(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039042
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/06 20060101AFI20240313BHJP
B01D 59/42 20060101ALI20240313BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G21F9/06 591
B01D59/42
G21F9/06 561
G21F9/12 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217580
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2022113824の分割
【原出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】517363838
【氏名又は名称】株式会社オーセンアライアンス
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡也
(57)【要約】
【課題】トリチウム水に対する処理を効率的かつ適切に行う。
【解決手段】トリチウム水に対する処理を行う水処理システム10であって、トリチウム低減水生成装置であるEDI処理部102を備え、EDI処理部102は、陽電極と、陰電極と、陽電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成され、陰電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成される第1液室と、陽電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成され、陰電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成される第2液室とを有し、第1液室には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されており、第1液室及び第2液室に前記トリチウム水を入れた状態で、陽電極と陰電極との間に電圧をかけることで、第1液室及び第2液室の一方において、トリチウム低減水を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリチウムを含む水であるトリチウム水に対する処理を行う水処理システムであって、
前記トリチウム水よりもトリチウムの濃度が低い水であるトリチウム低減水を生成するトリチウム低減水生成装置を備え、
前記トリチウム低減水生成装置は、
陽電極と、
陰電極と、
前記陽電極と前記陰電極との間に形成される液室であり、前記陽電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成され、前記陰電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成される第1液室と、
前記陽電極と前記陰電極との間において陽イオン交換膜又は陰イオン交換膜を挟んで前記第1液室と隣接する液室であり、前記陽電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成され、前記陰電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成される第2液室と
を有し、
前記第1液室には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されており、
前記第1液室及び前記第2液室に前記トリチウム水を入れた状態で、前記陽電極と前記陰電極との間に電圧をかけることで、前記第1液室及び前記第2液室の一方において、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記第1液室及び前記第2液室に前記トリチウム水を入れた状態で、前記陽電極と前記陰電極との間に電圧をかけることで、前記第1液室にある水に含まれるトリチウムの少なくとも一部を前記第2液室へ移動させて、前記第1液室において、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記トリチウム低減水生成装置として、
前記水処理システムでの処理対象の水が前記トリチウム水として供給される第1の前記トリチウム低減水生成装置と、
前記第1のトリチウム低減水生成装置で生成される前記トリチウム低減水である第1処理水に対する処理を行う第2の前記トリチウム低減水生成装置と
を備え、
前記第2のトリチウム低減水生成装置は、前記第1処理水を前記トリチウム水として処理を行うことで、前記第1処理水よりもトリチウムの濃度が低い前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記トリチウム低減水に対してイオン交換を行うイオン交換樹脂を含むイオン交換部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記トリチウム低減水生成装置は、前記第1液室及び前記第2液室の他方において、当該トリチウム低減水生成装置での処理前の前記トリチウム水よりもトリチウムの濃度が高い水であるトリチウム濃縮水を生成し、
前記トリチウム低減水生成装置で生成される前記トリチウム濃縮水について、前記トリチウム低減水生成装置での処理前の前記トリチウム水に合流させることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記トリチウム低減水生成装置は、電気再生式イオン交換装置であり、前記第1液室及び前記第2液室を介して前記陽電極と前記陰電極との間で流れる電流によって前記第1液室内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を再生しつつ、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項7】
トリチウムを含む水であるトリチウム水に対する処理を行う水処理システムであって、
前記トリチウム水から前記トリチウム水よりもトリチウムの濃度が低い水であるトリチウム低減水を生成する電気再生式イオン交換装置を備え、
前記電気再生式イオン交換装置は、
陽電極と、
陰電極と、
陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されている脱塩室と、
イオン交換膜によって前記脱塩室との間が仕切られた濃縮室と
を有し、
前記脱塩室及び前記濃縮室に前記トリチウム水を入れた状態で、前記陽電極と前記陰電極との間に電圧がかけられることで、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする水処理システム。
【請求項8】
トリチウムを含む水であるトリチウム水に対する処理を行う水処理方法であって、
