支持部の一方は、前記延伸方向に沿って延びる溝を有し、前記拡張強化部材及び前記支持部の他方は、前記溝に嵌合する嵌合部を有してもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、バルーンに対する拡張強化部材の向きを安定化しつつ、延伸方向に沿って拡張強化部材をスムーズに移動させることができる。
【0013】
第1態様において、前記バルーンは、前記延伸方向に延びる筒状を有する膨張部と、前記膨張部の前記延伸方向の一方側の端部から前記第1先端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1先端部の径よりも大きい先端連結部と、前記膨張部の前記延伸方向の他方側の端部から前記第1基端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1基端部の径よりも大きい基端連結部と、を備え、前記拡張強化部材の前記延伸方向の長さは、前記膨張部の前記延伸方向の長さよりも短くてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、拡張強化部材の移動可能な距離を大きくすることができるので、拡張強化部材の移動により狭窄部に切れ目を適切に形成させることができる。
【0014】
第1態様において、前記拡張強化部材の前記延伸方向の長さは、前記膨張部の前記延伸方向の長さの半分以下であってもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、拡張強化部材の移動可能な距離を十分大きくすることができるので、拡張強化部材の移動により狭窄部に切れ目を適切に形成させることができる。
【0015】
第1態様において、前記拡張強化部材の少なくとも一部は、前記バルーンの表面よりも外側に突出してもよい。これによりカテーテル用バルーン体は、バルーンの膨張時において拡張強化部材を狭窄部に適切に喰い込ませることができる。
【0016】
第1態様において、前記拡張強化部材は、前記延伸方向に配列された複数の部分拡張強化部材と、前記複数の部分拡張強化部材を連結する少なくとも1つの連結部と、を有し、前記少なくとも1つの連結部は、それぞれ、前記複数の部分拡張強化部材のうち前記延伸方向に隣接する2つの部分拡張強化部材を、前記2つの部分拡張強化部材が前記延伸方向に延びる状態と、前記2つの部分拡張強化部材の一方が前記延伸方向に対して傾斜した状態とに切り替え可能であってもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、連結部において拡張強化部材を屈曲させることができる。従って、カテーテル用バルーン体は、バルーンの表面のうち延伸方向に対して傾斜した部分にも拡張強化部材を配置させることができる。
【0017】
第1態様において、前記移動部材による移動後の前記拡張強化部材を、移動前の前記拡張強化部材の位置に向けて付勢する付勢部を備えてもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、移動部材より移動した拡張強化部材を、付勢部により元の位置に戻すことが容易に可能となる。
【0018】
第1態様において、前記バルーンは、前記延伸方向に延びる筒状を有する膨張部と、前記膨張部の前記延伸方向の一方側の端部から前記第1先端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1先端部の径よりも大きい先端連結部と、前記膨張部の前記延伸方向の他方側の端部から前記第1基端部に延びる部分であって、前記膨張部に接続する端部の径が前記第1基端部の径よりも大きい基端連結部と、を備え、前記延伸方向のうち前記第1基端部から前記第1先端部に向かう方向に前記拡張強化部材が最も移動した状態で、前記拡張強化部材の両端部のうち前記第1先端部に近接する第2先端部は、前記膨張部のうち前記先端連結部と連結する部分よりも前記第1先端部側に位置してもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、膨張部よりも第1先端部側に配置された拡張強化部材を狭窄部に作用させ、狭窄部を治療できる。
【0019】
第1態様において、前記第1基端部から前記第1先端部に向かう方向に前記拡張強化部材が最も移動した状態で、前記拡張強化部材の前記第2先端部は、前記第1先端部に対し、前記第1基端部側と反対側に位置してもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、先端連結部よりも先端側に配置された拡張強化部材を狭窄部に作用させ、狭窄部を治療できる。
【0020】
第1態様において、前記拡張強化部材が金属製であってもよい。この場合、カテーテル用バルーン体は、生体管腔内の狭窄部だけでなく、例えばステント等にも拡張強化部材により切れ目を入れることが可能となる。
【0021】
本発明の第2態様に係るバルーンカテーテルは、第1態様に係る前記カテーテル用バルーン体と、第3先端部と第3基端部との間に亘って延び、前記第3先端部の近傍に前記カテーテル用バルーン体が連結するシャフトとを有することを特徴とする。第2態様によれば、バルーンカテーテルは、シャフトを用い、カテーテルバルーンを生体管腔内の狭窄部まで移動させることができる。
【0022】
第2態様において、前記移動部材は、紐状を有し、一端部が前記拡張強化部材に連結し、前記シャフトは、前記移動部材の一部が挿通する挿通孔を有してもよい。この場合、バルーンカテーテルは、生体管腔内を移動するカテーテル用バルーン体の移動部材が引っ掛り、移動が妨げられることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】バルーンカテーテル1Aを示す図、及び、A1-A1線を矢印方向から視た断面図である。
【
図2】バルーンカテーテル1Aの動作概要を示す図である。
【
図3】バルーンカテーテル1Bを示す図、及び、A2-A2線を矢印方向から視た断面図である。
【
図4】バルーンカテーテル1Cを示す図、及び、A3-A3線、A4-A4線、A5-A5線をそれぞれ矢印方向から視た断面図である。
【
図6】バルーンカテーテル1Dの動作概要を示す図である。
【
図7】バルーンカテーテル1Dの変形例を示す図である。
【
図9】拡張強化部材4Eが先端側又は基端側に最も移動した状態におけるバルーンカテーテル1Eを示す図である。
【
図10】バルーンカテーテル1Eの動作概要を示す図である。
【
図11】バルーンカテーテル1Eの動作概要を示す図であって、
図10の続きである。
【
図12】バルーンカテーテル1Fを示す図、及び、A6-A6線、A7-A7線をそれぞれ矢印方向から視た断面図である。
【
図13】拡張強化部材4Fが先端側又は基端側に最も移動した状態におけるバルーンカテーテル1Fを示す図である。
【
図15】拡張強化部材4Aの変形例を示す図である。
【
図16】バルーンカテーテル1Aの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るバルーンカテーテル1の実施形態(バルーンカテーテル1A~1G)について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0025】
<バルーンカテーテル1の概要>
血管、精管、ファロピーオ管、腸、リンパ管、移植組織、心室や脳室等の脈管における狭窄性の病変(以下、「狭窄病変」という。)を拡張して再灌流化するためのデバイスとして、バルーンカテーテルが知られている。ここで、例えば石灰化や沈着物の影響等により狭窄病変が硬化した場合でも、狭窄病変の拡張を可能とするためのバルーンカテーテルが種々提案されている。このようなバルーンカテーテルの一例として、シャフトと、シャフトに設けられたバルーンと、バルーンの表面に配置された硬性の部材(以下、「拡張強化部材」という。)とを含むバルーンカテーテルがある。しかし、このようなバルーンカテーテルにおいて、バルーンが有する拡張力が拡張強化部材を介して狭窄病変に十分伝達されず、硬化した狭窄病変を的確に拡張できない場合があることが知られている。
【0026】
