(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039017
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】VR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240313BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240313BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20240313BHJP
H04N 21/234 20110101ALI20240313BHJP
H04N 21/431 20110101ALI20240313BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240313BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
G06F3/01 510
G06F3/04815
H04N21/234
H04N21/431
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146231
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2022143088
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.開催日 令和4年9月14日~9月16日 2.集会名、開催場所 地盤技術フォーラム2022、東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1)
(71)【出願人】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】落合 幸治
(72)【発明者】
【氏名】川崎 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光弘
【テーマコード(参考)】
5B050
5C164
5E555
5L049
【Fターム(参考)】
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5C164UB81P
5E555AA16
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5E555EA11
5E555FA00
5L049CC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地中に造成される柱状改良体について現在から過去・未来に到る工事の進捗状況を遠隔で管理する地盤改良工事の遠隔施工管理システムを提供する。
【解決手段】システムは、施工機の各種情報、固化剤の各種情報、実地盤改良工事現場の3次元形状データ、地盤情報及び機械のCADデータに基づいて仮想的に再現された仮想(VR)地盤改良工事現場200の視聴を提供するクラウドサーバー10を設定し、施工機及び固化剤の各種情報等を、施工機の通信装置60、70がクラウドサーバー10に送信し、記憶部12に保存する。工事の当事者は、ユーザー端末装置20を用いてクラウドサーバー10にアクセスして、VR地盤改良工事現場200をダウンロードし、ダウンロードしたVR地盤改良工事現場200について、頭部装着ディスプレイ30の表示部33にVR3次元画像として表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に造成される柱状改良体(9)に係る地盤改良工事の遠隔施工管理システム(100)であって、
実際の地盤改良工事現場(300)を模した所定のコンピュータプログラムによって仮想的に再現された仮想地盤改良工事現場(200)を提供するサーバー装置(10)と、
前記サーバー装置(10)にネットワーク(50)を介してユーザーがアクセスするためのユーザー端末装置(20)と、
前記仮想地盤改良工事現場(200)をユーザーが視聴するためのディスプレイ(30)と、
前記仮想地盤改良工事現場(200)でユーザーが仮想的に動作するための操作機(40)と、
施工機(1)に係る各種情報および前記柱状改良体(9)に係る各種情報を前記サーバー装置(10)に送信する通信装置(60、70)とを備え、
前記柱状改良体(9)は、前記施工機(1)に係る各種情報および前記柱状改良体(9)に係る各種情報に基づいて前記コンピュータプログラムによって前記仮想地盤改良工事現場(200)の一部分として仮想的に再現され、前記ディスプレイ(30)においてVR3次元画像として表示される
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記ユーザーは、前記仮想地盤改良工事現場(200)において仮想人物(400、410、420)として登場し前記ディスプレイ(30)に表示可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記ユーザーは、前記仮想地盤改良工事現場(200)において他のユーザーと対話可能であり、対話内容は前記仮想地盤改良工事現場(200)にテキスト表示可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記仮想地盤改良工事現場(200)において一の前記ユーザーが掲示したファイルを他の前記ユーザーが閲覧することが可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記ユーザーは、前記仮想地盤改良工事現場(200)において地中内を仮想的に移動可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記柱状改良体(9)は、前記仮想地盤改良工事現場(200)において所定深度当たりの固化剤の区間流量と所定深度当たりの撹拌翼(3b)の区間羽根切り回数に基づいてカラー表示され、前記柱状改良体(9)に係る出来高・出来形管理図(450、450’、451、451’)も併せて表示可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記仮想地盤改良工事現場(200)は、工事開始時から現在に到る時間軸に係る時系列シークバー(500)を備え、前記ユーザーが前記時系列シークバー(500)を前記工事開始時へ移動させることにより、過去のある時点における前記仮想工事現場(200)が仮想的に再現される
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項8】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記サーバー装置(10)は、ユーザーが指定した特定の前記柱状改良体(9)についての施工開始から施工完了に到る履歴を前記仮想地盤改良工事現場(200)に再現する
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項9】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記サーバー装置(10)は、前記柱状改良体(9)の過去から現在までの施工実績を基に、ユーザーが指定した未来のある時点迄までに施工完了が見込まれる前記柱状改良体(9)の施工本数を予測可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項10】
請求項9に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記サーバー装置(10)は、施工計画より遅れる又は進むと予測される前記柱状改良体(9)については、施工計画通りに施工が完了すると予測される他の柱状改良体(9)とは異なる色彩を付して前記仮想地盤改良工事現場(200)に再現する
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項11】
請求項1に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
「前記仮想地盤改良工事現場(200)で仮想的に稼働し」前記施工機(1)に対応する仮想施工機(1v)は、前記操作機(40)によって前記ディスプレイ(30)上で仮想的に操作可能に構成され、
前記仮想施工機(1v)に対する前記操作機(40)による操作指令は、前記ユーザー端末装置(20)によって前記施工機(1)に対する操作指令に変換されて前記施工機(1)の機械制御装置(80)に送信され、
前記操作指令を受信した前記機械制御装置(80)は、前記操作指令に基づいて前記施工機(1)を制御すると共に、前記操作指令を実行した後の前記施工機(1)に係る機械情報および施工情報を前記サーバー装置(10)に送信し、
前記機械情報および施工情報を受信した前記サーバー装置(10)は、前記仮想地盤改良工事現場(200)を最新の状態に更新しその更新情報を前記ユーザー端末装置(20)に送信する
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項12】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記ユーザー端末装置(20)は、前記施工機(1)によって造成される柱状改良体(9)についての「番号、座標、杭条件設定(430)及び工程設定(440)」を含むマシンガイダンスデータ又はその更新情報を前記サーバー装置(10)に送信し、
前記サーバー装置(10)は前記機械制御装置(80)からの要求に基づいて前記マシンガイダンスデータ又はその更新情報を前記機械制御装置(80)に送信し、
前記機械制御装置(80)は前記マシンガイダンスデータ又はその更新情報を所定の記憶部に保存し、前記ユーザー端末装置(20)からの開始指令に基づいて柱状改良体(9)を自動的に造成する
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項13】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記実際の地盤改良工事現場(300)は所定の衛星測位システム(GNSS)に対応した平面直角座標系(X’Y’Z’)を有し、
前記仮想地盤改良工事現場(200)は前記平面直角座標系(X’Y’Z’)に対応した仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)を有し、
「前記仮想施工機(1v)の前記仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)における寸法、座標、移動方向および移動量」は、「対応する前記施工機(1)の前記平面直角座標系(X’Y’Z’)における寸法、座標、移動方向および移動量」に等しくなるように構成されている
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項14】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記仮想施工機(1v)は、前記施工機(1)の全ての構成部品についての正投影図法に係る2次元図面データを3次元図面データに変換し、各構成部品についての3次元図面データを所定の3次元設計アプリケーション上で実際の組立工程に従って仮想的に組み立てた、外部構造だけでなく内部構造まで再現された前記施工機(1)の3次元コンピュータグラフィックモデルに相当する
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項15】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記仮想地盤改良工事現場(200)の一部又は全部は、測距・測角装置(11)によって取得された座標の測点群データを、隣り合う一の測点と他の測点を直線で結んで多角形の網目にした多角形メッシュデータによって表されている
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項16】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記仮想地盤改良工事現場(200)は、施工に係る仮想位置(PTv)、仮想施工手段(Ctv)又は仮想施工対象物(9v)に対し、図形、記号、ピクトグラム、数値、グラフまたは色彩を重ねて表示させる、或いはハイライトさせることが可能である
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項17】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記サーバー装置(10)又は前記ユーザー端末装置(20)は、前記仮想施工機(1v)の移動可能領域を規定する仮想境界線(BLv)を前記仮想地盤改良工事現場(200)に設定し、前記仮想施工機(1v)が前記仮想境界線(BLv)から外れる前記操作機(40)による操作を無効化することができる
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項18】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記サーバー装置(10)又は前記ユーザー端末装置(20)は、前記施工機(1)に対する操作順、操作間隔および操作量をまとめて一括操作指令として記憶し、必要に応じ前記機械制御装置(80)に送信し、
前記機械制御装置(80)は前記一括操作指令を記憶する
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【請求項19】
請求項11に記載のVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムにおいて、
前記仮想施工機(1v)は、実際の展示場を模した前記所定のコンピュータプログラムによって仮想的に再現された仮想展示場(700)に仮想的に展示されている
ことを特徴とするVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤改良工事の遠隔施工管理システムに関し、より詳細には地中に造成される柱状改良体について現在から過去・未来に到る工事の進捗状況を遠隔で管理することができ、且つ柱状改良体を造成する施工機について遠隔で運転管理することができるVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーチャルリアリティ(VR)技術は、コンピュータのディスプレイ上で仮想的に再現された仮想世界に、ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ)と呼ばれ内部にディスプレイを有するゴーグル型のディスプレイを介してユーザーが仮想世界に没入するための技術である。VR技術はユーザーに現実世界とは異なる仮想世界を視覚・視聴させるだけでなく、ユーザー自身が仮想人物(アバター)として仮想世界の中に入り込み、専用のコントローラ(操作機)によってその仮想人物を操作することによってプレイすることを可能にしている。また、VR技術の他に現実世界に仮想世界を重ね合わせた合成画像をヘッドマウントディスプレイに表示させるAR技術も色々な分野で利用されている。仮想世界に重ね合わされる現実世界は、ヘッドマウントディスプレイに備わるカメラによって撮像されるのが一般的である。
