(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039005
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】フレキシブル表示針のアクチュエート機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/00 20060101AFI20240313BHJP
G04B 19/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G04B19/00 A
G04B19/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023143500
(22)【出願日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】22194637.9
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・マテ-ドゥ-ランドロワ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フレキシブル表示針がアクチュエート機構によって駆動されるときにフレキシブル表示針がたどる経路を変える。
【解決手段】第1のフレキシブルアーム4の第1の端に接続される第1の駆動パイプ2と、第2のフレキシブルアーム8の第1の端に接続される第2の駆動パイプ6とを備えるフレキシブル表示針1をアクチュエートするアクチュエート機構12に関する。第1及び第2のフレキシブルアームどうしは、頂部10によって接続され、第1の駆動パイプは、所定の第1の予応力付与角度に取り付けられ、第2の駆動パイプは、第1の駆動パイプと反対側の方向に所定の第2の予応力付与角度に取り付けられ、これによって、弾性的に予応力を与えられたフレキシブル表示針は、アクチュエート機構の通常の動作中に、常に、アクチュエート機構全体をテンション下の状態に維持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレキシブルアーム(4)の第1の端に接続される第1の駆動パイプ(2)と、第2のフレキシブルアーム(8)の第1の端に接続される第2の駆動パイプとを備えるフレキシブル表示針(1)をアクチュエートするアクチュエート機構(12)であって、
前記第1及び第2のフレキシブルアーム(4、8)どうしは、それらの第2の端において頂部(10)によって接続され、
前記第1の駆動パイプ(2)は、所定の第1の予応力付与角度に取り付けられ、
前記第2の駆動パイプ(6)は、前記第1の駆動パイプ(2)と反対側の方向に所定の第2の予応力付与角度に取り付けられ、
これによって、弾性的に予応力を与えられた前記フレキシブル表示針(1)は、前記アクチュエート機構(12)の通常の動作中に、常に、前記アクチュエート機構(12)全体をテンション下の状態に維持し、
前記アクチュエート機構(12)は、前記フレキシブル表示針(1)の前記第1の駆動パイプ(2)が駆動される第1の筒かな(14)を備え、
前記第1の筒かな(14)は、計時器用ムーブメントによって駆動され、
前記第1の筒かなは、中間車セット(18)を駆動し、
この中間車セット(18)は、前記第2の駆動パイプ(6)が駆動される第2の筒かな(22)を駆動し、
前記フレキシブル表示針(1)は、初期位置と終了位置の間を動き、この終了位置においてジャンプして初期位置に戻り、
前記フレキシブル表示針(1)は、この運動の間に所望のように形と長さを変え、
これによって、対応する第1及び第2の筒かな(14、22)に前記第1及び第2の駆動パイプ(2、6)を取り付けることによって発生する弾性テンションに追加される、前記第1の駆動パイプ(2)に対する前記第2の駆動パイプ(6)の角位置の変化によって発生する追加の弾性テンションが発生し、
前記中間車セット(18)と前記第2の筒かな(22)の間の運動学的リンクは、前記フレキシブル表示針(1)がジャンプするときに一時的に妨げられて、
そのときに、前記第2の筒かな(22)は、一時的に自転が自由であり、前記アクチュエート機構(12)の残りの部分から切り離され、
これによって、前記追加の弾性テンションが解放され、前記第2のフレキシブルアーム(8)が弛緩し、前記第2の筒かな(22)が回転し、
そのときに、前記第1及び第2の筒かな(14、22)どうしは、溝(28)内にあるピン(26)を介して直接係合し、
