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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038959
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】デッキプレート用インサート
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20240313BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20240313BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20240313BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20240313BHJP
   E04B 5/40 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
E04B1/41 502M
F16B37/04 N
F16B1/02 A
E04B9/18 D
E04B5/40 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022155549
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA42
2E125AA58
2E125AA59
2E125AB02
2E125AC15
2E125AE04
2E125AG03
2E125AG06
2E125AG12
2E125AG13
2E125BA07
2E125BA22
2E125BB22
2E125BB25
2E125BB30
2E125BB33
2E125BB37
2E125BD01
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF05
2E125CA05
2E125CA13
(57)【要約】
【課題】デッキプレートを使用するコンクリート床下に照明や設備架台等を直付け固定するためのネジの締結部分として、床から下方に突出するボルト、または、床面に露出するネジ孔を効率よく安全に設置が可能であり、製品の組立に際しても作業効率のよいデッキプレート用インサートを提供することを目的とする。
【解決手段】デッキプレートに開けた貫通孔に上方から挿通して取付けるデッキプレート用インサートであって、鍔状頭部と下端にネジ孔を有する胴部とを含むアンカーに、該胴部の外周にワッシャー及び、該ワッシャーと前記鍔状頭部との間に該ワッシャーを前記デッキプレート上面に押圧するコイルバネを装着したインサート本体と、前記アンカーのネジ孔に螺着するネジ部を有する取付部及び、該取付部の外側面に前記デッキプレートの貫通孔を挿通して取付けた時に該貫通孔を跨いで該デッキプレートの下面に当接する拡縮可能な係合片が一体的に形成された係合部材を備えたことを特徴とする
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートに開けた貫通孔に上方から挿通して取付けるデッキプレート用インサートであって、
鍔状頭部と下端にネジ孔を有する胴部とを含むアンカーに、該胴部の外周にワッシャー及び、該ワッシャーと前記鍔状頭部との間に該ワッシャーを前記デッキプレート上面に押圧するコイルバネを装着したインサート本体と、
前記アンカーのネジ孔に螺着するネジ部を有する取付部及び、該取付部の外側面に前記デッキプレートの貫通孔を挿通して取付けた時に該貫通孔を跨いで該デッキプレートの下面に当接する拡縮可能な係合片が一体的に形成された係合部材を備えたことを特徴とするデッキプレート用インサート。
【請求項2】
前記係合部材が回転工具の受け口に嵌合することを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート用インサート。
【請求項3】
デッキプレートに開けた貫通孔に上方から挿通して取付けるデッキプレート用インサートであって、
鍔状頭部と下端にボルト軸を有する胴部とを含むアンカーに、該胴部の外周にワッシャー及び、該ワッシャーと前記鍔状頭部との間に該ワッシャーを前記デッキプレート上面に押圧するコイルバネを装着したインサート本体と、
前記アンカーのボルト軸に着脱可能な可撓片を周設した筒状の取付部及び、該取付部の外側面に前記デッキプレートの貫通孔を挿通して取付けた時に該貫通孔を跨いで該デッキプレートの下面に当接する拡縮可能な係合片が一体的に形成された係合部材とを備えたことを特徴とするデッキプレート用インサート。
【請求項4】