【0003】
建築土木分野においてもAR技術を用いた発明が提案されている。例えば、工事現場以外の場所にいる人が工事現場に行かずとも工事現場に行った場合と遜色のない精度で工事現場の状況を把握できるようにする状況把握支援システムに係る発明が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
この状況把握支援システムでは、工事現場にいる作業者が検査対象物についてヘッドマウントディスプレイによって様々な方向から撮影し、その合成画像(実画像に仮想画像が重畳された画像)を工事現場に設けられた現場コンピュータに送信している。そして、合成画像を受信した現場コンピュータは、その合成画像を基に検査対象物の3次元形状を測定し、その3次元形状を表す3次元形状データを生成している。そして、現場コンピュータによって作成された検査対象物の3次元形状データは、空間的に離れた別室の事務所コンピュータに送信される。そして、その検査対象物の3次元形状データを受信した事務所コンピュータは、検査対象物の3次元形状データに対し検査結果の入力欄が重畳されたデータを生成し、そのデータは、工事現場の座標系と同じ座標系を持った検査員のヘッドマウントディスプレイに送信される。そして、検査員はヘッドマウントディスプレイを介して検査対象物の3次元形状を検査することができることとされている。
【0005】
また、AR技術では現実画像に仮想画像が重畳されるため、現実画像の座標系と仮想画像の座標系を一致させるための標識(ARマーカー)又は座標が既知の複数の基準点が現実画像において必要となる。作業者はヘッドマウントディスプレイに備わるカメラでそのARマーカーを視認することにより、現実画像の座標系と仮想画像の座標系との間の位置合わせが行われることになる。
【0006】
ところで、ARマーカーを使用することなく現実画像の撮影位置での位置ずれをなくし、現実画像と仮想画像を重ね合わせて合成画像を作成する際に、ずれのない正確な合成画像を作成することができる地盤改良工事の合成画像表示方法に係る発明が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。この地盤改良工事の合成画像表示方法では、施工機(地盤改良機)に取り付けられた2つのGNSS受信機と傾斜計の各計測信号によって、先ずコンピュータは施工機の「座標」と「進行方向」と「傾斜」(施工機の位置情報)を算出している。次に、コンピュータはこの施工機の位置情報を基にカメラが撮影している現実画像の撮影中心点の座標を算出している。そして、作業者はこの撮影中心点にGNSS受信機を実際に設置し、コンピュータはこの設置されたGNSS受信機の計測信号を基に撮影中心点の基準座標を算出している。そして、コンピュータはこの「撮影中心点の基準座標」と、先に施工機の位置情報を基に算出された「撮影中心点の座標」とを比較して、カメラが撮影している現実画像の撮影位置を補正している。そして、コンピュータはその補正した現実画像と仮想画像を合成することとしている。
【0007】
その他のARマーカーを用いないその他の合成画像表示システムとして、撮像画像とその撮像画像に対応した仮想画像とにおいて同一の特徴点を抽出し特徴点の座標位置が重なり合う座標変換を行い、撮像画像に仮想画像を重ね合わせて表示する合成画像表示システムに係る発明が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0008】
ところで、建設機械(ショベル)に取り付けられた複数のカメラによって撮像された画像、並びに工事現場に設置されたカメラによって撮像された写真画像を、遠隔操作室の遠隔コントローラがネットワーク経由で受信して、これらの画像を基に「仮にキャビン内の運転席に操作者が着座しているならば操作者の目の位置に対応する」仮想視点画像を生成し遠隔地の操作者の表示装置に表示させることができるとする建設機械の管理システムに係る発明が知られている(例えば、特許文献4の[0022]、[0063]及び[0065]を参照。)。遠隔地の操作者は、この仮想視点画像を見ながら操作装置を操作して、その操作信号は遠隔コントローラによって工事現場の建設機械(ショベル)に送信され、建設機械(ショベル)は遠隔で操されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-047610号公報
【特許文献2】特開2020-52616号公報
【特許文献3】特開2014-2645号公報
【特許文献4】特開2022-157635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、軟弱地盤における「支持力強化」、「沈下低減」、「液状化防止」および「既設構造物の耐震補強」を目的として、機械撹拌工法(スラリー式機械撹拌工法)によって地中に地盤改良杭を多数造成する地盤改良工事が増えている。地盤改良杭は、ケーシングロッドの先端に取り付けられた撹拌翼によって地盤を所定の深度まで掘削しながら同時にセメント系の固化剤を土壌に注入し撹拌混合することによって円柱状に造成される。
【0011】
上記特許文献に記載されたAR技術では、作業者のヘッドマウントディスプレイ又は施工機(地盤改良機)に取り付けられたカメラによって現実画像を撮像している。作業者または施工機は地中を進行することはできないため、地中の現実画像についてはカメラによって撮像されないことになる。そのため、現実画像と仮想画像を重ね合わせた合成画像(AR画像)において地中に造成された地盤改良杭についてはリアルタイムで表示することはできない。その結果、地中に造成された地盤改良杭については、リアルタイムで現在の工事の進捗を把握することができないという問題がある。
【0012】
また、工事の進捗状況については過去のある時点まで遡って確認したい場合が起こり得る。その場合、過去の工事の進捗についてはカメラが撮像した撮像範囲内で確認作業が行われることになる。同様に、地中に造成された地盤改良杭について過去の工事の進捗を把握することができないという問題がある。
【0013】
また、上記特許文献4に記載の「建設機械の管理システム」では、操作者が見る仮想視点画像については、建設機械や工事現場のカメラ等によって撮像された写真画像を基に生成される。そのため、建設機械の周囲の様子を表す写真画像が、管理センター(サーバー)を経由をしてリアルタイムに遠隔操作室の遠隔コントローラに送信されて来る。工事現場では複数の建設機械が稼働しているため、「建設機械と管理センターを結ぶ通信回線」または「管理センターと遠隔コントローラ」を結ぶ通信回線としては、高速・大容量の通信回線が必要となるという問題がある。
【0014】
また、操作者が見る仮想視点画像に係る視点位置については、カメラの撮像範囲内に限定される。従って、カメラの撮像範囲外の視点位置、例えば撮像範囲外の高所から建設機械を見たい場合、操作者は仮想視点画像を通して見ることができないという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は地中に造成される柱状改良体について現在から過去・未来に到る工事の進捗状況を遠隔で管理することができ、且つ柱状改良体を造成する施工機について遠隔で運転管理することができるVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムは、地中に造成される柱状改良体(9)に係る地盤改良工事の遠隔施工管理システム(100)であって、実際の地盤改良工事現場(300)を模した所定のコンピュータプログラムによって仮想的に再現された仮想地盤改良工事現場(200)を提供するサーバー装置(10)と、前記サーバー装置(10)にネットワーク(50)を介してユーザーがアクセスするためのユーザー端末装置(20)と、前記仮想地盤改良工事現場(200)をユーザーが視聴するためのディスプレイ(30)と、前記仮想地盤改良工事現場(200)でユーザーが仮想的に動作するための操作機(40)と、施工機(1)に係る各種情報および前記柱状改良体(9)に係る各種情報を前記サーバー装置(10)に送信する通信装置(60、70)とを備え、前記柱状改良体(9)は、前記施工機(1)に係る各種情報および前記柱状改良体(9)に係る各種情報に基づいて前記コンピュータプログラムによって前記仮想地盤改良工事現場(200)の一部分として仮想的に再現され、前記ディスプレイ(30)においてVR3次元画像として表示されることを特徴とする。
【0017】
上記構成では、柱状改良体(9)は仮想地盤改良工事現場(200)の一部分として仮想的に再現され、ディスプレイ(30)においてVR3次元画像として表示されることになる。これにより、ユーザーの視界には仮想地盤改良工事現場(200)以外の不要な画像情報(ノイズ)は一切混入されなくなる。その結果、ユーザーは仮想地盤改良工事現場(200)に没入し集中して所望の柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)についての確認作業を行うことが可能となる。
【0018】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第2の特徴は、前記ユーザーは、前記仮想地盤改良工事現場(200)において仮想人物(400、410、420)として登場し前記ディスプレイ(30)に表示可能であることである。
【0019】
上記構成では、地盤改良工事の当事者が遠隔に居ながら一同に会し、柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)についての確認作業を同時に行うことが可能となる。
【0020】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第3の特徴は、前記ユーザーは、前記仮想地盤改良工事現場(200)において他のユーザーと対話可能であり、対話内容は前記仮想地盤改良工事現場(200)にテキスト表示可能であることである。
【0021】
上記構成では、地盤改良工事の当事者が遠隔に居ながら一同に会し、柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)について互いに同意を取りながら確認作業を行うことが可能となる。
【0022】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第4の特徴は、前記仮想地盤改良工事現場(200)において一の前記ユーザーが掲示したファイルを他の前記ユーザーが閲覧することが可能であることである。
【0023】
上記構成では、地盤改良工事の当事者が遠隔に居ながら一同に会し、柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)について資料を参照しながら詳細な確認作業を行うことが可能となる。
【0024】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第5の特徴は、前記ユーザーは、前記仮想地盤改良工事現場(200)において地中内を仮想的に移動可能であることである。
【0025】
上記構成では、地盤改良工事の当事者が遠隔に居ながら一同に会し、地表面から所定深度に沿って柱状改良体(9)に対する立ち位置を変更しながら柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)についての確認作業を行うことが可能となる。
【0026】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第6の特徴は、前記柱状改良体(9)は、前記仮想地盤改良工事現場(200)において所定深度当たりの固化剤の区間流量と所定深度当たりの撹拌翼(3b)の区間羽根切り回数に基づいてカラー表示され、前記柱状改良体(9)に係る出来高・出来形管理図(450、450’、451、451’)も併せて表示可能であることである。
【0027】
上記構成では、地盤改良工事の当事者が遠隔に居ながら一同に会し、柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)についての確認作業が容易となるため、チェック漏れがなくなる。
【0028】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第7の特徴は、前記仮想地盤改良工事現場(200)は、工事開始時から現在に到る時間軸に係る時系列シークバー(500)を備え、前記ユーザーが前記時系列シークバー(500)を前記工事開始時へ移動させることにより、過去のある時点における前記仮想工事現場(200)が仮想的に再現されることである。
【0029】
上記構成では、地盤改良工事の当事者が遠隔に居ながら一同に会し、柱状改良体(9)の施工進捗状況(出来高・出来形)について現在だけでなく過去のある時点における確認作業が容易となるため、現在だけでなく過去のある時点におけるチェック漏れがなくなる。
【0030】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第8の特徴は、前記サーバー装置(10)は、ユーザーが指定した特定の前記柱状改良体(9)についての施工開始から施工完了に到る履歴を前記仮想地盤改良工事現場(200)に再現することである。
【0031】
上記構成では、例えば特定の柱状改良体(9)についての事後検査が可能となる。
【0032】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第9の特徴は、前記サーバー装置(10)は、前記柱状改良体(9)の過去から現在までの施工実績を基に、ユーザーが指定した未来のある時点迄までに施工完了が見込まれる前記柱状改良体(9)の施工本数を予測可能であることである。
【0033】
上記構成では、未来のある時点における地盤改良工事の進捗状況について、施工計画に対する遅れ又は進み程度を定量的に把握することができるため、遅れを取り戻す対策を事前に講じることが可能となる。
【0034】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第10の特徴は、施工計画より遅れる又は進むと予測される前記柱状改良体(9)については、施工が完了すると予測される他の柱状改良体(9)とは異なる色彩を付して前記仮想地盤改良工事現場(200)に再現されることである。
【0035】
上記構成では、仮想地盤改良工事(200)において一目で工事の進捗状況を確認することが可能となる。
【0036】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第11の特徴は、「前記仮想地盤改良工事現場(200)で仮想的に稼働し」前記施工機(1)に対応する仮想施工機(1v)は、前記操作機(40)によって前記ディスプレイ(30)上で仮想的に操作可能に構成され、前記仮想施工機(1v)に対する前記操作機(40)による操作指令は、前記ユーザー端末装置(20)によって前記施工機(1)に対する制御指令に変換して前記施工機(1)の機械制御装置(80)に送信され、前記制御指令を受信した前記機械制御装置(80)は、前記制御指令に基づいて前記施工機(1)を制御すると共に、前記制御指令を実行した後の前記施工機(1)に係る機械情報および施工情報を前記サーバー装置(10)に送信し、前記機械情報および施工情報を受信した前記サーバー装置(10)は、前記仮想地盤改良工事現場(200)を最新の状態に更新しその更新情報を前記ユーザー端末装置(20)に送信することである。