前記トリチウム水よりもトリチウムの濃度が低い水であるトリチウム低減水を生成するトリチウム低減水生成装置を用い、
前記トリチウム低減水生成装置は、
陽電極と、
陰電極と、
前記陽電極と前記陰電極との間に形成される液室であり、前記陽電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成され、前記陰電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成される第1液室と、
前記陽電極と前記陰電極との間において陽イオン交換膜又は陰イオン交換膜を挟んで前記第1液室と隣接する液室であり、前記陽電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成され、前記陰電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成される第2液室と
を有し、
前記第1液室には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されており、
前記第1液室及び前記第2液室に前記トリチウム水を入れた状態で、前記陽電極と前記陰電極との間に電圧をかけることで、前記第1液室及び前記第2液室の一方において、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする水処理方法。
【請求項9】
トリチウムを含む水であるトリチウム水に対する処理を行う水処理方法であって、
前記トリチウム水から前記トリチウム水よりもトリチウムの濃度が低い水であるトリチウム低減水を生成する電気再生式イオン交換装置を用い、
前記電気再生式イオン交換装置は、
陽電極と、
陰電極と、
陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されている脱塩室と、
イオン交換膜によって前記脱塩室との間が仕切られた濃縮室と
を有し、
前記脱塩室及び前記濃縮室に前記トリチウム水を入れた状態で、前記陽電極と前記陰電極との間に電圧がかけることで、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トリチウムを含む水(以下、トリチウム水という)に対してトリチウムの濃縮を行う方法が知られている。例えば、特許文献1には、電気分解(電解)を行うことでトリチウムの濃縮を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、大量のトリチウム水に対してトリチウムの除去(低減)又は濃縮を行うことが可能な方法が求められている。より具体的には、例えば、福島第一原子力発電所で発生した汚染水に含まれる放射性物質を多核種除去設備等で浄化することで生成された処理水(以下、ALPS処理水という)に対してトリチウムの除去又は濃縮を行うことが可能な方法が求められている。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる水処理システム及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、大量のトリチウム水に対してトリチウムの除去又は濃縮を行うことが可能な方法について、鋭意研究を行った。そして、例えばEDI装置又はCDI装置等と呼ばれる電気再生式イオン交換装置の原理を利用することで、大量のトリチウム水に対するトリチウムの除去や濃縮を適切に行い得ることを見出した。また、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、トリチウムを含む水であるトリチウム水に対する処理を行う水処理システムであって、前記トリチウム水よりもトリチウムの濃度が低い水であるトリチウム低減水を生成するトリチウム低減水生成装置を備え、前記トリチウム低減水生成装置は、陽電極と、陰電極と、前記陽電極と前記陰電極との間に形成される液室であり、前記陽電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成され、前記陰電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成される第1液室と、前記陽電極と前記陰電極との間において陽イオン交換膜又は陰イオン交換膜を挟んで前記第1液室と隣接する液室であり、前記陽電極の側の少なくとも一部が陽イオン交換膜で形成され、前記陰電極の側の少なくとも一部が陰イオン交換膜で形成される第2液室とを有し、前記第1液室には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されており、前記第1液室及び前記第2液室に前記トリチウム水を入れた状態で、前記陽電極と前記陰電極との間に電圧をかけることで、前記第1液室及び前記第2液室の一方において、前記トリチウム低減水を生成することを特徴とする。
【0007】
このように構成すれば、例えば、大量のトリチウム水に対する処理を効率的かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、トリチウム低減水を効率的かつ適切に生成することができる。また、この構成において、トリチウム低減水生成装置は、例えば、第1液室及び第2液室の他方において、当該トリチウム低減水生成装置での処理前のトリチウム水よりもトリチウムの濃度が高い水であるトリチウム濃縮水を生成する。この場合、トリチウム低減水生成装置で生成されるトリチウム濃縮水について、例えば、トリチウム低減水生成装置での処理前のトリチウム水に合流させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、トリチウム濃縮水を水処理システム内で循環させることで、水処理システムでの処理水としてトリチウム低減水を生成しつつ、水処理システム内でトリチウムの濃縮を行うことができる。また、これにより、例えば、水処理システムの外部へのトリチウムの流出を適切に抑えつつ、トリチウム低減水を適切に生成することができる。
【0008】
また、この構成において、トリチウム低減水生成装置は、例えば、電気再生式イオン交換装置である。この場合、トリチウム低減水生成装置の動作について、例えば、第1液室及び第2液室を介して陽電極と陰電極との間で流れる電流によって第1液室内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を再生しつつ、トリチウム低減水を生成すると考えることができる。このような電気再生式イオン交換装置としては、例えば、市販されている公知の電気再生式イオン交換装置と同一又は同様の原理で動作する装置を用いることができる。また、より具体的に、電気再生式イオン交換装置としては、EDI装置又はCDI装置として市販されている装置等を用いることが考えられる。また、この場合、トリチウム低減水生成装置における第1液室について、例えば、電気再生式イオン交換装置における脱塩室に対応すると考えることができる。トリチウム低減水生成装置における第2液室について、例えば、電気再生式イオン交換装置における濃縮室に対応すると考えることができる。また、この場合、電気再生式イオン交換装置について、例えば、陽電極と、陰電極と、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されている脱塩室と、イオン交換膜によって脱塩室との間が仕切られた濃縮室とを有すると考えることができる。また、例えば、脱塩室及び濃縮室にトリチウム水を入れた状態で、陽電極と陰電極との間に電圧がかけられることで、トリチウム低減水を生成すると考えることができる。
