(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038953
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】落雷抑制型風力発電設備、及び風力発電用風車
(51)【国際特許分類】
F03D 80/30 20160101AFI20240313BHJP
H05F 3/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F03D80/30
H05F3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143344
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【テーマコード(参考)】
3H178
5G067
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC02
3H178CC25
3H178DD51X
5G067DA31
(57)【要約】
【課題】ブレードに対する落雷抑制効果を付与すると共に、落雷した場合であっても、これによるブレード等の損傷を抑制することが可能な、落雷抑制型風力発電設備、及び風力発電用風車を提供する。
【解決手段】風力発電用風車1を備え、風力発電用風車1は、立設された支柱11と、支柱11の上部に設けられた発電機12と、発電機12を回転駆動する駆動軸13に設けられたハブHと、ハブHに駆動軸13を中心として放射状に設けられた複数のブレードBと、ブレードBの先端に設けられた帯電体Eと、ハブHの内部空間に設けられたキャパシタCと、ブレードBをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体Rと、を有し、キャパシタCは、接地された第1電極体C1と、第1電極体C1に電気絶縁層を介して対峙された第2電極体C2と、を含み、第2電極体C2は、電気抵抗体Rを介して帯電体Eに接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電用風車を備え、
前記風力発電用風車は、立設された支柱と、前記支柱の上部に設けられた発電機と、前記発電機を回転駆動する駆動軸に設けられたハブと、前記ハブに前記駆動軸を中心として放射状に設けられた複数のブレードと、前記ブレードの先端に設けられた帯電体と、前記ハブの内部空間に設けられたキャパシタと、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体と、を有し、
前記キャパシタは、接地された第1電極体と、前記第1電極体に電気絶縁層を介して対峙された第2電極体と、を含み、
前記第2電極体は、前記電気抵抗体を介して前記帯電体に接続されている、落雷抑制型風力発電設備。
【請求項2】
前記電気抵抗体は、前記ブレードの略全長に亘って延びる略細長形状を呈する、請求項1に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項3】
前記電気抵抗体は、その両端部で前記帯電体及び前記第2電極体に接続される支持筒と、前記支持筒の内部に封入される非金属発熱体と、を含む、請求項2に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項4】
前記第1電極体及び前記第2電極体は、導電性材料によって、それぞれ径の異なる筒状体として形成され、且つ略同軸上に配置され、
前記第1電極体及び前記第2電極体の間に、前記電気絶縁層が形成されている、請求項1に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項5】
前記第1電極体と前記第2電極体との間に、単位キャパシタが複数配置されている、請求項4に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項6】
前記複数の単位キャパシタは、前記第1電極体と前記第2電極体との間に、これらの中心線を中心として放射状に配置されている、請求項5に記載の落雷抑制型風力発電設備。
【請求項7】
ブレードの先端に設けられた落雷抑制手段と、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体と、を有し、
前記落雷抑制手段は、内部空間を有する略球殻状に形成された第1電極体と、前記内部空間に前記第1電極体と間隔をおいて配置された第2電極体と、前記第1電極体と前記第2電極体との間に介装された電気絶縁体と、を含み、