【0037】
上記構成では、オペレータが直接操作する対象は仮想施工機(1v)である。一方、実際の施工機(1)は機械制御装置(80)によって操作されることになる。そのため、ネットワーク(50)上でやり取りされるデータは、操作指令、機械情報および施工情報、並びに仮想地盤改良工事現場(200)の更新情報等の情報量の少ないデータである。その結果、ネットワーク(50)として高速・大容量の通信回線は不要となり、低速・小容量の通信回線で済むことになる。
【0038】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第12の特徴は、前記ユーザー端末装置(20)は、前記施工機(1)によって造成される柱状改良体(9)についての「番号、座標、杭条件設定(430)及び工程設定(440)」を含むマシンガイダンスデータ又はその更新情報を前記サーバー装置(10)に送信し、前記サーバー装置(10)は前記機械制御装置(80)からの要求に基づいて前記マシンガイダンスデータ又はその更新情報を前記機械制御装置(80)に送信し、前記機械制御装置(80)は前記マシンガイダンスデータ又はその更新情報を所定の記憶部に保存し、前記ユーザー端末装置(20)からの開始指令に基づいて柱状改良体(9)を自動的に造成することである。
【0039】
上記構成では、オペレータは機械制御装置(80)に対し、開始指令として柱状改良体(9)の番号を送信することにより、機械制御装置(80)はマシンガイダンスデータを参照してその番号に対応する柱状改良体(9)を自動的に造成することになる。
【0040】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第13の特徴は、前記実際の地盤改良工事現場(300)は所定の衛星測位システム(GNSS)に対応した平面直角座標系(X’Y’Z’)を有し、前記仮想地盤改良工事現場(200)は前記平面直角座標系(X’Y’Z’)に対応した仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)を有し、「前記仮想施工機(1v)の前記仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)における寸法、座標、移動方向および移動量」は、「対応する前記施工機(1)の前記平面直角座標系(X’Y’Z’)における寸法、座標、移動方向および移動量」に等しくなるように構成されていることである。
【0041】
上記構成では、「仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)における仮想施工機(1v)の動作」と、「衛星測位システムに対応した平面直角座標系(X’Y’Z’)における施工機(1)の動作」は互いに1対1に対応することになる。これにより、オペレータが仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)上で仮想施工機(1v)を操作することと、オペレータが衛星測位システムに対応した平面直角座標系(X’Y’Z’)上で実際の施工機(1)を操作することは、互いに同値な関係となる。
【0042】
そのため、仮想平面直角座標系(X’Y’Z’_v)を有する仮想地盤改良工事現場(200)では、オペレータの視点位置(目線の高さ、視線方向、視野)を自由に変更することができるため、仮想施工機(1v)の操作、ひいては実際の施工機(1)の操作が容易となる。
【0043】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第14の特徴は、前記仮想施工機(1v)は、前記施工機(1)の全ての構成部品についての正投影図法に係る2次元図面データを3次元図面データに変換し、各構成部品についての3次元図面データを所定の3次元設計アプリケーション上で実際の組立工程に従って仮想的に組み立てた、外部構造だけでなく内部構造まで再現された前記施工機(1)の3次元コンピュータグラフィックモデルに相当することである。
【0044】
上記構成では、仮想地盤改良工事現場(200)に没入したオペレータは、実際の施工機(1)を操作する感覚で仮想施工機(1v)を操作することが可能となる。
【0045】
また、仮想施工機(1v)を「仮想地盤改良工事現場(200)等の仮想空間」に仮想的に展示して、仮想施工機(1v)を使用して「実機の購入を検討している顧客」に対して実機の機能・性能等についての説明、さらには顧客を実機に仮想的に試乗させることが可能となる。
【0046】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第15の特徴は、前記仮想地盤改良工事現場(200)の一部又は全部は、測距・測角装置(11)によって取得された座標の測点群データを、隣り合う一の測点と他の測点を直線で結んで多角形の網目にした多角形メッシュデータによって表されていることである。
【0047】
上記構成では、仮想施工機(1v)の周囲の状況について、座標が既知の三次元的立体情報を取得することが可能となる。その結果、例えば、地表面の傾斜、凹凸が分かるようになる。
【0048】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第16の特徴は、前記仮想地盤改良工事現場(200)は、施工に係る仮想目標位置(PTv)、仮想施工手段(Ctv)又は仮想施工対象物(9v)に対し、図形、記号、ピクトグラム、数値、グラフまたは色彩を重ねて表示させる、或いはハイライトさせることが可能であることである。
【0049】
上記構成では、オペレータが仮想施工機(1v)を仮想目標位置(PTv)に仮想的に誘導することが容易になると共に、仮想施工対象物(9v)を仮想的に造成することが容易になる。
【0050】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第17の特徴は、前記サーバー装置(10)又は前記ユーザー端末装置(20)は、前記仮想施工機(1v)の移動可能領域を規定する仮想境界線(BLv)を前記仮想地盤改良工事現場(200)に設定し、前記仮想施工機(1v)が前記仮想境界線(BLv)から外れる前記操作機(40)による操作を無効化することができることである。
【0051】
上記構成では、仮想境界線(BLv)によって移動可能領域が目視可能に表示されるため、仮想施工機(1v)を仮想施工目標位置(PTv)に誘導する経路を安心して決めることが可能となる。
【0052】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第18の特徴は、前記サーバー装置(10)又は前記ユーザー端末装置(20)は、前記施工機(1)に対する操作順、操作間隔および操作量をまとめて一括操作指令として記憶し、必要に応じ前記機械制御装置(80)に送信し、前記機械制御装置(80)は前記一括操作指令を記憶することである。
【0053】
上記構成では、オペレータからの施工開始の指令を機械制御装置(80)が受信する場合、例えば、地盤改良杭(9v)の品質を左右する「攪拌翼(3b)の区間羽根切り回数」ならびに「固化剤の区間流量」等をオペレータが手動で調整することなく、機械制御装置(80)によって施工機(1)が地盤改良杭(9v)を自動的に造成することが可能となる。
【0054】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムの第19の特徴は、前記仮想施工機(1v)は、実際の展示場を模した前記所定のコンピュータプログラムによって仮想的に再現された仮想展示場(700)に仮想的に展示されていることである。
【0055】
上記構成では、実機を顧客のもとに搬入することなく、仮想施工機(1v)を使用して「実機の購入を検討している顧客」に対して実機の機能・性能等についての説明、さらには顧客を実機に仮想的に試乗させることが可能となる。
【0056】
また、実際の展示会に参加する場合、実機の搬入に伴う作業コスト及びマンパワーを全て削減することができる。また、展示ブースの面積も小さくて済むことになる。これにより、展示会に参加するコストを大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明に係るVR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システムによれば、地中に造成される柱状改良体について現在から過去・未来に到る工事の進捗状況を遠隔で管理することが可能となる。また、柱状改良体を造成する施工機について遠隔で運転管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の一実施形態に係る地盤改良工事の遠隔施工管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】クラウドサーバーによって仮想的に再現される仮想工事現場に対応した実際の地盤改良工事現場を示す説明図である。
【
図3】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の参加機能を示す説明図である。
【
図4】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の対話機能を示す説明図である。
【
図5】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場のファイル共有機能の一例を示す説明図である。
【
図6】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の工事現場巡回機能の一例を示す説明図である。
【
図7】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の工事進捗確認機能の一例を示す説明図である。
【
図8】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の工事履歴確認機能の一例を示す説明図である。
【
図9】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の工事履歴確認機能の他の例を示す説明図である。
【
図10】実地盤改良工事現場の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場の工事進捗予測確認機能の一例を示す説明図である。
【
図11】VR地盤改良工事現場におけるアバターの前進移動の一例を示す説明図である。
【
図12】VR地盤改良工事現場におけるアバターの後退移動の一例を示す説明図である。
【
図13】VR地盤改良工事現場におけるアバターの左側移動の一例を示す説明図である。
【
図14】VR地盤改良工事現場におけるアバターの右側移動の一例を示す説明図である。
【
図15】VR地盤改良工事現場におけるアバターの上方移動の一例を示す説明図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る地盤改良工事の遠隔運転管理システムを示す説明図である。
【
図17】オペレータがVR地盤改良機を操作して実地盤改良機を実際に移動させるための概略手順を示すフロー図である。
【
図18】ネットワークにおけるオペレータ端末装置とクラウドサーバーと施工機制御装置との間のデータのやり取りを示す説明図である。
【
図19】オペレータがVR地盤改良機を操作して実地盤改良機を実際に移動させる場合のネットワークにおけるオペレータ端末装置とクラウドサーバーと施工機制御装置との間のデータのやり取りを示す説明図である。本発明の第2実施形態に係る施工機制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図20】GNSS衛星測位システムに対応した平面直角座標系と、実地盤改良機上構築された機械座標系とを示す説明図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係る三角形メッシュデータを示す説明図である。
【
図22】本発明の第2実施形態に係るVR地盤改良機の要部正面を示す説明図である。
【
図23】オペレータの視点位置を変えた場合のVR地盤改良機を示す説明図である。
【
図24】VR地盤改良機の仮想部品移動機能を示す説明図である。
【
図25】VR地盤改良機の仮想部品透明化機能を示す説明図である。
【
図26】VR地盤改良機を使用した地盤改良杭の自動施工を示すフロー図である。
【
図27】自動改良杭の自動施工時におけるネットワークにおけるデータのやり取りを示す説明図である。
【
図28】VR地盤改良機の仮想キャビン部から見える仮想視界を示す説明図である。
【
図29】仮想施工目標位置に対するオペレータの視点位置を変えた場合のVR3次元画像を示す説明図である。
【
図30】VR地盤改良工事現場において仮想的に造成されている仮想地盤改良杭を示す説明図である。
【
図31】本発明の第3実施形態に係るVR地盤改良機展示場を示す説明図である。
【
図32】実地盤改良機の油圧操作盤を示す説明図である。
【
図33】マシンガイダンスデータにおける施工目標位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0060】
図1は、本発明の一実施形態に係る地盤改良工事の遠隔施工管理システム100の構成を示すブロック図である。
図2は、後述する本発明に係るVR地盤改良工事現場200に対応する実際の実地盤改良工事現場300を表す説明図である。なお、「VR」とは、「Virtual Reality」の略語でありコンピュータのディスプレイ上で仮想的に再現された仮想空間、仮想現実世界または仮想世界等を意味している。また、VR地盤改良工事現場200の詳細については
図3~
図10を参照しながら後述する。
【0061】
この地盤改良工事の遠隔施工管理システム100は、実地盤改良工事現場300(施工現場)から離れた場所にいる工事の当事者(ユーザー)が、施工現場に行かずとも施工現場に行った場合と遜色のない精度で実地盤改良工事現場300の現在の施工進捗状況ならびに施工開始時から現在に到る過去の施工実績、更には現在から未来のある時点における予測される施工進捗状況について確認することを可能にする施工管理システムである。なお、説明の都合上、本実施形態における工事の当事者(ユーザー)としては、工事委託業者、工事受託業者および工事施工業者の三者としている。
【0062】
図1に示されるように、この地盤改良工事の遠隔施工管理システム100の構成は、実地盤改良工事現場300の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場200をユーザーに提供するクラウドサーバー10と、VR地盤改良工事現場200の各種機能を使用するための1又は複数のユーザー端末装置20と、そのVR地盤改良工事現場200を視覚可能に表示するための頭部装着ディスプレイ30と、VR地盤改良工事現場200を操作するための操作機40と、クラウドサーバー10とユーザー端末装置20との間で双方向のデータのやり取りを可能にするネットワーク50と、地盤改良機1の各種情報をクラウドサーバー10に送信する施工機の通信装置60と、固化剤の各種情報をクラウドサーバー10に送信する固化剤の通信装置70と、実地盤改良工事現場300の地上の3次元形状データ(XYZ座標値)を測定しクラウドサーバー10に送信する3Dレーザースキャナー11とを具備して構成されている。以下、各構成について更に説明する。