【0009】
また、この構成において、トリチウム低減水生成装置では、例えば、第1液室及び第2液室にトリチウム水を入れた状態で、陽電極と陰電極との間に電圧をかけることで、第1液室にある水に含まれるトリチウムの少なくとも一部を第2液室へ移動させて、第1液室において、トリチウム低減水を生成する。また、この場合、トリチウム低減水生成装置では、例えば、第1液室にある水に含まれるトリチウムの少なくとも一部を第2液室へ移動させることで、第2液室において、トリチウム濃縮水を生成する。このように構成すれば、トリチウム低減水生成装置において、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を適切に生成することができる。
【0010】
また、この構成において、水処理システムは、複数のトリチウム低減水生成装置を備えてよい。この場合、複数のトリチウム低減水生成装置は、例えば、水処理の経路に沿って多段方式でつながる。また、より具体的に、この場合、水処理システムは、トリチウム低減水生成装置として、例えば、水処理システムでの処理対象の水が処理対象のトリチウム水として供給される第1のトリチウム低減水生成装置と、第1のトリチウム低減水生成装置で生成されるトリチウム低減水である第1処理水に対する処理を行う第2のトリチウム低減水生成装置とを備える。この場合、第2のトリチウム低減水生成装置は、例えば、第1処理水を処理対象のトリチウム水として処理を行うことで、第1処理水よりもトリチウムの濃度が低いトリチウム低減水を生成する。このように構成すれば、例えば、トリチウムの濃度をより低減したトリチウム低減水を適切に生成することができる。また、水処理システムは、より多くの数のトリチウム低減水生成装置を備えてもよい。この場合、例えば3~4段程度の多段構成のトリチウム低減水生成装置を用いることが考えられる。また、この場合、1段目のトリチウム低減水生成装置について、例えば、上記の第1のトリチウム低減水生成装置と同一又は同様の特徴を有すると考えることができる。2段目以降のトリチウム低減水生成装置については、例えば、前段のトリチウム低減水生成装置で生成されるトリチウム低減水を処理対象のトリチウム水として処理を行うと考えることができる。
【0011】
また、この構成において、水処理システムは、例えば、トリチウム低減水に対してイオン交換を行うイオン交換樹脂を含むイオン交換部を更に備えることが好ましい。イオン交換部については、例えば、水処理システムにおける処理水の出口の前段でイオン交換を行うための構成等と考えることができる。また、イオン交換部については、例えば、トリチウム低減水生成装置で生成されるトリチウム低減水に残っているトリチウムを除去するための構成等と考えることもできる。このようなイオン交換部を用いることで、例えば、水処理システムにおける処理水に含まれるトリチウムの濃度をより適切に低減することができる。また、本発明の構成として、例えば、上記と同様の特徴を有する水処理方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば、トリチウム水に対する処理を効率的かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】水処理システム10の要部の構成の一例を示す図である。
【
図2】EDI処理部102の構成の一例を示す図である。
【
図3】水処理システム10の構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システム10の要部の構成の一例を示す。本例において、水処理システム10は、トリチウムを含む水であるトリチウム水に対する処理を行うシステムであり、水処理システム10の外部から処理対象のトリチウム水として水処理システム10へ導入される水である原水に対して、以下において説明をする処理を行うことで、原水よりもトリチウムの濃度が低い処理水を生成する。このような原水としては、例えば、複数種類の放射性物質を含む水(汚染水)に対して多核種除去設備等での浄化を行うことで生成されるトリチウム水を用いることが考えられる。この場合、トリチウム水について、例えば、トリチウム以外の放射性物質が除去されている水等と考えることができる。トリチウム以外の放射性物質が除去されていることについては、例えば、環境基準等において問題にならない濃度にまでトリチウム以外の放射性物質が除去されていること等と考えることができる。また、より具体的に、水処理システム10では、例えば、福島第一原子力発電所で発生した汚染水に対して多核種除去設備等での浄化の処理を行うことで生成されるALPS処理水等を、原水として用いる。
【0015】
また、本例において、水処理システム10は、原水貯槽12、ポンプ14、UV殺菌部16、水処理部18、及びイオン交換部20を備える。また、水処理システム10は、水処理部18として、例えば図中に符号18a及び18bを付して示すように、複数の水処理部18を備える。原水貯槽12は、水処理システム10での処理対象のトリチウム水を貯留する貯留部である。この場合、水処理システム10での処理対象のトリチウム水については、例えば、その後に水処理部18での処理が行われる水等と考えることができる。より具体的に、本例の場合、例えば水処理システム10での処理の開始時において、原水貯槽12には、ALPS処理水等の原水が導入される。また、この場合、水処理システム10での水処理の進行に応じて、例えば、原水貯槽12に対し、新たな原水を適宜補充することが考えられる。また、後に詳しく説明をするように、本例においては、複数の水処理部18で生成されるトリチウム濃縮水について、原水貯槽12へ環流させる。そのため、水処理システム10での水処理の実行中において、原水貯槽12は、複数の水処理部18から環流するトリチウム濃縮水を更に貯留する。この場合、例えば、原水貯槽12内においてトリチウム濃縮水が適宜合流した原水について、その後に水処理システム10で行う水処理での処理対象のトリチウム水と考えることができる。
【0016】
ポンプ14は、水処理システム10内に水を流すためのポンプである。本例において、ポンプ14は、例えば、原水貯槽12とUV殺菌部16との間に配設され、原水貯槽12から供給されるトリチウム水をUV殺菌部16へ供給する。また、これにより、ポンプ14は、UV殺菌部16を介して、水処理部18a、bへトリチウム水を供給する。このように構成すれば、例えば、水処理システム10内に適切に水を流すことができる。また、水処理システム10において、ポンプ14を設置する位置やポンプ14の個数等については、適宜変更してもよい。UV殺菌部16は、水処理システム10内を流れる水に対して紫外線の照射によって殺菌を行う構成である。本例において、UV殺菌部16は、公知のUV殺菌灯を有し、原水貯槽12と水処理部18aとの間を流れる水に対し、紫外線を照射する。UV殺菌部16を用いることで、例えば、水処理システム10内での雑菌の繁殖等を適切に防止することができる。