前記電気抵抗体は、前記ブレードの延びる方向に沿って延びる略細長形状を呈し、
前記第1電極体の殻壁の一部には、前記内部空間を外部へ連通させる開口部が形成されていると共に、この開口部の縁部から外方へ向かう連結筒が突設され、
前記第2電極体には、前記連結筒および前記開口部に挿通させられた前記電気抵抗体の一端が固定され、
前記電気絶縁体は、前記連結筒の内外面および前記電気抵抗体を覆って設けられていると共に、電気絶縁材料によって形成された連結手段によって、前記連結筒と共に前記電気抵抗体に固定され、
前記電気抵抗体の他端は、接地された接地線に電気的に接続されている、風力発電用風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備への落雷を抑制して、風力発電設備を雷害から保護する機能を備えた落雷抑制型風力発電設備、及び風力発電用風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落雷は大気中で起こる放電現象であり、雷放電には雲内放電、雲間放電、雲-大地間放電等があり、雷放電で大きな被害を出すのは雲-大地間放電(以下、落雷)である。
落雷(対地放電)は、通常、積乱雲(いわゆる雷雲と呼ばれる雲)の下で発生し、雲内の電荷量が大きくなり、地上との間の空気の絶縁破壊を超えるような強い電場が形成された時に発生する。
ここで、落雷のメカニズムについて、下記により詳述する。
【0003】
雲内には正負の電荷が生成し蓄積されるが、これは上昇気流と様々な大気中の温度帯を通過する粒子(あられ、氷晶、水滴など)の相互作用によって大きくなる。
即ち、まず、地表付近の湿潤な大気が上昇気流により上空に輸送され、高度とともに大気の温度が下がるため、やがて水蒸気の飽和状態となる。
そして、-10度を境に、あられは負に、氷晶は正に帯電し、軽い氷晶は上昇気流により上方へ、重いあられは下方に位置することになり、雲内に正・負の電荷が分布することになる。
一方、地表では、雲底の電荷に対応した反対極性の電荷(正電荷)が静電誘導作用によって集まり、蓄積されるにつれ、雲と大地間の電圧が高まり、最終的には大気による絶縁を破壊して電気的に結びつくことで地表との間で放電が起こる。
【0004】
また、地表付近の電場が晴天電場(1メートルあたり+100~200ボルト程度)の100~150倍程度大きくならないと落雷は発生しない。なお、冬季雷の場合には、もう一桁大きく、地表付近の電場が晴天電場の1000倍以上に大きくなることもある。
そして、強い電場が地表付近に形成されると、地面から突起しているものからは、全て「コロナ放電」という正負のイオンが、上空の異符号の雷雲底に向けて放出されるようになる。これが、落雷直前に発生する、所謂「お迎え放電」という現象である。
【0005】
このような落雷現象に対し、従来の雷保護概念では、落雷は防止できないものとの観点から、落雷を突針型避雷針(フランクリンロッド)で受けて大地に流す方式が大半であった。
即ち、従来の避雷針は、上記のお迎え放電現象を増長することで、避雷針自体に「積極的に」落雷(誘雷)させてしまう、というものであった。
【0006】
これに対し、本発明者等は、落雷の発生を極力抑制することによって被保護体を保護すべく、特許文献1に示される落雷抑制装置を提案した。
【0007】
この落雷抑制装置は、電気絶縁体を挟んで配置される上部電極体及び下部電極体を有し、下部電極体のみを接地して構成したものである。
【0008】
そして、例えばマイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が大地の表面に分布し、接地されている下部電極体もプラス電荷に帯電する。
この下部電極体の上には、空気層を含む絶縁体を介して上部電極体が配置されているため、これら上部電極体と下部電極体は、下部電極体が接地されたキャパシタとして機能することになる。
【0009】
これにより、お迎え放電を発生する電荷が大地の表面から上部電極体の上面まで流れることを、キャパシタの放電破壊が発生するまで抑え込み、落雷の発生原因となるお迎え放電を抑制する。
この結果として、落雷抑制装置を中心とした保護領域において落雷を抑制できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年、再生可能エネルギーによる発電装置として、風力発電設備が取り上げられている。
【0012】
