(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003901
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】3次元積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20240109BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240109BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240109BHJP
【FI】
B29C64/245
B33Y30/00
B29C64/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103252
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲永 尊也
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL73
4F213WL87
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】確実にベースプレートの高さ調整を行うことができる3次元積層造形装置を提供する。
【解決手段】3次元積層造形装置1は、造形ボックス3と、可動ステージと、複数の支柱20と、ベースプレート5と、を備えている。支柱20は、ベースプレート5の下面部に当接し、筒孔31aが形成された柱部材21と、可動台12に着脱可能に載置され、筒孔31aに挿入される調整部26を有する基部22と、を備えている。そして、筒孔31aの内壁面には、高さ調整用溝部が形成され、調整部26の外周面には、高さ調整用溝部に摺動可能に係合する高さ調整用凸部が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒孔を有する造形ボックスと、
可動台を有し、前記造形ボックスの前記筒孔に沿って上下方向に移動する可動ステージと、
前記可動台の上下方向の上面部に着脱可能に装着される複数の支柱と、
複数の前記支柱に支持され、造形物を形成するための粉末材料が積層されるベースプレートと、を備え、
前記支柱は、
前記ベースプレートの上下方向の下面部に当接し、上下方向の下方が開口する筒孔が形成された柱部材と、
前記可動台に着脱可能に載置され、前記柱部材の前記筒孔に挿入される調整部を有する基部と、を備え、
前記筒孔の内壁面には、高さ調整用溝部が形成され、
前記調整部の外周面には、前記高さ調整用溝部に摺動可能に係合する高さ調整用凸部が形成されている
3次元積層造形装置。
【請求項2】
前記高さ調整用溝部は、雌ねじであり、
前記高さ調整用凸部は、前記雌ねじと螺合する雄ねじである
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項3】
前記可動台の上面部には、支持凹部が形成され、
前記基部は、前記支持凹部に嵌まり込む載置部を有し、
前記調整部は、前記載置部から上下方向の上方に向けて突出する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項4】
前記載置部と前記調整部との間には、前記調整部の外径よりも小さい外径からなるくびれ部が形成されている
請求項3に記載の3次元積層造形装置。
【請求項5】
前記可動台は、
前記支持凹部が形成された可動プレートと、
前記可動プレートの上面部に固定され、前記柱部材が貫通する貫通孔が形成されたインナーベースと、を有する
請求項3に記載の3次元積層造形装置。
【請求項6】
前記載置部は、前記可動プレートと前記インナーベースにより挟持される
請求項5に記載の3次元積層造形装置。
【請求項7】
前記支持凹部の側面部の一部には、平面部が形成され、
前記載置部には、前記平面部と重なり合う切り欠き部が形成されている
請求項3に記載の3次元積層造形装置。
【請求項8】
前記支柱は、前記柱部材に設けられた操作部を有し、
前記柱部材は、前記操作部を操作した際に、前記調整部を中心に回転する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上に粉末材料を薄く敷いた層を一層ずつ重ねて造形する3次元積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉末材料を薄く敷いた層を一層ずつ重ねて造形する3次元積層造形技術が脚光を浴びており、粉末材料の材料や造形手法の違いにより多くの種類の3次元積層造形技術が開発されている。
【0003】
