(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003895
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】線材搬送装置、および、線材供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 51/16 20060101AFI20240109BHJP
B21F 23/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B65H51/16
B21F23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103236
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 輝義
【テーマコード(参考)】
4E070
【Fターム(参考)】
4E070AB14
4E070AC01
4E070CA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物理的な外力を加えることなく、排出時の位置決め精度が高い線材の搬送技術を提供する。
【解決手段】空洞43は、空洞42を形成する周壁に配置され、空洞42に連通する連通面430を有する。圧縮空気注入口44は、空洞43を筐体41の外部に連通する。空洞42は、第1開口401を有する空洞421、第2開口402を有する空洞425、空洞424、空洞423、空洞422を有する。空洞422は、空洞421と空洞423とに連通し、空洞421および空洞423よりも流路断面積が小さい。空洞43は、空洞422と空洞423との接続部に連通する。空洞43の連通面430は、空洞423の方向に向いている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられ、直線状の軸を有し、線材が通る第1空洞と、
前記第1空洞における前記軸の延びる方向の一方端に有り、前記第1空洞を前記筐体の外部に連通する第1開口と、
前記第1空洞における前記軸の延びる方向の他方端に有り、前記第1空洞を前記筐体の外部に連通する第2開口と、
前記第1空洞を形成する周壁に配置され、前記第1空洞に連通する連通面を有する第2空洞と、
前記第2空洞を前記筐体の外部に連通する圧縮空気注入口と、
を備え、
前記第1空洞は、
前記第1開口を有する第1部分と、
前記第2開口を有する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とに連通し、前記第1部分および前記第2部分よりも流路断面積が小さい第3部分と、
を有し、
前記第2空洞は、前記第3部分と前記第2部分との接続部に連通し、
前記第2空洞の前記連通面は、前記第2部分の方向に向いている、
線材搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の線材搬送装置であって、
前記第1部分は、前記第1開口から前記第1部分と前記第3部分との接続部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる、
線材搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の線材搬送装置であって、
前記第2部分は、
前記第3部分および前記第2空洞に連通する第4部分と、
前記第2開口を有する第5部分と、
を有し、
前記第4部分は、前記第3部分および前記第2空洞に連通する端部から、前記第5部分に連通する端部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる、
線材搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の線材搬送装置であって、
前記第5部分は、前記第4部分に連通する端部から、前記第2開口に向けて、流路断面積が徐々に大きくなる、
線材搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の線材搬送装置であって、
前記第2空洞は、前記第1空洞の全周に亘って連通している、
線材搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の線材搬送装置と、
前記線材の供給路において、前記線材搬送装置の上流側に配置され、線状原材から前記線材を切り出して生成する線材生成部と、
前記線材の供給路において、前記線材搬送装置の下流側に配置され、前記線材の位置決めをする虹彩シャッタと、