この風力発電設備は、支柱の上部に、ナセルによって覆われた発電機を設置し、この発電機に、この発電機を回転駆動するための複数のブレードを装着した構成となっている。
また、上記ブレードは、大型のものでは、100mを超える長さを有しているものもある。
【0013】
このように、風力発電設備の上部が、雷雲に近い位置に位置させられ、特にブレードの先端は、回転することにより雷雲に最も近い位置に近づくことから、このブレード先端に落雷しやすい。
【0014】
このため、本発明者等は、風力発電設備への落雷の抑制ために、ブレードの先端に前述した落雷抑制機能を付与することが効果的である、という考えに至った。
一方で、ブレードの先端に前述した落雷抑制機能を付与した場合であっても、得られる効果は、飽くまでも落雷の「抑制」であり、落雷してしまう場合もある。
この場合、過渡的な所謂雷サージにより、ブレードや風力発電設備自体が損傷してしまう恐れがある。
【0015】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、ブレードに対する落雷抑制効果を付与すると共に、落雷した場合であっても、これによるブレード等の損傷を抑制することが可能な、落雷抑制型風力発電設備、及び風力発電用風車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、風力発電用風車を備え、
前記風力発電用風車は、立設された支柱と、前記支柱の上部に設けられた発電機と、前記発電機を回転駆動する駆動軸に設けられたハブと、前記ハブに前記駆動軸を中心として放射状に設けられた複数のブレードと、前記ブレードの先端に設けられた帯電体と、前記ハブの内部空間に設けられたキャパシタと、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体と、を有し、
前記キャパシタは、接地された第1電極体と、前記第1電極体に電気絶縁層を介して対峙された第2電極体と、を含み、
前記第2電極体は、前記電気抵抗体を介して前記帯電体に接続されている。
【0017】
本発明によれば、例えば、支柱を地面に立設した場合、風力発電設備に、マイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が地面の表面に分布し、同様に、接地されてキャパシタの一部を構成する第1電極体も、プラス電荷に帯電する。
【0018】
この第1電極体には、電気絶縁層(空気層)を介して第2電極体が対峙させられているため、キャパシタの機能により第2電極体がマイナス電荷に帯電する。
そして、マイナス電荷に帯電した第2電極体に電気的に接続された帯電体もマイナス電荷に帯電する。
【0019】
このように、ブレード先端と雲底が同一電荷となると、落雷の発生原因となる、ブレード先端から雷雲に向かうお迎え放電を、キャパシタの放電破壊が発生するまで抑え込む。
このような作用により、最高位置に位置させられるブレードの先端周辺からの上向きストリーマの発生が起こりにくくなり、ブレードおよびその周辺部への落雷が抑制される。
【0020】
ここで、本発明では、第2電極体は、電気抵抗体を介して帯電体に接続されている。
これにより、ブレードに落雷した場合であっても、雷撃時の電圧および放電エネルギーを、電気抵抗体及び接地線に分散させることができ、この結果、ブレードを含む風力発電設備の損傷を低減することができる。
また、雷撃時の発熱を電気抵抗体に亘って分散させることができ、この結果、ブレードの局所加熱を防止することができる。
【0021】
この他、本発明では、前述したお迎え放電の発生を押さえ込む機器の主要部を構成するキャパシタを、ハブの内部空間に設置している。
これにより、ハブの内部空間のデッドスペースを活用して、機器の設置に際し、新たな設置スペースを設けることなく、且つブレードへの加工を行なうことなく設置することができる。
また、落雷抑制のための機器を、ハブ、即ちブレードによって回転させられる駆動軸の回転中心線上に位置させることができるので、機器の回転中心と駆動軸の回転中心を容易に一致させることができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記電気抵抗体は、前記ブレードの略全長に亘って延びる略細長形状を呈している。
【0023】
このような構成とすることで、雷撃時にブレードが受ける電圧や放電エネルギー、ブレードの発熱を、より効果的に分散させることができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記電気抵抗体は、その両端部で前記帯電体及び前記第2電極体に接続される支持筒と、前記支持筒の内部に封入される非金属発熱体と、により形成されている。