【0017】
複数の水処理部18a、bは、トリチウム水に対して所定の水処理を行う処理部である。また、本例において、複数の水処理部18a、bのそれぞれは、EDI処理部102及び直流電源ユニット104を有する。EDI処理部102は、トリチウム低減水生成装置の一例であり、直流電源ユニット104から供給される直流電力に応じて、トリチウム水に対する処理を行う。また、本例において、EDI処理部102は、供給されるトリチウム水から、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成する。この場合、EDI処理部102で生成するトリチウム低減水については、例えば、EDI処理部102へ供給されるトリチウム水よりもトリチウムの濃度が低い水等と考えることができる。EDI処理部102へ供給されるトリチウム水については、例えば、EDI処理部102での処理前のトリチウム水等と考えることができる。また、EDI処理部102で生成するトリチウム濃縮水については、例えば、EDI処理部102へ供給されるトリチウム水よりもトリチウムの濃度が高い水等と考えることができる。EDI処理部102の具体的な構成や、EDI処理部102においてトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成する動作等については、後に更に詳しく説明をする。また、水処理部18a、bにおいて、直流電源ユニット104は、EDI処理部102へ直流電力を供給する電源である。本例において、直流電源ユニット104は、予め設定された電圧の電力をEDI処理部102へ供給することで、トリチウム水に対する処理をEDI処理部102に行わせる。
【0018】
また、本例において、水処理部18a、bのそれぞれにおけるEDI処理部102は、図中に示すように、水処理システム10における水処理の経路に沿って配設されている。この場合、水処理システム10における複数のEDI処理部102について、例えば、水処理の経路に沿って多段方式でつながっていると考えることができる。また、本例において、水処理部18aにおけるEDI処理部102は、第1のトリチウム低減水生成装置の一例である。水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水は、第1処理水の一例である。水処理部18aにおけるEDI処理部102には、処理対象のトリチウム水として、ポンプ14及びUV殺菌部16を介して、原水貯槽12に貯留されている水が供給される。この場合、上記においても説明をしたように、原水貯槽12に貯留されている水について、例えば、水処理システム10での処理対象の水と考えることができる。また、以上の構成により、水処理部18aにおけるEDI処理部102は、原水貯槽12から供給されるトリチウム水から、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成する。この場合、水処理部18aにおいて生成するトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水について、例えば、原水貯槽12に貯留されているトリチウム水に対してトリチウムの低減及び濃縮を行った水等と考えることができる。また、本例において、水処理部18aにおけるEDI処理部102は、生成したトリチウム低減水を、水処理部18bにおけるEDI処理部102へ供給する。そして、生成したトリチウム濃縮水については、原水貯槽12へ戻すことで、原水貯槽12に貯留されているトリチウム水に合流させる。
【0019】
また、本例において、水処理部18bにおけるEDI処理部102は、第2のトリチウム低減水生成装置の一例である。水処理部18bにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水は、第2処理水の一例である。そして、図示した構成等から理解できるように、本例において、水処理部18bにおけるEDI処理部102には、処理対象のトリチウム水として、水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水が供給される。また、これにより、水処理部18bにおけるEDI処理部102は、水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水よりも更にトリチウム濃度が低いトリチウム低減水を生成する。このように構成すれば、例えば、トリチウムの濃度をより低減したトリチウム低減水を適切に生成することができる。また、この場合、水処理部18bにおけるEDI処理部102は、水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水よりもトリチウム濃度が高いトリチウム濃縮水を生成する。そして、生成したトリチウム濃縮水について、原水貯槽12へ戻すことで、原水貯槽12に貯留されているトリチウム水に合流させる。
【0020】
また、本例において、水処理部18bにおけるEDI処理部102は、生成したトリチウム低減水を、イオン交換部20へ供給する。イオン交換部20は、水処理システム10における処理水の出口の前段でイオン交換を行うための構成であり、水処理部18bにおけるEDI処理部102から供給されるトリチウム低減水に対してイオン交換を行うイオン交換樹脂を含む。イオン交換部20がイオン交換樹脂を含むことについては、例えば、イオン交換部20内にイオン交換樹脂が入れられていること等と考えることができる。また、本例において、イオン交換部20は、イオン交換樹脂として、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とを含む。このように構成した場合、例えば、水処理部18bで生成されるトリチウム低減水に残っているトリチウムについて、イオン交換部20におけるイオン交換樹脂によって適切に除去することができる。そのため、このようなイオン交換部20を用いることで、例えば、水処理システム10において生成する処理水に含まれるトリチウムの濃度をより適切に低減することができる。また、これにより、例えば、水処理システム10における処理水として、トリチウムがより高い精度で除去された水を適切に生成することができる。
【0021】