前記線材の供給路において、前記虹彩シャッタの下流側に配置され、前記線材の有無を検出するセンサと、
前記線材の供給路において、前記センサの下流側に配置され、前記線材を一時保持する一時保持部と、
前記一時保持部で一時保持された線材を、搬出する搬出部と、
を備える、
線材供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限長の線材を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一定長に切断された線状体を製造する装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、ローラや、傾斜を利用した可動流体ガイドによって線状体を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ローラや、傾斜を利用した可動流体ガイドは、線状体(線材)に接触した状態で、線状体(線材)を搬送する。したがって、機械的な外力が線状体(線材)に加わってしまう。また、ローラや、傾斜を利用した可動流体ガイドでは、搬送して排出する線状体(線材)の位置決め精度が低い。
【0005】
したがって、本発明の目的は、物理的な外力を加えることなく、排出時の位置決め精度が高い線材の搬送技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の線材搬送装置は、筐体、第1空洞、第1開口、第2開口、第2空洞、および、圧縮空気注入口を備える。第1空洞は、筐体に設けられ、直線状の軸を有し、線材が通る。第1開口は、第1空洞における軸の延びる方向の一方端に有り、第1空洞を筐体の外部に連通する。第2開口は、第1空洞における軸の延びる方向の他方端に有り、第1空洞を筐体の外部に連通する。第2空洞は、第1空洞を形成する周壁に配置され、第1空洞に連通する連通面を有する。圧縮空気注入口は、第2空洞を筐体の外部に連通する。第1空洞は、第1開口を有する第1部分と、第2開口を有する第2部分と、第3部分とを有する。第3部分は、第1部分と第2部分とに連通し、第1部分および第2部分よりも流路断面積が小さい。第2空洞は、第3部分と第2部分との接続部に連通する。第2空洞の連通面は、第2部分の方向に向いている。
【0007】
この構成では、圧縮空気注入口から圧縮空気が注入されると、この空気が、第2空洞から第1空洞に吐出される。この吐出流によって、第1空洞では、第1開口から第2開口への気流が生じる。このような第1空洞に第1開口側から線材を供給することで、線材は、第1開口から第2開口に流れる気流によって第1開口から第2開口へ搬送される。したがって、線材は、物理的(固体物)に非接触な状態で搬送される。この際、第1空洞の軸方向の途中位置である第3部分は、第1部分(第1開口側の空間)および第2部分(第2開口側の空間)よりも流路断面積が小さいので、流速が向上し、軸付近に気流が集中する。これにより、線材の搬送能力が向上し、線材が軸に略定位して搬送される。
【0008】
また、この発明の線材搬送装置では、第1部分は、第1開口から第1部分と第3部分との接続部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる。
【0009】
この構成では、第1部分での乱流が抑制される。
【0010】
また、この発明の線材搬送装置では、第2部分は、第3部分および第2空洞に連通する第4部分と、第2開口を有する第5部分と、を有する。第4部分は、第3部分および第2空洞に連通する端部から、第5部分に連通する端部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる。
【0011】
この構成では、圧縮空気が第1空洞に供給された後の乱流が抑制される。
【0012】
また、この発明の線材搬送装置では、第5部分は、第4部分に連通する端部から、第2開口に向けて、流路断面積が徐々に大きくなる。
【0013】
この構成では、第2開口に近づくほど気流は弱くなるので、第2開口から線材を排出するときの線材に係る気流からの力が抑制される。
【0014】
また、この発明の線材搬送装置では、第2空洞は、第1空洞の全周に亘って連通している。
【0015】
この構成では、第2空洞から第1空洞に供給される圧縮空気による気流の周方向のバラツキが抑制される。これにより、線材は、より確実に第1空洞の軸の位置で搬送される。
【0016】
