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特開2024-38974回転伝達装置、操舵装置、及び、輸送用機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038974
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】回転伝達装置、操舵装置、及び、輸送用機器
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20240313BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B62D1/16
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036368
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2022143058
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光司
【テーマコード(参考)】
3D030
3D333
【Fターム(参考)】
3D030DC35
3D333CB02
3D333CB29
3D333CB45
3D333CD04
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できるようにする。
【解決手段】同軸状に配置され一方の部材が固定、他方の部材が一方の部材に対して軸回り相対回転可能に支持される内方部材30及び外方部材21と、一方の部材及び他方の部材に対して軸回り回転可能に支持される中間部材40とを備え、一方の部材に設けられた第1係止部35と、他方の部材に設けられた第2係止部28と、中間部材40に設けられ第1係止部35に係止する中間第1係止部42及び第2係止部28に係止する中間第2係止部43とを備え、他方の部材が一方の部材に対して軸回り回転した際に、第2係止部28と中間第2係止部43との係止、及び、第1係止部35と中間第1係止部42との係止により、他方の部材の軸回り回転が規制される回転伝達装置とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸状に配置され一方の部材が固定、他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り相対回転可能に支持される内方部材(30)及び外方部材(21)と、
前記一方の部材及び前記他方の部材に対して軸回り回転可能に支持される中間部材(40)と、を備え、
前記一方の部材に設けられた第1係止部(35)と、前記他方の部材に設けられた第2係止部(28)と、前記中間部材(40)に設けられ前記第1係止部(35)に係止する中間第1係止部(42)及び前記第2係止部(28)に係止する中間第2係止部(43)と、を備え、
前記他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り回転した際に、前記第2係止部(28)と前記中間第2係止部(43)との係止、及び、前記第1係止部(35)と前記中間第1係止部(42)との係止により、前記他方の部材の軸回り回転が規制される回転伝達装置。
【請求項2】
前記外方部材(30)及び前記中間部材(40)は筒状を成し、前記一方の部材は前記外方部材(21)であり、前記他方の部材は前記内方部材(30)であり、
前記第2係止部(28)は前記外方部材(21)の内周に、前記中間第2係止部(43)は前記中間部材(40)の外周に、前記第1係止部(35)は前記内方部材(30)の外周に、前記中間第1係止部(42)は前記中間部材(40)の内周にそれぞれ設けられている請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記第2係止部(28)、前記中間第2係止部(43)、前記第1係止部(35)及び前記中間第1係止部(42)は、互いに軸方向位置が重複している請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
前記第1係止部(35)、前記第2係止部(28)、前記中間第1係止部(42)及び前記中間第2係止部(43)の少なくとも一つは、対応する前記内方部材(30)、前記外方部材(21)又は前記中間部材(40)に着脱自在である請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項5】
前記内方部材(30)と前記中間部材(40)との間、又は、前記中間部材(40)と前記外方部材(21)との間に、互いの部材が係合して軸回り一体に回転する状態と、前記係合が解除されて互いの部材が相対回転する状態とに切り替える係合手段(50)を備えた請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項6】
前記内方部材(30)は、互いに軸回り相対回転可能な第1部材(32a)及び第2部材(32b)を備えて、前記第1部材(32a)に第3係止部(61)を、前記第2部材(32b)に中間第3係止部(62)を備え、
