(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038995
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】成型用の膜及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/20 20060101AFI20240313BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20240313BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B29C33/20
B29C33/12
B29C39/10
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023130900
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】22275124
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522108529
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】アリステア コートニー
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD05
4F202AD19
4F202AD35
4F202AG03
4F202AG13
4F202AJ05
4F202AJ11
4F202AR01
4F202AR20
4F202CA01
4F202CA30
4F202CB01
4F202CB11
4F202CC10
4F202CK12
4F202CK17
4F202CK42
4F202CK52
4F202CL28
4F202CL42
4F202CL50
4F202CR03
4F202CR06
4F202CR07
4F202CR10
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD19
4F204AG03
4F204AG13
4F204AJ05
4F204AM28
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EK17
4F204EK24
(57)【要約】
【課題】成型用の膜及び方法
【解決手段】
物質中に目標物体(102)を封入する処理中に、外部成型を形成する再使用可能な成形用の膜(100)を開示する。これは、弾力的に変形可能な材料を含む円筒形状の膜本体(104)を含むが、膜本体(104)が非変形状態の場合、円筒形状の膜本体(104)の内径(202)は、円筒形状のキャリア体(108)の外面(106)上に設けられる目標物体の外径(302)より小さい。更に、膜本体(104)の外側部分(112)上に設けられた複数の操作構造体(110、910)を含むが、複数の操作構造体(110、910)の夫々は、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、膜本体(104)の変形量を制御することで、膜本体(104)の内部の空間を制御できるようにした。更に、物質中に目標物体を封入する処理中に用いられる方法を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質中に目標物体(102)を封入する処理中に、外部成型を形成するための再使用可能な成形用の膜(100)であって、
弾力的に変形可能な材料を含む円筒形状の膜本体(104)と、
前記膜本体(104)の外側部分(112)上に設けられた複数の操作構造体(110、910)と、を含み、
前記膜本体(104)が非変形状態の場合、前記円筒形状の膜本体(104)の内径(202)は、円筒形状のキャリア体(108)の外面(106)上に設けられる前記目標物体の外径(302)より小さく、
前記複数の操作構造体(110、910)の夫々は、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、前記膜本体(104)の変形量を制御することで、前記膜本体(104)の内部の空間を制御できるようにした、
成形用の膜(100)。
【請求項2】
前記複数の操作構造体(110)のうちの1つ又は複数は、細長い貫通孔(204)を備え、
前記細長い貫通孔(204)は、細長い操作部材(502)を受け入れて、中心縦軸(114)に対して垂直な方向で、前記細長い操作部材(502)の端部(502a、502b)に力を及ぼすように構成され、これにより、夫々の前記操作構造体(110)の近傍の前記膜本体(104)を変形させるようにした、
請求項1に記載の成形用の膜(100)。
【請求項3】
前記複数の操作構造体(910)のうちの1つ又は複数は、
前記膜本体(104)の中に埋め込まれた埋め込み操作部材(920)と、
前記膜本体(104)の中心縦軸(114)から離れる方向に前記膜本体(104)から突出するように、前記埋め込み操作部材(920)に取り付けられた1つ又は複数の取り付け構造(930)と、を含む、
請求項1に記載の成形用の膜(100)。
【請求項4】
前記埋め込み操作部材(920)を備える前記複数の操作構造体(910)のうちの1つ又は複数は、夫々、前記中心縦軸(114)に対して垂直な方向で、各前記埋め込み操作部材(920)のうちの1つ又は複数の前記取り付け構造(930)に力を及ぼして、各前記操作構造体(910)の近傍の前記膜本体(104)を変形させるように構成された、請求項3に記載の成形用の膜(100)。
【請求項5】
前記成形用の膜(100)の第1の端部(116)に向かって第1のシール構造(120)が設けられ、当該第1のシール構造(120)は、前記膜本体(104)の中に配置された前記キャリア体(108)に対してシールを形成するように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形用の膜(100)。
【請求項6】
前記成形用の膜(100)の第2の端部(124)に向かって第2のシール構造(510)が設けられ、当該第2のシール構造(510)は、前記膜本体(104)の中に配置された前記キャリア体(108)に対してシールを形成するように構成された、請求項5に記載の成形用の膜(100)。
【請求項7】
前記膜本体(104)は、第1の端部(116)に向ってフランジ(118)を備え、当該フランジ(118)は、前記膜本体(104)内で内側に延出し、
前記フランジ(118)上に前記第1のシール構造 (120)が設けられる、
請求項5又は6に記載の成形用の膜(100)。
【請求項8】
前記フランジ(118)の最も内側の端部に向って、前記フランジ(118)と接続された剛性ベース構造(122、506)を含む、請求項7に記載の成形用の膜(100)。
【請求項9】
第1のアライメント構成(126)を、第2のアライメント構成(128)と係合するよう構成して備え、前記キャリア体(108)に関して前記中心縦軸(114)の周りで、前記成形用の膜(100)の回転の位置決めが固定されるようにした、請求項1から8のいずれか一項に記載の成形用の膜(100)。
【請求項10】
封入用に物質を導入するために、前記成形用の膜(100)の第2の端部(124)に向って提供されたリザーバ構造(1302)を含む、請求項5に記載の成形用の膜(100)。
【請求項11】
前記複数の操作構造体(110、910)の夫々は操作構造体の繊維補強(940)を含み、当該操作構造体の繊維補強(940)は、各前記操作構造体(110、910)の中に成形される、請求項1から10のいずれか一項に記載の成形用の膜(100)。
【請求項12】
前記膜本体(104)は、膜本体の繊維補強(1202)を備え、前記膜本体(104)の変形量を制限させるようにした、請求項1から11のいずれか一項に記載の成形用の膜(100)。
【請求項13】
物質中に目標物体(102)を封入する処理中に用いられる方法であって、
外部成型を形成するための再使用可能な成形用の膜(100)を用い、当該再使用可能な成形用の膜(100)は、
弾力的に変形可能な材料を含む円筒形状の膜本体(104)と、
前記膜本体(104)の外側部分(112)上に設けられた複数の操作構造体(110、910)と、を含み、
前記膜本体(104)が非変形状態の場合、前記円筒形状の膜本体(104)の内径(202)は、円筒形状のキャリア体(108)の外面(106)上に設けられる前記目標物体の外径(302)より小さく、
前記複数の操作構造体(110、910)の夫々は、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、前記膜本体(104)の変形量を制御することで、前記膜本体(104)の内部の空間を制御できるようにし、
前記方法は、
前記キャリア体(108)の外面(106)上に目標物体(102)を提供し、
前記複数の操作構造体(110、910)を操作して、前記円筒形状の膜本体(104)の内部の空間を増大させるように前記円筒形状の膜本体(104)を変形させて、前記キャリア体(108)上に設けられた前記目標物体が、前記円筒形状の膜本体(104)の内部の空間内に収容されるようにし、
前記キャリア体(108)上に設けられた前記目標物体(102)を、前記円筒形状の膜本体(104)の内部の空間内に挿入し、
前記複数の操作構造体(110、910)を操作して、前記目標物体(102)上で前記膜本体(104)を収縮させて、前記目標物体(102)上に緊密に嵌合する外部成型が形成する、方法。
【請求項14】
所与の前記操作構造体(110、910)の近傍の前記目標物体(102)上の前記外部成型を調整するように、前記複数の操作構造体(110、910)のうち所与の操作構造体(110、910)を操作することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記成形用の膜(100)によって形成された外部成型と前記キャリア体(108)によって形成された内部成型との間に物質を導入し、
