(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039036
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物及び熱伝導性部材
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240313BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240313BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240313BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/013
C08L83/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215131
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2023562693の分割
【原出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022098435
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022138189
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕美
(57)【要約】 (修正有)
【課題】150℃以上の使用環境下であっても、発熱体や放熱体等に対する剥離を発生させにくく、熱抵抗の上昇が抑制された熱伝導性部材を得るための熱伝導性組成物を提供する。
【解決手段】(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、(E)熱伝導性充填材と、(F)白金族系硬化触媒とを含み、ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2との比p2/p1が3.00より大きく、25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が70未満である熱伝導性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含み、
ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
【請求項2】
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒とを含み、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分が有するヒドロシリル基の濃度、cは(C)成分が有するヒドロシリル基の濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
【請求項3】
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含み、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まない第1剤と、
前記(B)成分、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まない第2剤との組合せからなり、
ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
【請求項4】
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含み、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まない第1剤と、
前記(B)成分と、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まない第2剤との組合せからなり、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
【請求項5】
(G)付加反応基を有さないオルガノポリシロキサンをさらに含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
前記(G)成分が、(G-2)少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンを含む、請求項5に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
25℃で24時間放置した後のタイプE硬さE1と、前記E2との関係が、下記(3)式を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
1.4≦E2/E1≦3.5 ・・・(3)
【請求項8】
前記(D)成分が1個のメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
アルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量が5.0μmol/g以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項10】
ヒドロシリル基の含有量H、並びにアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量Viが、下記式(4)の関係を満たす、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
0.85≦H/Vi≦1.1 ・・・・(4)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を硬化させてなる熱伝導性部材。
【請求項12】
第2剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第1剤であって、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まず、
前記第2剤と組合せることで、ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第1剤。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
【請求項13】
第1剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第2剤であって、
前記(B)成分、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まず、
前記第1剤と組合せることで、ラマン分光スペクトにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第2剤。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
【請求項14】
第2剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第1剤であって、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まず、
前記熱伝導性組成物が、前記(B)成分及び(C)成分を下記(1-2)式の関係を満たすように含有し、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第1剤。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
【請求項15】
第1剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第2剤であって、
前記(B)成分と、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まず、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第2剤。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物及び熱伝導性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性組成物は、硬化可能で液状のものが広く知られており、例えば、発熱体と放熱体の間に充填され、その後、硬化することで硬化物を形成し、発熱体が発する熱を放熱体に伝える放熱ギャップフィラーなどの熱伝導性部材として使用される。従来、熱伝導性組成物としては、オルガノポリシロキサンと熱伝導性充填材を含む、シリコーン熱伝導性組成物が広く使用されている。
【0003】
近年、電気自動車の生産量が順調に伸びていく市場背景の中で、燃費向上や安全性向上を目的に電装化が進展している。車載電装部品では、自動実装ニーズが高まっており、液状で複雑な形状の箇所にも使用できる放熱ギャップフィラーの需要が増加している。
また、昨今の自動車では燃費が重要な差別化要素の一つとなっており、可能な限り車体重量を軽くすることが求められている。車載電装部品もその例外ではなく、軽量小型化の開発が進められている。しかし、電装部品を小型化すると、単位体積当たりの発熱量すなわち発熱密度が増加する。そのため、放熱ギャップフィラーは、長期間にわたって熱伝導性などの性能を低下させることなく使用できる信頼性が求められている。
【0004】
熱伝導性組成物は、従来、信頼性について様々な検討がなされている。例えば、特許文献1では、(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B)片末端3官能の加水分解性ジメチルポリシロキサンと、(C)熱伝導性充填材と、(D)末端にヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(E)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)白金触媒とを含有する熱伝導性シリコーン組成物が開示されている。
【0005】
特許文献1では、(A)成分、(D)成分、及び(E)成分における、ヒドロシリル基とアルケニル基の割合を所定の範囲内に調整することで、実稼働時を想定した冷熱サイクル時のポンプアウトや剥離の発生を抑制し、熱抵抗の上昇も抑制できることが示されている。ただし、特許文献1において、ICパッケージ等の発熱性電子部品の表面温度は120℃程度の温度であることが想定されており、それ以上の高温下における信頼性については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、昨今の自動車では、車室内の居住性を向上させるために、室内空間を広くすることが要求されている。車体部品のレイアウト検討では、エンジンやモーター等の大きくて重い基幹部品が優先されることが多く、電装部品のように比較的小さくて軽い部品は、残されたスペースに配置せざるを得なくなることがある。結果として、電装部品の中にはエンジンルーム内やモーター近傍などにおいて、150℃以上の高温環境下に晒されることがあり、それに伴い放熱ギャップフィラーも高温下で使用されることがある。しかしながら、従来の熱伝導性シリコーン熱伝導性組成物により形成された放熱ギャップフィラーは、150℃以上の高温環境下で長期間使用されると柔軟性が低下して、発熱体や放熱体に対して剥離が生じるため、熱抵抗が上昇することを抑制することが難しい。
【0008】