前記第3係止部(61)と前記中間第3係止部(62)とが係止した状態で前記第1部材(32a)及び前記第2部材(32b)は一体に軸回り回転し、前記第3係止部(61)と前記中間第3係止部(62)とが非係止の状態で前記第1部材(32a)及び前記第2部材(32b)は軸回り相対回転する請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフト(4)の軸回り回転が伝達され、前記回転伝達装置を前記ステアリングシャフト(4)の軸心と同一軸心上、又は、前記ステアリングシャフト(4)の軸心とは異なる軸心上に設けた操舵装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフト(4)の軸回り回転が伝達され、
前記ステアリングシャフト(4)の軸回り回転に基づいて転舵部材(3,3)の向きを変化させる転舵アクチュエータ(2)を備え、前記ステアリングホイール(4)に操舵反力を付与する反力モータ(6)を、前記ステアリングシャフト(4)と前記内方部材(30)との間に備えている操舵装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一つに記載の回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフト(4)の軸回り回転が伝達され、前記ステアリングシャフト(4)の軸回り回転
に基づいて転舵部材(3,3)の向きを変化させる転舵アクチュエータ(2)を備えた操舵装置を搭載した輸送用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転伝達装置、その回転伝達装置を用いた操舵装置、及び、その操舵装置を搭載した輸送用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者によるステアリングホイールの回転操作に応じて車両の転舵輪(一般には前輪)の向きを変化させる車両用の操舵装置として、ステアバイワイヤ方式のものが知られている。ステアバイワイヤ方式の操舵装置は、ステアリングホイールの操作量を検知する操舵センサと、ステアリングホイールに対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータとを有し、その転舵アクチュエータが、操舵センサで検知されるステアリングホイールの操作量に応じて作動し、左右一対の転舵輪の向きを変化させる。
【0003】
ステアバイワイヤ方式の操舵装置においては、運転者によって回転操作されるステアリングホイールと、左右一対の転舵輪の向きを変化させる転舵アクチュエータとが機械的に切り離されている。そのため、運転者が、車両停車中にステアリングホイールを操作して転舵輪の向きがその移動限界(ストロークエンド)に到達したときにも、運転者は、さらにステアリングホイールを回転操作することが可能である。そのため、転舵輪の向きがストロークエンドに到達しているにもかかわらず、運転者は、転舵輪の向きがストロークエンドに到達していることに気付かないという問題が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1の操舵装置では、ステアリングホイールに連結されているステアリングシャフトと、ステアリングシャフトを回転可能に収容するステアリングコラムとの間に、ステアリングホイールの操舵角が閾値角度を超えないように機械的に規制する規制機構を備えている。規制機構は、ステアリングシャフトに設けられている第1係止部と、ステアリングコラム内に設けられている第2係止部とを備え、第1係止部と第2係止部とが当接することで、それ以上のステアリングシャフトの軸回り回転を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-172202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、ステアリングシャフト側の第1係止部とステアリングコラム側の第2係止部とでステアリングシャフトの軸回り回転を規制すると、ステアリングシャフトの軸回り1回転(360度)を超える範囲で、その回転を規制することができないという問題がある。すなわち、ステアリングの中立位置から最大で右側へ180度、左側へ180度の範囲内でしか、その回転を規制できない。
【0007】
そこで、この発明の課題は、回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、同軸状に配置され一方の部材が固定、他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り相対回転可能に支持される内方部材及び外方部材と、前記一方の部材及び前記他方の部材に対して軸回り回転可能に支持される中間部材と、を備え、前記一方の部材に設けられた第1係止部と、前記他方の部材に設けられた第2係
止部と、前記中間部材に設けられ前記第1係止部に係止する中間第1係止部及び前記第2係止部に係止する中間第2係止部とを備え、前記他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り回転した際に、前記第2係止部と前記中間第2係止部との係止、及び、前記第1係止部と前記中間第1係止部との係止により、前記他方の部材の軸回り回転が規制される回転伝達装置を採用した(構成1)。
【0009】
前記外方部材及び前記中間部材は筒状を成し、前記一方の部材は前記外方部材であり、前記他方の部材は前記内方部材であり、前記第2係止部は前記外方部材の内周に、前記中間第2係止部は前記中間部材の外周に、前記第1係止部は前記内方部材の外周に、前記中間第1係止部は前記中間部材の内周にそれぞれ設けられている構成を採用できる(構成2)。
【0010】
また、前記第2係止部、前記中間第2係止部、前記第1係止部及び前記中間第1係止部は、互いに軸方向位置が重複している構成を採用できる(構成3)。