前記キャリア体(108)に対して前記成形用の膜(100)をシールするように真空を適用して、前記成形用の膜(100)と前記キャリア体(108)との間で前記目標物体(102)をシールさせることを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、成形に用いられる膜(又はメンブレン)と、目標物体の封入処理中に用いられる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標物体を成形するため、様々な技法が使用可能である。幾つかの例では、硬質の成形工具(又はモールド・ツール)が使用可能である。例えば、成形対象の物体用に所望の空間を提供するように内部空間を画定した成形工具が使用可能である。幾つかの例では、例えば樹脂等の物質内に目標物体を被覆又は封入するために、成形技術が使用されることがある。これらの用途では、成形工具が、目標物体の周りに緊密に嵌合することが望まれる場合がある。
【0003】
幾つかの例では、成形工具の一部は、緊密な嵌合を達成するために、可撓性材料(又はフレキシブル材料)から形成されることがある。例えば、目標物体は、剛性の表面上に設けられることがある。剛性の表面は、成形プロセス用のプラットフォームを提供することがある。次に、可撓性材料が展開されて、目標物体の上に緊密に嵌合されて、目標物体の形状に従うようにされることがある。しかしながら、当業者であれば、目標物体の形状と一致する緊密な嵌合を行うことは、その達成が困難なことがあり、及び/又は、可撓性材料を展開することが労働集約的なことがあり、長時間を要し、及び/又は、手動で行う必要性があったことを理解するであろう。可撓性材料は、目標物体を封入する物質に影響を与えることなく取り出すことが困難な場合があった。典型的には、可撓性材料は、封入処理の後に廃棄されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の目的は、物質内に目標物体を封入する成形用の、便利で効率的な構造と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1の態様では、物質中に目標物体を封入する処理中に、外部成型を形成するための再使用可能な成形用の膜が提供される。成形用の膜は、弾力的に変形可能な材料を含む円筒形状の膜本体を含む。この際、膜本体が非変形状態の場合、円筒形状の膜本体の内径は、円筒形状のキャリア体の外面上に設けられる目標物体の外径より小さい。更に、成形用の膜は、膜本体の外側部分上に設けられた複数の操作構造体を含む。この際、複数の操作構造体の夫々は、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、膜本体の変形量を制御することで、膜本体の内部の空間を制御できるようにする。
【0006】
選択的に、複数の操作構造体のうちの1つ又は複数は、細長い貫通孔を備える。細長い貫通孔は、細長い操作部材を受け入れて、中心縦軸に対して垂直な方向で、細長い操作部材の端部に力を及ぼすように構成され、これにより、夫々の操作構造体の近傍の膜本体を変形させるようにする。
【0007】
選択的に、複数の操作構造体のうちの1つ又は複数は、膜本体の中に埋め込まれた埋め込み操作部材と;膜本体の中心縦軸から離れる方向に膜本体から突出するように、埋め込み操作部材に取り付けられた1つ又は複数の取り付け構造とを含む。
【0008】
選択的に、埋め込み操作部材を備える複数の操作構造体のうちの1つ又は複数は、夫々、中心縦軸に対して垂直な方向で、各埋め込み操作部材のうちの1つ又は複数の取り付け構造に力を及ぼして、各操作構造体の近傍の膜本体を変形させるように構成される。
【0009】
選択的に、成形用の膜の第1の端部に向かって第1のシール構造(又はシール構成)が設けられ、当該第1のシール構造は、膜本体の中に配置されたキャリア体に対してシールを形成するように構成される。
【0010】
選択的に、成形用の膜の第2の端部に向かって第2のシール構造が設けられ、当該第2のシール構造は、膜本体の中に配置されたキャリア体に対してシールを形成するように構成される。
【0011】
選択的に、膜本体は、第1の端部に向ってフランジを備え、当該フランジは、膜本体内で内側に延出し、フランジ上に第1のシール構造が設けられる。
【0012】
選択的に、フランジの最も内側の端部に向って、フランジと接続された剛性ベース構造を含む。
【0013】
選択的に、第1のアライメント構成を、第2のアライメント構成と係合するよう構成して備え、キャリア体に関して中心縦軸の周りで、成形用の膜の回転の位置決めが固定されるようにする。
【0014】
選択的に、封入用に物質を導入するために、成形用の膜の第2の端部に向って提供されたリザーバ構造を含む。
【0015】
選択的に、複数の操作構造体の夫々は操作構造体の繊維補強を含み、当該操作構造体の繊維補強は、各操作構造体の中に成形される。
【0016】
選択的に、膜本体は、膜本体の繊維補強を備え、膜本体の変形量を制限させるようにする。
【0017】
本発明に係る第2の態様では、物質中に目標物体を封入する処理中に用いられる方法が提供される。この方法は、外部成型を形成するための再使用可能な成形用の膜を用いる。当該再使用可能な成形用の膜は、弾力的に変形可能な材料を含む円筒形状の膜本体を含む。この際、膜本体が非変形状態の場合、円筒形状の膜本体の内径は、円筒形状のキャリア体の外面上に設けられる目標物体の外径より小さい。更に、この方法は、膜本体の外側部分上に設けられた複数の操作構造体を用いる。この際、複数の操作構造体の夫々は、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、膜本体の変形量を制御することで、膜本体の内部の空間を制御できるようにする。この方法は、キャリア体の外面上に目標物体を提供することと;複数の操作構造体を操作して、円筒形状の膜本体の内部の空間を増大させるように円筒形状の膜本体を変形させて、キャリア体上に設けられた目標物体が、円筒形状の膜本体の内部の空間内に収容されるようにすることと;キャリア体上に設けられた目標物体を、円筒形状の膜本体の内部の空間内に挿入することと;複数の操作構造体を操作して、目標物体上で膜本体を収縮させて、目標物体上に緊密に嵌合する外部成型が形成されること、とを含む。
【0018】
選択的に、所与の操作構造体の近傍の目標物体上の外部成型を調整するように、複数の操作構造体のうち所与の操作構造体を操作することを含む。
【0019】
選択的に、成形用の膜によって形成された外部成型とキャリア体によって形成された内部成型との間に物質を導入し;キャリア体に対して成形用の膜をシールするように真空を適用して、成形用の膜とキャリア体との間で目標物体をシールさせることを含む。
以下、添付図面を参照して、本発明に関連する実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例の第1の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の第1の概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例に従う第1の状態での、実施例の第1の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、実施例に従う第2の状態での、実施例の第1の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、実施例の第1の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の第2の概略的な斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例に従う第1の操作構造体の第1の要部の側面の断面図である。
【
図6】
図6は、実施例に従う第1の操作構造体の概略的な要部の平面図である。
【
図7】
図7は、実施例に従う第1の操作構造体の第2の要部の側面の断面図である。
【
図8】
図8は、実施例に従う第1の操作構造体の第3の要部の側面の断面図である。
【
図9】
図9は、実施例の第1の組合せに従う第2の操作構造体の概略的な要部の側面の断面図である。
【
図10】
図10は、実施例の第1の組合せに従う第2の操作構造体の第1の概略的な要部の正面の断面図である。
【
図11】
図11は、実施例の第1の組合せに従う第2の操作構造体の第2の概略的な要部の平面の断面図である。
【
図12】
図12は、実施例の第1の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な要部の平面の断面図である。
【
図13】
図13は、実施例の第2の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な斜視図である。
【
図14】
図14は、目標物体を封入する処理中に用いられる方法を例示したフロー図である。
【
図15】
図15は、実施例の第3の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な斜視図である。
【
図16】
図16は、実施例の第4の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な斜視図である。
【
図17】
図17は、実施例の第5の組合せに従う再使用可能な成形用の膜の概略的な斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願は、再使用可能な成形用の膜(又はモールド・メンブレン)に関する。再使用可能な成形用の膜は、例えば、その使用が想定されている複数の成形プロセスに適用可能なように再使用可能にされている。
【0022】