前記第1の筒かな(14)は、前記第2の筒かな(22)が再び前記中間車セット(18)と係合するまで、前記第2の筒かな(22)だけでなく前記中間車セット(18)も駆動する
ことを特徴とするアクチュエート機構。
【請求項2】
前記中間車セット(18)は、第1の中間車(16)と第2の中間車(20)を備え、
前記第2の中間車(20)は、前記第1の中間車(16)と回転可能に結合し、
前記第1の筒かな(14)は、前記第1の中間車(16)を駆動し、
前記第2の中間車(20)は、前記第2の筒かな(22)を駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエート機構。
【請求項3】
前記第2の筒かな(22)には、第1の筒かな(14)のプレートに切断される溝(28)に突き出るピン(26)が設けられ、
前記第2の中間車(20)には、その周部の特定の位置に、歯なし区画(34)がある
ことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエート機構。
【請求項4】
前記溝(28)は、前記第1の筒かな(14)の中心を中心とする円の弧の形状であり、前記溝(28)の2つの端において第1及び第2の端部(30、32)によって境界が定められる
ことを特徴とする請求項3に記載のアクチュエート機構。
【請求項5】
前記溝(28)は、前記フレキシブル表示針(1)の形状と長さの所望の変化によって決まる角度的区画にわたって形成され、
この角度的区画には、前記ピン(26)の全体の寸法構成を考慮に入れるために追加の角度的区画が追加される
ことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエート機構。
【請求項6】
前記第1及び第2の駆動パイプ(2、6)の回転軸と前記フレキシブル表示針(1)の前記頂部(10)の間に延在している第1及び第2のフレキシブルアーム(4、8)の二等分線によって形成される角度α
Aigは、前記フレキシブル表示針(1)がその初期位置にあるときの二等分線の方向であり、
【数3】
によって与えられ、ここで、
θ1は、前記フレキシブル表示針(1)の前記第1のフレキシブルアーム(4)に前記計時器用ムーブメントによって与えられる初期位置からの回転角であり、
iは、前記フレキシブル表示針(1)の前記第1及び第2のフレキシブルアーム(4、8)間のギア比である
ことを特徴とする請求項3に記載のアクチュエート機構。
【請求項7】
リュウズ(43)によって制御可能な針セッティング機構(42)と前記第1の筒かな(14)の間に配置されるように意図された摩擦クラッチ(41)を備え、
前記針セッティング機構(42)と前記リュウズ(43)は、前記計時器用ムーブメントに備えられ、
前記摩擦クラッチ(41)は、前記リュウズ(43)が針セッティング位置にあり、かつ、前記フレキシブル表示針(1)を時計回りに動かすように動作する場合に、前記フレキシブル表示針(1)を時計回りに駆動するように前記第1の筒かな(14)にトルクを伝達するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエート機構。
【請求項8】
前記摩擦クラッチ(41)は、針セッティング位置にあるときに前記フレキシブル表示針(1)を反時計回りに動かすように前記リュウズ(43)を動作させ、所定のしきい値を超えるトルクを与えたときに、摺動するように構成している
ことを特徴とする請求項7に記載のアクチュエート機構。
【請求項9】
前記第1及び第2の筒かな(14、22)どうしは、前記第1の筒かな(14)に対して前記第2の筒かな(22)を正確にポジショニングするピン(26)を介して直接係合し、
前記第1の筒かな(14)は、前記第2の筒かな(22)が再び前記中間車セット(18)と係合するまで、前記第2の筒かな(22)だけでなく前記中間車セット(18)も駆動し、
前記ピン(26)の位置によって駆動が正しく再開されることを確実にし、
前記頂部が互いにブロックし合うことを防ぐ
ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエート機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル表示針のためのアクチュエート機構に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、フレキシブル表示針に関する。このような針は、従来技術において既に知られており、第1のフレキシブルアームの第1の端に接続される第1の駆動パイプと、第2のフレキシブルアームの第1の端に接続される第2の駆動パイプとを備える。第1及び第2のフレキシブルアームは、第2の端において、頂部によって互いに接続される。フレキシブル表示針に応力が与えられていない自由状態において、第1の駆動パイプと第2の駆動パイプは、離間して配置される。逆に、フレキシブル表示針が特定の形状と長さを有する動作位置は、第1の駆動パイプと第2の駆動パイプが同じ回転軸のまわりに同軸に配置される、応力が与えられる応力位置である。この応力位置において、第1の駆動パイプは、所定の第1の予応力付与角度に取り付けられ、第2の駆動パイプは、第1の駆動パイプとは反対側の方向である所定の第2の予応力付与角度に取り付けられる。フレキシブル表示針は、第1の駆動パイプの角位置に対して第2の駆動パイプの角位置が回転軸を中心に回転することによって変わるに従って、所望のように形状と長さを変えるように構成する。このために、フレキシブル表示針の第1のフレキシブルアームは、情報を表示するために計時器用ムーブメントによってフレキシブル表示針に与えられる角度θ1の回転を行う。第2のフレキシブルアームについては、計時器用ムーブメントによってフレキシブル表示針に与えられる角度θ1の回転は、アクチュエート機構によって特定の回転角度の分、変調されるので、フレキシブル表示針の第2のフレキシブルアームに与えられるこの回転角度は、フレキシブル表示針の回転及び形と長さの変化を決める。
【0003】
フレキシブルな可変長の表示針をアクチュエートする機構は、従来技術において既に知られている。そのような様々なアクチュエート機構はすべて、以下の同じ動作原理に基づいている。すなわち、計時器用ムーブメントによってアクチュエート機構の入力に与えられる角回転θ1は、このアクチュエート機構によって回転角φの分、変調され、この回転角φは、フレキシブル表示針の第1及び第2のフレキシブルアームに対して反対側の方向に与えられることによって、フレキシブル表示針の回転及び形と長さの変化を決める。
【0004】
このような従来技術の駆動機構において、フレキシブル表示針は、単一の回転で、様々な形状(円形、楕円形、三角形など)の経路をたどる。すなわち、フレキシブル表示針は、所定の出発点から、所望のように自ら変形しつつ完全な1回転を行い、出発点に戻り、このプロセスを再びやり直す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フレキシブル表示針がアクチュエート機構によって駆動される場合に、フレキシブル表示針がたどる経路を変えることを可能にするフレキシブル表示針のためのアクチュエート機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、第1のフレキシブルアームの第1の端に接続される第1の駆動パイプと、第2のフレキシブルアームの第1の端に接続される第2の駆動パイプとを備えるフレキシブル表示針をアクチュエートするアクチュエート機構に関する。前記第1及び第2のフレキシブルアームどうしは、それらの第2の端において頂部によって接続され、前記第1の駆動パイプは、所定の第1の予応力付与角度に取り付けられ、前記第2の駆動パイプは、前記第1の駆動パイプと反対側の方向に所定の第2の予応力付与角度に取り付けられ、これによって、弾性的に予応力を与えられた前記フレキシブル表示針は、前記アクチュエート機構の通常の動作中に、常に、前記アクチュエート機構全体をテンション下の状態に維持し、前記アクチュエート機構は、前記フレキシブル表示針の前記第1の駆動パイプが駆動される第1の筒かなを備え、前記第1の筒かなは、計時器用ムーブメントによって駆動され、前記第1の筒かなは、中間車セットを駆動し、この中間車セットは、前記第2の駆動パイプが駆動される第2の筒かなを駆動し、前記フレキシブル表示針は、初期位置と終了位置の間を動き、この終了位置においてジャンプして初期位置に戻り、前記フレキシブル表示針は、この運動の間に所望のように形と長さを変え、これによって、対応する第1及び第2の筒かなに前記第1及び第2の駆動パイプを取り付けることによって発生する弾性テンションに追加される、前記第1の駆動パイプに対する前記第2の駆動パイプの角位置の変化によって発生する追加の弾性テンションが発生し、前記中間車セットと前記第2の筒かなの間の運動学的リンクは、前記フレキシブル表示針がジャンプするときに一時的に妨げられて、そのときに、前記第2の筒かなは、一時的に自転が自由であり、前記アクチュエート機構の残りの部分から切り離され、これによって、前記追加の弾性テンションが解放され、前記第2のフレキシブルアームが弛緩し、前記第2の筒かなが回転し、そのときに、前記第1及び第2の筒かなどうしは、第1の筒かなに対して第2の筒かなを正確にポジショニングするピンを介して直接係合し、これによって、前記第1の筒かなは、前記第2の筒かなが再び前記中間車セットと係合するまで、前記第2の筒かなだけでなく前記中間車セットも駆動する。ピンの位置によって、駆動が正しく再開され、頂部が互いにブロックし合うことを防ぐことができる。
