(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038958
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】配管バンド用六角ボルト共回り防止金具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/14 20060101AFI20240313BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20240313BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20240313BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F16L3/14 B
F16B41/00 B
F16B2/10 B
F16B2/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022155548
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB07
3H023AC04
3H023AD08
3H023AD21
3H023AD33
3J022DA11
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC17
3J022EC22
3J022FA01
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA12
3J022GB23
3J022GB25
3J022GB42
3J022GB53
(57)【要約】
【課題】配管バンドの締付けナットを締付ける作業において、六角ボルトの頭部角部に電動ドライバー等の使用により大きな締付けトルクが掛かったとしても、変形が起こりにくく、確実に共回りを防止して、手間なく締付けナットの締付けができる共回り防止金具を提供することを目的とする。
【解決手段】配管の外周に巻き付けるバンドを締付けて該配管を固定する締付けナットとともに六角ボルトが共回りすることを防止する共回り防止金具であって、前記六角ボルトの頭部側面に嵌合する透孔を設けた固定片と、前記バンドの締付け片に係止する係止片とから構成した金具本体において、前記透孔の内縁部を前記六角ボルトの頭部角部に沿う仮想外接円より外側に形成すると共に、該内縁部から前記六角ボルトの頭部側面に向かって先端面が前記仮想外接円より内側に突出する回転防止片を形成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外周に巻き付けるバンドを締付けて該配管を固定する締付けナットとともに六角ボルトが共回りすることを防止する共回り防止金具であって、前記六角ボルトの頭部側面に嵌合する透孔を設けた固定片と、前記バンドの締付け片に係止する係止片とから構成した金具本体において、前記透孔の内縁部を前記六角ボルトの頭部角部に沿う仮想外接円より外側に形成すると共に、該内縁部から前記六角ボルトの頭部側面に向かって先端面が前記仮想外接円より内側に突出する回転防止片を形成したことを特徴とする配管バンド用六角ボルト共回り防止金具。
【請求項2】
前記回転防止片を前記六角ボルトの頭部側面の対向する2か所以上に形成したことを特徴とする請求項1に記載の配管バンド用六角ボルト共回り防止金具。
【請求項3】
前記係止片を前記バンドの締付け片の一方、あるいは、両方の端縁に係止し、金具本体が略L字状、あるいは、略コの字状に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管バンド用六角ボルト共回り防止金具。
【請求項4】
前記係止片の一方から延伸し、前記六角ボルトのネジ部に係合する係合部を設けた係合片を前記固定片に対向して形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管バンド用六角ボルト共回り防止金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管バンドに配管を取り付ける場合、締付けナットを締付けた際に六角ボルトが共回りするのを防ぐ共回り防止金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管バンドの六角ボルトの共回りを防止するものとして、六角ボルトを挿着する締付け片の透孔近傍に六角ボルトの頭部側面の対辺に沿うように切り起こした凸状のリブを形成し、そのリブに六角ボルトの頭部側面が当接することで共回りを防止していた。(
図10参照)
【0003】
また、特許文献1には、六角ボルトの頭部側面に嵌合する六角形状の透孔を設けた固定片と先端に六角ボルトのネジ部に係合する係合溝を設けた係合片と、それらを対向して連結すると共に、前記バンドの締付け片の端縁に係止する係止片とを備えた略コの字状の金具の形態が示され、透孔の形態は六角ボルトの頭部よりやや大きい六角形状に形成、あるいは、頭部の対辺に切り起こし片を形成して、それらに頭部を当接させ、さらに係止片が配管バンドの締付け片の端縁に当接して反力を得ることでボルトの回転を防止する金具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例のように、配管バンドの締付け片自体に切り起こした凸状のリブを形成する場合、固定する配管の荷重を受ける締付け片の断面に欠損部が形成されるため、配管の荷重を担う引張強度の低下が生じることで、配管の重量が大きいものではこの構成を採用できない場合が生じる。