なお、従来のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンをシリコーン樹脂の主成分とする熱伝導性組成物では、柔軟性を高くするために、架橋間の分子鎖を長くして、官能基濃度を下げて架橋点を疎にすることも考えられる。しかし、架橋間の分子鎖を長くすると、シリコーン樹脂の分子量が大きくなって高粘度となり、結果として熱伝導性充填材を多量に充填できない問題がある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、150℃以上の使用環境下であっても、発熱体や放熱体などに対する剥離を発生させにくく、熱抵抗の上昇が抑制された熱伝導性部材を得ることができる熱伝導性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の(A)~(F)成分を有する熱伝導性組成物において、(B)及び(C)成分のヒドロシリル基の濃度を所定の範囲内に調整し、或いは、ラマン分光スペクトルにおいてヒドロシリル基由来のラマン強度p1、p2を所定の関係を満たすように調整し、かつ25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さ(E2)を一定値以下に制御することで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[23]を提供する。
【0011】
[1](A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含み、
ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
[2](A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒とを含み、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分が有するヒドロシリル基の濃度、cは(C)成分が有するヒドロシリル基の濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[3](A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含み、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まない第1剤と、
前記(B)成分、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まない第2剤との組合せからなり、
ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
[4](A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含み、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まない第1剤と、
前記(B)成分と、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まない第2剤との組合せからなり、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[5](A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒とを含み、
ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たすか、または前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、熱伝導性組成物。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分が有するヒドロシリル基の濃度、cは(C)成分が有するヒドロシリル基の濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[6]前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まない第1剤と、
前記(B)成分、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まない第2剤との組合せからなる、上記[5]に記載の熱伝導性組成物。
[7](G)付加反応基を有さないオルガノポリシロキサンをさらに含有する上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
[8]前記(G)成分が、(G-2)少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンを含む、上記[7]に記載の熱伝導性組成物。
[9]25℃で24時間放置した後のタイプE硬さE1と、前記E2との関係が、下記(3)式を満たす、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
1.4≦E2/E1≦3.5 ・・・(3)
[10]前記(D)成分が1個のメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンである、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
[11]アルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量が5.0μmol/g以下である、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
[12]ヒドロシリル基の含有量H、並びにアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量Viが、下記式(4)の関係を満たす、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
0.85≦H/Vi≦1.1 ・・・・(4)
[13]上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を硬化させてなる熱伝導性部材。
[14]第2剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第1剤であって、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まず、
前記第2剤と組合せることで、ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第1剤。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
[15]第1剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第2剤であって、
前記(B)成分、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まず、
前記第1剤と組合せることで、ラマン分光スペクトにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第2剤。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
E2<70 ・・・(2)
[16]第2剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第1剤であって、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まず、
前記熱伝導性組成物が、前記(B)成分及び(C)成分を下記(1-2)式の関係を満たすように含有し、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第1剤。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[17]第1剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、を含む熱伝導性組成物として使用できる第2剤であって、
前記(B)成分と、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まず、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有され、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第2剤。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[18]第2剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、
を含む熱伝導性組成物として使用できる第1剤であって、
前記(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、前記(F)成分を含み、前記(B)成分及び前記(C)成分を含まず、
前記熱伝導性組成物が、前記(B)成分及び(C)成分を下記(1-2)式の関係を満たすように含有するか、または前記第2剤と組合せることで、ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第1剤。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[19]第1剤と混合されることで、
(A)2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(B)2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(C)3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(D)1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(E)熱伝導性充填材と、
(F)白金族系硬化触媒と、
を含む熱伝導性組成物として使用できる第2剤であって、
前記(B)成分、前記(C)成分を含み、前記(F)成分を含まず、
前記(B)成分及び(C)成分が下記(1-2)式の関係を満たすように含有されか、または前記第1剤と組合せることで、ラマン分光スペクトにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たし、
前記第1剤と前記第2剤とを混合した後に25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さE2が下記(2)式を満たす、第2剤。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
(式(1-2)において、bは(B)成分のヒドロシリル基濃度、cは(C)成分のヒドロシリル基濃度である。)
E2<70 ・・・(2)
[20]上記[14]、[16]又は[18]に記載の第1剤を第2剤に混合する方法。
[21]上記[15]、[17]又は[19]に記載の第2剤を第1剤に混合する方法。
[22]上記[14]、[16]又は[18]に記載の第1剤の2液型の熱伝導性組成物における使用。
[23]上記[15]、[17]又は[19]に記載の第2剤の2液型の熱伝導性組成物における使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱伝導性組成物によれば、150℃以上の使用環境下であっても、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生しにくく、熱抵抗の上昇が抑制された熱伝導性部材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[熱伝導性組成物]
以下、本発明の熱伝導性組成物について詳しく説明する。
本発明の熱伝導性組成物は、以下の(A)~(F)成分を有するものである。以下、(A)~(F)成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)成分>