前記係合部材が回転工具の受け口に嵌合することを特徴とする請求項3に記載のデッキプレート用インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキプレートを使用するコンクリート床構造において、照明や設備架台等を床下に直付け固定する際のデッキプレート用インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデッキプレート用インサートは、特許文献1に示すように、鍔状の頭部と下端に雌ネジ部を有する軸部からなるインサート本体と、前記軸部の外周に装着したワッシャー部材及びスプリング部材と、前記デッキプレートに挿通取付時に下面にて外周方向に張出し可能な張出し部が設けられた筒状部材と、前記インサート本体の雌ネジ部に螺合して前記筒状部材をインサート本体に取り付ける仮止め部材とから構成される形態が開示されている。
使用方法として、コンクリート打設前、デッキプレートに穿設した貫通孔に筒状部材を下方に押し込んで張出し部がデッキプレート下面に当接すると共に、軸部に装着したスプリング部材の圧縮された反力によりワッシャー部材を前記デッキプレートの上面に押圧し、両者で上記デッキプレートを挟んだ状態で取り付ける。
コンクリート打設後、仮止め部材を回転工具等で回転させ、筒状部材と共に取り除くことで、床下の所定位置にインサート本体が埋設した状態で配置され、そのインサート本体の雌ネジ部に照明器具や配管架台の基板に設けた取付穴を介して、所定長さの六角ボルトを締結することでそれらを固定することができる。
【0003】
また、特許文献2に示すように、鍔状の頭部と下端にボルト軸を形成する胴部からなるアンカーと、該アンカーの胴部外周に装着したワッシャー及びコイルバネと、前記デッキプレートの下面に当接する拡縮可能な係合片を上端周縁に3カ所形成し、内壁には前記ボルト軸に螺合するネジ溝を形成した筒状の係合部材とからなり、前記ボルト軸に係合部材を螺着して連結して構成された形態が開示されている。
使用方法として、コンクリート打設前、デッキプレートに穿設した貫通孔に係合部材を下方に押し込み、係合片でデッキプレート下面に当接すると共に、アンカー胴部に装着したコイルバネの圧縮力でワッシャーを前記デッキプレートの上面に押圧し、両者で上記デッキプレートを挟んだ状態で取り付け、コンクリート打設後、係合部材をボルト部材から手動で回転させて取り除くことで、床下の所定位置にボルトが下方に突出した状態で配置され、そのボルトに照明器具や配管架台の基板に設けた取付穴を介して、ナットを締結することでそれらを固定することができる。
【0004】
上記特許文献1及び2は共に、コンクリート床にネジの締結部分を設けるために予め、デッキプレートに取付けておき、コンクリート打設後、埋設されるアンカーはコンクリートアンカーとなると共に、特許文献1ではアンカー部に設けたネジ孔が床面に露出した状態となり、特許文献2では床からボルトが下方に突出した状態となり、六角ボルト、または、六角ナットで被固定材を締結して固定することができるものである。
【0005】
上記従来の方法では、特許文献1において、筒状部材を取外しには、仮止め部材(六角ボルト)を緩めて取外すため、筒状部材と共に2部品が外れてくるため、不安定な高所での作業でもあるので、部品が分かれて落下する可能性があり大きな災害となる可能性もある。また、部品点数が多いこともあり、製品の組み立てが非常に煩雑になるなどの問題点があった。
【0006】
特許文献2においては、係合部材とアンカーとの連結をボルト軸へのネジによる接合としているために、コンクリート打設後、コンクリート床下から下方に突出するボルト軸から係合部材を取外す際には係合部材を手動で回転させる必要があり、不安定な高所での作業のため、時間が掛かり作業効率も低下する。また、製品の組立時もネジ接合のため非常に煩雑となるなどの問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-60106号公報
【特許文献2】意匠登録第1524890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、デッキプレートを使用するコンクリート床下に照明や設備架台等を直付け固定するためのネジの締結部分として、床から下方に突出するボルト、または、床面に露出するネジ孔を効率よく安全に設置が可能であり、製品の組立に際しても作業効率のよいデッキプレート用インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の構成は、デッキプレートに開けた貫通孔に上方から挿通して取付けるデッキプレート用インサートであって、鍔状頭部と下端にネジ孔を有する胴部とを含むアンカーに、該胴部の外周にワッシャー及び、該ワッシャーと前記鍔状頭部との間に該ワッシャーを前記デッキプレート上面に押圧するコイルバネを装着したインサート本体と、前記アンカーのネジ孔に螺着するネジ部を有する取付部及び、該取付部の外側面に前記デッキプレートの貫通孔を挿通して取付けた時に該貫通孔を跨いで該デッキプレートの下面に当接する拡縮可能な係合片が一体的に形成された係合部材を備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の構成は、前記係合部材が回転工具の受け口に嵌合することを特徴とする。