【0011】
前記第1係止部、前記第2係止部、前記中間第1係止部及び前記中間第2係止部の少なくとも一つは、対応する前記内方部材、前記外方部材又は前記中間部材に着脱自在である構成を採用できる(構成4)。
【0012】
また、前記内方部材と前記中間部材との間、又は、前記中間部材と前記外方部材との間に、互いの部材が係合して軸回り一体に回転する状態と、前記係合が解除されて互いの部材が相対回転する状態とに切り替える係合手段を備えた構成を採用できる(構成5)。
【0013】
また、前記内方部材は、互いに軸回り相対回転可能な第1部材及び第2部材を備えて、前記第1部材に第3係止部を、前記第2部材に中間第3係止部を備え、前記第3係止部と前記中間第3係止部とが係止した状態で前記第1部材及び前記第2部材は一体に軸回り回転し、前記第3係止部と前記中間第3係止部とが非係止の状態で前記第1部材及び前記第2部材は軸回り相対回転する構成を採用できる(構成6)。
【0014】
前記構成1に対して前記構成2~6の中から選択される単一の要素を付加した態様を採用でき、また、前記構成1に対して前記構成2~6の中から選択される任意の複数の要素を付加した態様を採用できる。
【0015】
これらの各態様からなる回転伝達装置を用い、その回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフトの軸回り回転が伝達され、前記回転伝達装置を前記ステアリングシャフトの軸心と同一軸心上、又は、前記ステアリングシャフトの軸心とは異なる軸心上に設けた操舵装置を採用できる。
【0016】
また、これらの各態様からなる回転伝達装置を用い、その回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフトの軸回り回転が伝達され、前記ステアリングシャフトの軸回り回転に基づいて転舵部材の向きを変化させる転舵アクチュエータを備え、前記ステアリングホイールに操舵反力を付与する反力モータを、前記ステアリングシャフトと前記内方部材との間に備えている操舵装置を採用できる。
【0017】
さらに、これらの各態様からなる回転伝達装置を用い、その回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフトの軸回り回転が伝達され、前記ステアリングシャフトの軸回り回転に基づいて転舵部材の向きを変化させる転舵アクチュエータを備えた操舵装置を搭載した輸送用機器を採用できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明のステアバイワイヤ方式の操舵装置を模式的に示す図
図2】第1の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図3A図2のIII-III線に沿った断面図
図3B図3Aの内方部材が反時計回りに回転した状態を示す断面図
図3C図3Bの中間部材が反時計回りに回転した状態を示す断面図
図4】第2の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図5図4の要部分解斜視図
図6図4のVI-VI線に沿った断面図
図7】第3の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図8図7のVIII-VIII線に沿った断面図
図9図7の要部分解斜視図
図10】第4の実施形態の回転伝達装置の断面図
図11】第5の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図12図11のXII-XII線に沿った断面図
図13A図12のキー溝にキーを挿入した状態を示す断面図
図13B図13Aの中間部材が反時計回りに回転した状態を示す断面図
図14】第6の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図15図14における内方部材の分解斜視図
図16図14のXVI-XVI線に沿った断面図
図17A図14のXVII-XVII線に沿った断面図
図17B図17Aの内方部材が反時計回りに回転した状態を示す断面図
図17C図17Bの内方部材がさらに反時計回りに回転した状態を示す断面図
図17D図17Cの内方部材及び中間部材がさらに反時計回りに回転した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、この発明に係るステアバイワイヤ方式の操舵装置の実施形態を示す。この操舵装置は、運転者によるステアリングホイール1の操作量を電気信号に変換し、その電気信号に基づいて転舵アクチュエータ2を制御することで、転舵部材3の向きを変化させるステアバイワイヤ方式のものである。
【0021】
操舵装置は、図1に示すように、運転者により操舵されるステアリングホイール1と、ステアリングホイール1に連結されたステアリングシャフト4と、ステアリングホイール1の操作量を検知する操舵センサ5と、ステアリングホイール1に操舵反力を与える反力モータ6と、ステアリングホイール1に対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータ2と、制御部8とを有する。また、ステアリングシャフト4の回転は、反力モータ6の反対側に設けた回転伝達装置20に伝達されるようになっている。
【0022】
ステアリングシャフト4は、ステアリングホイール1を操舵したときに、ステアリングホイール1と一体に軸回りに回転する。操舵センサ5は、ステアリングシャフト4に取り付けられている。操舵センサ5としては、例えば、ステアリングホイール1の操舵角を検知する操舵角センサ、運転者によってステアリングホイール1に入力される操舵トルクを検知する操舵トルクセンサなどが挙げられる。