従来の3次元積層造形装置の造形方法としては、例えばステージの上面に設置されたベースプレート上に粉末材料を一層毎に敷き詰める。次に、ベースプレート上に敷き詰められた粉末材料に対し、造形物の一断面に相当する二次元構造部だけを電子ビームやレーザからなる加熱機構で溶融する。そして、そのような粉末材料の層を一層ずつ高さ方向(Z方向)に積み重ねることにより造形物を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献1には、粉末材料が敷き詰められるベースプレートの平行度を調整するために、ベースプレートの高さを調整する高さ調整部材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粉末材料を造形ボックスに敷き詰めた際に、高さ調整部材にまで粉末材料が侵入する。その結果、高さ調整部材の内部に粉末材料が入り込み、高さ調整部材が機能しなくなり、ベースプレートの高さ調整が行えなくなる、という問題を有していた。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、確実にベースプレートの高さ調整を行うことができる3次元積層造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の3次元積層造形装置は、筒孔を有する造形ボックスと、可動ステージと、複数の支柱と、ベースプレートと、を備えている。可動ステージは、可動台を有し、造形ボックスの筒孔に沿って上下方向に移動する。複数の支柱は、可動台の上下方向の上面部に着脱可能に装着される。ベースプレートは、複数の支柱に支持され、造形物を形成するための粉末材料が積層される。
支柱は、ベースプレートの上下方向の下面部に当接し、上下方向の下方が開口する筒孔が形成された柱部材と、可動台に着脱可能に載置され、柱部材の筒孔に挿入される調整部を有する基部と、を備えている。
そして、筒孔の内壁面には、高さ調整用溝部が形成され、調整部の外周面には、高さ調整用溝部に摺動可能に係合する高さ調整用凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の3次元積層造形装置によれば、ベースプレートの高さ調整を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置のベースプレート及び、ベースプレート、インナーベース、可動プレート、支柱を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置における粉末材料が供給された状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置のベースプレート及び、ベースプレート、インナーベース、可動プレート、支柱を分解して示す側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の支柱を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の支柱の基部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の支柱の基部を示す側面図である。
【
図8】本発明の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置における支柱を取り外す状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の3次元積層造形装置の実施の形態例について、
図1~
図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.実施の形態例
1-1.3次元積層造形装置の構成
まず、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる3次元積層造形装置の第1の実施の形態例について
図1を参照して説明する。
図1は、本例の3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【0013】
図1に示す3次元積層造形装置1は、例えば、チタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末からなる粉末材料に電子ビームを照射して粉末材料を溶融させ、この粉末材料が凝固した層を積み重ねて立体物を造形する装置である。
【0014】
図1に示すように、3次元積層造形装置1は、中空の処理室2と、筒状の造形ボックス3と、可動ステージ4と、ベースプレート5と、均し部材6と、電子銃8とを備えている。また、3次元積層造形装置1は、ベースプレート5を支持する支柱20を備えている。
【0015】
処理室2には、図示しない真空ポンプが接続されている。処理室2内の空気が真空ポンプにより排気されることで、処理室2内は、真空に維持されている。この処理室2内には、造形ボックス3と、可動ステージ4と、均し部材6と、ベースプレート5及び支柱20が配置されている。処理室2の上部には、電子銃8が設けられている。
【0016】