【0063】
クラウドサーバー10は、VR地盤改良工事現場200(施工管理プログラム)の各種機能を処理するための制御部11と、VR地盤改良工事現場200を仮想的に再現する施工管理プログラム並びに、施工機および固化剤についての各種情報、実工事現場の3次元形状データ、地盤情報(N値、土質)、機械のCADデータ及びユーザー情報(アカウント情報)等を記憶する記憶部12と、ユーザーの指令(要求)を受信すると共に、その指令(要求)を処理した処理済みデータを全ユーザーに送信するための入出力部13とを備えている。
【0064】
なお、ここで言う「各種情報」には、機械情報、施工情報、位置情報等を含むものとする。施工機の「各種情報」については、例えば、地盤改良機1の位置および方向、地盤改良杭9の施工位置(X,Y)および掘削深度(m)、スイベルヘッド1a(
図2)の回転速度(回/分)および回転トルク(kN・m)、リーダー1b(
図2)の昇降速度(m/分)および給圧力(N)を含むものとする。一方、固化剤の「各種情報」については、例えばセメント比重、セメント添加量(kg/m
3)、配合比、区間流量(L)、瞬時流量(L/分)、積算流量(L)を含むものとする。
【0065】
また、ここで言う「機械のCADデータ」には、地盤改良機1、固化剤生成装置4および固化剤用ポンプ5のCADデータを含むものとする。
【0066】
制御部11は、VR地盤改良工事現場作成機能を有している。即ち、制御部11はユーザーから「記憶部12に保存されている施工管理プログラムを起動せよ」という指令(要求)があった場合、記憶部12に保存されている地盤改良機1の各種情報、固化剤の各種情報、実地盤改良工事現場300の3次元形状データ、地盤情報に基づいて、実地盤改良工事現場300の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場200を仮想的に再現する。再現されたVR地盤改良工事現場200は、クラウドサーバー10から各ユーザーのユーザー端末装置20に送信され、ユーザー端末装置20においてVR3次元画像に加工される。そして、各ユーザーは頭部装着ディスプレイ30によって加工されたVR地盤改良工事現場200のVR3次元画像を視聴することになる。なお、ここで言う「VR3次元画像」とは、所望の仮想世界の画像(VR地盤改良工事現場200)のみがユーザーの視界全体に映し出された奥行き感のあるその画像についての立体画像(3D画像)を意味している。
【0067】
また、その他の制御部11の機能としては、例えば、「参加機能」、「対話機能」、「ファイル共有機能」、「工事現場巡回機能」、「工事進捗確認機能」、「工事履歴確認機能」、「工事進捗予測確認機能」等が挙げられる。これらの機能については
図3~
図9を参照しながら後述する。次に、ユーザー端末装置20について説明する。
【0068】
ユーザー端末装置20は、クラウドサーバー10によって提供されるVR地盤改良工事現場200をダウンロードしてVR3次元画像に加工する。加工されたVR地盤改良工事現場200のVR3次元画像は、ユーザー端末装置20から頭部装着ディスプレイ30に送信される。
【0069】
ユーザー端末装置20は、入出力部21と、データ処理部22と、記憶部23と、表示部24とを有し、デスクトップ型、ノート型、又はタブレット型のコンピュータ、或いはスマートフォン等の携帯端末装置によって構成することができる。ユーザー端末装置20はネットワーク50に接続し、クラウドサーバー10、他のユーザー端末装置20、頭部装着ディスプレイ30及び操作機40との間で双方向の通信することができる双方向通信機能を有している。
【0070】
頭部装着ディスプレイ30は、VR地盤改良工事現場200のVR3次元画像をユーザーが視覚可能に表示する。頭部装着ディスプレイ30は、入出力部31と、データ処理部32と、表示部33と、マイク-ヘッドフォン34とを有し、メガネ型又はゴーグル型の非透過型のディスプレイによって構成することができる。従って、一のユーザーは、VR地盤改良工事現場200を視聴しながらマイク-ヘッドフォン34によって他のユーザーと対話することができる。
【0071】
操作機40は、入出力部41と、データ処理部42と、動作検出部43と、十字パッド又はスティック等の操作部44とを有し、動作検出部34によりユーザーの動作(操作部44)を検出し、そのユーザーの動作に係るデータをユーザー端末装置20に送信する。ユーザーの動作に係るデータを受信したユーザー端末装置20は、クラウドサーバー10に送信する。ユーザーの動作に係るデータを受信したクラウドサーバー10は、VR地盤改良工事現場200内の対応するアバターに反映し、アバターが更新されたVR地盤改良工事現場200はクラウドサーバー10によって各ユーザーのユーザー端末装置20にそれぞれ送信されることになる。また、操作機40として、ゲーム機に使用されている既存のコントローラを使用することも可能である。
【0072】
ネットワーク50は、例えば携帯電話会社が提供する無線通信網、或いはその無線通信網とインターネット等の有線通信網との組合せ、或いはWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信とインターネット等の有線通信網との組合せ、或いは無線通信網、有線通信網および近距離無線通信の組合せによって構成することができる。
【0073】
施工機の通信装置60は、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信機能を有すると共に、携帯電話事業者の無線通信網に接続することができる移動体通信機能も有している。従って、施工機の各種情報(機械情報、施工情報、位置情報)については、施工機の通信装置60から直接的に又は間接的にネットワーク50を介してクラウドサーバー10に送信されるようになっている。クラウドサーバー10が受信した施工機の各種情報については、記憶部12に保存され、VR地盤改良工事現場200を再現する際に使用されるようになっている。
【0074】
固化剤の通信装置70は、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信機能を有すると共に、携帯電話事業者の無線通信網に接続することができる移動体通信機能も有している。従って、固化剤の各種情報については、固化剤の通信装置70から直接的に又は間接的にネットワーク50を介してクラウドサーバー10に送信されるようになっている。クラウドサーバー10が受信した固化剤の各種情報については、記憶部12に保存され、VR地盤改良工事現場200を再現する際に使用されるようになっている。
【0075】
3Dレーザースキャナー11は、光波による測距機能とエンコーダによる測角機能を併せ持つノンプリズム式の光学式計測器で、例えば1秒間に最大30000点の被測定対象物についての座標(測点)を取得することができるスキャン機能を有している。3Dレーザースキャナー11によって取得された点群データについては、3Dレーザースキャナー11から直接的に又は間接的にネットワーク50を介してクラウドサーバー10に送信されるようになっている。クラウドサーバー10が受信した点群データは、「実地盤改良工事現場300の3次元形状データ」として記憶部12に保存され、VR地盤改良工事現場200を再現する際に使用されるようになっている。
【0076】
図2は、VR地盤改良工事現場200に対応する実地盤改良工事現場300を示す説明図である。この実地盤改良工事現場300は、軟弱地盤における「支持力強化」、「沈下低減」、「液状化防止」又は「既設構造物の耐震補強」を目的とした、機械撹拌工法(スラリー式機械撹拌工法)によって地中に地盤改良杭9を多数造成する地盤改良工事現場である。
【0077】
「機械撹拌工法」とは、地盤改良機1のスイベルヘッド1aを回転させ且つリーダー1bでケーシングロッド2を鉛直下方に給進させながら、ケーシングロッド2の先端に取り付けられた撹拌装置3によって地盤を掘削してセメント系の固化剤を土砂に注入し撹拌混合することにより、円柱状の地盤改良杭9を造成する地盤改良工法である。なお、撹拌装置3は地盤を掘削する掘削翼3aと、固化剤と土砂を撹拌する撹拌翼3bと、土砂が撹拌翼3bと一緒に回転することを防止する供回り防止翼3cとから構成されている。撹拌装置3の先端付近には固化剤が噴射する噴射口(図示せず)が設けられている。
【0078】
地盤改良機1は、ケーシングロッド2を把持して回転させるスイベルヘッド1aと、スイベルヘッド1aを支持しながら所定の給進力で昇降させるリーダー1bとを備える。ケーシングロッド2の上端にはロッドの回転をホース6に伝達することなくホース6を接続するためのウォータースイベル機構が設けられている。
【0079】
地盤改良機1は、GNSS衛星による測位システムを利用した杭芯位置誘導システムを備えている。この杭芯位置誘導システムでは、杭芯の現在位置と施工目標位置までのX軸方向のズレ量(±ΔX)およびY軸方向のズレ量(±ΔY)がモニタ画面(図示)に表示され、オペレータはそのモニタ画面を見ながら杭芯位置を施工目標位置に誘導することになる。施工目標位置が表示されたマシンガイダンスデータについては、ネットワーク50を経由して、例えばクラウドサーバー10からモニタ画面(図示せず)へ送信されて来る。
【0080】
従って、地盤改良杭9の施工位置については、GNSS衛星による測位システムを利用した杭芯位置誘導システムによって精度良く計測されることになる。また、地盤改良杭9の造成長(空堀深度9a、改良長9b)についてはリーダー1bに設けられた深度計(図示せず)によって精度良く計測されることになる。従って、杭芯位置誘導システムによって計測された地盤改良杭9の施工位置、並びに深度計(図示せず)によって計測された地盤改良杭9の深度については、施工機の通信装置60に取り込まれ直接的に又は間接的にネットワーク50を介してクラウドサーバー10に送信されるようになっている。
【0081】
セメント系の固化剤は、プラント設備である固化剤生成装置4によって生成され、生成された固化剤は固化剤用ポンプ5によってホース6を介してケーシングロッド2の内部に供給される。ケーシングロッド2の内部に供給された固化剤は撹拌装置3から土砂に噴射・混合され、撹拌翼3bによって撹拌されることになる。ケーシングロッド2の内部に供給された固化剤は流量計7によって計測され、その計測値は固化剤の通信装置70に取り込まれ直接的に又は間接的にネットワーク50を介してクラウドサーバー10に送信されるようになっている。
【0082】
地盤改良杭9は、固化剤が混入されなかった空堀深度9aの部分と、固化剤が混入・撹拌された改良長9bの部分と、鉛直方向に直交した断面を表す杭径9cの部分とから構成されている。地盤改良杭9についての施工データとしては、掘削深度(m)、空堀深度9a(m)、改良長9b(m)、杭径9c(mm)、区間深度当たりの固化剤の区間流量(L)、区間深度当たりの撹拌翼3bの羽根切り回数(回)、固化剤の瞬時流量[L/min]、固化剤の積算流量[L]等である。
【0083】
また、地盤改良機1の施工位置については、GNSS用衛星の測位システムによって取得された位置情報を基に算出されることになる。
【0084】
このように、地盤改良機1、固化剤生成装置4および固化剤用ポンプ5の稼働状況を示す機械情報、地盤改良杭9の施工状況を示す施工情報、地盤改良機1および地盤改良杭9の各位置情報については、施工機の通信装置60又は固化剤の通信装置70からネットワーク50を経由してクラウドサーバー10に送信され、クラウドサーバー10がVR地盤改良工事現場200を再現する際に使用されるようになっている。以下に、VR地盤改良工事現場200について説明する。
【0085】
図3は、実地盤改良工事現場300の仮想世界に相当するVR地盤改良工事現場200を示す説明図である。なお、説明の都合上、実地盤改良工事現場300の固化剤生成装置4、固化剤用ポンプ5、3Dレーザースキャナー11等については図示を省略されている。以降においても同様とする。
【0086】
このVR地盤改良工事現場200は、地盤改良機1がマシンガイダンスデータ(地盤改良杭9の施工位置・杭条件が記されたデータ)に基づいて地盤改良杭9を造成している仮想地盤改良工事現場を表している。地盤改良機1はCADデータを基に仮想的に再現されている。CADデータは、地盤改良機1を構成する各部品のCADデータを含んでいる。また、
図3で示される画像は、ユーザー端末装置20の表示部24に表される画像であり、頭部装着ディスプレイ30の表示部33に表されるVR3次元画像とは異なる。
【0087】
このVR地盤改良工事現場200では、工事当事者(工事委託業者、工事受託業者、工事施工業者)がVR地盤改良工事現場200の参加機能を使用して、アバター(仮想人)としてVR地盤改良工事現場200に表示されている。
【0088】
ここで言う「参加機能」とは、クラウドサーバー10によって認証されたユーザーをアバターを介してVR地盤改良工事現場200に登場(没入)させる機能である。この参加機能を利用するためには、主催者(ホスト)である工事受託業者は、自己のユーザー端末装置20の表示部24に予め作成されている施工管理プログラムのショートカットをタップし、クラウドサーバー10にアクセスするための認証手続き(例えば、ログイン名とパスワードの入力)を行う。これにより、クラウドサーバー10の記憶部12に保存されている施工管理プログラムが起動される。施工管理プログラムは、工事受託業者がアバター(以下「Aアバター」)400として没入した第1VR地盤改良工事現場を再現し、その第1VR地盤改良工事現場を工事受託業者のユーザー端末装置20に送信する。ユーザー端末装置20が受信した第1VR地盤改良工事現場は、工事受託業者の頭部装着ディスプレイ30に送信され、表示部33にVR3次元画像として表示されることになる。
【0089】
同様に、招待者(ゲスト)である工事施工業者についても、自己のユーザー端末装置20の表示部24に予め作成されている施工管理プログラムのショートカットをタップし、クラウドサーバー10にアクセスするための認証手続き(例えば、ログイン名とパスワードの入力)を行う。これにより、施工管理プログラムは、先に再現した第1VR地盤改良工事現場に工事施工業者がアバター(以下「Bアバター」)410として没入した第2VR地盤改良工事現場を再現し、その第2VR地盤改良工事現場を工事受託業者と工事施工業者の各ユーザー端末装置20にそれぞれ送信する。各ユーザー端末装置20が受信した第2VR地盤改良工事現場は、工事受託業者と工事施工業者の各頭部装着ディスプレイ30にそれぞれ送信され、各表示部33にVR3次元画像としてそれぞれ表示されることになる。
【0090】
同様に、招待者(ゲスト)である工事委託業者についても、自己のユーザー端末装置20の表示部24に予め作成されている施工管理プログラムのショートカットをタップし、クラウドサーバー10にアクセスするための認証手続き(例えば、ログイン名とパスワードの入力)を行う。これにより、施工管理プログラムは、先に再現した第2VR地盤改良工事現場に工事委託業者がアバター(以下「Cアバター」)420として没入した第3VR地盤改良工事現場を再現し、その第3VR地盤改良工事現場を全ユーザー(工事受託業者、工事施工業者、工事委託業者)の各ユーザー端末装置20にそれぞれ送信する。各ユーザー端末装置20がそれぞれ受信した第3VR地盤改良工事現場は、各ユーザーの各頭部装着ディスプレイ30にそれぞれ送信され、各表示部33にVR3次元画像としてそれぞれ表示されることになる。従って、
図3は第3VR地盤改良工事現場に相当する。
【0091】