【0023】
ステアリングシャフト4には反力モータ6が取り付けられている。反力モータ6は、通電により回転トルクを発生する電動モータである。反力モータ6は、ステアリングシャフト4の端部に連結されている。反力モータ6は、回転トルクをステアリングシャフト4に入力することで、そのステアリングシャフト4を介してステアリングホイール1に操舵反力を付与する。
【0024】
転舵アクチュエータ2は、転舵軸10と、転舵軸ハウジング11と、転舵軸10を車両の左右方向に移動させる転舵モータ12と、転舵軸10の位置を検知する転舵センサ13とを有する。転舵軸10は、車両の左右方向に移動可能に転舵軸ハウジング11で支持されている。転舵軸ハウジング11は、転舵軸10の左右両端が転舵軸ハウジング11から突出した状態となるように転舵軸10の中央部を収容している。
【0025】
転舵モータ12および転舵センサ13は、転舵軸ハウジング11に取り付けられている。転舵モータ12と転舵軸10の間には、転舵モータ12が出力する回転を転舵軸10の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)が組み込まれている。転舵軸10の左右両端は、タイロッド14を介して左右一対の転舵部材3(この実施形態では転舵部材3としてタイヤホイールを採用しているので、以下、これを転舵輪3と称する)に連結され、転舵軸10が軸方向に移動するとこれに連動して左右一対の転舵輪3の向きが変化するようになっている。
【0026】
(第1の実施形態)
図2図3Cは、第1の実施形態に係る回転伝達装置20の要部を示している。図2に示すように、反力モータ6は、モータケース6aと、モータケース6aからステアリングホイール1(図1参照)の側とは反対側に突出するモータシャフト31とを有する。以下、モータケース6aに対してステアリングホイール1の側を軸方向一端、その反対側を軸方向他端と称する。モータシャフト31は、モータケース6aの内部に組み込まれた図示しない転がり軸受によって、軸回り回転可能に支持されている。また、モータシャフト31は、ステアリングホイール1およびステアリングシャフト4と一体に回転するように、そのステアリングシャフト4に連結されている。モータケース6aは、それ自体が回転しないように車体(図示せず)に固定されている。
【0027】
図1に示すように、反力モータ6、転舵モータ12は、制御部8で制御される。制御部8の入力側には、外部センサ9、操舵センサ5、転舵センサ13が電気的に接続されている。外部センサ9は、車両の走行速度を検知する車速センサ等である。制御部8の出力側には、反力モータ6、転舵アクチュエータ2が電気的に接続されている。
【0028】
制御部8は、操舵センサ5で検知されるステアリングホイール1の操作量と、外部センサ9で検知される車両の走行状況(車速等)とに応じて転舵モータ12を作動させ、左右一対の転舵輪3の向きを変化させる制御を行なう。また、このとき、制御部8は、ステアリングホイール1の操作量と車両の走行状況とに応じた大きさの操舵反力が発生するように反力モータ6を作動させる制御を行なう。
【0029】
モータシャフト31は、モータケース6aの軸方向他端側に設けられた回転伝達装置20に接続されている。
【0030】
回転伝達装置20は、同軸状に配置される内方部材30と外方部材21を備えている。外方部材21は、モータケース6aに固定されるケースとしている。ケースに設けられた穴23aにボルト22が挿通され、そのボルト22がモータケース6aに設けられた雌ネジ穴(図示せず)にねじ込まれることで、ケースがモータケース6aに固定されている。これにより、外方部材21(請求項でいう一方の部材に相当)は固定である。また、内方部材30(請求項でいう他方の部材に相当)は、軸受24を介して外方部材21に対して軸回り回転自在に支持されている。
【0031】
外方部材21は、図2に示すように、円筒状を成す筒状部21aと、その筒状部21aの軸方向他端側を閉じる端壁部21bとを備えている。ボルト22用の穴23aは、筒状部21aの軸方向一端において、外径方向へ突出する外縁突出部23に設けられている。外縁突出部23及び穴23aは、周方向に沿って複数設けられている。軸受24の外輪は、端壁部21bに設けられた嵌合凹部27に嵌合固定されている。
【0032】
内方部材30は、図2に示すように、モータシャフト31とそのモータシャフト31に取り付けられる補助内方部材32とで構成される。補助内方部材32は、外方部材21と同じく円筒状を成す筒状部33と、その筒状部33の軸方向他端側を閉じる端壁部34とを備えている。筒状部33の内部空間は軸方向一端側に開口しており、その内部空間にモータシャフト31が挿入されて、モータシャフト31と補助内方部材32とは軸回り一体に回転する。実施形態では、モータシャフト31と補助内方部材32とは、スプライン39a,39bによって結合されている。なお、モータシャフト31と補助内方部材32との接続構造はスプライン結合には限定されず、それ以外にも、例えば、セレーション結合、圧入等による接続構造としてもよい。また、モータシャフト31と補助内方部材32とを一体に成型された部材で構成して、それを内方部材30としてもよい。
【0033】
