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特開2024-38973耐水性カチオン性樹脂組成物及びそれを用いたコーティング材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038973
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】耐水性カチオン性樹脂組成物及びそれを用いたコーティング材
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20240313BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C09D133/14
C08F220/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025369
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2022142889
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506099580
【氏名又は名称】東新油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 孝之
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 和彦
(72)【発明者】
【氏名】椿 貴之
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG051
4J038CH211
4J038NA04
4J038PB05
4J038PB06
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA32P
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100CA04
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA07
4J100JA11
4J100JA13
4J100JA32
4J100JA43
4J100JA50
4J100JA57
4J100JA58
4J100JA59
4J100JA60
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】4級アンモニウム塩含有のモノマーとメタクリル酸エステルを用いることにより、耐水性が向上したコーティング材を提供すること。
【解決手段】モノマー成分として、少なくとも下記成分(a)及び下記成分(b)を共重合させて得られる、共重合体を含有するコーティング材。
成分(a):ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩
成分(b):メタクリル酸アルキルエステル
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー成分として、少なくとも下記成分(a)及び下記成分(b)を共重合させて得られる、共重合体を含有するコーティング材。
成分(a):ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩
成分(b):メタクリル酸アルキルエステル
【請求項2】
前記モノマー成分全量に対する前記成分(a)の重量割合が、50%より多いことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング材。
【請求項3】
前記モノマー成分全量に対する前記成分(a)の重量割合が、70%より少ないことを特徴とする、請求項2に記載のコーティング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐水性を有する新規なコーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4級アンモニウム塩基などのカチオン性を有するコーティング材は耐水性が悪く、屋外、水回り、結露などを生じる環境における使用では、塗膜が溶解するなどの問題があった。
耐水性を確保するために、4級アンモニウム塩基の含有量を低減すると、当然、4級アンモニウム塩基による効果は低減するため、問題の解決が難しいとされている。
下記特許文献1には、耐水性を得るために、2種類以上のメタクリル酸エステルを用いることが報告されている。詳しくは、(a)ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4級塩に対して、(b)メタクリル酸メチルとメタクリル酸イソブチル又はメタクリル酸ターシャリーブチルの2種類、(a)ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのベンジルクロライド塩に対して、(b)メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルの2種類を併用する発明が開示されている。
しかしながら、下記特許文献1に記載されたコーティング材の耐水性も、満足できるものではなく、耐水性が向上したコーティング材の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-295317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、4級アンモニウム塩含有のモノマーとメタクリル酸エステルを用いることにより、耐水性が向上したコーティング材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、4級アンモニウム塩含有のモノマーとメタクリル酸エステルの組み合わせを種々検討した結果、特定の化学構造を有する4級アンモニウム塩含有のモノマーを用いることにより、コーティング材の耐水性が向上することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
本発明は、詳しくは以下の事項を要旨とする。
1.モノマー成分として、少なくとも下記成分(a)及び下記成分(b)を共重合させて得られる、共重合体を含有するコーティング材。
成分(a):ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩
成分(b):メタクリル酸アルキルエステル
2.前記モノマー成分全量に対する前記成分(a)の重量割合が、50%より多いことを特徴とする、1.に記載のコーティング材。