【0025】
このような構成とすることで、電気抵抗体の製造において、設置場所の環境等に合わせて、封入される非金属発熱体として適切な素材を選択することができ、製造上の利便性が向上する。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記第1電極体及び前記第2電極体は、導電性材料によって、それぞれ径の異なる筒状体として形成され、且つ略同軸上に配置され、前記第1電極体及び前記第2電極体の間に、前記電気絶縁層が形成されている。
【0027】
このような構成とすることで、電気絶縁層として絶縁効果の高い空気を用いることにより、電荷を各電極体へ確実に帯電させることができると共に、キャパシタの構成部材を少なくし、キャパシタのコスト低減を図ることができる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記第1電極体と前記第2電極体との間に、単位キャパシタが複数配置されている。
【0029】
このような構成とすることで、第1電極体と第2電極体との間隔を均一かつ強固に連結して、電気絶縁層を確実に形成することができるとともに、キャパシタの剛性を高めることができる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記複数の単位キャパシタは、前記第1電極体と前記第2電極体との間に、これらの中心線を中心として放射状に配置されている。
【0031】
このような構成とすることで、単位キャパシタの重量を駆動軸の回転中心周りに容易に均一に配分して、ブレードや駆動軸の回転を円滑なものとすることができる。
【0032】
また、本発明は、風力発電用風車であって、
ブレードの先端に設けられた落雷抑制手段と、前記ブレードをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体と、を有し、
前記落雷抑制手段は、内部空間を有する略球殻状に形成された第1電極体と、前記内部空間に前記第1電極体と間隔をおいて配置された第2電極体と、前記第1電極体と前記第2電極体との間に介装された電気絶縁体と、を含み、
前記電気抵抗体は、前記ブレードの延びる方向に沿って延びる略細長形状を呈し、
前記第1電極体の殻壁の一部には、前記内部空間を外部へ連通させる開口部が形成されていると共に、この開口部の縁部から外方へ向かう連結筒が突設され、
前記第2電極体には、前記連結筒および前記開口部に挿通させられた前記電気抵抗体の一端が固定され、
前記電気絶縁体は、前記連結筒の内外面および前記電気抵抗体を覆って設けられていると共に、電気絶縁材料によって形成された連結手段によって、前記連結筒と共に前記電気抵抗体に固定され、
前記電気抵抗体の他端は、接地された接地線に電気的に接続されている。
【0033】
本発明によれば、ブレードから雷雲へ向かう上向きストリーマの発生が起こりにくくし、落雷の発生を抑制することができると共に、電気抵抗体により、ブレードへの落雷時における、ブレードを含む風力発電設備の損傷を低減し、ブレードの局所加熱を防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ブレードに対する落雷抑制効果を付与すると共に、落雷した場合であっても、これによるブレード等の損傷を抑制することが可能な、落雷抑制型風力発電設備、及び風力発電用風車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る落雷抑制型風力発電設備を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る風力発電用風車の上部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るブレードを示す拡大縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電気抵抗体を示す拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るナセル及びハブを示す縦断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るキャパシタを示すものであって、(a)単位キャパシタの縦断面図、(b)キャパシタのPP´線断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るキャパシタの変更例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る風力発電用風車の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、