外方部材21と内方部材30との間には、その外方部材21と内方部材30に対してそれぞれ軸回り回転可能に支持される中間部材40が設けられている。中間部材40は、環状部材41で構成されて、内方部材30(補助内方部材32)に対して軸受25,26を介して軸回り回転可能に支持されている。軸受25,26の外輪は、それぞれに中間部材40の内周に設けられた嵌合凹部44,45に嵌合固定されている。また、軸受25,26の内輪は、それぞれに補助内方部材32の外周に設けられた嵌合凹部37,38に嵌合固定されている。なお、前述の軸受24の内輪は、補助内方部材32の外周に設けられた嵌合凹部36に嵌合固定されている。また、外方部材21、内方部材30及び中間部材40の軸心(回転中心)は一致している。
【0034】
内方部材30(補助内方部材32)の外面には、図3Aに示すように、外径側へ向かって突出する第1係止部35が設けられている。第1係止部35は、周方向1箇所に設けられ、図3Aに示す軸直交断面において、外径側へ向かって徐々に幅(周方向に対する幅)が拡がる形状となっている。また、第1係止部35の両側側面(周方向へ向く面)35a,35bは、フラット面となっている。中間部材40の内面には、第1係止部35に係止する中間第1係止部42が設けられている。中間第1係止部42は、周方向1箇所に設けられ、図3Aに示す軸直交断面において、その両側側面42a,42bは、互いに平行なフラット面となっている。
【0035】
外方部材21の内面には、図3Aに示すように、内径側へ向かって突出する第2係止部28が設けられている。第2係止部28は、周方向1箇所に設けられ、図3Aに示す軸直交断面において、その両側側面28a,28bは、互いに平行なフラット面となっている。中間部材40の外面には、第2係止部28に係止する中間第2係止部43が設けられている。中間第2係止部43は、周方向1箇所に設けられ、図3Aに示す軸直交断面において、外径側へ向かって徐々に幅が拡がる形状となっている。
【0036】
ステアリングシャフト4の回転によりモータシャフト31が軸回り一方向へ回転すると、固定の外方部材21に対して内方部材30が軸回り回転する。ここで、内方部材30は、図3Aに示す状態(中立位置)から図3Bに示す状態へと矢印Aの方向へ反時計回りに回転する。やがて、図3Bに示すように、第1係止部35と中間第1係止部42が係止する。その後は、中間部材40と内方部材30とが一体となって、図3Bに示す状態から図3Cに示す状態へと矢印Bの方向へ反時計回りに回転する。そして、図3Cに示すように、中間第2係止部43と第2係止部28が係止する。中間第2係止部43と第2係止部28が係止すると、中間部材40と内方部材30とはそれ以上軸回り回転できない。このため、ステアリングシャフト4はそれ以上回転できない状態となる。この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の一方の終点(一方のストロークエンド/例えば、右操舵のストロークエンド)に相当する。
【0037】
第1係止部35と中間第1係止部42との係止は、フラットな側面35a,42a同士の面接触であるので、内方部材30から中間部材40への力の伝達の際の互いの接触圧が低減されている。また、中間第2係止部43と第2係止部28との係止も、フラットな側面43a,28a同士の面接触であるので、内方部材30から中間部材40への力の伝達の際の互いの接触圧が低減されている。
【0038】
また、図3Aに示す中立位置から反対側へ、すなわち、モータシャフト31が軸回り他方向へ回転する際も同様に、内方部材30の第1係止部35と中間部材40の中間第1係止部42が係止し、その後、中間部材40と内方部材30とが一体となって、中間第2係止部43と第2係止部28が係止するまで回転する。中間第2係止部43と第2係止部28が当接すると、中間部材40と内方部材30とはそれ以上軸回り回転できないので、この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の他方の終点(他方のストロークエンド/例えば、左操舵のストロークエンド)に相当する。
【0039】
第1係止部35と中間第1係止部42との係止が、フラットな側面35b,42b同士の面接触であること、中間第2係止部43と第2係止部28との係止も、フラットな側面43b,28b同士の面接触であることは同様である。なお、部材の耐久性等が確保されるならば、第1係止部35と中間第1係止部42との係止、及び、中間第2係止部43と第2係止部28との係止に関し、側面35b,42b、及び、側面43b,28bをそれぞれ円筒面又は球面等とすることで、両者を線接触や点接触としてもよい。
【0040】
このように、内方部材30の第1係止部35と中間部材40の中間第1係止部42との係止、及び、中間部材40の中間第2係止部43と外方部材21の第2係止部28との係止により、ステアリングシャフト4の軸回り回転が規制されるようにしたので、ステアリングシャフト4の軸回り1回転(360度)を超える広い範囲で、回転を規制する位置を設定できる。なお、図3A図3Cの例では、中立位置から第1係止部35(内輪突起)が中間第1係止部42(中間輪内径突起)に当接するまでのステアリング回転角が150°、さらに、中間第2係止部43(中間輪外径突起)が第2係止部28(ケース突起)に当接するまでのステアリング回転角が160°となるので、トータルで310°の軸回り回転が可能となる。また、中立位置から反転方向も同様の作動をするので、中立位置を中心として±310°のステアリング回転が可能である。
【0041】
ここで、中間部材40を筒状部材とし、その筒状部材を内方部材30と外方部材21の間に同軸心に配置したことから、ストッパ機能を発揮する回転伝達装置20をコンパクトにすることができる。すなわち、第2係止部28は外方部材21の内周に、中間第2係止部43は中間部材40の外周に、第1係止部35は内方部材30の外周に、中間第1係止部42は中間部材40の内周にそれぞれ設けられている構成となり、装置が軸方向に対して大型化することを抑制できる。