また、この発明の線材供給装置は、上述のいずれかに記載の線材搬送装置、線材生成部、虹彩シャッタ、センサ、一時保持部、および、搬出部を備える。線材生成部は、線材の供給路において線材搬送装置の上流側に配置され、線状原材から線材を切り出して生成する。虹彩シャッタは、線材の供給路において線材搬送装置の下流側に配置され、線材の位置決めをする。センサは、線材の供給路において虹彩シャッタの下流側に配置され、線材の有無を検出する。一時保持部は、線材の供給路においてセンサの下流側に配置され、線材を一時保持する。搬出部は、一時保持部で一時保持された線材を搬出する。
【0017】
この構成では、線材よりも長い線状原材から線材が切り出され、線材は、非接触で搬送され、高い位置精度で搬出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、線材搬送装置を含む線材供給装置の構成図である。
【
図2】
図2(A)は、線材搬送装置を線材の搬送方向に直交する方向から見た側面図であり、
図2(B)は、線材搬送装置を上流側から見た側面図であり、
図2(C)は、線材搬送装置を下流側から見た側面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図2(A)のA-A断面を示す断面図であり、
図3(B)は、線材搬送装置の各寸法を示す図である。
【
図4】
図4は、線材搬送装置による線材の搬送状態を示す側面断面図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)は、線材が生成された後の線材の搬送状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る線材搬送技術および線材供給技術について、図を参照して説明する。
【0020】
図1は、線材搬送装置を含む線材供給装置の構成図である。
図1に示すように、線材供給装置10は、線状原材供給部20、線材生成部30、線材搬送装置40、虹彩シャッタ50、センサ60、および、線材位置決め装置70を備える。
【0021】
線状原材供給部20には、線状原材が挿入される。線状原材は、線材供給装置10で供給する線材WRよりも長く、線材WRを所定個数切り出し可能な線材である。線状原材は、例えば、絶縁皮膜された電線である。
【0022】
線状原材供給部20は、複数のローラ21および複数のローラ22を備える。複数のローラ21は、線状原材を横方向から保持して搬送する。複数のローラ22は、線状原材を上下方向から保持して搬送する。複数のローラ21および複数のローラ22を備えることによって、線状原材供給部20は、或程度に位置決めされた状態で、線状原材を線材生成部30に送出する。
【0023】
線材生成部30は、ローラ311、ローラ312、切断及び皮剥き機32、および、皮剥き補助装置33を備える。ローラ311およびローラ312は、正転および逆転を行うことで線状原材を前後動させながら、線状原材を下流側(線材搬送装置40)側に搬送する。切断及び皮剥き機32は、この線状原材の前後動を利用して、線状原材の端面の皮膜を切削する。同時に、切断及び皮剥き機32は、皮膜の切削が行われた線状原材を所定長さに切断する。次に、線状原材の反対側の端面も、切断及び皮剥き機32によって線状原材の皮膜を切削する。これにより、線材生成部30は、所定長の線材WRを生成する。
【0024】
線材生成部30の直後、言い換えれば、線材WRの供給路における線材生成部30の下流側の隣接位置には、線材搬送装置40が配置されている。
【0025】
線材搬送装置40は、上流側から挿入された線材WRを非接触で搬送し、下流側に搬出する。この際、線材搬送装置40は、線材搬送装置40に設けられた空洞42(
図2参照)の中心軸に位置決めして搬出する。なお、線材搬送装置40の具体的な構成および動作は、
図2から
図4を用いて後述し、ここでは具体的な説明を省略する。
【0026】
線材搬送装置40の直後、言い換えれば、線材WRの供給路における線材搬送装置40の下流側の隣接位置には、虹彩シャッタ50が配置されている。虹彩シャッタ50の中心軸は、線材搬送装置40の空洞42の中心軸に一致する。虹彩シャッタ50は、中心に線材WRを挿通可能で、径を調整可能な孔を有する。虹彩シャッタ50は、孔を挿通する線材WRの位置を絞り込み、位置決めする。
【0027】
虹彩シャッタ50の直後、言い換えれば、線材WRの供給路における虹彩シャッタ50の下流側の隣接位置には、センサ60が配置されている。センサ60は、線材WRの通過の有無を検出する。
【0028】
センサ60の直後、言い換えれば、線材WRの供給路におけるセンサ60の下流側の隣接位置には、線材位置決め装置70が配置されている。
【0029】