図1~
図6を用いて、本発明の実施形態に係る落雷抑制型風力発電設備(以下、単に風力発電設備)について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る風力発電設備を示す。
【0037】
<構成>
図1に示すように、風力発電設備Xは、発電を行なう風力発電用風車1(以下、単に風車1)と、この風車1において発電された電力を、送電線2を介して送電する送電設備3と、を備えている。
【0038】
図1~
図3に示すように、風車1は、地面Gに立設された支柱11と、支柱11の上部に設けられた発電機12と、発電機12を回転駆動する駆動軸13に設けられたハブHと、ハブHに駆動軸13を中心として放射状に設けられた複数のブレードBと、ブレードBの先端に設けられた帯電体Eと、ハブHの内部空間に設けられ、帯電体Eに電荷を供給するキャパシタCと、ブレードBをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体Rと、を有している。
【0039】
この他、風車1は、変速機14や回転電気接点15を有している。
変速機14は、発電機12は、駆動軸13の一部と共にナセルNに格納されている。
回転電気接点15は、ナセルNとハブHとの間に介装されている。
なお、上記したナセルN(発電機12、駆動軸13、変速機14)やハブH、回転電気接点15の構成は、既知の風力発電用風車の構成と同様である。
【0040】
図3に示すように、ブレードBは、その内部のほぼ全長にわたって中空部kが形成されている。
また、ブレードBには、その基部にフランジf1が設けられており、フランジf1が、ハブHに設けられているフランジf2に、多数の締結部材t(ボルト・ナット)によって締結されることにより、ブレードBがハブHに固定されている。
なお、ブレードBは、既知の風力発電用風車と同様に、グラスファイバー等の繊維強化プラスチックによって形成されている。
【0041】
帯電体Eは、ブレードB内部に設けられた電気抵抗体Rを介して、キャパシタCの一方の電極体に電気的に接続されている。
また、帯電体Eは、電気絶縁体Iを介してブレードBの先端に設けられている。
【0042】
図4に示すように、電気抵抗体Rは、ブレードBの略全長に亘って延びる細長の略円柱形状を呈しており、本実施形態においては、支持筒R1と、支持筒R1の内部に封入される非金属発熱体R2と、を含む。
【0043】
支持筒R1は、両端が開口された支持筒本体R11と、支持筒本体R11の各開口を閉塞する蓋部R12と、により構成される。
なお、この場合、支持筒本体R11を絶縁体で、蓋部R12を導体で、それぞれ形成することができる。
【0044】
非金属発熱体R2は、支持筒R1に充填されており、例えば、SiC、MoSiO2、および、ZrO2を含む群から選択される材料を主成分とするセラミクスで形成することができる。
また、非金属発熱体R2の形態は、粉末や焼結体、多孔質体であっても良く、その材料および比率に制限はない。
なお、非金属発熱体R2の材料としては、この他、グラファイトを主成分とするセラミクスにより黒鉛電極の態様をとって良く、導電性ゲル、導電性ゴム、及び導電性エラストマー等の可撓性を有する導電性構造物であっても良い。
【0045】
ここで、電気抵抗体Rは、その両端部に雄ネジ部mが形成されており、この雄ネジ部mと固定手段Tとにより、電気抵抗体Rが、中空部kに固定支持されている。
【0046】
詳述すれば、固定手段Tは、特に、
図3に示すように、中空部kに設けられ、帯電体Eの基端部に当接された第1プレートT1と、ブレードBの基端部に掛け止めされた第2プレートT2と、各雄ネジ部mに螺合する複数のナットT3と、により形成されている。
なお、第1プレートT1及び第2プレートT2は、絶縁体として構成することができ、それぞれに電気抵抗体Rが貫通している。
【0047】
そして、帯電体E側の雄ネジ部mは、帯電体Eに形成され、中空部kと連通するネジ穴hに螺合されている。
また、帯電体E側のナットT3が、帯電体Eとで第1プレートT1を挟持する態様で雄ネジ部mに螺合されることで、帯電体Eと電気抵抗体Rとが連結されている。