添付した図を参照すると、これら実施例では、再使用可能な成形用の膜100は、物質中に目標物体(又はターゲット・オブジェクト)102を封入する処理中に、外部成型(又は外部モールド)を形成するように提供される。成形用の膜100は、円筒形状(又は円柱形状)の膜本体104を備える。円筒形状の膜本体104(以後、簡略化のため、単に膜本体とも称する)は、弾性変形可能な材料を含み、この際、膜本体104が非変形状態の場合、円筒形状の膜本体104の内径202は、円筒形状のキャリア体(又はキャリア体)108の外面106上に設けられた目標物体の外径302よりも小さい。この例では、成形用の膜には、膜本体104の外側部分112に設けられた複数の操作構造体110、910を備えることができ、これら複数の操作構造体100、910は、夫々、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、膜本体104の変形量を制御することで、膜本体104の内部の空間を制御できるようにしている。
【0023】
図1乃至
図13及び
図15乃至
図17には、成形用の膜100の具体例が示されているが、これらには、様々な異なる特徴が例示されている。ただし、上記特徴を提供する例を含む成形用の膜100は、図示されて、後述される特定の実施例に限定されないものとする。当業者であれば、上記特徴が具体的に適用され得る他の様々な方法を理解できるであろう。なお、図示の簡略化のため、これら図の夫々には、すべての特徴が示されているわけではなく、及び/又は、参照番号が付けられているわけではないことに留意されたい。むしろ、これら図は、簡略化され、概略的なものであり、また、特徴の具体例を示すために特定の図が使用され得る。
【0024】
図1は、複数の実施例に係る再使用可能な成形用の膜100を例示した概略的な斜視図である。これらの実施例では、再使用可能な成形用の膜100は、目標物体102を封入する処理中に、外部成型を形成することを可能にする。これらの実施例では、円筒形状のキャリア体108の外面106に、目標物体102が提供される。例えば、円筒形状のキャリア体108は、封入処理の最中に、内部成型(又は内部モールド)として機能する。複数の実施例では、封入処理とは、例えば、内部成型及び外部成型、並びに目標物体102の表面の間で、目標物体102を封入するために、物質が成型(又はモールド)される処理のことである。例えば、封入処理は、目標物体102上に外部モールドを嵌合させることと、目標物体102を被覆するために物質を導入することと、例えば、目標物体102上で物質を硬化させるための硬化処理とを含み得る。
【0025】
キャリア体108の外面106とは、例えば、円筒形状のキャリア体108によって画定される円筒形状の外向きの表面のことである。換言すると、外面106は、円筒形状のキャリア体108の中心縦軸(又は中心の長手方向軸)から離れる方向に面しているキャリア体108の表面である。なお、成形用の膜の中にキャリア体が挿入される際、成形用の膜とキャリア体の中心縦軸とは、多かれ少なかれ整列することに留意されたい。従って、本明細書では、成形用の膜の中心縦軸114に対して、キャリア体の構成要素の位置及び方向について参照されてもよい。
【0026】
目標物体とは、成形処理の最中に、封入用に、円筒形状のキャリア体108の上に配置可能な任意の種類の物体でもよい。幾つかの例では、目標物体は、磁石として使用可能なコイルであって、円筒形状のキャリア体108の周囲に巻き付けられる。幾つかの例では、目標物体は、モータ又は発電機のロータ巻線用のコイルである。
【0027】
なお、目標物体102を中に封入する物質は、例えば、樹脂でもよい。例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルエステル、又はエポキシなどの熱硬化性樹脂を使用することができる。例えば、用途に応じて、磁石として使用可能なコイルを樹脂内に封入することが望ましい場合がある。幾つかの例では、封入されるコイルは大きくてもよく、例えば、核磁気共鳴画像法(MRI)に使用されるのに適当な大きさを有していてもよい。他の例では、再使用可能な成形用の膜100は、他の目標物体に関連して、外部成型として使用することができる。例えば、本明細書に開示される成形用の膜の例では、円筒形状のキャリア体上に設けることができる任意の目標物体に対して、緊密に嵌合する外部成型が望ましい場合に用いることができる。
【0028】
比較的一貫した厚さを有する目標物体上に物質の被覆(又はコーティング)を提供し、その際、物質が豊富な領域を回避することが望ましい場合がある。コイルを封入する樹脂を含む実施例では、このコイル上の樹脂の被覆が一定で、樹脂の豊富な領域を回避することが望ましい場合がある。例えば、樹脂の豊富な領域は、目標物体102の表面の他の領域よりもさらに樹脂が存在する領域でもよい。例えば、封入処理からの被覆では、目標物体102のすべての表面上で比較的に一貫した厚さがあること(許容可能な誤差内又は現実的な許容誤差内)が望ましい場合がある。例えば、コイルが磁場を生じさせるために通電されると、樹脂の豊富な領域は、亀裂を生じさせたり、及び/又は、コイルからエネルギーを奪うことが起こり得る。この場合、コイルが使用されている適用対象に望ましくない影響を与える虞がある。また、例えば、比較的に一貫した厚さを有する被覆を提供して、この際、物質が豊富な領域を避けることによって、その物質の消費量を削減することができる。この削減された消費量は、用途によっては大きくてもよい。また、例えば、物質が豊富な領域を回避することで、硬化後に、封入した目標物体から、過剰な量の物質を取り除くことの必要性をなくすため、封入処理を完了するのに要する時間を減らすことができる。
【0029】
物質が豊富な領域を回避しながら、目標物体(例えばコイル)102の上に物質(例えば樹脂)の一貫した被覆を行うためには、使用される成型(又はモールド)が、その目標物体上に緊密に嵌合されることが求められ得る。従って、本明細書で記載される実施例では、有利には、緊密に嵌合さる外部成型が提供される。
【0030】
本明細書では、「円筒形状」の用語が使用されている。円筒形状として記載される構成要素は、断面では、円形状の断面を有していてもよい。しかしながら、断面は、この形状に限定されない。幾つかの実施例では、断面は、楕円形状でもよい。例えば、記載される円筒形状の中心縦軸に対して垂直にとった断面は、楕円形状でもよい。本明細書で記載されるように、円形状の断面を有する円筒形状とは、一般的な円筒形状の特殊な場合であって、その断面が円形状に限定されないものでもよい。
【0031】
幾つかの実施例では、膜本体104は、開口した円筒形状を有する。幾つかの実施例では、後述されるように、膜本体104は、1つ又は複数のフランジを備える。説明される実施例では、膜本体104は、弾性的に変形可能な材料を含む。例えば、膜本体104は、シリコーンなどのエラストマを含むことができる。幾つかの実施例では、膜本体104は、ラテックス、ニトリルゴム、ポリウレタン、又はビニルを含むことができる。
図2は、実施例に係る成形用の膜100の概略的な平面図である。
図2に示された方向では、成形用の膜100の中心縦軸114は紙面に向い、矢印の終端側の十字形で表されていて、方向を示している。これらの実施例では、膜本体104の内面は、円形状の断面を有している。
図2の実施例では、膜本体104は、変形していない状態(又は非変形状態)にある。非変形状態の膜本体104の内径は、二重矢印202で例示されている。これらの実施例では、内径202は、キャリア体108の外面106上に設けられる目標物体102の外径よりも小さい。従って、これらの実施例では、キャリア体108の外面106上に設けられる目標物体102は、膜本体104の内部の空間(内径202で画定されている)内には、その非変形状態では、嵌合されない。しかし、例えば、説明したように設けられる目標物体102は、膜本体104に変形が生じて、その中の空間が増加される場合には、膜本体104の中に嵌合され得る。
【0032】
図3は、実施例に係る成形用の膜100と目標物体102との概略的な平面図である。
図3には、実施例に係る変形状態での膜本体104の内部の空間内に挿入されている、円筒形状のキャリア体108の外面106上に設けられた目標物体102が例示されている。
図3では、簡略化のため、目標物体102とキャリア体108とが、参照番号102が付された円として概略的に例示されている。自明だが、目標物体102は、キャリア体108の外面106上に保持されている。
図4の概略的な斜視図は、実施例に係る円筒形状のキャリア体108の外面106上に設けられた目標物体102が、膜本体104の内部の空間内に挿入されたときの図であって、この際、膜本体104は、実施例に従って変形状態に保たれている。
【0033】
キャリア体108の外面106上に設けられた目標物体102の外径は、参照番号302の双方向矢印で例示されている。例えば、膜本体104は、後述のように、その中の空間を増大させるように変形されて、より大きな外径302を有する目標物体102を収容させることを可能にしている。
【0034】
これらの実施例では、成形用の膜100は、複数の第1の操作構造体110を備えている。第1の操作構造体110は、適用可能な操作構造体の具体例であり、さらに他の例は後述される。第1の操作構造体110は、膜本体104の外側部分112に備えられている。例えば、外側部分112は、円筒形状の膜本体104によって画定されている円筒形状の外面である。換言すれば、外側部分112は、中心縦軸114から離れる方向に面している膜本体104の表面である。これら図では、第1の操作構造体110の一部のみに参照番号が付されている。しかしながら、これら実施例では、自明なように、外側部分112の周囲には、複数の第1の操作構造体110が設けられている。これら実施例では、操作構造体の個数は変更可能である。幾つかの実施例では、第1の操作構造体110が、3個またはそれ以上設けられてもよい。例えば、外側部分112の周囲に8個の第1の操作構造体110が設けられてもよい。
【0035】
第1の操作構造体110は、膜本体104の残部と一体であって、中心縦軸114から離れる方向で、外側部分112から突出するように弾性変形可能な材料を含み得る。
【0036】
