(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038954
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】モノづくり知識情報システム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/90 20190101AFI20240313BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240313BHJP
G06N 5/04 20230101ALI20240313BHJP
【FI】
G06F16/90 100
G06Q50/04
G06N5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143345
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】722010183
【氏名又は名称】竹田 憲生
(72)【発明者】
【氏名】竹田 憲生
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175FA03
5B175HB03
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】エンジニアの多忙さや業務経験の有無に関わらず信頼性の高いモノづくりを実現するために、モノづくりに関する過去の知識や技術の情報を提供する知識提供システムを提供すること。
【解決手段】知識提供システムは、モノづくりに関する事象および規則の題名と、該事象および規則の概説で一対のモノづくり知識ペアを構成し、このモノづくり知識ペアを複数蓄積する手段を備えるとともに、作文と発話の少なくともいずれか一方を逐次記録して得られた文章と、蓄積したモノづくり知識ペアとの関連度を評価する手段を備え、関連度に応じて選択したモノづくり知識ペアを出力装置の知識表示部に逐次提示することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノづくりに関する事象および規則の題名と、該事象および規則の概説で一対のモノづくり知識ペアを構成し、複数の前記モノづくり知識ペアを蓄積するモノづくり知識蓄積手段と、
前記モノづくり知識ペアに含まれる事象および規則の題名と該事象および規則の概説の少なくともいずれか一方と任意の文章の関連度を計算し、該関連度に応じて決定されたスコアの値を出力するモノづくり知識評価手段と、
前記モノづくり知識評価手段で出力した前記スコアをもとに、関連度が高い前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段から検索して提供するモノづくり知識提供手段と、
作文と発話の少なくともいずれか一方による文章を逐次記録する文章記録手段を備え、
前記文章記録手段で逐次記録した文章を、前記モノづくり知識評価手段に逐次入力し、算出された前記スコアの値をもとに関連度が高いと判断された前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識提供手段で抽出し、出力装置で逐次提示することを特徴とする知識提供システム。
【請求項2】
前記文章記録手段で逐次記録した文章を、前記モノづくり知識評価手段に逐次入力し、算出された前記スコアの値をもとに関連度が高いと判断された前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識提供手段で抽出し、出力装置で逐次提示するとともに、
提示された前記モノづくり知識ペアと、前記文章記録手段で入力された文章の関連度を評価する仕組みを、前記モノづくり知識ペアと併せて出力装置で提供する関連度評価手段と、
前記関連度の評価結果をもとに出力装置で逐次提示する前記モノづくり知識ペアの数を調整する提示知識調整手段を備えた請求項1に記載の知識提供システム。
【請求項3】
前記モノづくり知識ペアの形式で、前記モノづくり知識ペアの候補となる情報を登録するモノづくり知識登録手段と、
前記モノづくり知識登録手段で登録された前記候補がモノづくりに関する知識に該当するかを判定し、モノづくり知識に該当すると判定した前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段に蓄積するモノづくり知識判定手段を備えた請求項1または請求項2に記載の知識提供システム。
【請求項4】
前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段に蓄積する、および出力装置で提示する際に、前記モノづくり知識ペアに加えて、モノづくり知識ペアが含む情報を詳細に説明した内容や、該詳細に説明した内容へのリンクを併せて、前記モノづくり知識蓄積手段に蓄積する、および出力装置で提示する手段を備えた請求項1または請求項2に記載の知識提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、モノづくりに関する知識を提供する知識情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、発電・送電システム、建設機械、橋梁などの社会インフラを支える製品、設備や構造物の信頼性は、社会生活を維持する上で非常に重要である。一方で、自動車のリコール件数は減らず横ばい状況にあるなど、信頼性の維持や向上は長年にわたる課題である。
非特許文献1の自動車のリコールの分析結果によると、信頼性に関する事故が発生する主な要因として「設計基準の甘さ、開発評価の不備」が挙げられている。さらに非特許文献2によると、設計基準の甘さや開発評価の不備の起こる背景として、製品、設備や構造物の設計者の多忙さが指摘されている。つまり、設計者が多忙なため、設計基準の適切さや開発評価項目の充足度のチェックに十分な時間が充てられない、余裕が無い状況にあるとの見解が述べられている。