(A)成分は、2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。熱伝導性組成物は、(A)成分を含有することで、後述するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと付加反応して、適度な硬度を有する硬化物を形成できる。(A)成分として使用される2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも分岐状であってもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0015】
(A)成分におけるアルケニル基は、(A)成分のポリシロキサン構造の分子鎖の末端又は途中のいずれに含有させてよく、末端及び途中の両方に含有させてもよいが、少なくとも末端に含有させることが好ましく、ポリシロキサン構造によりなる分子鎖の両末端に含有させることがさらに好ましく、両末端のみに含有させることがよりさらに好ましい。
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば炭素数2~8のものが挙げられ、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などが挙げられ、これらの中では合成の容易性、反応性の観点などから、ビニル基が好ましい。また、アルケニル基は、ケイ素原子に直接結合したアルケニル基であるとよい。
(A)成分における一分子中のアルケニル基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、例えば2~4個、好ましくは2~3個、より好ましくは2個である。
【0016】
アルケニル基以外のケイ素原子に結合する残余の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基が例示され、更にクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基なども具体例として挙げられる。これらのうち、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。なお、(A)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、水素原子を有さず、すなわち、(A)成分は、ヒドロシリル基を含有しないとよい。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(A)成分の25℃における粘度は、特に限定されないが、例えば80~5000mPa・s、好ましくは150~2500mPa・s、より好ましくは200~1500mPa・s、さらに好ましくは250~800mPa・sである。
また、(A)成分は、後述する(C)成分との混合物として配合されることがあるが、(A)成分と(C)成分の混合物の25℃における粘度は、例えば80~5000mPa・s、好ましくは150~2500mPa・s、より好ましくは200~1500mPa・s、さらに好ましくは250~800mPa・sである。
(A)成分、又は(A)及び(C)成分の混合物の粘度を上記下限値以上とすることで、硬化物において、架橋密度が高くなりすぎることを防止して、硬化後の柔軟性を維持しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、熱伝導性組成物が高粘度となることを防止できる。さらに、粘度を上記範囲内とすることで、(A)成分、又は(A)及び(C)成分の反応性を適切にしやすくなる。
なお、2液型の熱伝導性組成物において、(A)成分は、第1剤に配合される(A)成分の25℃における粘度が、上記粘度範囲に調整され、また、第2剤に配合される(A)成分と(C)成分の混合物の25℃における粘度が、上記粘度範囲に調整されてもよい。
【0018】
(A)成分の含有量は、後述するラマン強度比H/Vi、含有量比H/Vi、合計Vi含有量、合計Vi含有量に対するDVi含有量の比などを所望の範囲内に調整できるように適宜選択すればよく、特に限定されないが、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量に対して、例えば20~70質量%、好ましくは25~60質量%、より好ましくは30~50質量%である。
【0019】
<(B)成分>
(B)成分は、2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。熱伝導性組成物は、(B)成分を含有することで、(B)成分が(A)成分及び(D)成分と付加反応して鎖延長して、適度な硬度を有する硬化物を形成できる。また、本発明の熱伝導性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、後述する(C)成分のみならず、(B)成分を有することで、架橋点が密になりすぎずに、適度な柔軟性を有する硬化物を形成できる。
【0020】
(B)成分は、直鎖状又は分岐状であってもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。(B)成分において、ヒドロシリル基は、ポリシロキサン構造の分子鎖の末端、又は分子鎖の途中のいずれに含有させてよく、末端及び途中の両方に含有させてもよいが、少なくとも末端に含有させることが好ましく、2つのヒドロシリル基を、ポリシロキサン構造の分子鎖の両末端それぞれに含有させることがさらに好ましい。
【0021】
(B)成分において、ヒドロシリル基以外のケイ素原子に結合する残余の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基が例示され、更にクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基も具体例として挙げられる。これらのうち、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。なお、(B)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、アルケニル基を有さず、すなわち、(B)成分は、アルケニル基を含有しないものであるとよい。
(B)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(B)成分の25℃における粘度は、特に限定されないが、例えば10~2000mPa・s、好ましくは40~1500mPa・s、より好ましくは80~1200mPa・sである。(B)成分の粘度を上記下限値以上とすることで、架橋密度が高くなることを防止して硬化後の柔軟性を良好にしやすくなる。また、反応性が早くなりすぎることを防止して、付加反応を適切に進行させやすくなる。また、(B)成分の粘度を上限値以下とすることで、反応性が低下したり、熱伝導性組成物が高粘度となったりすることを防止できる。
【0023】
(B)成分の含有量は、後述するラマン強度比p2/p1、ラマン強度比H/Vi、b/(b+c)、含有量比H/Viなどを所定の範囲内に調整できるように適宜選択されればよく、特に限定されないが、例えば、3~35質量%、好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~25質量%である。
【0024】
<(C)成分>
(C)成分は、3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(C)成分は、(A)成分及び(D)成分と付加反応することで、熱伝導性組成物を硬化させ、かつ硬化物に架橋構造を形成させることができる。
(C)成分は、直鎖状又は分岐状であってもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。(C)成分において、ヒドロシリル基は、ポリシロキサン構造の分子鎖の末端、又は分子鎖の途中のいずれに含有させてもよいが、末端及び途中の両方に含有させることが好ましい。
(C)成分における一分子中のヒドロシリル基の数は、3個以上であれば特に限定されないが、例えば3~25個、好ましくは8~20個である。
【0025】
(C)成分において、ケイ素原子に結合する残余の基としては、(B)成分で列挙したものと同様であるが、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。なお、(C)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、アルケニル基を有さず、すなわち、(C)成分は、アルケニル基を含有しないものであるとよい。
(C)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(C)成分の含有量は、後述するラマン強度比p2/p1、ラマン強度比H/Vi、b/(b+c)、含有量比H/Viなどを所定の範囲内に調整できるように適宜選択さればよく、特に限定されないが、例えば、0.2~8質量%、好ましくは0.4~5質量%、より好ましくは0.7~3質量%である。
【0027】
<(D)成分>
(D)成分は、1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンである。熱伝導性組成物は、(D)成分を含有することで、架橋点が密になりすぎることを防止して、150℃以上の環境で使用されても、硬化物の柔軟性を良好に維持でき、信頼性が向上する。そのため、熱伝導性組成物の硬化物を150℃以上の環境下で、放熱ギャップフィラーなどとして使用しても、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生することを抑制して、熱抵抗の上昇を抑制することができる。さらには、硬化後の柔軟性が高くなることで、例えば厚くした場合などには、緩衝性を発揮でき、振動が発生する環境下において好適に用いることができる。また、(D)成分は、硬化時に(B)又は(C)成分に付加反応するので、硬化後にブリードアウトすることも防止できる。
【0028】
(D)成分として使用されるオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも分岐状でもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
アルケニル基又はメタクリロイル基は、ポリシロキサン構造の分子鎖の末端、又は分子鎖の途中のいずれに含有させてよいが、末端に含有させることが好ましく、ポリシロキサン構造の分子鎖の片末端に含有させることがより好ましい。(D)成分は、分子中にアルケニル基またはメタクリロイル基のいずれか一方を1個含有するとよいが、耐熱性に優れた硬化物を得られるという観点から、好ましくはメタクリロイル基を1個含有する。
【0029】
(D)成分におけるアルケニル基としては、特に限定されないが、例えば炭素数2~8のものが挙げられ、その具体例は、(A)成分で述べた通りであり、合成の容易性の観点などからビニル基が好ましい。また、アルケニル基は、ケイ素原子に直接結合したアルケニル基であるとよい。
一方で、メタクリロイル基は、ケイ素原子に直接結合したメタクリロイル基であってもよいが、任意の二価の基(例えば、二価の飽和脂肪族炭化水素基、-XO-で表される基(ただし、Xは二価の飽和脂肪族炭化水素基))や酸素原子を介して、ケイ素原子に結合してもよい。
【0030】
(D)成分において、ケイ素原子に結合する残余の基としては、(A)成分で列挙したものと同様であるが、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。なお、(D)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、水素原子を有さず、すなわち、(D)成分は、ヒドロシリル基を含有しないものであるとよい。
(D)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(D)成分の25℃における粘度は、特に限定されないが、例えば例10~2000mPa・s、好ましくは50~1000mPa・s、より好ましくは80~600mPa・sである。
(D)成分の粘度を上記下限値以上とすることで、硬化物における架橋密度を低下させやすくなり、硬化後の柔軟性を高めやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、熱伝導性組成物が高粘度となることを防止できる。また(D)成分の粘度を上記範囲内に調整することで、(D)成分の反応性を適度なものに調整できる。