以上のように、本例によれば、例えば、水処理部18a、bにおけるEDI処理部102等を用いて、トリチウムが高い精度で除去された水を適切に生成することができる。また、この場合、EDI処理部102を用いることで、例えば、処理対象のトリチウム水が大量の場合等にも、効率的かつ適切に水処理を行うことができる。また、本例においては、例えば、水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成したトリチウム低減水に対して、水処理部18bにおけるEDI処理部102によって更に処理を行うことで、トリチウムの濃度をより低減させたトリチウム低減水を適切に生成することができる。また、この場合において、水処理部18a、bにおけるEDI処理部102で生成したトリチウム濃縮水を原水貯槽12へ戻すことで、例えば、水処理システム10の外部へのトリチウムの流失を適切に抑えつつ、トリチウム低減水を適切に生成することができる。また、この場合、リチウム濃縮水を水処理システム10内で循環させることで、例えば、水処理システム10での水処理の進行に応じて、原水貯槽12内のトリチウム水におけるトリチウムの濃度が徐々に高くなると考えることができる。そのため、本例によれば、例えば、水処理システム10での処理水としてトリチウムを除去した水を生成しつつ、水処理システム10内において、トリチウムの濃縮を行うことができる。
【0022】
また、上記においては、図示及び説明等の便宜上、EDI処理部102を2段階でつなげる場合の構成の例について、説明をした。しかし、使用するEDI処理部102の数については、水処理システム10に求められる仕様等に応じて、適宜変更してもよい。例えば、水処理システム10は、より多くの数の水処理部18に対応するより多くの数のEDI処理部102を備えてもよい。この場合、例えば3~4段程度の多段構成でEDI処理部102を用いることが考えられる。また、この場合、1段目のEDI処理部102については、例えば、水処理部18aにおけるEDI処理部102と同一又は同様に用いることが考えられる。また、2段目以降のEDI処理部102では、例えば、水処理部18bにおけるEDI処理部102と同一又は同様に、前段のEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水を処理対象のトリチウム水として処理を行うことが考えられる。また、例えばより大量のトリチウム水に対して処理を行う場合等には、多段構成のEDI処理部102における一部の段において、複数のEDI処理部102を並列に接続すること等も考えられる。
【0023】
続いて、EDI処理部102の具体的な構成や、EDI処理部102においてトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成する動作等について、更に詳しく説明をする。
図2は、本例において用いるEDI処理部102の構成の一例を示す図であり、EDI処理部102の断面を簡略化して示すことで、EDI処理部102の要部の構成の一例を示している。以下において説明をする点を除き、本例において用いるEDI処理部102は、公知の電気再生式イオン交換装置と同一又は同様の特徴を有する。この場合、EDI処理部102について、例えば、公知の電気再生式イオン交換装置と同一又は同様の原理で動作すると考えることができる。また、より具体的に、トリチウム水に対する処理を行ってトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成することに関する事項以外の点において、EDI処理部102は、公知の電気再生式イオン交換装置と同一又は同様の特徴を有してよい。そのため、EDI処理部102としては、例えば、EDI装置又はCDI装置として市販されている公知の装置と同一又は同様の装置を用いることが考えられる。また、このような市販の装置としては、例えば、米国のIONPURE社がライセンスを所有する純水生成装置で用いられている装置と同一同様の装置を用いることが考えられる。また、この場合、EDI処理部102に供給する直流電力の電圧等の条件については、適宜調整することが考えられる。
【0024】
また、より具体的に、本例において、EDI処理部102は、電気再生式イオン交換装置であり、例えば図中に示すように、陰電極202、陽電極204、複数の脱塩室206、複数の濃縮室208、及び複数の電極室210を有する。また、陽電極204及び脱塩室206等の液室間を隔てるための構成として、複数の陽イオン交換膜212及び陰イオン交換膜214を有する。また、これらの構成のうち、陰電極202及び陽電極204は、直流電源ユニット104(
図1参照)から直流電力を受け取るための電極である。陰電極202は、直流電源ユニット104における負極に対して、電気的に接続される。陽電極204は、直流電源ユニット104における正極に対して、電気的に接続される。
【0025】
また、脱塩室206及び濃縮室208は、陰電極202と陽電極204との間に形成される液室であり、例えば図中に示すように、陽イオン交換膜212又は陰イオン交換膜214によって間が仕切られた状態で、交互に並んで配設される。本例において、脱塩室206は、第1液室の一例である。濃縮室208は、第2液室の一例である。また、図中に示すように、脱塩室206において、陰電極202の側は、陽イオン交換膜212で形成される。そして、陽電極204の側は、陰イオン交換膜214で形成される。また、濃縮室208において、陰電極202の側は、陰イオン交換膜214で形成される。そして、陽電極204の側は、陽イオン交換膜212で形成される。この場合、脱塩室206における陰電極202又は陽電極204の側について、少なくとも一部が陽イオン交換膜212又は陰イオン交換膜214で形成されていると考えることができる。濃縮室208における陰電極202又は陽電極204の側について、少なくとも一部が陰イオン交換膜214又は陽イオン交換膜212で形成されていると考えることができる。また、この場合、脱塩室206及び濃縮室208の並び方に関し、濃縮室208について、例えば、陰電極202と陽電極204との間において陽イオン交換膜212又は陰イオン交換膜214を挟んで脱塩室206と隣接していると考えることができる。また、脱塩室206及び濃縮室208については、例えば、公知のEDI装置等の構成における脱塩室及び濃縮室に対応する液室等と考えることができる。この場合、脱塩室206で生成される水について、例えば、EDI処理部102で生成される処理水等と考えることができる。また、濃縮室208で生成される水について、例えば、EDI処理部102で生成される濃縮排水等と考えることができる。
【0026】