【0007】
本発明のいくつかの特定の実施形態は、以下の特徴を有する。
- 前記中間車セットは、第1の中間車と第2の中間車を備え、前記第2の中間車は、前記第1の中間車と回転可能に結合し、前記第1の筒かなは、前記第1の中間車を駆動し、前記第2の中間車は、前記第2の筒かなを駆動する。
- 前記第2の筒かなには、第1の筒かなのプレートに切断される溝に突き出るピンが設けられ、前記第2の中間車には、その周部の特定の位置に、歯なし区画がある。
- 前記溝は、前記第1の筒かなの中心を中心とする円の弧の形状であり、前記溝の2つの端において第1及び第2の端部によって境界が定められる。
- 前記溝は、前記フレキシブル表示針の形状と長さの所望の変化によって決まる角度的区画にわたって形成され、この角度的区画には、前記ピンの全体の寸法構成を考慮に入れるために追加の角度的区画が追加される。
- 前記第1及び第2の駆動パイプの回転軸と前記フレキシブル表示針の前記頂部の間に延在している第1及び第2のフレキシブルアームの二等分線によって形成される角度αAigは、前記フレキシブル表示針がその初期位置にあるときの二等分線の方向であり、
【0008】
【0009】
によって与えられ、ここで、θ1は、前記フレキシブル表示針の前記第1のフレキシブルアームに前記計時器用ムーブメントによって与えられる初期位置からの回転角であり、iは、前記フレキシブル表示針の前記第1及び第2のフレキシブルアーム間のギア比である。
【0010】
これらの特徴のおかげで、本発明は、第2の回転が第1の回転とは異なる形である、例として完全な2回転を通して、フレキシブル表示針を駆動するように構成するアクチュエート機構を提供することができる。フレキシブル表示針は、所与の初期の出発点から第1の回転を行い、その後に第2の回転を行い、初期の出発点に戻り、この経路を再度繰り返す。また、本発明に係るアクチュエート機構には、単純であり、高さが低いという特徴がある。
【0011】
本発明の特定の実施形態において、リュウズによって制御可能な針セッティング機構と前記第1の筒かなの間に配置されるように意図された摩擦クラッチを備え、前記針セッティング機構と前記リュウズは、前記計時器用ムーブメントに備えられ、前記摩擦クラッチは、前記リュウズが針セッティング位置にあり、かつ、前記フレキシブル表示針を時計回りに動かすように動作する場合に、前記フレキシブル表示針を時計回りに駆動するように前記第1の筒かなにトルクを伝達するように構成している。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、前記摩擦クラッチは、針セッティング位置にあるときに前記フレキシブル表示針を反時計回りに動かすように前記リュウズを動作させ、所定のしきい値を超えるトルクを与えたときに、摺動するように構成している。
【0013】
特定の実装によると、前記第1及び第2の筒かなどうしは、前記第1の筒かなに対して前記第2の筒かなを正確にポジショニングするピンを介して直接係合し、前記第1の筒かなは、前記第2の筒かなが再び前記中間車セットと係合するまで、前記第2の筒かなだけでなく前記中間車セットも駆動し、前記ピンの位置によって駆動が正しく再開されることを確実にし、前記頂部が互いにブロックし合うことを防ぐ。
【0014】
添付の図面を参照しながら本発明に係るアクチュエートデバイスの実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を一層明確に理解することができる。この例は、説明のためにのみ与えられるものであり、本発明の範囲を限定するように意図されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るアクチュエート機構によって駆動されるように意図されたフレキシブル表示針についての正射影図である。
【
図2】本発明に係るアクチュエート機構についての分解斜視図である。
【
図3】フレキシブル表示針の第1のフレキシブルアームと第2のフレキシブルアームの間に位相角が発生している、標準的な動作モードにおける本発明に係るアクチュエート機構の部分正射影図である。