【0032】
(D)成分の含有量は、後述するラマン強度比H/Vi、含有量比H/Vi、合計Vi含有量、合計Vi含有量に対するDVi含有量の比などを所望の範囲内に調整できるように適宜選択すればよく、特に限定されないが、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量に対して、例えば、1~30質量%、好ましくは5~25質量%、より好ましくは8~20質量%である。
【0033】
<(E)成分>
(E)成分は、熱伝導性充填材である。本発明の熱伝導性組成物は、熱伝導性充填材を含有することにより、熱伝導性組成物、及び該熱伝導性組成物を硬化してなる硬化物(熱伝導性部材)の熱伝導性が向上する。
熱伝導性充填材としては、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、熱伝導性充填材の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。
熱伝導性充填材において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが挙げられる。金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示できる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、熱伝導性充填材としては、熱伝導性向上の観点から、金属酸化物、金属窒化物、炭素材料が好ましく、これらの中では金属酸化物がより好ましい。また、具体的には、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ダイヤモンドが好ましく、酸化アルミニウムがさらに好ましい。
これら熱伝導性充填材は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、熱伝導率を高める観点からは、ダイヤモンドまたは窒化アルミニウムの少なくともいずれかと、酸化アルミニウムを併用することが好ましい。また、熱伝導率と難燃性のバランスの観点からは、酸化アルミニウムと水酸化アルミニウムを併用することが好ましい。
【0034】
熱伝導性充填材の平均粒径は0.1~200μmであることが好ましく、0.3~100μmであることがより好ましく、0.5~70μmであることがさらに好ましい。
熱伝導性充填材は、平均粒径が0.1μm以上5μm以下の小粒径熱伝導性充填材と、平均粒径が5μm超200μm以下の大粒径熱伝導性充填材を併用することが好ましい。平均粒径の異なる熱伝導性充填材を使用することにより、充填率を高めることができる。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた熱伝導性充填材の粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。
【0035】
熱伝導性組成物における熱伝導性充填材の含有量は、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは150~4000質量部、より好ましくは500~3500質量部、さらに好ましくは1000~3200質量部、よりさらに好ましくは1500~3000質量部である。
また、熱伝導性充填材の体積基準の含有量は、熱伝導性組成物全量を100体積%とした場合に、好ましくは50~95体積%、より好ましくは70~93体積%、さらに好ましくは75~92体積%、よりさらに好ましくは80~90体積%である。
熱伝導性充填材の含有量を上記下限値以上とすることで、一定の熱伝導性を熱伝導性組成物およびその硬化物に付与できる。熱伝導性充填材の含有量を上記上限値以下とすることで、熱伝導性充填材を適切に分散できる。また、熱伝導性組成物の粘度が必要以上に高くなったりすることも防止できる。
【0036】
<(F)成分>
(F)成分は、白金族系硬化触媒である。本発明の熱伝導性組成物は、白金族系硬化触媒を含有することで、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を促進して、熱伝導性組成物を適切に硬化させることができる。白金族系硬化触媒としては、特に限定されないが、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との錯化合物などが挙げられる。白金族系硬化触媒の熱伝導性組成物における含有量は、付加反応を促進できる量含有されればよく特に限定されないが、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば0.001~1質量部、好ましくは0.005~0.5質量部である。
【0037】
<(G)成分>
本発明の熱伝導性組成物は、さらに(G)成分として、付加反応基を有さないオルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。本発明の熱伝導性組成物は、(G)成分を含有することにより、硬化物において、一定量以上の成分が架橋構造に組み込まれず、柔軟性を向上させやくなる。また、熱伝導性組成物の粘度を低下させやすくなり、取扱い性を向上させやすくなる。なお、付加反応基は、付加反応により反応する官能基を意味し、代表的には、アルケニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ヒドロシリル基などが挙げられる。また、(G)成分を含むことで、硬化物を柔軟にすることができる。
【0038】
(G)成分としては、(G-1)シリコーンオイル、及び(G-2)少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。(G)成分は、(G-1)成分又は(G-2)成分のいずれか1種を含有すればよいが、少なくとも(G-2)成分を含有することが好ましい。(G-2)成分を含有することで、熱伝導性組成物の粘度をより一層低下させやすくなる。熱伝導性組成物は、(G-2)成分を含有する場合には、さらに(G-1)成分を含有してもよい。
【0039】
(G-1)シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルの他、ポリシロキサン構造を有する主鎖、主鎖に結合する側鎖、又は主鎖の末端に非反応性の有機基を導入した、非反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。非反応性の有機基とは、付加反応基を有しない有機基である。非反応性の変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、及びフェニル変性シリコーンオイルが挙げられる。上記の中でも、シリコーンオイルとしてはストレートシリコーンオイルが好ましく、ストレートシリコーンオイルの中でも、ジメチルシリコーンオイルがより好ましい。
(G-1)シリコーンオイルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(G-2)成分は、直鎖状でも分岐状でもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、(G-2)成分としては、少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンであればよいが、ポリシロキサン構造の分子鎖末端に少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、片末端のみに少なくとも1つのアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンがより好ましい。(G-2)成分は、アルコキシ基、特に、末端にアルコキシ基を有することで、熱伝導性充填材の表面に存在する官能基などと反応ないし相互作用しやすく、かつポリシロキサン構造を備えることも相まって、充填材の摩擦を低減させて、熱伝導性組成物の粘度を低下させやすくなると推定される。
【0041】
(G-2)成分は、具体的には、下記式(X)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【化1】
(式(X)中、R
1、R
2、R
4、R
5はそれぞれ独立に飽和炭化水素基であり、R
3は酸素原子または2価炭化水素基であり、nは15~315の整数であり、mは0~2の整数である)
【0042】
式(X)で表される構造の(G-2)成分を用いることで、熱伝導性組成物の粘度低減効果がより高まる。
式(X)において、R1、R2、R4、R5はそれぞれ独立に飽和炭化水素基である。飽和炭化水素基としては、例えば、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基などのアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、2-メチルウンデシル基、1-ヘキシルヘプチル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等などが挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)プロピル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等が挙げられる。
【0043】
式(X)におけるR1~R5、m、nは、粘度低減効果を高める観点から以下のとおりであることが好ましい。
式(X)におけるR1は、好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数2~6のアルキル基であり、特に好ましくはブチル基である。
式(X)におけるR2、R4、R5は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
式(X)におけるR3は酸素原子または2価炭化水素基であり、2価炭化水素基であることが好ましい。2価炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基などが挙げられ、中でもエチレン基が好ましい。
【0044】
式(X)におけるnは15~315の整数であり、好ましくは18~280の整数であり、より好ましくは20~220の整数である。式(X)におけるmは0~2の整数であり、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。したがって、(G-2)成分は、片末端にトリアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
(G-2)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(G)成分の25℃における粘度は、特に限定されないが、例えば1~800mPa・s、好ましくは5~250mPa・s、より好ましくは10~150mPa・sである。(G)成分の粘度を上記範囲内とすることで、(G)成分によって熱伝導性組成物の粘度を効果的に低減させつつ、硬化物も形成しやすくなる。
【0046】
(G)成分の熱伝導性組成物における含有量は、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量基準で、例えば3~63質量%である。(G)成分の含有量を上記下限値以上とすることで、熱伝導性組成物から得られる硬化物の柔軟性を高めやすくなり、(G)成分によって熱伝導性組成物の粘度も低減させやすくなる。また、(G)成分の含有量を上記上限値以下とすることで、熱伝導性組成物に一定の硬化性を付与でき所望の物性の硬化物を得やすくなり、硬化後のブリードアウトも防止しやすくなる。(G)成分の熱伝導性組成物における含有量は、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%がさらに好ましい。