【0003】
非特許文献1には、設計基準の甘さや開発評価の不備といった設計に起因する不具合に加えて、「製造工程不適切、作業管理不適切」といった製造に起因する不具合もリコールの原因として挙げられている。この製造に起因する不具合の背景として、知識や技術の移転が進まないことが、非特許文献2で指摘されている。つまり、工場で働く従業員を正社員から期間従業員や外国人労働者にシフトさせ、その割合を増やした結果、品質の維持に必要な知識や技術の移転が適切に行われていない。知識や技術の移転の機会が減少している傾向は設計業務においても同様である。日本の産業を支えて団塊の世代のエンジニアは既に退職しており、一つの会社に定年まで勤めあげる労働形態は崩壊しつつあるため、品質に関わる知識や技術の伝承は年々難しくなっている。
【0004】
以上から、製品、設備や構造物の信頼性に関わる不具合を根本的に対策するためには、設計基準の甘さや開発評価の不備が発生しないように多忙な設計者を支援し、かつ品質に関わる知識や技術が適切に設計・製造担当者に移転される仕組みが必要である。このような設計支援、過去の知識や技術を活用する仕組みは従来から様々な技術が提案されている。
【0005】
特許文献1では、3次元CAD(Computer Aided Design)などで部品を編集・選択する際に、部品の特徴情報から類似する特徴情報をデータベースから検索し、検索された特徴情報と関連付けられている知識情報を表示する情報提供システムが開示されている。部品の特徴情報の一例として、部品名、重量、材料、形状が挙げられており、これらの複数の特徴情報を起点として過去の知識が検索される。また、知識情報の詳細情報の表示を求める操作や詳細情報の表示時間に応じて、特徴情報と知識情報の関連付けが更新される手段が開示されている。
【0006】
特許文献2では、過去のトラブル事例の文書類を事例データベースに蓄積し、部品名や不良名でトラブル事例を検索した結果をもとに知識データベースを作成するデータベース作成装置を開示している。これにより、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)の作成時にFMEAの部品、故障モードの項目に知識データベースの部品名と不良名を取り込み、かつ部品名と不良名に対応する条件式を用いて事例データベースを検索して該当する事例のテキストデータを参照することで、過去の知識を活用してFMEAを作成できる。この装置では、部品名や不良名を起点として過去の事例が検索される。
【0007】
特許文献3では、組み立てミスに基づく故障モードの影響を解析するために、作業区分に応じた故障モードを、過去の組立ミス事例分析資料をファイル化した作業行為別故障モード/発生条件レベルファイルから抽出し、対象故障モードの発生度、流出度、影響度から影響解析の結果として重要度を算出するとともに、さらに重要度と期間当たりの製品の処理台数を考慮して対策ランクを表示するシステムを開示している。実施例として、FMEAを作成するシステムが例示されており、過去の経験や知見が無くても正確かつ簡単に影響解析が可能である。このシステムにおいて、過去の経験や知見は作業行為を起点として検索される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-262540号公報
【特許文献2】特開2008-84242号公報
【特許文献3】特開2005-182544号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】国土交通省自動車局 「令和2年度リコール届出内容の分析結果について」 2022年
【非特許文献2】吉田栄介著 「高品質と低コストのジレンマ:自動車リコール原因分析からの考察」 三田商学研究、第49巻第7号、2007年
【非特許文献3】平野重雄、中澤洋二著 「設計の効率化に関わる設計業務の実状調査と一考察」 図学研究、41巻、Supplement1号、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術では、設計や製造を担当するエンジニアが作図、信頼性分析、リスク分析を行う際に、過去のトラブルなどの経験や知見を手動で検索をすることなく、データベースを参照して自動的に経験や知見が提示されるシステムや装置が実現される。したがって、エンジニアの多忙さや業務経験の有無に関わらず、過去の知識や技術を反映した設計や製造が可能になり、信頼性の高い製品、設備および構造物の設計や製造が可能になる。ただし、先行技術は3次元のCADやFMEAなどによる作図、信頼性分析、リスク分析をエンジニアが実施するケースを想定した技術である。
【0011】
非特許文献3には設計業務の実状を調査した結果が報告されている。この文献によると設計業務は、概念設計(設計資料調査、設計計画、設計計算を含む)や詳細設計(作図、検図を含む)などの主体業務と、打合せや資料作成といった付帯業務に分けられ、全従事時間のうち主体業務が67%、付帯業務が23%と分析されている。先行技術で開示されているシステムや装置は、設計や製造業務に含まれる特定の業務プロセスである作図、信頼性分析、リスク分析で利用されるものである。特定の業務プロセスに適用されるシステムや装置に加えて、設計や製造を担当するエンジニアの全従事時間のより多くの時間で、エンジニアに有用な知識や技術を提示できるシステムや装置が望まれる。
【0012】