【0042】
また、この実施形態のように、第2係止部28、中間第2係止部43、第1係止部35及び中間第1係止部42は、互いに軸方向位置が重複している構成(図1参照)とすれば、装置のさらなるコンパクト化が可能である。
【0043】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態を図4図6に示す。装置の基本構成は第1の実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、その差異点を中心に説明する(後述の第3、第4、第5の実施形態においても同様)。
【0044】
第2の実施形態では、図4及び図5に示すように、内方部材30の補助内方部材32を、複数の板状部材32cと、それを軸方向両側から挟む複数の環状体32d,32eの集合で構成している。環状体32d、複数の板状部材32c(実施形態では10枚)、環状体32eの軸心には穴が形成されており、その穴の内面にはスプラインが形成されている。それらのスプラインの方位を位置合わせした状態で、外周にスプラインが形成されたモータシャフト31が挿通されることで、両者が一体に回転する内方部材30を構成している。第1係止部35の形状は、前述の実施形態と同様である。また、モータシャフト31と補助内方部材32との結合構造もスプラインには限定されず、他の構造を採用してもよい。
【0045】
また、中間部材40は、図4及び図5に示すように、複数の板状部材41cと、それを軸方向両側から挟む複数の環状体41d,41eの集合で構成している。環状体41d、複数の板状部材41c(実施形態では10枚)、環状体41eの軸心には穴が形成されており、その穴内の空間に内方部材30が入り込むようになっている。中間部材40と内方部材30とを軸回り回転自在に支持ずる軸受25,26の構成は、前述の実施形態と同様
である。また、中間第1係止部42及び中間第2係止部43の形状も、前述の実施形態と同様である。さらに、環状体41d、複数の板状部材41c、環状体41eは、軸方向のボルト46で一体化されている。環状体41d,41eにはボルト46用の挿通穴46aが、板状部材41cにはボルト46用の挿通穴46bが形成されている。
【0046】
このように、内方部材30の補助内方部材32を、複数の板状部材32c(インナープレート)と、それを軸方向両側から挟む複数の環状体32d,32eで構成し、さらに、中間部材40を複数の板状部材41c(中間プレート)と、それを軸方向両側から挟む環状体41d,41eで構成したことで、装置に負荷されるトルクに応じて、第2係止部28、中間第2係止部43、第1係止部35及び中間第1係止部42の軸方向幅を容易に調整できるようになる。例えば、小型車両等において、ステアリング装置に負荷されるトルクが小さい場合等は、板状部材32c(インナープレート)及び板状部材41c(中間プレート)の枚数を減少させ、外方部材21(ケース)を軸方向長さが短い薄型品に変更することで、装置のコンパクト化が可能である。この場合、プレートの枚数変更とケースの仕様変更等によって容易に対応できる。
【0047】
(第3、第4の実施形態)
この発明の第3の実施形態を図7図9に、第4の実施形態を図10に示す。この実施形態は、中間部材40を、円筒状を成す環状部材41と、その環状部材41に着脱自在の中間第1係止部42及び中間第2係止部43で構成したものである。図8及び図9に示すように、中間第1係止部42には雌ネジ穴42dが形成されている。ボルト42eを、環状部材41の穴42cに挿通して雌ネジ穴42dにねじ込むことで、環状部材41と中間第1係止部42とが一体化する。また、中間部材40には、雌ネジ穴43dが形成されている。ボルト43eを、中間第2係止部43の穴43cに挿通して雌ネジ穴43dにねじ込むことで、環状部材41と中間第2係止部43とが一体化する。
【0048】
このように、中間第1係止部42及び中間第2係止部43を着脱自在とすることで、中間部材40の本体である環状部材41は共通部品として、係止部の形状、特に係止部の周方向長さのみを変更することで、ステアリング回転角の変更が可能となる。例えば、図10に示す第4の実施形態のように、周方向幅の大きい係止部を採用することで、ステアリング回転角を縮小できる。
【0049】
図7図9の例では、中間部材40の本体である環状部材41に対して、中間第1係止部42及び中間第2係止部43を着脱自在としたが、これ以外にも、例えば、内方部材30の補助内方部材32(筒状部33)に対して、第1係止部35を着脱自在にする構成、あるいは、外方部材21に対して、第2係止部28を着脱自在とする構成を採用してもよい。これらの第1係止部35、中間第1係止部42、中間第2係止部43、第2係止部28のそれぞれにおいて複数の形状を用意しておき、それらを選択的に組合せることで、ステアリング回転角の設定のバリエーションを広げることができる。
【0050】
(第5の実施形態)
この発明の第5の実施形態を図11図13Bに示す。この第5の実施形態では、第1の実施形態を基本としつつ、中間部材40と内方部材30との間に、係合手段50を設けたものである。係合手段50は、中間部材40と内方部材30とが係合して両者が軸回り一体に回転する状態と、中間部材40と内方部材30とに係合が解除されて両者が互いに相対回転する状態とに切り替えることができる。
【0051】