【0047】
(G)成分は、上記の通り、(G-2)成分を含有することが好ましい。(G-2)成分の熱伝導性組成物における含有量は、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量基準で、2~40質量%であることが好ましく、4~30質量%がより好ましく、8~20質量%がさらに好ましい。熱伝導性組成物は、(G)成分の中でも、(G-2)成分を一定量以上で含有することで、熱伝導性組成物の粘度をより一層低減しやすくなる。
【0048】
本発明の熱伝導性組成物において、(A)~(D)、及び(G)成分の合計含有量は、熱伝導性組成物全量に対して、好ましくは2~40質量%である。(A)~(D)、及び(G)成分の合計量を一定量以上とすることで、これら成分がバインダー樹脂としての機能を適切に発揮でき、これら成分によって熱伝導性充填材を適切に保持することができる。また、上記合計含有量を一定量以下とすることで、熱伝導性充填材を多量に含有させることが可能になる。
(A)~(D)、及び(G)成分の合計含有量は、熱伝導性組成物全量に対して、より好ましくは3~20質量%、、さらに好ましくは3.5~15質量%、よりさらに好ましくは4~10質量%である。
【0049】
本発明の熱伝導性組成物におけるオルガノポリシロキサンは、(A)~(D)成分又は(A)~(D)成分及び(G)成分からなってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で(A)~(D)成分及び(G)成分以外のオルガノポリシロキサンを含有してもよい。(A)~(D)成分及び(G)成分以外のオルガノポリシロキサンの含有量は、熱伝導性組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
【0050】
本発明の熱伝導性組成物中には、種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、反応制御剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。なお、各添加剤は、2液型の熱伝導性組成物においては、第1剤及び第2剤のいずれか一方に含有させればよいが、両方に含有させてもよい。添加剤は、これらから1種又は2種以上を適宜選択して使用すればよい。
【0051】
<ラマン強度比p2/p1>
本発明の一実施形態において熱伝導性組成物は、ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1と、2130cm-1のラマン強度p2とが、下記(1-1)式の関係を満たす。
p2/p1>3.00 ・・・(1-1)
【0052】
ラマン分光スペクトルにおける2160cm-1のラマン強度p1は、ポリシロキサン構造の分子鎖の途中に含有されるヒドロシリル基に由来するピーク波長のラマン強度である。ラマン分光スペクトルにおける2130cm-1のラマン強度p2は、ポリシロキサン構造の分子鎖の末端に含有されるヒドロシリル基に由来するピーク波長のラマン強度である。したがって、p2/p1は、分子鎖の途中に含有されるヒドロシリル基に対する、末端ヒドロシリル基の量を示す指標といえる。
【0053】
p2/p1を3.0より大きくすることで、分子鎖の末端に含有されるヒドロシリル基の量が多くなる一方で、分子鎖の途中に含有されるヒドロシリル基の量が少なくなって、架橋点が疎になりやすく、150℃以上の環境下においても硬化物の柔軟性を良好に維持しやすくなる。そのため、熱伝導性組成物の硬化物を150℃以上の環境下で放熱ギャップフィラーなどとして使用すると、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生しにくくなり、熱抵抗が上昇する不具合が生じにくくなり、信頼性が向上する。さらには、柔軟性が高くなることで、例えば厚くした場合などには、緩衝性を発揮でき、振動が発生する環境下において好適に用いることができる。
架橋点を疎にして信頼性、柔軟性をより一層良好にする観点から、p2/p1は、3.10以上が好ましく、3.20以上がより好ましく、3.30以上がさらに好ましい。
また、p2/p1は、5.5未満であることが好ましい。p2/p1を5.5未満とすることで、硬化物に適度な架橋密度で3次元架橋構造を導入しやすくなる。そのため、長期間にわたって高温で加熱されても硬度を一定の値に維持しやすくなり、長期耐熱性などを良好にしやすくなる。以上の観点から、p2/p1は、4.5未満であることがより好ましく、4.2以下であることがさらに好ましく、4.0以下であることがよりさらに好ましい。
【0054】
上記ラマン強度比p2/p1の値は、(B)成分の含有量、(B)成分の分子鎖末端のヒドロシリル基の濃度、(C)成分の含有量、(C)成分の分子鎖の途中のヒドロシリル基の濃度を調整することで、調整することができる。具体的には、(B)成分の含有量を多くすること、(B)成分に含まれる分子鎖末端のヒドロシリル基の濃度を高くすること、(C)成分の含有量を少なくすること、(C)成分に含まれる分子鎖の途中のヒドロシリル基の濃度を低くすること、のいずれかまたは組合せによってp2/p1の値を大きくすることができる。また、その逆の調整によってp2/p1の値を小さくすることができる。
【0055】
<ラマン強度比H/Vi>
ラマン分光スペクトルにおける、アルケニル基及びメタクリロイル基由来のピークの強度に対する、ヒドロシリル基由来のピークの強度の比(「ラマン強度比H/Vi」ともいう)は、例えば7.00~13.50であり、7.00~12.00であることが好ましく、7.50~11.00であることがより好ましい。ラマン強度比H/Viを上記範囲内にすることで、ヒドロシリル基の数と、アルケニル基及びメタクリロイル基の合計数とがつり合い、(A)~(D)成分を適切に硬化させやすくなり、例えば、常温下でも適切に硬化が進行しやすくなる。
【0056】
上記ラマン強度比H/Viの値は、(A)成分の含有量、(B)成分の含有量、(C)成分の含有量、(D)成分の含有量や、各成分のアルケニル基、メタクリロイル基、ヒドロシリル基の濃度などを調整することで、調整することができる。具体的には、(A)成分の含有量を少なくすること、(D)成分の含有量を少なくすること、(A)成分のアルケニル基の濃度を低くすること、(D)成分のアルケニル基およびメタクリロイル基の合計濃度を低くすること、(B)成分の含有量を多くすること、(C)成分の含有量を多くすること、(B)成分に含まれるヒドロシリル基の濃度を高めること、(C)成分に含まれるヒドロシリル基の濃度を高めること、のいずれかまたは組合せによってH/Viの値を大きくすることができる。また、その逆の調整によってH/Viの値を小さくすることができる。
【0057】
なお、ラマン分光スペクトルの測定は、熱伝導性組成物について、少なくともオルガノポリシロキサンと熱伝導性充填材とを分離して、オルガノポリシロキサンに対してラマン測定をするとよい。この際、オルガノポリシロキサンには、測定に影響を及ぼさない範囲であれば、オルガノポリシロキサン以外の成分が混合されていてもよい。したがって、通常は、遠心分離機などにより、液状成分と固体成分とを分離させて、液状成分についてラマン分光スペクトルを測定するとよい。
また、2液型の熱伝導性組成物については、第1剤及び第2剤について別々にラマン測定を行い、ラマン強度比p2/p1、H/Viを算出するとよいが、ラマン強度比p2/p1は、第2剤のラマン分光スペクトルから算出するとよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、第1剤に含有されずに、第2剤のみに含有されるためである。ラマン測定の測定条件は、実施例で述べるとおりである。なお、アルケニル基は代表的にはビニル基であり、上記したラマン強度比H/Viは、典型的には、後述する実施例で示すとおり、ヒドロシリル基/(ビニル基+メタクリロイル基)比の指標を算出することで求めることができる。
なお、本発明において、「第1剤と剤2剤とを組合せる」、または「第2剤と第1剤とを組合せる」ということは、上述のように第1剤と第2剤を別々に測定した値を用いて算出することを意味する。
【0058】
<ヒドロシリル基の濃度比>
本発明の一実施形態に係る熱伝導性組成物において、(B)成分及び(C)成分は、下記(1-2)式の関係を満たすように含有される。
b/(b+c)>0.45 ・・・(1-2)
式(1-2)において、bは(B)成分が有するヒドロシリル基の濃度、cは(C)成分が有するヒドロシリル基の濃度である。なお、ここでいうヒドロシリル基の濃度とは、熱伝導性組成物におけるヒドロシリル基の濃度である。ただし、後述する2液型の熱伝導性組成物においては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、第1剤に含有されずに、第2剤のみに含有される。したがって、2液型の熱伝導性組成物においては、第2剤におけるヒドロシリル基の濃度を意味するものともいえる。すなわち、(B)成分及び(C)成分は、(1-2)式の関係を満たすように第2剤に含有されるとよい。
前記ヒドロシリル基の濃度比は、(B)成分の含有量、(B)成分のヒドロシリル基の濃度、(C)成分の含有量、(C)成分のヒドロシリル基の濃度を調整することで、調整することができる。具体的には、(B)成分の含有量を多くすること、(B)成分に含まれるヒドロシリル基の濃度を高くすること、(C)成分の含有量を少なくすること、(C)成分に含まれるヒドロシリル基の濃度を低くすること、のいずれかまたは組合せによってヒドロシリル基の濃度比を大きくすることができる。また、その逆の調整によってヒドロシリル基の濃度比を小さくすることができる。
【0059】
本組成物において、b/(b+c)が0.45より大きくなると、架橋点が疎になりやすく、150℃以上の環境下において硬化物の柔軟性を良好に維持しやすくなる。そのため、熱伝導性組成物の硬化物を150℃以上の環境下で放熱ギャップフィラーとして使用すると、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生しにくくなり、熱抵抗が上昇する不具合が生じにくくなり、信頼性が向上する。さらには、柔軟性が高くなることで、例えば厚くした場合などには、緩衝性を発揮でき、振動が発生する環境下において好適に用いることができる。
架橋点を疎にして信頼性や柔軟性をより一層良好にする観点からb/(b+c)は、0.48以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、0.52以上がさらに好ましい。
b/(b+c)は、0.85未満であることが好ましい。b/(b+c)を0.85未満とすることで、硬化物に適度な架橋密度で架橋構造を導入しやすくなる。そのため、長期間にわたって高温で加熱されても硬度を一定の値に維持しやすくなり、長期耐熱性などを良好にしやすくなる。以上の観点から、b/(b+c)は、0.75以下であることがより好ましく、0.70以下であることがさらに好ましく、0.63以下であることがよりさらに好ましい。
本発明では、上記式(1-1)の要件及び式(1-2)の要件のいずれか一方を満たせばよいが、両方を満たしてもよい。
なお、(B)成分および(C)成分のヒドロシリル基の濃度は、NMR測定装置を用いて測定される1H-NMRスペクトルの積分比から算出した値とすることができる。
【0060】
<アルケニル基及びメタクリロイル基含有量>
熱伝導性組成物におけるアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量(以下、「合計Vi含有量」ともいう)は、5.0μmol/g以下であることが好ましい。合計Vi含有量を5.0μmol/g以下とすることで、硬化物における架橋密度を低くして、柔軟性を良好にしやすくなる。合計Vi含有量は、より好ましくは4.8μmol/g以下、さらに好ましくは4.5μmol/g以下、よりさらに好ましくは4.2μmol/g以下である。
合計Vi含有量は、熱伝導性組成物に一定の硬化性及び適度な架橋密度を付与する観点から、0.5μmol/g以上が好ましく、1.0μmol/g以上がさらに好ましく、2.0μmol/g以上がさらに好ましく、3.0μmol/g以上がよりさらに好ましい。