また先行技術では、部品名、材料名、不良名、作業行為などの単語、あるいはこれらの単語から選択された複数の単語を起点に知識情報が検索されている。特に複数の単語を起点に検索する場合、単語間の関連性が明確でないと、期待した知識情報が検索されない可能性がある。例えば、「軸受」と「滑り」という単語で知識情報が検索された場合、「軸受の外輪とケーシングの滑りによる不具合」の情報が提示される場合もあれば、「滑り軸受を設計する場合の注意点」が提示される場合もある。作図、信頼性分析やリスク分析など、設計や製造の特定の業務に必要な知識情報のみを提示する場合、検索される単語を部品名、材料名などの関連区分に分類できるため、前述の検索の曖昧さによる想定外の知識の提示は回避される。一方で、設計や製造の広範な業務に対して知識情報を提示する場合は、単語を関連区分に分類することが難しく、分類すると対象の業務範囲を狭めるため、単語を起点とした検索による適切な知識情報の提示には課題がある。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑み、調査・企画、設計、製造、保守など、エンジニアリングチェーンと呼ばれる活動および生産計画、調達、製造、物流、販売など、サプライチェーンと呼ばれる活動に含まれる広範なエンジニアの業務において、エンジニアの多忙さや業務経験の有無に関わらず信頼性の高いモノづくりを実現するために、過去の知識や技術の情報を提供する知識提供システム、知識提供プログラムおよび知識提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の解決手段による知識提供システムは、モノづくりに関する事象および規則の題名と、該事象および規則の概説で一対のモノづくり知識ペアを構成し、複数の前記モノづくり知識ペアを蓄積するモノづくり知識蓄積手段と、
前記モノづくり知識ペアに含まれる事象および規則の題名と該事象および規則の概説の少なくともいずれか一方と任意の文章の関連度を計算し、該関連度に応じて決定されたスコアの値を出力するモノづくり知識評価手段と、
前記モノづくり知識評価手段で出力した前記スコアをもとに、関連度が高い前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段から検索して提供するモノづくり知識提供手段と、 作文と発話の少なくともいずれか一方による文章を逐次記録する文章記録手段を備え、
前記文章記録手段で逐次記録した文章を、前記モノづくり知識評価手段に逐次入力し、算出された前記スコアの値をもとに関連度が高いと判断された前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識提供手段で抽出し、出力装置で逐次提示することを特徴とする。
【0015】
ここでモノづくりとは、自動車、鉄道車両、発電・送電システム、建設機械、橋梁などの社会インフラを支える製品、設備および構造物を社会に提供し、継続利用するための一連のプロセス、すなわち調査・企画、設計、製造、保守などのエンジニアリングチェーンと呼ばれるプロセスに含まれる活動や生産計画、調達、製造、物流、販売などのサプライチェーンと呼ばれるプロセスに含まれる活動を指す。
【0016】
モノづくりに関する事象とは、「高強度ボルトは遅れ破壊に注意が必要である」「ポリカーボネート樹脂には有機溶剤や油類の作用でソルベントクラックが発生する」など、前述のモノづくり活動の対象物や活動内容などに関する事象である。また、モノづくりに関する規則とは、「○○の疲労破壊については安全率1.5を確保すること」「一般構造用圧延鋼材SS400の引張強度は400MPaと考えて設計すること」など、前述のモノづくり活動の対象物や活動内容などに関する規則である。
【0017】
モノづくりに関する事象および規則の題名とは、モノづくり事象や規則を簡潔に表現して分類するために付けられたタイトルである。すなわち、「高強度ボルトは遅れ破壊に注意が必要である」「ポリカーボネート樹脂には有機溶剤や油類の作用でソルベントクラックが発生する」「○○の疲労破壊については安全率1.5を確保すること」「一般構造用圧延鋼材SS400の引張強度は400MPaと考えて設計すること」などの短い文章である。100文字未満の1つの短文で表現される場合が多い。
【0018】
さらに、これら事象および規則の概説とは、例えば、「高強度ボルトは遅れ破壊に注意が必要である」という事象に対しては、「遅れ破壊とは別名、静的疲労とも呼ばれ、一定荷重下である時間後に突然脆性的に破壊する現象である。この遅れ破壊は、主に引張強さが1,200MPa以上の高張力鋼において多く発生している。その原因は外部ふん囲気から鋼に侵入した水素による水素脆化だと言われている。」といった対象事象の全体にわたるあらましの説明である。この概説には事象の原因、解説、対策、事例や規則の解説や背景など、モノづくり事象や規則に関する広範な知識が含まれる。前記の概説の例は約127文字の文章であるが、モノづくり事象および規則の概説がさらに多い文字数で表現される場合もあれば、簡潔に表現される場合もある。
【0019】
モノづくりに関する過去の知識や技術は、モノづくりに関する事象や規則の題名と、その概説を含む形式で整理されていることが多い。したがって、モノづくりに関する事象や規則の題名と、その概説をペアとする形式でモノづくりに関する知識を蓄積する手段は、過去の知識や技術を整理した既存の資料を収集し、それらを統合して知識データベースを構築するのに適した手段である。また近年のIT、AIの進歩に伴い、2つの文章の類似度や関連性を評価する方法が数々提案されている。例えば、2つの文章の類似度は評価する方法として、コサイン類似度、レーベンシュタイン距離、単語分散表現に基づく類似度などが提案されている。また、様々な自然言語処理タスクを実行できるAIとして、BERT(Bidirectional Encorder Representatoin from Transformers)が提案されており、このBERTを使って2つの文章の関連性の評価が可能である。
【0020】
特にモノづくりに関する知識の場合、同じ現象を異なる単語で表現できる場合が多い。例えば、「き裂」を「クラック」や「割れ」とも表現できる。このような表現の揺れがある場合でも、モノづくりに関する現象や規則の題名や概説が文章で整理されていれば、表現の揺れを含む意味の近い文章を似た文章と判別できるBERTの機能などによって、作文や発話による入力文章と関連のあるモノづくりに関する事象や規則の題名や概説を抽出できる。