この実施形態では、図11及び図12に示すように、係合手段50として、中間部材40と内方部材30のそれぞれにキー溝51,52を設け、その対のキー溝51,52同士を対向させた状態で、対のキー溝51,52内にキー53を差し入れる構成としている。
対のキー溝51,52内にキー53を差し入れれば、中間部材40と内方部材30とが係合し、対のキー溝51,52内からキー53を抜き取れば、中間部材40と内方部材30との係合が解除する。
【0052】
中間部材40と内方部材30との係合が解除していれば(キー溝51,52からキー53が抜き取られていれば)、第1の実施形態と同様に、ステアリングホイール1の広い操舵範囲を確保できる。これに対して、例えば、仮にステアリングホイール1の操舵範囲を狭く設定する車両の場合は、図13Aに示すように、係合手段50によって互いの部材を係合することで(キー溝51,52にキー53を挿入することで)、中間部材40と内方部材30とが一体となって回転する。このため、ステアリングホイール1の操舵範囲を、図13Aに示す中立状態から図13Bに示す操舵範囲の一方の終点(一方のストロークエンド)に至るまで、また、図示していないが、中立状態から反対方向へも同じ回転角で他方の終点(他方のストロークエンド)に至るまでに設定できる。ここでは、中間部材40の中間第2係止部43が、外方部材21の第2係止部28に当接するまでの回転角を、中立状態を基準に左右に±160°に設定している。したがって、この構成によれば、主要部品を共用したまま、ステアリングホイール1に許容される回転角を、複数種類選択することが可能となる。
【0053】
なお、ここでは、内方部材30と中間部材40との間に係合手段50を設けているが、これに代えて、中間部材40と外方部材21との間に、同様な構成からなる係合手段50を設けてもよい。また、係合手段50の構成は、この実施形態のようなキー溝51,52及びキー53からなる構成には限定されず、例えば、ビスやピンにより、内方部材30と中間部材40を係合及び係合解除する、又は、中間部材40と外方部材21を係合及び係合解除するものであってもよい。
【0054】
(第6の実施形態)
この発明の第6の実施形態を図14図17Dに示す。この第6の実施形態では、第1の実施形態を基本としつつ、補助内方部材32を別々に成形された二つの部材を組み合わせて構成したものである。すなわち、内方部材30は、モータシャフト31とそのモータシャフト31に取り付けられる補助内方部材32とで構成されており、さらに、補助内方部材32は、軸方向一端側の第1部材32aと軸方向他端側の第2部材32bとで構成されている。
【0055】
図14及び図15に示すように、第1部材32a及び第2部材32bは別々に成形された部材であり、両者が互いに軸回り相対回転可能に接続される。第1部材32aは円筒状を成す部材で構成され、その内部空間にモータシャフト31が挿入される。前述の実施形態と同様に、モータシャフト31と第1部材32aとはスプライン39a,39bによって結合されている。第2部材32bは、第1部材32aに近い側が大径で、第1部材32aから遠ざかるにつれて階段状に縮径する部材で構成されている。
【0056】
第1部材32aは軸受26を介して中間部材40に対して軸回り回転可能に支持され、第2部材32bは軸受25を介して中間部材40に対して軸回り回転可能に支持されている。また、第1部材32aと第2部材32bとは、互いの対向面同士が摺動しながら、又は、微小な隙間をもって対面しながら軸回り相対回転可能である。なお、第1部材32aと第2部材32bとの間にスラスト軸受等の軸受を配置してもよい。
【0057】
図15に示すように、その第1部材32a及び第2部材32bの対向する端面間において、第1部材32aに第3係止部61が設けられ、第2部材32bに中間第3係止部62が設けられている。
【0058】
第3係止部61は、第1部材32aの端面に形成されており、第2部材32b側へ向かって軸方向へ突出する突起で構成されている。この実施形態では、第3係止部61として、外径側へ向かうにつれて徐々に幅が拡がる2つの側面61a,61b(周方向へ向く面)を持つ突起を採用している。2つの側面61a,61bは、内方部材30の軸心で交差する。中間第3係止部62は、第2部材32bの端面に形成されており、第1部材32a側へ向かって軸方向へ突出する突起で構成されている。
【0059】
この実施形態では、中間第3係止部62として、外径側へ向かって平行に伸びる2つの側面62a,62b(周方向へ向く面)を持つ突起を採用している。中間第3係止部62を構成する突起は外径方向にも突出しており、この外径方向へ突出した部分は、第1の実施形態と同様の第1係止部35を構成している。中間第3係止部62の2つの側面62a,62bと、第1係止部35の2つの側面35a,35bは、それぞれ互いに面一なフラット面となっている。これにより、連続する1つの突起により、第1係止部35と中間第3係止部62の2つの係止部を構成している。
【0060】
第1部材32aの端面と第2部材32bの端面を軸方向に対向させた状態で、第3係止部61と中間第3係止部62との軸回り方向への位置関係により、第3係止部61と中間第3係止部62が係止した状態であれば、モータシャフト31からの回転の入力によって、第1部材32a及び第2部材32bは一体に軸回り回転する。また、第3係止部61と中間第3係止部62とが非係止の状態であれば、モータシャフト31からの回転の入力によって、第1部材32a及び第2部材32bは軸回り相対回転する状態である。
【0061】