これら実施例では、複数の第1の操作構造体110の夫々は、機械的な力(又は負荷)を適用することで操作できるように構成され、膜本体104の変形量を制御することで、膜本体104の内部の空間を制御できるようにしている。例えば、第1の操作構造体110は、膜本体104を変形させるように、膜本体104に力を及ぼすことが可能な構造を提供する。例えば、第1の操作構造体110は、局所的な膜本体104の領域を変形するように、問題となっている操作構造体110に対して機械的力が与えられる場所である。
【0037】
図3に例示した実施例を参照すると、これらの実施例では、中心縦軸114に対して垂直に向かう方向と、そこから離れる方向(
図3の第1の操作構造体110の夫々から開始する矢印を参照)とで、第1の操作構造体110の夫々に力が適用されている。第1の操作構造体110の夫々に力が加えられる結果として、膜本体104が変形されて、膜本体104の内部の空間が増大する。膜本体104の中に一層の(さらなる)空間を生じさせることで、その中に外径302を有する目標物体102を収容可能にしている。
【0038】
第1の操作構造体110は、本明細書に記載の仕方で膜本体104を変形させるように、様々な異なる形態を採用してもよい。幾つかの例示的な操作構造体(例えば、複数の実施例のうちの第1の操作構造体110など)は、後述される。しかしながら、当業者であれば、説明した機能を可能にする他の種類の構造も理解できるであろう。
【0039】
幾つかの実施例では、複数の操作構造体のうちの1つ又は複数には、細長い貫通孔が備えられている。図示した貫通孔の例では、貫通孔は、非変形状態では、円筒形状の膜本体104の中心縦軸114と実質的に平行な方向に延在する。例えば、第1の操作構造体110は、細長い貫通孔を備える。操作構造体の他の例では、
図9乃至
図11に関して後述するように、貫通孔を備えなくてもよい。
図1乃至
図8は、貫通孔を備えている第1の操作構造体110の実施例に関する。これらの実施例では、第1の操作構造体110は、図示しているように、細長い貫通孔204を備えている。換言すれば、これらの実施例では、細長い貫通孔は、非変形状態では、中心縦軸114と略同一方向に延在する。なお、本明細書で使用される用語の「実質的に平行」とは、細長い貫通孔が、中心縦軸114と概して(例えば、ある程度)同一方向に延在することを含むが、この際、細長い貫通孔が、中心縦軸114と厳密に平行であることが必要とされていないことを理解されたい。他の実施例では、成形用の膜100の操作構造体のすべてが、上記貫通孔を備える第1の操作構造体110である必要はない。
図5は、実施例に係る第1の操作構造体110の要部の側面の断面図である。
図5の実施例では、図示した第1の操作構造体110の貫通孔204を横断した断面が例示されている。
【0040】
幾つかの実施例では、貫通孔204は、細長い操作部材502をその中に受け入れるように構成されていて、この際、中心縦軸114に対して垂直な方向で、細長い操作部材502の端部に力を加えると、対応する第1の操作構造体110の近傍の膜本体104が変形するようにしている。なお、この際、中心縦軸114に対して平行な構成要素に力を加えることが除外されていないことに留意されたい。本明細書に記載された使用の最中、中心縦軸114に対して垂直な方向での力の成分は、膜本体104の内部の空間に影響を及ぼす変形に関連する。従って、本説明は、中心縦軸114に対して垂直な方向の力に焦点を当てている。
【0041】
図5の実施例では、細長い操作部材502は、操作部材の第1の端部502aと、操作部材の第2の端部502bとを含む。これらの実施例では、細長い操作部材502は、貫通孔204よりも長く延在している。例えば、操作部材の第1の端部502aと、操作部材の第2の端部502bとが貫通孔204から突出するように、細長い操作部材502が貫通孔204の中に受け入れられていてもよい。これらの実施例では、端部502a、502bの夫々は、作動機構504に接続される。簡略化のため、作動機構504は、単に、操作部材の第1及び第2の端部502a、502bと接続する構成要素として例示されている。例えば、細長い操作部材502は、ピンの形態で提供することができる。このピンの端部502a、502bは、様々な異なる手段を用いて作動機構504と接続できるが、このことは、当業者であれば理解可能である。
【0042】
作動機構504は、細長い操作部材502に対して作用可能な機械的な力を提供できる任意の作動機構でもよい。例えば、作動機構は、電子作動システム(例えば、電気モータ)を含み得る。また、作動機構は、空気圧作動システムを含み得る。また、作動機構は、油圧システムを含み得る。また、作動機構は、機械的作動システムや、他の同様物を含み得る。幾つかの実施例では、作動機構504は、これらシステムの組合せを含み得る。例えば、全体として、成形用の膜を開閉させるように(例えば、目標物体102とキャリア体108を挿入するため、成形用の膜の内部の空間を形成する)機械的システムを用いてもよく、そして、個々の操作構造体に空気圧アクチュエータを適用してもよい(例えば、膜本体104の局所領域を操作する)。用いられる作動機構の種類は、膜本体104の大きさ、膜本体104を変形させるのに要する力の量などに基づき得ることを理解されたい。例えば、MRI撮像用の磁気コイルを封入するのに用いるのに適当な膜本体104の一実施例の場合には、大きくてもよく、そして、所望の変形量を生じさせるために比較的大きな力を要してもよい。このような幾つかの実施例では、油圧作動システムが適当であり得る。
【0043】
作動機構504は、自動的に制御されてもよい。例えば、作動機構504は、ユーザからの手動介入なしに制御される(例えば、作動機構504の制御システムに対するユーザ入力の制御コマンド以外)。例えば、作動機構504は、コンピュータ制御されて、作動機構504に対してコンピュータから制御信号が入力される。幾つかの実施例では、作動機構504は、備えられたすべての操作構造体に対して機械的な力を及ぼすよう構成される。そのような例では、作動機構504は、操作構造体の夫々に対して独立して力が加えられ、その結果、各操作構造体が独立して制御可能なように構成されてもよい。幾つかの実施例では、独立した制御のため、操作構造体ごとに別個の作動機構が提供される。
【0044】
従って、様々な操作構造体が自動制御されてもよい。様々な操作構造体は、独立して操作されてもよく、そして、膜本体104の局所領域を変形させてもよい。このことは、有利には、膜本体104と、それが目標物体102の上に外部成型を形成する仕方について、高いレベルの制御を可能にする。さらに、膜本体104の操作を自動化することは、例えば、手作業による手動操作を伴う可撓性のモールドを用いる仕方と比較して、(例えば、ユーザが必要とする時間と仕事量の点で)より効率的な節約性を可能にする。例えば、手動操作を回避することで、一貫して、反復可能な結果を提供できるようになる。また、自動操作は、封入処理の異なる段階での操作を可能にし、例えば、手動操作に頼っている場合には不可能であったことを可能にする。例えば、手動操作では不可能なチャンバ(例えば、オートクレーブ又は圧力がま)の内部に操作構造体を用いる自動操作が適用されてもよい。また、操作構造体は、目標物体102を封入する成形処理が完了した後に除去される成形用の膜100を可能にする。例えば、上述の成形用の膜100によって可能になる制御された操作のため、望ましくないように、封入された目標物体102を相当に乱すことがなく、そして、成形用の膜100を制御された仕方で除去することが可能になる。また、制御された仕方で除去を行うと、成形用の膜、硬化物質、及び/又は、目標物体に対して損傷を与えることが回避され得る。上述の成形用の膜100の実施例によって、再利用される成形用の膜100が提供される。
【0045】
第1の操作構造体110の実施例に戻ると、これらの実施例では、中心縦軸114に対して、垂直に向かう方向と、中心縦軸114から離れる方向とで、細長い形操作部材502の各端部502a、502bに力を加えることで、膜本体104の中に一層の空間が形成されるように、膜本体104を変形させている。例えば、問題となっている第1の操作構造体110の近傍の膜本体104の部分は、細長い操作部材502が第1の操作構造体110を中心縦軸114から離すように引くと、それを変形させる。例えば、
図3及び
図4を参照されたい。
図5に例示した方向では、第1の操作構造体110の右側に中心縦軸が位置している。
【0046】
これらの実施例では、例えば、
図3及び4に例示したように、夫々の第1の操作構造体110にて、膜本体104を延伸(又はストレッチ)させるように力を加えると、膜本体104の内部の空間内に、キャリア体108上に設けられた目標物体102を挿入することが可能になる。一度、膜本体104の中に、所望のように、目標物体102が配置されると、目標物体102上で膜本体104が収縮するように、操作構造体を操作することが可能になる(例えば、細長い操作部材502に加えられる力を減らす)。これらの実施例では、延伸する際、非変形状態に戻るように膜本体104を付勢する弾性力が生じる。例えば、中心縦軸114から離れる方向で、作動手段504から加えられた力が減らされたり、取り除かれると、この結果として、膜本体104が収縮する。この弾性力によって、目標物体上での膜本体104の緊密な嵌合がもたらされる。これらの実施例では、非変形状態での膜本体の内径を選択することで、所望の目標物体102に対して膜本体104が緊密に嵌合するように、適切な弾性力が働くようにしてもよい。
【0047】
幾つかの実施例では、中心縦軸114に向かう方向で、第1の操作構造体110に力が加えられてもよい。このような力は、所望の目標物体102に対する緊密な嵌合を形成する際に役立ち得る。幾つかの実施例では、中心縦軸114から離れる力と、中心縦軸114に向かう力との組合せを用いて、所望なように、膜本体104を調整してもよい。
【0048】