【0021】
また、作文や発話による入力文章と関連のあるモノづくり知識を抽出する場合、モノづくりに関する事象や規則の題名とその概説の2個の文章があれば、入力文章との関連度を2個の文章に対して評価可能であり、より確実に関連のあるモノづくり知識を抽出して提供できる。また、入力文章と比較的文字数が少ない2個の文章の関連度を比較するため、関連度の評価に要する時間が少なくて済む利点もある。モノづくりに関する現象や規則の題名や概説ではなく、詳細に説明した文章を検索対象にすると、関連度評価に要する時間が長くなり、かつ関連度が低い知識を抽出する可能性が高まる。モノづくり従事者が連続して生み出す作文や発話などの入力文章に対して、大きな遅延なく連続して関連するモノづくり知識を提供するには、関連度の迅速な評価が極めて重要である。
【0022】
このようにモノづくりに関する知識を2つの文章のペアの形式で整理すれば、モノづくりの従事者が業務内容と関連するモノづくり知識を獲得する際に、最新のITやAIを利用した方法が採用できる。また、モノづくりに関する知識を迅速に抽出し、かつ入力文章と関連度の高い知識を提供できる。
【0023】
モノづくりの従事者はCADによる作図、FMEAによる信頼性分析やリスク分析など非特許文献3で主体業務に分類される特定の業務も実施するが、その他の付帯業務に従事する時間も多い。モノづくりの従事者は付帯業務で、資料作成のための作文を行い、参加した打合せでは自ら発話し、参加者の発話を聞くことになる。したがって、作文や発話に対して知識を逐次提示することで、付帯業務においても過去の知識や技術を有効活用できる。資料作成や打合せの他にも、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンに含まれる活動の中で、モノづくりの従事者が作文や発話する機会は多い。例えば、調達のための交渉、保守業務における作業者間の意思疎通などでも作文や会話が行われる。
【0024】
このように本発明の第1の解決手段の知識情報システムによると、モノづくりの特定の業務ではなく、モノづくりの広範な活動の中で、従事者が作文や発話した文章に対して、該文章と関連度が高いモノづくりに関する事象および規則の題名と該事象および規則の概説が出力装置で迅速に提供されるため、モノづくりの広範な活動に対して過去の知識や技術をモノづくり活動の従事者に提供できる。
【0025】
また、本発明の第2の解決手段による知識提供システムは、本発明の第1の解決手段において、
前記文章記録手段で逐次記録した文章を、前記モノづくり知識評価手段に逐次入力し、算出された前記スコアの値をもとに関連度が高いと判断された前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識提供手段で抽出し、出力装置で逐次提示するとともに、
提示された前記モノづくり知識ペアと、前記文章記録手段で入力された文章の関連度を評価する仕組みを、前記モノづくり知識ペアと併せて出力装置で提供する関連度評価手段と、
前記関連度の評価結果をもとに出力装置で逐次提示する前記モノづくり知識ペアの数を調整する提示知識調整手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
関連度評価手段は、例えば、モノづくり活動の従事者が作文あるいは発話した文章に対して、前記モノづくり知識評価手段で選択したモノづくり知識ペアと併せて、該モノづくり知識ペアと作文あるいは発話した文章の関連度合いを評価するボタンを出力装置で表示する、関連度合いの高さを表現する利用者の発話を認識する機能を備えるなどして実現できる。
【0027】
本発明の第2の解決手段による知識提供システムによると、モノづくり活動の従事者が提示されたモノづくり知識の適切さを評価し、以降はその評価結果を反映してモノづくり知識ペアが従事者に提示されるため、従事者の活動に関連の深い知識が提供できる。
【0028】
また、本発明の第3の解決手段による知識情報システムは、本発明の第1または第2の解決手段において、
前記モノづくり知識ペアの形式で、前記モノづくり知識ペアの候補となる情報を登録するモノづくり知識登録手段と、
前記モノづくり知識登録手段で登録された前記候補がモノづくりに関する知識に該当するかを判定し、モノづくり知識に該当すると判定した前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段に蓄積するモノづくり知識判定手段を備えたことを特徴とする。
【0029】
広範なエンジニアの業務に関する過去の知識や技術の情報を提供するためには、関連する過去の知識や技術の情報を広く収集する必要がある。知識提供システムの管理者だけでなく、利用者が自らの保有するモノづくり知識を、関係者あるいはモノづくりに関わる全てのエンジニアと共有する仕組みを提供することで、より多くかつ広範な知識や技術の情報を集めることができ、利用者に有益なモノづくり情報を提供できる。ただし、利用者から知識や技術の情報提供を受ける場合、提供される情報が真にモノづくりに関する情報か否かを判定する仕組みが必要である。例えば、利用者が誤ってモノづくりとは関係のない情報を提供した場合、前記のような判定の仕組みが無いと、モノづくり知識蓄積手段にモノづくり知識ではない多量の情報が混入する可能性がある。
【0030】
前述したように文章の類似度や関連性を評価する方法として、コサイン類似度、レーベンシュタイン距離、単語分散表現に基づく類似度、およびBERTなどが提案されており、日々発展を遂げている。これらの方法を利用して、蓄積済みのモノづくり知識と、エンジニアが登録を希望するモノづくり知識の類似度や関連性を評価することで、エンジニアが登録を希望する知識が真にモノづくりに関する情報か否かを判定することができる。
【0031】