3.前記モノマー成分全量に対する前記成分(a)の重量割合が、70%より少ないことを特徴とする、2.に記載のコーティング材。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、4級アンモニウム塩含有のモノマーとして、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩を採用することにより、耐水性に優れたコーティング材を得ることが出来る。
本発明における成分(a)は、その化学構造に由来する抗菌性をも併せ持つため、抗菌性、防曇性及び帯電防止性を有するコーティング材が得られ、非常に有用である。
加えて、本発明のコーティング材は、モノマー成分全量に対して成分(a)の重量割合を50%より多いものとしても、優れた耐水性を維持するため、従来のコーティング材に比べて顕著に優れた抗菌性能を発揮し得るものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の共重合体は、成分(a)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩及び、成分(b)メタクリル酸アルキルエステルを、共重合させて得られるものである。
<成分(a)>
本発明における成分(a)は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩であり、ジメチルアミノエチルメタアクリレートのベンジルハライド4級塩であることが好ましい。
当該ハライドは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れかであり、フッ素、塩素、臭素が好ましく、塩素、臭素がより好ましく、塩素がさらに好ましい。
成分(a)の具体例としては、下記化学構造を有するジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級塩、ジメチルアミノエチルメタアクリレートのベンジルクロライド4級塩が挙げられる。
【化1】
成分(a)は、合成により得たものを用いても、市販されている製品を用いても、何れでもよい。市販品としては、具体的には、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩(KJケミカルズ(株)製「MDMAEA―BQ」、60%水溶液)、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級塩(KJケミカルズ(株)製「DMAEA-BQ」、75%水溶液)などが挙げられる。
【0009】
<成分(b)>
本発明における成分(b)は、メタクリル酸とアルコールとのエステルである、メタクリル酸アルキルエステルである。
前記アルコールとしては、1価のアルコールが好ましく、1価の飽和アルコールがより好ましく、炭素数1~18の1価の飽和アルコールがさらに好ましい。炭素数1~18の1価の飽和アルコールは、直鎖、分岐鎖、環状アルコールの何れでも良い。
本発明において、モノマー成分全量に対して成分(a)を50重量%より多くする場合には、成分(b)として、メタクリル酸と炭素数1~18の1価の環状飽和アルコールとのエステルである、メタクリル酸アルキルエステルを採用することが好ましい。
前記アルコールの炭素数は、1~18の範囲が好ましく、1~16の範囲がより好ましく、1~14の範囲がさらに好ましく、1~12の範囲が特に好ましい。
本発明における成分(b)の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチルシクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸アダマンチル、などが挙げられる。
【0010】
<共重合体>
本発明における共重合体は、モノマー成分として、少なくとも成分(a)及び成分(b)を共重合させて得られるものであり、成分(a)及び成分(b)を公知の方法で溶液重合することにより製造することができる。
この溶液重合は、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶剤など溶液重合に一般的に使用される有機溶剤や水などの溶剤を用いて行うことが出来るが、中でも、アルコール系溶剤を用いて溶液重合することが好ましい。
本発明における共重合体を製造する際の重合温度は、適宜最適の重合温度を選択すればよいが、好ましくは40℃以上150℃以下であり、より好ましくは50℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは60℃以上90℃以下である。
本発明の共重合体における、成分(a)と成分(b)の重合時の重量配合比率の好適範囲としては、成分(a)/成分(b)が、1/99~95/5の範囲が好ましく、10/90~80/20の範囲がより好ましく、20/80~70/30の範囲がさらに好ましい。
本発明のコーティング材は、含有する共重合体において、モノマー成分全量に対して成分(a)の重量割合を50%より多いものとしても、優れた耐水性を維持するため、従来のコーティング材に比べて顕著に優れた抗菌性能を発揮し得る。この場合、モノマー成分全量に対して成分(a)の重量割合は、70%より少ないことが好ましい。
【0011】
本発明における共重合体を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ系の一般的な重合開始剤や、鉄と硫酸銅、亜鉛と硫酸銅、鉄と過酸化水素、硫酸銅とヨウ化カリウム、硫化水素と塩素、亜ヒ酸と臭素酸塩、過マンガン酸カリウムと硫酸第一鉄、マンガンイオンと三酸化塩素、過酸化水素と過塩素酸などのレドックス系重合開始剤が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における共重合体の製造は、非水系溶液重合により実施することが好ましく、上記重合開始剤の中でも、有機過酸化物やアゾ系重合開始剤が好ましい。
これらの重合開始剤は、本発明における共重合体を製造する際のモノマー成分全量100重量部に対して、0.05~10重量%の範囲で用いることが好ましく、0.2~3重量%の範囲で用いることがより好ましく、重合反応を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
【0012】
本発明における共重合体は、成分(a)と成分(b)を必須成分として共重合させて得られるものであるが、本発明の効果を損なわないものであれば、成分(a)、(b)以外のモノマー成分を含有しても良い。
含有しても良い成分(a)、(b)以外のモノマー成分としては、具体的に、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアクリレート系モノマー、(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ含有モノマー、スチレン、2-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの複素環基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマーなどが挙げられる。