なお、上記アルケニル基の含有量は、NMR測定装置を用いて測定される1H-NMRスペクトルの積分比から算出した値とすることができる。
【0061】
また、(D)成分(すなわち、1個のアルケニル基またはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン)に含有されるアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量(以下、「DVi含有量」ともいう)は、上記した合計Vi含有量に対して、0.05以上であることが好ましい。(D)成分のアルケニル基及びメタクリロイル基の量を一定量以上とすることで、架橋点が密になりすぎることを防止して、柔軟性及び信頼性を向上させやすくなる。DVi含有量は、合計Vi含有量に対して、0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましく、0.19以上がよりさらに好ましい。また、硬化物に一定の硬化性及び適度な架橋密度を付与する観点から、DVi含有量は、合計Vi含有量に対して、0.40以下が好ましく、0.35以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましく、0.28以下がよりさらに好ましい。
なお、前記アルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量は、(A)成分の含有量、(D)成分の含有量、(A)成分のアルケニル基の濃度、(D)成分のアルケニル基およびメタクリロイル基の濃度を調整することで、調整することができる。具体的には、(A)成分の含有量を多くすること、(D)成分の含有量を多くすること、(A)成分のアルケニル基の濃度を高くすること、(D)成分のアルケニル基およびメタクリロイル基の合計濃度を高くすること、のいずれかまたは組合せによってアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量を多くすることができる。また、その逆の調整によってアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量を少なくすることができる。
また、(D)成分に含有されるアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量は、(D)成分の含有量、(D)成分のアルケニル基およびメタクリロイル基の濃度を調整することで、調整することができる。具体的には、(D)成分の含有量を多くすること、(D)成分のアルケニル基およびメタクリロイル基の合計濃度を高くすること、のいずれかまたは組合せによって(D)成分に含有されるアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量を多くすることができる。また、その逆の調整によって(D)成分に含有されるアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量を少なくすることができる。
【0062】
<含有量比H/Vi>
熱伝導性組成物における、ヒドロシリル基の含有量H、並びにアルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量Viは、以下の式(4)の関係を満足することが好ましい。
0.85≦H/Vi≦1.1 ・・・・(4)
以上の式(4)の関係を満足することで、熱伝導性組成物の硬化性を良好にでき、例えば熱伝導性組成物を常温でも適度に硬化させることができる。硬化性の観点から、H/Viは、0.90~1.05であることがより好ましく、0.95~1.03がさらに好ましい。
なお、以上説明したヒドロシリル基の濃度比(b/(b+c))、合計Vi含有量、DVi含有量、及び含有量比H/Viは、配合される各成分の官能基量と、各成分の含有量
から算出することができる。
なお、上記含有量比H/Viの値の調整方法は、ラマン強度比H/Viの調整方法と同じである。
【0063】
<タイプE硬さ>
本発明の熱伝導性組成物は、25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さ(E2)が、下記(2)式を満たすものである。
E2<70 ・・・(2)
なお、熱伝導性組成物は、2液型の熱伝導性組成物においては、第1剤と第2剤を混合した後に25℃で24時間放置すればよい。他の硬さの測定においても同様である。
【0064】
上記のタイプE硬さ(E2)が、70以上となると、150℃以上の環境下において硬化物の柔軟性を維持しやすいものの、硬すぎるため振動などの応力を緩和し難いことから発熱体や放熱体から剥離が発生しやすくなる。そのため、熱伝導性組成物の硬化物を150℃以上の環境下で放熱ギャップフィラー(熱伝導性部材)として使用すると、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生して、熱抵抗が上昇する不具合が生じ、信頼性が低下する。タイプE硬さ(E2)は、柔軟性及び信頼性の観点から、69以下が好ましく、67以下がより好ましく、64以下がさらに好ましい。なお、柔軟性が高くなると、緩衝性を発揮しやすくなり、振動が発生する環境下において好適に用いることができる。
また、タイプE硬さ(E2)は、特に限定されないが、例えば30以上、好ましくは40以上、より好ましくは50以上である。タイプE硬さ(E2)を一定値以上とすることで、150℃以上の環境下において硬化物の柔軟性を維持しやすくでき、さらに例えば硬化物の上部に設置した部材の重量を十分に支持することができ、使用時に硬化物が厚さ方向に圧縮されすぎることを防止できる。
上記タイプE硬さ(E2)は、例えば各成分の濃度や、各成分のアルケニル基、メタクリロイル基、ヒドロシリル基の濃度、ラマン強度比H/Viや含有量比H/Viを調整することで、調整することができる。具体的には、(A)成分の含有量を多くすること、(C)成分の含有量を多くすること、(A)成分のアルケニル基の濃度を高くすること、(C)成分のヒドロシリル基の濃度を高くすること、ラマン強度比H/Viや含有量比H/Viをより好ましい範囲にすること、のいずれかまたは組合せによってE2を高めることができる。一方、(B)成分の含有量を多くすること、(D)成分の含有量を多くすること、必要に応じて(G)成分を多く添加すること、各成分のアルケニル基、メタクリロイル基、ヒドロシリル基の濃度を低くすること、ラマン強度比H/Viや含有量比H/Viをより好ましい範囲から外れる方向に調整することで、E2を低くすることができる。
【0065】
熱伝導性組成物は、25℃で24時間放置した後のタイプE硬さ(E1)と、上記E2との関係が、下記(3)式を満たすことが好ましい。
1.4≦E2/E1≦3.5 ・・・(3)
E2/E1が1.4以上であると、柔軟性でありながら所定の耐熱性を有するものとすることができる。また、E2/E1が3.5以下であると、硬化後の硬さの変化が大きくなりすぎないため、安定した固定が可能となる。
E2/E1は、1.8以上であることがより好ましく、また、3.0以下であることがより好ましい。
【0066】
熱伝導性組成物は、25℃で24時間放置した後のタイプE硬さ(E1)が、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。熱伝導性組成物は、タイプE硬さ(E1)を一定値以上とすることで、常温に放置するだけで一定の硬度を有する硬化物を得ることができる。そのため、例えば、常温硬化後の状態で、硬化物の上部に設置した部材の重量を十分に支持することができ、使用時に厚さ方向に圧縮したりすることを防止できる。また、熱伝導性組成物のタイプE硬さ(E1)は、50以下であることが好ましく、46以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。タイプE硬さ(E1)を上記上限値以下とすることで、熱伝導性組成物の硬化物の柔軟性を向上させることができる。
上記タイプE硬さ(E1)と、上記E2との関係を所定範囲に調整するには、例えば、ラマン強度比p2/p1またはラマン強度比H/Viを所定範囲に調整するとともに、硬化反応が遅くなり過ぎないように(F)成分を所定量添加するとよい。
【0067】
25℃で24時間放置し、さらに150℃で1000時間放置した後のタイプE硬さをE3とすると、E3-E2の値で表される硬度変化は、長期間150℃で加熱された際の硬度変化を表す。E3-E2の値は、低ければ低いほど150℃以上の温度で長期間使用しても性能変化が少なく、長期耐熱性が良好であることを意味する。E3-E2の値で表される硬度変化は、長期耐熱性の観点から、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることが好ましい。なお、E3-E2の値で表される硬度変化は、特に限定されないが、通常は0以上である。
【0068】
[2液型の熱伝導性組成物]
本発明の熱伝導性組成物は、1液型でもよいし、第1剤と第2剤を組み合わせてなる2液型でもよいが、保存安定性の観点から、2液型が好ましい。2液型は、使用時に第1剤と第2剤とを混合させて熱伝導性組成物を得るものである。
2液型の熱伝導性組成物において、第1剤と第2剤の質量比(第2剤/第1剤)は、1又は1に近い値であることが好ましく、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がより好ましい。このように、第1剤と第2剤の質量比を1又は1に近い値とすることで、熱伝導性組成物の調製が容易になる。
なお、2液型の熱伝導性組成物において、第1剤と第2剤は混合させて熱伝導性組成物を得る方法は限定されないが、例えばスタティックミキサー、攪拌羽根を有するミキサー、振動撹拌機や自転公転ミキサーなどを用いることができる。
【0069】
2液型の熱伝導性組成物において、第1剤は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)と、(F)白金族系硬化触媒とを含むが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有しない。また、第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有するが、(F)白金族系硬化触媒を含有しない。さらに、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に(E)熱伝導性充填材が含有される。また、第1剤及び第2剤のいずれにも(E)熱伝導性充填材が含有されることが好ましい。
より具体的には、第1剤は、(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、(F)成分を含むが、(B)成分及び前記(C)成分を含有しない。一方で、第2剤は、(B)成分と、(C)成分とを含むが、(F)成分を含有しない。また、第1剤または第2剤のいずれか一方に(E)成分を含む。
また、第1剤は、(A)成分及び(D)成分の少なくともいずれか1つと、(E)成分と、(F)成分を含むが、(B)成分及び前記(C)成分を含有しない。一方で、第2剤は、(B)成分と、(C)成分と、(E)成分を含むが、(F)成分を含有しないことがより好ましい。
【0070】
以上の構成を有する第1剤は、付加反応を促進する(F)白金族系硬化触媒を含有するが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有しないので、第2剤と混合する前に付加反応が進行することを防止することができる。第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有するが、付加反応を促進する(F)白金族系硬化触媒を含有しないので、第1剤と混合する前に付加反応が進行することを防止することができる。
【0071】