【0011】
第3の構成は、デッキプレートに開けた貫通孔に上方から挿通して取付けるデッキプレート用インサートであって、鍔状頭部と下端にボルト軸を有する胴部とを含むアンカーに、該胴部の外周にワッシャー及び、該ワッシャーと前記鍔状頭部との間に該ワッシャーを前記デッキプレート上面に押圧するコイルバネを装着したインサート本体と、前記アンカーのボルト軸に着脱可能な可撓片を周設した筒状の取付部及び、該取付部の外側面に前記デッキプレートの貫通孔を挿通して取付けた時に該貫通孔を跨いで該デッキプレートの下面に当接する拡縮可能な係合片が一体的に形成された係合部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
第4の構成は、前記係合部材が回転工具の受け口に嵌合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の構成によれば、係合部材がインサート本体のアンカー下端のネジ孔に螺着するネジ部を有する取付部と、その外側面にデッキプレートの貫通孔を挿通して取付けた時に該貫通孔を跨いで下面に当接する拡縮可能な係合片とが一体的に形成しているので、係合部材を取外す際に部品が分かれて落下する心配がなく作業上安全であり、また、部品点数が減るので、組立作業も省力化できる。
【0014】
第2の構成によれば、係合部材が回転工具の受け口に嵌合することにより、回転工具を用いて、容易で迅速な組み付け、取外しができるので、作業効率の向上が図れる。
【0015】
第3の構成によれば、係合部材がアンカーのボルト軸に着脱可能な可撓片を周設する筒状の取付部としたためボルト軸に圧入する作業で組み付けができるので、ネジに接合よりも迅速に行え、組立て作業の効率が向上する。
【0016】
第4の構成によれば、係合部材が回転工具の受け口に嵌合することにより、回転工具を用いて、容易で迅速な取外しができるので作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1の斜視図である。
図2】本発明の実施形態1の分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態1の正面図(a)、右側面図(b)、平面図(c)、底面図(d)である。
図4】本発明の実施形態1の施工方法を示す図である。
図5】本発明の実施形態2を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2の分解斜視図である。
図7】本発明の実施形態2の正面図(a)、右側面図(b)、平面図(c)、底面図(d)である。
図8】本発明の実施形態2の施工方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、図1~3を用いて詳細に説明する。
インサート本体10は、上端に鍔状頭部11を形成した胴部12の下端にネジ孔13を設けたアンカー14と、アンカー14の胴部12の外周に外嵌した状態で装着する円盤状のワッシャー15とコイルバネ16とから構成される。コイルバネ16はワッシャー15と鍔状頭部11との間に配置され、圧縮された時にはバネの反力で鍔状頭部11の下面に当接してワッシャー15をデッキプレート側に押圧する。
係合部材20は、デッキプレートの貫通孔を挿通できるように貫通孔の径よりやや小さい幅長さに形成された取付部21を基材とし、その上端にはアンカー14のネジ孔13に螺着するネジ部22を形成し、外側面には斜め上方に張り出す係合片23、23を対向して形成する。この一対の係合片23、23はデッキプレートの貫通孔を通過する際は内側に向かって撓んで張出し幅を小さくし、通過後、復元して貫通孔を跨いだ状態でデッキプレートの下面に張出す。係止片23、23は、貫通孔の通過後、その上端面が当接する。前記コイルバネ16の反力でデッキプレート側に押圧されたワッシャー15と係合片23、23とによりデッキプレートを挟んだ状態で、インサート本体10を取り付けることができる。取付部21の下部には回転工具の受け口に嵌合する当接片24、24を対向して形成する。ネジ部22の基端にはアンカー14の胴部12とほぼ同径の閉塞片25を形成する。閉塞片25は、アンカー14のネジ孔13周縁に当接して、ネジ孔13とネジ部との隙間を閉塞することで、デッキプレートの貫通孔との隙間から漏れてくるコンクリートノロがネジ孔13やその周縁に付着しないようにすることができる。係合部材20はプラスチック製により一体的に成形することが好ましい。
【0019】