拡張強化部材は一般的に、バルーンの拡張時において狭窄病変との接触面積を小さくし、バルーンの拡張に応じた力を狭窄病変に集中させることで、狭窄病変に働く力を相対的に強化するものである。これに対し、このようなバルーンカテーテルにおいて、1回のバルーンの拡張だけでは狭窄病変の拡張が不十分な場合、他のバルーンカテーテルに交換してバルーンの拡張を繰り返す必要があり、バルーンカテーテルの使用者や患者の負担が増加することが課題として挙げられる。又、伝達体から物体に力を伝達させる場合の効率は、伝達体を物体に単に押し当てる場合よりも、物体に対して伝達体を移動させながら押し当てた場合の方が、一般に良いことが知られている。
【0027】
これに対し、本実施形態に係るバルーンカテーテル1では、バルーン3に対して拡張強化部材4を、バルーン3の延伸方向に沿って移動させることが可能となっている。このためバルーンカテーテル1は、拡張強化部材4から狭窄病変に対して力を効率的に伝達させることができるので、硬化した狭窄病変でも適切に治療を行うことができる。又、拡張強化部材4の移動を繰り返し行うことができるようにすることで、1回の施術時では狭窄病変の拡張が不十分な場合でも、他のバルーンカテーテル1に交換する作業を不要としつつ狭窄病変の拡張を適切に行えるようにしている。
【0028】
<第1実施形態(バルーンカテーテル1A)>
図1を参照し、バルーンカテーテル1Aについて説明する。バルーンカテーテル1Aは、カテーテルシャフト2A、及びバルーン体10Aを有する。バルーン体10Aは、バルーン3、拡張強化部材4A、及び移動部材5を含む。
【0029】
<カテーテルシャフト2A>
カテーテルシャフト2Aは管状を有する。カテーテルシャフト2Aの一方側の端部にバルーン3が接続される。カテーテルシャフト2Aの他方側の端部に、非図示のハブが接続される。ハブは、カテーテルシャフト2Aを介してバルーン3に圧縮流体を供給可能である。
【0030】
以下、カテーテルシャフト2Aの両端のうち一方側を、「先端側」という。カテーテルシャフト2Aの両端のうち他方側を、「基端側」という。カテーテルシャフト2Aに沿って延びる方向を、「延伸方向」という。カテーテルシャフト2Aの中心を通って延伸方向に延びる軸を、中心軸Cという。中心軸Cを中心とする半径方向を、単に「半径方向」という。中心軸Cと直交する平面において切断した場合の断面を、単に「断面」という。断面において、半径方向のうち中心軸Cに近接する側を「内側」といい、中心軸Cから離隔する側を「外側」という。中心軸Cを中心とした周方向を、単に「周方向」という。
【0031】
カテーテルシャフト2Aは、外側チューブ21及び内側チューブ22を有する。外側チューブ21及び内側チューブ22は、それぞれ可撓性を有する。外側チューブ21の内径は、内側チューブ22の外径よりも大きい。内側チューブ22は、先端側の所定部分を除き、外側チューブ21の内腔に配置される。内側チューブ22の先端側の所定部分は、外側チューブ21の先端側の端部(以下、「先端部211」という。)から先端側に向けて突出する。内側チューブ22の先端側の端部(以下、「第3先端部221」という。)は、外側チューブ21の先端部211よりも先端側に配置される。以下、内側チューブ22の先端側の所定部分を、「突出部分225」という。外側チューブ21の基端側の端部を、「第3基端部212」という。内側チューブ22の基端側の端部を、「第3基端部222」という。少なくとも第3基端部212には、ハブが接続される。外側チューブ21及び内側チューブ22の材料は特に限定されないが、一例としてポリアミド系樹脂が用いられる。
【0032】
外側チューブ21の内腔のうち、内側チューブ22の内腔以外の空間には、ハブから供給される圧縮流体が通流する。内側チューブ22の内腔には、ガイドワイヤG(
図2参照)が挿通される。
【0033】
<バルーン3>
バルーン3は、非図示のハブによる圧縮流体の供給の有無に応じて内圧が変化することにより、収縮状態と膨張状態との間で変形可能である。
図1は、膨張状態のバルーン3を示す。
【0034】
バルーン3は、先端側の端部(以下、「第1先端部3D」という。)が、内側チューブ22の突出部分225のうち第3先端部221の近傍に熱溶着によって接続される。又、バルーン3は、基端側の端部(以下、「第1基端部3P」という。)が、外側チューブ21の先端部211の近傍に熱溶着によって接続される。バルーン3は、第1先端部3Dと第1基端部3Pとの間に亘って延び、内側チューブ22の突出部分225を外側から覆う。バルーン3の材料は特に限定されないが、一例としてポリアミド系樹脂やポリアミドエラストマー系樹脂が用いられる。
【0035】
バルーン3において、先端連結部3A、膨張部3B、及び基端連結部3Cが定義される。先端連結部3Aは、膨張状態のバルーン3において第1先端部3Dから第1基端部3P側に向けて拡径しながら延びる領域である。基端連結部3Cは、膨張状態のバルーン3において第1基端部3Pから第1先端部3D側に向けて拡径しながら延びる領域である。膨張部3Bは、膨張状態のバルーン3において先端連結部3Aと基端連結部3Cとの間に挟まれた領域であり、延伸方向に亘って径が略同一となる。膨張状態において、膨張部3Bは延伸方向に延びる筒状となる。膨張部3Bの先端側の端部を「先端部30D」といい、基端側の端部を「基端部30P」という。
【0036】
先端連結部3Aは、膨張部3Bの先端部30Dと連結する端部から第1先端部3Dに向けて、先端側に延びる。先端連結部3Aの断面の直径は、膨張部3Bの先端部30Dと連結する端部において最も大きく、第1先端部3Dにおいて最も小さくなる。基端連結部3Cは、膨張部3Bの基端部30Pと連結する端部から第1基端部3Pに向けて、基端側に延びる。基端連結部3Cの断面の直径は、膨張部3Bの基端部30Pと連結する端部において最も大きく、第1基端部3Pにおいて最も小さくなる。
【0037】
バルーン3の延伸方向は、カテーテルシャフト2Aの延伸方向と一致する。バルーン3の中心を通って延伸方向に延びる軸は、中心軸Cと一致する。バルーン3の第1基端部3Pから第1先端部3Dに向かう方向は、延伸方向において先端側に向かう方向と一致する。バルーン3の第1先端部3Dから第1基端部3Pに向かう方向は、延伸方向において基端側に向かう方向と一致する。
【0038】
膨張部3Bは、内側に凹んだ支持部31を有する。支持部31は、先端部30Dに対して僅かに基端側に離隔した位置Qdから、基端部30Pに対して僅かに先端側に離隔した位置Qpとの間に亘って、延伸方向に延びる。支持部31は、膨張部3Bの表面に溝31Fを形成する。溝31Fの延伸方向の両端部は閉じている。以下、バルーン3の表面のうち、周方向において支持部31が配置されない部分を、「特定表面3S」という。
【0039】
支持部31は、底面31A及び一対の側面31Bを有する。底面31Aは平面状を有し、半径方向と直交する。一対の側面31Bは、底面31Aの周方向の両端部から、膨張部3Bの特定表面3Sに向けて延びる。一対の側面31Bのうち、底面31Aと連結する側と反対側の端部は、膨張部3Bにスリット状の開口部31Cを形成させる。開口部31Cは、膨張部3Bに沿って延伸方向に延びる。
【0040】
一対の側面31Bの周方向の間隔は、底面31Aから開口部31Cに向かうに従い、小さくなる。底面31Aの周方向の長さを、L11と表記する。開口部31Cの周方向の幅を、L12と表記する。この場合、長さL11よりも幅L12の方が小さくなる。支持部31の底面31Aとバルーン3の中心軸Cとの間の半径方向の距離を、「Ra」と表記する。バルーン3の中心軸Cと特定表面3Sとの間の半径方向の距離を、「Rb」と表記する。この場合、距離Raよりも距離Rbの方が大きい。つまり、支持部31の底面31A及び一対の側面31Bは、膨張部3Bの特定表面Sよりも内側に配置される。
【0041】
<拡張強化部材4A>
拡張強化部材4Aは、バルーン3の膨張部3Bに配置される。拡張強化部材4Aは三角柱状を有し、延伸方向に延びる。拡張強化部材4Aの長さは、膨張部3Bの延伸方向の長さの略半分であり、膨張部3Bの延伸方向の長さよりも短い。拡張強化部材4Aの先端側の端部を「第2先端部40D」といい、基端側の端部を「第2基端部40P」という。
【0042】