特許文献1ではバンドの一部に加工を施すのではなく、別体の金具を使用するので従来例のような強度低下の問題は解決されているものの、締付けナットを締付ける際に六角ボルトの頭部角部が透孔の内縁部に当接して変形する恐れがあった。
すなわち、別体の金具を組み付けることを考慮して、固定片の透孔は六角ボルトの頭部よりやや大きく形成され、したがって、六角ボルトの頭部と透孔にはわずかな隙間が生じるが、締付けナットを締め付ける際、このわずかな隙間により六角ボルトが共回りで少し回転することで、頭部角部が透孔の内縁部に線状に当接してしまう。
締付けナットの締付け作業においては、今般、電動ドライバーなど電動回転工具を使用する場合があり、高出力なものも多く、大きな締付けトルクが頭部角部に伝わり、線状に当接することで六角ボルトの回転による応力が集中して、透孔の内縁部に変形を生じ、さらに、変形が過度に大きくなる場合には共回りを防止する機能を喪失してしまう場合があるなどの問題点があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、配管バンドの締付けナットを締付ける作業において、六角ボルトの頭部角部に電動ドライバー等の使用により大きな締付けトルクが掛かったとしても、変形が起こりにくく、確実に共回りを防止して、手間なく締付けナットの締付けができる共回り防止金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の構成は、配管の外周に巻き付けるバンドを締付けて該配管を固定する締付けナットとともに六角ボルトが共回りすることを防止する共回り防止金具であって、前記六角ボルトの頭部側面に嵌合する透孔を設けた固定片と、前記バンドの締付け片に係止する係止片とから構成した金具本体において、前記透孔の内縁部を前記六角ボルトの頭部角部に沿う仮想外接円より外側に形成すると共に、該内縁部から前記六角ボルトの頭部側面に向かって先端面が前記仮想外接円より内側に突出する回転防止片を形成したことを特徴とする。
【0008】
第2の構成は、第1の構成に加えて、回転防止片を前記六角ボルトの頭部側面の対向する2か所以上に形成したことを特徴とする。
【0009】
第3の構成は、第1の構成又は第2の構成に加えて、前記係止片を前記バンドの締付け片の一方、あるいは、両方の端縁に係止し、金具本体が略L字状、あるいは、略コの字状に形成したことを特徴とする。
【0010】
第4の構成は、第1の構成又は第2の構成に加えて、係止片の一方から延伸し、前記六角ボルトのネジ部に係合する係合部を設けた係合片を前記固定片に対向して形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の構成によれば、六角ボルトの頭部側面に嵌合する透孔を設けた固定片と、前記バンドの締付け片に係止する係止片とから構成した金具本体において、前記透孔の内縁部を前記六角ボルトの頭部角部に沿う仮想外接円より外側に形成すると共に、該内縁部から前記六角ボルトの頭部側面に向かって先端面が前記仮想外接円より内側に突出する回転防止片を形成したことより、締付けナットを締付ける際、透孔の内縁部と六角ボルト頭部とのクリアランス分の隙間があるため、六角ボルトが僅かに回転して六角ボルトの頭部側面が透孔の内縁部から突出する回転防止片に当接する。
すなわち、六角ボルトの頭部側面が透孔の内縁部から突出する回転防止片に面状に当接することで、六角ボルトの頭部角部が線状に当接するよりも、六角ボルトの回転による応力が分散され、その結果、透孔の内縁部(回転防止片)に作用する応力が小さくなることで変形を抑制することができる。(
図9参照)
【0012】
第2の構成によれば、回転防止片を前記六角ボルトの頭部側面の対向する2か所以上に形成したことにより、六角ボルトの頭部側面と固定片の透孔の内縁部(回転防止片)との面状に当接する箇所が増え、固定片の透孔の内縁部(回転防止片)に伝わる応力を分散できてより確実に変形を抑えることができる。
【0013】
第3の構成によれば、係止片をバンドの締付け片の一方、あるいは、両方の端縁に係止し、金具本体が略L字状、あるいは、略コの字状に形成したことにより、金具本体をバンドの締付け片に容易に取り付けることができる。
を特徴とする。
【0014】
第4の構成によれば、係止片の一方から延伸し、六角ボルトのネジ部に係合する係合部を設けた係合片を固定片に対向して形成したことにより、バンドの締付け片とターンバックルの取付け片とが重なり合う部分を金具本体の固定片と係合片で挟み込むように取り付け、該係合片に設けた係合部を前記ネジ部に係合することで、配管をバンドに取り付ける際に六角ボルトに螺着する締付けナットを一旦外すが、その際、該係合片が六角ボルトからバンドとターンバックルの脱落を防止するストッパーとなり、バンドとターンバックルとが一体化するため、配管の取付け作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】共回り防止金具の使用状態を示す斜視図である。
【
図7】共回り防止金具の使用状態を示す斜視図である。
【
図8】金具本体の別の実施形態の使用状態を示す斜視図
【
図9】共回り防止金具の透孔(a)と従来例の六角形状透孔(b)の比較図である。
【
図10】バンドの締付け片に凸状のリブを形成した従来例。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~3を参照して、本実施形態に係る共回り防止金具を説明する。