含有しても良い成分(a)、(b)以外のモノマー成分としては、2個以上のエチレン基を有する多官能モノマーやオリゴマーや、反応性官能基モノマーやオリゴマーを添加してもよい。
【0013】
<コーティング材>
本発明におけるコーティング材は、モノマー成分として、少なくとも成分(a)及び成分(b)を共重合させて得られる共重合体を含有するものである。
上述の製造方法により得られた共重合体が溶液として得られた場合は、製造後脱溶剤しても、脱溶剤せずに溶液のまま本発明のコーティング材の製造に使用しても良いが、生産性及びコーティング材製造時のハンドリング性の観点からは、溶液のまま使用することが好ましい。その場合、溶液中の共重合体の含有量は、生産性及びコーティング材製造時のハンドリング性の観点から、溶液の重量に基づいて5~80重量%の範囲が好ましく、10~70重量%の範囲がより好ましく、20~60重量%の範囲がさらに好ましい。
本発明のコーティング材における共重合体の含有量は、5~100重量部の範囲であることが好ましく、そして、抗菌性、帯電防止性、防曇性、透明性、相溶性などの本発明のコーティング材の特性を阻害しない範囲で、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、腐食防止剤、光安定剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料、染料などの粉体、粒子状、箔状物などの従来公知の各種の添加剤を、使用する用途に応じて適宜添加することができる。
本発明のコーティング材は、コーティングする対象物である、例えば、紙、布、不織布、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテートセルロース、トリアセテートセルロース、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチック及び金属等の基材に、ローラー法、刷毛塗り法、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースロール法、スクリーン印刷法、バーコーター法などの通常の塗膜形成方法により塗布し、常温(概略25℃)または熱風乾燥により塗膜を形成する。熱風乾燥においては、通常150℃以下、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは60℃以下で行われる。
【0014】
<用途>
本発明の成分(a)と成分(b)よりなる共重合体を含有するコーティング材は、下記の用途に好適に用いられる。
本発明のコーティング材が抗菌性を発揮する観点での用途として、戸建て住宅や共同住宅等の外装材や建材、信号機、街灯、道路標識などの屋外建造物;化粧材、床材、ラック、タイル、壁紙、ラック、棚、家具、床下収納庫、目地などの室内設備;まな板、調理用品、水切り用品、食器、ごみ箱などのキッチン関連用品;電気カーペット、扇風機、換気扇、電気冷蔵庫、除湿器、加湿器、エアコン、照明器具、テレビ、電気熱水器、ヒーターなどの電化製品;温水便座、便座、ハンドドライヤー、紙巻き器などのトイレ関連用品;医療用機器、白衣、ナースサンダルなどの医療介護関連用品;電卓、ラベルプリンター、パソコン、複写機、各種カード、ボールペン、文具などの事務用品;フィルム、合成皮革、靴バッグ素材、消臭フィルターなどの産業用用品;ペット用トイレ、猫砂、ペット用トレーやマットなどのペット用品;雑誌、書籍、カタログ、パンフレットなどの印刷物;携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末機器、銀行ATM、携帯情報端末(PDA)、複写機、ファクシミリ、ゲーム機、博物館及びデパートなどの施設に設置される案内表示装置、カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機)などの通信関連機器;乾電池、靴、時計、エアーフィルター、スーツケース、ウェットティッシュ、衛生用品、買い物籠などの日用品;衣服、帽子、手袋などの繊維製品;プライマー、接着剤、金属、合金、プラスチック、コンクリート、木材等への塗料、インキ、リソグラフ・スクリーンインキ、紙用塗料、電気/電子関係の塗料及びシーラント、フレキソ印刷インク、インクジェット用インキなどが挙げられる。
また、本発明のコーティング材が防曇性を発揮する観点での用途として、洗面台、風呂用鏡、スーパーのショーウインドウ、暖かいものを食べたり飲んだりする際のメガネ、バイクのヘルメット、カーブミラー/サイドミラー、食品包装、胃カメラのレンズ部分、ビニールハウス、お弁当のふた、テーブルトップ、外装窓、建具・家具、オイルガード、ガラス扉、ガラス棚・ラック、額縁・額装、水槽の蓋、スタジオ、薪ストーブ、姿見などが挙げられる。
さらに、本発明のコーティング材が帯電防止性を発揮する観点での用途として、家具、衣類へのホコリの付着防止や静電気防止、家電、電子機器などのホコリ付着防止や静電気による破損や誤作動防止、車のプラ部分各所、室内内張、エンジンカバー、エアクリボックス内側吸入部分の静電気除け、電子機器搬送ケースや緩衝材の帯電防止、フィルムなどの付着防止、粉末をいれる袋への粉末の付着防止などが挙げられる。
【実施例0015】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0016】
<実施例1>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液15.0重量部、メタクリル酸メチル21.0重量部、エチルアルコール63.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計により測定した粘度が、25℃で、790mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、33.0重量%であった。
得られた重合体の分子量は、数平均分子量23000、重量平均分子量34000であった。
【化2】
【0017】
<実施例2>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液15.0重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル21.0重量部、エチルアルコール63.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計により測定した粘度が、25℃で、165mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、32.4重量%であった。
【化3】
【0018】