電子銃8の下方には、可動ステージ4及びベースプレート5が配置されている。そして、電子銃8は、予め準備された設計上の造形物(3次元CAD(Computer-Aided Design)データにより表された造形物)を所定の間隔でスライスした2次元形状に従い、粉末材料M1に対して電子ビームL1を出射する。電子銃8から出射された電子ビームL1により、その2次元形状に対応する領域の粉末材料M1が溶融する。
【0017】
造形ボックス3は、筒状の形成されている。造形ボックス3の筒孔内には、可動ステージ4が上下方向に沿って移動可能に配置されている。可動ステージ4は、不図示の駆動機構による上下方向に沿って移動可能に支持されている。
【0018】
可動ステージ4における上下方向の上部は、インナーベース11と、可動プレート12と、シール部材13とを有している。インナーベース11は、可動プレート12の上下方向の上面部に固定されている。インナーベース11と可動プレート12により可動台が構成される。なお、可動台をインナーベース11と可動プレート12の2部品により構成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、可動台を1つの部品で構成してもよい。また、インナーベース11の側端部には、シール部材13が設けられている。シール部材13は、造形ボックス3の筒孔の内壁面に摺動可能に接触している。
【0019】
また、可動ステージ4におけるインナーベース11及び可動プレート12における上下方向の上面部には、複数の支柱20が設置されている。そして、支柱20における上下方向の上端部には、ベースプレート5が配置される。このベースプレート5には、粉末材料M1が積層される。なお、支柱20やベースプレート5、インナーベース11、可動プレート12の詳細な構成については、後述する。
【0020】
ベースプレート5は、支柱20に支持されて、造形ボックス3の筒孔の開口部に配置される。そして、ベースプレート5及び造形ボックス3の筒孔には、不図示の粉末供給部により粉末材料M1が配置される。
【0021】
ベースプレート5及び造形ボックス3の上下方向の上部には、均し部材6が配置される。均し部材6は、上下方向と直交する方向である水平方向に移動可能に支持されている。均し部材6が水平方向に移動することで、ベースプレート5の上面部に粉末材料M1を供給し、粉末材料M1をベースプレート5の上面部の上に所定の高さで平坦に均す。これにより、ベースプレート5の上面部には、粉末材料M1からなる粉末層が形成される。
【0022】
1-2.ベースプレート及び支柱周りの構成
次に、ベースプレート5及び支柱20周りの詳細な構成について
図2から
図4を参照して説明する。
図2は、ベースプレート5、インナーベース11、可動プレート12及び支柱20を示す断面図である。また、
図3は、粉末材料M1が供給された状態を示す断面図である。そして、
図4は、ベースプレート5、インナーベース11、可動プレート12及び支柱20を分解して示す側面図である。
【0023】
図2から
図4に示すように、可動プレート12には、支持孔12aと、固定孔12bと、支持凹部12cが形成されている。支持孔12a及び固定孔12bは、可動プレート12を上下方向に貫通している。支持孔12aにおける上下方向の上部には、支持凹部12cが形成されている。
【0024】
支持凹部12cは、可動プレート12の上面部から上下方向の下方に向けて凹んだ凹部である。支持凹部12cは、支持孔12aの上部において支持孔12aと同心円上に形成されている。また、支持凹部12cの側面部の一部には、平面部が形成されている。そして、支持凹部12cには、後述する支柱20の載置部27が着脱可能に嵌まり込む。
【0025】
また、可動プレート12の上面部には、インナーベース11が固定ボルト50を介して固定されている。インナーベース11には、貫通孔11aと、ベース側固定孔11bが形成されている。貫通孔11a及びベース側固定孔11bは、インナーベース11を上下方向に貫通している。インナーベース11の側端部は、上下方向に対して傾斜している。そして、インナーベース11の側端部には、テーパーブロック16が配置される。テーパーブロック16は、上下方向と直交する水平方向に拡張可能に構成されている。
【0026】
テーパーブロック16は、インナーベース11の側端部と、造形ボックス3の筒孔の内壁面との間に配置される。また、テーパーブロック16と造形ボックス3の筒孔の内壁面との間には、シール部材13が介在される。
【0027】
また、インナーベース11のベース側固定孔11bには、固定ボルト50が挿入される。固定ボルト50の軸部は、可動プレート12の固定孔12bと螺合する。これにより、インナーベース11が固定ボルト50を介して可動プレート12に固定される。
【0028】
また、インナーベース11が可動プレート12に固定される際に、テーパーブロック16は、インナーベース11の側端部から外側に向けて拡張される。そして、テーパーブロック16は、シール部材13を造形ボックス3の内壁面に向けて押圧する。これにより、インナーベース11及び可動プレート12からなる可動台と造形ボックス3の筒孔の内壁面との隙間を解消することができ、造形ボックス3の筒孔の下方に粉末材料M1が落ちることを防ぐことができる。