次に、本発明の実施形態1の使用方法について、図4を用いて説明する。
以下に施工の手順を示す。
(a)デッキプレートAにドリルビットBで所定の貫通孔Cをあける。
(b)貫通孔Cに本実施形態に係るインサートを取り付けるが、まず、係合部材20を下端側から挿入し、係合片23、23が内側に向かって撓んで張出し幅を小さくなるように押し込んで、通過後、復元して貫通孔を跨いだ状態でデッキプレートAの下面に張出してその上端面が当接する。デッキプレートA上面は、アンカー14の胴部12外周に装着したコイルバネ16の反力でワッシャー15がデッキプレートA側に押圧され、デッキプレートA下面に当接する係合片23、23とによりデッキプレートを挟んだ状態で取り付けられる。
(c)コンクリートDを打設する。
(d)コンクリートの硬化後、デッキプレートA下面から、係合部材20の取付部21に六角ソケットEを嵌合させて回すことで、アンカー14のネジ孔13から係合部材20を取り外してネジ孔13を露出させる。係合部材20は一体的に構成された1部品であるため、部品が分解して落下するなどの心配がない。
(e)ネジ孔13に、固定ボルトGを螺着して設備架台Fを固定する。
【0020】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について、図5~7を用いて詳細に説明する。
実施形態2では、実施形態1と異なる部分のみの説明とし、共通部分の説明を省略する。実施形態2が実施形態1と異なるのはインサート本体100のボルト軸170と係合部材200の構成である。ボルト軸170は一端をアンカー140のネジ孔130に螺着し、カシメ加工により固定する。または、ボルト軸170は、アンカー140と一体的に形成することも考えられ、例えば、冷間あるいは熱間プレス加工や切削加工により形成することも可能である。係合部材200は、デッキプレートの貫通孔を挿通する周径に形成された筒状の取付部210を基材とし、その下端から下方に向かってボルト軸170のネジ外径よりやや小径になるように可撓片220を3片周設する。可撓片220の内壁には中心に向かって突出し、ボルト軸170のネジ溝に係止する係止片260をそれぞれ設ける。
すなわち、取付部210は、3辺の可撓片220の中心部の間隙にボルト軸170が押し込まれることで、可撓片220は外方に向かってそれぞれ撓み、中心部の間隙が拡径して、ボルト軸170の所定位置に組み付けられる。
可撓片220に設けた係止片260はボルト軸170のネジ溝に係止してズレを防止すると共に、ネジ溝に沿うためネジの役割も担うことができ、すなわち、回転することでボルト軸170から取り外すこともできる。
取付部210の外側面からは斜め上方に張り出す係合片230を3片等間隔に形成する。これら係合片230はデッキプレートの貫通孔を通過する際は内側に向かって撓んで縮径し、通過後、復元して貫通孔を跨いだ状態でデッキプレートの下面に張出してそれら上端面が当接し、前記コイルバネ160の反力でデッキプレート側に付勢されたワッシャー150とによりデッキプレートを挟んだ状態で取り付けられる。可撓片220の外面には回転工具の受け口に嵌合する当接片240を形成する。
また、筒状の取付部210の上端にはアンカー140の胴部120とほぼ同径の被覆片250を形成し、アンカー140のネジ孔130周縁に当接して、ボルト軸170を被覆することで、デッキプレートの貫通孔との隙間から漏れてくるコンクリートノロがボルト軸170のネジ溝に付着しないようにする。係合部材200はプラスチック製により一体的に成形することが好ましい。
【0021】
次に、本発明の実施形態2の使用方法について図8を用いて説明する。
以下に施工の手順を示すが、(a)~(c)までは実施形態1と同じであるので省略する。
(d)コンクリートの硬化後、デッキプレートA下面から、係合部材200の取付部210下端の可撓片220に六角ソケットEを嵌合させて回すことで、ボルト軸170から係合部材20を取り外してボルト軸170を露出させる。係合部材200は一体的に構成された1部品であるため、部品が分解して落下するなどの心配がない。
(e)ボルト軸170に、設備架台Fを取り付けて、固定ナットHで締結して固定する。
【符号の説明】
【0022】
10、100 インサート本体
11、110 鍔状頭部
12、120 胴部
13、130 ネジ孔
14、140 アンカー
15、150 ワッシャー
16、160 コイルバネ
170 ボルト軸
20、200 係合部材
21、210 取付部
22 ネジ部
220 可撓片
23、230 係合片
24、240 当接片
25 閉塞片
250 被覆片
260 係止片
A デッキプレート
B ドリルビット
C 貫通孔
D コンクリート
E 六角ソケット
F 設備架台
G 固定ボルト
H 固定ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8