線材位置決め装置70は、搬送ガイド71、線材保持機72、および、最終ガイド73を備える。搬送ガイド71は、線材WRの供給路におけるセンサ60の下流側の隣接位置に配置される。線材保持機72は、線材WRの供給路における搬送ガイド71の下流側の隣接位置に配置される。最終ガイド73は、線材WRの供給路における線材保持機72の下流側の隣接位置に配置される。
【0030】
搬送ガイド71は、挿入口に対して搬出口が小さく、挿入口の中心と搬出口の中心とは、虹彩シャッタ50の中心軸の延長線上に存在する。
【0031】
線材保持機72は、線材WRの保持および解放を切り替えて行う。言い換えれば、線材保持機72は、線材WRを一時保持できる。
【0032】
最終ガイド73は、線材保持機72で一時保持する線材WRにおける線材保持機72よりも下流側を囲む形状である。
【0033】
(線材搬送装置40の構成)
図2(A)は、線材搬送装置を線材の搬送方向に直交する方向から見た側面図であり、
図2(B)は、線材搬送装置を上流側から見た側面図であり、
図2(C)は、線材搬送装置を下流側から見た側面図である。
図3(A)は、
図2(A)のA-A断面を示す断面図であり、
図3(B)は、線材搬送装置の各寸法を示す図である。
【0034】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)、
図3(A)、
図3(B)に示すように、線材搬送装置40は、筐体41、空洞42、空洞43、複数の圧縮空気注入口44を備える。空洞42が本発明の「第1空洞」に対応し、空洞43が本発明の「第2空洞」に対応する。
【0035】
筐体41は、樹脂等によって形成される。筐体41は、第1端面411、第2端面412、および、複数の側面413を備える。第1端面411と第2端面412とは、互いに平行であり、これらの面に直交する方向に離れて配置される。第1端面411と第2端面412とは、これらに直交する複数の側面413によって繋がっている。これにより、筐体41は、柱状体を形成する。
【0036】
空洞42は、第1端面411から第2端面412まで筐体を貫通する。空洞42は、第1端面411に第1開口401を有し、第2端面412に第2開口402を有する。第1開口401と第2開口402とは、正面視して円形であり、第1開口401の中心と第2開口402の中心は一致する。これら第1開口401の中心と第2開口402の中心を通る仮想線が、空洞42の中心軸C42となる。
【0037】
空洞42は、空洞421、空洞422、空洞423、空洞424、および、空洞425を備える。空洞421が、本発明の「第1空洞の第1部分」に対応し、空洞423、空洞424、空洞425で構成される空洞が、本発明の「第1空洞の第2部分」に対応する。空洞423が、本発明の「第1空洞の第4部分」に対応し、空洞425が、本発明の「第1空洞の第5部分」に対応する。空洞422が、本発明の「第1空洞の第3部分」に対応する。
【0038】
空洞421は、第1開口401を有する。空洞421は、空洞422に連通する。空洞422は、空洞423に連通し、空洞423は、空洞424に連通し、空洞424は、空洞425に連通する。空洞425は、第2開口402を有する。言い換えれば、第1開口401から第2開口402に向けて、空洞42は、空洞421、空洞422、空洞423、空洞424、および、空洞425がこの順で連通する構造を有する。
【0039】
空洞421、空洞422、空洞423、空洞424、および、空洞425のそれぞれは、円筒形であり、それぞれの中心軸は、空洞42の中心軸C42に一致する。
【0040】
空洞421における第1開口401での径φ401は、空洞422の径φ491よりも大きい。言い換えれば、空洞421の第1開口401での流路断面積は、空洞422の流路断面積よりも大きい。
【0041】
空洞421の流路断面積は、第1開口401から空洞422への連通面に向かって徐々に小さくなる。
【0042】
空洞422の径φ491は、一定である。言い換えれば、空洞422の流路断面積は、軸方向の位置によらず同じである。
【0043】
空洞423における空洞422への連通面での径は、空洞422の径φ491よりも大きい。空洞423の径および流路断面積は、空洞422への連通面から空洞424への連通面に向かって徐々に小さくなる。
【0044】
空洞424の径φ492は、一定である。言い換えれば、空洞424の流路断面積は、軸方向の位置によらず同じである。空洞424の径φ492(流路断面積)は、空洞422のφ491(流路断面積)よりも大きい。
【0045】
空洞425における第2開口402での径φ402は、空洞424の径φ492よりも大きい。言い換えれば、空洞425の第2開口402での流路断面積は、空洞424の流路断面積よりも大きい。
【0046】