【
図4】フレキシブル表示針がジャンプする直前の本発明に係るアクチュエート機構の状況を示している部分正射影図であり、このフレキシブル表示針の第1のフレキシブルアームと第2のフレキシブルアームの間の位相角が最大となっており、第2の筒かなは、まだ歯なし区画の前にある第2の中間車の最後の歯を介して第2の中間車と係合している。
【
図5】フレキシブル表示針がジャンプした直後であって第1及び第2のフレキシブルアームの間の位相角がゼロであるときの本発明に係るアクチュエート機構の状況を示している部分正射影図であり、第2の筒かなは、まだ第2の中間車と係合していないが、ピンを介して第1の筒かなと直接係合している。
【
図8】
図8、9及び10は、本発明に係るアクチュエート機構によって駆動されるフレキシブル表示針のために考えることができる異なるタイプの経路を示している。
図8は、頂部が2回転にわたって渦巻き状の経路をたどるフレキシブル表示針の経路を示している。
【
図9】ターンの間のピッチとターン数を適応させたフレキシブル表示針の経路を示している。
【
図10】フレキシブル表示針1が各回転中に複数のジャンプを行うフレキシブル表示針の経路を示している。
【
図11】フレキシブル表示針を時計回りに動かすためにリュウズを動作させている、本発明に係るアクチュエート機構の流れ図を示している。
【
図12】
図11と同様な図であるが、フレキシブル表示針を反時計回りに動かすためにリュウズを動作させている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、概して、計時器用ムーブメントにおいて、フレキシブル表示針がたどる経路を変えることを可能にするような、フレキシブル表示針のためのアクチュエート機構を設けることを伴う創造性のある概念から導かれたものである。特に、本発明に係るアクチュエート機構は、フレキシブル表示針が、初期の出発点から、第1の回転、次いで形が第1の回転のものとは異なる第2の回転を順に行い、その後、第2の回転の終わりに初期の出発点に戻り、再度同じ経路を繰り返すように、フレキシブル表示針を駆動するように設計されている。本発明の利点の1つとして、第1及び第2の回転それぞれにおいて表示される変数に対して異なる値範囲を表示することができることがある。また、本発明に係るアクチュエート機構は、非常に単純であり、非常に小さな高さしか占めない。
【0017】
単なる例として以下に説明する本発明に係るアクチュエート機構の実施形態は、24時間表示を可能にする。代表的な例としては、第1の回転中に深夜0時から昼0時までの時間帯を、第2の回転中に昼0時から深夜0時までの時間帯を表示することができるように現在時刻を表示することが挙げられる。
【0018】
全体として、本発明に係るアクチュエート機構によって駆動可能なフレキシブル表示針に参照用番号1を割り当てており、
図1に示している。このフレキシブル表示針1は、第1のフレキシブルアーム4の第1の端に接続される第1の駆動パイプ2と、第2のフレキシブルアーム8の第1の端に接続される第2の駆動パイプ6とを備える。第1及び第2のフレキシブルアーム4及び8どうしは、それらの第2の端において、頂部10によって接続される。
図1に示しているフレキシブル表示針1の、応力が与えられていない自由状態においては、第1及び第2の駆動パイプ2、6どうしは離間する。
【0019】
逆に、フレキシブル表示針1が所定の形と長さを有する動作位置は、第1の駆動パイプ2と第2の駆動パイプ6が回転軸Dのまわりに同軸に配置される、応力が与えられた応力位置である(
図2参照)。この応力位置において、第1の駆動パイプ2は、所定の第1の予応力付与角度に取り付けられ、第2の駆動パイプ6は、第1の駆動パイプ2とは反対側の方向の所定の第2の予応力付与角度に取り付けられる。下の説明を読んだ後に一層明確に理解することができるように、フレキシブル表示針1は、回転軸Dを中心に回転することによって第2の駆動パイプ6の角位置が第1の駆動パイプ2の角位置に対して変わるに従って、所望のように形状と長さが変わるように構成している。
【0020】
本発明に係るフレキシブル表示針1をアクチュエートするためのアクチュエート機構の一実施形態について、全体として参照用番号12を割り当てており、
図2に示している。このアクチュエート機構12は、第1の筒かな14を備え、この第1の筒かな14のアーバー15上にてフレキシブル表示針1の第1の駆動パイプ2が駆動される。この第1の筒かな14は、例えば時計回りに、計時器用ムーブメント(図示せず)によって駆動される。計時器用ムーブメントは、直接又は間に配置された歯車列を介して、第1の筒かな14を駆動することができる。