<実施例3>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液15.0重量部、メタクリル酸イソデシル21.0重量部、エチルアルコール63.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計により測定した粘度が、25℃で、126mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、32.2重量%であった。
【化4】
【0019】
<実施例4>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級塩の75%水溶液12.0重量部、メタクリル酸メチル21.0重量部、エチルアルコール66.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計により測定した粘度が、25℃で、346mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、34.6重量%であった。
【化5】
【0020】
<比較例1>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライド4級塩の75%水溶液12.0重量部、メタクリル酸メチル21.0重量部、エチルアルコール66.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計により測定した粘度が、25℃で、382mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、33.2重量%であった。
【化6】
【0021】
<比較例2>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液15.0重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル21.0重量部、エチルアルコール63.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計により測定した粘度が、25℃で、33mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、31.2重量%であった。
【化7】
【0022】
<耐水性試験1>
上記実施例1~4及び比較例1、2で得られた共重合体を濾紙に含浸させ、室温(25℃)で7日間乾燥させて塗膜を得た。得られた濾紙重量から、試験開始前の濾紙重量を減じた値を、得られた塗膜の重量(x1)とした。
次に、得られた濾紙上の塗膜を室温(25℃)で水道水に48時間浸漬した後、取り出して、室温(25℃)で24時間乾燥した。得られた濾紙重量から、試験開始前の濾紙の重量を減じた値を、耐水性試験後の塗膜の重量(y1)とした。
水浸漬後の共重合体の重量の残存率(%)を、下記計算式により算出した。
[計算式]
残存率A(%)=(y1)÷(x1)×100
実施例1~4及び比較例1、2の残存率(%)の結果を、下記表1にまとめて示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すとおり、本発明のコーティング材の具体例である実施例1~4は、耐水性試験における残存率Aが85%以上であり、耐水性に優れていることが確認された。
一方、本発明における成分(a)とは異なるモノマー成分を共重合させて得られる共重合体を含有する比較例1は、耐水性試験における残存率Aが40%であり、また、本発明における成分(b)とは異なるモノマー成分を共重合させて得られる共重合体を含有する比較例2は、耐水性試験における残存率Aが2%であり、耐水性が大きく劣ることが明らかとなった。
この試験により、本発明における成分(a)と成分(b)を共重合させて得られる共重合体を含有するコーティング材は、顕著に優れた耐水性を発揮することが明らかとなった。
【0025】
<実施例5>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液26.0重量部、メタクリル酸シクロヘキシル14.4重量部、エチルアルコール59.0重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、242mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、33.8重量%であった。
【化8】
【0026】
<実施例6>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液27.5重量部、メタクリル酸シクロヘキシル13.5重量部、エチルアルコール58.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、307mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、34.2重量%であった。
【0027】
<実施例7>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液26.0重量部、メタクリル酸イソボルニル14.4重量部、エチルアルコール59.0重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、438mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、33.5重量%であった。
【化9】
【0028】
<実施例8>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液30.0重量部、メタクリル酸イソボニル12.0重量部、エチルアルコール47.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、294mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、33.9重量%であった。
【0029】
<実施例9>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液32.5重量部、メタクリル酸イソボルニル10.5重量部、エチルアルコール56.4重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、342mPa・sであり110℃、1時間で加熱した残分は、34.5重量%であった。
【0030】
<実施例10>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液26.0重量部、メタクリル酸ジシクロペンタニル14.4重量部、エチルアルコール59.0重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、380mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、33.0重量%であった。