さらに、ハブH側のナットT3が、電気抵抗体Rが貫通して設けられた金属プレートjを第2プレートT2との間で挟持固定し、電線Wが、金属プレートjに取付られている。
【0048】
上記構成により、第2電極体C2は、電気抵抗体R(及び固定手段T、電線W)を介して帯電体Eに電気的に接続されている。
【0049】
図5に示すように、キャパシタCは、ハブHの内部空間に、ハブHと同軸上に組み込まれている。
詳述すれば、キャパシタCは、第1電極体C1及び第2電極体C2と、絶縁性材料によって形成され、各電極体C1、C2を、所定間隔をおいて連結する複数の単位キャパシタC3と、絶縁性材料によって形成され、各電極体C1、C2をハブHに固定するスペーサC4と、を含む。
【0050】
第1電極体C1及び第2電極体C2は、導電性材料によって円筒状に形成されており、第1電極体C1の径が、第2電極体C2の径よりも小さく形成されている。
また、これらの間に各単位キャパシタC3が介装されて各電極体C1、C2が固定されることにより、所定間隔でかつそれぞれの軸線が一致するように保持されている。
【0051】
第2電極体C2の外周にはスペーサC4が取り付けられており、このスペーサC4をハブHの内面にボルトや接着剤等を利用して固定することにより、各電極体C1、C2がハブHの内部空間内に装着されている。
【0052】
このように装着された第1電極体C1及び第2電極体C2は、その中心軸線が、駆動軸13の回転軸線と一致させられている。
また、第1電極体C1には回転電気接点15が取り付けられており、この回転電気接点15を介して接地線Lへ電気的に接続されている。
さらに、第2電極体C2は、電線Wを介して帯電体Eに電気的に接続されている。
なお、第1電極体C1及び第2電極体C2の側面には、これらの内部とキャパシタCの外部とを連通する点検口dが形成されている。
【0053】
図6(a)に示すように、単位キャパシタC3は、セラミックス等の電気絶縁性材料によって形成された円筒状の保持体C31と、保持体C31の上端及び下端に設けられた単位電極体C32、C33と、を備えている。
【0054】
保持体C31は、円筒状に形成され、その周壁には防爆用の通気口C31aが設けられている。
【0055】
単位電極体C32、C33は、導電性素材により形成され、その上下の面には突起C32a、C32b、C33a、C33bがそれぞれ設けられている。また、突起C32b、C33bには、ねじ穴C32c、C33cがそれぞれ設けられている。
【0056】
図6(b)に示すように、上記構成の単位キャパシタC3は、第1電極体C1と第2電極体C2との間に形成されている空間部に、放射状に複数配置される。
【0057】
そして、外側の単位電極体C32を第2電極体C2にネジ止めし、また、内側の単位電極体C33を第1電極体C1にネジ止めすることにより、各電極体C1、C2を同軸上にかつ所定間隔を保持した状態で固定して、キャパシタCが構成されている。
なお、
図6(b)では、スペーサC4の図示を省略している。
【0058】
<効果>
上記のように構成された本実施形態に係る風力発電設備Xでは、風力エネルギーを複数のブレードBによって回転運動に変換し、この回転運動によって発電機12を駆動することにより発電を行なう。
【0059】
このとき、
図1に示すように、マイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が地面Gの表面に分布し、キャパシタCの、地面Gに接地された第1電極体C1もプラス電荷に帯電する。
【0060】
これに伴い、第1電極体C1に電気絶縁層(本実施形態では空気層)を介して対峙させられている第2電極体C2が、キャパシタCの作用によりマイナス電荷を帯びる。
また、第2電極体C2に、電気抵抗体Rを介して電気的に接続され、地面Gに対し電気絶縁状態に保持されている帯電体Eもマイナス電荷を帯びる。
【0061】
このように、帯電体Eがマイナス電荷を帯びると、ブレードBの先端回り、すなわち風力発電設備X上部にマイナス電荷が分布した領域が形成されると共に、雷雲の雲底に分布するマイナス電荷に対峙させられる。
【0062】
これによって、最高位置に位置させられるブレードBの先端周辺からの上向きストリーマの発生が起こりにくくなり、ブレードBおよびその周辺部への落雷が抑制される。
そして、電気抵抗体Rが、ブレードBの略全長に亘って延びる略細長形状を呈していることで、雷撃時にブレードBが受ける電圧や放電エネルギー、ブレードBの発熱を、より効果的に分散させることができる。
【0063】