【0021】
このように、第1の筒かな14は、アクチュエート機構12の動作において駆動の役割を果たす。特に、この第1の筒かな14は、中間車セット18の第1の中間車16を反時計回りに駆動する。この中間車セット18は、さらに、第1の中間車16に回転可能に連結される第2の中間車20を備え、したがって、この第2の中間車20も反時計回りに回転する。最後に、アクチュエート機構12は、第2の中間車20によって時計回りに回転駆動される第2の筒かな22を備える。この第2の筒かな22は、第1の筒かな14のアーバー15上にて自由に回転することができるように取り付けられ、第2の駆動パイプ6が駆動されるアーバー24を備える。なお、一方の第1及び第2の筒かな14、22と、他方の中間車セット18との間の噛み合いを、直接的に又は追加の車とピニオンを介して、行うことができることがわかる。
【0022】
アクチュエート機構12には、さらに、第1の筒かな14のプレートに形成された溝28内へと突き出るピン26が第2の筒かな22にあるという特徴がある。この溝28は、第1の筒かな14の中心を中心とする円の弧の形状をしており、その2つの端においてそれぞれ第1及び第2の端部30及び32によって境界が定められ、図示している例において162.5°の角度的区画にわたって形成されている。この角度的区画の値は、フレキシブル表示針1の形状と長さの所望の変化に応じて決められ、これには、ピン26の全体の寸法構成、例えば20°、そして典型的には2.5°、である安全マージンを考慮に入れるために、追加の角度的区画を追加しなければならない。図は、さらに、第2の中間車20の周部の1箇所に、歯なし区画34があることを示している。以下、これらの異なる要素の役割について詳細に説明する。
【0023】
ここで、例として、第1の筒かな14が、1日1回転のレートで、計時器用ムーブメントによって時計回りに駆動されると仮定する。次に、第1の中間車16と係合する第1の筒かな14は、第1の中間車16を反時計回りに回転駆動し、また、このことによって、第2の中間車20が反時計回りに回転する。最後に、第2の中間車20は、第2の筒かな22を時計回りに駆動する。
【0024】
本発明に係るアクチュエート機構12について説明するためにここで選択される、第1及び第2の筒かな14、22と、第1及び第2の中間車16、20との間のギヤ比のために、第2の筒かな22は、1日当たり1回転未満(0.799)で回転する。これによって、フレキシブル表示針1の第1及び第2のフレキシブルアーム4、8どうしが離れ、ピン26が溝28内に入り始める。ピン26と第1の端部30の間の角距離φは、計時器用ムーブメントによってアクチュエートされるアクチュエート機構12によってフレキシブル表示針1の第1及び第2のフレキシブルアーム4、8に与えられる位相角を表す(
図3参照)。なお、アクチュエート機構12の通常動作中、すなわち、第2の中間車20の歯なし区画34が第2の筒かな22に対向していない場合、すなわち、第2の中間車20と第2の筒かな22が互いに係合している場合、弾性的に予応力が与えられたフレキシブル表示針1は、常に全体のアクチュエート機構12をテンション状態に維持し、このおかげで、第2の筒かな22が所定の位置に保持される。特に、応力下でフレキシブル表示針1を取り付けることによって、そのフレキシブル表示針1に弾性テンションを発生させ、これは、そのフレキシブルアーム4、8どうしを近づける。応力下でフレキシブル表示針1を取り付けることによって発生するこの弾性テンションに、第1の駆動パイプ2の角位置に対する、回転軸Dを中心に回転することによる第2の駆動パイプ6の角位置の変化の結果として、フレキシブル表示針1の形状と長さの変化によって発生する追加の弾性テンションが追加される。
【0025】
図4に示しているように、フレキシブル表示針1の第2の回転の終わりに、第2の中間車20の歯なし区画34が第2の筒かな22に対向するときに、この第2の筒かな22は、一時的に自転が自由となり、アクチュエート機構12の残りの部分から切り離される。特に、フレキシブル表示針1がジャンプする直前のアクチュエート機構12の状況を示している