拡張強化部材4Aの断面の形状は、二等辺三角形である。拡張強化部材4Aは、半径方向の外側に最も突出する頂点43Aを有する。拡張強化部材4Aは、断面において互いに等しい2辺に対応する一対の側面42Aを有する。一対の側面42Aの交わる部分が頂点43Aに対応する。一対の側面42Aのうち頂点43Aと反対側の端部は、拡張強化部材4Aの底面41Aと連結する。一対の側面42Aのなす角度は90度よりも大きく、鈍角である。
【0043】
底面41Aと直交して延び且つ底面41Aから頂点43Aを通って延びる方向を、「突出方向Y11」という。バルーン3が膨張状態の場合、突出方向Y11は半径方向の外側を向く。
【0044】
拡張強化部材4Aのうち底面41Aを含む一部は、支持部31内に配置される。以下、拡張強化部材4Aのうち支持部31内に配置される部分を、「嵌合部41F」という。底面41Aの周方向の長さL13は、支持部31の底面31Aの周方向の長さL11よりも僅かに短く、支持部31の開口部31Cの間隔L12よりも長い。(L12<L13<L11)。拡張強化部材4Aの嵌合部41Fは、支持部31の溝31Fに嵌合する。この状態で、拡張強化部材4Aのうち頂点43Aを含む一部は、バルーン3の膨張部3Bの特定表面3Sよりも外側に突出する。
【0045】
拡張強化部材4Aは、支持部31によって延伸方向に移動可能に支持される。
図1は、拡張強化部材4Aが先端側に最も移動した状態を示す。なお、支持部31の溝31Fの延伸方向の両端部が閉じており、且つ、拡張強化部材4Aの底面41Aの長さL13よりも、支持部31の開口部31Cの間隔L12の方が短いので、拡張強化部材4Aは、バルーン3に対して脱離不能である。
【0046】
拡張強化部材4Aの材料は金属であり、より詳細には、ニッケルチタン等の形状記憶合金である。
【0047】
<移動部材5>
移動部材5は、可撓性を有する細長い紐状を有する。移動部材5の材料は、縫合糸、金属、樹脂等である。移動部材5の先端部5Dは、拡張強化部材4Aの第2基端部40Pに接続される。移動部材5は、先端部5Dから基端部5Pに向けて、延伸方向に沿って直線状に延びる。移動部材5の断面形状は円形であり、表面は平滑である。
【0048】
移動部材5は、基端部5Pに作用する力に応じ、延伸方向に沿って移動可能である。移動部材5は、移動により拡張強化部材4Aに延伸方向の力を作用させ、拡張強化部材4Aを延伸方向に移動させることが可能である。
【0049】
<動作概要>
図2を参照し、バルーンカテーテル1Aの使用例について説明する。脈管9の内壁の一部に発生した狭窄病変90Aを拡張する為にバルーンカテーテル1Aが使用される場合を例示する。
【0050】
脈管9内にガイドワイヤGが挿通される。
図2(A)に示すように、バルーン3を収縮状態としたバルーンカテーテル1Aが準備される。拡張強化部材4Aは、先端側に最も移動した状態とされる。次に、バルーンカテーテル1Aのうちバルーン3を少なくとも含む部分が脈管9内に配置される。バルーンカテーテル1Aの内側チューブ22(
図1参照)にガイドワイヤGが挿通される。
【0051】
次に、バルーンカテーテル1Aのカテーテルシャフト2Aの第3基端部212(
図1参照)が操作されることにより、バルーンカテーテル1AはガイドワイヤGに沿って脈管9内に押し込まれる。バルーンカテーテル1Aは、バルーン3が移動方向の先頭に配置された状態で、狭窄病変90Aに向けて脈管9内を遠位側に移動する。
図2(B)に示すように、バルーン3が狭窄病変90Aに到達した場合、バルーンカテーテル1Aの移動は停止される。
【0052】
図2(C)に示すように、バルーン3への圧縮流体の供給が開始され、バルーン3は膨張状態となる。これにより、バルーン3の特定表面3Sは狭窄病変90Aに接触し、拡張強化部材4Aの頂点43A(
図1参照)は狭窄病変90Aに進入する。拡張強化部材4Aのうち、バルーン3の特定表面3Sよりも外側に突出する部分は、狭窄病変90Aに喰い込む。
【0053】
同時に、移動部材5の基端部5P(
図1参照)に対して基端側に向かう方向の力が加えられる。これにより、移動部材5の先端部5D(
図1参照)に接続した拡張強化部材4Aは、バルーン3の支持部31(
図1参照)に沿って基端側に移動する。拡張強化部材4Aは、狭窄病変90Aを切断し、狭窄病変90Aには切れ目が形成される。狭窄病変90Aは、切れ目が形成されることにより拡張し易くなる。このため、バルーン3の拡張により狭窄病変90Aは容易に拡張される。
【0054】
次に、供給された圧縮流体がバルーン3から除去され、バルーン3は収縮状態となる。
図2(D)に示すように、バルーンカテーテル1Aの第3基端部212が操作されることにより、バルーンカテーテル1Aは近位側に移動する。バルーンカテーテル1Aが脈管9から外部に引き抜かれることにより、施術は完了する。
【0055】
<第1実施形態の作用、効果>
以上のように、バルーンカテーテル1Aは、バルーン3が拡張して拡張強化部材4Aが狭窄病変90Aに喰い込んだ状態で、移動部材5により拡張強化部材4Aを延伸方向に沿って基端側に移動させることができる。従って、バルーンカテーテル1Aは、拡張強化部材4Aによる切れ目を狭窄病変90Aに適切に形成させることができる。これによりバルーンカテーテル1Aは、、バルーン3による狭窄病変90Aの拡張力を向上させることができる。
【0056】
なお、拡張強化部材4Aが用いられない通常のバルーンが用いられる場合、圧縮流体の供給時における圧力を高くしてバルーンを強い力で膨張させ、狭窄病変90Aを拡張させる必要がある。このため、バルーンには、厚さを大きくして耐圧性能を高めることが要求される。この場合、収縮状態におけるバルーンの径が大きくなってしまい、脈管9内におけるバルーンの通過性が低下する。これに対し、バルーンカテーテル1Aでは、バルーン3による拡張力が拡張強化部材4Aにより向上したことに伴い、バルーン3に要求される耐圧性能を低くできる。この場合、バルーンの厚さを小さくして収縮状態におけるバルーンの径を小さくできるので、脈管9でのバルーン3の通過性を良好にできる。
【0057】
バルーンカテーテル1Aにおいて、拡張強化部材4Aを延伸方向に沿って移動可能に支持する支持部31は、バルーン3の特定表面3Sよりも内側に配置される。このため、バルーンカテーテル1Aは、収縮状態としたバルーン3の径を小さくすることができるので、脈管9におけるバルーン3の通過性を良好にできる。
【0058】
支持部31は、延伸方向に沿って延びる溝31Fを有する。拡張強化部材4Aは、溝31Fに嵌合する嵌合部41Fを有する。拡張強化部材4Aは、支持部31の溝31Fに嵌合部41Fが嵌合することにより、バルーン3に対して延伸方向に移動可能に支持される。この場合、バルーンカテーテル1Aは、拡張強化部材4Aの頂点43Aが外側を向いた状態で拡張強化部材4Aの向きを安定化しつつ、延伸方向に沿って拡張強化部材4Aをスムーズに移動させることができる。
【0059】
拡張強化部材4Aの長さは、膨張部3Bの延伸方向の長さの略半分であり、膨張部3Bの延伸方向の長さよりも短い。これにより、バルーンカテーテル1Aは、膨張部3Bの延伸方向の長さの略半分の長さ分、拡張強化部材4Aを延伸方向に移動させることができる。従ってバルーンカテーテル1Aは、拡張強化部材4Aの移動により狭窄病変90Aに切れ目を適切に形成させることができる。
【0060】
拡張強化部材4Aのうち頂点43Aを含む一部は、バルーン3の膨張部3Bの特定表面3Sよりも外側に突出する。このためバルーンカテーテル1Aは、バルーン3の膨張時において拡張強化部材4Aを狭窄病変90Aに適切に喰い込ませることができる。
【0061】
拡張強化部材4Aの断面形状は、一対の側面42Aに対応する辺が同一な二等辺三角形である。又、頂点43Aにおける角度、言い換えれば、一対の側面42Aのなす角度は、90度よりも大きく鈍角である。この場合、バルーンカテーテル1Aは、頂点43Aが外側を向いた状態で拡張強化部材4Aを安定化させることができる。これによりバルーンカテーテル1Aは、バルーン3の膨張時において拡張強化部材4Aの頂点43Aを狭窄病変90Aに適切に作用させることができ、且つ、バルーン3の膨張に応じた力を、拡張強化部材4Aを介して拡張強化部材4Aに効率的に伝達させて狭窄病変90Aに切れ目を形成させることができる。
【0062】