また、モノづくりに関する事象や規則の題名と、該事象や規則の概説からなるペアの登録であれば、関係者以外に知られたくない情報を題名や概説に含めずにモノづくり知識を登録することで、必要以上の情報を開示することなく、モノづくり知識をモノづくり蓄積手段に登録できる。
【0032】
本発明の第3の解決手段による知識提供システムによると、システムの利用者からモノづくりに関する広範な知識や技術の情報が収集可能であり、かつモノづくりと関係の無い情報は蓄積されず、結果として共有されることも無いため、利用者にモノづくりのみに関連する広範な知識や技術の情報が提供できる。
【0033】
また、本発明の第4の解決手段による知識情報システムは、本発明の第1または第2の解決手段において、
前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段に蓄積する、および出力装置で提示する際に、前記モノづくり知識ペアに加えて、モノづくり知識ペアが含む情報を詳細に説明した内容や、該詳細に説明した内容へのリンクを併せて、前記モノづくり知識蓄積手段に蓄積する、および出力装置で提示する手段を備えたことを特徴とする。
【0034】
モノづくり知識ペアが含む情報を詳細に説明した内容は、例えば、モノづくりに関する事象が前述の「高強度ボルトは遅れ破壊に注意が必要である」である場合、遅れ破壊の波面の様相や遅れ破壊による不具合事例などが挙げられる。このように、モノづくりの事象および規則の概説をさらに補完する原因、対策、事例などを含む文章、図表、写真、音源などが、モノづくり知識ペアを含む情報を詳細に説明した内容であってもよい。詳細に説明した内容へのリンクは、例えば、詳細に説明した内容を含むWebページにジャンプするためのURL(Uniform Resource Locator)を埋め込んだテキストであってもよい。
【0035】
本発明の第4の解決手段による知識提供システムによると、本発明のシステムからモノづくり知識ペアを提示された従事者が、さらに関連する情報を調査したい場合に、詳細を説明した内容を参照する、あるいは詳細を説明した内容へのリンクをクリックして詳細情報を入手することが可能なため、従事中のモノづくり活動を中断して所望の情報入手のための行動をとる必要がなく、効率的にモノづくり活動を推進できる。
【0036】
特に、詳細を説明した内容へのリンクのみをモノづくり知識ペアと併せてモノづくり蓄積手段に蓄積することで、モノづくりに関する事象および規則の題名、概説、リンクと、モノづくりに関する詳細情報を異なる蓄積手段で保有できる。題名、概説、リンクと詳細情報を異なる蓄積手段に保有するシステムを構成することで、適切なセキュリティレベルでそれぞれの情報を保有することが可能になる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、モノづくりの特定の業務ではなく、モノづくりの広範な活動の中で、従事者が作文や発話した文章に対して、該文章と関連度が高いモノづくりに関する事象および規則の題名と該事象および規則の概説が出力装置で提供されるため、モノづくりの広範な活動に対して過去の知識や技術をモノづくり活動の従事者に提供できる。
【0038】
また、モノづくり活動の従事者が提示されたモノづくり知識の適切さを評価し、以降はその評価結果を反映してモノづくり知識ペアが従事者に提示されるため、従事者の活動に関連の深い知識が提供できる。
【0039】
さらに、本発明のシステムの利用者からモノづくりに関する広範な知識や技術の情報が収集可能であり、かつモノづくりと関係の無い情報は蓄積されず、結果として共有されることも無いため、利用者にモノづくりのみに関連する広範な知識や技術の情報が提供できる。
【0040】
さらに、本発明のシステムからモノづくり知識ペアを提示された従事者が、さらに関連する情報を調査したい場合に、詳細を説明した内容を参照する、あるいは詳細を説明した内容へのリンクをクリックして詳細情報を入手することが可能なため、従事中のモノづくり活動を中断して所望の情報入手のための行動をする必要がなく、効率的にモノづくり活動を推進できる。
【0041】
これらの効果によって、モノづくり活動の従事者は多忙な業務や知識や技術の伝承が容易でない状況においても、過去の知識や技術を活用して、信頼性の高い製品、設備および構造物を社会に提供し、安定稼働させるための活動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の第1の実施形態による知識提供システムの主な構成要素と、構成要素間の関係を概略示した構成図である。(実施例1)
【
図2】本発明の第1の実施形態による知識提供システムで、モノづくりに関する知識が提供される際の処理を示すフローチャートである。(実施例1)
【
図3】本発明の第1の実施形態による知識提供システムの構成要素の1つである、モノづくり知識データベースに保存されるデータの要素を概略示した図である。(実施例1)
【
図4】本発明の第1の実施形態による知識提供システムで、モノづくりに関する知識が表示装置に表示された状態を概略示した表示例である。(実施例1)
【
図5】本発明の第1の実施形態による知識提供システムで、モノづくりに関する知識が表示装置に表示された状態を概略示した表示例である
図4に対し、モノづくり知識の表示が1つ追加される前の状態を概略示した表示例である。(実施例1)
【
図6】本発明の第1の実施形態による知識提供システムの構成要素の1つである、利用・調整ログデータベースに含まれる個人利用ログテーブルに保存されるデータの要素例を示した図である。(実施例1)
【
図7】本発明の第1の実施形態による知識提供システムの構成要素の1つである、利用・調整ログデータベースに含まれる全ユーザ利用ログテーブルに保存されるデータの要素例を示した図である。(実施例1)
【
図8】本発明の第1の実施形態による知識提供システムの構成要素の1つである、利用・調整ログデータベースに含まれる提示知識調整ログテーブルに保存されるデータの要素例を示した図である。(実施例1)
【