空洞43は、環状の空洞である。空洞43は、筐体41における空洞42を形成する周壁に配置される。より具体的には、空洞43は、筐体41における空洞422を形成する周壁に配置される。
【0047】
空洞43は、空洞423に連通する。空洞43は、空洞42の全周に亘って連通する。空洞43が空洞423に連通する円環形の面が連通面430となる。これにより、空洞43は、空洞42に対して、空洞423の方向を向いて連通する。
【0048】
連通面430の高さG430は、空洞42のいずれの径よりも大幅に小さい。言い換えれば、連通面430となる開口は、幅の狭い円環形(外周円と内周円との距離が短い円環形)となる。
【0049】
複数の圧縮空気注入口44は、筐体41の外部空間と空洞43とを連通する。
【0050】
(線材搬送装置40の動作)
図4は、線材搬送装置による線材の搬送状態を示す側面断面図である。なお、
図4では、気流の見やすさを優先して、記号の付記を適宜省略しており、省略した各記号は、他の図を参照して説明する。
【0051】
圧縮空気は、圧縮空気注入口44を通じて空洞43に供給される。空洞43に供給された空気は、吐出孔(連通面430)を通じて空洞42に吐出される。この際、吐出孔(連通面430)が幅狭であるので、吐出流は速くなる。
【0052】
そして、吐出孔(連通面430)が空洞423側、すなわち、第2開口402方向に向いていることによって、吐出流は、第2開口402方向に流れる。
【0053】
この吐出流の流れによって、コアンダ効果から、空洞42には、第1開口401から流入し、第2開口402から排出される気流が発生する。
【0054】
この気流が線材WRに及ぼす応力Fcは、線材WRを第1開口401から第2開口402に搬送するように作用する。
【0055】
これにより、線材搬送装置40は、線材WRを第1開口401から搬入し、第2開口402から搬出できる。さらに、この線材WRの搬送は、気流のみで実現される。これにより、線材搬送装置40は、物理的(固体物)に非接触な状態で、線材WRを搬送できる。
【0056】
さらに、吐出孔による気流は、空洞42の中心軸C42の全周方向の位置によらず略同じになる。これにより、線材WRは、中心軸C42に乗って搬送される。言い換えれば、線材WRの搬送ラインが中心軸C42に略一致する。したがって、線材搬送装置40は、搬出時の線材WRの位置を高精度に制御できる。
【0057】
さらに、空洞422の流路断面積は、第1開口401の流路断面積よりも小さい。これにより、ベルヌーイの定理から、空洞422で気流が速くなる。空洞422は、空洞42における空洞43から吐出流が供給される位置よりも上流側に配置されている。したがって、空洞43から吐出流が供給される位置での流速が向上し、効率的に、且つ、より精度良く線材WRを搬送できる。
【0058】
また、空洞421の流路断面積は、第1開口401から空洞422への連通部に向かって徐々に小さくなる。これにより、空洞421内での乱流の発生を抑制できる。
【0059】
また、空洞423は、空洞422および空洞43に連通する端部から、空洞424に連通する端部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる。これにより、圧縮空気が空洞42に供給された後の乱流を抑制できる。
【0060】
また、空洞425は、空洞424に連通する端部から、第2開口402に向けて、流路断面積が徐々に大きくなる。これにより、第2開口402に近づくほど気流は弱くなるので、第2開口402から線材WRを排出するときの線材WRに係る気流からの力が抑制される。これにより、線材WRの搬出時の位置の変化を抑制できる。
【0061】
また、空洞424の流路断面積は一定である。これにより、空洞423から空洞425につながる部分の気流の急激な変化を抑制できる。
【0062】
(線材WRの生成動作)
線材生成部30では、上述のように、切断及び皮剥き機32が、線状原材の前後動を利用して、線状原材の端面の皮膜を切削する。同時に、切断及び皮剥き機32が、皮膜の切削が行われた線状原材を所定長さに切断する。また、線状原材の反対側の端面も、切断及び皮剥き機32によって線状原材の皮膜を切削する。これにより、線材生成部30は、所定長の線材WRを生成する。
【0063】
この際、線材生成部30の直後の線材搬送装置40は、上流側から挿入された線材WRに対して、非接触で下流側へ搬送する力を及ぼす。これにより、線材生成部30で線材WRにされようとしている線状原材には定常的に下流側に搬送する力を加えられる。その上で、線材搬送装置40は線状原材に非接触であるので、線材生成部30が線状原材を前後動させることは、容易になる。したがって、線材生成部30は、線材WRを容易に且つより確実に生成できる。