バルーンカテーテル1Aは、ステント内再狭窄(以下、「ISR」という。)にも適用可能である。理由は次の通りである。ISRの拡張時、狭窄病変90A自体よりもステントの硬さが弊害となる。なぜならば、一般的なバルーンの膨張のみでは、ステントが破綻せず、拡張効果が不十分となってしまう場合が多い為である。これに対し、拡張強化部材4Aは金属製であり、より詳細には、硬質なステンレス等の合金やニッケルチタン等の形状記憶合金である。この場合、バルーンカテーテル1Aは、脈管9の狭窄病変90Aだけでなく、例えば、脈管9内のステント等にも拡張強化部材4Aにより切れ目を形成させることが可能となる。これにより、切れ目が形成されたステントを、バルーン3の膨張により大きく変形させることができるので、ISRにも十分適用できる。
【0063】
移動部材5の断面形状を円形としたことにより、移動部材5が脈管9を傷付ける可能性を軽減できる。又、移動部材5は直線状に延びているので、基端部5Pに加えられる力を効率良く拡張強化部材4Aに伝え、拡張強化部材4Aを移動させることができる。
【0064】
バルーンカテーテル1Aは、カテーテルシャフト2Aを用い、バルーン3を脈管9の狭窄病変90Aまで移動させることができる。
【0065】
<第1実施形態の特記事項>
拡張強化部材4Aの長さは、バルーン3の膨張部3Bの延伸方向の略半分に限定されず、膨張部3Bの延伸方向の長さより小さくてもよい。例えば拡張強化部材4Aの長さは、膨張部3Bの延伸方向の長さの略1/3、略1/4等でもよい。
【0066】
拡張強化部材4Aは、バルーン3が収縮状態である場合において、バルーン3の特定表面3Sよりも内側に配置されてもよい。拡張強化部材4Aは、バルーン3が収縮状態から膨張状態に変形する過程で、バルーン3の内側から外側に向けて移動し、バルーン3の特定表面3Sよりも外側に突出してもよい。
【0067】
バルーン3による狭窄病変90Aの拡張時、バルーン3が収縮状態から膨張状態に変化する過程で、移動部材5の基端部5Pに対する力が加えられてもよい。これにより、バルーン3の膨張により狭窄病変90Aを拡張させながら、拡張強化部材4Aを移動させて狭窄病変90Aを切断してもよい。
【0068】
拡張強化部材4Aの頂点43Aにおける角度、言い換えれば、一対の側面42Aのなす角度は、90度より小さくてもよい。頂点43Aの断面形状は、二等辺三角形に限定されず、他の形状でもよい。例えば拡張強化部材4Aの断面形状は、正三角形でもよい。
【0069】
<第2実施形態(バルーンカテーテル1B)>
図3を参照し、バルーンカテーテル1Bについて説明する。バルーンカテーテル1Bは、バルーン体10Aの代わりにバルーン体10Bを有する点で、第1実施形態(
図1、
図2参照)と相違する。バルーン体10Bのバルーン3は、支持部31(
図1参照)の代わりに支持部32を有する。バルーンカテーテル1Bのうち、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0070】
図3に示すように、バルーン3は、膨張部3Bの表面に支持部32を有する。支持部32は、先端部30Dと基端部30Pとの間に亘って、延伸方向に延びる。バルーン3の表面のうち、周方向において支持部32が配置されない部分は、特定表面3Sに対応する。第1実施形態と異なり、支持部32は、バルーン3の特定表面Sに対して外側に配置される。
【0071】
支持部32は、底部32A及び一対の側部32Bを有する。底部32Aは、先端部30Dと基端部30Pとの間に亘って延伸方向に延びる長方形の板状を有する。底部32Aは、半径方向と直交する。底部32Aは、バルーン3の膨張部3Bの表面に接合される。一対の側部32Bは、底部32Aの周方向の両端部から、膨張部3Bと反対側に向けて延びる。一対の側部32Bの延びる方向は、半径方向に対し、互いに近接する向きに傾斜する。
【0072】
一対の側部32Bのうち、底部32Aと連結する側と反対側の端部は、スリット状の開口部32Cを形成させる。開口部32Cは、膨張部3Bに沿って延伸方向に延びる。一対の側部32Bの周方向の間隔は、底部32Aから開口部32Cに向かうに従って小さくなる。底部32Aのうち外側の面の周方向の長さを、L21と表記する。開口部32Cの周方向の幅を、L22と表記する。この場合、間隔L22は長さL21よりも小さい。支持部32は、底部32A及び一対の側部32Bで囲まれた部分に溝32Fを形成する。溝32Fの延伸方向の両端部は閉じている。
【0073】
支持部32の底部32Aとバルーン3の中心軸Cとの間の半径方向の距離を、「Rc」と表記する。バルーン3の中心軸Cと特定表面3Sとの間の半径方向の距離は、Rbである。この場合、距離Rcよりも距離Rbの方が小さい。つまり、支持部32は、特定表面3Sよりも外側に配置される。
【0074】
拡張強化部材4Aの嵌合部41Fは、支持部32の溝32Fに嵌合する。この状態で、拡張強化部材4A全体は、バルーン3の膨張部3Bの特定表面3Sよりも外側に突出する。拡張強化部材4Aの底面41Aの周方向の長さL13は、支持部32の底部32Aの周方向の長さL21よりも僅かに短く、支持部32の開口部32Cの間隔L22よりも長い。(L22<L13<L21)。拡張強化部材4Aは、支持部32によって延伸方向に移動可能に支持される。
図3は、拡張強化部材4Aが先端側に最も移動した状態を示す。
【0075】
<第2実施形態の作用、効果>
バルーンカテーテル1Bにおいて、バルーン3の支持部32は、バルーン3の特定表面3Sよりも外側に配置される。これによりバルーンカテーテル1Bは、第1実施形態と比べて、バルーン3に対する拡張強化部材4Aの向きを支持部32により安定化できる。従って、バルーンカテーテル1Bは、バルーン3の拡張時において拡張強化部材4Aを狭窄病変90Aに適切に喰い込ませることができると同時に、拡張強化部材4Aの移動時において狭窄病変90Aに切れ目を適切に形成させることができる。
【0076】
<第2実施形態の特記事項>
拡張強化部材4Aの底面41Aに、内部に向けて凹んだ溝が形成されてもよい。この溝は、延伸方向に延びていてもよい。バルーン3は、拡張強化部材4Aを支持する支持部として、バルーン3の特定表面3Sから外側に向けて突出する嵌合部を有してもよい。嵌合部は、バルーン3の先端部30Dと基端部30Pとの間に亘って延伸方向に延び、一部が拡張強化部材4Aの溝に嵌合してもよい。これにより拡張強化部材4Aは、バルーン3に対して延伸方向に移動可能に支持されてもよい。
【0077】
<第3実施形態(バルーンカテーテル1C)>
図4を参照し、バルーンカテーテル1Cについて説明する。バルーンカテーテル1Cは、バルーン体10Aの代わりにバルーン体10Cを有する点で、第1実施形態(
図1、
図2参照)と相違する。バルーン体10Cのバルーン3は、支持部31(
図1参照)の代わりに支持部33を有する。又、バルーン体10Cは、拡張強化部材4A(
図1参照)の代わりに拡張強化部材4Cを有する。バルーンカテーテル1Cのうち、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図4に示すように、支持部33は、部分支持部331、332を有する。部分支持部331、332は、それぞれ、バルーン3の膨張部3Bに設けられた凹部である。部分支持部331は、先端部30D近傍の位置Qdから基端側に向けて延びる。部分支持部332は、基端部30P近傍の位置Qpから先端側に向けて延びる。部分支持部331、332は、延伸方向に配列し、一直線状に並ぶ。部分支持部331、332は、延伸方向に離隔する。部分支持部331、332のそれぞれの長さは、バルーン3の膨張部3Bの延伸方向の長さの半分よりも短い。
【0079】
部分支持部331、332は、それぞれ、膨張部3Bの表面に溝33Fを形成する。部分支持部331、332のそれぞれの溝31Fの延伸方向の両端部は、閉じている。部分支持部331、332は、それぞれ、底面33A及び一対の側面33Bを有する。一対の側面33Bのうち、底面33Aと連結する側と反対側の端部は、膨張部3Bにスリット状の開口部33Cを形成させる。開口部33Cは、膨張部3Bに沿って延伸方向に延びる。部分支持部331、332の断面形状は、第1実施形態における支持部31の断面形状と同一である。
【0080】