図9】本発明の第2の実施形態による知識提供システムの主な構成要素と、構成要素間の関係を概略示した構成図である。(実施例2)
【
図10】本発明の第2の実施形態による知識提供システムで、利用者がモノづくりに関する知識を登録するために利用する仕組みが、表示装置に表示された状態を概略示した表示例である。(実施例2)
【
図11】本発明の第2の実施形態による知識提供システムで、モノづくりに関する知識を登録する際の処理を示すフローチャートである。(実施例2)
【
図12】本発明の第3の実施形態による知識提供システムで、モノづくりに関する知識が表示装置に表示された状態を概略示した表示例である。(実施例3)
【
図13】本発明の第4の実施形態による知識提供システムの主な構成要素と、構成要素間の関係を概略示した構成図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0043】
A.概要
本実施形態は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、モノづくりに関する知識提供システムであって、
モノづくりに関する事象および規則の題名と、該事象および規則の概説で一対のモノづくり知識ペアを構成し、複数の前記モノづくり知識ペアを蓄積するモノづくり知識蓄積手段と、
前記モノづくり知識ペアと任意の文章の関連度を計算し、該関連度に応じて決定されたスコアの値を出力するモノづくり知識評価手段と、
前記モノづくり知識評価手段で出力した前記スコアをもとに、関連度が高い前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識蓄積手段から検索して提供するモノづくり知識提供手段と、
作文と発話の少なくともいずれか一方による文章を逐次記録する文章記録手段を備え、
前記文章記録手段で逐次記録した文章を、前記モノづくり知識評価手段に逐次入力し、算出された前記スコアの値をもとに関連度が高いと判断された前記モノづくり知識ペアを前記モノづくり知識提供手段で抽出し、出力装置で逐次提示することを特徴とすることができる。
【0044】
本実施形態によれば、モノづくりの特定の業務ではなく、モノづくりの広範な活動の中で、従事者が作文や発話した文章に対して、該文章と関連度が高いモノづくりに関する事象および規則の題名と該事象および規則の概説が出力装置で提供されるため、モノづくりの広範な活動に対して過去の知識や技術をモノづくり活動の従事者に提供できる。
【0045】
B.知識情報システム 以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【実施例0046】
以下、
図1~8を用いて、本発明の第1の実施形態による知識提供システムについて説明する。
【0047】
図1は、本実施形態の知識提供システムの構成を示す図である。知識提供システムの利用者とのインターフェースとなる端末装置100とサーバ装置200がネットワークで接続されている。
図1では、サーバ装置200に1台の端末装置が接続されているが、サーバ装置200に複数の端末装置100を接続して知識提供システムを構成してもよい。端末装置100は主に、処理装置101、入力装置102および表示装置103で構成されており、このような機能を含む端末装置の一例として、一般的なパーソナルコンピュータが挙げられる。
【0048】
ここで、処理装置101は文章記録部111と知識表示部112を含んでいる。文章記録部111は主に、入力装置102による利用者の作文や発話の文章を逐次記録する文章記録手段と、記録した文章をサーバ装置200に逐次送信する機能を備えている。日本語の作文や発話の場合、仮名のみの文章を漢字仮名交じり文に変換する処理を文章記録部111が備えていてもよい。このような場合、文章記録部111が変換機能を提供するWeb API(Application Programming Interface)を利用して変換を実施することもできる。発話を認識する場合も同様に、入力装置102で記録された音声を漢字仮名交じり文に変換する際に、文章記録部111が音声認識エンジンやWeb APIの機能を利用してもよい。
【0049】
入力装置102は、利用者の作文を記録する場合、キーボード、カメラなどの撮影装置、表示装置103による表示内容をキャプチャーする機能であってもよい。入力装置102をカメラなどの撮影装置とする場合は、例えば、表示装置103による表示内容をカメラなどで撮影し、撮影された画像から文章を認識する機能を有する装置を、入力装置102として使用できる。また、入力装置102は、利用者の発話を記録する場合、音声を認識するスピーカーやマイクを使用してもよい。さらに、入力装置102は、Web会議でやり取りされる会話を逐次記録する機能であってもよい。表示装置103としては、パーソナルコンピュータに接続して使用される一般的なディスプレイ、プロジェクタ、ヘッドマウント・ディスプレイ、情報の表示が可能な眼鏡などが使用できる。
【0050】
知識表示部112は、実施の1つの形態として、Webブラウザによる表示が採用できる。具体的には、入力装置102で入力し、文章記録部111で送信した文章と関連が深いモノづくり事象および規則の題名とその概説のペア(モノづくり知識ペア)を、サーバ装置200から受け取ってWebブラウザに表示する形態が利用できる。また、モノづくり知識ペアの表示に併せて、それらが利用者の入力した文章と関連するモノづくり知識かどうかを、利用者が評価する仕組みをWebブラウザで表示することができる。例えば、「関連がある」「関連が無い」と記載したボタンをモノづくり知識ペアと併せて表示し、入力装置102に含まれるマウスでボタンをクリックすることで、適切なモノづくり知識が提供されたか否かを利用者が評価できる。
【0051】
サーバ装置200は知識処理部201と知識表示処理部202の機能を含み、関連するサービスやデータを提供するコンピュータまたはソフトウェアである。
【0052】