緊密な嵌合を形成するように、弾性変形可能な膜を提供することには利点がある。何故なら、例えば、目標物体102の大きさの変動とは独立して、緊密な嵌合を行うことが可能になるからである。例えば、目標物体102用に、特定の外径302を有する成形用の膜の使用が意図されている場合、キャリア体108上に目標物体102を設ける手順に依拠して、その正確な外径302に変動が生じることがある。例えば、幾つかの実施例では、目標物体102は、他の実施例と比較して、より大きい又はより小さい外径を有することがある。目標物体102がコイルである実施例では、キャリア体の周りにコイルが巻き付けられるので、外径に多少のばらつきが生じ得る。しかしながら、そのような変形に対応可能なように、膜本体104の内径202と変形特性とを選択することができる。このように、同じ膜本体104を使用して、大きさに多少のばらつきがある複数の目標物体上で、一貫的に、緊密な嵌合を形成することができる。剛性/硬性の外部成型では、そのような変動に適応できないものの、本明細書で説明される可撓性の成形用の膜では、そのような外径302の変動にもかかわらず、緊密な嵌合の外部成型に適応することができる。
【0049】
幾つかの実施例では、異なる所望の大きさの(例えば、設計上、様々な異なる大きさの外径302を有し得る)目標物体上にモールドを形成するため、再使用可能な成形用の膜100の所与の実施例を用いることができる。何故なら、膜本体104が変形し、その後、目標物体上で収縮するため、外径302の範囲内(例えば、信頼できる変形可能材料の弾性と他のパラメータに基づく合理的な範囲内)で、緊密に嵌合する外部成型を形成できるからである。
【0050】
さらに、上述の膜本体104は、有利には、その大きさと形状の局所的な変動にかかわらず、目標物体のすべての関連領域に緊密に嵌合を形成することができる。例えば、膜本体104が収縮すると、膜本体104の弾性的に変形可能な材料は、目標物体102内の局所的な間隙(ギャップ)内に到達できる。このことは、キャリア体108の周囲にコイルを巻きつける実施例では、特に有利である。
【0051】
上記の内容は、これら実施例の様々な長所のうち、幾つかの長所の例である。
【0052】
図5の実施例に戻ると、一部の実施例では、細長い操作部材502の一端部に対して、他の端部と比較して、異なるように力を加えることができる。例えば、操作部材の第1の端部502aに対して、操作部材の第2の端部502bと比較して、より多くの力が、作動機構504によって加えられてもよい。
図7及び
図8は、実施例に従う、第1の操作構造体110の概略的な要部の断面図である。
図7には、非変形状態の膜本体104が例示されている。この際、矢印602は、膜本体104を、
図7に例示した非変形状態から、
図8に例示した変形状態まで移行させるように、細長い操作部材502のうちの操作部材の第1の端部502aに加えられる力を例示している。これらの実施例では、簡略化のため、作動機構504は例示されていない。これらの実施例では、細長い操作部材502のうちの操作部材の第2の端部502bには力が加えられていない。従って、これらの実施例では、操作部材の第2の端部502bは支点として作用して、図示したように、細長い操作部材502は、中心縦軸114に対して角度を成すように枢動(又はピボット移動)する。このことは、膜本体104を操作することができる別の仕方の例である。当業者であれば、適用態様に基づいて、操作部材の第1の端部502a及び/又は操作部材の第2の端部502bにて、異なるように機械的力を加えることで、様々な仕方で、問題となっている第1の操作構造体110の近傍で膜本体104を操作できることを理解するだろう。
【0053】
幾つかの実施例では、複数の操作構造体のうちの1つ又は複数は、膜本体104の中に埋め込まれた操作部材を含む。このような実施例では、操作構造体は、埋め込み操作部材(又は埋め込まれた操作部材)の膜本体104の中心縦軸114から離れる方向に、膜本体(104)から突出するように、埋め込み操作部材に取り付けられた1つ又は複数の取り付け構造(930)を含む。このような実施例の操作構造体は、細長い操作部材502を受け入れる貫通孔204の替わりとして、埋め込み操作部材が備えられるという点で、上記の第1の操作構造体110とは相違している。
【0054】
図9は、複数の実施例に係る、第2の操作構造体910を例示した概略的な要部の平面の側部の断面図である。第2の操作構造体910は、操作構造体の別の例であって、これは、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、膜本体104の変形量を制御することで、膜本体104の内部の空間を制御できるようにしている。
図9では、第1の操作構造体110に関して説明した構成要素に対応する構成要素には、先立つ図のものと同じ参照番号が付されている。膜本体104の外側部分は、
図1乃至
図8に関連して説明した複数の操作構造体を含むことができ、又は、
図9に関連して後述される複数の操作構造体を含むことができる。あるいは、膜本体104は、
図1乃至
図8に関連して説明した1つ又は複数の第1の操作構造体と、
図9に関連して説明される1つ又は複数の第2の操作構造体とを含む複数の操作構造体を含むことができる。操作構造体の他の実施例も可能なことに留意されたい。例えば、本明細書の開示内容が、機械的な力を適用することで操作できるように構成され、膜本体104の変形量を制御することで、膜本体104の内部の空間を制御できるようにしている場合、当業者であれば、そのような操作構造体を備えるために様々な仕方があることを理解するであろう。
【0055】
これらの実施例では、第2の操作構造体910は、
図9に例示したように、埋め込み操作部材920を含む。これらの実施例では、第2の操作構造体910は、埋め込み操作部材920と取り付けられた1つ又は複数の取り付け構造930を含む。幾つかの実施例では、取り付け構造930は、埋め込み操作部材920と一体である。換言すると、幾つかの実施形態では、取り付け構造930と、埋め込み操作部材920とは、単一部品として同時に提供される。他の実施例では、取り付け構造930は、埋め込み操作部材920上に取り付けられる別体の部品である。
【0056】
これらの実施例では、取り付け構造930は、膜本体104の中心縦軸114から離れる方向で、膜本体104から突出する。例えば、取り付け構造930は、膜本体104の外側部分112に対して外側に延出する。例えば、取り付け構造930は、膜本体104の材料の中に部分的に埋め込まれる。
図9の実施例では、2つの取り付け構造930が設けられている。しかしながら、必要に応じて、任意の個数の取付け構造930を設けることが可能である。幾つかの実施例では、取り付け構造930の個数は、埋め込み操作部材920の形状及び/又は大きさに基づくことができる。
【0057】
例えば、中心縦軸114に対して垂直な方向で、取り付け特徴930に力を加えることで、第2の操作構造体910の近傍にある膜本体104を変形させるように、埋め込み操作部材920が構成され得る。これらの実施例では、埋め込み操作部材920は、剛性プレート(例えば、適当な寸法を有する剛性プレートを形成するように、金属又は他の材料を含み得る)であってもよい。幾つかの実施例では、埋め込み操作部材920は、剛性の長方形プレート(若しくは矩形板)又は剛性の円形板である。例えば、剛性プレートは、第2の操作構造体910の弾性変形可能な材料内に成型されるという意味で、埋め込まれることができる。例えば、このプレートは、外側部分112(即ち、膜本体104の外面)と実質的に同一方向に面するように配向されてもよい。
【0058】
図9の実施例では、剛性プレート920は、膜本体104の材料内に、完全に埋め込まれている。
図10は、実施例に従う、第2の操作構造体910の概略的な要部の側面の断面図である。水平の破線は、
図10に例示したものを超えて、この構造が続くことを示している。これらの実施例では、埋め込み操作部材920は、長方形プレートである。
【0059】
幾つかの実施例では、埋め込み操作部材920は、第2の操作構造体910の場所で、弾性変形可能な材料の中に部分的に埋め込まれていてもよく、例えば、後述するように、埋め込み操作部材920の2つの端部が突出するようにしてもよい。
【0060】
図11は、実施例に従う、第2の操作構造体910の概略的な要部の側面の断面図である。
図11の実施例は、埋め込み操作部材920が部分的に埋め込まれているという点で、
図9及び10の実施例と異なっている。
図11の実施例では、埋め込み操作部材920の2つの端部は、弾性変形可能な材料から突出している(例えば、第2の操作構造体910の残部から突出している)。例えば、埋め込み操作部材920の2つの端部は、中心縦軸114に対して異なる位置で突出してる(
図11参照)。これらの実施例では、埋め込み操作部材920は、埋め込み部材の第1の操作端部920aと、埋め込み部材の第2の操作端部920bとを備えており、夫々、説明されるように、突出する埋め込み操作部材920の異なる端部に設けられている。
図11に示した向きでは、埋め込み部材の第1の操作端部920aは、埋め込み部材の頂部(又は上部)の操作端部であり、埋め込み部材の第2の操作端部920bは、埋め込み部材の底部(又は下部)の操作端部である。
【0061】
埋め込み部材の操作端部920a、920bは、取り付け構造930を備えることができる。例えば、取り付け構造930は、作動機構504(
図9、
図10及び
図11には図示していない)と係合するように構成される。当業者であれば、埋め込み部材の操作端部920a、920bを作動機構に結合することには、様々な仕方があることを理解するであろう。簡単な例を挙げると、取付け構造930の形態は、取付けリング、取付け貫通穴、取付けねじ穴、又は作動機構との機械的結合を可能にする任意の他の種類の構造でもよい。
【0062】
第2の操作構造体910は、第1の操作構造体110に関連して上述したものと同様の仕方で機能することができる。従って、これらの共通の特徴、機能、長所等についての説明は、簡略化のため、割愛される。説明される操作構造体は、膜本体104の所与の部位において機械的な力を与える仕方を提供し、これによって、膜本体104を操作して、弾性変形可能な材料の弾性的な長所を利用する。
【0063】