【0064】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)は、線材が生成された後の線材の搬送状態を示す図である。
【0065】
図5(A)に示すように、線材生成部30によって生成された線材WRは、線材搬送装置40で発生する気流によって、線材搬送装置40の下流側に搬送される。この際、線材WRは、虹彩シャッタ50の孔を通り、センサ60および線材位置決め装置70まで搬送される。
【0066】
この際、線材搬送装置40を用いることで、虹彩シャッタ50の孔に線材WRをより確実に通すことができる。
【0067】
次に、
図5(B)に示すように、線材WRがセンサ60を通過すると、センサ60は、これを検出する。センサ60が線材WRの通過を検出すると、線材保持機72は、線材WRを保持する。
【0068】
次に、
図5(C)に示すように、搬送ガイド71が線材WRの搬送経路から退き、排出用ロボット80が、線材WRをつかむ。このタイミングに合わせ、線材保持機72は、線材WRの保持を解放する。排出用ロボット80は、線材WRを、後工程に排出する。
【0069】
このような構成および動作によって、線材供給装置10は、所定長さで皮剥きされた線材WRをより確実に生成し、高い位置精度で搬出し、後工程に排出できる。
【0070】
(1) 筐体と、
前記筐体に設けられ、直線状の軸を有し、線材が通る第1空洞と、
前記第1空洞における前記軸の延びる方向の一方端に有り、前記第1空洞を前記筐体の外部に連通する第1開口と、
前記第1空洞における前記軸の延びる方向の他方端に有り、前記第1空洞を前記筐体の外部に連通する第2開口と、
前記第1空洞を形成する周壁に配置され、前記第1空洞に連通する連通面を有する第2空洞と、
前記第2空洞を前記筐体の外部に連通する圧縮空気注入口と、
を備え、
前記第1空洞は、
前記第1開口を有する第1部分と、
前記第2開口を有する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とに連通し、前記第1部分および前記第2部分よりも流路断面積が小さい第3部分と、
を有し、
前記第2空洞は、前記第3部分と前記第2部分との接続部に連通し、
前記第2空洞の前記連通面は、前記第2部分の方向に向いている、
線材搬送装置。
【0071】
(2) (1)に記載の線材搬送装置であって、
前記第1部分は、前記第1開口から前記第1部分と前記第3部分との接続部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる、
線材搬送装置。
【0072】
(3) (1)または(2)に記載の線材搬送装置であって、
前記第2部分は、
前記第3部分および前記第2空洞に連通する第4部分と、
前記第2開口を有する第5部分と、
を有し、
前記第4部分は、前記第3部分および前記第2空洞に連通する端部から、前記第5部分に連通する端部に向けて、流路断面積が徐々に小さくなる、
線材搬送装置。
【0073】
(4) (3)に記載の線材搬送装置であって、
前記第5部分は、前記第4部分に連通する端部から、前記第2開口に向けて、流路断面積が徐々に大きくなる、
線材搬送装置。
【0074】
(5) (1)乃至(4)のいずれかに記載の線材搬送装置であって、
前記第2空洞は、前記第1空洞の全周に亘って連通している、
線材搬送装置。
【0075】
(6) (1)乃至(5)のいずれかに記載の線材搬送装置と、
前記線材の供給路において、前記線材搬送装置の上流側に配置され、線状原材から前記線材を切り出して生成する線材生成部と、
前記線材の供給路において、前記線材搬送装置の下流側に配置され、前記線材の位置決めをする虹彩シャッタと、
前記線材の供給路において、前記虹彩シャッタの下流側に配置され、前記線材の有無を検出するセンサと、
前記線材の供給路において、前記センサの下流側に配置され、前記線材を一時保持する一時保持部と、
前記一時保持部で一時保持された線材を、搬出する搬出部と、
を備える、
線材供給装置。
【符号の説明】
【0076】
10:線材供給装置
20:線状原材供給部
21、22、311、312:ローラ
30:線材生成部
32:切断及び皮剥き機
33:皮剥き補助装置
40:線材搬送装置
41:筐体
42、43、421、422、423、424、425:空洞
44:圧縮空気注入口
50:虹彩シャッタ
60:センサ
70:線材位置決め装置
71:搬送ガイド
72:線材保持機
73:最終ガイド
80:排出用ロボット
401:第1開口
402:第2開口
411:第1端面
412:第2端面
413:側面
430:連通面