拡張強化部材4Cは、基部44及び嵌合部44A、44Bを有する。基部44は三角柱状を有し、延伸方向に延びる。基部44の長さは、膨張部3Bの延伸方向の長さの半分よりも長い。基部44の第2先端部44Dは、部分支持部331の外側に位置する。基部44の第2基端部44Pは、部分支持部332の外側に位置する。基部44は、バルーン3の膨張部3Bの特定表面3Sよりも外側に突出する。
【0081】
嵌合部44Aは、基部44の第2先端部44Dを含む一部から部分支持部331に向けて、内側に突出する。嵌合部44Aは、部分支持部331の溝33Fに嵌合する。嵌合部44Bは、基部44の第2基端部44Pを含む一部から部分支持部332に向けて、内側に突出する。嵌合部44Bは、部分支持部332の溝33Fに嵌合する。拡張強化部材4Cのうち嵌合部44A、44Bを含む部分の断面形状は、第1実施形態における拡張強化部材4Aの断面形状と同一である。
【0082】
拡張強化部材4Cは、支持部33の部分支持部331、332によって、延伸方向に移動可能に支持される。
図4は、拡張強化部材4Aが先端側に最も移動した状態を示す。
【0083】
<第3実施形態の作用、効果>
拡張強化部材4Cは、延伸方向において嵌合部44A、44Bが配置されない部分で、第1実施形態における拡張強化部材4Aよりも曲折し易くなる。従って、バルーンカテーテル1Cは、拡張強化部材4Cによりバルーン3が曲折し難くなることを抑制できる。又、バルーン3のうち延伸方向において支持部33が配置されない部分、即ち、バルーン3のうち部分支持部331、332の間に挟まれた部分は、他の部分に比べて曲折し易くなる。従って、バルーンカテーテル1Cは、第1実施形態と比べてバルーン3を容易に曲折させることができる。
【0084】
<第3実施形態の特記事項>
支持部33に含まれる部分支持部の数は2つに限定されず、3つ以上でもよい。各部分支持部に拡張強化部材が1つずつ支持されてもよい。拡張強化部材4Cの嵌合部44A、44Bが嵌合する1つの溝を有する支持部33がバルーン3に設けられていてもよい。この場合、支持部33は、第1実施形態における支持部31と同一形状であってもよい。
【0085】
<第4実施形態(バルーンカテーテル1D)>
図5、
図6を参照し、バルーンカテーテル1Dについて説明する。バルーンカテーテル1Dは、バルーン体10Aの代わりにバルーン体10Dを有する点で、第1実施形態(
図1、
図2参照)と相違する。バルーン体10Dは、付勢部6Dを有する。バルーンカテーテル1Dのうち、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図5に示すように、付勢部6Dは圧縮ばねであり、拡張強化部材4Aに対して先端側に設けられる。付勢部6Dは延伸方向に沿って延びる。付勢部6Dの先端側の端部は、バルーン3の膨張部3Bの先端部30Dに接続される。付勢部6Dの基端側の端部は、拡張強化部材4Aの第2先端部40Dに接続される。付勢部6Dは、拡張強化部材4Aに対し、先端側に向かう方向(矢印Y12の方向)の付勢力を作用させる。
【0087】
付勢部6Dの材料は、拡張強化部材4Aに十分な付勢力を作用させることができ、且つ、反復的な伸縮が可能なように、金属や樹脂が用いられる。
【0088】
移動部材5に力が加えられない状態で、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力により先端側に最も移動した状態となる。一方、移動部材5の基端部5Pに対して基端側に向かう方向の力が加えられた場合、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力に抗って基端側に移動する。又、拡張強化部材4Aが基端側に移動した後、移動部材5に対する力の付与が解除された場合、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力により先端側に移動する。拡張強化部材4Aは、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。
【0089】
図6を参照し、バルーンカテーテル1Dの動作概要について説明する。脈管9の内壁の一部に発生した狭窄病変90Aを拡張する為にバルーンカテーテル1Dが使用される場合を例示する。
【0090】
バルーンカテーテル1Dの移動部材5には力が加えられておらず、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力に応じて先端側に最も移動した状態となる。カテーテルシャフト2Aの第3基端部212(
図5参照)が操作されることにより、バルーンカテーテル1DはガイドワイヤGに沿って脈管9内に押し込まれる。
図6(A)に示すように、バルーン3が狭窄病変90Aに到達した場合、バルーンカテーテル1Dの移動は停止される。
【0091】
図6(B)に示すように、バルーン3への圧縮流体の供給が開始され、バルーン3は膨張状態となる。これにより、バルーン3の特定表面3Sは狭窄病変90Aに接触し、拡張強化部材4Aのうちバルーン3の特定表面3Sよりも外側に突出する部分は、狭窄病変90Aに喰い込む。同時に、移動部材5の基端部5P(
図5参照)に対して基端側に向かう方向の力が加えられる。これにより、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力に抗って基端側に移動する。拡張強化部材4Aは、狭窄病変90Aを切断し、狭窄病変90Aには切れ目が形成される。このため、バルーン3の拡張により狭窄病変90Aは容易に拡張される。
【0092】
次に、供給された圧縮流体がバルーン3から除去され、バルーン3は収縮状態となる。又、移動部材5に対する力の付与が解除される。これにより、
図5(C)に示すように、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力により、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。更に、カテーテルシャフト2Aの第3基端部212(
図5参照)が操作されることにより、バルーンカテーテル1Dは、中心軸Cを中心として180度回転される。これにより、拡張強化部材4Aの位置も移動する。
【0093】
図6(D)に示すように、この状態でバルーン3への圧縮流体の供給が開始され、バルーン3は膨張状態となる。これにより、バルーン3の特定表面3Sは狭窄病変90Aに接触し、拡張強化部材4Aのうちバルーン3の特定表面3Sよりも外側に突出する部分は、狭窄病変90Aに喰い込む。なお、狭窄病変90Aのうち拡張強化部材4Aが喰い込む位置は、
図6(B)において拡張強化部材4Aが喰い込む位置と相違する。
【0094】
同時に、移動部材5の基端部5P(
図5参照)に対して基端側に向かう方向の力が加えられる。これにより、拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力に抗って基端側に移動する。拡張強化部材4Aは、狭窄病変90Aを切断し、狭窄病変90Aには切れ目が形成される。このため、バルーン3の拡張により狭窄病変90Aは容易に拡張される。
【0095】
次に、供給された圧縮流体がバルーン3から除去され、バルーン3は収縮状態となる。又、移動部材5に対する力の付与が解除される。拡張強化部材4Aは、付勢部6Dの付勢力により、先端側に最も移動した状態に戻る。バルーンカテーテル1Aの第3基端部212が操作されることにより、バルーンカテーテル1Aは近位側に移動し、脈管9から外部に引き抜かれる。
【0096】
<第4実施形態の作用、効果>
バルーンカテーテル1Dでは、移動部材5に加えられる力の向きと逆向きの力を、付勢部6Dにより拡張強化部材4Aに作用させる。これにより、バルーンカテーテル1Dは、移動部材5により移動した拡張強化部材4Aを、付勢部6Dにより元の位置に戻すことが容易に可能となる。これにより、バルーンカテーテル1Dは、拡張強化部材4Aの反復的な駆動が可能となるので、狭窄病変90Aの広範囲の領域を拡張強化部材4Aにより切断できる。又、拡張強化部材4Aの反復的な駆動を1回の施術で実行できるので、治療に要する時間を短縮できる。従って、バルーンカテーテル1Dの使用者や患者の負担を軽減できる。
【0097】
<第4実施形態の特記事項>