熱伝導性組成物を構成するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、全てが、第1剤に含有されてもよいが、一部が第1剤に含有され、残りが第2剤に含有されることが好ましい。より具体的には、熱伝導性組成物における(A)及び(D)成分は、全てが第1剤に含有されてもよいが、(A)及び(D)成分の一部が第1剤に含有され、(A)及び(D)成分の残りが第2剤に含有されることが好ましい。
このように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを第1剤と、第2剤に分割して含有させることで、第1剤及び第2剤の粘度を所望の範囲に調整しやすくなり、また、第1剤と第2剤の質量比を1又は1に近い値にしやすくなる。なお、第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンも含有するが、(F)白金族系硬化触媒を含有しないので、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有しても、保管時などにおいて、付加反応を実質的に進行させなくすることができる。なお、第2剤には、反応制御剤を含有させて、第2剤において反応が進行することを防止してもよい。
なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、第2剤に含有される場合には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物として第2剤に配合されてもよく、例えば、(A)成分は(C)成分との混合物として、第2剤に配合されてもよい。
【0072】
熱伝導性組成物を構成するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、全てが第2剤に含有され、第1剤には含有されない。
(E)熱伝導性充填材は、熱伝導性組成物を形成するための第1剤と第2剤のいずれか一方に含有されればよいが、上記の通り第1剤と第2剤の両方に含有されることが好ましく、中でもおおよそ均等に含有されることがより好ましい。具体的には、第1剤における(E)熱伝導性充填材の含有量に対する、第2剤における(E)熱伝導性充填材の含有量の比(質量比)は、0.67~1.5が好ましく、0.83~1.2がより好ましく、0.91~1.1がさらに好ましい。(E)熱伝導性充填材を第1剤と第2剤におおよそ均等に配分することで、第1剤と第2剤の粘度差を小さくしやすくなり、また、第1剤と第2剤の質量比も1に近づけやすくなる。
【0073】
熱伝導性組成物は、(G)成分を含有することが好ましいが、(G)成分は、第1剤及び第2剤の少なくともいずれかに含有させるとよい。ただし、(G)成分は、少なくとも第1剤に含有させることが好ましく、第1剤及び第2剤の両方に含有させることがより好ましい。第1剤及び第2剤の両方に(G)成分を含有させると、第1剤及び第2剤の粘度を(G)成分によって調整でき、第1剤及び第2剤の両方を比較的低い粘度にすることも可能である。なお、(G)成分は、(G-2)成分を含有する場合に、(G-2)成分を第1剤及び第2剤の両方に含有させることがより効果的であり好ましい。
【0074】
<粘度>
熱伝導性組成物に含有されるバインダー樹脂の25℃における粘度VBは、特に限定されないが、好ましくは50~800mPa・s、より好ましくは80~600mPa・s、さらに好ましくは100~400mPa・sである。なお、バインダー樹脂の粘度VBとは、熱伝導性組成物に含まれるオルガノポリシロキサンの粘度であり、通常は、(A)~(D)成分、又は(A)~(D)成分及び(G)成分の混合物の粘度であるが、これら以外のオルガノポリシロキサンが含有される場合には、そのオルガノポリシロキサンもさらに含めた混合物の粘度である。後述する第1剤及び第2剤のバインダー樹脂の粘度VB1、VB2についても、同様に第1剤及び第2剤それぞれに含まれるオルガノポリシロキサンの粘度である。
【0075】
2液型の熱伝導性組成物では、第1剤及び第2剤それぞれに含有されるバインダー樹脂の25℃における粘度VB1,VB2はそれぞれ、好ましくは50~800mPa・s、より好ましくは80~600mPa・s、さらに好ましくは100~400mPa・sであるとよい。
なお、第1剤及び第2剤それぞれにおけるバインダー樹脂の粘度VB1,VB2は、第1剤及び第2剤それぞれに含有されるオルガノポリシロキサンを混合して、混合して得たオルガノポリシロキサンについて粘度を測定するとよい。熱伝導性組成物におけるバインダー樹脂の粘度VBも同様に測定可能であるが、2液型の熱伝導性組成物の場合には、第1剤及び第2剤それぞれにおけるバインダー樹脂の粘度VB1、VB2からおおよその粘度VBを見積もることも可能である。
【0076】
2液型の熱伝導性組成物において、第1剤及び第2剤それぞれの温度25℃、せん断速度3.16(1/s)の条件下における粘度V1,V2はそれぞれ、10~1000Pa・sであることが好ましく、50~700Pa・sであることがより好ましく、200~450Pa・sであることがさらに好ましい。第1剤及び第2剤が上記のような粘度を有することにより、取扱い性が向上しやすくなる。
【0077】
また、本発明の熱伝導性組成物の温度25℃、せん断速度3.16(1/s)の条件下における粘度Vは、10~1000Pa・s以下であることが好ましく、50~700Pa・s以下であることがより好ましく、200~450Pa・s以下であることがさらに好ましい。熱伝導性組成物が上記のような粘度を有することにより、硬化前においては所定の流動性を有して、狭い隙間や複雑な形状に対しても対応することができる。
熱伝導性組成物の粘度Vは、2液型である場合には、第1剤及び第2剤を混合して、直ちに測定することで求めることができるが、第1剤及び第2剤の粘度V1、V2よりおおよその粘度の値を見積もることもできる。
【0078】
上記した第1剤の粘度V1と、第2剤の粘度V2の差(|V1-V2|)は、熱伝導性組成物を均一に混合しやすくする観点から小さいほうが好ましい。具体的には、第1剤と第2剤の粘度差(|V1-V2|)は、例えば130Pa・s以下であるとよく、100Pa・s以下であることが好ましく、30Pa・s以下であることがより好ましい。また、第1剤と第2剤の粘度差(|V1-V2|)は、0Pa・s以上であればよい。
【0079】
[熱伝導性部材]
本発明の熱伝導性組成物は、放熱ギャップフィラーなどの熱伝導性部材として使用されることが好ましい。熱伝導性部材は、熱伝導性組成物を硬化させてなる硬化物である。
熱伝導性部材は、電子機器内部などにおいて使用される。具体的には、熱伝導性部材は、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、電源などの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、電子機器の金属筐体などが挙げられる。
また、熱伝導性部材は、例えば電装部品に使用されるとよく、電装部品において、前記発熱体は、エンジンルーム内やモーター近傍などに配置されるとよく、本発明は特に150℃以上の高温環境下に晒される電装部品の用途に好適である。また、150℃以上に発熱する発熱体の放熱にも好適である。
【0080】
熱伝導性部材は、例えば発熱体及び放熱体の間の隙間に熱伝導性組成物を充填して、硬化して形成するとよい。硬化は、加熱して行ってもよいが、常温付近(例えば、0~40℃程度、好ましくは15~35℃程度)で行うことが好ましい。常温付近で硬化することで、電子部品に熱履歴を加えることなく、熱伝導性部材を電子機器内部に配置することができる。熱伝導性組成物は、2液型である場合には、第1剤と第2剤を混合させた後に発熱体及び放熱体の間の隙間などに充填させて硬化させるとよい。
熱伝導性部材の形状は、特に限定されず、シート状であってもよいし、他の形状で使用されてよい。熱伝導性部材の厚みは、特に限定されず、例えば0.3~5mm、好ましくは0.5~4mmで使用できる。本発明では、熱伝導性部材が柔軟性を有するため、その厚みを大きくすると(例えば、0.5mm以上)、緩衝性を発揮でき、振動が発生する環境下において好適に用いることができる。
【実施例0081】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0082】
[ラマン測定]
第1剤および第2剤について、それぞれ遠心分離器を用いて、液体成分と固体成分(熱伝導性充填材)とを分離した。そして分離した液体成分について、それぞれのラマンスペクトルを測定した。ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであった。
装置:RENISHAW社製 inViaラマンマイクロスコープQONTOR
スペクトル範囲:300~2500cm-1
レーザー光波長:532nm、100mW(10%に減光)
グレーティング:1800line/mm
照射時間:1.0s
積算:100
対物レンズ:50倍
【0083】
ラマン強度比p2/p1は、ヒドロシリル基を含む第2剤から得られたラマン分光スペクトルについて、波数2130cm-1のラマン強度p2と波数2160cm-1のラマン強度p1から見積もった。
【0084】
ラマン強度比H/Vi(アルケニル基及びメタクリロイル基由来のピークの強度に対する、ヒドロシリル基由来のピークの強度の比)は、以下のように算出した。すなわち第1剤のラマンスペクトと第2剤のラマンスペクトルについて、まず、波数490cm-1に表れるSi-O-Siのピークの面積C、波数1600cm-1に表れるビニル基のピークの面積D、波数1640cm-1に表れるメタクリロイル基のピークの面積E、及び、波数2130~2160cm-1に表れるヒドロシリル基のピークの面積Fを算出した。次いで面積Cを基準に以下の計算を行い、測定毎の強度の誤差を補正して規格化した。
面積D/面積C=面積割合D1
面積E/面積C=面積割合E1
面積F/面積C=面積割合F1
続いて、第1剤の面積割合D1、E1に第1剤に含まれる液体成分の質量割合を乗じた値と、第2剤の面積割合D1、E1、F1に第2剤の液体成分に含まれる質量割合を乗じた値とを合計して熱伝導性組成物におけるD1、E1、F1を見積もった。
そして、下記式により、ヒドロシリル基/(ビニル基+メタクリロイル基)比の指標を算出することで求めた。なお、ビニル基とメタクリロイル基とではラマン散乱強度の違いがあるため、補正係数として0.5を乗じて計算するものとした。
ラマン強度比H/Vi=面積割合F1/[面積割合D+(面積割合E1×0.5)]
なお、熱伝導性組成物において、ビニル基以外のアルケニル基を有する場合にも、ビニル基以外のアルケニル基由来のピーク強度を同様に算出して、ラマン強度比H/Viを算出するとよい。
【0085】
[各オルガノポリシロキサンの粘度、及びバインダー樹脂の粘度]
各オルガノポリシロキサンの25℃における粘度、第1剤、及び第2剤に含有されるバインダー樹脂の粘度VB1,VB2は、以下のとおり測定した。
アントンパール社製のレオメーター「MCR-302e」を用いて、サンプルの温度をペルチェプレートにて25℃に調整し、φ50mmで1°角度のコーンプレートを用い、せん断速度10~100(1/sec)の範囲で連続的にせん断速度を変化させながら粘度測定を行った。ここで、粘度の値は、せん断速度10(1/s)における粘度を採用する。
【0086】
[第1剤及び第2剤の粘度]
第1剤及び第2剤の粘度V1、V2は、以下の方法により測定した。
アントンパール社製のレオメーター「MCR-302e」を用いて、サンプルの温度をペルチェプレートにて25℃に調整し、φ25mmのパラレルプレートを用い、せん断速度0.0001~100(1/s)の範囲で連続的にせん断速度を変化させながら粘度測定を行った。せん断速度0.0001(1/s)、3.16(1/s)、6.31(1/s)における粘度をそれぞれ表に記載した。
【0087】
[熱伝導性組成物の硬化物の硬度]