このように、実地盤改良工事現場300から離れた場所にいる工事受託者、工事施工業者および工事委託業者は、クラウドサーバー10にアクセスすることが認証される(ログインが成功する)と、VR地盤改良工事現場200にAアバター400、Bアバター410、Cアバター420としてそれぞれ表示され、仮想的な同一場所で一同に会することになる。
【0092】
図4は、VR地盤改良工事現場200の対話機能を示す説明図である。「対話機能」とは、ユーザー同士がアバターを介してVR地盤改良工事現場200内で自由に対話することを可能にする機能である。ユーザーが頭部装着ディスプレイ30のマイク-ヘッドフォン34を介して発信した音声信号については、クラウドサーバー10が他のユーザーのユーザー端末装置20に送信すると共に、音声認識アプリケーションによってテキストデータに変換し、VR地盤改良工事現場200に貼り付け、各ユーザーに送信する。その音声信号を受信した他のユーザーは、頭部装着ディスプレイ30のマイク-ヘッドフォン34を介して聞くことができると共に、テキストが貼り付けられたVR地盤改良工事現場200は、頭部装着ディスプレイ30の表示部33にVR3次元画像として表示され見ることができる。
【0093】
このように、Aアバター400、Bアバター410及びCアバター420は、頭部装着ディスプレイ30のマイク-ヘッドフォン34を介して互いに自由に話し・聞くことができると共に、会話の内容は音声認識アプリケーションによってテキストデータに変換され、VR地盤改良工事現場200に添付されることになる。会話の内容が添付されたVR地盤改良工事現場200のVR3次元画像については、各ユーザーの各頭部装着ディスプレイ30の各表示部33において見ることができる。また、対話の内容は、議事録としてクラウドサーバー10の記憶部12のユーザー情報に保存されることになる。以下に、VR地盤改良工事現場200のファイル共有機能の一例について説明する。
【0094】
図5は、VR地盤改良工事現場200のファイル共有機能の一例を示す説明図である。「ファイル共有機能」とは、VR地盤改良工事現場200内で一のユーザーが掲示した書類(ファイル)を他のユーザーが閲覧することを可能にする機能である。クラウドサーバー10は、一のユーザーが選択したファイルをVR地盤改良工事現場200に貼り付け、そのファイルが貼り付けられたVR地盤改良工事現場200を全ユーザーに送信する。
【0095】
従って、各ユーザーは自己のユーザー端末装置20の記憶部23に保存されているファイルについて、VR地盤改良工事現場200のファイル共有機能を利用することによって、VR地盤改良工事現場200に掲示することができる。ファイルの選択方法については、例えばVR地盤改良工事現場200でプルダウンメニューを開き、その中の「ファイルを共有する」を選択し、添付したいファイルを選択することにより行われる。ファイルが添付されたVR地盤改良工事現場200のVR3次元画像については、各ユーザー端末装置20を介して各ユーザーの各頭部装着ディスプレイ30にそれぞれ送信され、各ユーザーは各表示部33においてそれを閲覧することができる。
【0096】
図5では、工事受託業者であるAアバター400が、VR地盤改良工事現場200に添付したいファイルとして杭条件設定430と工程設定440の2つのファイルを選択し、VR地盤改良工事現場200に掲示している。
【0097】
このように、ファイル共有機能を使用することによって、一のユーザーは遠隔に居ながら他のユーザーに対し、地盤改良工事の詳細について説明することができる。因みに、杭条件設定430は、地盤改良杭9の改良長9b(
図2)(m)、空堀深度9a(
図2)(m)、杭径(mm)、使用されるセメントの比重、1m
3当たりのセメント添加量(kg/m
3)、水とセメントの混合比、ケーシングロッド2が1m貫入する毎の羽根切り回数(回/m)、撹拌翼3b(
図2)の羽根枚数(枚)、管理トルク(kN・m)、着底トルク判定(m)、吐出切替距離(m)、区間深度(m)、区間流量(L)、区間羽根切り回数(回)等を示している。
【0098】
一方、工程設定440は、撹拌装置3の注入下降・停滞・着底部練返し上昇・着底部練返し下降・撹拌上昇、固化剤の積算流量(L)、基準吐出量(L/min)、撹拌装置3の基準貫入速度(m/min)、停滞時間(s)、羽根切確保制御、回転方向(正転、逆転)等を示している。以下に、VR地盤改良工事現場200の工事現場巡回機能の一例について説明する。
【0099】
図6及び
図11-
図15は、VR地盤改良工事現場200の工事現場巡回機能の一例を示す説明図である。「工事現場巡回機能」とは、ユーザー同士がアバターを介してVR地盤改良工事現場200内を移動する(ウォークスルー)ことを可能にする機能である。クラウドサーバー10はユーザーの移動方向に沿ってVR地盤改良工事現場200を連続的に仮想的に再現し、あたかも実際の実地盤改良工事現場300を巡回しているような感覚をユーザーに与える。
【0100】
図6では、Aアバター400、Bアバター410及びCアバター420が地中を移動し、造成中の地盤改良杭9’についての施工状況を確認しているところである。施工状況については、「ファイル共有機能」によってVR地盤改良工事現場200内に掲示することができる。
【0101】
この「工事現場巡回機能」によって、工事当事者は地盤改良杭9の施工状況について視覚的かつ定量的に確認することができる。また、地中については土質に応じてカラー表示されている。また、地盤改良杭9については固化剤の区間流量(L)及び区間羽根切り回数(回)に応じてカラー表示されている。この地盤改良杭9のカラー表示については、特開2020-84501号公報に記載されている「杭施工データの図表現方法」に基づいて表示されていても良い。
【0102】
因みに、
図11ではAアバター400、Bアバター410及びCアバター420が、地盤改良機1に向かって前進したところである。同様に、
図12ではAアバター400、Bアバター410及びCアバター420が、地盤改良機1から後退したところである。
【0103】
同様に、
図13ではAアバター400、Bアバター410及びCアバター420が、地盤改良機1から左側に移動したところである。同様に、
図14ではAアバター400、Bアバター410及びCアバター420が、地盤改良機1から右側に移動したところである。同様に、
図15では、Aアバター400、Bアバター410及びCアバター420が、地盤改良機1から上方に移動したところである。以下に、VR地盤改良工事現場200の工事進捗確認について説明する。
【0104】
図7は、VR地盤改良工事現場200の工事進捗確認機能の一例を示す説明図である。「工事進捗確認機能」とは、ユーザー同士がアバターを介してVR地盤改良工事現場200内で地盤改良工事の出来形/出来高(現在の工事の進捗状況)をチェックすることを可能にする機能である。工事の進捗状況については、「ファイル共有機能」によって、工事出来高管理
図450と工事出来形管理
図451をVR地盤改良工事現場200内に掲示することにより行うことができる。
【0105】
図7では、Aアバター400、Bアバター410及びCアバター420が、地盤改良工事の現在の進捗状況を確認しているところである。地盤改良工事の現在の進捗状況については、工事出来形管理
図450をVR地盤改良工事現場200に表示させることによって、三者間で確認することができる。また、地盤改良杭9に色彩を付することによって、現在の進捗状況について一目で確認することができる。例えば、施工計画より進んでいる地盤改良杭9については黒色で表示されている。また、固化剤の区間流量又は区間羽根切り回数が所定の基準値を満足せずに不合格となった地盤改良杭9については例えば赤色で表示されている。
【0106】
工事出来高管理
図450では、施工計画については杭番号に「予」と付記され、施工が完了している杭番号については実線の円で囲まれ且つ「済み」と付記されている。また、施工は完了しているが、固化剤の区間流量又は区間羽根切り回数が所定の基準値を満足せずに不合格となった杭番号については「×」と付記されている。因みに、杭番号:D-8~D-10の3本の地盤改良杭9については、施工計画より進んでいることを示している。すなわち、施工計画では杭番号:D-1からD-7の7本の地盤改良杭9の施工完了が予定されているが、現在の工事進捗状況では杭番号:D-1からD-10の10本の地盤改良杭9の施工完了が見込まれている。また、杭番号:D-6については不合格となっている。一方、工事出来形管理
図451は、施工が完了した杭番号:D-1からD-7の地盤改良杭9について実際の寸法等を示している。以下に、VR地盤改良工事現場200の工事履歴確認機能について説明する。
【0107】
図8は、VR地盤改良工事現場200の工事履歴確認機能の一例を示す説明図である。「工事履歴確認機能」とは、ユーザーが過去のある時点のVR地盤改良工事現場200における工事の進捗状況を遡ってチェックすることを可能にする機能である。
【0108】
過去のどの時点を再現させるかは、ユーザーが時系列シークバー500をVR地盤改良工事現場200に表示させ、時系列シークバー500のドット501をユーザーが確認したい過去の時点まで移動させることによって行われる。過去の時点が確定すると、クラウドサーバー10(施工管理プログラム)は、記憶部12に保存されているその過去の時点における施工機の各種情報、固化剤の各種情報、および実地盤改良工事現場の3次元形状データ等に基づいて、その過去の時点のVR地盤改良工事現場200を仮想的に再現することになる。
【0109】
図8では、杭番号:D-1~D-5の5本の地盤改良杭9の施工が完了した過去の時点におけるVR地盤改良工事現場200まで遡って、工事の進捗状況を確認している。過去の工事出来高管理
図450’では、施工計画通りに地盤改良杭9の施工が完了したことを示している。
【0110】
また、特定の地盤改良杭9の工事の履歴についても確認することができる。例えば、
図9に示されるように、ユーザーが杭番号:D-5の地盤改良杭9を選択する場合、クラウドサーバー10(施工管理プログラム)は、記憶部12に保存されているその杭番号:D-5の施工開始時刻から施工完了時刻に到る施工機の各種情報、固化剤の各種情報、および実地盤改良工事現場の3次元形状データ等に基づいて、施工開始時刻から施工完了時刻に到るVR地盤改良工事現場200を連続的に再現することになる。
【0111】
図8に戻って、工事カレンダー452を使用することにより、過去の特定の期間(年月日・時刻の範囲、例:2022年8月1日00:00~2022年8月31日24:00)を指定することによって、過去の工事の進捗状況を確認することも可能である。この場合、工事カレンダー452において「開始の年月日・時刻」と「終了の年月日・時刻」をそれぞれ指定・入力することになる。以下に、VR地盤改良工事現場200の工事進捗予測確認機について説明する。
【0112】
図10は、VR地盤改良工事現場200の工事進捗予測確認機能の一例を示す説明図である。「工事進捗予測確認機能」とは、現在の工事の進捗状況を基にユーザーが指定した未来のある時点の工事の進捗状況を予測する機能である。これにより、未来のある時点の工事出来高が施工計画に対し遅れているのか否かを予測することができる。
【0113】
図10では、ユーザーは2022年8月17日18:00における未来の工事の進捗状況を確認している。確認したい日付・時刻の指定は、例えば、ユーザーがプルダウンメニューから工事カレンダー452を開いて日付けを指定すると、時刻入力画面453が別途自動的に表示され、ユーザーは時刻入力画面453で所望の時刻を入力することになる。
【0114】
確認したい日付・時刻の入力が完了すると、施工管理プログラムは、現在の工事の進捗状況を基に2022年8月17日18:00における未来の工事の進捗を計算し、その未来の工事進捗状況をVR地盤改良工事現場200に再現することになる。未来の工事の進捗状況については、例えば地盤改良杭9に付する色彩と、未来の工事出来高管理
図454によって表示される。
【0115】
未来の工事出来高管理
図454では、現在から2022年の8月17日迄の施工計画については杭番号に「予」と付記され、施工計画において施工完了が見込まれる杭番号については実線の円で囲まれている。すなわち、施工計画では杭番号:C-1からC-7の7本の地盤改良杭9の施工完了が予定されているが、VR地盤改良工事現場200の予測では杭番号:C-1からC-5の5本の地盤改良杭9の施工完了が見込まれることを示している。従って、これは、現在の工事ペースで工事が進行する場合、杭番号:C-6とC-7の2本の地盤改良杭9は施工が完了しない可能性があることを意味している。これにより、工事施工業者は、工事の進捗がこれ以上施工計画に対し遅れないような、或いは遅れを取り戻すような対策を事前に講じることが可能となる。
【0116】
また、杭番号:C-6とC-7の2本の地盤改良杭9が白色で表示されているのは、工事が施工計画より遅れていることを示している。一方、未来の工事の進捗が施工計画より進んでいる場合は、対象の地盤改良杭9が白色以外の色彩(例えば黒色)で表示されることになる。これにより、ユーザーは未来の工事の進捗が施工計画より遅れているか否かを一目で判別することができる。
【0117】
以上の通り、本発明の一実施形態に係る「地盤改良工事の遠隔施工管理システム100」について説明してきたが、本発明の実施形態は上記にのみに限定されることはない。すなわち、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内で種々の修正・変更を追加することは可能である。例えば、「ファイル共有機能」については、テキストファイルだけでなく、画像ファイル(静止画、動画)についてもVR地盤改良工事現場200に掲示することが可能である。これにより、実改良工事現場300や地盤改良機1に360°カメラを設置し、VR仮想地盤改良工事現場200から360°カメラによるリアルタイム画像を見ることが可能になる。
【0118】
また、地盤改良機1はVR仮想地盤改良工事現場200を走行可能としても良い。この場合、Aアバター400、Bアバター410及びCアバター420と地盤改良機1と間の相対位置関係については常に固定することができるようにしても良い。従って、地盤改良機1が移動する場合、Aアバター400、Bアバター410及びCアバター420も地盤改良機1と間の相対位置関係を保持した状態で供に移動することになる。
【0119】
また、本発明に係るVR地盤改良工事現場200は、ロッドを回転させながら固化剤を地中に高圧で噴射しながら柱状の固形改良体を造成する高圧噴射撹拌工法(ジェットグラウト工法)による地盤改良工事現場に対しても同様に適用可能である。
【0120】
(第2実施形態)
図16は、本発明の第2実施形態に係る地盤改良工事の遠隔運転管理システム600を示す説明図である。
既述の地盤改良工事の遠隔施工管理システム100は、地盤改良機1によって地中に造成された、或いはこれから造成される地盤改良杭9についての現在から過去・未来に到る工事の進捗状況(出来形・出来高)を、VR技術を用いてユーザー(工事施工業者、工事受託業者、工事委託業者)がネットワーク50を介してVR地盤改良工事現場200に没入することによって、遠隔地に居ながら、あたかも実地盤改良工事現場300に居るかの如く地盤改良杭9についての現在から過去・未来に到る工事の進捗状況を管理するものである。
【0121】