上記において、付勢部6Dは、圧縮ばねの付勢力を拡張強化部材4Aに作用させることにより、基端側に移動した拡張強化部材4Aを移動前の位置に移動させた。付勢部6Dは、磁気的な力や静電気的な力を拡張強化部材4Aに作用させることにより、基端側に移動した拡張強化部材4Aを移動前の位置に移動させてもよい。例えば以下のようにしてもよい。
【0098】
図7(A)に示すように、付勢部61は、バルーン3の膨張部3Bのうち支持部31(
図5参照)の先端部の近傍に設けられた磁石61Aと、拡張強化部材4Aの第2先端部40D(
図5参照)に設けられた磁石61Bとを有する。磁石61AのN極は基端側に配置され、磁石61BのS極は先端側に配置される。この場合、磁石61A、61B間には磁気的な吸引力が働くので、拡張強化部材4Aには、先端側に向かう方向の付勢力が作用する。
【0099】
移動部材5に力が加えられない状態で、拡張強化部材4Aは、磁石61A、61B間の吸引力に応じ、先端側に最も移動した状態となる。一方、移動部材5の基端部5Pに対して基端側に向かう方向の力が加えられた場合、拡張強化部材4Aは、磁石61A、61B間の吸引力に抗って基端側に移動する。又、拡張強化部材4Aが基端側に移動した後、移動部材5に対する力の付与が解除された場合、拡張強化部材4Aは、磁石61A、61B間の吸引力に応じ、先端側に移動する。拡張強化部材4Aは、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。
【0100】
図7(B)に示すように、付勢部62は、バルーン3の膨張部3Bのうち支持部31の基端部の近傍に設けられた磁石62Aと、拡張強化部材4Aの第2基端部40P(
図5参照)に設けられた磁石62Bとを有する。磁石62AのS極は先端側に配置され、磁石62BのS極は基端側に配置される。この場合、磁石62A、62B間には磁気的な反発力が働くので、拡張強化部材4Aには、先端側に向かう方向の付勢力が作用する。
【0101】
移動部材5に力が加えられない状態で、拡張強化部材4Aは、磁石62A、62B間の反発力に応じ、先端側に最も移動した状態となる。一方、移動部材5の基端部5Pに対して基端側に向かう方向の力が加えられた場合、拡張強化部材4Aは、磁石62A、62B間の反発力に抗って基端側に移動する。又、拡張強化部材4Aが基端側に移動した後、移動部材5に対する力の付与が解除された場合、拡張強化部材4Aは、磁石62A、62B間の反発力に応じ、先端側に移動する。拡張強化部材4Aは、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。
【0102】
磁石61A、61B、62A、62Bの材料としては、ネオジム磁石、フェライト磁石等、種々の磁性体が用いられる。また、外部磁場により磁化する素材(電磁ステンレス、ケイ素鉄、ネオジム磁石等)が使われてもよい。この場合、必要な時期に必要な吸引力や反発力を外部から付与できる。従って、狭窄病変90Aを適切なタイミングで拡張させることができる。又、脈管9の狭窄病変90A以外の部位で拡張強化部材4Aが移動することを防止することにより、脈管9の損傷を抑制できる。
【0103】
図7(C)に示すように、付勢部63は、バルーン3の膨張部3Bのうち支持部31の先端部の近傍に設けられた帯電体63Aと、拡張強化部材4Aの第2先端部40Dに設けられた帯電体63Bとを有する。帯電体63Aは正の電気を帯び、帯電体63Bは負の電気を帯びている。この場合、帯電体63A、63B間には静電気的な吸引力が働くので、拡張強化部材4Aには、先端側に向かう方向の付勢力が作用する。
【0104】
移動部材5に力が加えられない状態で、拡張強化部材4Aは、帯電体63A、63B間の吸引力に応じ、先端側に最も移動した状態となる。一方、移動部材5の基端部5Pに対して基端側に向かう方向の力が加えられた場合、拡張強化部材4Aは、帯電体63A、63B間の吸引力に抗って基端側に移動する。又、拡張強化部材4Aが基端側に移動した後、移動部材5に対する力の付与が解除された場合、拡張強化部材4Aは、帯電体63A、63B間の吸引力に応じ、先端側に移動する。拡張強化部材4Aは、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。
【0105】
図7(D)に示すように、付勢部64は、バルーン3の膨張部3Bのうち支持部31の基端部の近傍に設けられた帯電体64Aと、拡張強化部材4Aの第2基端部40Pに設けられた帯電体64Bとを有する。帯電体64A、64Bは何れも、正の電気を帯びている。この場合、帯電体64A、64B間には静電気的な反発力が働くので、拡張強化部材4Aには、先端側に向かう方向の付勢力が作用する。
【0106】
移動部材5に力が加えられない状態で、拡張強化部材4Aは、帯電体64A、64B間の反発力に応じ、先端側に最も移動した状態となる。一方、移動部材5の基端部5Pに対して基端側に向かう方向の力が加えられた場合、拡張強化部材4Aは、帯電体64A、64B間の反発力に抗って基端側に移動する。又、拡張強化部材4Aが基端側に移動した後、移動部材5に対する力の付与が解除された場合、拡張強化部材4Aは、帯電体64A、64B間の反発力に応じ、先端側に移動する。拡張強化部材4Aは、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。
【0107】
帯電体63A、63B、64A、64Bの材料としては、銅、アルミニウム、銀等、種々の導電体が用いられてもよい。又、例えば、帯電体63A、63B、64A、64Bには導線が接続され、導線に対する通電の有無を制御することにより、帯電体63A、63B、64A、64Bの極性を制御できるようにしてもよい。これにより、拡張強化部材4Aを移動させたいタイミングで、拡張強化部材4Aに付勢力を作用させることが可能となる。
【0108】
<第5実施形態(バルーンカテーテル1E)>
図8、
図9を参照し、バルーンカテーテル1Eについて説明する。バルーンカテーテル1Eは、バルーン体10Aの代わりにバルーン体10Eを有する点で、第1実施形態(
図1、
図2参照)と相違する。バルーン体10Eのバルーン3は、支持部31(
図1参照)の代わりに支持部35を有する。又、バルーン体10Eは、拡張強化部材4A(
図1参照)の代わりに拡張強化部材4Eを有する。バルーンカテーテル1Eのうち、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0109】
図8に示すように、バルーン3の支持部35は、バルーン3の第1先端部3Dから第1基端部3Pの間に亘って沿って延びる。支持部35は、部分支持部35A、35B、35Cを有する。部分支持部35Aは、バルーン3の先端連結部3Aに設けられる。部分支持部35Bは、バルーン3の膨張部3Bに設けられる。部分支持部35Cは、バルーン3の基端連結部3Cに設けられる。
【0110】
拡張強化部材4Eは、部分拡張強化部材45A、45B、45C、及び、連結部451、452を有する。
【0111】
部分拡張強化部材45Bは三角柱状を有し、延伸方向に延びる。部分拡張強化部材45Bの長さは、バルーン3の膨張部3Bの延伸方向の長さの略1/3である。部分拡張強化部材45Aは、部分拡張強化部材45Bに対して先端側に位置する。部分拡張強化部材45Aは、先端部に向けて細くなる三角錐状を有する。部分拡張強化部材45Aの長さは、バルーン3の先端連結部3Aに設けられた部分支持部35Aの長さと略同一である。部分拡張強化部材45Cは、部分拡張強化部材45Bに対して基端側に位置する。部分拡張強化部材45Cは、基端部に向けて細くなる三角錐状を有する。部分拡張強化部材45Cの長さは、バルーン3の基端連結部3Cに設けられた部分支持部35Cの長さと略同一である。
【0112】
連結部451は、部分拡張強化部材45A、45B間に介在し、部分拡張強化部材45A、45Bを連結する。連結部451は、部分拡張強化部材45A、45B間の角度を切り替えることが可能な蝶番である。連結部451は、部分拡張強化部材45Aが延伸方向に延びた状態と、部分拡張強化部材45Aが延伸方向に対して傾斜した状態とに切り替え可能である。
【0113】
連結部452は、部分拡張強化部材45B、45C間に介在し、部分拡張強化部材45B、45Cを連結する。連結部452は、部分拡張強化部材45B、45C間の角度を切り替えることが可能な蝶番である。連結部452は、部分拡張強化部材45Cが延伸方向に延びた状態と、部分拡張強化部材45Cが延伸方向に対して傾斜した状態とに切り替え可能である。