また、脱塩室206には、例えば公知のEDI装置等と同様に、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填される。この場合、脱塩室206に対し、例えば、混床式でイオン交換樹脂が充填されていると考えることができる。また、脱塩室206内のイオン交換樹脂について、例えば、脱塩室206内の水に含まれるイオンに対してイオン交換を行うための構成等と考えることができる。脱塩室206に充填するイオン交換樹脂としては、例えば公知のEDI装置等で用いられているイオン交換樹脂と同一又は同様のイオン交換樹脂を好適に用いることができる。また、本例においては、濃縮室208内にも、脱塩室206と同様に、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填される。この場合、脱塩室206に充填するイオン交換樹脂と同一又は同様のイオン交換樹脂を濃縮室208に対しても充填することが考えられる。また、濃縮室208内のイオン交換樹脂については、例えば、濃縮室208内の水の電気伝導度が低い場合でも濃縮室208に電気を流すための電気伝達用の構成等と考えることができる。そのため、濃縮室208内のイオン交換樹脂については、公知のEDI装置の場合と同一又は同様に、例えば、イオンの交換を行うための構成ではないと考えることができる。また、EDI処理部102において、複数の電極室210は、陰電極202又は陽電極204が入れられる液室である。この場合、複数の脱塩室206及び複数の濃縮室208について、例えば図中に示すように、陰電極202側の電極室210と、陽電極204側の電極室210との間に配設されると考えることができる。
【0027】
また、本例において、陽イオン交換膜212については、例えば、陽イオンを選択的に透過させる膜等と考えることができる。陰イオン交換膜214については、例えば、陰イオンを選択的に透過させる膜等と考えることができる。そして、図示した構成等から理解できるように、陽イオン交換膜212及び陰イオン交換膜214については、例えば、脱塩室206又は濃縮室208の一部を構成していると考えることができる。また、陽イオン交換膜212及び陰イオン交換膜214について、例えば、隣接する脱塩室206及び濃縮室208に共有されている等と考えることもできる。陽イオン交換膜212及び陰イオン交換膜214としては、例えば、公知のEDI装置等で用いられている陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜と同一又は同様のイオン交換膜を好適に用いることができる。
【0028】
また、本例においては、EDI処理部102に対し、陰電極202と陽電極204との間に電圧をかけることで、脱塩室206及び脱塩室206等にあるトリチウム水に含まれるイオンを移動させる。また、この場合において、陽イオン交換膜212及び陰イオン交換膜214を用いることで、脱塩室206と濃縮室208との間で移動するイオンの極性を制限する。より具体的に、この場合、脱塩室206及び濃縮室208において、陽イオンは、陰電極202へ向かう方向の力を受けることになる。また、陰イオンは、陽電極204へ向かう方向の力を受けることになる。しかし、この場合において、陽イオンの移動は、陰イオン交換膜214によって妨げられる。また、陰イオンの移動は、陽イオン交換膜212によって妨げられる。そのため、
図2に示す構成のEDI処理部102では、陰電極202側の脱塩室206から濃縮室208への陰イオンの移動と、陽電極204側の脱塩室206から濃縮室208への陽イオンの移動が生じることになる。また、この場合において、どのイオンがどの程度移動するか等については、例えば、陽イオン交換膜212や陰イオン交換膜214の一方側と他方側とでのイオン濃度の差等に応じて決まることになる。
【0029】
また、上記においても説明をしたように、本例において、EDI処理部102は、トリチウム水から、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成する。この点に関し、トリチウム水において、トリチウムは、水分子における少なくとも一部の水素原子がトリチウム原子に置き換えられた形態や、このような分子が電離することで生成されるイオンの形態で、水中に含まれている。また、この場合、化学的な性質においてトリチウムと水素との差がほとんどないことから、化学的な方法でトリチウムと水素とを分離することは、困難である。しかし、質量の違いから、物理的な性質については、トリチウムと水素との間で、差が生じることもある。特に、水素イオン(H+)とトリチウムイオン(T+)の間では、質量において約3倍の差があることから、物理的な性質に顕著な違いが生じる場合がある。また、より具体的に、本例のように、EDI処理部102を用いる場合、トリチウム水中のイオンは、陰電極202と陽電極204との間にかけられる電圧の影響を受けることになる。そして、この影響の受け方において、イオンの質量による差が生じることが考えられる。また、イオン交換樹脂やイオン交換膜との関係においては、化学的な性質以外に、単位電荷あたりのイオンの質量のような物理量の影響が生じることも考えられる。そして、本例においては、このような物理的な性質の差のよって生じる同位体効果を利用して、トリチウムの除去及び濃縮を行う。
【0030】
この点に関し、本例において、EDI処理部102でのトリチウム水の処理時には、複数の脱塩室206、複数の濃縮室208、及び複数の電極室210に対し、処理対象のトリチウム水を入れる。そして、その状態で、陰電極202と陽電極204との間に電圧をかけることで、脱塩室206及び濃縮室208の一方から他方へトリチウム水中の少なくとも一部のイオンを移動させる。また、これにより、例えば、脱塩室206及び濃縮室208の一方において、トリチウム低減水が生成され、他方において、トリチウム濃縮水を生成されることになる。また、より具体的に、本例のEDI処理部102においては、陰電極202と陽電極204との間に電圧をかけることで、脱塩室206にある水に含まれるトリチウムの少なくとも一部が濃縮室208へ移動すると考えることができる。この場合、例えば、濃縮室208における陽イオン交換膜212の側にある脱塩室206から濃縮室208へT
+イオンが陽イオン交換膜212を透過し、濃縮室208における陰イオン交換膜214の側にある脱塩室206から濃縮室208へOT
-イオンが陰イオン交換膜214を透過することで、それぞれの脱塩室206におけるトリチウムの濃度が低下し、濃縮室208におけるトリチウムの濃度が高まると考えることができる。このように構成すれば、例えば、EDI処理部102において、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を適切に生成することができる。また、この場合、例えば、図中に示す処理水について、トリチウム低減水に対応すると考えることができる。また、濃縮排水について、トリチウム濃縮水に対応すると考えることができる。また、本例において、EDI処理部102での処理の実行時には、脱塩室206、濃縮室208、及び電極室210のそれぞれの中の水について、適宜入れ替えを行う。また、この場合、電極室210から排出される水については、例えばトリチウム濃縮水に合流させて、原水貯槽12(
図1参照)へ戻すことが考えられる。