幾つかの実施例では、成形用の膜100は、第1のシール構造を備えるが、これは、成形用の膜100の第1の端部に向かって設けられる。これらの実施例では、第1のシール構造は、キャリア体108に対してシールを形成するように構成される。これら実施例では、成形用の膜100の第1の端部は、中心縦軸114に関して特定の位置にある。例えば、成形用の膜100の第1の端部と反対側の第2の端部は、中心縦軸114に関して異なる位置にある。
【0064】
例えば、
図1、
図4及び
図5の実施例では、成形用の膜100の第1の端部116には参照符号が付けられている。これらの図に示されている方向では、成形用の膜100の第1の端部116は、成形用の膜100の底部の端部である。例えば、第1のシール構造は、使用中、膜本体104が目標物体102と当接しない位置に設けられる。
【0065】
第1のシール構造は、形成されるシールを提供できる任意の形態又は構造をとることができる。幾つかの実施例では、第1のシール構造によって形成されるシールは、成形用の膜100とキャリア体108との間から出る液体材料の流れを防止又は著しく抑制することができるシールである。幾つかの実施例では、第1のシール構造によって形成されるシールは、真空シールである(換言すると、空気/ガス分子の流れを防止又は著しく抑制する)。第1のシール構造(従って、適用される第1のシール構造の特定の例)によって形成されるシールの気密性は、用途に従って選択されてもよい。用途によっては、液体の流れを防止するシールのみが望ましい場合がある。他の用途では、真空シールが望ましい場合がある。
【0066】
幾つかの実施例では、膜本体104には、第1の端部116に向かうフランジ118が備えられる。これらの実施例では、フランジ118は、膜本体104の内部に延在する。例えば、フランジ118は、中心縦軸114に向かって延在する。これらの実施例では、フランジ118は、例えば、
図1に示したように、円筒形状の膜本体104の周りを取り囲むように提供される。フランジ118は、膜本体104の一部であり、従って、弾性変形可能な材料を含む。
【0067】
図1の実施例では、第1のシール構造には、参照番号120が付されている。幾つかの実施例では、第1のシール構造120は、
図1に例示した場合と同様に、フランジ118の上に設けられる。しかしながら、幾つかの実施例では、フランジは取り除くことができ、第1のシール構造120は、膜本体104の別の部分に設けられてもよい。このような実施例では、膜本体104は、リング状構造を有していてもよい。幾つかの実施例では、フランジ118が設けられているものの、第1のシール構造120は、フランジ118とは別の膜本体104の部分に設けられてもよい。
【0068】
例えば、フランジ118は、キャリア体108の中心軸114に関して端面(例えば、底面)と当接する。
図1に例示した方向では、フランジ118は、キャリア体108の底面(例示されていない)と当接する。
【0069】
幾つかの実施例では、第1のシール構造120は、フランジ118内に形成されたチャネルの形態を採用し、この際、弾性的に変形可能な材料は、キャリア体108と当接しない。例えば、このチャネルを形成する領域は、他の領域と比較して、弾性変形可能な材料とキャリア体108との間に空気又は空間が存在する。再度、
図5を参照すると、これらの実施例では、第1のシール構造120は、上述したチャネルの形態を有している。例えば、第1のシール構造120は、フランジ118の周りを取り囲むように延在して、中心軸114を囲むリング状のチャネルを形成してもよい。
【0070】
これらの実施例の第1のシール構造120は、例えば、真空下でシールを形成するように機能する。例えば、真空が適用されると、第1のシール構造120を形成するチャネル内の空気が真空化される。これにより、フランジ118は、シールを形成するキャリア体108に対して強制的に(真空の強さ、チャネルの正確な構造などに基づき)押圧する。
【0071】
図5の実施例のチャネル120は、膜本体104の円筒形状部分とフランジ118とが出合う場所から所定の距離で離間するように設けられている。例えば、所定の距離は、チ上記のように膜本体104が変形する際にャネルを真空化することで形成されるシールが損なわれないことを確実にするように選択されてもよい。
【0072】
第1のシール構造120が、フランジ118とは異なる膜本体104の部分に設けられる幾つかの実施例では(フランジ118が設けられるか否かにかかわらず)、例えば、第1のシール構造は、膜本体104の内側に面する表面(中心縦軸114に対向する表面)上のチャネルの形態であってもよい。
【0073】
他の実施例では、第1のシール構造120は、キャリア体108に対してフランジ118(又は適用される実施例に基づいて、膜本体104の別の部分)をシールするための他の手段を提供することができる。例えば、キャリア体108に対してフランジ118を固定して、シールを形成するために、固定機構(第1のシール構造120の一部として)の様々な実施例が設けられ得る。当業者であれば、所望のシールを形成するために、物体を別の物体に対して十分に強制的に固定させ、取り付け、又はクランプするために、様々な仕方があることを理解できるであろう。幾つかの実施例では、第1のシール構造120は、適当な種類の機械的クランプを含む。これらの第1のシールの他の実施例は、例えば、フランジ118上又は膜本体104の他の部分に適用されてもよい。
【0074】
例えば、幾つかの実施例では、第1のシール構造120は、膜本体104の外側部分112の周囲に配置されるストラップを備えることができる。ストラップは、キャリア体108に対して(ストラップの近傍で)膜本体104を強制的に押圧するように、膜本体104の周りで締め付けるように機能することができる。
【0075】
幾つかの実施例では、成形用の膜100は、第2のシール構造を備えるが、これは、成形用の膜100の第2の端部に向かって設けられる。成形用の膜100の第2の端部は、成形用の膜100の第1の端部116と反対側に設けられる。
図1、
図4及び
図5の実施例では、成形用の膜100の第2の端部124に参照番号が付けされている。これらの図に例示される方向では、第2の端部124は、成形用の膜100の上端である。例えば、第2のシール構造は、使用中、膜本体104が目標物体102と当接しない位置に設けられる。
【0076】
図5を参照すると、例示的な第2のシール構造510が示されているが、これは、成形用の膜100の第2の端部124に向っている。例えば、第1のシール構造と第2のシール構造との間で、目標物体102と当接する膜本体104の領域があるように、上述した第1のシール構造120と第2のシール構造510とが配置される。これらの実施例では、膜本体104と当接する目標物体102の周囲にシールが形成される。
【0077】
例えば、第2のシール構造510は、膜本体104の内部に配置されるキャリア体108に対してシールを形成するように構成される。
図5の実施例では、第2のシール構造510は、膜本体104の内側に面する表面(中心縦軸114に対向する表面)に設けられたチャネルを含む。これらの実施例では、第2のシール構造510は、第1のシール構造120に関して上述したようにチャネルの形態を採用する。他の実施例では、第2のシール構造510は、第2の端部124に向かってキャリア体108に対して膜本体104を固定する(例えばクランプする等)機構等のシールを形成する他の手段を備えていてもよい。当業者であれば、所望のシールを形成するように、物体を別の物体に対して十分に強制的に固定させ、取り付け、又はクランプするために、様々な仕方があることを理解できるであろう。幾つかの実施例では、第2のシール構造510は、適当な種類の機械的クランプを含む。幾つかの実施例では、外面106(例えば、
図1、
図4、及び
図5の方向でのキャリア体108の上面)に対して実質的に垂直であるキャリア体108の表面上にシールを形成するように、第2のシール構造510が構成される。
【0078】
例えば、幾つかの実施例では、第2のシール構造510は、膜本体104の外側部分112の周りに配置されたストラップを含むことができ、これは、膜本体104の周りで締め付けて、キャリア体108に対してストラップの近傍の膜本体104の領域を強制的に押圧することで、膜本体104の周りで締め付けるように機能してもよい。
【0079】
幾つかの実施例では、第2のシール作動機構を設けることができ、これは、第2のシール構造510に対してシールを適用するように作用する。例えば、第2のシール作動機構は、第2のシール構造の構造に基づいて、ストラップを締めたり、クランプ等を適用させるように用いることができる。例えば、第2のシール作動機構は、操作構造体を作動させる機構とは独立して働く。このような実施例では、第2のシール作動機構は、例えば、目標物体102を挿入するために膜本体104が伸張する際、第2のシール構造を開口した状態に保持するために用いることができる。
【0080】
幾つかの実施例では、成形用の膜100を横切って、圧力差を及ぼすことができるが、例えば、成形用の膜100とキャリア体108との間の容積を真空化させ、及び/又は、成形用の膜100に外部圧力を加えることで、圧力差を加えてもよい。例えば、目標物体102の周りの空間を物質(例えば、樹脂)が充填するように、圧力差を適用してもよい。幾つかの実施例では、目標物体102に対して膜本体104を押し付けることを、圧力差が助けるようにしてもよい。幾つかの実施例では、成形用の膜100とキャリア体108との間の容積を真空化することと、外部圧力を加えることとの組合せが用いられてもよい。
【0081】
上述したように、成形用の膜100の幾つかの実施例では、第1のシール構造120を含む。幾つかの実施例では、第1のシール構造120と第2のシール構造510の双方が含まれてもよい。膜本体104とキャリア体108との間に真空が所望される幾つかの実施例では、目標物体のいずれの側面に真空シールが形成可能な仕方で、第1のシール構造120と第2のシール構造510の双方が含まれてもよい。このような実施例は、所望の用途に応じて適用されてもよい。
【0082】