知識処理部201は主に、知識評価部211、知識検索部212、およびモノづくり知識データベース213で構成されている。モノづくり知識データベース213はモノづくり知識蓄積手段として、モノづくり事象および規則の題名と、該事象および規則の概説で対をなすモノづくり知識ペアを格納する。
図3に、本実施形態のモノづくり知識データベース213の一例を示す。該データベースは項目として、知識ID、モノづくり事象と規則の題名、事象と規則の概説、リンクを含んでいる。一対のモノづくり知識を一個のレコードとして、モノづくり知識データベース213に蓄積する。知識評価部211はモノづくり知識評価手段として、文章記録部111からある文章を受信したとき、その受信文章と、モノづくり知識データベース213に含まれるモノづくり知識ペアとの関連度を評価する。その際に、「受信文章」と「モノづくり事象および規則の題名」の関連度を評価する方法と、「受信文章」と「事象および規則の概説」の関連度を評価する方法があるが、どちらか一方の評価方法を採用しても良いし、両方の関連度を考慮した新たな関連度を定義し、それを関連度の評価に採用しても良い。
【0053】
「受信文章」と「モノづくり事象および規則の題名」の関連度をR1、「受信文章」と「事象および規則の概説」の関連度をR2とすると、両方の関連度を考慮した新たな関連度を採用する場合、例えば、次の数式1や数式2のような指標が考えられる。
【0054】
【0055】
【0056】
ここでaおよびbは、「受信文章」と「モノづくり事象および規則の題名」の関連度R1と「受信文章」と「事象および規則の概説」の関連度をR2のどちらを重視して、受信文章とモノづくり知識の関連度を評価するかを決める重み係数である。関連度R1のみで評価する場合、関連度R2のみで評価する場合と比較し、数式1や数式2を採用することで、関連するモノづくり知識を広範囲にモノづくり知識データベー213から抽出できる。
【0057】
いずれかの方法を採用し、関連度が高いと評価されたモノづくり知識ペアには、高い関連度を表現する数値(スコアと呼ぶ)を付与する。知識検索部212はモノづくり知識提供手段として、知識評価部211で評価されたモノづくり知識ペアから、スコアを参照して関連度の高いモノづくり知識ペアを選択する。
【0058】
知識表示処理部202は主に、表示処理部214、提示知識調整部215、評価処理部216、および利用・調整ログデータベース217で構成されている。表示処理部214は、知識検索部212で選択されたモノづくり知識ペアが表示装置103に適切に表示されるように、表示内容を処理する。知識表示部112にWebブラウザを採用する場合、Webブラウザに表示する内容を表示処理部214で作成する。
【0059】
図4は、表示処理部214で作成した表示内容を知識表示部112に相当するWebブラウザで表示装置103に表示した一例である。モノづくり従事者が入力装置102で入力した文章を文章記録部111で逐次記録し、それを知識処理部201で受信すると、受信した入力文章304と、知識評価部211および知識検索部212で関連度が高いと評価されたモノづくり知識ペアのうち、評価処理部216で「表示する」と判定したペアをWebブラウザ300に表示する。具体的には、入力文章304とともに、モノづくり事象や規則の題名305と概説306、および詳細内容へのリンク303を表示する。
【0060】
図4では、詳細内容へのリンク303としてURLが表示されているが、URLを表示せずに、モノづくり事象や規則の題名305あるいは概説306をクリックすることで、詳細内容が記載されたWebページが表示される仕組みを採用してもよい。
【0061】
評価処理部216での表示判定は、例えば、知識評価部211で付与されたスコアがある閾値を超える、あるいは下回る場合に、モノづくり知識ペアを「表示する」と判断する。モノづくり知識ペアを表示する場合、表示するモノづくり知識ペアが入力文章304に対して関連が深い内容かを判定する関連度評価手段を併せて表示する。具体的には、ボタン301と302を併せて表示する。本実施形態のシステムの利用者が詳細内容へのリンク303や判定ボタン301、302をクリックすると、この結果をもとに提示知識調整手段である提示知識調整部215が評価処理部216の表示判定を調整する。
【0062】
具体的には、利用者が詳細内容へのリンク303や「関連あり」のボタン301をクリックした場合、モノづくり知識ペアは適切に表示され、評価処理部216の表示判定は正しかったと考えられるため、例えば、より積極的にモノづくり知識ペアが表示されるように、評価処理部216の表示判定の閾値を変更する。一方、利用者が「関連なし」のボタン302をクリックした場合、適切でないモノづくり知識ペアが表示され、評価処理部216の表示判定は正しくなかったと解釈できるため、例えば、モノづくり知識ペアの表示を抑制するように、評価処理部216の表示判定の閾値を変更する。
【0063】
図4では、本実施形態のシステムの利用者が入力した文章のうち、最後に評価処理部216で「表示する」と判定された入力文章304とモノづくり知識ペア305、306などが、Webブラウザ300によるモノづくり知識表示321の一番上に表示されている。すなわち本実施形態の知識提供システムでは、利用者の文章入力が進むにつれて、関連度に基づいて選択され、かつ「表示する」と判定されたモノづくり知識ペアが、モノづくり知識表示の一番上に逐次追加されていく。
【0064】
図5は、
図4の入力文章304、モノづくり知識ペア305,306などが、モノづくり知識表示に追加される前の表示状態を示した表示例である。
図5では、入力文章307、モノづくり知識ペア308、309および詳細内容リンク310は、モノづくり知識表示321の一番上に表示されているが、新たに表示が追加されたため、
図4では上から二番目に表示されている。また、
図5においてモノづくり知識表示321の二番目に表示されていた入力文章311、モノづくり知識ペア312、313および詳細内容リンク314は、