【0031】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明や、変形例等について、説明をする。上記においても説明をしたように、本例によれば、例えば、ALPS処理水等のトリチウム水に対し、EDI処理部102を有する水処理部18を用いて、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を適切に生成することができる。また、この場合において、例えば、多段方式でつながる複数のEDI処理部102を用いることで、トリチウムを適切かつ十分に除去したトリチウム低減水を生成することができる。より具体的に、本例において、原水としてALPS処理水を用いる場合、水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水に含まれるトリチウムの濃度について、例えば、原水の1/100以下にできると考えられる。水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水に含まれるトリチウムの濃度については、例えば、原水の1/1000以下、又は1/10000以下にできる可能性もあると考えられる。また、この場合、水処理部18aにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水に対する処理を更に行うことで、水処理部18bにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水に含まれるトリチウムの濃度について、例えば、原水の1/10000以下にできると考えられる。
【0032】
また、この場合、水処理部18bにおけるEDI処理部102で生成されるトリチウム低減水に含まれるトリチウムの濃度について、例えば、海水に含まれるトリチウムの濃度よりも小さくすること等も可能であると考えられる。更に、上記においても説明をしたように、本例においては、必要に応じて、より多くの段数での多段構成でEDI処理部102を用いてもよい。また、本例においては、イオン交換部20を更に用いることで、水処理システム10の処理水の出口から出てくる処理水に含まれるトリチウムの濃度について、更に小さくすることが可能になっている。そのため、本例によれば、例えば、水処理システム10において、トリチウムを適切かつ十分に除去した処理水を適切に生成することができる。また、より具体的に、水処理システム10へ供給する原水としては、例えば、数10万ベクレル/リットル以上の濃度(例えば、30万~150万ベクレル/リットル程度)でトリチウムを含むトリチウム水を用いることが考えられる。そして、このような場合において、水処理システム10で生成される処理水に含まれるトリチウムの濃度について、例えば、1500ベクレル/リットル以下にすることが可能であると考えられる。このように構成すれば、例えば、海水等での希釈を行うことなく、水処理システム10で生成される処理水を海洋放出することが可能になる。また、例えば求められる基準等に応じて、水処理システム10で生成される処理水に対し、海水等での希釈を更に行ってもよい。
【0033】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、EDI処理部102を用いて、トリチウム水に対する処理を行う。また、EDI処理部102において、脱塩室206には、脱塩室206内の水に含まれるイオンに対してイオン交換を行うためのイオン交換樹脂が充填されている。そして、この場合、EDI処理部102においてトリチウム低減水を生成する動作については、例えば、脱塩室206及び濃縮室208を介して陰電極202と陽電極204との間で流れる電流によって脱塩室206内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を再生しつつ、トリチウム低減水を生成すると考えることができる。この場合、脱塩室206内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の再生については、例えば、公知の電気再生式イオン交換装置と同様に、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が補足しているイオンを電流によって脱離させることで行うと考えることができる。また、この場合、脱塩室206内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を再生する処理を別途行うことが不要になるため、EDI処理部102を停止させることなく、トリチウム水に対する処理を長時間にわたって連続的に行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、大量のトリチウム水に対する処理を効率的かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、トリチウム低減水を効率的かつ適切に生成することができる。
【0034】
ここで、上記においても説明をしたように、本例の水処理システム10において、処理水の出口の前段では、イオン交換部20が用いられている。また、イオン交換部20には、トリチウム低減水に対してイオン交換を行うイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂)が充填されている。そのため、水処理システム10で大量のトリチウム水に対する処理を行った場合、イオン交換部20におけるイオン交換樹脂が飽和することも考えられる。また、イオン交換部20におけるイオン交換樹脂が飽和した場合には、イオン交換樹脂を再生する処理が必要になる。しかし、本例において、イオン交換部20に流れる水は、水処理部18a、bによってトリチウムが除去された後のトリチウム低減水である。そのため、イオン交換部20においてイオン交換樹脂の飽和が生じるとしても、その頻度は、小さくなる。また、イオン交換部20のような構成の場合、例えばイオン交換樹脂が充填されたカートリッジの交換等を行うことで、水処理部18a、bでの処理を継続しながら、イオン交換樹脂を入れ替えることも可能である。そして、この場合、例えば、交換によって取り出したイオン交換樹脂に対して再生の処理を行うことで、水処理システム10の動作を止めることなく、イオン交換樹脂を適切に再生できる。
【0035】
また、本例のEDI処理部102において、トリチウム水に対する処理を行う場合、トリチウム水に対して電流を流すことで、トリチウムを含むガスが発生すること等も考えられる。この場合、トリチウムを含むガスについては、例えば、適宜大気中に放出することが考えられる。また、水処理システム10の外部へのトリチウムの流失が好ましくない場合等には、発生したガスを回収してもよい。この場合、例えば、水素ガスと共にトリチウムを含むガスを回収し、酸素と反応させることでトリチウム水を生成して、水処理システム10に戻すことが考えられる。また、この場合、例えば、回収したガスについて、燃料電池での発電に用いること等も考えられる。
【0036】
また、上記においては、水処理システム10の構成及び動作に関し、主に、トリチウムを除去した処理水を生成する場合の例について、説明をした。これに対し、水処理システム10の構成の変形例では、トリチウムを濃縮した処理水を生成すること等も考えられる。また、この場合、例えば、
図3に示す構成の水処理システム10を用いることが考えられる。
図3は、水処理システム10の構成の変形例を示す。以下に説明をする点を除き、
図3において、
図1、2と同じ符号を付した構成は、