【0029】
可動プレート12に固定されたインナーベース11の上下方向の上方には、ベースプレート5が支柱20を介して配置される。ベースプレート5を支柱20上に配置した際、ベースプレート5と造形ボックス3の筒孔との間には、隙間が形成される。
【0030】
ベースプレート5は、略平板状に形成されている。ベースプレート5の上面部には、粉末材料M1が積層される。また、ベースプレート5におけるインナーベース11と対向する一面、すなわち下面部には、複数のベース側凹部5aが形成されている。
【0031】
ベース側凹部5aは、ベースプレート5の下面部における外縁部の近傍に形成されている。ベース側凹部5aは、ベースプレート5の下面部から上下方向の上方に向けて凹んだ凹部である。複数のベース側凹部5aは、ベースプレート5の下面部において周方向に沿って等間隔に形成されている。ベース側凹部5aには、支柱20の上下方向の上端部が挿入される。
【0032】
1-3.支柱の構成
次に、
図5から
図7を参照して支柱20の詳細な構成について説明する。
図5は、支柱20を示す分解斜視図、
図6は、支柱20の基部22を示す斜視図、
図7は、支柱20の基部22を示す側面図である。
【0033】
図5に示すように、支柱20は、柱部材21と、基部22と、断熱部材23と、操作部24とを有している。支柱20は、可動台を構成するインナーベース11及び可動プレート12に着脱可能に装着される。
【0034】
柱部材21は、柱部31と、支持凸部32とを有している。柱部31は、略円柱状に形成されている。なお、柱部31は、略円柱状に限定されるものではなく、角柱状に形成してもよい。また、柱部31は、インナーベース11に設けた貫通孔11aを上下方向に貫通する。そして、柱部31の上下方向の下端部は、貫通孔11a内に位置している。
【0035】
図4に示すように、柱部31には、筒孔31aが形成されている。筒孔31aは、柱部31の上下方向の上方が閉じられており、柱部31の上下方向の下方が開口している。筒孔31aの内壁面には、高さ調整用溝部の一例を示す雌ねじが形成されている。そして、筒孔31aには、後述する基部22の調整部26が螺合する。
【0036】
また、柱部31の外周面には、フランジ部31bが形成されている。フランジ部31bは、柱部31の外周面における上下方向の中間部に形成されている。フランジ部31bは、インナーベース11の上面部に載置される。フランジ部31bがインナーベース11に上面部に載置されることで、貫通孔11aへの粉末材料M1の入り込みを軽減することができる。
【0037】
柱部31の上下方向の上端部には、支持凸部32が形成されている。支持凸部32は、柱部31の上端部から上下方向の上方に向けて突出する。この支持凸部32は、断熱部材23に設けた穴に挿入される。そして、断熱部材23は、ベースプレート5のベース側凹部5aに挿入される。断熱部材23gは、ベース側凹部5aに点接触する。これにより、ベースプレート5と面接触する場合よりも、熱抵抗を高めるこができる。その結果、ベースプレート5の熱が支柱20を介して可動ステージ4に伝わることを抑制することができる。
【0038】
さらに、断熱部材23を介して柱部材21とベースプレート5が接触することで、ベースプレート5の熱が柱部材21に伝達されることを抑制することができる。
【0039】
また、柱部材21における柱部31の上下方向の上部には、操作部24が設けられている。操作部24は、略平板状の部材により形成されている。また、操作部24は、人の指で操作可能な複数の切り欠きが形成されている。
図2及び
図3に示すように、支柱20をベースプレート5とインナーベース11の間に配置した際、操作部24の外縁部は、ベースプレート5の下方においてベースプレート5の外縁部の近傍に配置される。
【0040】
なお、操作部24の形状は、人の指で操作可能な形状であれば、その他各種の形状が適用されるものである。
【0041】
図6から
図7に示すように、基部22は、調整部26と、載置部27と、くびれ部28と、凸部29とを有している。載置部27は、略平板状に形成されている。また、載置部27は、円形の一部に切り欠き部27aを有するDカット形状をなしている。載置部27には、脱着用ねじ孔27bが形成されている。この載置部27は、可動プレート12の支持凹部12cに嵌まり込む。このとき、切り欠き部27aは、支持凹部12cに設けた平面部と重なり合う。そのため、載置部27における水平方向への移動は、支持凹部12cにより規制される。
【0042】
また、載置部27に切り欠き部27aを形成し、支持凹部12cを載置部27の形状に合わせて側面部の一部に平面部を形成したことで、載置部27が支持凹部12c内で回転することが規制される。さらに、
図2及び
図3に示すように、載置部27は、支持凹部12cとインナーベース11との間に介在される。そのため、載置部27における高さ方向への移動は、インナーベース11により規制される。