図4に示しているように、第2の筒かな22は、その第2の筒かな22と第1の筒かな14の間の位相角φを形成するように時計回りに回転するように動作しており、まだ最後の歯Aを介して第2の中間車20に係合している。その後で、第2の中間車20は、最後の歯Aが外れてこの第2の中間車20の歯なし区画34が第2の筒かな22に対向するようになるまで、反時計回りに回転し続ける。この最後の歯Aによって、第2の筒かな22がまだ第2の中間車20と係合していた。このことは、直接的に、第1の駆動パイプ2に対する第2の駆動パイプ6の角位置の変化によって発生する追加の弾性テンションを解放して、第2のフレキシブルアーム8を弛緩させ、第2の筒かな22を時計回りに回転させる結果をもたらす。したがって、第2の筒かな22は、フレキシブル表示針1の第2の回転の終わりまでに、第1の筒かな14と第2の筒かな22の間に形成された140°に達する位相角φの分、キャッチアップする。特に、溝は、162.5°にわたって形成されているが、第2の筒かな22は、140°しか回転しない。このキャッチアップ期間中、ピン26は、溝28の端部30に当接し、第1及び第2の筒かな14、22の間の位相角φは0になる(
図5参照)。このジャンプの後、第2の中間車20の歯なし区画34は、第2の筒かな22に対向し続け、したがって、自由な状態を維持する。しかし、フレキシブル表示針1が受ける弾性テンションは、溝28の端部30にピン26を保持して、第1及び第2の筒かな14、22が回転可能に結合されるようにする。第1の筒かな14は、依然として計時器用ムーブメントによって駆動され、第2の筒かな22を駆動する。これらの第1及び第2の筒かな14、22は、互いに直接係合し、これらの間にギア比が存在しないので、これらの2つの筒かな14、22は、同じ速さで回転する。この結果、アクチュエート機構12のこの動作段階の間に、フレキシブル表示針1の経路は円形となる。
【0026】
当然、第1の筒かな14は、回転しているときに、第2の筒かな22だけでなく、第1及び第2の中間車16、20も駆動する。したがって、ある時点で、第2の筒かな22は第2の中間車20に接触する。したがって、この時点で第2の筒かな22の駆動の変化が発生する。すなわち、第2の筒かな22は、第1の筒かな14と直接係合している状態から、再び第2の中間車20によって標準的な方法で駆動される状態へと移行する。
【0027】
ピン26の位置を調整することは重要である。なぜなら、このことは、前記駆動が再開されたときに、頂部どうしが互いにブロックすることなく、第2の筒かな22が第2の中間車20と噛み合うことを確実にするからである。
【0028】
なお、計時器用ムーブメントによって与えられる駆動トルクが、フレキシブル表示針1の第1のフレキシブルアーム4が関連づけられた第1の筒かな14に与えられることに留意することは重要である。この結果、第1及び第2の駆動パイプ2、6が動作位置にあるときの、第1及び第2の駆動パイプ2、6の回転軸Dと、フレキシブル表示針1の頂部10との間に延在する第1及び第2のフレキシブルアーム4、8の二等分線を考えると、フレキシブル表示針1がその初期位置にあるときにこの二等分線によって形成されるこの二等分線の方向の角度αAigは、計時器用ムーブメントによってフレキシブル表示針1の第1のフレキシブルアーム4に与えられる回転角θ1とは正確には一致しない。この初期位置は、図示している純粋に例示的な例において、6時-12時の軸に対応する位置である。すなわち、角度αAigと角度θ1の間の数学的関係は、以下のように与えられる。
【0029】
【0030】
ここで、αAigは、回転軸Dとフレキシブル表示針の頂部の間に延在している第1及び第2のフレキシブルアームの二等分線によって形成される角度であり、フレキシブル表示針がその初期位置にあるときの二等分線の方向である。θ1は、フレキシブル表示針の第1のフレキシブルアームに計時器用ムーブメントによって与えられる初期の位置からの回転角である。iは、フレキシブル表示針の第1及び第2のフレキシブルアームの間のギヤ比である(この場合、0.799)。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲を逸脱せずに様々な単純な代替形態や改変形態を考慮に入れることができる。
【0032】
上述の例において、その出発点から、ジャンプを初期位置に戻す時点まで、フレキシブル表示針1の頂部10は、2回転にわたって渦巻き状の経路をたどる(
図8参照)。すなわち、第1及び第2の筒かな14、22は、フレキシブル表示針1の連続する2つのジャンプの間に完全な2回転を行うが、第2の中間車20は、第2の中間車20の歯なし区画34が第2の筒かな22に対向しているときにフレキシブル表示針1が初期位置に戻されるので、完全な1回転を行う。