ステアリングシャフト4の回転によりモータシャフト31が軸回り一方向へ回転すると、回転が停止している状態の第2部材32bに対して、第1部材32aが軸回り回転する。ここで、第1部材32aは、図17Aに示す状態(中立位置)から反時計回りに回転する。やがて、図17Bに示すように、第3係止部61の側面61bと中間第3係止部62の側面62bが係止する(実施形態では、図17Aから図17Bまで140°回転)。その後は、第1部材32aと第2部材32bとが一体となって、図17Bに示す状態から図17Cに示す状態へと矢印の方向へ反時計回りに回転する(実施形態では、図17Bから図17Cまで150°回転)。そして、図17Cに示すように、第1係止部35の側面35aと中間第1係止部42の側面42aが係止する。
【0062】
第1係止部35と中間第1係止部42とが係止した後の動きは、第1の実施形態と同様である。すなわち、中間部材40と内方部材30(第1部材32aと第2部材32b)とが一体となって、図17Cに示す状態から図17Dに示す状態へと矢印の方向へ反時計回りに回転する(実施形態では、図17Cから図17Dまで160°回転)。そして、図17Dに示すように、中間第2係止部43の側面43aと第2係止部28の側面28aが係止する。中間第2係止部43と第2係止部28が係止すると、中間部材40と内方部材30とはそれ以上軸回り回転できない。このため、ステアリングシャフト4はそれ以上回転できない状態となる。この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の一方の終点(一方のストロークエンド/例えば、右操舵のストロークエンド)に相当する。
【0063】
また、図示していないが、中立状態から反対方向へも内方部材30(第1部材32aと第2部材32b)及び中間部材40等が同じ作用で回転し、ステアリングホイール1の操舵範囲の他方の終点(他方のストロークエンド/例えば、左操舵のストロークエンド)に至るまでに設定できる。したがって、中立状態から左右へ±450°ステリング操作が可能となり、その操舵範囲の終点で回転を停止することが可能となる
【0064】
上記の各実施形態では、内方部材30と外方部材21との間に、単一の中間部材40を配置したが、中間部材40を複数配置することで、ステアリング回転角をさらに拡大することが可能である。例えば、中間部材40を、内径側の第1中間部材と外径側の第2中間部材の2つの部材で構成することで、例えば、中立位置から内方部材30が第1中間部材に係止するまでのステアリング回転角を150°、さらに、第1中間部材が第2中間部材に係止するまでのステアリング回転角を150°、第2中間部材が外方部材に係止するまでのステアリング回転角を160°とすることで、中立位置を中心として±460°のステアリング回転が可能である。
【0065】
また、上記の各実施形態では、回転伝達装置20の軸心、すなわち、内方部材30、中間部材40及び外方部材21の軸心をステアリングシャフト4の軸心と同一軸心上に配置したが、この実施形態以外にも、例えば、回転伝達装置20の軸心をステアリングシャフト4の軸心とは異なる軸心上に設けた構成を採用してもよい。
【0066】
さらに、上記の各実施形態では、ステアリングホイール1に操舵反力を付与する反力モータ6を備え、その反力モータ6を、ステアリングシャフト4と内方部材30(回転伝達装置20)の間に備えている構成としたが、この実施形態には限定されず、反力モータ6の位置は自由に設定できる。例えば、モータシャフト31を延長してそのモータシャフト31を回転伝達装置20の軸方向他端側へ突出させ、その突出させたモータシャフトの端部に反力モータ6を設けてもよい。
【0067】
また、回転伝達装置20は、上記の各実施形態に加え、通電と非通電の切り替えによりステアリングホイール1の回転を阻止するステアリングロック状態とステアリングホイール1の回転を許容するステアリングロック解除状態とを切り替える電磁式クラッチユニットを備えた構成としてもよい。
【0068】
さらに、上記の各実施形態の内外を逆転させて、内方部材30を固定とし(請求項でいう一方の部材に相当)、外方部材21が内方部材30に対して軸回り回転自在に支持されている(請求項でいう他方の部材に相当)としてもよい。この場合、ステアリングシャフト4の軸回り回転は、外方部材21に入力される構成となる。
【0069】
上記の各実施形態では、ステアバイワイヤ方式の操舵装置を例に、この発明の構成を説明したが、この実施形態には限定されず、この発明は、ステアバイワイヤ方式以外の各種の車両用の操舵装置、あるいは、車両用以外の操舵装置、その他各種の装置にも使用できる。なお、実施形態の車両用の操舵装置では、転舵部材3としてタイヤホイールを採用しているのでこれを転舵輪3と称したが、車輪を備えない輸送用機器、例えば、ステアリングホイール1の回転操作によりステアリングシャフト4を軸回り回転させ、その回転により舵(ラダー)を左右に動作させる舵取り装置を備えた輸送用機器(例えば、船舶や航空機等)においては、転舵部材3は舵(ラダー)に相当する。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
2 転舵アクチュエータ
3 転舵部材
4 ステアリングシャフト
6 反力モータ
20 回転伝達装置
21 外方部材
28 第2係止部
30 内方部材
31 モータシャフト
32 補助内方部材
32a 第1部材
32b 第2部材
35 第1係止部
40 中間部材
42 中間第1係止部
43 中間第2係止部
50 係合手段
61 第3係止部
62 中間第3係止部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D