【0043】
なお、載置部27を、切り欠き部27aを有するDカット形状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。載置部27を例えば、六角形や矩形状、楕円形状等その他各種の形状に形成してもよい。そして、支持凹部12cの形状は、載置部27の形状に合わせて適宜設定される。
【0044】
また、
図6から
図7に示すように、載置部27の上下方向の下面部には、凸部29が形成されている。凸部29は、載置部27の下面部から上下方向の下方に向けて突出する。凸部29は、載置部27を支持凹部12cに載置した際、可動プレート12の支持孔12aに挿入される。
【0045】
また、載置部27の上下方向の上面部には、くびれ部28を介して調整部26が設けられている。くびれ部28は、載置部27の半径方向の中心部に形成されている。くびれぶ部28の外径は、調整部26の外径よりも小さく設定されている。そして、くびれ部28の強度は、調整部26の強度よりも小さく設定されている。
【0046】
調整部26は、くびれ部28を介して載置部27の上面部から上下方向の上方に向けて突出している。また、調整部26は、その外周面に高さ調整用凸部の一例を示すねじが形成された雄ねじである。調整部26は、柱部31の筒孔31aに挿入されて、筒孔31aの雌ねじと螺合する。
【0047】
2.高さ調整動作
次に、上述した構成を有する3次元積層造形装置1におけるベースプレート5の高さ調整動作について説明する。
図2及び
図3に示すように、作業者は、ベースプレート5と造形ボックス3の筒孔との間の隙間から、指を挿入し、操作部24を操作する。操作部24を操作することで、柱部材21は、基部22を中心に回転する。ここで、基部22は、載置部27が可動プレート12の支持凹部12cに嵌まり込み、可動プレート12とインナーベース11で挟持されている。そのため、基部22の回転動作が規制されるため、操作部24を操作すると、柱部材21のみが回転する。
【0048】
また、柱部材21が回転することで、調整部26の雄ねじと、筒孔31aの雌ねじとの螺合により、柱部材21の回転動作が上下方向への移動に変換される。また、上述したように、基部22における上下方向への移動が規制されている。そのため、柱部材21は、調整部26の軸方向に沿って上下方向に移動する。このようにして、柱部材21に支持されたベースプレート5の高さ調整動作が行われる。
【0049】
ここで、
図9を参照して従来の支柱の構成について説明する。
図9に示すように、支柱120は、柱部材121と、ねじ部122と、支持凸部123と、操作部124とを有している。柱部材121は、インナーベース111の貫通孔111aを貫通する。そして、柱部材121の上下方向の上端部には、ねじ部122が形成され、柱部材121の上下方向の上端部には、支持凸部123が形成されている。
【0050】
支持凸部123は、ベースプレート105の下面部に設けたベース側凹部105aに挿入される。ねじ部122は、可動プレート112に設けたねじ孔(雌ねじ)112aと螺合する。また、ねじ孔112aの開口は、上下方向の上方を向いている。なお、可動プレート112とインナーベース111は、固定ボルト150により固定される。
【0051】
この従来の支柱120では、操作部124を操作することで、柱部材121及びねじ部122が可動プレート112のねじ孔112aを中心に回転する。そして、ねじ部122とねじ孔112aの螺合により、支柱120が上下方向に沿って移動し、ベースプレート105の高さ調整動作が行われる。
【0052】
しかしながら、ねじ部122とねじ孔112aとの隙間には、ベースプレート105と造形ボックス103との隙間から落ちた粉末材料M1が入り込む。そして、ねじ部122とねじ孔112aの隙間に侵入した粉末材料M1によって、ねじ部122とねじ孔112aにかじりが発生する。その結果、支柱120を回転させることができなくなり、ベースプレート105の高さ調整動作が出来なくなる、という問題を有している。
【0053】
これに対して、本例の3次元積層造形装置1では、柱部31の上下方向の下端部は、インナーベース11の貫通孔11a内に配置されている。そのため、柱部31の下端部の開口から筒孔31a内に粉末材料M1が入り込み難くなる。さらに、インナーベース11の貫通孔11aの周囲には、柱部31のフランジ部31bによって覆われる。そのため、フランジ部31bにより貫通孔11a内に粉末材料M1が入り込むことを抑制することができる。
【0054】
さらに、高さ調整用溝部である雌ねじは、柱部材21における柱部31の筒孔31a内に形成されている。また、筒孔31aの開口は、上下方向の下方を向いている。そのため、重力により落ちた粉末材料M1が上に上がってくることがないため、柱部31の筒孔31aと調整部26との間に粉末材料M1が侵入することがない。これにより、筒孔31aの雌ねじと調整部26の雄ねじが粉末材料M1によってかじることを防止でき、確実に支柱20の高さを変動することができると共に、ベースプレート5の高さを調整することができる。