【0114】
なお、部分拡張強化部材45Bは、延伸方向と平行に延びた状態で維持される。部分拡張強化部材45Cの第2基端部45Pに、移動部材5の先端部5Dが接続される。
【0115】
図9(A)に示すように、拡張強化部材4Eが先端側に最も移動した状態で、部分拡張強化部材45Aは部分支持部35Aに支持され、部分拡張強化部材45B、45Cは部分支持部35Bに支持される。この状態で、部分拡張強化部材45Aは延伸方向に対して傾斜し、部分拡張強化部材45B、45Cは延伸方向に延びる。部分拡張強化部材45Aの第2先端部45Dは、バルーン3の第1先端部3Dに到達する。
【0116】
図9(B)に示すように、拡張強化部材4Eが基端側に最も移動した状態で、部分拡張強化部材45Cは部分支持部35Cに支持され、部分拡張強化部材45A、45Cは部分支持部35Bに支持される。この状態で、部分拡張強化部材45Cは延伸方向に対して傾斜し、部分拡張強化部材45A、45Bは延伸方向に延びる。部分拡張強化部材45Cの第2基端部45Pは、バルーン3の第1基端部3Pに到達する。
【0117】
図8に示すように、拡張強化部材4Eの部分拡張強化部材45A、45B、45Cが部分支持部35Bに支持された状態で、部分拡張強化部材45A、45B、45Cは延伸方向に延びる。
【0118】
<第5実施形態の作用、効果>
以上のように、バルーンカテーテル1Eは、バルーン3の膨張部3Bだけでなく、先端連結部3Aや基端連結部3Cまで拡張強化部材4Eを移動させることができる。又、バルーンカテーテル1Eは、連結部451、452において拡張強化部材4Eを屈曲させることができる。従って、バルーンカテーテル1Eは、バルーン3の表面のうち延伸方向に対して傾斜した部分にも拡張強化部材4Eを配置させることができる。この場合、特に以下で説明する方法でバルーンカテーテル1Eが使用される場合に効果的である。
【0119】
図10、
図11を参照し、バルーンカテーテル1Eの使用例について説明する。なお、バルーンカテーテル1Eには、第4実施形態における付勢部が設けられ、拡張強化部材4Eを延伸方向に反復移動させることが可能となっている。又、狭窄病変90Aにおける内腔が非常に狭く、その内腔の径は、収縮状態のバルーン3の径よりも小さいことを前提とする。
【0120】
図10(A)に示すように、拡張強化部材4Eは、先端側に最も移動した状態とされる。この場合、部分拡張強化部材45Aは、バルーン3の先端連結部3Aに配置される。バルーンカテーテル1Eの第3基端部212が操作されることにより、バルーンカテーテル1Aは、ガイドワイヤGに沿って脈管9内に押し込まれる。バルーン3の先端連結部3Aが、狭窄病変90Aのうち近位側の端部付近に到達する。
図10(B)に示すように、バルーン3は、先端連結部3Aのみが、狭窄病変90Aの内腔のうち近位側の端部に進入する。その後、遠位側に向けたバルーンカテーテル1Eの移動は停止される。
【0121】
次に、
図10(C)に示すように、バルーン3への圧縮流体の供給が開始され、バルーン3は膨張状態となる。先端連結部3Aに設けられた部分拡張強化部材45Aは、狭窄病変90Aに喰い込む。同時に、移動部材5の基端部5P(
図8参照)に対して基端側に向かう方向の力が加えられる。これにより、拡張強化部材4Eは基端側に移動する。部分拡張強化部材45Aは狭窄病変90Aを切断し、狭窄病変90Aには切れ目が形成される。狭窄病変90Aの内腔のうち近位側の端部付近は、切れ目が形成されることにより拡張し易くなる。このためこの部分は、バルーン3の先端連結部3Aにより容易に拡張される。
【0122】
次に、
図10(D)に示すように、供給された圧縮流体がバルーン3から除去され、バルーン3は収縮状態となる。又、拡張強化部材4Eは、非図示の付勢部から付勢力を受け、移動前の状態、即ち、先端側に最も移動した状態に戻る。部分拡張強化部材45Aは、バルーン3の先端連結部3Aに配置される。
【0123】
次に、
図10(E)に示すように、バルーンカテーテル1Eは、第3基端部212が操作されることにより遠位側に移動する。バルーン3の先端連結部3Aは、狭窄病変90Aの内腔の更に深部に進入する。その後、バルーンカテーテル1Eの移動は停止される。
【0124】
次に、バルーン3への圧縮流体の供給が開始され、バルーン3は膨張状態となる。先端連結部3Aに設けられた部分拡張強化部材45Aは、狭窄病変90Aに喰い込む。同時に、拡張強化部材4Eが基端側に移動し、部分拡張強化部材45Aは狭窄病変90Aを切断する。狭窄病変90Aのうち
図10(C)(D)で拡張された部分よりも遠位側の部分は、切れ目が形成されることにより拡張し易くなる。このためこの部分は、先端連結部3Aにより容易に拡張される。
【0125】
次に、供給された圧縮流体がバルーン3から除去され、バルーン3は収縮状態となる。これにより、狭窄病変90Aの内腔のより広範囲の部分が、バルーン3により拡張される。
【0126】
上記と同様の手順が繰り返し実行される(
図11(A)(B)(C))。これにより、バルーンカテーテル1Eのバルーン3は、狭窄病変90Aの内腔を遠位側に向けて徐々に移動する。又、狭窄病変90Aの内腔は、近位側の端部近傍から遠位側に向けて徐々に大きくなる。最終的に、
図11(C)に示すように、狭窄病変90Aの内腔は、全域に亘ってバルーン3により拡張される。
【0127】
<第5実施形態の特記事項>
拡張強化部材4Eの連結部451、452は、蝶番でなくてもよい。例えば連結部451は、弾性変形可能な材料により形成されていてもよい。
【0128】
拡張強化部材4Eは、部分拡張強化部材45A、45B、45Cを有さなくてもよい。例えば拡張強化部材4Eは、第1実施形態における拡張強化部材4Aと同一形状を有してもよい。例えばこの場合、拡張強化部材4Eは柔軟性を有し、支持部35に沿って移動することに応じて曲折可能であってもよい。
【0129】
拡張強化部材4Eは、部分拡張強化部材45A、45Bのみ有し、部分拡張強化部材45Cは有さなくてもよい。つまり拡張強化部材4Eは、先端連結部3Aにのみ配置可能でもよい。
【0130】
<第6実施形態(バルーンカテーテル1F)>
図12を参照し、バルーンカテーテル1Fについて説明する。バルーンカテーテル1Fは、バルーン体10Aの代わりにバルーン体10Fを有する点で、第1実施形態(
図1、
図2参照)と相違する。バルーン体10Fは、拡張強化部材4A(
図1参照)の代わりに拡張強化部材4Fを有する。バルーンカテーテル1Fのうち、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0131】
図12に示すように、拡張強化部材4Fは、基部47及び嵌合部48を有する。基部47は三角柱状を有し、延伸方向に延びる。基部47の長さは、膨張部3Bの延伸方向の長さの略半分である。基部47は、支持部31の外側に位置し、バルーン3の膨張部3Bの特定表面3Sよりも外側に突出する。
【0132】
嵌合部48は、基部47の延伸方向中央と第2基端部47Pとの間の部分から支持部31に向けて、内側に突出する。嵌合部48は、支持部31の溝31Fに嵌合する。拡張強化部材4Fのうち嵌合部48を含む部分の断面形状は、第1実施形態における拡張強化部材4Aの断面形状と同一である。拡張強化部材4Fは、支持部31によって延伸方向に移動可能に支持される。
【0133】
以下、拡張強化部材4Fのうち延伸方向において嵌合部48が設けられない部分、即ち、嵌合部48よりも先端側の部分を、「突出部47A」という。
【0134】
図13(A)に示すように、拡張強化部材4Fが先端側に最も移動した状態で、拡張強化部材4Fの突出部47Aは、バルーン3の膨張部3Bの先端部30Dよりも先端側に配置される。従って、拡張強化部材4Fの第2先端部47Dは、膨張部3Bの先端部30Dよりも第1先端部3D側に位置する。更に、拡張強化部材4Fの第2先端部47Dは、バルーン3の先端連結部3Aの第1先端部3Dに対して先端側、言い換えれば、第1先端部3Dに対して第1基端部3P側と反対側に位置する。
【0135】
図13(B)に示すように、拡張強化部材4Fが基端側に最も移動した状態で、拡張強化部材4Fの突出部47Aは、バルーン3の膨張部3Bの先端部30Dよりも基端側に配置される。