【化10】
【0031】
<実施例11>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級塩の75%水溶液20.8重量部、メタクリル酸イソボルニル14.4重量部、エチルアルコール64.2重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、43mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、34.1重量%であった。
【化11】
【0032】
<比較例3>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の60%水溶液26.0重量部、アクリル酸シクロヘキシル14.4重量部、エチルアルコール59.0重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、91mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、34.6重量%であった。
【化12】
【0033】
<比較例4>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の75%水溶液26.0重量部、アクリル酸イソボルニル14.4重量部、エチルアルコール59.0重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、72mPa・sであり、110℃、1時間で加熱した残分は、34.2重量%であった。
【化13】
【0034】
<比較例5>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩の75%水溶液26.0重量部、アクリル酸ジシクロペンタニル14.4重量部、エチルアルコール59.0重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、120mPa・sでり、110℃、1時間で加熱した残分は、35.4重量%であった。
【化14】
【0035】
<比較例6>
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドエチルメタクリレートのメチルクロライド4級塩の75%水溶液20.8重量部、メタクリル酸イソボルニル14.4重量部、エチルアルコール64.2重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.6重量部を仕込み、70℃で7時間反応させた。反応終了後、反応容器内を40℃以下に冷却し、目的とする重合体を溶液として得た。
得られた重合体溶液は、B型粘度計より測定した粘度が、25℃で、200mPa・sでり、110℃、1時間で加熱した残分は、34.5重量%であった。
【化15】
【0036】
<耐水性試験2>
実施例5~11及び比較例3~6で得られた共重合体を用いて、上記「耐水性試験1」と同様にして、耐水性試験を実施し、残存率A(%)を算出した。
実施例5~11及び比較例3~6の残存率A(%)の結果を、下記表2、3にまとめて示す。
【0037】
【表2】
【表3】
【0038】
表2に示すとおり、本発明のコーティング材の具体例である実施例5~11は、耐水性試験における残存率Aが73%以上であり、耐水性に優れていることが確認された。
実施例5~11は、本発明における成分(a)のモノマー成分全量に対する重量割合が、50%より多い具体例であるが、何れも優れた耐水性を維持することが明らかとなった。これらの共重合体を含有するコーティング材は、成分(a)の含有量が多いことから、成分(a)の化学構造に由来する抗菌性に優れた性能を発揮するものである。
一方、本発明における成分(b)とは異なるモノマー成分を共重合させて得られる共重合体を含有する比較例3~5や、本発明における成分(a)とは異なるモノマー成分を共重合させて得られる共重合体を含有する比較例6は、耐水性が大きく劣ることが明らかとなった。
【0039】
<耐水性試験3>
実施例1~4、7、10、11及び比較例3~5で得られた共重合体を用いて、50℃の温水での耐水性試験を行った。
共重合体を濾紙に含浸させ、室温(25℃)で7日間乾燥させて塗膜を得た。得られた濾紙重量から、試験開始前の濾紙重量を減じた値を、得られた塗膜の重量(x2)とした。
次に、得られた濾紙上の塗膜を50℃の加温した水道水に浸漬し50℃の恒温機内に48時間静置後取り出して、室温(25℃)で24時間乾燥した。得られた濾紙重量から、試験開始前の濾紙の重量を減じた値を、耐水性試験後の塗膜の重量(y2)とした。
水浸漬後の共重合体の重量の残存率B(%)を、下記計算式により算出した。
[計算式]
残存率B(%)=(y2)÷(x2)×100
実施例1~4、7、10、11及び比較例3~5の残存率B(%)の結果を、下記表4、5にまとめて示す。
【0040】
【表4】
【表5】
【0041】
表4に示すとおり、本発明のコーティング材の具体例である実施例1~4、7、10、11は、耐水性試験における残存率Bが60%以上であり、温水(50℃)に対しても耐水性に優れていることが確認された。
特に、実施例7は、本発明における成分(a)のモノマー成分全量に対する重量割合が、50%より多い具体例であるが、温水(50℃)に対しても優れた耐水性を維持することが明らかとなった。これらの共重合体を含有するコーティング材は、成分(a)の含有量が多いことから、成分(a)の化学構造に由来する抗菌性に優れた性能を発揮するものである。
一方、本発明における成分(b)とは異なるモノマー成分を共重合させて得られる共重合体を含有する比較例3~5は、温水に対する耐水性が極めて劣ることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のコーティング材は、4級アンモニウム塩含有のモノマーとして、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルハライド4級塩を採用することにより、耐水性を向上させるほか、成分(a)の化学構造に由来する抗菌性により、抗菌性、防曇性及び帯電防止性も付与できるので非常に有用である。
加えて、本発明のコーティング材は、モノマー成分全量に対して成分(a)の重量割合を50%より多いものとしても、優れた耐水性を維持するため、従来のコーティング材に比べて顕著に優れた抗菌性能を発揮し得るものである
本発明のコーティング材は、屋外建造物、室内設備、キッチン関連用品、電化製品、トイレ関連用品、医療介護関連用品、事務用品、産業用用品、ペット用品、印刷物、通信関連機器、日用品、繊維製品、インクジェット用インキ等の用途に適用でき有用である。