1は金具本体であり、平板状の固定片10及び係合片20が対向し、固定片10及び係合片20の端部同士を係止片30が連結して平面視略コの字状に形成する。
固定片10には六角ボルトAの頭部を挿通可能な透孔11を設ける。六角ボルトAの頭部は、6つの頭部角部A1と6つの頭部側面A2とから形成される六角柱状である。透孔11は、縦方向が横方向よりも幅広の略十字形状である。透孔11を挿通させた六角ボルトAと同じ位置に中心を有し、六角ボルトAの6つの頭部角部A1に沿う仮想円を仮想外接円Xとしたとき、六角ボルトAの頭部側面A2のうち上下の2か所と頭部角部A1のうち左右の2か所を仮想外接円Xより外側に内縁部12を形成し、六角ボルトAの頭部側面A2のうち対向する4か所に向かって、前記仮想外接円Xより先端面が内側になるように回転防止片13を形成する。透孔11は内縁部12と回転防止片13とにより形成される略十字形状である。
透孔11に挿通させた六角ボルトAは、6つの頭部側面A2のうち4か所において回転防止片13と当接し、頭部側面A2のうち他の2か所及び6つの頭部角部A1は、内縁部13との間にクリアランスを有する。
回転防止片13の先端面は六角ボルトAの頭部側面A2と面状に当接するように頭部側面A2に対して略平行面とすることが望ましい。
係合片20は前記固定片10の一端を屈曲して形成した係止片30の他端を屈曲して前記固定片10と対向するように延伸させる。
係合片20の先端には前記六角ボルトAのネジ部A3の谷部分に係合する幅に形成した溝状の係合部21を設ける。
係合部21は、六角ボルトAに螺着する締付けナットA4を一旦外す際に、六角ボルトAからバンドBとターンバックルB1の脱落を防止する強度を有するようにネジ部A3へ係合されている。
係合部21は透孔としてもよく、六角ボルトAのネジ部A3に係合し、上記仮止め作用を得ることができればよい。
係止片30は固定片10と係合片20の連結部分であり、その幅をバンドBの締付け片B2とターンバックルB1の取付け片B3とが重なり合う厚みよりやや広い程度が好ましく、六角ボルトAの共回りにより固定片10の透孔11に伝わる回転力をバンドBの締付け片B2の側面に当接して反力とすることで回転を防止する作用の役割となっている。
以上のように構成される金具本体は、薄鋼鈑をプレス加工により一体的に成形することが好ましいが、これに限定することではない。
【0017】
図4から
図5は別の実施形態を示す。
図4及び
図5は、上記実施形態と同じ部材については同じ符合を付し、その説明を一部省略する。
図4(a)は、金具本体が固定片10とその一端を屈曲させて形成した係止片30からなる平面視略L字状の形態、(b)は、金具本体が固定片10とその両端を屈曲させて形成した係止片30、30からなる平面視略コの字状の形態であり、共に、バンドBの締付け片B2の端部に係止して取り付けることができる形態である。
【0018】
図5は透孔11の別の実施形態を示し、前記実施形態では回転防止片13を六角ボルトの頭部側面の対向する4か所に形成したが、2か所(a)や3か所(b)や6か所(c)とすることも可能である。
【0019】
以上のように構成される供回り防止金具の使用方法について、
図6及び
図7を参照して説明する。
配管バンドは、六角ボルトAの挿通孔を設けた締付け片B2を両端に設け、配管Dの外周に巻き付けて装着する円弧状のバンドBと、吊りボルトCに螺着する連結ナットB4を有し、下方に前記六角ボルトAの挿通孔を設けた取付け片B3からなるターンバックルB1が、前記締付け片B2と前記取付け片B3を重ねた状態で両者の挿通孔に前記六角ボルトAを挿通し、ネジ部A3に締付けナットA4を螺着して連結された構成としている。
金具本体1をバンドBの締付け片B2とターンバックルB1の取付け片B3とが重なり合う部分を固定片10と係合片20で挟み込むように差し込み、固定片10の透孔11をバンドBの締付け片B2の外側に配置される六角ボルトAの頭部に嵌装すると共に、係合片20の溝状の係合部21を前記六角ボルトAのネジ部A3に係合した状態で予め取り付けておく。
床下に懸垂する吊ボルトCにターンバックルB1の連結ナットB4を螺着した後、締付けナットA4を外して、バンドBの一方を開放し、配管Dを抱持するように閉塞して締付けナットA4を六角ボルトAに螺着し、締め付けて固定する。
その際、締付けナットA4を回転させる締付けトルクが六角ボルトAに伝わり、透孔11の内縁部12と六角ボルト頭部とのクリアランス分の隙間を僅かに回転して六角ボルトAの頭部側面A2が透孔11の内縁部12から突出する回転防止片13に当接して六角ボルトAの共回りを防ぐことができる。
当接する両者が面状に当接することで、六角ボルトの回転による応力が分散されて透孔の回転防止片に作用する応力が小さくなることで変形を抑制することができる
【0020】
図8は前記別の実施形態として示した金具本体1が平面視略L字状の形態(a)、及び、平面視略コの字状の形態(b)のバンドBへの装着状態を示し、バンドBの締付け片B2の端部に係止して取り付けることができる。
透孔11の形態、効果は前記実施形態と同じのため説明を省略する。
【符号の説明】
【0021】
1 金具本体
10 固定片
11 透孔
12 内縁部
13 回転防止片
20 係合片
21 係合部
30 係止片
A 六角ボルト
A1 頭部角部
A2 頭部側面
A3 ネジ部
A4 締付けナット
B バンド
B1 ターンバックル
B2 締付け片
B3 取付け片
B4 連結ナット
C 吊ボルト
D 配管
X 仮想外接円