図4では上から三番目に表示されている。したがって、本実施形態のシステムでは利用者によるモノづくりに関連する文章入力が継続すると、時間の経過に伴い、入力文章と関連のあるモノづくり知識が逐次、モノづくり知識表示の一番上に次々と追加されていく。過去に追加されたモノづくり知識ペアであり、その後に新たなペアが追加されたことにより、一番上に表示されていないペアは、スライダ320を操作すれば、表示外に隠れることなく、モノづくり知識表示321に適切に表示できる。
【0065】
利用・調整ログデータベース217には、主に個人利用ログテーブル、全ユーザ利用ログテーブル、提示知識調整ログテーブルが含まれている。
図6は、個人利用ログテーブルの一例である。個人利用ログテーブルには、本実施形態のシステムの各利用者が入力した文章に関連があるモノづくり知識ペアを評価処理部216が表示すると判定した場合、入力文章、モノづくり知識ペア、モノづくり知識ペアに付与されたID、詳細内容へのリンクおよび更新日時が記録される。表示処理部214は個人利用ログテーブルの記録を参照し、表示内容を処理してもよい。
【0066】
図7は、全ユーザ利用ログテーブルの一例である。本実施形態のシステムの利用者が判定ボタン301、302や詳細内容へのリンク303をクリックした場合、利用者名、モノづくり知識ペアに付与されたID、利用者の入力文章、ボタンやリンクのクリック状況および更新日時が記録される。このように保存された全利用者の利用状況を利用することで、例えば、知識評価部211による入力文章とモノづくり知識ペアの関連度の評価精度を向上させることができる。
【0067】
図8は、提示知識調整ログテーブルの一例である。提示知識調整部215による表示判定の調整は、各利用者のアクション(ここでは、判定ボタンやリンクのクリックを意味する)で実施しても良いし、ある組織に属する利用者のアクションや全利用者のアクションで実施してもよい。評価処理部216は提示知識調整ログテーブルを参照し、表示するモノづくり知識ペアを決定してもよい。個人、組織、全利用者のそれぞれに対する提示調整結果を、提示知識調整ログテーブルに記録することで、例えば、システムの利用開始時に、ある組織の標準的な表示判定基準を設定し、それを利用者のアクションに従って個別に調整していく、などの柔軟なシステム利用が可能となる。
【0068】
本実施形態の知識提供システムで、モノづくり知識を提供する場合のフローチャートを
図2に示す。システムを起動すると、利用者の作文や発話による文章の入力待ちの状態となる(ステップS09)。システムの利用者の作文や発話により、入力装置102を介して文章入力(ステップS10)が行われると、文章記録部111で入力文章の文章記録・送信(ステップS11)を実行する。このステップ11で入力文章は知識評価部211に送信されるので、続いて該入力文章とモノづくり知識データベース213に保存されたモノづくり知識ペアの関連度をステップS12(モノづくり知識の関連度の評価)で評価する。次に、この関連度の評価結果に基づいて関連度の高いモノづくり知識の選択をステップS13で行う。そして、選択されたモノづくり知識が表示装置103に表示するか否かの判定を、知識評価部211でモノづくり知識に付与されたスコア値に基づいて、評価処理部216で実行する。この判定の処理がステップS14であり、表示しない判定がなされた場合、入力文章に対する処理を終了する。ただし、システムは停止しないため、文章入力待ちの状態は継続する。
【0069】
一方、ステップS14で表示する判定をした場合、入力文章、選択されたモノづくり知識ペアを詳細内容のリンクなどとともに、利用・調整ログデータベース217に記録するステップS15が実行され、続いて表示処理部214によって記録された内容を表示装置103に表示するステップS16を実行する。表示装置103には、入力文章304、モノづくり知識ペア305と306、詳細内容のリンク303などとともに、適切なモノづくり知識が表示されたかを利用者が判定するボタン301、302を表示する。判定ボタンや詳細内容リンクのクリックに応じて、処理を変更するのがステップS17である。判定ボタンや詳細内容のリンクのクリックが無ければ、入力文章に対する処理は終了する。一方で、ステップS17でクリックが検出された場合は、提示知識調整部215によってモノづくり知識の表示判定の基準を調整(ステップS18)し、一連の処理を終了する。ただし、システムは停止しないため、文章入力待ちの状態は継続する。
モノづくり事象および規則の題名と、該事象および規則の概説からなるモノづくり知識ペアは、本発明の知識提供システムを実現するために必要な情報である。一方で、知識IDと詳細情報へのリンクは、本発明の知識提供システムの全ての実施形態で必要な情報ではないため、本システムの利用者はデータ項目選択ボタン334でアップロードする情報に知識ID、詳細情報へのリンクが含まれるかを選択する。参照ボタン331をクリックすることで、端末装置100の図示されていない記録装置に記録されているフォルダやファイルを表示し、アップロードするデータファイルを選択できる。また、ファイルドロップ領域332に、データファイルをドロップすることで、アップロードするデータファイルを選択することもできる。こうして選択したデータファイルは、利用者が登録ボタン333をクリックすることで、データファイルがアップロードされる。すなわち、端末装置100から登録処理部203にデータファイルが送信される。
知識判定部219はモノづくり知識判定手段として、利用者が知識登録部218の機能を使って知識処理部203に送信したデータファイルが、モノづくり知識に該当するかを判定する。例えば、モノづくり知識データベース213に蓄積したモノづくり知識ペアを教師データとして、モノづくり知識の特徴を前述のAIに学習させることで、利用者が送信したデータファイルに含まれるモノづくり知識が、モノづくり知識に該当するかを自動的に判定できる。