【0055】
なお、本例では、高さ調整用溝部として雌ねじ、高さ調整用凸部として雄ねじを適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、高さ調整用溝部として柱部31の筒孔31aの内壁面に形成した階段状又は螺旋状の溝部を適用してもよい。そして、高さ調整用凸部として、溝部と摺動可能に係合する凸部を調整部26の外周面に形成してもよい。
【0056】
また、
図9に示す従来の支柱120では、粉末材料M1や支柱120の熱膨張によってねじ部122とねじ孔112aとの間でかじりが発生し、支柱120が回せなくなると、支柱120を可動プレート112から取り外せなくなる。その場合、従来では、ねじ部122を柱部材121からねじ切って、柱部材121を可動プレート112から取り外していた。その際、ねじ部122は、可動プレート112のねじ孔112a内に残留する。残留したねじ部122を回収するためには、可動プレート112を加工する必要があった。その結果、支柱120だけでなく可動プレート112も損傷するだけでなく、支柱120の取り外し作業が大変煩雑なものとなっていた。
【0057】
これに対して、本例の支柱20では、上述したように、筒孔31aと調整部26との間に粉末材料M1が入り難いため、粉末材料M1によるかじりは発生し難い。しかしながら、支柱20がベースプレート5から伝達された熱により、支柱20が熱膨張した場合、筒孔31aと調整部26との間にかじりが発生するおそれがある。
【0058】
図8は、支柱20にかじりが発生した際の支柱20を取り外す状態を示す説明図である。
筒孔31aと調整部26との間にかじりが発生した場合、操作部24又は柱部材21を回転させ、柱部材21を基部22からねじ切る。ここで、基部22における調整部26と載置部27との間には、外径が他の箇所よりも小さいくびれ部28が形成されている。そのため、
図8に示すように、基部22は、くびれ部28からねじ切られる。なお、くびれ部28を設けたことで、ねじ切るためのトルクを小さくすることができ、ねじ切りやすくなる。
【0059】
また、基部22のくびれ部28をねじ切ることで、可動プレート12から支柱20の柱部材21や操作部24を取り外すことができる。また、基部22の載置部27は、可動プレート12の支持凹部12cに載置されているだけである。次に、載置部27に設けた脱着用ねじ孔27bに脱着用ねじを取り付ける。そして、作業者は、脱着用ねじを摘み上げることで、可動プレート12に残留する基部22を容易に取り外すことができる。このように、本例の支柱20によれば、かじりが発生した場合でも、可動プレート12が損傷することなく、支柱20を取り外すことができる。
【0060】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0061】
上述した実施の形態例では、高さ調整用溝部として雌ねじ、高さ調整用凸部として雄ねじを適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、高さ調整用溝部として柱部31の筒孔31aの内壁面に形成した階段状又は螺旋状の溝部を適用してもよい。そして、高さ調整用凸部として、溝部と摺動可能に係合する凸部を調整部26の外周面に形成してもよい。
【0062】
なお、高さ調整用溝部及び高さ調整用凸部として雌ねじ及び雄ねじを適用することで、柱部材21の上下方向の高さを連続して変化させることができ、ベースプレート5の高さ調整を精密に行うことができる。
【0063】
例えば、上述した実施の形態例では、粉末材料としてチタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、粉末材料としては、樹脂等を用いてもよい。また、粉末材料を予熱や溶融させる加熱機構として電子ビームを照射する電子銃を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。加熱機構としては、例えば、レーザを照射するレーザ照射部を適用してもよい。
【0064】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…3次元積層造形装置、 2…処理室、 3…造形ボックス、 4…可動ステージ、 5…ベースプレート、 5a…ベース側凹部、 6…均し部材、 8…電子銃、 11…インナーベース、 11a…貫通孔、 11b…ベース側固定孔、 12…可動プレート、 12a…支持孔、 12b…固定孔、 12c…支持凹部、 20…支柱、 21…柱部材、 22…基部、 23…断熱部材、 24…操作部、 26…調整部、 27…載置部、 27a…切り欠き部、 27b…脱着用ねじ孔、 28…くびれ部、 29…凸部、 31…柱部、 31a…筒孔、 31b…フランジ部、 32…支持凸部、 50…固定ボルト、 L1…電子ビーム、 M1…粉末材料