例えば、第1のシール構造120と第2のシール構造510が含まれていて、成形用の膜100のすぐ外側の空間には真空がない実施例があり得る。例えば、この実施例は、真空化されるオートクレーブ内に成形用の膜100が配置されない場合である。このような実施例では、空気を真空化する手段(例えば、管、パイプなど)が設けられて、成形用の膜100とキャリア体108との間に真空を作り出すように構成されてもよい。このような実施例では、成形用の膜100とキャリア体108との間の空間内に物質(例えば樹脂)を導入する手段(例えば管、パイプなど)を設けることもできる。
【0083】
これらの実施例では、真空が適用されると、除かれた空気によって残された間隙が物質によって充填されて、このため、目標物体102が被覆される。シール構造が、上述したチャネルの形態を採用する実施例では、真空を適用することで、対応するシールを形成する。
【0084】
フランジ118が設けられる幾つかの実施例では、成形用の膜100は、剛性ベース構造を含み得るが、この剛性ベース構造は、フランジ118の最も内側の縁部に向かって、フランジ118に対して接続される。例えば、剛性ベース構造は、剛性リングであってもよい。例えば、剛性ベース構造は、剛性ディスクであってもよい。
図1の実施例では、第1の剛性ベース構造122が設けられているが、これは、フランジ118に接続された剛性ディスク122の形態を有している。
図5の実施例では、第2の剛性ベース構造506が設けられているが、これは、剛性リング506の形態を有している。第1及び第2の剛性ベース構造122、506は、上述した剛性ベース構造の例である。これら剛性ベース構造122、506は、例えば、金属などの適当な剛性材料を含むことができる。
【0085】
幾つかの実施例では、剛性ベース構造122、506は、キャリア体108に対して剛性ベース構造122、506を固定するための固定機構を備える。例えば、
図5に示した実施例では、第2の剛性ベース構造506は、剛性リング固定機構508を備える。
【0086】
剛性ベース構造122、506の固定機構は、クランプ機構、ねじ及び/又はボルトを利用する機構など、様々な形態で提供されることができる。
【0087】
幾つかの実施例では、成形用の膜100は、第1のアライメント構成(又は位置決め構成)を、第2のアライメント構成と係合するように構成した備えており、中心縦軸114の周りで、キャリア体108に対する成形用の膜の回転の位置決めが固定されるようにする。例えば、第1及び第2のアライメント構成は、成形用の膜100の中で、必要に応じて、キャリア体及び目標物体を概ね位置決めすることを助けることもできる(回転方向だけに限定されない)。例えば、目標物体102の特定の部分が、円筒形状の膜本体104の周囲の特定の位置又はその付近に位置決めされることが望ましい場合がある。例えば、正しい位置決めによって、第1及び/又は第2のシール構造の正しい配置を可能にして、膜本体104の操作の最中にシールが乱されないようにしてもよい。第1及び第2のアライメント構成は、そのような位置決めを達成するために提供されてもよい。
【0088】
図1の実施例では、成形用の膜100は、ガイドピンの形態で、第1のアライメント構成126を備えている。これらの特定の実施例では、3つのガイドピンが、中心縦軸114の周りの異なる角度位置に設けられている。これらガイドピン126は細長いため、膜本体104が非変形状態のとき、中心縦軸114と実質的に平行な方向に延在する。ガイドピンが用いられる実施例では、任意の個数のガイドピンを用いることができる。
【0089】
ガイドピンは、剛性ベース構造122、506の中に設けることができる。例えば、ガイドピンは、剛性ディスク122上に設けることができる。幾つかの他の実施例では、ガイドピンは、剛性リング506上に設けることができる。幾つかの実施例では、ガイドピンは、例えば、膜本体104の一部であってもよく、また、フランジ118上に設けられてもよい。例えば、ガイドピンは、フランジ118を形成する弾性的に変形可能な材料の中に成形することができる。
【0090】
図1の実施例では、キャリア体108は、第2のアライメント構成128を備えている。これらの特定の実施例では、第2のアライメント構成128は、ガイドピン126を受け入れる穴の形態を有している。
図1に例示した特定の実施例では、キャリア体108は、内側に延出するフランジ130を含むが、このフランジ130は、フランジ118と当接するキャリア体108の一部に設けられている。これらの実施例では、内側に延出するフランジ130は、使用中、成形用の膜100の第1の端部116に向って位置決めされる。第2のアライメント構成128は、内側に延出するフランジ130の中に設けられた貫通孔を含む。必要に応じて、膜本体104と目標物体102との位置を合わせるために、貫通孔128の中にガイドピンが受け入れられる。
【0091】
他の実施例では、異なる第1のアライメント構成と第2のアライメント構成とが設けられてもよい。例えば、成形用の膜100は、キャリア体108上の相補的構造と係合する構造を備えることで、成形用の膜100とキャリア体108との間の相対的な回転位置が固定されるようにしてもよい。例えば、成形用の膜100上に1つ又は複数の凸部(又は突起)及び/又は凹部(又は溝部)を設けて、キャリア体108上の相補的な1つ又は複数の凸部(又は突起)及び/又は凹部(又は溝部)と係合させることで、相対的な回転位置が固定されるようにしてもよい。当業者であれば、本明細書で説明した実施例に関して、相対的な回転位置を固定するために様々な仕方があることを理解するであろう。
【0092】
幾つかの実施例では、複数の操作構造体110、910の夫々は、各操作構造体110、910内に成形されるように、操作構造体の繊維補強を含む。
図9、
図10、及び
図11の実施例では、操作構造体の繊維補強940が設けられている。これらの実施例では、操作構造体の繊維補強940は、例えば、埋め込み操作部材920の周囲に配置された1つ又は複数の織物層(又は繊維層)を含む。例えば、操作構造体の繊維補強は、各操作構造体に限定される。
【0093】
操作構造体の実施例と合わせて操作構造体の繊維補強を設けることで、有利には、この操作構造体に対して構造補強を提供できる(例えば、作動機構504から伝えられる力による損傷を回避できるようにする)。幾つかの実施例では、操作構造体の実施例と合わせて操作構造体の繊維補強を設けることは、この操作構造体に生じる変形量の制御を可能にしてもよい。例えば、用いられる織物(又は繊維)は、弾性変形が起きないようにしてもよい。
【0094】
図9、
図10、及び
図11は、操作構造体内の繊維補強の具体例に過ぎない。例えば、繊維補強を含む第1の操作構造体110の実施例もあり得る。例えば、繊維補強は、細長い貫通孔204を囲むように、1つ又は複数の層に設けられてもよい。所望の補強の大きさに従って、操作構造体の実施例の一部として、任意の構成及び/又は個数の繊維補強層を設けることができる。
【0095】
幾つかの実施例では、膜本体104の変形量を限定するために、膜本体104には、膜本体の繊維補強が設けられる。
図12は、成形用の膜100の概略的な要部の平面の断面図であるが、この図では、膜本体の繊維補強1202が設けられている。これらの実施例では、膜本体の繊維補強1202は、中心縦軸114を取り囲むように、1つ又は複数の連続した繊維層を含む。膜本体の繊維補強1202は、中心縦軸114に沿った方向で、膜本体104の長さの全体又は一部にわたって延在してもよい。
【0096】
膜本体104が変形して、その中に空間を作り出す際、中心縦軸114から離れる量(又は程度)を制限するために、膜本体の繊維補強1202を用いることができる。
【0097】
上述したように、幾つかの実施例では、膜本体104とキャリア体108との間の真空が所望なように、第1のシール構造と第2のシール構造の双方を設けることができる。幾つかの実施例では、成形用の膜の全体が、実施例に従って、真空下のチャンバ(例えば、オートクレーブなど)の中に配置されてもよい。このような実施例では、第2のシール構造を除くことができる。
【0098】
例えば、真空下のチャンバ内で成形用の膜が用いられることが想定される幾つかの実施例では、第1のシール構造は、封入される物質の流れを有意に抑制又は阻止するのに十分な密閉を形成できるが、必ずしも真空密閉である必要はない。
【0099】
真空下のチャンバ内で成形用の膜が用いられることが想定される幾つかの実施例では、成形用の膜はリザーバ構造を備えるが、これは、成形用の膜の第2の端部124に向かって設けられる。これらの実施例では、リザーバ構造は、封入用の物質を導入するために設けられる。
図13は、実施例に従う、成形用の膜100の概略的な斜視図である。
図13の実施例では、先の図と対比して、成形用の膜100について異なる実施例が例示されている。
図13の実施例では、成形用の膜100は、
図1乃至
図8に関して説明したものと同様であり、上述した特徴の任意の組合せを備えることができる。例えば、
図13の成形用の膜100は、複数の上述した第1の操作構造体110、複数の上述した第2の操作構造体910、又はこれらの組み合わせを備えることができる。
図13に示した例では、実施例に従って、複数の第1の操作構造体110が備えられている。
【0100】
図13から理解できるように、成形用の膜100は、上述した成形用の膜の実施例と比べて、中心縦軸114に関してより大きな寸法を有している。成形用の膜の寸法は、所望の用途に従って選択することができる。これらの実施例では、外面106を有するキャリア体108上に設けられた目標物体102が例示されているが、これは、中心縦軸114に沿った寸法に関して、上述した目標物体とキャリア体とは異なっているが、これらは単なる例である。例えば、これら実施例の成形用の膜100は、より大きな長さの円筒形状に対応するコイルを封入する際に用いられる。
図13の実施例では、上述の実施例とは異なる寸法が例示されている。
【0101】
図13の実施例では、成形用の膜100は、リザーバ構造1302を含む。これらの実施例では、リザーバ構造1302は、漏斗状の容器を形成し、この中に所望の量の物質が保持できるようにしている。これらの実施例では、リザーバ構造1302は、第2の端部124にて、中心縦軸114に対して、全周にわたって延在している。