それに対し、この地盤改良工事の遠隔運転管理システム600は、ユーザー(以下「オペレータ」という)が同様にネットワーク50を介して「VR地盤改良工事現場200で仮想的に稼働している地盤改良機1」をVR地盤改良工事現場200上で仮想的に操作することによって、結果的に「実地盤改良工事現場300で実際に稼働している地盤改良機1」が施工機制御装置80によって施工目標位置PTに誘導されて地盤改良杭9を造成するように構成されている。なお、以降において「実地盤改良工事現場300で実際に稼働している地盤改良機1」を「実地盤改良機1」と言い、「VR地盤改良工事現場200で仮想的に稼働している地盤改良機1」を「VR地盤改良機1v」と言い両者を区別することにする。同様に、以降において「VR地盤改良工事現場200」および「VR地盤改良機1v」の各構成部品については、例えば実地盤改良機1のリーダー1bに相当するものについては「仮想リーダー1bv」と言い、名称には「仮想」を、部品番号には「v」をそれぞれ付記して実物と仮想物を区別することにする。
【0122】
VR地盤改良機1vは、オペレータによって操作機40を介して操作される。一方、実地盤改良機1は施工機制御装置80によって操作される。そのため、「VR地盤改良工事現場200上の仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおけるVR地盤改良機1vの動作」と、「実地盤改良工事現場300上の平面直角座標系X’Y’Z’における実地盤改良機1の動作」は互いに1対1に対応するように構成されている。なお、ここで言う「動作と動作が互いに1対1に対応している」とは、例えば実地盤改良工事現場300の平面直角座標系X’Y’Z’における実地盤改良機1の移動方向(単位方向ベクトルi)と移動量(その単位方向ベクトルiの絶対値のスカラー倍K)と、VR地盤改良工事現場200の仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおけるVR地盤改良機1vの移動方向(単位方向ベクトルiv)と移動量(その単位方向ベクトルivの絶対値のスカラー倍Kv)とは、それぞれ互いに等しいこと(i=iv且つK=Kv)を意味している。
【0123】
また、詳細については
図22から
図25を参照しながら後述するが、VR地盤改良機1vは、実地盤改良機1の全ての構成部品についての2次元CADデータ(例えば、正投影図法の2次元図面データ)を3次元CADデータ(3次元図面データ)に変換し、全ての仮想構成部品を3次元CAD上で実際の組立工程に従って仮想的に組み立てた、外部構造だけでなく内部構造まで再現された実地盤改良機1の3次元コンピュータグラフィック(3次元モデル)に相当するものである。VR地盤改良機1vの部品点数は、実地盤改良機1の部品点数と同じであり、実地盤改良機1と同様に全ての仮想構成部品は取外し/再取付け可能に構成されている。
【0124】
そのため、VR地盤改良機1vの仮想寸法と実地盤改良機1の実寸法は互いに1対1に対応している。ここで言う「寸法と寸法が互いに1対1に対応している」とは、例えば、「仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおけるVR地盤改良機1v」の任意の2点間距離は、それに対応する「平面直角座標系X’Y’Z’における実地盤改良機1」の2点間距離に等しいことを意味している。
【0125】
同様に、平面直角座標系X’Y’Z’における施工対象物(例えば地盤改良杭9)に係る位置(例えば施工目標位置PT)の座標と、仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおける対応する仮想施工対象物(例えば仮想地盤改良杭9v)に係る位置(例えば仮想施工目標位置PTv)の座標は互いに等しくなるように構成されている。
【0126】
このように、「仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおけるVR地盤改良機1vの位置、寸法、動作」と、「平面直角座標系X’Y’Z’における実地盤改良機1の位置、寸法、動作」は互いに1対1に対応しており、且つ「平面直角座標系X’Y’Z’における施工対象物に係る位置の座標」と、「仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおける対応する仮想施工対象物に係る位置の座標」は互いに等しくなるように構成されている。なお、「仮想平面直角座標系X’Y’Z’_v」は「VR地盤改良工事現場200」の意味で使われる場合もあり、逆の場合もある。同様に、「衛星測位システムに対応した平面直角座標系X’Y’Z’」は「実地盤改良工事現場300」の意味で使われる場合もあり、逆の場合もある。
【0127】
その結果、オペレータがVR地盤改良機1vを操作してVR地盤改良工事現場200の仮想施工目標値PTvに誘導し仮想地盤改良杭9vを仮想的に造成することにより、実地盤改良工事現場300の施工目標位置PTに施工機制御装置80によって地盤改良杭9が実際に造成されることになる。
【0128】
図17は、オペレータがVR地盤改良機1vを操作して実地盤改良機1を実際に移動させるための概略手順を示すフロー図である。
先ずステップS1では、オペレータはオペレータ端末装置20を立ち上げ、クラウドサーバー10にログインしてクラウドサーバー10の記憶部12に保存されている運転管理プログラムを起動する。運転管理プログラムが起動すると、オペレータの端末装置20に最新のVR地盤改良工事現場200がクラウドサーバー10より送信される。その結果、頭部装着ディスプレイ30に最新のVR地盤改良工事現場200が表示される。
【0129】
次にステップS2では、オペレータは頭部装着ディスプレイ30に表示されているVR地盤改良工事現場200を見ながら、VR地盤改良機1vを操作機40によって操作する。VR地盤改良機1vに対するオペレータの操作動作は、操作機40によって「VR地盤改良機1vに対する操作指令」として電気信号に変換され、オペレータ端末装置20に送信される。なお、本実施形態における操作機40については、実地盤改良機1の動作(前進、後進、旋回、並びにリーダー1bの昇降、起倒・スイング、スイベルヘッド1aの正転・逆転)に対応しているものであれば良く、例えば、実際のコックピットを模擬したレバー、スイッチ又はボタン等で構成された操作盤(
図28、
図32)、或いはスティック、ボタン又は十字パッドで構成されたもの、或いはキーボードとマウスの組合せ等を使用することが可能である。
【0130】
次にステップS3では、「VR地盤改良機1vに対する操作指令」は、オペレータ端末装置20によって「実地盤改良機1に対する操作指令」に変換されネットワーク50を経由して施工機制御装置80に送信される。
【0131】
次にステップS4では、オペレータからの「実地盤改良機1に対する操作指令」を受信した施工機制御装置80は、その操作指令に係る動作(目標値)を実地盤改良機1が実行するように各駆動部を制御する。
【0132】
次にステップS5では、施工機制御装置80は、「実地盤改良機1に対する操作指令」を実行した後の実地盤改良機1の状態および施工結果を、機械情報および施工情報(位置情報、センサ計測値)としてクラウドサーバー10に送信する。
【0133】
次にステップS6では、実地盤改良機1に係る機械情報および施工情報を受信したクラウドサーバー10は、これらの情報をVR地盤改良工事現場200に反映し、VR地盤改良工事現場200を最新の状態に更新する。
【0134】
次にステップS7では、クラウドサーバー10はVR地盤改良工事現場200の更新情報をオペレータ端末装置20に送信する。
【0135】
次にステップS8では、クラウドサーバー10からVR地盤改良工事現場200の更新情報を受信したオペレータ端末装置20は、VR地盤改良工事現場200を最新の状態に更新すると共に、頭部装着ディスプレイ30に表示されているVR3次元画像についても最新の状態に更新する。
【0136】
オペレータの操作が終了する迄上記ステップS2から上記ステップS8が繰り返される。
【0137】
図18は、オペレータがVR地盤改良機1vを操作して実地盤改良機1を実際に移動させる場合のネットワーク50におけるオペレータ端末装置20とクラウドサーバー10と施工機制御装置80との間のデータのやり取りを示す説明図である。
オペレータ端末装置20から施工機制御装置80へは、「実地盤改良機1に対する操作指令」が送信される。クラウドサーバー10からオペレータ端末装置20へは、主として「VR地盤改良工事現場200の更新情報」が送信される。一方、施工機制御装置80からクラウドサーバー10へは、主として「機械情報や施工情報」が送信される。このように、ネットワーク50上でやり取りされる情報は、何れも操作指令、機械情報や施工情報、更新情報等の情報量の比較的少ないデータである。
【0138】
その結果、ネットワーク50に要求される通信回線については、操作指令、機械情報や施工情報、更新情報等の情報量の比較的少ないデータを送受信することができる程度の低速・低容量の通信回線で済むことになる。そのため、本発明に係る地盤改良工事の遠隔運転管理システム600では、実地盤改良機1を含む実地盤改良工事現場300の一部または全部についての写真画像をリアルタイムに送信することができる高速・大容量の通信回線は必要とされなくなる。
【0139】
ネットワーク50上でやり取りされる情報量が比較的少ないことにより、オペレータ端末装置20から送信される「実地盤改良機1に対する操作指令」は、施工機制御装置80によって確実に受信される。また、施工機制御装置80から送信される「機械情報・施工情報」はクラウドサーバー10によって確実に受信される。さらに、クラウドサーバー10から送信される「機械情報・施工情報が反映されたVR地盤改良工事現場200の更新情報」は、オペレータ端末装置20によって確実に受信されることになる。その結果、遠隔地に居るオペレータは、VR地盤改良工事現場200において仮想的に稼働しているVR地盤改良機1vを操作することによって、実地盤改良工事現場300で実際に稼働している実地盤改良機1をリアルタイムに遠隔操作することが可能となる。
【0140】
再び
図16に戻って、クラウドサーバー10の制御部11には、「遠隔操縦支援機能」、「遠隔工法支援機能」、「施工対象物表示機能」、「施工結果表示機能」、「危険予知機能」、「移動領域逸脱防止機能」及び「操作手順記憶機能」等の遠隔運転を支援する機能が追加されている。以下、各機能について簡単に説明する。
【0141】
「遠隔操縦支援機能」とは、VR地盤改良機1vを操作するオペレータが、ケーシングロッド2の現在の杭芯位置P3’を施工目標位置PTに効率良く誘導することを支援する機能である。例えば、現在の仮想杭芯位置P3’vと仮想施工目標位置PTvとの相対位置関係(ΔX
MV、ΔY
MV)を所望の視点から見ることを可能にすることである。これについては
図29を参照しながら後述する。
【0142】
「遠隔工法支援機能」とは、オペレータが、例えば、機械攪拌工法および高圧噴射撹拌工法(ジェットグラウト工法)を効率よく実施することを支援する機能である。例えば、攪拌翼3bの区間羽根切り回数(回/m)、リーダー1bの昇降速度(m/min)、固化剤の区間流量(L)、固化剤用ポンプ5の基準吐出量(L/min)、固化剤の積算流量(L)等の重要な施工情報(マシンガイダンスデータ)をオペレータに示す機能である。
【0143】
「施工対象物表示機能」とは、施工対象における特徴点などの、施工にかかわる重要な判断材料については、図形、記号、ピクトグラム、数値、グラフ、色などを使用しVR地盤改良工事現場200又はVR地盤改良機1vに重ね合わせて表示する機能である。「施工対象物表示機能」の一例を挙げると、仮想施工目標位置PTvを図形、記号等でハイライトすることにより、オペレータに重要な情報であることを示すことである。
【0144】
「施工結果表示機能」とは、VR地盤改良機1vによる施工結果をVR地盤改良工事現場200又はVR地盤改良機1vに重ね合わせて表示する機能である。
【0145】
「危険予知機能」とは、施工状況の悪化、人などを含む物体への衝突や干渉、その他危険が予知される状況等、注意喚起が必要な状況が発生した場合は、VR地盤改良工事現場200又はVR地盤改良機1vにおいて図形、記号、ピクトグラム、色、音声などによりオペレータに通知する機能である。
【0146】
「移動領域逸脱防止機能」とは、VR地盤改良工事現場200上に移動可能領域を定める事ができ、その領域から外れる操作については、操作を無効にする機能、もしくは、領域内にとどめる操作に改める機能である。
【0147】
「操作手順記憶機能」とは、実地盤改良機1の駆動部に関する操作順、操作間隔、操作量(実地盤改良機1に対する操作指令)をまとめて一括記憶する機能であると共に、一括記憶した操作指令を施工機制御装置80に送信する機能である。なお、ここで言う「駆動部」とは、例えばスイベルヘッド1aの回転駆動部1aD、リーダー1bの昇降駆動部1bD、固化剤用ポンプ5のポンプ駆動部5D等を意味している。
【0148】
また、クラウドサーバー10の記憶部12に保存されている実工事現場(施工対象物、例えば実地盤改良工事現場300の地表面)の3次元形状データについては、3Dレーザースキャナー11によって計測された座標測点から成る「点群データ」と、その「点群データ」中の隣り合う一の座標測点と他の座標測点とを直線で結んで三角形の網目にした「三角形メッシュデータ」とによって構成されている。3次元形状データを三角形メッシュデータとすることにより、施工対象物の三次元形状をVR地盤改良工事現場200上で正確に再現することができるようになる。この三角形メッシュデータについては、
図21を参照しながら後述することにする。
【0149】
施工機制御装置80は、オペレータ端末装置20から送信される「実地盤改良機1に対する操作指令」に従って、実地盤改良機1を自動制御する。具体的には施工機制御装置80は、対応するアクチュエータの駆動部を操作して実地盤改良機1の各動作がその操作指令(操作順、操作間隔、操作量)に等しくなるように自動制御する。以下に、施工機制御装置80について説明する。
【0150】
図19は、本発明の第2実施形態に係る施工機制御装置80の構成を示すブロック図である。
施工機制御装置80は、オペレータ端末装置20からの「実地盤改良機1に対する操作指令」を受信する入力部81と、実地盤改良機1の走行に関連する動作をその操作指令に等しくなるように制御する走行制御部82と、リーダー1bの起倒角又はスイング角をその操作指令に等しくなるように制御するリーダー傾斜制御部83と、リーダー1bの昇降方向/速度またはスイベルヘッド1aの回転方向/速度をその操作指令に等しくなるようにそれぞれ制御すると共に、固化剤用ポンプ5からの固化剤(セメントミルク)の吐出量をその操作指令に等しくなるように制御する削孔制御部84と、各計測センサによって測定された計測信号(電気信号)を所望の計測値に変換する測定部85と、変換された計測値がその操作指令の所定範囲内に入っているか否かを判定する判定部86と、測定部85で算出された各計測値を「実地盤改良機1の機械情報」と「実地盤改良工事現場300の施工情報」としてクラウドサーバー10に送信する出力部87とを具備して構成されている。以下、各構成について更に説明する。
【0151】
上述した通り、「VR地盤改良工事現場200におけるVR地盤改良機1vの位置、寸法、動作」と、「実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の位置、寸法、動作」は互いに1対1に対応している。そのため、VR地盤改良工事現場200(仮想平面直角座標系X’Y’Z’_v)におけるVR地盤改良機1vの位置情報については、平面直角座標系X’Y’Z’における実地盤改良機1の位置情報から自動的に算出されることになる。