また、電気抵抗体Rが、支持筒R1と非金属発熱体R2と、により形成されていることで、電気抵抗体Rの製造において、設置場所の環境等に合わせて、封入される非金属発熱体R2として適切な素材を選択することができ、製造上の利便性が向上する。
【0064】
また、第1電極体C1及び第2電極体C2の形状・配置により、電気絶縁層として絶縁効果の高い空気を用いて、電荷を各電極体C1、C2へ確実に帯電させることができると共に、キャパシタCの構成部材を少なくし、キャパシタCのコスト低減を図ることができる。
【0065】
また、単位キャパシタC3により、第1電極体C1と第2電極体C2との間隔を均一かつ強固に連結して、電気絶縁層を確実に形成することができるとともに、キャパシタCの剛性を高めることができる。
【0066】
また、複数の単位キャパシタC3が放射状に配置されていることで、単位キャパシタC3の重量を駆動軸13の回転中心周りに容易に均一に配分して、ブレードBや駆動軸13の回転を円滑なものとすることができる。
【0067】
以下、
図7及び
図8を用いて、本発明の実施形態に係る風車1´及びキャパシタC´の変更例について説明する。
なお、
図7は、風車1´のブレードBの要部の拡大縦断面図である。
また、
図8(a)は、キャパシタC´を含むナセルN及びハブHを示す縦断面図、
図8(b)は、キャパシタC´のQQ´線断面図であり、第1電極体C1及び第2電極体C2を、二点鎖線で概略的に示している。
【0068】
<構成(風車1´)>
図7に示すように、風車1´は、ブレードBの先端に設けられた落雷抑制手段Aと、ブレードBをレセプタとする落雷の放電エネルギーの一部を熱エネルギーに変換する電気抵抗体Rと、を有している。
【0069】
落雷抑制手段Aは、内部空間Vを有する略球殻状に形成された第1電極体A1と、内部空間Vの中央に、第1電極体A1と間隔をおいて配置された第2電極体A2と、第1電極体A1と第2電極体A2との間に介装された電気絶縁体A3と、を含む。
【0070】
電気抵抗体Rは、
図4等を用いて説明したように、支持筒R1と、支持筒R1の内部に封入される非金属発熱体R2と、を含む。
また、電気抵抗体Rは、先端側に2か所の環状溝g1、g2が形成され、基端部にのみ雄ネジ部mが形成されている。
【0071】
固定手段Tは、電気抵抗体Rを第2電極体A2に連結するための第1連結手段T1、電気抵抗体Rを電気絶縁体A3及び連結筒A13に連結するための第2連結手段T2、電気抵抗体RをブレードBに連結するための第3連結手段T3と、第3連結手段T3とブレードBの基端部とで挟持されるプレートT4と、により形成されている。
【0072】
第1電極体A1は、略球殻状の第1電極体本体A11と、第1電極体本体A11の殻壁の一部に形成され、内部空間Vを外部へ連通させる開口部A12と、開口部A12の縁部から外方へ向かって突設された連結筒A13と、により構成されている。
また、第1電極体本体A11は、ステンレス等の導電性材料によって、断面が真円状の球殻に形成され、その一部が切りかかれることにより、開口部A12が形成されている。
開口部A12の縁部には、外方へ向かう連結筒A13が一体に連設されている。
【0073】
第2電極体A2には、連結筒A13及び開口部A12に挿通させられた電気抵抗体Rの一端が固定されている。
また、第2電極体A2は、導電性材料によって形成された充実の球体であり、第1電極体本体A11内に挿入された電気抵抗体Rの挿入端部に、第1連結手段T1によって固定されている。
【0074】
電気絶縁体A3は、連結筒A13の内外面および電気抵抗体Rを覆って設けられていると共に、電気絶縁材料によって形成された第2連結手段T2によって連結筒A13と共に電気抵抗体Rに固定されている。
また、電気絶縁体A3は、電気抵抗体Rの先端部を覆い、電気抵抗体Rと連結筒A13との隙間を埋める第1電気絶縁体A31と、第1電気絶縁体A31の下部周面および下面を覆って設けられる第2電気絶縁体A32と、によって構成されている。
第1電気絶縁体A31と連結筒A13との重畳部分には、補強リングrが介装されている。
【0075】
電気抵抗体Rの雄ネジ部mが形成された部位は、ブレードBの基端部に形成された係止段部に係止されたプレートT4を貫通し、この貫通部分に第3連結手段T3(ナット)が螺着されている。
【0076】
そして、第3連結手段T3がプレートT4に圧接させられて、この第3連結手段T3と電気抵抗体Rに固定された電気絶縁体A3とで、ブレードBが長さ方向から挟持することにより、電気抵抗体R、第1電極体A1、第2電極体A2及び電気絶縁体A3が、ブレードBに固定されるようになっている。