図1、2における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0037】
本変形例において、水処理システム10は、原水貯槽12、ポンプ14、UV殺菌部16、及び複数の水処理部18(水処理部18a、b)を備える。また、水処理部18a、bは、EDI処理部102及び直流電源ユニット104を有する。図示した構成から理解できるように、本変形例においては、水処理部18a、bにおけるEDI処理部102で生成するトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水の供給先が、
図1における構成と異なっている。より具体的に、水処理部18aにおけるEDI処理部102は、ポンプ14及びUV殺菌部16を介して原水貯槽12から受け取るトリチウム水から生成するトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水について、トリチウム低減水を原水貯槽12へ戻し、トリチウム濃縮水を水処理部18bにおけるEDI処理部102へ供給する。また、水処理部18bにおけるEDI処理部102は、処理対象のトリチウム水として水処理部18aにおけるEDI処理部102からトリチウム濃縮水を受け取り、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成する。そして、水処理部18bにおけるEDI処理部102は、トリチウム低減水を原水貯槽12へ戻し、トリチウム濃縮水を水処理システム10の処理水の出口へ供給する。このように構成すれば、水処理システム10において、例えば、トリチウムを濃縮した処理水を適切に生成することができる。また、この場合、リチウム低減水を水処理システム10内で循環させることで、例えば、水処理システム10での水処理の進行に応じて、原水貯槽12内のトリチウム水におけるトリチウムの濃度が徐々に低くなると考えることができる。そのため、本変形例によれば、例えば、水処理システム10での処理水としてトリチウムを濃縮した水を生成しつつ、水処理システム10内において、トリチウムの除去を行うことができる。
【0038】
また、水処理システム10の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変更を行うことも考えられる。そして、この場合、例えば、今後に行う実験の結果等を参考に、水処理システム10の具体的な構成の変更を行うこと等も考えられる。より具体的に、現時点において、本願の発明者は、トリチウムの入手や管理の難しさ等から、主に、理論的な検討により、水処理システム10の構成の検討を行っている。これに対し、実際にトリチウム水を用いて実験を行った場合、現時点で想定をしていない事項の影響が生じること等も考えられる。また、この場合、EDI処理部102の内部で生じる現象等によっては、上記において説明をした現象と異なる点が生じる可能性もある。しかし、このような場合にも、水素とトリチウムとの質量の違いによって生じる物理的な性質の差異等により、EDI処理部102において、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を生成できると考えられる。そのため、このような場合にも、例えば
図1、3に示す構成により、トリチウムの除去や濃縮を適切に行うことができる。より具体的に、現時点で想定をしていない事項の影響等により、例えば、
図2に示した構成のEDI処理部102において、脱塩室206ではなく、濃縮室208でトリチウム低減水が生成される可能性等も考えられる。しかし、このような場合にも、EDI処理部102において生成されるトリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を利用して、例えば
図1、3に示す構成により、トリチウムの除去や濃縮を適切に行うことができる。
【0039】
また、上記においては、主に、EDI処理部102における脱塩室206及び濃縮室208の両方にイオン交換樹脂を充填する構成について、説明をした。しかし、EDI処理部102におけるトリチウムの除去及び濃縮については、例えば、濃縮室208に対してイオン交換樹脂を充填しない構成で行うこと等も考えられる。また、この場合、例えば、脱塩室206内にのみイオン交換樹脂の充填を行うことで、脱塩室206内でのトリチウムの濃度と濃縮室208内でのトリチウムの濃度との差が大きくなり、脱塩室206から濃縮室208へのトリチウムの移動が生じやすくなること等も考えられる。より具体的に、この場合、脱塩室206内でのトリチウムの濃度について、例えば、脱塩室206内にあるトリチウム水におけるトリチウムの濃度に対し、イオン交換樹脂に補足されているトリチウムに対応するトリチウムの濃度を加えた濃度になると考えることができる。これに対し、濃縮室208内でのトリチウムの濃度は、濃縮室208内にあるトリチウム水におけるトリチウムの濃度になると考えることができる。そして、この場合、例えば、イオン交換樹脂に補足されているトリチウムに対応するトリチウムの濃度の影響により、脱塩室206内でのトリチウムの濃度と濃縮室208内でのトリチウムの濃度との差が大きくなり、脱塩室206から濃縮室208へのトリチウムの移動が生じやすくなること等が考えられる。また、この点に関し、水処理システム10での処理対象の原水としては、例えば、ある程度の濃度で塩が残っている水を用いること等も考えられる。そして、この場合、例えば、濃縮室208に対してイオン交換樹脂を充填しない構成であっても、EDI処理部102において、トリチウム低減水及びトリチウム濃縮水を適切に生成できると考えられる。また、この場合、例えば、水処理システム10における一部のEDI処理部102のみにおいて、濃縮室208に対してイオン交換樹脂を充填しないこと等も考えられる。例えば、
図1に示す構成の場合、原水貯槽12から原水の供給を受ける水処理部18aにおけるEDI処理部102においてのみ、濃縮室208に対してイオン交換樹脂を充填しないこと等も考えられる。また、水処理システム10に求められる性能等に応じて、水処理システム10における全てのEDI処理部102において、濃縮室208に対してイオン交換樹脂を充填しないこと等も考えられる。例えば、
図3に示す構成の水処理システム10の場合、水処理システム10における全てのEDI処理部102において、濃縮室208に対してイオン交換樹脂を充填しないこと等も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば水処理システムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
10・・・水処理システム、102・・・EDI処理部、104・・・直流電源ユニット、12・・・原水貯槽、14・・・ポンプ、16・・・UV殺菌部、18・・・水処理部、20・・・イオン交換部、202・・・陰電極、204・・・陽電極、206・・・脱塩室、208・・・濃縮室、210・・・電極室、212・・・陽イオン交換膜、214・・・陰イオン交換膜