【0152】
特に、ケーシングロッド2の現在の杭芯位置(ベクトルO’P3’)の測定については、下記式1によって算出される「平面直角座標系X’Y’Z’におけるケーシングロッド2の当初の杭芯位置(ベクトルO’P3)」に対し、平面直角座標系X’Y’Z’における当初の杭芯位置(ベクトルO’P3)からのズレ量Δ’(Δx’、Δy’)を加えた下記式2によって正確に算出している。なお、ここで言う「当初」とは、「キャリブレーション時(施工基準姿勢時)」という意味である。また、
図20に示されるように、「平面直角座標系X’Y’Z’」はGNSS衛星測位システムに対応したグローバル座標系であり、「機械座標系OXY」は実地盤改良機1の第1アンテナ1cAを原点とする実地盤改良機1上に構築されたローカル座標系である。
(式1)
(式2)
【0153】
また、現在の杭芯位置(ベクトルO’P3’)を施工目標位置(ベクトルO’PT)に誘導する誘導作業は、誘導作業が簡素化される機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔX
M、ΔY
M)に基づいて行われる。機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔX
M、ΔY
M)は、平面直角座標系X’Y’Z’上での現在の杭芯位置(ベクトルO’P3’)に対する施工目標位置(ベクトルO’PT)のベクトルに、「機械座標系OXYを平面直角座標系X’Y’Z’に変換する座標変換T」の逆行列T
-1を施した下記式3に示されるベクトル量に等しくなる。
(式3)
【0154】
なお、詳細についてここでは省略するが、平面直角座標系X’Y’Z’上での上記ずれ量Δ’(Δx’、Δy’)は、施工機本体1eの左右方向または前後方向の水平面に対する傾斜角度θ1,θ2が発生し、なお且つリーダー1bの左右方向または前後方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ3,θ4が発生した場合の「機械座標系OXY上における当初の杭芯位置(ベクトルOP3)」からのずれ量Δ(ΔX、ΔY)に上記座標変換Tを施した下記式4の座標に等しくなる。
(式4)
なお、上記傾斜角度θ1,θ2は、施工機本体1eに取り付けられた本体部傾斜角センサ104(二軸傾斜センサ)によって計測される。また、上記傾斜角度θ3,θ4は、リーダー1bに取り付けられたリーダー傾斜角センサ105(二軸傾斜センサ)によって計測される。さらに、座標変換T中の上記方向角度θ(X’軸から計った方位角)は、「第1アンテナ1cAと第2アンテナ1cBとを結ぶベクトルOP2」と真北との成す角度δ(真方位角)から、機械座標系OXYのY軸と上記ベクトルOP2との成す角度φと、子午線収差角γを差し引くことにより算出される。
(式5)
θ=δ-φ-γ
【0155】
このように、実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の位置情報については、平面直角座標系X’Y’Z’における第1アンテナ1cAの位置(ベクトルO’P1)と第2アンテナ1cBの位置(ベクトルO’P2)、さらに本体部傾斜角センサ104(二軸傾斜センサ)によって計測される施工機本体1eの左右方向または前後方向の水平面に対する傾斜角度θ1,θ2、リーダー傾斜角センサ105(二軸傾斜センサ)によって計測されるリーダー1bの左右方向または前後方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ3,θ4、並びにX’軸から計った実地盤改良機1の方向角度θによって、平面直角座標系X’Y’Z’上(実地盤改良工事現場300)において正確に算出されることになる。
【0156】
従って、VR地盤改良工事現場200(仮想平面直角座標系X’Y’Z’_v)におけるVR地盤改良機1vの位置情報は、平面直角座標系X’Y’Z’における実地盤改良機1の位置情報から自動的に正確に算出されることになる。
【0157】
図21は、本発明の第2実施形態に係る三角形メッシュデータを示す説明図である。
図21(a)に示されるように、点群データは3Dレーザースキャナー11によって取得された無数の座標測点から構成されている。各座標測点は、3Dレーザースキャナー11の計測座標系X”Y”Z”上で計測されたX座標、Y座標、Z座標を有している。計測座標系X”Y”Z”を平面直角座標系X’Y’Z’に変換する座標変換を施すことにより、3Dレーザースキャナー11によって計測された各座標測点は、実地盤改良機1と同じ平面直角座標系X’Y’Z’上で計測されたX座標、Y座標、Z座標を有するようになる。
【0158】
上述した通り、「平面直角座標系X’Y’Z’における施工対象物に係る位置の座標」と、「仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおける対応する仮想施工対象物に係る位置の座標」は互いに等しくなるように構成されている。
【0159】
従って、3Dレーザースキャナー11によって計測された平面直角座標系X’Y’Z’上での座標点群は、VR地盤改良工事現場200に構築される仮想平面直角座標系X’Y’Z’_v上で同一座標によって表示されることになる。しかし、隣り合う座標測点と座標測点との間には空白領域が存在するため、座標点群のみによって被測定対象物(例えば、実地盤改良工事現場300の地表面)の三次元形状を認識することはできない場合がある。
【0160】
一方、
図21(b)に示されるように、三角形メッシュデータは、隣り合う一の座標測点と他の座標測点を直線で結んで網目が三角形である三角形網によって構成されている。被測定対象物が三角形メッシュデータによって構成されているため、空白領域は存在しなくなる。その結果、仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおいて三角形メッシュデータによって表された被測定対象物の三次元形状は、ユーザーの視覚を通じて認識することが容易となる。
【0161】
また、各三角形の各頂点P1v,P2v,P3vは、仮想平面直角座標系X’Y’Z’_vにおける正確な座標をそれぞれ有している。そのため、各三角形に垂直な法線ベクトルhvが一意的に算出されることになる。この法線ベクトルhvによって、被測定対象物の表面の傾斜状態を把握することが容易となる。
【0162】
図22は、本発明の第2実施形態に係るVR地盤改良機1vの要部正面を示す説明図である。
上述した通り、VR地盤改良機1vは、実地盤改良機1の全ての構成部品についての2次元CADデータ(例えば、正投影図法の2次元図面データ)を3次元CADデータ(3次元図面データ)に変換し、全ての仮想構成部品を3次元CAD上で実際の組立工程に従って仮想的に組み立てた、外部構造だけでなく内部構造まで再現された実地盤改良機1の3次元コンピュータグラフィック(3次元モデル)に相当するものである。そのため、VR地盤改良機1vでは、実地盤改良機1と同様に全ての仮想構成部品(VR部品)は取外し/再取付け可能に構成されている。
【0163】
また、
図23に示されるように、オペレータはVR地盤改良機1vを操作しながら、VR地盤改良機1vに対するオペレータの視点位置を自由に変えることができることになる。なお、ここで言う「視点位置」とは、目線の高さ、目線の方向および視野の範囲を含むものとする。
【0164】
上述した通り、「VR地盤改良工事現場200におけるVR地盤改良機1vの位置、寸法、動作」と、「実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の位置、寸法、動作」は互いに1対1に対応している。従って、オペレータは視点位置を自由に変えながらVR地盤改良機1vを操作することにより、結果的に実地盤改良機1に対しても視点位置を自由に変えながら操作することが可能となる。以下に、VR地盤改良機1vの仮想部品移動機能について簡単に説明する。
【0165】
図24は、VR地盤改良機1vの仮想部品移動機能を示す説明図である。
図24に示されるVR地盤改良機1vは、
図22に示されるVR地盤改良機1vの仮想キャビン部から「仮想キャビンフレーム」と「仮想フロントガラス」を取り外し、更にVR地盤改良機1vの仮想リーダー1bvから「仮想リーダーフレーム」を取り外したものに相当する。この仮想部品移動機能を利用することにより、実地盤改良機1から実部品を取り外すことなく、即ち実地盤改良機1を実際に用意することなく、実地盤改良機1の内部構造を見ることが可能となる。
【0166】
仮想部品移動機能により取り外されたVR部品は、削除することも元に戻すこと(リセットすること)も可能である。また、実地盤改良機1の内部構造を見るためのその他の機能として、「仮想部品透明化機能」を使用することも可能である。以下に、VR地盤改良機1vの仮想部品透明化機能について簡単に説明する。
【0167】
図25は、VR地盤改良機1vの仮想部品透明化機能を示す説明図である。
図25に示されるVR地盤改良機1vは、
図22で示されるVR地盤改良機1vの仮想キャビン部から「仮想キャビンフレーム」と「仮想フロントガラス」を透明化し、更にVR地盤改良機1vの仮想リーダー1bvから「VRリーダーフレーム」を透明化したものに相当する。VR部品を透明化することにより、実地盤改良機1から実部品を取り外すことなく、即ち実地盤改良機1を実際に用意することなく、実地盤改良機1の内部構造を見ることが可能となる。次に、VR地盤改良機1vを使用した地盤改良杭9の造成について説明する。
【0168】
図26は、VR地盤改良機1vを使用した地盤改良杭9の自動施工を示すフロー図である。
図27は、自動改良杭9の自動施工時におけるネットワーク50におけるデータのやり取りを示す説明図である。
【0169】
先ずステップS1では、オペレータはクラウドサーバー10に最新のマシンガイダンスデータをクラウドサーバー10にアップロードする。具体的には、オペレータ端末装置20からクラウドサーバー10に対し最新のマシンガイダンスデータが送信される。クラウドサーバー10は、受信した最新のマシンガイダンスデータを記憶部12に上書き保存する。
【0170】
ここで言う「マシンガイダンスデータ」とは、造成される各杭の杭番号についての杭座標(
図33)と、「杭条件設定430および工程設定440」(
図30)が紐付けられた施工データである。すなわち、杭番号が分かれば、その地盤改良杭9についての「杭座標、杭条件設定、工程設定」を知ることができるようになっている。
【0171】
「杭条件設定および工程設定」は「杭改良データ」或いは「施工パターン」とも言われ、「地盤改良杭9の出来形仕様(空堀深度9a、改良長9b、杭径9c、セメント比重、セメント添加量、水/セメントの配合比等)」、「各工程(「注入下降」、「停滞」、「着底部練返し上昇」、「着底部練返し下降」、「撹拌上昇」)」、並びに「各工程における固化剤(スラリー等)の積算流量(L)、固化剤の区間流量(L/m)、固化剤用ポンプ5の基準吐出量(L/min)、リーダー1bの昇降速度(m/min)、区間羽根切り回数(回/m)、撹拌装置3の回転方向等」をそれぞれ規定している。
【0172】
「杭座標」は、地盤改良杭9を造成すべき場所(施工目標位置PT)のGNSS等の衛星測位システムに対応した平面直角座標系X’Y’Z’における座標である。
【0173】
次にステップS2では、施工機制御装置80は最新のマシンガイダンスデータをクラウドサーバー10にダウンロード要求する。施工機制御装置80は起動すると、クラウドサーバー10に対しマシンガイダンスの更新状態(バージョン)を確認するようになっている。自身が保有するマシンガイダンスデータが古いバージョンのものである場合に、クラウドサーバー10に対し最新のマシンガイダンスデータを送信するようにダウンロード要求を発信する。
【0174】
次にステップS3では、クラウドサーバー10は施工機制御装置80に最新のマシンガイダンスデータを送信する。施工機制御装置80は、クラウドサーバー10から送信された最新のマシンガイダンスを自身の記憶部に上書き保存する。
【0175】
次にステップS4では、オペレータがVR地盤改良機1vを操作して、仮想ケーシングロッド2vの現在の仮想杭芯位置P3’vを仮想施工目標位置PTvに誘導する(いわゆる「杭芯位置設定」)。上述した通り、「VR地盤改良工事現場200におけるVR地盤改良機1vの位置、寸法および動作」と、「実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の位置、寸法および動作」は互いに1対1に対応している。そのため、オペレータが「仮想ケーシングロッド2vの現在の仮想杭芯位置P3’v」を「仮想施工目標位置PTv」に誘導する場合、結果的に施工機制御装置80によって「ケーシングロッド2の現在の杭芯位置P3’」が「施工目標位置PT」に誘導されることになる。仮想ケーシングロッド2vの「現在の仮想杭芯位置P3’v」を仮想施工目標位置(杭座標)PTvに誘導する杭芯位置誘導作業については、
図28及び
図29を参照しながら後述する。
【0176】
次にステップS5では、オペレータは施工機制御装置80に対し施工開始指令を出す。具体的には、オペレータはこれから造成される地盤改良杭9の杭番号を施工機制御装置80に送信することになる。
【0177】
次にステップS6では、施工機制御装置80は該当する杭番号の施工パターンを実行する。施工機制御装置80は、マシンガイダンスデータから該当する杭番号の施工パターンを抽出し、抽出した施工パターンに従って、スイベルヘッド1aの回転速度(回/min)、リーダー1bの昇降速度(m/min)、並びに固化剤用ポンプ5の基準吐出量(L/min)等を操作して地盤改良杭9を自動的に造成する。なお、これらスイベルヘッド1a及びリーダー1bと固化剤用ポンプ5の手動操作については、
図32に示される「油圧操作盤」における「切替えレバー」、「切替えスイッチ」、「調整ボリューム」(以下、「操作機器」という。)をオペレータがそれぞれ操作することになる。
【0178】
しかし、施工機制御装置80による自動運転モードでは、「スイベルヘッド1a及びリーダー1bと固化剤用ポンプ5等」の各操作機器の操作順、操作間隔および操作量が一括操作指令として一まとめにデータ化されている。一括操作指令は、オペレータ端末装置20から施工機制御装置80に送信されるようになっている。或いは、クラウドサーバー10の記憶部12に予め保存され、施工機制御装置80からのダウンロード要求に応じて、クラウドサーバー10から施工機制御装置80に送信されるようになっている。
【0179】
また、一括操作指令はマシンガイダンスデータの施工パターンに紐付けられている。従って、マシンガイダンスデータを受信した施工機制御装置80は、一括操作指令に基づいてスイベルヘッド1a及びリーダー1bと固化剤用ポンプ5等を操作することになる。
【0180】
図30に示されるように、オペレータはVR地盤改良工事現場200に没入して仮想地中に移動することによって、VR地盤改良工事現場200において仮想的に造成されている仮想地盤改良杭9v(すなわち、地中に実際に造成される地盤改良杭9)を見ることができる。
【0181】
例えば、仮想ケーシングロッド2vが仮想鉛直方向(仮想Z’軸)に平行であること(すなわち、ケーシングロッド2が鉛直方向(Z’軸)に平行であること)は、仮想モニタ画面107av上で「現在の杭芯仮想位置P3’v」が「当初の杭芯仮想位置P3v」に一致していることにより確認することができる。