なお、接地された接地線Lは、プレートT4に電気的に接続されている。
【0077】
また、上方の第2連結手段T2は、電気絶縁材料によって形成されており、第1電気絶縁体A31貫通状態で螺着されて、電気抵抗体Rの環状溝g1内に圧接されている。
また、下方の第2連結手段T2は、第2電気絶縁体A32、補強リングr、及び第1電気絶縁体A31を貫通して螺着されて、電気抵抗体Rの環状溝g2内に圧接されている。
【0078】
これによって、落雷抑制手段Aが、ブレードBの長さ方向の相対移動が拘束された状態で、ブレードBに固定されている。
【0079】
<効果(風車1´)>
本変更例によれば、風車1と同様の原理で、マイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、接地線Lを介して電気的に接続された第2電極体A2は、プラス電荷に帯電し、絶縁体を介して配置されている第1電極体A1は、コンデンサの作用でマイナス電荷を帯びる。
ここで、風車の回転により、第1電極体A1が雷雲と対峙させられるが、これらが同一のマイナス電荷に帯電させられていることから、ブレードBから雷雲へ向かう上向きストリーマの発生が起こりにくく、これによって、落雷の発生を抑制することができる。
【0080】
そして、本変更例でも、ブレードB内部に設けられた電気抵抗体Rにより、ブレードBへの落雷時における、ブレードBを含む風力発電設備Xの損傷を低減し、ブレードBの局所加熱を防止することができる。
【0081】
また、本変更例によれば、第1電極体A1を球形とし、ブレードBの先端部を第1電極体A1の連結筒A13の基部に位置する構成としていることから、第1電極体A1をブレードBから極力露出させることができる。
これによって、落雷抑制手段Aが下方へ移動させられた状態においても、第1電極体A1の上方へ露出する領域を大きくすることができ、雷雲へ対峙させられるマイナス電荷の領域を拡大することができる。
この結果、上向きストリーマの発生抑制作用を高めて、落雷を効果的に抑制することができる。
【0082】
<構成(キャパシタC´)>
図8に示すように、キャパシタC´は、2枚の円板状の導電性プレートを互いに間隔をおいて配置するとともに、一方を第1電極体C1、他方を第2電極体C2となるように、ハブH内に絶縁体を介して固定した構造としたものである。
この場合、円板状の第1電極体C1と第2電極体C2は、図示例のように駆動軸13と同軸配置とするのが回転バランスの点で好ましい。
【0083】
なお、第1電極体C1及び第2電極体C2の重心位置や回転中心位置などを調整することで、各電極体C1、C2を円板状に限らず、矩形状や多角形状、あるいは楕円状などに形成することもできる。
【0084】
第1電極体C1及び第2電極体C2を、このようにハブH内に配置する構造においても、それら第1電極体C1及び第2電極体C2の間に、単位キャパシタC3を複数配置する構成を採用することができる。
そして、単位キャパシタC3を複数配置する場合には、第1電極体C1及び第2電極体C2の中心軸周りに環状に配置することで、多数配置とすることができる。
【0085】
<効果(キャパシタC´)>
本変更例によれば、キャパシタCとほぼ同様の効果を得ることができるが、特に、キャパシタ自体をシンプルにかつ、より低コストで制作することが可能になる。
【0086】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0087】
例えば、電気抵抗体Rは、上記構成に限られず、全体として、上記に例示した、非金属発熱体R2に用いられる種々の素材でもって、中実の棒状体として形成されても良い。
また、電気抵抗体Rは、例えば、Fe、Cr、Al、Cu、Ni、Cu-Ni合金、Cu-Mn合金、Ni-Al合金、Ni-Cr合金、および、Fe-Cr-Al合金を含む群から選択される、金属発熱体により全体が構成されていても良い。
さらに、電気抵抗体Rの形状は、円柱形状に限られず、例えば、箔状や線状、帯状、平編状であって良く、その形状に制限はなく、その先端に、接続のための丸形やL字型などの端子を備えていても良い。
【符号の説明】
【0088】
X 風力発電設備
1、1´ 風力発電用風車
2 送電線
3 送電設備
E 帯電体
B ブレード
R 電気抵抗体
R1 支持筒
R2 非金属発熱体
C、C´ キャパシタ
C1 第1電極体
C2 第2電極体
C3 単位キャパシタ
C4 スペーサ
A 落雷抑制手段
A1 第1電極体
A2 第2電極体
A3 電気絶縁体
G 地面