【0136】
<第6実施形態の作用、効果>
バルーンカテーテル1Fでは、バルーン3の膨張部3Bよりも第1先端部3D側、更には、バルーン3の先端連結部3Aよりも先端側に、拡張強化部材4Fの突出部47Aを突出させることができる。従って、バルーンカテーテル1Fは、バルーン3に対して先端側にある狭窄病変90Aに拡張強化部材4Fを作用させ、狭窄病変90Aを治療できる。
【0137】
上記の作用、効果は、内腔が非常に狭い狭窄病変90Aを治療するためにバルーンカテーテル11Fが用いられる場合に効果的である。即ち、バルーンカテーテル11Fは、バルーンカテーテル1Eの場合と同様、バルーン3を膨張状態と収縮状態とに繰り返し変化させつつ遠位側に徐々に前進させることによって、内腔の小さい狭窄病変90Aを拡張させることができる。この場合、膨張部3Bよりも第1先端部3D側、更には、バルーン3の先端連結部3Aよりも先端側に拡張強化部材4Fの突出部47Aを突出させることにより、バルーンカテーテル1Fは、バルーン3の先端連結部3Aの膨張による狭窄病変90Aの拡張効果を高めることができる。
【0138】
<第6実施形態の特記事項>
バルーンカテーテル1Fが脈管9内に押し込まれ、バルーン3の先端連結部3Aが、狭窄病変90Aのうち近位側の端部付近に到達するまでの間、拡張強化部材4Fを基端側に最も移動した状態(
図13(B)参照)としてもよい。そして、バルーン3の先端連結部3Aが、狭窄病変90Aのうち近位側の端部に接触する直前で、拡張強化部材4Fを最も先端側まで移動させ、突出部47Aを突出させてもよい(
図13(A)参照)。
【0139】
拡張強化部材4Fの先端部は尖っていてもよい。第5実施形態における拡張強化部材4E(
図8参照)のように、拡張強化部材4Fは複数の部分拡張強化部材を有してもよい。この場合、拡張強化部材4Fの一部は、延伸方向に対して曲折可能でもよい。
【0140】
拡張強化部材4Fは、バルーン3の膨張部3Bの基端部30Pよりも基端側、更には、バルーン3の基端連結部3Cの第1基端部3Pよりも基端側に突出可能でもよい。更に、拡張強化部材4Fは、先端側と基端側との両側に突出可能でもよい。
【0141】
<第7実施形態(バルーンカテーテル1G)>
図14を参照し、バルーンカテーテル1Gについて説明する。バルーンカテーテル1Gは、カテーテルシャフト2Aの代わりにカテーテルシャフト2Bを有する点で、第1実施形態(
図1、
図2参照)と相違する。バルーンカテーテル1Gのうち、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を省略する。
【0142】
図14に示すように、カテーテルシャフト2Bの外側チューブ21には、内腔に連通する挿通孔52、53が設けられる。挿通孔52は、外側チューブ21の先端部211の近傍に設けられる。挿通孔53は、外側チューブ21の第3基端部212の近傍に設けられる。移動部材5は、挿通孔52に挿通し、外側チューブ21の内腔のうち内側チューブ22の内腔以外の部分を基端側に延び、挿通孔53を介して外部に排出される。使用者は、移動部材5のうち挿通孔53から排出された部分を把持して基端側に引っ張ることにより、基端側に向けた力を移動部材5に加えることができる。
【0143】
<第7実施形態の作用、効果>
バルーンカテーテル1Gは、脈管9内で移動部材5が内壁に引っ掛って移動が妨げられたり、移動部材5が脈管9を傷付けたりすることを抑制できる。
【0144】
<第7実施形態の特記事項>
挿通孔52、53の代わりに、移動部材5を覆うカバーが外側チューブ21の外表面に設けられていてもよい。移動部材5が通過する内腔を有する筒状部材が、外側チューブ21の外表面に設けられていてもよい。
【0145】
<その他の変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。以下、第1実施形態に係るバルーンカテーテル1Aを例示して変形例を説明するが、適宜、他の実施形態に係るバルーンカテーテル1にも適用可能である。
【0146】
拡張強化部材4Aの形状は、上記実施形態に限定されない。例えば
図15(A)、
図15(B)に示すように、拡張強化部材4Aは、第2先端部40D及び第2基端部40Pに向けて先細りする形状を有してもよい。より具体的には、
図15(A)に示す拡張強化部材401のように、頂点43A(
図1参照)が延伸方向の中央から第2先端部40D及び第2基端部40Pに向けて、直線状に延びていてもよい。
図15(B)に示す拡張強化部材402のように、頂点43Aは延伸方向の中央から第2先端部40D及び第2基端部40Pに向けて、湾曲しながら延びていてもよい。これらの場合、拡張強化部材4Aを延伸方向に反復移動させる場合において、拡張強化部材4Aを先端側に移動させる場合と基端側に移動させる場合との両方の場合で狭窄病変90Aを適切に切断できる。
【0147】
図15(C)に示す拡張強化部材403のように、頂点43Aは、延伸方向に所定間隔を空けて配列された複数の凸部を有していてもよい。頂点43Aの複数の凸部はそれぞれ湾曲していてもよい。この場合、表面に凹凸を有する狭窄病変90Aを効率的に切断できる。又、ISRの拡張時、ステントを容易に切断できる。
【0148】
図16に示すように、バルーン3の表面には、突起部7A、7Bが更に設けられてもよい。突起部7A、7Bは、三角柱状を有し、膨張部3Bの先端部30Dと基端部30Pとの間に亘って延伸方向に延びてもよい。突起部7A、7Bは、外側に突出する頂点を有していてもよい。突起部7A、7Bは、バルーン3の表面に固定され、バルーン3に対して移動不可能であってもよい。拡張強化部材4A、及び突起部7A、7Bは、バルーン3の膨張部3Bを周方向に略3等分する等分線に沿って配置されてもよい。
【0149】
突起部7A、7Bは、脈管9内でバルーン3が膨張した状態で、狭窄病変90Aのうち拡張強化部材4Aが接触する部分と反対側の部分に喰い込む。これにより、バルーン3は、中心軸Cを中心とした回転移動が突起部7A、7Bにより規制される。従って、この状態で拡張強化部材4Aを延伸方向に移動させることにより、バルーン3を安定化させた状態で狭窄病変90Aを適切に切断し、切れ目を形成させることができる。
【0150】
拡張強化部材4Aの材料は上記実施形態に限定されず、例えばSUSや硬化樹脂でもよい。又、拡張強化部材4Aの材料は、バルーン3と同じでもよい。
【0151】
拡張強化部材4Aは、バルーンカテーテル1に対して1つのみ設けられてもよいし、2つ以上設けられてもよい。移動部材5は、1つの拡張強化部材4Aに対して1つのみ接続されていてもよいし、1つの拡張強化部材4Aに対して複数の移動部材5が接続されてもよい。拡張強化部材4Aが2つ以上設けられる場合、1つの移動部材5がそれぞれに接続されてもよい。
【0152】
移動部材5の断面形状は円形に限定されず、多角形、板状でもよい。移動部材5は、中空糸により形成されてもよい。
【0153】
内側チューブ22の第3先端部221の近傍、内側チューブ22のうち、延伸方向においてバルーン3の第1基端部3P及び第1先端部3Dに近接する部分、内側チューブ22のうち、延伸方向において膨張部3Bの先端部30D、基端部30P、及び延伸方向中央のそれぞれに近接する部分、支持部31、32、33、拡張強化部材4Aの少なくとも何れかに、造影剤が塗布されていてもよい。
【0154】
<その他>
バルーン体10A、10B、10C、10D、10E、10Fは、本発明の「カテーテル用バルーン体」の一例である。カテーテルシャフト2A、2Bは、本発明の「シャフト」の一例である。
【符号の説明】
【0155】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G :バルーンカテーテル
2A、2B :カテーテルシャフト
3 :バルーン
3A :先端連結部
3B :膨張部
3C :基端連結部
4、4A、4C、4D、4E、4F、401、402、403 :拡張強化部材
5 :移動部材
6D、61、62、63、64 :付勢部
9A :脈管
10A、10B、10C、10D、10E、10F、11F :バルーン体
31、32、33、35 :支持部
52、53 :挿通孔
331、332 :部分支持部
451、452 :連結部