第1剤及び第2剤を50ccの2液並列カートリッジ(MIXPAC社製の1:1混合用カートリッジ「CDA050-01-PP」)に充填し、スタティックミキサー(2液混合用スタティックミキサー「MA6.3-12S」、エレメント数6.3mm×12、吐出口内径1.5mm)を使用して混合して得た熱伝導性組成物(質量比1:1)を、サンプルの厚みが2mmとなるように、離型処理されたPETフィルム(パナック社製「SG2」)の離型面に塗布して、そのサンプルの上からもう一枚のPETフィルム(パナック社製「SG2」)を離型面がサンプルに接触するようにして押しつぶして固定した。温度25℃、湿度50%RHで24時間放置し、サンプル1Aを得た。得られたサンプル1Aから30mm角のシートを5枚打ち抜いて重ね合わせたものを用いてタイプE硬さを測定して、硬さE1とした。
上記と同様の方法で得られたサンプル2Aを、150℃に設定された恒温槽内部に投入し、恒温槽内部で250時間放置した。250時間放置後のサンプル2Aを、恒温槽から取り出して25℃まで冷却したうえで、サンプル2AのタイプE硬さを測定して、硬さE2とした。また、恒温槽内部に放置する時間を500時間、1000時間に変更した以外は同様に得たサンプル2A-2、サンプル3Aについて、タイプE硬さを測定して、硬さE2-2、硬さE3とした。得られた硬さE1,E2、E3よりE2/E1、硬度変化(E3)-(E2-2)も求めた。
なお、タイプE硬さは、JIS K 6253のタイプEの硬度計によって測定した。
【0088】
[熱伝導性組成物の硬化物の熱抵抗]
第1剤及び第2剤を50ccの2液並列カートリッジ(MIXPAC社製の1:1混合用カートリッジ「CDA050-01-PP」)に充填し、スタティックミキサー(2液混合用スタティックミキサー「MA6.3-12S」、エレメント数6.3mm×12、吐出口内径1.5mm)を使用して混合して得た熱伝導性組成物(質量比1:1)を、サンプルの厚みがそれぞれ0.5、1.0、1.5mmとなるように、離型処理されたPETフィルム(パナック社製「SG2」)の離型面に塗布して、そのサンプルの上からもう一枚のPETフィルム(パナック社製「SG2」)を離型面がサンプルに接触するようにして押しつぶして固定した。温度25℃、湿度50%RHで24時間放置し、サンプル1Bを得て、得られたサンプル1Bについて、ASTM D5470-06に準拠した測定装置を用いて熱抵抗値(初期)を測定した。
上記と同様の方法で得られたサンプル1Bを、150℃に設定された恒温槽内部に投入し、恒温槽内部で250時間放置した。250時間放置後のサンプル2Bを、恒温槽から取り出して25℃まで冷却したうえで、上記と同様の方法で熱抵抗値(加熱後)を測定した。
【0089】
[長期耐熱性試験]
第1剤及び第2剤を50ccの2液並列カートリッジ(MIXPAC社製の1:1混合用カートリッジ「CDA050-01-PP」)に充填し、スタティックミキサー(2液混合用スタティックミキサー「MA6.3-12S」、エレメント数6.3mm×12、吐出口内径1.5mm)を使用して混合して得た熱伝導性組成物(質量比1:1)を、スペーサーで厚みが1mmとなるように、ヒートシンク(60mm×60mmで厚さ6mmtの板の一方面に高さ24mmの凸部を16枚有するヒートシンク、材質:アルミニウム)の平坦面側と台座(40mm×40mmで厚さ10mmt、材質:銅)の表面とで挟み込んで固定した。このとき、熱伝導性組成物は40mm×40mm×1mmtとした。次いで、温度25℃、湿度50%RHで24時間放置して、熱伝導性組成物を硬化させることで、試験サンプルを得た。
最初に上記サンプルを用いた初期の熱抵抗値の評価を以下の方法で行った。断熱材(26mm×26mmで深さが1.7mmの凹部が中央に形成された50mm×90mmで厚さが15mmtの板、材質:HIPLA)の前記凹部にヒーター(加島社製「SCPU25×25」、サイズ:25×25mm、電圧・電力:100V・100W)を設置し、その上に上記試験サンプルの台座の裏面を固定した。このとき、ヒーターの熱がサンプル(台座)に伝わりやすくするためにヒーターの表面と前記台座の裏面との間には3W/m・Kの熱伝導性グリスを50μmの厚さで介在させた。また、前記ヒートシンクと台座には中央に設けられている熱電対の挿入孔に、熱電対を挿入し、熱電対の先端がヒーターの中心の直上になるように配置する。
続いて、試験サンプルのヒートシンクの上に冷却用のファンを設置し、風量0.53m3/分、風圧49Paでヒートシンクに送風して、加熱前のヒーターの抵抗値を確認した。その後、ヒーターの電力が100Wになるように電圧を調整した。そして、ヒートシンク側の熱電対で測定される温度をT1、台座側で測定される温度をT2として、ヒーターの加熱を開始してから10分後のT1とT2の差とヒーターの加熱電力から耐熱性試験前のサンプルの熱抵抗値R1(熱抵抗値=(T1-T2)/100)を算出した。その後、ヒーターの電圧を0にして加熱を停止した後に室温まで冷却した試験サンプルを断熱材から取り外してヒートサイクル試験を行った。ヒートサイクル試験は-40℃で30分間放置した後に150℃まで昇温して30分間放置を1サイクルとして、これを1000時間実施した。そして、1000時間後に恒温槽から試験サンプルを取り出し、室温になるまで放置した後に、上記と同様の手順でヒートサイクル試験後の熱抵抗値R2を算出した。
そして上記で測定された初期の熱抵抗値R1からヒートサイクル試験後の熱抵抗値R2の変化(R2-R1)/R1×100(%)を算出し、熱抵抗値の悪化の程度を以下基準で評価した。
A:(R2-R1)/R1×100が10%以下であり、信頼性が良好であった。
B:(R2-R1)/R1×100が10%より大きく20%以下であり、実用的に使用可能な信頼性を有していた。
C:(R2-R1)/R1×100が20%より大きく、信頼性が良好ではなかった。
D:硬化せずに評価できなかった。
【0090】
実施例及び比較例で使用した各原料は、以下の通りである
<オルガノポリシロキサン>
オルガノポリシロキサン1((A)成分):分子鎖の両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基含有量0.17mmol/g、粘度410mPa・s)
オルガノポリシロキサン2((A)成分及び(C)成分):分子鎖の両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン((A)成分)と、3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン((C)成分)の混合物(ビニル基含有量0.15mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.19mmol/g、粘度336mPa・s、質量比((A)成分:(C)成分)=95:5)
オルガノポリシロキサン3((A)成分):分子鎖の両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基含有量0.136mmol/g、粘度1193mPa・s)
オルガノポリシロキサン4((A)成分及び(C)成分):分子鎖の両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン((A)成分)と、3個以上のヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン((C)成分)の混合物(ビニル基含有量0.041mmol/g、ヒドロシリル基含有量0.06mmol/g、粘度1034mPa・s、質量比((A)成分:(C)成分)=95:5)
オルガノポリシロキサン5((A)成分):分子鎖の両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基含有量0.69mmol/g、粘度1157mPa・s)
(オルガノポリシロキサン2、4において、(A)成分はヒドロシリル基を有さず、(C)成分は、ビニル基(アルケニル基)を有さない。)
【0091】
オルガノポリシロキサン6((B)成分):分子鎖の両末端にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(ヒドロシリル基含有量1.3mmol/g、粘度10mPa・s)
オルガノポリシロキサン7((B)成分):分子鎖の両末端にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(ヒドロシリル基含有量0.333mmol/g、粘度100mPa・s)
オルガノポリシロキサン8((B)成分):分子鎖の両末端にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(ヒドロシリル基含有量0.329mmol/g、粘度128mPa・s)
オルガノポリシロキサン9((B)成分):分子鎖の両末端にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(ヒドロシリル基含有量0.116mmol/g、粘度1111mPa・s)
【0092】
オルガノポリシロキサン10((D)成分):分子鎖の片末端にメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン(メタクリロイル基含有量0.10mmol/g、粘度177mPa・s)
オルガノポリシロキサン11((G-1)成分):ヒドロシリル化付加反応基を有さないジメチルシリコーンオイル(粘度101mPa・s)
オルガノポリシロキサン12((G-2)成分):ヒドロシリル化付加反応基を有さず、末端にトリアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサン(粘度26mPa・s)
【0093】
<白金族系硬化触媒>
白金触媒((F)成分)
<熱伝導性充填材>
酸化アルミニウム1((E)成分):球状アルミナ(D50:0.5μm)
酸化アルミニウム2((E)成分):球状アルミナ(D50:3μm)
酸化アルミニウム3((E)成分):球状アルミナ(D50:18μm)
酸化アルミニウム4((E)成分):球状アルミナ(D50:40μm)
酸化アルミニウム5((E)成分):球状アルミナ(D50:60μm)
【0094】
[実施例1~12、比較例1~7]
以下の表1~3に示す配合に従って第1剤と第2剤を用意した。第1剤と第2剤を混合して得た熱伝導性組成物を用いて、各種物性の測定及び各種評価を行った。
【0095】
【0096】
【0097】
【表3】
※合計Vi含有量1は、第1剤及び第2剤それぞれにおけるオルガノポリシロキサン1~10の合計量に対する、アルケニル基及びメタクリロイル基の合計含有量である。
※合計Vi含有量2は、熱伝導性組成物(第1剤と第2剤)の合計量に対するビニル基とメタクリロイル基の合計含有量である。
※ヒドロシリル基量1は、オルガノポリシロキサン1~10の合計量に対するヒドロシリル基の含有量である。
※ヒドロシリル基量2は、熱伝導性組成物(第1剤と第2剤)の合計量に対するヒドロシリル基の含有量である。
【0098】
以上の実施例1~12の熱伝導性組成物は、(A)~(F)成分を含有し、かつラマン強度比p2/p1が3.00より大きくなり、また、(B)成分と(C)成分がヒドロシリル基濃度比b/(b+c)が0.45より大きくなるように配合された。そして、25℃で24時間放置し、さらに150℃で250時間放置した後のタイプE硬さ(E2)が70未満となった。したがって、150℃の環境下でも硬化物の柔軟性を良好に維持でき、信頼性が良好であったため、熱伝導性組成物の硬化物を高温環境下で、熱伝導性部材として使用しても、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生することを抑制して、熱抵抗の上昇を抑制することができた。
それに対して、比較例1~7の熱伝導性組成物は、(D)成分を含有せず、或いは、ラマン強度比p2/p1が3.00以下となり、また、(B)成分と(C)成分がヒドロシリル基濃度比b/(b+c)が0.45より大きくなるように配合されていなかった。そのため、比較例1~6では、150℃以上の環境で、硬化物の柔軟性を良好に維持できず、信頼性が良好でなかったため、熱伝導性組成物の硬化物を150℃以上の環境下で、熱伝導性部材として使用すると、発熱体や放熱体などに対する剥離が発生して、熱抵抗の上昇を抑制することができなかった。また、比較例7では、硬化不良が生じた。