【0033】
当然、
図9に示しているように、ターンの間のピッチとターン数を適応させることによって、フレキシブル表示針1の頂部10の経路を他の経路にすることを考えることができる。同様に、
図10を参照すると、フレキシブル表示針1が各回転中に複数のジャンプを行うように本発明に係るアクチュエート機構12を構成することができる。
【0034】
図2及び8を参照すると、フレキシブル表示針1の弾性テンションの結果として、針をセッティングする際に、ジャンプさせて初期位置から終了位置に動かすために、すなわち、反時計回りにジャンプさせるために、フレキシブル表示針1を動かそうとする試みは、アクチュエート機構12がブロックされたり損傷したりすることをもたらす。
【0035】
このような事態の発生を防ぐため、アクチュエート機構12は、第1の筒かな14と、リュウズ43によって制御される表盤列を備える針セッティング機構42との間に配置されるように意図された摩擦クラッチ41を備える。
図11及び12に、これらの特徴について概略的に示している。
【0036】
針セッティング機構42とリュウズ43は、本発明に係るアクチュエート機構12が配置されるように意図されている計時器用ムーブメントにて備えられ、当業者に知られている。
【0037】
既知のように、リュウズ43は、針セッティング位置にあるときに、針セッティング機構42を制御すること、すなわち、針セッティング機構42に作用すること、ができる。
【0038】
リュウズ43が針セッティング位置にあるときにフレキシブル表示針1を時計回りに動かすために操作された後に、摩擦クラッチ41は、フレキシブル表示針1を時計回りに駆動するために、針セッティング機構42によって与えられるトルクの全部又は一部を第1の筒かな14に伝達するように構成している。
図11に、このシナリオについて示しており、運動の伝達を太い点線の矢印によって示している。
【0039】
針セッティング位置にあるときにフレキシブル表示針1を反時計回りに動かすためにリュウズ43を操作するときに、摩擦クラッチ41は、所定のしきい値よりも大きいトルクが与えられるときに摺動して、過大なトルクが第1の筒かな14に伝達されることを防ぐように構成している。フレキシブル表示針1がその初期位置にありリュウズ43が針を駆動してその終了位置にジャンプさせるように操作されたときに、トルクはこの所定のしきい値に達する。
【0040】
したがって、摩擦クラッチ41のおかげで、リュウズ43から第1の筒かな14へとトルクを伝達して、フレキシブル表示針1をその終了位置からその初期位置へと反時計回りに動かすことが可能になるが、初期位置にあるときには、このトルクの伝達を妨げる。したがって、この構成は、アクチュエート機構12が何らかの方法でブロックされたり破壊されたりすることを防ぐ。このようなことは、フレキシブル表示針1がその初期位置からその終了位置へとジャンプしようと試みた場合に発生する可能性がある。
図12に、このシナリオについて示しており、細い点線で示している矢印が運動の非伝達を表している。
【0041】
摩擦クラッチ41は、金属箔、アーム付きクラッチ、摩擦駆動車のような、当業者に知られている任意のクラッチによって形成することができ、表盤列内に配置される。特に、摩擦クラッチ41は、摺動ピニオンと第1の筒かな14の間に配置され、したがって、ムーブメントが手動でワインドされるときにアクチュエートされない。このようなワインドには、当業者に知られているラチェット車を通り抜けるワインド用ピニオンが関わる。
【0042】
当業者に知られている方法で、計時器用ムーブメントは、さらに、図示していないが、第1の筒かな14と時方輪列の間に配置されるように意図されている針セッティングクラッチを備える。このような針セッティングクラッチのおかげで、針をセッティングするときに、特定のトルクしきい値を超えて時方輪列から第1の筒かな14を切り離して、時方輪列又は時方輪列に接続された運動学的エスケープを損傷しないようにすることが可能になる。
【符号の説明】
【0043】
1 フレキシブル表示針
2 第1の駆動パイプ
4 第1のフレキシブルアーム
6 第2の駆動パイプ
8 第2のフレキシブルアーム
10 頂部
d 回転軸
12 アクチュエート機構
14 第1の筒かな
15 アーバー
16 第1の中間車
18 中間車セット
20 第2の中間車
22 第2の筒かなピニオン
24 アーバー
26 ピン
28 溝
30 第1の端部
32 第2の端部
34 区画
41 摩擦クラッチ
42 針セッティング機構
43 リュウズ
【外国語明細書】