【0102】
これらの実施例に従う成形用の膜100は、使用中、真空チャンバの中に配置することができる。目標物体302を保持するキャリア体108は、膜本体104の中に配置されてもよい。これらの実施例では、真空チャンバ内に真空が適用されると、膜本体104とキャリア体108との間の空気が取り除かれて、リザーバ構造1302内に保持された物質が、残された空間内に引き込まれる。このようにして、目標物体102の全体が、所望の物質内に覆われることが可能になる。
【0103】
オートクレーブなどの閉じたチャンバの内側で封入処理が行われる用途では、膜本体104の自動化された操作は、特に有利であり得る。何故なら、一度、典型的な成型(又はモールド)が真空チャンバ内に配置されると、手動操作が不可能になるからである。しかしながら、上述した実施例では、作動機構を用いて操作を自動化した方法が提供されており、これらは真空チャンバの中で操作を行うことができる。このため、真空チャンバの内部で行われる様々な処理の最中に、外部成型のさらなる調整が可能になる。
【0104】
なお、上述した実施例では、キャリア体の外面は、単純な円筒形状の外面に対応している。しかしながら、他の実施例では、上述のようにキャリア体が成形用の膜の中に位置決めされる際、キャリア体は、中心縦軸114から離れるように延出する1つ又は複数のフランジ又は突起を備えることができる。例えば、キャリア体は、ボビン等の形状に類似した形状を有し得る。
図17には、実施例に従って、目標物体102上に外部成型を形成する成形用の膜100の概略的な斜視図の断面が示されている。これらの実施例では、
図17に例示したフランジを含むキャリア体108上に目標物体が保持されている。例えば、目標物体102が置かれるチャネルのいずれかの側面にフランジが設けられる。これらの実施例では、目標物体102上で膜本体104が収縮して、緊密に嵌合する外部成型を形成する。キャリア体の形状がなんであれ、そのキャリア体と共に用いられる成形用の膜の例は、適当な形状の膜を有しており、目標物体上に緊密に嵌合する外部成型を形成できるようにしている。
【0105】
物質中に目標物体を封入する処理中に用いられる方法で、上述した実施例の任意の成形用の膜を使用することができる。なお、第1及び第2のシール構造120、510が設けられる実施例では、成形用の膜100は、必要に応じて、任意の方向で使用できることに留意されたい。例えば、
図15は、地面に対して水平に配向された成形用の膜100の一例についての概略的な斜視図である。また、例えば、
図16は、成形用の膜100の第1及び第2の端部の位置を入れ替えて配向した成形用の膜100の一例についての概略的な斜視図である。換言すると、
図16の成形用の膜100は、例えば、
図1に例示された向きと比較して、上下が逆にされている。このような実施例では、成形用の膜100は、キャリア体上で下向きにすることができる。第1及び第2のシール構造は、用いられる任意の方向に合せて設けることができる。
【0106】
図14は、実施例に従って目標物体を封入する処理中に用いられる方法1400のフロー図である。より具体的には、この方法1400には、目標の周囲に緊密に嵌合する外部成型を形成することが含まれる。以下の方法1400の説明では、上述した実施例が参照される。
【0107】
方法1400のステップ1402では、外部成型を形成するため、再使用可能な成形用の膜(又はメンブレン)が提供される。再使用可能な成形用の膜は、本明細書で説明した実施例のうち、任意のものの成形用の膜である。方法1400のステップ1404では、キャリア体108の外面上に目標物体102が提供される。
【0108】
方法1400のステップ1406では、操作構造体110、910が操作されて、円筒形状の膜本体104が変形される。これによって、円筒形状の膜本体104の内部の空間内に、キャリア体上に設けられた目標物体102が収容されるようにする。例えば、上述したように、膜本体104を操作して、変形させるため、操作構造体110、910が用いられている。上述したように、操作構造体110、910とは、問題となっている操作構造体110、910に対して局所的に膜本体104の領域を変形させるために機械的な力が及ぼされ得る場所である。例えば、中心縦軸114から離れる方向に、各操作構造体110、910にて機械的な力が加えられて、膜本体104を変形させて、その中に空間を形成し、又は、中心縦軸114に向かう方向に機械的な力が加えられて、中心縦軸114に向って膜本体104を押すようにする。
【0109】
方法1400のステップ1408では、キャリア体108上に設けられた目標物体102を、円筒形状の膜本体104内の空間内に挿入する。例えば、ステップ1406において、膜本体104を操作することで作り出された空間の中に、キャリア体108上に保持された目標物体102を挿入する。
【0110】
図13は、膜本体104の中に部分的に挿入された目標物体102が例示されている。これら実施例では、ステップ1408の完了時に、目標物体が膜本体の中にあるが、この目標物体は、緊密に嵌合する外部成型を形成するように、膜本体が目標物体上で収縮可能な位置にある。例えば、
図4の実施例では、目標物体102(
図4では示されていない)は、完全に円筒形状の膜本体104の中にあることを例示している。なお、効果的に緊密に嵌合する外部成型を形成するために、膜本体104が目標物体102を完全に覆うことが望ましい。
【0111】
方法1400のステップ1410では、操作構造体110、910を操作して、目標物体102上で膜本体104を収縮させて、目標物体102上で緊密に嵌合する外部成型を形成する。例えば、空間を作り出すために、中心縦軸114から離れるように操作構造体110、910に加えられた力が解放されて、膜本体104を収縮させてもよい。これらの実施例では、膜本体104は、目標物体102上で収縮する。例えば、膜本体104は、目標物体102上の表面変化と整合することで、緊密に嵌合してもよい。例えば、緊密な嵌合のため、過剰の量の物質が蓄えられる可能性のある空間を避けてもよい。例えば、膜本体104は、緊密に嵌合する外部成型を形成することで、目標物体102のすべての表面上で比較的に一貫した厚さを有する物質の被覆が容易に得られるようにしてもよい。
【0112】
幾つかの実施例では、方法1400には、所与の操作構造体110、910の近傍の目標物体102上の外部成型を調整するため、所与の操作構造体110、910を操作することが含まれる。上述したように、機械の使用(例えば、手を用いて膜本体104を手動で操作するのとは対照的に、作動機構504に基づく)によって、膜本体104に機械的な力を適用するように、操作構造体110、910が設けられている。例えば、膜本体104の操作は、自動化された仕方で制御されてもよい(例えば、コンピュータ制御された作動機構を用いる)。これら実施例では、膜本体104を局所的に操作するために、個々の操作構造体を使用することができる。このようにして、必要に応じて、外部成型を局所的に調整してもよい。有利には、本明細書に記載の成形用の膜と方法を用いることで、目標物体102上に外部成型を適用するより効率的な方法が提供される。
【0113】
上述したように、方法1400は、目標物体102と緊密に嵌合する外部成型を提供する。幾つかの実施例では、方法1400は、物質中に目標物体を封入することに関してさらなる処理を含み得る。
【0114】
例えば、方法1400は、成形用の膜100によって形成された外部成型と、キャリア体108によって形成された内部成型との間に物質(例えば、樹脂)を導入することを含み得る。例えば、方法1400は、更に、成形用の膜100とキャリア体108との間で目標物体102がシール(又は密閉)されるように、真空を適用して、キャリア体に対して成形用の膜100をシールさせることを含み得る。
【0115】
上述したように、この真空は、成形用の膜100とキャリア体108との間に適用されてもよく、又は、オートクレーブなどの真空化されたチャンバの中に成形用の膜100とキャリア体を配置してもよい。
【0116】
例えば、成形プロセスを完了させるために、物質を硬化させるように熱を加えてもよい。有利には、緊密に嵌合する外部成型のため、均一な仕方で目標物体102を封入することができ、また、過剰な物質の領域を回避することができる。
【0117】
例えば、プロセスの終了時に、封入された目標物体102から離れるように成形用の膜100を取り出すために、操作構造体110、910を使用することができる。このことは、例えば、上述のように、自動化されて、制御された仕方で行われ得る。
【0118】
本明細書(添付した特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)中に開示された特徴、及び/又は、このように開示された任意の方法又は処理のステップの全ては、任意の組合せで組み合わせることができる。ただし、これらの特徴及び/又はステップの少なくとも幾つかが相互に排他的になる組合せは除外される。
【0119】
本明細書(添付した特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)中に開示された各特徴は、同一の目的、同等の目的、又は類似の目的を達成する代替的な特徴と置換えることができる。ただし、そうでないことが明記されている場合は除外されるる。従って、特に明記されない限り、開示された各特徴は、同等の特徴又は類似の特徴の一般的な一連のうちの一例に過ぎない。
【0120】
本発明は、上述した実施例の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付した特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)中に開示された特徴のうち、任意の新規なもの、又は、任意な新規の組合せに及ぶことができ、また、このように開示された任意の方法又は処理のステップのうち、任意の新規なもの、又は、任意の新規な組合せに及ぶことができる。
【外国語明細書】