【0182】
同様に、固化剤が土壌に十分に撹拌されていることは、VR地盤改良工事現場200における固化剤の区間流量(L/m)が目標値(256)以上であり、且つ区間羽根切り回数(回/m)が目標値(350)以上であり、且つ仮想撹拌翼3avの昇降方向・回転方向が工程設定440通りであることを以て確認することができる。なお、固化剤の区間流量(L/m)、区間羽根切り回数(回/m)等は、機械情報・施工情報に含まれ、施工機制御装置80からクラウドサーバー10に送信される。クラウドサーバー10は、「固化剤の区間流量(L/m)、区間羽根切り回数(回/m)等」をVR地盤改良工事現場200に反映することになっている。
【0183】
次にステップS7では、施工パターンに対する計画変更の要求(リクエスト)が有るか否かを判定する。地盤改良杭9の造成は、施工機制御装置80が「施工パターンに対応した一括操作指令」を実行することによって行われる。しかしながら、杭座標または施工パターンの何れかの項目(例えば、杭座標の変更、杭番号の追加または削除、リーダー1bの昇降速度(m/min)、固化剤用ポンプ5の基準吐出量(L/min)等)が変更される場合が起こり得る。そのような場合、計画変更後のマシンガイダンスデータがオペレータ端末装置20からクラウドサーバー10に送信される。
【0184】
施工パターンに対する計画変更の要求(リクエスト)が有る場合(YES)、ステップS3を繰り返し実行する。一方、施工パターンに対する計画変更の要求(リクエスト)が無い場合(NO)、ステップS8を実行する。
【0185】
ステップS8では、未施工の杭番号が有るか否かを判定する。施工済みの杭番号は、マシンガイダンスデータ(
図33)上のチェックボックス内にチェックマークが入っている。一方、未施工の杭番号は、マシンガイダンスデータ(
図33)上のチェックボックス内が空白になっている。従って、マシンガイダンスデータ上に空白のチェックボックスが有る場合(YES)、ステップS4を繰り返し実行する。一方、空白のチェックボックスが無い場合(NO)、地盤改良杭9の自動施工を終了する。
【0186】
図28は、VR地盤改良機1vの仮想キャビン部から見える仮想視界を示す説明図である。
仮想キャビン部内には、VR地盤改良機1vを仮想的に走行・旋回または仮想リーダー1bvを起倒・スイングさせるための仮想レバー・仮想スイッチ類が仮想的に設けられている。例えば、オペレータが仮想スタータースイッチSSvを押して仮想安全レバーLSvを手前側に倒すことにより、VR地盤改良機1vの走行・旋回・リーダー操作等が可能となる。この場合、「VR地盤改良機1vに対するオペレータの操作指令」は、オペレータ端末装置20によって「実地盤改良機1に対する操作指令」に変換され、施工機制御装置80に送信されるため、実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1も走行・旋回・リーダー操作等が可能となる。
【0187】
仮想右クローラレバーLCRvと仮想左クローラレバーLCLvを同時に奥側に倒すと、VR地盤改良機1vは直進走行する。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1も直進走行する。
【0188】
一方、仮想右クローラレバーLCRvと仮想左クローラレバーLCLvを同時に手前側に倒すと、VR地盤改良機1vは後進走行する。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1も後進走行する。
【0189】
また、仮想リーダーレバーLLvを奥側に倒すと、仮想リーダー1bvはレバー操作量に応じて前方に倒れる。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1のリーダー1bもレバー操作量に応じて前方に倒れる。
【0190】
一方、仮想リーダーレバーLLvを手前側に倒すと、仮想リーダー1bvはレバー操作量に応じて後方に倒れる。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1のリーダー1bもレバー操作量に応じて後方に倒れる。
【0191】
また、仮想リーダーレバーLLvを右側に倒すと、仮想リーダー1bvはレバー操作量に応じて右側にスイングする。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1のリーダー1bもレバー操作量に応じて右側にスイングする。
【0192】
一方、仮想リーダーレバーLLvを左側に倒すと、仮想リーダー1bvはレバー操作量に応じて左側にスイングする。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1のリーダー1bもレバー操作量に応じて左側にスイングする。
【0193】
また、仮想旋回レバーLTvを右側に倒すと、VR地盤改良機1vの機械本体1evは右回りに旋回する。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の機械本体1eも右回りに旋回する。
【0194】
一方、仮想旋回レバーLTvを左側に倒すと、VR地盤改良機1vの機械本体1evは左回りに旋回する。この場合、同様に実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の機械本体1eも左回りに旋回する。
【0195】
仮想ケーシングロッド2vの「現在の仮想杭芯位置P3’v」を誘導する仮想施工目標位置PTvについては、オペレータが容易に認識することができるように、改良杭をイメージした円筒が付され、なお且つハイライト表示されている。また、VR地盤改良機1vの移動可能領域を規定する「仮想境界線BLv」が表示されている。なお、VR地盤改良機1vが仮想境界線をBLvを超える場合は、オペレータのVR地盤改良機1vに対する操作指令が無効化され、同時に実地盤改良機1に対する操作指令についても無効化されるようになっている。また、地盤改良杭9の造成が完了した施工完了位置に対応した仮想施工完了位置PEvについてもハイライト表示されている。
【0196】
また、仮想モニタ画面107avにも仮想施工目標位置PTvが表示され、同時に「現在の仮想杭芯位置P3’v」と「仮想施工目標位置PTv」との間の機械座標系OXY上でのズレ量ΔMv(ΔXMv、ΔYMv)についても表示されている。
【0197】
また、「現在の仮想杭芯位置P3’v」と「仮想施工目標位置PTv」との位置関係を、仮想キャビン部以外の異なる視点位置から見たときの画像G1,G2,G3についても、オペレータの仮想視界に表示されている。従って、オペレータは仮想モニタ画面107av、或いは画像G1,G2,G3を見ながら、仮想ケーシングロッド2vの「現在の仮想杭芯位置P3’v」を「仮想施工目標位置PTv」に誘導することになる。なお、仮想旋回円Ctvを使用して「現在の仮想杭芯位置P3’v」を「仮想施工目標位置PTv」に誘導することも可能である。
【0198】
図29は、仮想施工目標位置PTvに対するオペレータの視点位置を変えた場合のVR3次元画像を示す説明図である。
図29(a)は、オペレータの視点位置をVR地盤改良機1vの後方且つ仮想スイベルヘッド1avの高さ位置から仮想施工目標位置PTvを見た場合のVR3次元画像を表している。この視点位置では、仮想施工目標位置PTvに対する仮想X軸方向Xvの仮想ズレ量ΔX
Mvについてはよく分かる。一方、仮想Y軸方向Yvの仮想ズレ量ΔY
Mvについてはあまり分からない。
【0199】
図29(b)は、オペレータの視点位置をVR地盤改良機1vの左方且つ仮想スイベルヘッド1avの高さ位置から仮想施工目標位置PTvを見た場合のVR3次元画像を表している。この視点位置では、仮想施工目標位置PTvに対する仮想Y軸方向Yvの仮想ズレ量ΔY
Mvについてはよく分かる。仮想リーダー1bの前後方向の傾斜についてもよく分かる。
【0200】
図29(c)は、オペレータの視点位置をVR地盤改良機1vの前方且つ仮想ケーシングロッド2vの先端の高さ位置から仮想施工目標位置PTvを見た場合のVR3次元画像を表している。この視点位置では、仮想施工目標位置PTvに対する仮想X軸方向Xvの仮想ズレ量ΔX
Mv、仮想Y軸方向Yvの仮想ズレ量ΔY
Mvともによく分かる。
【0201】
このように、VR地盤改良工事現場200ではオペレータは視点位置を自由に変えながらVR地盤改良機1vを操作することができる。従って、VR地盤改良工事現場200においてVR地盤改良機1vを使用して「現在の仮想杭芯位置P3’v」を「仮想施工目標位置PTv」に誘導することにより、実地盤改良工事現場300における実際の杭芯位置誘導作業を効率良く行うことが可能となる。
【0202】
以上の通り、本発明の地盤改良工事の遠隔運転管理システム600では、「VR地盤改良工事現場200におけるVR地盤改良機1vの位置、寸法、動作」と、「実地盤改良工事現場300における実地盤改良機1の位置、寸法、動作」は互いに1対1に対応している。また、「実地盤改良工事現場300における施工対象物に係る位置の座標」と、「VR地盤改良機展示場200における対応する仮想施工対象物に係る位置の座標」は互いに等しくなるように構成されている。これにより、オペレータが直接操作する対象がVR地盤改良機1vであっても、結果的に実地盤改良機1を施工目標位置PTに誘導して地盤改良杭9を造成することができる。特に、VR地盤改良機展示場200においてオペレータは視点位置を自由に変えながらVR地盤改良機を操作することができるため、視点位置が固定される実地盤改良機1を操作するよりも容易に実地盤改良機1の現在の杭芯位置P3’を施工目標位置PTに誘導することが可能となる。
【0203】
また、オペレータが直接操作する対象はVR地盤改良機1vであるため、ネットワーク50上でやり取りされるデータは、操作指令、機械情報・施工情報、VR地盤改良工事現場200の更新情報、マシンガイダンスデータ及びその更新情報等の何れも情報量が少ないデータばかりである。そのため、ネットワーク50に要求される通信回線については比較的低速・低容量の通信回線を使用することが可能となる。
【0204】
また、実地盤改良機1の周囲の三次元対象物についての点群データは、VR地盤改良工事現場200において三角形メッシュデータによって再現されているため、直接操作する対象がVR地盤改良機1vであっても、オペレータは三次元対象物の形状的特徴(傾斜状況)を容易に認識することができるようになる。
【0205】
また、施工機制御装置80による地盤改良杭9の自動造成について、スイベルヘッド1a、リーダー1b及び固化剤用ポンプ5等の各操作機器についての操作順、操作間隔および操作量は、一括操作指令として一つにまとめられてデータ化されているため、オペレータは実地盤改良機1を施工目標位置PTに誘導することに集中することができると共に、同一品質の地盤改良杭9を反復して造成することが可能となる。
【0206】
(第3実施形態)
図31は、本発明の第3実施形態に係るVR地盤改良機展示場700を示す説明図である。
このVR地盤改良機展示場700は、VR地盤改良工事現場200におけるVR地盤改良機1vの周囲を、実際の展示場を再現したVR展示場に置換し、そのVR展示場にVR地盤改良機1vを仮想的に展示したものである。
【0207】
上述した通り、VR地盤改良機1vは、実地盤改良機1の全ての構成部品についての2次元CADデータ(例えば、正投影図法の2次元図面データ)を3次元CADデータ(3次元図面データ)に変換し、全ての仮想構成部品を3次元CAD上で実際の組立工程に従って仮想的に組み立てた、外部構造だけでなく内部構造まで再現された実地盤改良機1の3次元コンピュータグラフィック(3次元モデル)に相当するものである。VR地盤改良機1vの部品点数は、実地盤改良機1の部品点数と同じであり、実地盤改良機1と同様に全ての仮想構成部品は取外し/再取付け可能に構成されている。
【0208】
VR地盤改良機展示場700には、カタログに記載されている全ての機種に対応する全てのVR地盤改良機1vを仮想的に展示することができる。従って、例えばメーカー担当者(Dアバター)と来訪者(Eアバター)が、ユーザー端末装置20を介してVR地盤改良機展示場700に没入することにより、メーカー担当者(Dアバター)は、来訪者(Eアバター)が希望するVR地盤改良機1vを仮想的に用意して、実機の機能・性能等について説明することができるようになる。すなわち、このVR地盤改良機展示場700を使用することにより、実機を展示場に搬入するための全ての作業が不要となる。その結果、実機の搬入に伴う作業コスト及びマンパワーを全て削減することができる。また、展示ブースの面積も小さくて済むことになる。これにより、展示会に参加するコストを大幅に削減することができる。
【0209】
以上、図面を参照しながら本発明の複数の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上記だけに限定されることはない。すなわち、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において種々の修正・変更を加えることが可能である。例えば、3Dレーザースキャナー11によって取得された点群データについて、隣り合う一の測点と他の測点とを直線で結んで形成される図形については三角形の他、四角形であっても良い。また、点群データを取得する計測装置については、近接センサー、LIDAR、RADER、又はステレオカメラを使用した計測装置であっても良い。
【符号の説明】
【0210】
1 地盤改良機(施工機)
1a スイベルヘッド
1b リーダー
1cA GNSSアンテナ
1cB GNSSアンテナ
1d ネットワーク通信用アンテナ
1e 施工機本体
1v VR地盤改良機(仮想施工機)
2 ケーシングロッド
3 撹拌装置
3a 掘削翼
3b 撹拌翼
3c 供回り防止翼
4 固化剤生成装置
5 固化剤用ポンプ
6 ホース
7 流量計
8 比重計
9 地盤改良杭(柱状改良体)
9a 空堀深度
9b 改良長
9c 杭径
10 クラウドサーバー(サーバー装置)
11 制御部
12 記憶部
13 入出力部
14 3Dレーザースキャナー(測距・測角装置)
20 ユーザー端末装置(オペレータ端末装置)
21 入出力部
22 データ処理部
23 記憶部
24 表示部
30 頭部装着ディスプレイ
31 入出力部
32 データ処理部
33 表示部
34 マイク/ヘッドフォン
40 操作機
41 入出力部
42 データ処理部
43 動作検出部
44 操作部
50 ネットワーク
60 施工機の通信装置
70 固化剤の通信装置
80 施工機制御装置(機械制御装置)
100 地盤改良工事の遠隔施工管理システム(VR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム)
200 VR地盤改良工事現場(仮想地盤改良工事現場)
300 実地盤改良工事現場(実際の地盤改良工事現場)
400 アバターA(仮想人物)
410 アバターB(仮想人物)
420 アバターC(仮想人物)
430 杭条件設定
431 杭施工履歴
440 工程設定
450 出来高管理図
451 出来形管理図
452 工事カレンダー
453 時刻入力画面
454 未来の工事出来高管理図
500 時系列シークバー
600 地盤改良工事の遠隔運転管理システム(VR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム)
700 VR地盤改良機展示場(VR技術を用いた地盤改良工事の遠隔施工管理システム)